JPH06256387A - 新規なペプチド、その製法およびそれを有効成分とする 血圧降下剤 - Google Patents

新規なペプチド、その製法およびそれを有効成分とする 血圧降下剤

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JPH06256387A
JPH06256387A JP3240152A JP24015291A JPH06256387A JP H06256387 A JPH06256387 A JP H06256387A JP 3240152 A JP3240152 A JP 3240152A JP 24015291 A JP24015291 A JP 24015291A JP H06256387 A JPH06256387 A JP H06256387A
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peptide
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Kunio Suetsuna
邦男 末綱
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ニンニク抽出液から新規な血圧降下作用を
有するペプチドを提供する。 【構成】 ニンニクホモジネイトから、アンジオテン
シン変換酵素阻害作用を有する新規な16種のペプチド
は、(1)Ser−Tyr(2)His−Tyr(3)
Gly−Tyr(4)Val−Tyr(5)Phe−T
yr−Gly(6)Asn−Tyr(7)Val−Gl
u−Tyr(8)Phe−Gly−G1y(9)Tyr
−Val(10)Phe−Val(11)Ser−Ph
e(12)His−Phe(13)Gly−Phe(1
4)Val−Phe(15)Asn−Phe(16)P
he−Asn−Proであり、血圧降下作用を有し、毒
性も極めて低い。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なペプチドを有効
成分とする血圧降下剤およびその新規なペプチドの製法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高血圧は、病因的に血圧上昇の原因が明
らかなもの(病候性高血圧)と不明なもの(本態性高血
圧)とに大別されている。病候性高血圧は原因となる疾
患を治癒させることで高血圧を治癒させることができる
が、本態性高血圧では原因に対する直接的な治療法は困
難である。従来、レニン−アンジオテンシン系(以下、
R・A系と略記する。)は、本態性高血圧の重要な要因
の一つであると考えられており、ここ10年来、R.A
系で中心的な役割を果たしているアンジオテンシン変換
酵素(以下、ACEと略記する。)の活性を阻害するこ
とによってR・A系を調節して本態性高血圧を調節する
試みが行われてきた。そのようなACE活性阻害を有す
る物質としては、合成化合物の場合にはL−プロリン誘
導体[M.A.Ondetti,B.Rubin et
al;Science,196,441(197
7)]やそれをベースにした化合物が知られており、天
然物由来の物質の場合には蛇毒由来のブラディキニン増
強因子(C末端がPro)[S.H.Ferreia,
D.C.Bartelt et al;Biochem
istry,9,3583(1970)]、 ゼラチン
のコラゲナーゼ消化物由来の6種類のペプチド(C末端
がAla.Hyp)[G.Oshima,H.Shim
abukuro et al;Biochim.Bio
phs,Acta,566,128(1979)]、牛
カゼインのトリプシン消化物由来のペプチド(C末端が
Gly−Lys)[S.Maruyama,H.Suz
uki;Agric.Biol.Chem,46,13
93(1982)]などが知られている。食品の場合に
は鈴木らが大豆、茶類、貝類、果実類などでACE活性
阻害を認めている[鈴木健夫、石川宣子ら;農化,5
7,1143(1983)]。しかし、これまでにユリ
科植物にACE活性阻害物質があることは、知られてな
い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、新規
なペプチド、その製法およびそれを有効成分とする血圧
降下剤を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記の課題を
解決するために鋭意研究した結果、ユリ科植物から得ら
れた本発明の新規なペプチドが、血圧降下作用を有する
ことを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発
明は、 で示されるL体のアミノ酸配列を有する新規な16種の
ペプチド。
【0005】(2)ユリ科植物を粉砕して粥状とし、そ
の濾過成分中の半透膜を通過した成分を順次、強酸性陽
イオン交換樹脂、ゲル濾過、逆相高速液体クロマトグラ
フィーによって分画し、その処理毎に得られた分画から
