JP3108920B1 - 新規なテトラペプチドおよびアンジオテンシン変換酵素阻害剤 - Google Patents
新規なテトラペプチドおよびアンジオテンシン変換酵素阻害剤Info
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Abstract
テンシン変換酵素阻害作用をを有する新規なテトラペプ
チドを提供する。 【構成】ワカメを蛋白質分解酵素等で処理し、新規なア
ンジオテンシン変換酵素阻害作用を有する4種類のテト
ラペプチドは(1)Tyr−Asn−Lys−Leu、
(2)Tyr−Lys−Tyr−Tyr、(3)Lys
−Phe−Tyr−Gly、(4)Ala−Ile−T
yr−Lysであり、生体内での血圧降下作用を有し、
毒性も極めて低い。
Description
有する下記アミノ酸の配列のペプチド構造を有するテト
ラペプチドならびにそのペプチドを有効成分とするアン
ジオテンシン変換酵素阻害剤に関する。 Tyr−Asn−Lys−Leu Tyr−Lys−Tyr−Tyr Ala−Ile−Tyr−Lys (式中、アミノ酸残基を表す各記号は、アミノ酸化学に
おいて慣用の表示法によるものである。)
−アンジオテンシン系が生体の水・電解質及び血液の調
節に重要な役割を果たしていることはよく知られてい
る。このレニン−アンジオテンシン系にはアンジオテン
シン変換酵素(以下ACEと略記する。)が存在し、ア
ンジオテンシンIはACEによってアンジオテンシンI
Iに変換される。アンジオテンシンIIは強力な昇圧物
質で、血管、副腎皮質のみならず中枢神経系ならびに末
梢神経系に働いて血圧上昇を促す。又、ACEは生体内
降圧物質であるブラジキニンを分解し、不活性化する作
用を有し、昇圧系に関与している。従って、ACEの活
性を阻害することによって血圧を降下させることが可能
であり、又、そのことは臨床的に高血圧の予防、治療に
有効であると考えられている。この目的のためプロリン
誘導体であるカプトリルが合成され、その降圧作用が確
認されて以来、カプトリルの構造研究に基づく種々のA
CE阻害物質の合成研究が盛んに行われ、最近ではマレ
イン酸エナラブリルやアラセブリル等の物質が、次々と
臨床の場に供されている。現在、ACE阻害剤は本態性
高血圧症、病候性高血圧症を問わず、又、軽症、重症を
問わず、幅広く用いられ、高血圧症の第一次選択の治療
薬中に加えられ、多く優れた点を有することが見出され
ている。一方、ACE阻害物質の作用機序としては、ア
ンジオテンシンIIの産生抑制によるアルドステロンや
バソプレッシンの分泌抑制、又、腎動脈収縮の解除によ
るナトリウムや水の排泄促進が考えられている。更に、
ACE阻害物質については、それがカリクレン−キニン
系の不活性化を抑制し、プロスタグランジン系を賦活さ
せることにより末梢血管拡張やナトリウム及び水の排泄
を更に促進させると考えられており、心不全の悪循環を
断つ上で合目的な治療薬として期待されている。ところ
で、ACE阻害物質としては、上記の合成品の他に天然
物又は天然物由来の物質として蛇毒由来のブラディキニ
ン増強因子(C末端がPro)[S.H.Ferrei
a et al:Biochemistry,9,35
83(1970)]、ゼラチンのコラゲナーゼ消化物由
来の6種類のペプチド(いずれもC末端がAla−Hy
p)[G.Oshimaet al:Biochim.
