JP4545518B2 - 車輪支持用転がり軸受ユニット - Google Patents

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Description

本発明は、自動車の懸架装置に対して車輪を回転自在に支持するための車輪支持用転がり軸受ユニットに関する。
自動車の車輪支持用転がり軸受ユニットについては、内輪を静止側軌道輪とし、ハブを回転側軌道輪とする構成の第1例および外輪を静止側軌道輪とし、ハブを回転側軌道輪とする構成の第2例が知られている(特許文献1)。
まず、車輪支持用転がり軸受ユニットの従来構造の第1例について図5により説明する。図5は、車輪支持用転がり軸受ユニットの従来構造の第1例を示す断面図である。車輪を構成するホイール1は、図5に示すような車輪支持用転がり軸受ユニット2により、懸架装置を構成する車軸3の端部に回転自在に支持している。即ち、この車軸3の端部に固定したアクスル4に、上記車輪支持用転がり軸受ユニット2を構成する、静止側軌道輪である内輪5、5を外嵌し、ナット6により固定している。一方、上記車輪支持用転がり軸受ユニット2を構成する回転側軌道輪であるハブ7に上記ホイール1を、複数本のスタッド8、8とナット9、9とにより結合固定している。
上記ハブ7の内周面には、それぞれが回転側転送面である複列の外輪転送面10a、10bを、外周面には取付フランジ11を、それぞれ形成している。上記ホイール1は、制動装置を構成するためのドラム12と共に、上記取付フランジ11の片側面(図示の例では外側面)に、上記各スタッド8、8とナット9、9とにより、結合固定している。
本明細書においては、軸方向に関して「外」とは、車両への組み付け状態で幅方向外側をいい、「内」とは、幅方向中央側をいう。
上記各外輪転送面10a、10bと、上記各内輪5、5の外周面に形成したそれぞれが静止側転送面である各内輪転送面13a、13bとの間には、それぞれが転動体である玉14、14を複数個ずつ、それぞれ保持器15、15により保持した状態で転動自在に設けている。構成各部材をこの様に組み合わせることにより、背面組み合わせである複列アンギュラ型の玉軸受を構成し、上記各内輪5、5の周囲に上記ハブ7を、回転自在に、かつ、ラジアル荷重およびスラスト荷重を支承自在に支持している。なお、上記ハブ7の両端部内周面と、上記各内輪5、5の端部外周面との間には、それぞれシールリング16a、16bを設けて、上記各玉14、14を設けた空間と内部空間17とを遮断している。
さらに、上記ハブ7の外端開口部は、キャップ18により塞がれている。
上述の様な車輪支持用転がり軸受ユニット2の使用時には、図5に示す様に、内輪5、5を外嵌固定したアクスル4を車軸3に固定すると共に、ハブ7の取付フランジ11に、図示しないタイヤを組み合わせたホイール1およびドラム12を固定する。また、このうちのドラム12と、上記車軸3の端部に固定のバッキングプレート19に支持した、図示しないホイルシリンダおよびシューとを組み合わせて、制動用のドラムブレーキを構成する。制動時には、上記ドラム12の内径側に設けた一対のシューをこのドラム12の内周面に押し付ける。なお、上記内部空間17内にはグリースを封入して、上記外輪転送面10a、10bと、内輪転送面13a、13bと、上記各玉14、14の転道面との間の転がり接触部の潤滑を行なうようにしている。
次に、車輪支持用転がり軸受ユニットの従来構造の第2例について図6により説明する。図6は、車輪支持用転がり軸受ユニットの従来構造の第2例を示す断面図である。図6に示した車輪支持用転がり軸受ユニット2aの場合には、静止側軌道輪である外輪20の内径側に、回転側軌道輪であるハブ7aを、それぞれが転動体である複数の玉14、14により、回転自在に支持している。このために、上記外輪20の内周面にそれぞれが静止側転送面である複列の外輪転送面10a、10bを、上記ハブ7aの外周面にそれぞれが回転側転送面である第一、第二の内輪転送面21、22を、それぞれ設けている。このハブ7aは、ハブ本体23と内輪24とを組み合わせてなる。このうちハブ本体23の外周面の外端部に車輪を支持するための取付けフランジ11aを、同じく中間部に上記第一の内輪転送面21を、同じく中間部内端寄り部分にこの第一の内輪転送面21を形成した部分よりも小径である小径段部25を、それぞれ設けている。そして、この小径段部25に、外周面に断面円弧状である上記第二の内輪転送面22を設けた上記内輪24を外嵌している。さらに、上記ハブ本体23の内端部を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部26により上記内輪24の内端面を抑え付けて、この内輪24を上記ハブ本体23に対し固定している。
また、上記外輪20の両端部内周面と、上記ハブ本体23の中間部外周面および上記内輪24の内端部外周面との間には、それぞれシールリング16c、16dを設けて、上記外輪20の内周面と上記ハブ7aの外周面との間で、上記各玉14,14を設けた内部空間17aと、外部空間とを遮断している。
