JP4544701B2 - 複合木質化粧成形品の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の内装パネルや楽器のパネルなどに用いられる、突板による木質化粧部と透明部とを平面的に複合して配置した複合木質化粧成形品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の複合木質化粧成形品は、代表的には自動車のメータパネルなどとしてに用いられるものであり、その木質化粧部が主に化粧機能を担うとともに、透明部を介して必要な表示を行うなどの機能を果たす。図7および図8は、その従来の一例を示しており、この複合木質化粧成形品(以下「木質化粧成形品」という)51は、木質化粧部52と、透明部としての透明パネル53で構成されている。
【0003】
木質化粧部52は、木材を薄くスライスした突板54と、その裏面に一体成形された合成樹脂から成る基材55と、突板54の表面に形成されたトップコート塗膜層56などで構成されている。木質化粧部52には矩形の開口57が表裏方向に貫通して形成され、この開口57には、その外周にわたって段部57aが形成されている。この木質化粧部52は、突板54と基材55を射出成形などで上述した形状に一体成形した後、突板54の表面にトップコート塗装を施し、トップコート塗膜層56を形成することによって、作製される。
【0004】
一方、透明パネル53は、透明な合成樹脂やガラスの成形品で構成され、木質化粧部52の開口57に対応する寸法と形状を有するように成形されている。透明パネル53は、木質化粧部52の開口57に、その段部57aに載せられ且つ上面が面一の状態ではめ込まれ、接着などで固定されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、この従来の木質化粧成形品51は、木質化粧部52と透明パネル53をそれぞれ別個に成形した後、両部品52、53を組み付けることによって、製造される。このため、木質化粧部52と透明パネル53を成形するためのそれぞれの設備が必要になるとともに、組付けコストもかかり、製造コストが増大するという問題がある。また、この組付けが、木質化粧部52の開口57への透明パネル53のはめ込みによって行われるので、両部品52、53間の隙間や段差をできるだけ抑制するために、両部品52、53を高い寸法精度で形成しなければならないとともに、この寸法精度には限界があるため、隙間や段差がある程度、生じることは避けられず、このことがデザイン上の欠点になる。
【0006】
さらに、この木質化粧成形品51では、木質化粧部52だけにトップコート塗膜層56が形成されているため、表面に光沢を有する部分と有しない部分が混在することになり、デザインの統一が図れないという不具合もある。この不具合を回避するために、木質化粧部52に透明パネル53をはめ込んだ後、それらの全体にわたってトップコート塗装を行うことも考えられるが、その場合には、両部品52、53間の隙間の部分で、トップコート塗膜層が割れやすくなるという新たな問題が生じてしまう。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、木質化粧部と透明部の間に段差や隙間のないすっきりした美しい仕上がりが得られるとともに、製造コストを削減することができる複合木質化粧成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明の第1の発明による複合木質化粧成形品の製造方法は、木材をスライスすることにより形成された突板、および透明な材料で構成された透明部材を、平面的に複合して配置した複合木質化粧成形品の製造方法であって、突板および透明部材を準備し、透明部材の縁部が突板に密着しかつ透明部材が突板の裏面側に突出するように、突板および透明部材を金型内に並べてセットし、金型内の突板の裏面側に、基材を構成する合成樹脂を射出して射出成形を行い、突板の裏面および透明部材の側面に密着した状態で、突板および透明部材と一体化することを特徴としている。
【0009】
この製造方法によれば、透明部材の縁部が突板に密着しかつ透明部材が突板の裏面側に突出するように、突板および透明部材を金型内に並べてセットし、突板の裏面側に、合成樹脂を射出して射出成形を行うことによって、複合木質化粧成形品が製造される。これにより、突板および透明部材が、表面に平面的に複合して配置されるとともに、合成樹脂が、突板の裏面および透明部材の側面に密着した状態で、突板および透明部材に基材として一体化される。このように、本発明の製造方法では、突板および透明部材を基材とともに金型内で一体成形するので、木質化粧部と透明部を別個に成形後、組付けしていた従来と異なり、組付け作業を省略でき、その分、製造コストを削減することができる。
【0010】
また、射出成形の際、突板および透明部材が、射出圧により金型の内面に押し付けられるので、両者を段差のない面一の状態で容易に成形することができる。