アンジオテンシン変換酵素阻害活性を有する成分を含有
する分画を得ることを特徴とする前記の新規な16種の
ペプチドの製法。 (3)前記の新規なペプチドを有効成分とする血圧降下
剤 に関するものである。以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の新規なペプチドは、 (以上16種、ジペプチドおよびトリペプチドの式中の
各記号はペプチド化学におけるアミノ酸配列の各アミノ
酸単位を示す。)で示されるL体のアミノ酸配列を有す
る新規なペプチドであり、この常温における性状は白色
粉末である。
【0006】前記の新規なペプチドの製法としては、そ
のペプチドを化学的に合成する方法またはユリ科植物か
ら分離、精製する方法を挙げることができる。本発明の
新規なペプチドを化学的に合成する場合には、液相法ま
たは固相法などの通常の合成方法によって行うことがで
きるが、好ましくは、固相法によってポリマー性の固相
支持体へ前記ペプチドのC末端側(カルボキシル末端
側)からそのアミノ酸残基に対応したL体のアミノ酸を
順次ペプチド結合によって結合して行くのが良い。そし
て、そのようにして得られた合成ペプチドは、トリフル
オロメタンスルホン酸、フッ化水素などを用いてポリマ
ー性の固相支持体から切断した後、アミノ酸側鎖の保護
基を除去し、逆相系のカラムを用いた高速液体クロマト
グラフイー(以下、HPLCと略す。)などを用いた通
常の方法で精製することができる。
【0007】本発明の新規なペプチドを、ユリ科植物か
ら分離、精製する場合には、その新規なペプチドを含有
している部分(例えば、葉、茎、根、種子、輪茎など)
を取り出して、ホモジナイザーを用いて適当な溶媒(例
えば、水、トリス−塩酸緩衝液、リン酸緩衝液などの中
性の緩衝液など。)中で十分に粥状とし、その得られた
濾液をセロファンなどの半透膜を用いて適当な溶媒(例
えば、水、トリス−塩酸緩衝液、リン酸緩衝液などの中
性の緩衝液など。)中で十分に透析する。その濾液中の
成分で半透膜を通過した成分を減圧濃縮した液に冷アル
コール(例えば、冷メタノールなど。)を添加後、冷室
に30分〜3時間以上放置して沈澱を生成せしめる。得
られた沈澱は加水して溶液とし強酸性陽イオン交換樹脂
(例えば、ダウケミカル社製のDowex 50Wな
ど)にかけ、その吸着溶出分画からアンジオテンシン変
換酵素(以下、ACEと略す。)阻害活性を有する成分
を含有する分画を得、その得られたACE阻害活性分画
をゲル濾過(例えば、ファルマシア製の Sepha−
dex G−25など)によって分画し、その得られA
CE阻害活性分画をさらにHPLC(逆相高速液体クロ
マトグラフィー)によって分画することによって行うこ
とができる。
【0008】本発明の新規なペプチドの製法において用
いるユリ科植物としては、本発明の目的を達成できる限
りいかなるユリ科植物を用いても良いが、好ましくはニ
ンニクを用いるのが良い。以上のようにして得られた本
発明の新規なペプチドは、静脈内へ繰り返し投与しても
抗体産生を惹起せず、また、アナフイラキシーショック
を起こさせない。また、本発明の新規なペプチドはL−
アミノ酸のみの配列構造からなり、その分子サイズから
みて、投与後、生体内のプロテアーゼにより分解される
ことなく、すみやかに腸管吸収され、その血圧降下作用
を発揮するため毒性は極めて低く、安全性は極めて高い
(LD5θ>5000kg/kg;ラット経口投与)。
本発明に係る新規なペプチドは、通常用いられる賦形剤
等の添加物を用いて注射剤、錠剤、カプセル剤、顆粒
剤、散剤等に調整することができる。投与方法として
は、通常は、ACEを有している哺乳類(例えば、ヒ
ト、イヌ、ラット等)に注射すること、あるいは経口投
与することがあげられる。投与量は、例えば動物体重1
kg当りこのペプチドを0.01〜10mgの量であ
る。投与回数は、通常1日1〜4回程度であるが、投与
経路によって、適宜、調整することができる。本発明に
係る新規なペプチドは優れたアンジオテンシン変換酵素
阻害作用を有し、血圧降下作用、ブラジキニン不活化抑
制作用を示す。したがって、本態性高血圧、腎性高血
圧、副腎性高血圧等の高血圧症の予防、治療剤、これら
の疾患の診断剤や各種の病態において用いられる血圧降
下剤として有用であり、更にうつ血性心不全に対する臓
器循環の正常化と長期予後の改善(延命効果)作用を有
し、心不全の治療剤として有用である。
【実施例】以下に実施例として、製造例および試験例を
記載し、本発明を更に詳細に説明する。
【0009】製造例1 [新規なペプチドのニンニクからの製造]外皮を除去し
たユリ科植物に属するニンニク200gに脱イオン水を
加え、ホモジナザー(ナショナル電気ミキサーMX 1
50S型)を用いて、室温下で粉砕して粥状に、ホモジ
ネイト1Lを得た。これを濾紙(東洋濾紙No.2)を
用いて吸引濾過し得られたこの濾液500mlを透析膜
(分子量が1万以下の物質を透過するアミコン製のYM
10型を使用。)を用いて限外濾過した。この透析膜を
透過して得られた通過液400mlに冷メタノール1.
