JP4542874B2 - フルクトシルジペプチド又はその塩 - Google Patents

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本発明は皮膚の老化防止又は改善効果や、発毛抑制効果を有する皮膚外用剤に関する。
しわ、たるみ、はりの減少等の皮膚老化は、加齢、乾燥、酸化、太陽光(紫外線)等の因子により引き起こされ、皮膚真皮におけるコラーゲンやエラスチンの減少、ヒアルロン酸をはじめとするムコ多糖類の減少、紫外線による細胞の損傷等により認知される。しかし、しわ発生防止等については、例えば、コラーゲン配合化粧料では充分な効果は得られていない。また、紫外線との関連性から紫外線照射により生じた皮膚の老化について種々研究されているが、未だに紫外線吸収剤、紫外線防御剤に代わる化粧料は開発されていない。
また、美的外観から特に手足等における体毛は無い方が好ましいとする傾向が高まり、各種の体毛除去方法、例えば、シェーバー、抜毛器等を用いる機械的除去方法、脱毛剤を用いた体毛を毛根から抜去する方法、除毛剤を用いてその化学的作用により体毛を除去する方法等が利用されている。しかしながら、これらの体毛除去方法は、皮膚に対して物理的又は化学的刺激を伴い、かつ、体毛除去の持続性には限界がある。そこで、体毛除去処理の軽減化が望まれている。
一方、フルクトシルジペプチド類は、例えばFru−Ile−AspやFru−Val−Asp等がエンケファリナーゼ阻害活性を有し、鎮痛剤となり得ることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、しわ発生等の皮膚老化を防止したり、発毛抑制作用を示すフルクトシルジペプチド類はこれまでに報告されていない。
特許第2610646号公報
本発明は、しわの発生等の皮膚老化の防止又は改善効果や、発毛抑制効果等を有する皮膚外用剤を提供することを目的とする。
本発明者は特定のフルクトシルジペプチド又はその塩が優れたしわの予防改善効果、発毛抑制効果等を有し、皮膚老化防止や発毛抑制を目的とした皮膚外用剤として有用であることを見出した。
すなわち本発明は、下記一般式(1):
Fru−A−B−R (1)
〔式中、Fruはフルクトシル残基、Aはバリン残基又はイソロイシン残基を示し、Bはチロシン残基、フェニルアラニン残基、バリン残基又はイソロイシン残基を示し、Rはヒドロキシ基又はメトキシ基を示す。〕
で表されるフルクトシルジペプチド又はその塩を提供するものである。
また本発明は、フルクトシルジペプチド又はその塩を含有する皮膚外用剤、発毛抑制剤及びしわ予防改善剤を提供するものである。
本発明の皮膚外用剤によれば、しわ発生等の皮膚老化の防止又は改善を図ることができ、また発毛が抑制され、体毛除去処理が軽減化できる。
本発明の一般式(1)で表されるフルクトシルジペプチドにおいて、Fruはフルクトシル残基を示す。当該フルクトシル残基は、D体又はL体、α体又はβ体のいずれでもよく、フラノース型、ピラノース型のいずれでも良い。溶液中では、α体、β体、フラノース型、ピラノース型が相互に変換しあうので、それらの混合物となる。例えば、水中では、β−ピラノース型(67%)、β−フラノース型(12%)、α−フラノース型(15%)、α−ピラノース型(6%)の混合物となる。
Aはバリン残基(Val)又はイソロイシン残基(Ile)、Bはチロシン残基(Tyr)、フェニルアラニン残基(Phe)、バリン残基(Val)又はイソロイシン残基(Ile)の各アミノ酸残基を示すが、A−Bの好ましい組合せとしては、Val−Tyr、Ile−Tyr、Val−Phe、Ile−Val、Val−Ile等が挙げられる。
尚、各アミノ酸残基の立体配置は、D体、L体の何れでもよいが、L体であるのが好ましい。
上記フルクトシルジペプチドの塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アミン塩、アミノ酸塩、酸付加塩等が挙げられ、好ましくはアルカリ金属塩又はアミノ酸塩である。
また、上記フルクトシルジペプチド又はその塩は、水和物の形態であってもよい。
本発明のフルクトシルジペプチドのうち、特に好ましい化合物としては、次のようなものを例示できる。