その結果、突板と透明部材の間に段差のないすっきりした美しい仕上がりを容易かつ確実に得ることができる。
【0013】
また、前記目的を達成するため、本発明の第2の発明による複合木質化粧成形品の製造方法は、木材をスライスすることにより形成されるとともに、表裏方向に貫通する所定のサイズおよび形状の開口を形成した突板、および開口を閉塞する透明部を、平面的に複合して配置した複合木質化粧成形品の製造方法であって、突板を準備し、突板を金型内にセットし、金型内の突板の裏面側の開口に対応する部分に透明部を構成する透明な合成樹脂を、開口以外の部分に基材を構成する不透明な合成樹脂を、それぞれ射出して二色射出成形を行い、突板と一体化することを特徴としている。
【0014】
この製造方法によれば、開口を有する突板を金型内にセットし、突板の裏面側の開口に対応する部分に透明な合成樹脂を、開口以外の部分、すなわち突板の裏面側の部分に不透明な合成樹脂を、射出して二色射出成形を行うことによって、複合木質化粧成形品が製造される。これにより、射出された透明な合成樹脂が、突板の開口に対応する部分に透明部として充填され、射出された不透明な合成樹脂が、突板の開口以外の部分に基材として充填される。このように、本発明の製造方法では、射出された透明な合成樹脂によって透明部が形成されるため、第1の発明の場合と異なり、透明部を透明部材としてあらかじめ準備する必要がまったく無くなり、したがって、製造コストをより一層、削減することができる。また、透明な合成樹脂による透明部、および不透明な合成樹脂による基材を、二色射出成形により同時に容易に一体成形することができる。さらに、基材が不透明であることで、透明部との明確なコントラストを確保することができる。
【0015】
また、射出成形の際の射出圧により、透明部を構成する合成樹脂が、突板の開口に隙間なく入り込むとともに、突板とともに金型の内面に押し付けられるので、突板と透明部の間に隙間および段差のないすっきりした美しい仕上がりを容易かつ確実に得ることができる。
【0018】
これらの場合、射出成形の後、表面の全体にわたってトップコート塗装を施すことが好ましい。
【0019】
この構成では、トップコート塗装により、複合木質化粧成形品の表面の平滑性が増すことで、より美しい仕上がりが得られるとともに、表面が保護されることで、耐久性を高めることができる。また、突板と透明部材または透明部に共通してトップコート塗膜層が形成されることで、表面全体にわたって一様な光沢が得られ、この点においてデザインの統一を図ることができる。さらに、突板と透明部材または透明部との間に段差や隙間がないことで、両者の境界部分でのトップコート塗膜層の割れを抑制することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を、図面を参照しながら、詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の第1実施形態による複合木質化粧成形品およびその製造方法を示している。この複合木質化粧成形品(以下「木質化粧成形品」という)1は、例えば自動車のメータパネルとして用いられるものであり、図1に示すように、その表面側には、突板4および透明部材5が複合して配置されている。また、図2に示すように、突板4の裏面には、基材6が一体成形され、突板4および透明部材5の表面には、それらの全体にわたって、トップコート塗装によりトップコート塗膜層2が形成されている。
【0021】
突板4は、木質化粧成形品1を化粧するものであり、メープルやウォルナットなどの無垢の木材を厚さ0.2mm程度に薄くスライスすることにより形成されている。また、突板4には、比較的大きな矩形の開口7が形成されており、この開口7に透明部材5が配置されている。
【0022】
透明部材5は、背後に設けられるメータ(図示せず)を見ることができるようにするためのものであり、例えば透明な合成樹脂やガラスの成形品で構成されている。合成樹脂の場合には、射出成形時の熱によって基材6と溶融接着し、かつ透明性を有するポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートなどが用いられる。また、透明部材5は、開口7に合致する平面形状を有するとともに、突板4と基材6の厚さの和に等しい厚さを有し、全体として直方体のブロック状に形成されている。
【0023】
基材6は、木質化粧成形品1に強度および剛性を付与するものであり、突板4よりもかなり厚く形成されている。また、基材6は、射出成形に適し、かつ強度、耐熱性や寸法安定性などに優れた合成樹脂、例えば、ABSやポリカーボネートなどで構成されており、本実施形態では特に、透明部材5との明確なコントラストを得るために、不透明な合成樹脂が用いられている。
【0024】