Biophs.Acta,566,128(197
9)]、牛カゼインのトリプシン消化物由来のペプチド
(C末端がGly−Lys)[S.Maruyama
et al.:Agric.Biol.Chem.,4
6,1393(1983)]等に始まり本発明者等のイ
ワシ筋肉由来の5種のヘクサペウチド(いずれもC末端
から2番目又は3番目がPro、N末端がLeu)[特
許第2046483号]、海苔由来のテトラペプチド
(N末端がPro)[特許第2678180号]が挙げ
られ、いずれもACE阻害剤となり得ることが開示され
ている。更に、合成法により得た鎖長の短いジ、トリペ
プチド[特開平6−87886号][特開平6−165
68号]についての提案は行われているが、規則性を持
ったアミノ酸配列を有する鎖長の長いジ、トリペプチド
以上のペプチドのACE阻害作用並びに経口投与による
降圧効果(薬理効果)は不明であり、発見されてから長
時間経過しているが、未だ医薬品としての開発が進んで
いるとの報告はない。食品の場合には鈴木らが大豆、茶
類、貝類、果実類などでACE阻害活性を認めている
[鈴木健夫、石川宣子ら;農化,57巻,1143頁
(1983年)]が、これまでに健康食品として広く利
用されているワカメにACE阻害物質があることは知ら
れていない。
目(Laminariales)の海藻種に属するワカ
メの蛋白質分解酵素の分解液から薬理作用を有する物質
を検索し、新規な3種類のテトラペプチドが強いアンジ
オテンシン変換酵素阻害作用を有することを見出した。
そして、これら3種類のテトラペプチドを医薬として実
用化するための研究を鋭意行った。その結果、この3種
類のテトラペプチドが血圧降下作用を有し、天然物由来
のアンジオテンシン変換酵素阻害剤としての有用性を見
出した。本発明は係る知見に基づくものである。本発明
に係る新規なペプチドは、次式(1)、(2)及び
(3) (1)Tyr−Asn−Lys−Leu (2)Tyr−Lys−Tyr−Tyr (3)Ala−Ile−Tyr−Lys の式で示されるL体のアミノ酸の配列を有する新規なテ
トラペプチドであり、常温における性状は白色の粉末で
ある。
に合成する方法またはワカメの蛋白質分解酵素の分解液
から分離精製する方法を挙げることができる。本発明に
係る新規なペプチドを化学的に合成する場合には、液相
法または固相法等の通常のペプチド合成方法によって行
うことができるが、好ましくは、固相法によってポリマ
ー性の固相支持体へ前記ペプチドのC末端(カルボキシ
ル末端側)からそのアミノ酸残基に対応したL体のアミ
ノ酸を順次ペプチド結合によって結合して行くのが良
い。そして、そのようにして得られた合成ペプチドは、
トリフルオロメタンスルホン酸、フッ化水素等を用いて
ポロマー性の固相支持体から切断した後、アミノ酸側鎖
の保護基を除去し、逆相系のカラムを用いた高速液体ク
ロマトグラフィー(以下、HPLCと略記する。)など
を用いた通常の方法で精製することができる。
チドは、ワカメの蛋白質分解酵素の分解液から分離精製
することができるが、その場合には、例えば以下のよう
にして行うことができる。上記の新規なペプチドを含有
しているワカメのタンパク質部分を用いて加水分解す
る。加水分解は常法に従って行う。例えば、ペプシン等
のタンパク質分解酵素で加水分解する場合は、ワカメを
必要とあれば更に加水分解した後、酵素の至適温度まで
加温しpHを至適値に調整し酵素を加えてインキュベー
トする。次いで必要に応じ中和した後、酵素を失活させ
て加水分解液を得る。その加水分解物を濾紙及び/又は
セライト等を用いて濾過することによって不溶性成分を
除去し、その得られた濾液をセロファンなどの半透膜を
用いて適当な溶媒(例えば、水、トリス−塩酸緩衝液、
リン酸緩衝液の中性の緩衝液等)中で十分に透析し、そ
の濾液中の成分で半透膜を通過した成分を含む溶液を強