Fru−Val−Tyr−OH(化合物A)、Fru−Ile−Tyr−OH(化合物B)、Fru−Val−Phe−OH(化合物C)、Fru−Val−Tyr−OCH3
(化合物D)、Fru−Ile−Val−OH(化合物E)、Fru−Val−Ile−OH(化合物F)。
本発明のフルクトシルジペプチド又はその塩は、ショウガ科(Zingiberaceae)のショ
ウガ(Zingiber officinale Roscoe)から抽出・分離できる他、化学合成によっても製造することもできる。
ショウガからの抽出・分離は、ショウガの根茎を抽出して得られる抽出物をクロマトグラフで分離精製することにより製造すればよい。抽出に用いる溶剤としては水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;プロピレングリコール、ブチレングリコール等の多価アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル等の鎖状及び環状エーテル類;ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素類;ヘキサン、シクロヘキサン、石油エーテル等の炭化水素類;トルエン等の芳香族炭化水素類;ポリエチレングリコール等のポリエーテル類;ピリジン類等が挙げられ、これらは混合物としても用いることができる。
分離精製に使用するクロマトグラフとしては、三菱化学製のHP−20等の吸着剤、ODS等の逆相クロマト、シリカゲル等の順相クロマト、ファルマシア社製のSephadex LH-20等のゲルろ過クロマトグラフ、陽イオンまたは陰イオン交換クロマト等が挙げられる。これらのクロマトグラフは、組み合わせても良く、単独で用いても良い。
また、本発明のフルクトシルジペプチドを合成により製造する場合は、対応するジペプチドとグルコースとを塩基性条件下、脱水縮合することにより製造することができる。
斯くして得られる本発明のフルクトシルジペプチド又はその塩は、後記実施例に示すように、紫外線の照射によるしわの発生抑制若しくはしわの改善効果(しわの外観を薄くする、しわを減少させる、消失させる、しわを目立たなくする、しわを消滅し得る等)を有し、また発毛抑制効果を有する。従って、本発明のフルクトシルジペプチド又はその塩は、化粧品、医薬部外品、医薬品等として使用可能な皮膚外用剤、発毛抑制、しわ予防改善剤(以下、これらを「皮膚外用剤等」という)とすることができる。
本発明のフルクトシルジペプチド又はその塩の、皮膚外用剤等への配合量は、0.000001〜0.01重量%(以下、単に「%」で示す)、特に0.0001〜0.001 %が好ましい。
また、本発明の皮膚外用剤等に、角化改善剤を配合することにより、さらにしわの発生等の皮膚の老化防止又は発毛抑制効果等を向上させうる。この角化改善剤としては、スフィンゴシン誘導体等が挙げられる。
本発明の皮膚外用剤等は、上記成分の他に、通常の化粧品、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種任意成分、例えば保湿剤、粉体、ゲル化剤、増粘剤、界面活性剤、乳化剤、抗炎症剤、抗酸化剤、pH調整剤、キレート剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料や、紫外線吸収剤、紫外線防御剤、コラーゲン等の既存の皮膚老化防止・改善剤、既存の発毛抑制剤等を適宜配合し、使用形態に応じて常法に従って製造することができる。
本発明の皮膚外用剤等は、その使用形態において、薬用皮膚外用剤と化粧料とを包含する。薬用皮膚外用剤としては、例えば薬効成分を含有する各種軟膏剤を挙げることができる。軟膏剤としては、油性基剤をベースとするもの、水中油型又は油中水型の乳化系基剤をベースとするもののいずれでもよい。油性基剤に特に制限はなく、例えば植物油、動物油、合成油、脂肪酸、及び天然、合成のグリセライド等が挙げられる。薬効成分に特に制限はなく、例えば鎮痛消炎剤、鎮痒剤、収斂剤、ホルモン剤等を必要に応じて適宜使用することができる。
また、化粧料としては、ローション状、乳液状、クリーム状、軟膏状、スティック状、有機溶媒や精製水等による溶液状、パック状、ゲル状、エアゾール状等の形態を挙げることができる。すなわち、化粧料としては、ローション、オイルエッセンス、O/W型又はW/O型のクリーム、パック、ファンデーション、皮膚洗浄剤、トニック、浴用剤、エアゾール等として使用することができる。