この内部空間17a内にはグリースを封入して、上記外輪転送面10a、10bと、内輪転送面21、22と、上記各玉14、14の転道面との間の転がり接触部の潤滑を行なうようにしている。
グリース封入転がり軸受を車輪支持用軸受として使用する場合には、高速、高荷重という過酷な使用条件のため、潤滑グリースの潤滑油膜が破断しやすくなる。潤滑油膜が破断すると金属接触が起こり、発熱、摩擦摩耗が増大する不具合が発生する。
そのため、高速、高荷重下での潤滑性および耐荷重性を向上させ、潤滑油膜破断による金属接触を防止する必要があり、極圧剤含有グリースを使用して、その不具合を軽減している。
この転がり軸受け部の潤滑においては、潤滑グリースの潤滑膜が破断を防止するため、極圧剤(EP剤)含有グリースを使用して、その潤滑油膜の破断を軽減している。
例えば、有機ビスマス化合物を含んでなる転がり軸受用の、極圧グリース潤滑剤組成物が知られている(特許文献2)。また、摩耗低減を目的としたモリブデンジチオカーバメートおよびポリサルファイドを含有してなるグリース組成物が知られている(特許文献3)。
しかしながら、転がり軸受の使用条件がdN値 10 万以上という高速条件下での潤滑など過酷になるにつれて、従来のグリースでは転がり軸受の使用が困難になるなどの問題がある。
特開2001−221243号公報 特開平8−41478号公報 特開平10−324885号公報
本発明における課題は、高速、高荷重下での軸受潤滑面での摩擦摩耗を防止し、長期耐久性に優れた車輪支持用転がり軸受ユニットを提供することである。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、使用状態で懸架装置に支持固定される静止側軌道輪と、使用状態で車輪を支持固定する回転側軌道輪と、上記静止側軌道輪と上記回転側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側転送面と回転側転送面との間に設けられた複数個の転動体とを備え、上記各転送面と上記各転動体との転がり接触部をグリースにより潤滑する車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、上記グリースは基油と、増ちょう剤と、無機ビスマスとを含み、上記基油は、40 ℃における動粘度が 33 〜 100 mm 2 /s であり、上記増ちょう剤は、金属石けん系増ちょう剤およびウレア系化合物から選ばれた少なくとも一つの増ちょう剤であり、上記無機ビスマスが、硫酸ビスマス、三酸化ビスマスおよびビスマス粉末から選ばれた少なくとも1つであり、上記グリース全体に対して 0.01〜15 重量%配合されていることを特徴とする。
上記基油は、ポリ-α-オレフィン(以下、PAOと略称する。)油、鉱油、エステル油およびエーテル油から選ばれた少なくとも1つの油からなることを特徴とする。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、耐熱耐久性に優れた無機ビスマスを使用したグリースを封入しているので、無機ビスマスが転がり接触部に補給されることによって、極圧性効果を長期間持続することができる。そのため、耐摩耗性とともに、長期間耐久性の要求される車輪支持用転がり軸受ユニットに好適に利用することができる。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、静止側軌道輪と、回転側軌道輪と、複数個の転動体とを備える。このうちの静止側軌道輪は、使用状態で懸架装置に支持固定される。また、上記回転側軌道輪は、使用状態で車輪を支持固定する。また、上記各転動体は、上記静止側軌道輪と回転側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側転送面と回転側転送面との間に設けられている。そして、これら各転送面と上記転動体との転がり接触部を、グリースにより潤滑する。
このような従来構造の車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性について検討した結果、転動体を設置した空間内に、無機ビスマスがグリース全体に対し 0.01〜15 重量%含まれるグリースを封入した車輪支持用転がり軸受ユニットは、静止側、固定側各転送面と各転動体の転動面との転がり接触部の潤滑性能が向上することを見出した。
また、前述の従来構造の車輪支持用転がり軸受ユニットに構造面で改良を加え、上記グリースを適用すると、ハブの回転トルクが低減することを見出した。本発明はこのような知見に基づくものである。