酸性陽イオン交換樹脂(例えば、ダウケミカル社製のD
owex 50W等)にかけ、その吸着溶出分画からア
ンジオテンシン変換酵素(以下、ACEと略記する。)
阻害活性を有する成分を含有する分画を得、得られたA
CE阻害活性分画をゲル濾過(例えば、ファルマシア社
製のSephadex G−25等)によって分画し、
得られたACE阻害活性分画を陽イオン交換ゲル濾過
(例えば、ファルマシア社製のSP−Sephadex
C−25等)によって分画し、その得られたACE阻
害活性画分を更に逆相HPLCによって分画する。
て用いる褐藻類としては、本発明の目的を達成できる限
りいかなる褐藻類を用いても良いが、好ましくはワカメ
を用いるのが良い。以上のようにして得られた本発明に
係る新規なペプチドは、静脈内へ繰り返し投与を行った
場合、抗体産生を惹起せず、アナフィラキシーショック
を起こさせない。又、本発明に係る新規なペプチドはL
−アミノ酸のみの配列構造からなり、投与後、生体内の
プロテアーゼにより徐々に分解される為、毒性は極めて
低く、安全性は極めて高い(LD50>5000mg/
kg;ラット経口投与)。本発明に係る新規なペプチド
は、通常用いられる賦形剤等の添加物を用いて注射剤、
錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤等に調製することがで
きる。投与方法としては、通常は、ACEを有している
哺乳類(例えば、ヒト、イヌ、ラット等)に注射するこ
と、あるいは経口投与することがあげられる。投与量
は、例えば、動物体1kg当りこのペプチドを0.01
〜10mgの量である。投与回数は、通常1日1〜4回
程度であるが、投与経路によって、適宜、調製すること
ができる。
剤、結合剤、潤沢剤の種類は、特に限定されず、通常の
注射剤、散剤、顆粒剤、錠剤あるいはカプセル剤に用い
られるものを使用することができる。錠剤、カプセル
剤、顆粒剤、散剤に用いる添加物としては、下記のもの
をあげることができる。賦形剤としては、結晶セルロー
ス等の糖類、マンニトール等の糖アルコール類、デンプ
ン類、無水リン酸カルシウム等;結合剤としては澱粉
類、ヒドロキシプロピルメチルセルローズ等;崩壊剤と
してはカルボキシメチルセルロース及びそのカリウム塩
類;潤滑剤としてはステアリン酸及びその塩類、タル
ク、ワックス類を挙げることができる。又、製剤の調整
にあたっては必要に応じメントール、クエン酸及びその
塩類、香料等の矯臭剤を用いることができる。注射用の
無菌組成物は、常法により、本発明に係る新規なペプチ
ドを、注射用水、生理食塩水及びキシリトールやマンニ
トール等の糖アルコール注射液、プロピレングリコール
やポリエチレングリコール等のグリコールに溶解または
懸濁させて注射剤とすることができる。この際、緩衝
液、防腐剤、酸化防止剤等を必要に応じて添加すること
ができる。本発明に係る新規なペプチドを含有する製剤
は凍結乾燥品又は乾燥粉末の形とし、用時、通常の溶解
剤、例えば水又は生理食塩液に溶解して用いることもで
きる。
ジオテンシン変換酵素阻害作用を有し、血圧降下作用、
ブラジキニン不活化抑制作用を示す。従って、本態性高
血圧、腎性高血圧、副腎性高血圧等の高血圧症の予防、
治療剤、これらうっ血性心不全に対する臓器循環の正常
化と長期予後の改善(延命効果)作用を有し、心不全の
治療剤として有用である。
記載し、本発明を更に詳細に説明する。 製造例1 ワカメ粉末23.6gに脱イオン水708mιを加えホ
モジナイズしたワカメホモジネイトを用いた。透析チュ
ーブ(内径36インチ,和光純薬工業社製)に詰め、流
水に対して3日間透析を行い透析内液を得た。この内液
を1規定の塩酸にてpHを2.0に調整し、ペプシン
(メルク社製、酵素番号EC3.4.23.1)708
mgを添加し、45℃で5時間撹拌しながら加水分解を