製造例1
ショウキョウを細切し、その100kgに20体積%エタノール1000Lを加え、室温で6時間攪拌,浸漬した。これを濾過し、ショウキョウ抽出液を得た。このショウキョウ抽出液を減圧濃縮し、懸濁液50.5kgを得た。この懸濁液をセライトろ過し、濃縮物50.0kgを得た。この濃縮物を、三菱化学社製ダイアイオンHP−20を50L用いて、水画分(250L)、10%EtOH画分(250L)、40%EtOH画分(250L)、EtOH画分(250L)に分画した。10%EtOH画分、40%EtOH画分をそれぞれ濃縮し、それぞれ562g(A1)、444g(B1)を得た。それぞれをエタノール25Lに懸濁させた後ろ過し、エタノール可溶物を得た。このエタノール可溶物を減圧濃縮し、それぞれ330g(A2)、315g(B2)を得た。(B2)3回に分け、105gをシリカゲル2.5kg:溶離液(酢酸エチル:メタノール:水:酢酸=9:1:0:0→3.5:1:0:0→14:4:1:0.1(B3)→9:5:1.2:0.12)で分画した。(B3)を濃縮し、75.1g(B4)を得た。(B4)をYMC社製ODS−A(60S−150)2.5kg,溶離液(0.1%TFA/5%アセトニトリル/H2O→0.1%TFA/10%アセトニトリル/H2O→0.1%TFA/15%アセトニトリル/H2O→0.1%TFA/20%アセトニトリル/H2O)で分画した。0.1%TFA/10%アセトニトリル/H2Oで溶出した画分を濃縮し、22
gを得た(B5)。0.1%TFA/15%アセトニトリル/H2Oで溶出した画分を濃
縮し、35gを得た(C5)。(B5)をアマシャムファルマシア社製Sephadex
LH−20(溶離液10%MeOH/H2O)で精製、濃縮し2.5g得た(B6)。
(B6)をアマシャムファルマシア社製sephadex LH−20(溶離液MeOH)で精製、濃縮し2.5g得た(B6)。(B6)を山善社製ウルトラパック水系ODS(300/50mmI.D.40mm)溶離液0.1%TFA/8%CH3CN/H2O→0.1%TFA/20%CH3CN/H2Oで分画し、11mgを得た(B7)。(B7)をYMC社製YMC−Pack Hydroshere C18 SH−343250/20mmI.D.5mm溶離液0.1%TFA/8%アセトニトリル/H2Oで精製し、
化合物B(Fru−Ile−Tyr−OH)6mgを得た。(C)を(B5)→(B6)→(B7)→Bと同様に精製し、化合物C(Fru−Val−Phe−OH)5mgを得た。(A2)をB、Cと同様に精製し、化合物A(Fru−Val−Tyr−OH)30mg、化合物D(Fru−Val−Tyr−OCH3)13mg、化合物E(Fru−I
le−Val−OH)4mg、化合物F(Fru−Val−Ile−OH)5mgをそれぞれ得た。
製造例2
(1)化合物Aの合成
L−バリル−L−チロシン(国産化学製)1.01g(3.6mmol)、グルコース9.08g(50mmol)、炭酸水素ナトリウム60mg(0.7mmol)、メタノール350mLを1Lナスフラスコに入れ、2時間加熱環流した。溶媒を留去後、エタノール100mLで共沸脱水した。乾固した固体に、メタノール350mLを加え溶解させ、さらに2時間加熱環流した。溶媒を留去後、水1000mLに溶解した。この溶液を、三菱化学社製ダイアイオンHP−20を500mL用いて、水画分(5000mL)、20%エタノール画分(1000mL)に分画した。20%エタノール画分を濃縮し、化合物A(0.72g)を得た。
(2)化合物Bの合成
化合物AのL−バリル−L−チロシンをL−イソロイシル−L−チロシン(国産化学製)に代え同様に合成を行ない、化合物B(0.36g)を得た。
(3)化合物Cの合成
化合物AのL−バリル−L−チロシンをL−バリル−L−フェニルアラニン(国産化学製)に代え同様に合成を行ない、化合物C(0.62g)を得た。
(4)化合物Eの合成
化合物AのL−バリル−L−チロシンをL−イソロイシル−L−バリル(国産化学製)に代え同様に合成を行ない、化合物E(1.10g)を得た。
(5)化合物Fの合成