6Lを加え、冷室に60分間放置して沈澱を生ぜしめ
た。生じた沈澱物をグラスフイルター(3G−1)によ
る吸引濾過により得たのち、水を加えて溶液10mlと
した。このメタノール沈澱物を溶解した溶液3mlを、
予め脱イオン水で緩衝化したSephadex G−2
5カラム(φ2.5x150cm)に負荷し、流速30
ml/hr、各分画量8.6mlでゲル濾過を行った。
その結果は、図1に示すとおりである。さらに上記メタ
ノール沈澱物を溶解した溶液10mlをDowex 5
0Wx4[H]カラム(φ2.5x30cm)に加え
た。そのカラムを脱イオン水で十分洗浄した後、2N水
酸化アンモニウム液1Lを用いて溶出した。減圧濃縮に
よりアンモニアを除去し、濃縮液3mlを得た。この濃
縮液3mlを予め脱イオン水で緩衝化したSephad
ex G−25カラム(φ2.5x150cm)に負荷
し、流速30ml/hr、各分画量8.6mlでゲル濾
過を行った。その結果は図2に示すとおりである。上記
クロマトグラフ中、分画番号38〜41のACE阻害活
性画分を集めて凍結乾燥して精製ペプチド粉末1.8g
を得た。この精製ペプチド粉末8mgを20μlの脱イ
オン水に溶解した後、HPLCを行った。カラムとして
は野村化学(株)製Develosil ODS−5
(4.5mm IDx25cm L)を使用し、移動相
としては0.05%トリフルオロ酢酸(以下、TFAと
略記する。)から25%アセトニトリル/0.05%T
FAの濃度勾配法を行い、流速1.0ml/min,検
出波長220nmでクロマトグラフィーを行い、ACE
阻害作用を有するペプチドを得た。その結果は図3に示
すとおりであり、16種のペプチドの溶出時間は表1の
とおりである。
【0010】このようにして得られたACE阻害作用を
有するペプチドのアミノ酸配列は、アプライドバイオシ
ステム社製のプロテインシークエンサー447A型を用
いて決定された。その結果、16種のペプチドはそれぞ
れ、 で示されるL体のアミノ酸残基からなる配列を有するペ
プチドであることが確認された。新規16種のペプチド
各々を、ウオターズ社製のピコタグアミノ酸分析計によ
り分析した結果、アミノ酸組成が前記式で示したアミノ
酸配列構造を有するペプチドであることが確認された。
さらに、新規16種のペプチドをマススペクトルにより
分析した結果、アミノ酸配列およびアミノ酸組成が前記
式で示したアミノ酸配列構造を有するペプチドであるこ
とが確認された。精製して得られた本発明に係るニンニ
クからのペプチド16種より成る分画は、以下に示す試
験によつて薬理効果が確認された。
【0011】試験例1 [ACE阻害活性測定法]ACE(シグマ社製、酵素番
号EC3.4.15.1)2.5mU,合成基質Hip
puryl−L−his−tidyl−L−leuci
ne(ペプチド研究所製)12.5mMを用いLieb
ermanの測定法を改良した山本等の方法(日胸疾会
誌,18,297−302(1989))に準じて測定
した。すなわち、生成した馬尿酸を酢酸エチルにて抽出
し、225nmの吸光度で測定した。 被検液での吸光
度をEs,被検液の代わりに緩衝液を加えた時の値をE
c,予め反応停止液を加えて反応させた時の値をEbと
して次式から阻害率を求めた。 阻害率(%)=(Ec−Es)/(Ec−Eb)×10
0 ACE阻害剤の阻害活性IC5θ値は、ACEの酵素活
性を50%(阻害率)阻害するために必要な試料の濃度
(モル数M)で示した。本発明に係るニンニクからの新
規16種のペプチドの牛肺血清ACEに対する阻害活性
(IC5θ)表1に示すとおりである。
【0012】試験例2 [新規なペプチドのラットへ投与時の降圧の効果] I.実験材料 前記製造例1で得られた精製ペプチド粉末。すなわち、
ニンニク抽出物からのジおよびトリペプチド16種より