行った。分解反応液を直ちに限外濾過膜(アミコン社
製、YM10型;分画分子量約1万)に通過させた通過
液を、Dowex50W×4[H+]カラム(φ4.0
×55cm)に加えた。そのカラムを脱イオン水で十分
洗滌した後、2規定の水酸化アンモニウム液2ιを用い
て溶出した。減圧濃縮によりアンモニアを除去し濃縮液
を予め脱イオン水で緩衝化したSephadexG−2
5(φ1.6×113cm)に負荷し、流速12mι/
hr、各分画量5.7mιでゲル濾過を行った。その結
果は図1のとおりである。ゲル濾過を繰り返して大量分
取したACE阻害活性の高い画分を集め凍結乾燥してペ
プチド粉末とした。このペプチド粉末1.55gを20
mlの脱イオン水に溶解後、予め、脱イオン水で緩衝化
したSP−SephadexC−25[H+]カラム
(φ1.8×40cm)に負荷し、脱イオン水500m
ιから1.5%塩化ナトリウム500mιの濃度勾配法
を行い、流速70mι/hr、各分画量10mιでクロ
マトグラフィーを行った。その結果は図2のとおりであ
る。上記クロマトグラフ中、ACE阻害活性の高かった
分画番号14〜22の画分を集めて凍結乾燥して精製ペ
プチド粉末(SP−I分画)を得た。この精製ペプチド
粉末20mgを60μιの脱イオン水に溶解した後、高
速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行った。カラ
ムとしては野村化学社製Develosil ODS−
5(4.5mmID×25cmL)を使用し、移動相と
しては0.05%トリフルオロ酢酸(以下、TFAと略
記する。)から25%アセトニトリル/0.05%TF
Aの濃度勾配法を行い、流速1.0mι/min、検出
波長220nmでHPLCを行い、ACE阻害活性の高
いペプチドフラグメントを得た。その結果は図3に示す
とおりである。{溶出時間;(1)のペプチド99.6
25分、(2)のペプチド80.724分及び(3)の
ペプチド32.033分}このようにして得られたAC
E阻害作用を有するペプチドのアミノ酸配列は、アプラ
イドバイオシステム(ABI)社製のプロテインシーク
エンサー477A型を用いて決定された。その結果、3
種類のペプチドは、それぞれ、次式、 (1)Tyr−Asn−Lys−Leu (2)Tyr−Lys−Tyr−Tyr (3)Ala−Ile−Tyr−Lys で示されるL体のアミノ酸配列で表される新規なテトラ
ペプチドであることが確認された。常温における性状は
白色の粉末である。尚、本発明に係る新規なテトラペプ
チドをACE阻害剤として、例えば錠剤に製剤する場合
には、常法に従って、例えば次のように処理すればよ
い:ペプチド10g、乳糖68g、コーンスター
チ39g、ステアリン酸マグネシウム1.2gを原料
とし、先ず、及び20gのコーンスターチを混和
し、11gのコーンスターチから作ったペーストととも
に顆粒化し、この顆粒に9gのコーンスターチととを
加え、得られた混合物を圧縮錠剤機で打錠し、錠剤10
00個を製造する。
430A型を用いた固相法によって当該ペプチドを合成
した。固相担体としては、スチレンジビニルベンゼン共
重合体(ポリスチレン樹脂)をクロロメチル化した樹脂
を使用した。まず、当該テトラペプチドのアミノ酸配列
に従って、常法どおり、そのC末端側のロイシンからク
ロロメチル樹脂に反応させペプチド結合樹脂を得た。こ
の時のアミノ酸は、t−ブトキシカルボニル(以下、t
−Bocと略記する。)基で保護されたt−Bocアミ
ノ酸を使用した。次にこのペプチド結合樹脂をエタンジ
チオールとチオアニソールからなる混合液に懸濁し、室
温で10分間撹拌後、氷冷下でトリフルオロ酢酸を加
え、更に10分間撹拌した。この混合液にトリフルオロ
メタンスルホン酸を滴下し、室温で30分間撹拌した
後、無水エーテルを加えてその生成物を沈澱させて分離