本発明を実施する場合により好適な車輪支持用転がり軸受ユニットの構造の4例について、以下に説明する。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットとして好適な構造の第1例を、図1に示す。第1例は、従動輪(FRおよびRR車の前輪、FF車の後輪)を支持するための構造であり、前述の図6に示した構造に改良を加えて、ハブ7bの回転トルクをより低減できる構造としたものである。この目的のために第1例の場合には、外輪20の内端開口部をキャップ18aにより塞ぐとともに、この外輪20の外端部内周面とハブ本体23の中間部外周面との間をシールリング16cにより塞いでいる。なお、キャップ18aを設けたので、前述の図6に示した上記外輪20の内端部内周面と内輪4の外周面との間のシールリング16dは、省略することができる。各玉14、14を設置した内部空間17b内への、泥水等の異物侵入防止は、上記シールリング16cと上記キャップ18aとにより防止している。そして、上記内部空間17b内に封入するグリースには無機ビスマスがグリース全体に対して 0.01〜15 重量%含まれている。その他の部分の構造は、上記図6に示した従来構造と同様である。本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットを、従動輪に適用する場合、外輪の内端部内周面と内輪の外周面との間のシールリングを省略しているので、ハブの回転トルクを従来構造品より低減することができる。
次に、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットとして好適な構造の第2例を、図2に示す。
第2例も従動輪(FRおよびRR車の前輪、FF車の後輪)を支持するための構造である。第2例の場合にはハブ7cを構成するハブ本体23aの内端部に雄ねじ部27を設け、この雄ねじ部27に螺着したナット28により、上記ハブ本体23aの小径段部25に外嵌した内輪24の内端面を抑え付けている。これに合わせて、外輪20の内端開口部に被着したキャップ18bの形状を膨らませ、上記雄ねじ部27およびナット28の干渉を防止している。その他の構成は上述した第1例の場合と同様である。
次に、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットとして好適な構造の第3例を、図3に示す。第3例は、駆動輪(FRおよびRR車の後輪、FF車の前輪、4WD車の全輪)を支持するための構造である。
このために第3例の場合には、静止側軌道輪である外輪20の内径側に回転自在に支持した、回転側軌道輪であるハブ7dを構成するハブ本体23bの中心部にスプライン孔29を形成している。車両への組み付け状態でこのスプライン孔29には、等速ジョイントに付属のスプライン軸(図示省略)を挿入する。
また、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットを、駆動輪に適用する場合、回転側軌道輪であるハブを有するハブ本体の中心部にスプライン孔を形成しているので、このスプライン孔に等速ジョイントに付属のスプライン軸を接続することにより、等速ジョイントの回転トルクをハブに確実に伝えることができる。
また、上記ハブ本体23bの内端部に形成した小径段部25に外嵌した内輪24の内端面を、このハブ本体23bの内端部を径方向外方に塑性変形させてなるかしめ部26により抑え付けて、上記内輪24を上記ハブ本体23bに対し固定し、上記ハブ7dを構成している。そして、上記外輪20の両端部内周面と、上記ハブ本体23bの中間部外周面および上記内輪24の内端部外周面との間に、それぞれシールリング16c、16dを設けて、上記外輪20の内周面と上記ハブ7bの外周面との間で各玉14、14を設けた内部空間17bと、外部空間とを遮断している。その他の構成は上述した第1例および第2例の場合と同様である。
次に、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットとして好適な構造の第4例を、図4に示す。第4例も、駆動輪(FRおよびRR車の後輪、FF車の前輪、4WD車の全輪)を支持するための構造である。
第4例の場合には、ハブ本体23cの内端部に設けた小径段部25に外嵌してこのハブ本体23cとともにハブ7eを構成する内輪24の内端面を、このハブ本体23c内端面よりも内方に突出させている。車両への組み付け状態で上記内輪24の内端面には、図示しない等速ジョイントの外端面が突き当り、この内輪24が上記小径段部25から抜け落ちることを防止する。その他の構成は上述した第3例の場合と同様である。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットである上記構造の4例に対して好適に適用できるグリースを構成する無機ビスマス、基油、増ちょう剤および添加剤について以下に述べる。
無機ビスマスを使用したグリースを封入することのできる車輪支持用転がり軸受ユニットは、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットである上記構造の4例に限定されるものではなく、上述の従来構造の2例についても、無機ビスマスを使用したグリースを適用することができる。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットに封入するグリースに使用することができる無機ビスマスとしては、ビスマス粉末、炭酸ビスマス、塩化ビスマス、硝酸ビスマスおよびその水和物、硫酸ビスマス、フッ化ビスマス、臭化ビスマス、ヨウ化ビスマス、オキシフッ化ビスマス、オキシ塩化ビスマス、オキシ臭化ビスマス、オキシヨウ化ビスマス、酸化ビスマスおよびその水和物、水酸化ビスマス、セレン化ビスマス、テルル化ビスマス、リン酸ビスマス、オキシ過塩素酸ビスマス、オキシ硫酸ビスマス、ビスマス酸ナトリウム、チタン酸ビスマス、ジルコン酸ビスマス、モリブデン酸ビスマス等が挙げられるが、本発明において、特に好ましいのは、耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果の高い硫酸ビスマス、三酸化ビスマスおよびビスマス粉末である。