成る分画(図2のクロマトグラフ中、分画番号38〜4
1)を用いた。 II. 実験方法 実験動物は日本チャールズ・リバー(株)より15週令
雄性高血圧自然発症ラット(以下SHRと略記する。)
を購入し、1週間の予備飼育後、収縮期血圧が160m
mHg以上(体重280〜330g)の動物を用いた。
血圧は非観血的尾動脈血圧測定装置(株)理研開発製,
PS−100型)を用いtail−cuff法により、
投与前、投与後1時間,2時間、3時間、4時間、5時
間、6時間のSHR尾動脈の収縮期血圧、平均血圧、お
よび脈拍数の測定を測定時間毎に5回おこない、得られ
た測定値の最高値と最低値を棄却し、3回の平均値をも
って各時間の測定値とした。それぞれの変動値は、投与
前の平均値を0時間の測定値とし、各時間の平均値より
0時間の平均値を減じその差を求めて算出した。ニンニ
ク抽出物10mg/kgをSHRに静脈投与した時の、
また、ニンニク抽出物10mg/kg,50mg/kg
ならびに対照としてカプトリル細粒50mg/kg,1
00mg/kgをSHRに強制経口投与した時の血圧値
および脈拍数への作用についての結果は、表2,図4、
図5および図6に示すとおりである。以上の試験の結
果、本発明に係るニンニクからのペプチド16種より成
る分画は、ACE阻害活性を有し、in vivoにお
いても有意な血圧降下作用を示すことが確認された。し
たがって、本発明に係るニンニクからのペプチド16種
は高血圧症の治療または予防薬として有用である。な
お、本発明に係るニンニクからのペプチド16種は、構
造的にそのアミノ酸配列を部分構造とするペプチドにお
いて、構造中に採用することもできる。
【0013】
【表1】 ニンニク抽出物からのペプチド16種のHPLCにおけ
る溶出時間、アミノ酸配列、および阻害活性。
【0014】
【表2】 ACE阻害薬投与における降圧度と脈拍数。
【0015】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るニンニク抽出物からのペプチド
の、製造例1におけるメタノール分画沈澱物のSeph
adex G−25カラムクロマトグラフィーによるA
CE阻害ペプチドの分離精製の結果を示す図である。
【図2】本発明に係るニンニク抽出物からのペプチド
の、製造例1におけるDowex50W(H)カラム
クロマトグラフィーでの溶出画分のSephadex
G−25カラムクロマトグラフイーによるACE阻害ペ
プチドの分離精製の結果を示す図である。
【図3】本発明に係るニンニク抽出物からのペプチド
の、製造例1における逆相HPLCによるACE阻害ペ
プチドの分離精製の結果を示す図である。
【図4、図5、図6】それぞれ、本発明に係るニンニク
抽出物からのペプチドを、それぞれSHRに投与した場
合の血圧値(収縮期血圧、平均血圧)および脈拍数の経
時的変化を示す図である。

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を
    有する新規な16種類のペプチド。
  2. 【請求項2】 ユリ科植物を粉砕して粥状とし、その濾
    液成分中の半透膜を通過した成分を濃縮した後、アルコ
    ール分画し、順次、強酸性陽イオン交換樹脂、ゲル濾
    過、逆相高速液体クロマトグラフィーによって分画し、
    その処理毎に得られた分画からアンジオテンシン変換酵
    素阻害活性を有する成分を含有する分画を得ることを特
    徴とする請求項1の新規な16種のペプチドの製法。
  3. 【請求項3】 請求項1の新規な16種のペプチドから
    選ばれた1種以上のペプチドを有効成分とする血圧降下
    剤。
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