し、その沈澱物を無水エーテルで数回洗浄した後、減圧
下で乾燥した。このようにして得られた未精製の合成ペ
プチドは蒸留水又はメタノールに溶解した後、逆相系の
カラムC18(5μm)を用いたHPLCにより精製し
た。移動相として(A)0.1%TFA含有蒸留水、
(B)0.1%TFA含有アセトニトリル溶液を使用
し、(A)液が40分間で83%→53%の濃度勾配法
により流速1.3ml/minでクロマトグラフィーを
行った。紫外部波長218nmで検出し、最大の吸収を
示した溶出画分を分取し、これを凍結乾燥することによ
って目的とする合成ペプチオドを得た。
分析した結果、アミノ酸配列及びアミノ酸組成が前記で
示したアミノ酸配列構造を有するテトラペプチドである
ことが確認された。このマススペクトルの結果は図4に
示す通りである。 Tyr−Lys−Tyr−Tyrの合成法 アプライドバイオシステム社製のペプチド自動合成装置
430A型を用いた固相法によって当該ペプチドを合成
した。固相担体としては、スチレンジビニルベンゼン共
重合体(ポリスチレン樹脂)をクロロメチル化した樹脂
を使用した。まず、当該テトラペプチドのアミノ酸配列
に従って、常法どおり、そのC末端側のチロシンからク
ロロメチル樹脂に反応させペプチド結合樹脂を得た。こ
の時のアミノ酸は、t−ブトキシカルボニル(以下、t
−Bocと略記する)基で保護されたt−Bocアミノ
酸を使用した。次にこのペプチド結合樹脂をエタンジチ
オールとチオアニソールからなる混合液に懸濁し、室温
で10分間撹拌後、氷冷下でトリフルオロ酢酸を加え、
更に10分間撹拌した。この混合液にトリフルオロメタ
ンスルホン酸を滴下し、室温で30分間撹拌した後、無
水エーテルを加えてその生成物を沈澱させて分離し、そ
の沈澱物を無水エーテルで数回洗浄した後、減圧下で乾
燥した。このようにして得られた未精製の合成ペプチド
は蒸留水又はメタノールに溶解した後、逆相系のカラム
C18(5μm)を用いたHPLCにより精製した。移
動相として(A)0.1%TFA含有蒸留水、(B)
0.1%TFA含有アセトニトリル溶液を使用し、
(A)液が40分間で83%→53%の濃度勾配法によ
り流速1.3ml/minでクロマトグラフィーを行っ
た。紫外部波長218nmで検出し、最大の吸収を示し
た溶出画分を分取し、これを凍結乾燥することによって
目的とする合成ペプチオドを得た。この合成ペプチドを
マススペクトルにより分析した結果、アミノ酸配列及び
アミノ酸組成が前記で示したアミノ酸配列構造を有する
テトラペプチドであることが確認された。このマススペ
クトルの結果は図5に示す通りである。 Ala−Ile−Tyr−Lysの合成法 アプライドバイオシステム社製のペプチド自動合成装置
430A型を用いた固相法によって当該ペプチドを合成
した。固相担体としては、スチレンジビニルベンゼン共
重合体(ポリスチレン樹脂)をクロロメチル化した樹脂
を使用した。まず、当該テトラペプチドのアミノ酸配列
に従って、常法どおり、そのC末端側のリシンからクロ
ロメチル樹脂に反応させペプチド結合樹脂を得た。この
時のアミノ酸は、t−ブトキシカルボニル(以下、t−
Bocと略記する)基で保護されたt−Bocアミノ酸
を使用した。次にこのペプチド結合樹脂をエタンジチオ
ールとチオアニソールからなる混合液に懸濁し、室温で
10分間撹拌後、氷冷下でトリフルオロ酢酸を加え、更
に10分間撹拌した。この混合液にトリフルオロメタン
スルホン酸を滴下し、室温で30分間撹拌した後、無水
エーテルを加えてその生成物を沈澱させて分離し、その
沈澱物を無水エーテルで数回洗浄した後、減圧下で乾燥
した。このようにして得られた未精製の合成ペプチドは
蒸留水又はメタノールに溶解した後、逆相系のカラムC
18(5μm)を用いたHPLCにより精製した。移動
相として(A)0.1%TFA含有蒸留水、(B)0.