トップコート塗膜層2は、透明なポリエステル塗料などで構成されており、木質化粧成形品1の表面を保護するとともに、高級感を与えるべく光沢仕上げが施されている。
【0025】
次に、上記構成の木質化粧成形品1の製造方法を、図2を参照しながら説明する。まず、上述した材質および構成の突板4および透明部材5を準備するとともに、同図(a)に示すように、突板4の開口7に透明部材5をはめ込んだ状態で、所定の形状の金型(図示せず)内にセットする。次いで、突板4の裏面側に、溶融した合成樹脂を射出することにより、突板4の裏面および透明部材5の側面に基材6を一体化するとともに、全体を所定の形状に成形する(同図(b))。
次に、突板4および透明部材5の表面に、塗装機(図示せず)などを用いてトップコート塗装を行うことで、トップコート塗膜層2を形成し、木質化粧成形品1の製造を完了する(同図(c))。
【0026】
以上のように、本実施形態の木質化粧成形品1の製造方法によれば、突板4および透明部材5を基材6とともに金型内で一体成形するので、木質化粧部と透明部を別個に成形後、組付けしていた従来と異なり、組付け作業を省略でき、その分、製造コストを削減することができる。
【0027】
また、射出成形の際、突板4および透明部材5が、射出圧により金型の内面に押し付けられるので、両者4、5を段差のない面一の状態で容易に成形することができる。その結果、突板4と透明部材5の間に段差のないすっきりした美しい仕上がりを得ることができる。
【0028】
さらに、トップコート塗膜層2により、木質化粧成形品1の表面の平滑性が増すことで、より美しい仕上がりが得られるとともに、表面が保護されることで、耐久性を高めることができる。また、突板4および透明部材5に共通してトップコート塗膜層2が形成されるので、表面全体にわたって一様な光沢が得られ、この点においてデザインの統一を図ることができる。
【0029】
図3は、上記第1実施形態の変形例を示している。この製造方法は、透明部材5を第1実施形態よりも薄い板状に形成するとともに、射出成形を二色成形で行うことにより、突板4の裏面に不透明な合成樹脂から成る不透明基材部6aを、透明部材5の裏面にポリカーボネートやアクリルなどの透明な合成樹脂から成る透明基材部6bを、一体成形したものである。したがって、この変形例によれば、第1実施形態による上述した効果が同様に得られる。これに加えて、透明部材5が配置される部位の透明性を確保しながら、透明部材5を薄くすることで材料コストを削減できるとともに、木質化粧成形品1全体としての一体性を十分に確保することができる。
【0030】
図4は、第2実施形態による木質化粧成形品の製造方法を示している。この製造方法は、透明部材5を、第1実施形態よりも薄く且つ所定サイズだけ大きなサイズの板状に形成するとともに、突板4の開口7の周縁部に裏面側から当接するようにして重ね合わせ、接着などにより接合した状態で(同図(a))、金型内にセットし、射出成形を行うものである。他の構成は第1実施形態と同じである。この射出成形により、突板4の裏面および透明部材5の周縁部の側面および裏面に、基材6が一体化される(同図(b))。
【0031】
したがって、本実施形態によれば、突板4と透明部材5の間に隙間が生じるのを確実に防止でき、それにより、両者4、5の間に隙間のないすっきりした美しい仕上がりを得ることができる。また、このように隙間の発生が阻止される結果、第1実施形態と比較し、突板4および透明部材5に高い寸法精度は要求されなくなるので、高精度の成形機などは不要になる。また、透明部材5を薄くすることで材料コストを削減できる。以上によって、製造コストをさらに削減することができる。また、透明部材5の周縁部が、一体化された基材6で支持されるので、木質化粧成形品1全体としての一体性を十分に確保することができる。
【0032】
なお、この木質化粧成形品1では、透明部材5が突板4に対して奥側に若干、退避した状態になるので、本実施形態は、そのようなデザインを積極的に得たい場合や許容できる場合に、特に適している。また、トップコート塗装は、同図(c)に示すように、突板4および透明部材5の表面全体にわたって行ってもよく、または、図示しないが、突板4だけに行ってもよい。さらに、図5に示すように、第1実施形態の変形例と同様、二色成形により、突板4の裏面に不透明基材部6aを、透明部材5の裏面の残りの部分に透明基材部6bを、一体成形してもよい。これにより、透明部材5の部位の透明性を確保しながら、木質化粧成形品1全体の一体性をさらに高めることができる。
【0033】