ビスマスは、水銀を除く全ての金属中最低の熱伝導度を有し、比重 9.8 、融点 271.3 ℃の銀白色の金属である。ビスマス粉末は、比較的軟質の金属であり、極圧を受けると膜状になりやすい。そのため粉末の粒径は、グリース中に分散できる粒径であればよい。本発明の車輪支持装置に封入するグリースに使用するビスマス粉末としては、 5〜500 μm であることが好ましい。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットに封入するグリースには、無機ビスマスを極圧剤として添加することを必須とする。この無機ビスマスは、1種類または、2種類を混合してグリースに添加してもよい。
また、無機ビスマスの添加量は、グリース全体に対し 0.01〜15 重量%である。好ましくは 1〜10 重量%である。添加量が 0.01 重量%未満では、耐摩耗性の向上効果が発揮されず、また、 15 重量%をこえると、回転時のトルクが大きくなって、発熱が増大し、回転障害を生じるためである。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットに封入するグリースに使用できる基油としては、例えば、鉱油、PAO油、エステル油、フェニルエーテル油、フッ素油、さらに、フィッシャートロプシュ反応で合成される合成炭化水素油(GTL基油)などが挙げられる。この中でも、PAO油、鉱油、エステル油およびエーテル油から選ばれた少なくとも一種を使用することが好ましい。上記のPAO油としては、通常、α−オレフィンまたは異性化されたα−オレフィンのオリゴマーまたはポリマーの混合物である。α−オレフィンの具体例としては、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン等を挙げることができ、通常はこれらの混合物が使用される。また、鉱油としては、例えば、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油等の通常潤滑油やグリースの分野で使用されているものをいずれも使用することができる。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットに封入するグリースに使用できる基油は、好ましくは、 40 ℃における動粘度が 30〜200 mm2/s である。 30 mm2/s 未満の場合は、蒸発量が増加し、耐熱性が低下するので好ましくなく、また、 200 mm2/s をこえると回転トルクの増加による軸受の温度上昇が大きくなるので好ましくない。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットに封入するグリースに使用できる増ちょう剤として、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、複合リチウム、複合カルシウム、複合アルミニウムなどの金属石けん系増ちょう剤、および下記式(1)のジウレア化合物が挙げられる。好ましくは、ジウレア化合物またはリチウム石けんである。これらの増ちょう剤は、1種類単独で用いても2種類以上組み合わせて用いてもよい。
Figure 0004545518
(式(1)中のR2 は、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基を、R1およびR3 は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基または炭素数6〜20の脂環族炭化水素基または炭素数6〜20の脂肪族炭化水素基をそれぞれ示し、R1 およびR3 は、同一であっても異なっていてもよい。)
式(1)で表されるウレア系化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニレンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネー卜等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ステアリルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
ウレア化合物は、イソシアネート化合物とアミン化合物を反応させることにより得られる。反応性のある遊離基を残さないため、イソシアネート化合物のイソシアネート基とアミン化合物のアミノ基とは略当量となるように配合することが好ましい。