化合物AのL−バリル−L−チロシンをL−バリル−L−イソロイシル(国産化学製)に代え同様に合成を行ない、化合物F(0.25g)を得た。
(6)化合物Dの合成
化合物A20mgをメタノール2mLに溶解し、トリメチルシリルジアゾメタン(東京化成工業製)0.3mLを加え室温下攪拌した。溶媒を留去後、YMC社製YMC−Pack Hydroshere C18 SH−343 250/20mmI.D.5mm溶離液0.1%TFA/8%アセトニトリル/H2Oで精製し、化合物D(13mg)を
得た。
Figure 0004542874
試験例1 マウスによる発毛抑制試験
生後6週齢のC3Hマウス1群5匹の背部毛を、電気バリカン及び電気シェーバーを用い、皮膚を傷つけないように2×4cm2にわたり剃毛した。剃毛部位に試料を1日2回100μLずつ4週間にわたり塗布した。試料は、被験物質を溶媒(80%エタノール)に溶解して表2に示す濃度に調製した。対照群には溶媒のみを塗布した。3週間後、再生毛を観察するために、剃毛部分を一定倍率で撮影し、画像解析装置を用いて再生毛面積比(再生毛面積/剃毛面積)を対照群と比較した。発毛抑制率は、対象群の再生毛面積比を100としたときの相対値(%)で示した。結果を表2に併せて示す。
Figure 0004542874
表2より、本発明のフルクトシルジペプチドには、優れた発毛抑制効果が認められた。
試験例2 マウスによるしわの予防改善試験
Hr-1(Skh-1)ヘアレスマウスとICRマウスより自家交配により作製したヘアレスマウス(Hr-1/ICR) を用い、その背中前面にUVBを照射して、6.5週後より、UVB照射を継続しながらサンプルを塗布した。サンプルは、化合物A(100−1ppm、3 dose)、化合物E及び化合物F(1ppm)を用い、1日2回(午前中UVB照射したその直後及び午後の2回)、各マウスに1回100μL、6週間塗布した(N数;コントロール:9匹、化合物A:各7匹、化合物E,化合物F:各6匹)。熟練した研究者1名がしわの状態を観察し、以下に示すしわスコア評価法(文献:Bissett DL, Hannon DP, Orr TV.: An animal model of solar-aged skin: histological, physical, and visible changes in UV-irradiated hairless mouse skin. Photochem. Photobiol, 1987; 46: 367-378. Tramposch KM, Nair X, Gendimenico GJ, Tetrault GB, Chen S, Kiss I. Whiting G, Bonney RJ. The pharmacology of a novel topical retinoid, BMY 30123: comparison with tretinoin. J Pharm Pharmacol. 1992; 44: 379-386.)に準じた方法によりしわスコアを求めた。結果を表3に示す。
<しわスコア>
スコア1:しわが無い
スコア2:わずかにある
スコア3:しわがある
スコア4:はっきりとしたしわがある
スコア5:かなり深いしわがある
Figure 0004542874
表3より、本発明のフルクトシルジペプチドには、有意なしわ改善効果が認められた。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1):
    Fru−A−B−R (1)
    〔式中、Fruはフルクトシル残基を示し、A−BはVal−Tyr、Ile−Tyr又はVal−Pheを示し、Rはヒドロキシ基又はメトキシ基を示す。〕
    で表されるフルクトシルジペプチド又はその塩を含有する発毛抑制剤。
  2. 下記一般式(1):
    Fru−A−B−R (1)
    〔式中、Fruはフルクトシル残基を示し、A−BはVal−Tyr、Ile−Val又はVal−Ileを示し、Rはヒドロキシ基又はメトキシ基を示す。〕
    で表されるフルクトシルジペプチド又はその塩を含有するしわ予防改善剤。
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