図6は、本発明の第3実施形態による木質化粧成形品の製造方法を示している。この製造方法では、まず所定のサイズおよび形状の開口9を有する突板4を準備し(同図(a))、金型(図示せず)内にセットする。次いで、突板4の裏面側の、開口9に対応する部分にポリカーボネートやアクリルなどの透明な合成樹脂を、開口9以外の部分すなわち突板4の裏面側の部分に不透明な合成樹脂を、それぞれ射出して二色射出成形を行う。これにより、透明な合成樹脂が、突板4の開口9に対応する部分に透明部10aとして充填されるとともに、不透明な合成樹脂が、突板4の裏面側に基材10bとして充填され、突板4および透明部10aと一体化される(同図(b))。次いで、突板4および透明部10aの表面に、トップコート塗装を行うことでトップコート塗膜層2を形成し、木質化粧成形品1の製造を完了する(同図(c))。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、射出された透明な合成樹脂によって透明部10aが形成されるため、第1および第2実施形態と異なり、透明部を透明部材5としてあらかじめ準備する必要がまったく無くなり、したがって、製造コストをより一層、削減することができる。また、射出成形の際の射出圧により、透明部10aを構成する合成樹脂が、突板4の開口9に隙間なく入り込むとともに、突板4とともに金型の内面に押し付けられるので、突板4と透明部10aの間に隙間および段差のないすっきりした美しい仕上がりを容易かつ確実に得ることができる。また、基材10bが不透明であることで、透明部10aとの明確なコントラストを確保することができる。なお、基材10bを透明部10aと同じ透明な合成樹脂で構成することで、その射出成形を、二色成形によらずに、より単純に行うようにしてもよい。
【0035】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、突板4の裏面に基材6を直接、一体化しているが、突板4と基材6の間に、補強材などの適当な材料を付加してもよいことはもちろんである。また、実施形態は、本発明を自動車のメータパネルに適用した例であるが、本発明は、これに限らず、メータパネル以外の自動車の内装パネル、あるいは楽器の操作パネルなど、木質化粧部と透明部を複合して配置した任意の用途の複合木質化粧成形品に、広く適用することができる。その他、細部の構成を、本発明の趣旨の範囲内で適宜、変更することが可能である。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の複合木質化粧成形品の製造方法によれば、木質化粧部と透明部の間に段差や隙間のないすっきりした美しい仕上がりが得られるとともに、製造コストを削減することができるなどの効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態により製造された複合木質化粧成形品の斜視図である。
【図2】第1実施形態による複合木質化粧成形品の製造方法を示す模式断面図である。
【図3】第1実施形態の変形例により製造された複合木質化粧成形品を示す模式断面図である。
【図4】第2実施形態による複合木質化粧成形品の製造方法を示す模式断面図である。
【図5】第2実施形態の変形例により製造された複合木質化粧成形品を示す模式断面図である。
【図6】第3実施形態による複合木質化粧成形品の製造方法を示す模式断面図である。
【図7】 従来の複合木質化粧成形品の製造方法の一例を示す斜視図である。
【図8】図7の製造方法により製造された複合木質化粧成形品を示す模式断面図である。
【符号の説明】
1 複合木質化粧成形品
2 トップコート塗膜層
4 突板
5 透明部材
6 基材
9 開口
10a 透明部
10b 基材

Claims (3)

  1. 木材をスライスすることにより形成された突板、および透明な材料で構成された透明部材を、平面的に複合して配置した複合木質化粧成形品の製造方法であって、
    前記突板および前記透明部材を準備し、
    前記透明部材の縁部が前記突板に密着しかつ前記透明部材が前記突板の裏面側に突出するように、前記突板および前記透明部材を金型内に並べてセットし、
    当該金型内の前記突板の裏面側に、基材を構成する合成樹脂を射出して射出成形を行い、前記突板の裏面および前記透明部材の側面に密着した状態で、前記突板および前記透明部材と一体化することを特徴とする複合木質化粧成形品の製造方法。
  2. 木材をスライスすることにより形成されるとともに、表裏方向に貫通する所定のサイズおよび形状の開口を形成した突板、および前記開口を閉塞する透明部を、平面的に複合して配置した複合木質化粧成形品の製造方法であって、
    前記突板を準備し、
    前記突板を金型内にセットし、
    当該金型内の前記突板の裏面側の、前記開口に対応する部分に前記透明部を構成する透明な合成樹脂を、前記開口以外の部分に基材を構成する不透明な合成樹脂を、それぞれ射出して二色射出成形を行い、前記突板と一体化することを特徴とする複合木質化粧成形品の製造方法。
  3. 前記射出成形の後、表面の全体にわたってトップコート塗装を施すことを特徴とする、請求項1または2に記載の複合木質化粧成形品の製造方法。
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