基油にウレア化合物を配合して各種配合剤を配合するためのベースグリースが得られる。ベースグリースは、基油中でイソシアネート化合物とアミン化合物とを反応させて作製する。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットに封入するグリースは、必要に応じて公知の添加剤をグリースに含有させることができる。この添加剤として、例えば、有機亜鉛化合物、アミン系、フェノール系、イオウ系等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール、亜硝酸ソーダなどの金属不活性剤、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイト等の固体潤滑剤等が挙げられる。これらを単独または2種類以上組み合せて添加することができる。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットに使用できるグリースは、車輪支持用転がり軸受ユニット以外の高負荷がかかる軸受にも使用することができる。
実施例1〜実施例
反応容器中で、基油中に増ちょう剤を加え、3 本ロールミルを用いて均一化処理して、表1に示すLi石けん/鉱油系グリース( 40 ℃基油粘度 100 mm2/s 、混和ちょう度 220 )、ウレア/PAO油系グリース( 40 ℃基油粘度 46 mm2/s 、混和ちょう度 280 )、Li石けん/エステル油系グリース( 40 ℃基油粘度 33 mm2/s 、混和ちょう度 250 )、ウレア/エーテル油系グリース( 40 ℃基油粘度 100 mm2/s 、混和ちょう度 300 )を得た。
さらに、極圧剤として無機ビスマスを、表1に示す割合で上記グリースに添加して、各実施例のグリースを作製した。得られたグリースにつき、以下に記す極圧性評価試験およびころ軸受試験を行なった。結果を表1に併記した。
比較例1〜比較例10
反応容器中で、基油中に増ちょう剤を加え、3本ロールミルを用いて均一化処理して、表2に示すLi石けん/鉱油系グリース( 40 ℃基油粘度 100 mm2/s 、混和ちょう度 220 )、ウレア/PAO油系グリース( 40 ℃基油粘度 46 mm2/s 、混和ちょう度 280 )、Li石けん/エステル油系グリース( 40 ℃基油粘度 30 mm2/s 、混和ちょう度 250 )、ウレア/エーテル油系グリース( 40 ℃基油粘度 100 mm2/s 、混和ちょう度 300 )を得た。
さらに、極圧剤として、有機ビスマス、MoDTC亜鉛粉末などを、表2に示す割合で上記グリースに添加して、各比較例のグリースを作製した。
得られたグリースにつき、実施例と同様にして極圧性評価試験およびころ軸受試験を行なった。結果を表2に併記した。
極圧性評価試験:
極圧性評価試験装置を図7に示す。評価試験装置は、回転軸30に固定されたφ40×10 のリング状試験片2と、この試験片2と端面32にて端面同士が擦り合わされるリング状試験片31とで構成される。ころ軸受用グリースを端面32部分に塗布し、回転軸30を回転数 2000 rpm、図7中右方向Aのアキシアル荷重 490 N 、ラジアル荷重 392 N を負荷して、極圧性を評価した。極圧性は両試験片のすべり部の摩擦摩耗増大により生じる回転軸30の振動を振動センサにて測定し、その振動値が初期値の 2 倍になるまで試験を行ない、その時間を測定した。
回転軸30の振動値が初期値の 2 倍になるまでの時間が長いほど極圧性効果が大となり、優れた耐熱耐久性を示す。したがってグリースの耐熱耐久性の評価は、測定された上記時間の長さにて各実施例と各比較例とを対比させて行なった。
ころ軸受試験:
30206円すいころ軸受にグリースを 3.6 g 封入し、アキシアル荷重 980N 、回転数 2600rpm 、室温にて運転し、回転中のつば部表面温度を測定した。運転開始後、 4〜8 時間までのつば部表面温度の平均値を算出した。
つば部と「ころ」との間に発生するすべり摩擦が大きくなると回転中のつば部表面温度は上昇する。そのためグリースの耐熱耐久性の評価は、測定された上記温度の高さにて各実施例と各比較例とを対比させて行なった。上記温度の高さが 70℃以下であることが、グリースの耐熱耐久性を有する基準とした。
Figure 0004545518
Figure 0004545518
表1および表2においてLi石けん/鉱油系グリースのデータを、各実施例と各比較例とを対比すると、極圧剤の種類では、有機ビスマスよりも無機ビスマスが、極圧性評価試験およびころ軸受試験において優れた耐熱耐久性を示した。
実施例および比較例5に示すように、特にビスマス粉末は、有機ビスマスに比して約 6 倍の耐熱耐久性を示すことがわかる。また、実施例2および比較例5において、三酸化ビスマスは、有機ビスマスに比して約 3 倍の耐熱耐久性を示すことがわかる。これらのことから無機ビスマスが有機ビスマスよりも耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果を長時間持続することができることによるものと考えられる。
また、硫酸ビスマス、三酸化ビスマスおよびビスマス粉末の中では、ビスマス粉末が最も良好な耐熱耐久性を示した。
三酸化ビスマスの添加量が 実施例5の 1 重量%、実施例2の 5 重量%、実施例6の 15 重量%と増加するにつれて極圧性効果が増加する傾向を示すが、三酸化ビスマスの添加量を 15 重量%と添加量 5 重量%の 3 倍に増加させても、極圧性効果の増加は約 1.4 倍に留まる。これは三酸化ビスマスの添加量が 15 重量%に近づくと、回転時のトルクが大きくなって、発熱が増大し、回転障害を生じる傾向にあるためと考えられる。
また、比較例8に示すように、亜鉛粉末を添加した場合には、耐熱耐久性が著しく悪化し、無機化合物ではあっても亜鉛粉末には極圧性効果が認められなかった。これは亜鉛の融点が低く、グリースの耐熱性を向上させることができなかったためと考えられる。
表1および表2においてウレア/PAO油系グリース、Li石けん/エステル油系グリース、ウレア/エーテル油系グリースのデータを、各実施例と各比較例とを対比すると、ウレア/PAO油系グリースの場合、極圧剤の種類では、有機ビスマスよりも硫酸ビスマスおよび三酸化ビスマスといった無機ビスマスが優れた耐熱耐久性を示す。実施例3、実施例4および比較例7に示すように、硫酸ビスマスは有機ビスマスに比して約 3 倍の耐熱耐久性を示し、三酸化ビスマスは有機ビスマスに比して約 4 倍の耐熱耐久性を示すことがわかる。これは無機ビスマスが有機ビスマスよりも耐熱耐久性に優れ、熱分解しにくいため、極圧性効果を長時間持続することができることによるものと考えられる。
また、実施例7および比較例3に示すように、Li石けん/エステル油系グリースの場合、硫酸ビスマスを極圧剤として用いると極圧剤を使用しない場合に比して約 13 倍の耐熱耐久性を示した。
また、実施例8および比較例4に示すように、ウレア/エーテル油系グリースの場合、三酸化ビスマスを極圧剤として用いると極圧剤を使用しない場合に比して約 6 倍の耐熱耐久性を示した。以上のことから、硫酸ビスマスおよび三酸化ビスマスといった無機ビスマスが極圧性効果を長時間持続することがわかる。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、耐熱耐久性に優れた無機ビスマスを使用したグリースを封入した転がり軸受を用いているので、極圧性効果を長期間持続することができる。そのため、耐摩耗性とともに、長期間耐久性の要求される鉄道車両、建設機械、自動車電装補機などに好適に利用することができる。
本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットの構造の第1例を示す断面図である。 本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットの構造の第2例を示す断面図である。 本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットの構造の第3例を示す断面図である。 本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットの構造の第4例を示す断面図である。 車輪支持用転がり軸受ユニットの従来構造の第1例を示す断面図である。 車輪支持用転がり軸受ユニットの従来構造の第2例を示す断面図である。 極圧性評価試験装置を示す図である。
符号の説明
1 ホイール
2 車輪支持用転がり軸受ユニット
3 車軸
4 アクスル
5 内輪
6 ナット
7 ハブ
8 スタッド
9 ナット
10 外輪転送面
11 取付フランジ
12 ドラム
13 内輪転送面
14 玉
15 保持器
16 シールリング
17 内部空間
18 キャップ
19 バッキングプレート
20 外輪
21、22 内輪転送面
23 ハブ
24 内輪
25 小径段部

Claims (2)

  1. 使用状態で懸架装置に支持固定される静止側軌道輪と、使用状態で車輪を支持固定する回転側軌道輪と、前記静止側軌道輪と前記回転側軌道輪との互いに対向する周面に存在する静止側転送面と回転側転送面との間に設けられた複数個の転動体とを備え、前記各転送面と前記各転動体との転がり接触部をグリースにより潤滑する車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、
    前記グリースは基油と、増ちょう剤と、無機ビスマスとを含み、
    前記基油は、40 ℃における動粘度が 33 〜 100 mm 2 /s であり、
    前記増ちょう剤は、金属石けん系増ちょう剤およびウレア系化合物から選ばれた少なくとも一つの増ちょう剤であり、
    前記無機ビスマスが、硫酸ビスマス、三酸化ビスマスおよびビスマス粉末から選ばれた少なくとも1つであり、前記グリース全体に対して 0.01〜15 重量%配合されていることを特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
  2. 前記基油は、ポリ-α-オレフィン油、鉱油、エステル油およびエーテル油からから選ばれた少なくとも1つの油からなることを特徴とする請求項1記載の車輪支持用転がり軸受ユニット。
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