1%TFA含有アセトニトリル溶液を使用し、(A)液
が40分間で83%→53%の濃度勾配法により流速
1.3ml/minでクロマトグラフィーを行った。紫
外部波長218nmで検出し、最大の吸収を示した溶出
画分を分取し、これを凍結乾燥することによって目的と
する合成ペプチオドを得た。この合成ペプチドをマスス
ペクトルにより分析した結果、アミノ酸配列及びアミノ
酸組成が前記で示したアミノ酸配列構造を有するテトラ
ペプチドであることが確認された。このマススペクトル
の結果は図6に示す通りである。合成によって得られた
本発明の3種類のテトラペプチドは、以下に示す試験に
よって薬理効果が確認された。
(シグマ社製、酵素番号EC3.4.15.1)2.5
mU、合成基質Hippuryl−L−histidy
l−L−leucine(ペプチド研究所製)12.5
mMを用いLiebermanの測定法を改良した山本
等の方法[日胸疾会誌,18巻,297−302頁(1
989年)]に準じて測定した。すなわち、生成した馬
尿酸を酢酸エチルにて抽出し225nmの吸光度で測定
した。被検液での吸光度をEs、被検液の代わりに緩衝
液を加えた時の値をEc、予め反応停止液を加えて反応
させた時の値をEbとして次式から阻害率を求めた。 阻害率(%)=(Ec−Es)/(Ec−Eb)× 1
00 ACE阻害剤の阻害活性IC50値は、ACEの酵素活
性を50%(阻害率)阻害するために必要な試料の濃度
(M)で示した。本発明に係る3種類のテトラペプチド
の牛肺血清のアンジオテンシン変換酵素に対する阻害活
性(IC50値);(1)のテトラペプチド21.0μ
M、(2)のテトラペプチド64.2μM及び(3)の
テトラペプチド213μMである。
は日本チャールズ・リバー社より15週齢雄性高血圧自
然発症ラット(以下、SHRと略記する。)を購入し、
1週間の予備飼育後、収縮期血圧が160mmHg以上
(体重280〜330g)の動物6匹1群として用い
た。ラットは、室温23±2℃、湿度55±10%およ
び12時間明暗(午前6時〜午後6時点灯)に調整され
た飼育室でステンレスワイヤー製ラット用個別ゲージに
1匹ずつ収容し飼育した。飼料はオリエンタル酵母社製
MF粉末飼料を、飲水は自家揚水(水道水質基準適合)
をそれぞれ自由に摂取させた。血圧は非観血的尾動脈血
圧測定装置(理研開発社製、PS−100型)を用いt
ail−cuff法により、投与前、投与後1時間、2
時間、3時間、4時間及び6時間のSHR尾動脈の収縮
期血圧値(mmHg)の測定を測定時間毎に5回行い、
得られた測定値の最高値と最低値を棄却し、3回の平均
値をもって各時間の測定値とした。3種類の合成テトラ
ペプチド50mg/kgをSHRに経口投与した時の収
縮期血圧値(mmHg)への作用についての結果は、図
7、図8及び図9に示すとおりである。以上の試験の結
果、本発明に係る3種類のテトラペプチドは、アンジオ
テンシン変換酵素阻害活性を有し、in vivo(生
体内)においても有意な血圧降下作用を示すことが確認
された。従って、本発明に係る3種類のテトラペプチド
は高血圧症の治療又は予防薬として有用である。尚、本
発明に係る3種類のテトラペプチドは、構造的にそのア
ミノ酸配列を部分構造とするペプチドにおいて、構造中
に採用することもできる。
1におけるSephadexG−25カラムクロマトグ
ラフィーによるACE阻害ペプチドの分離精製の結果を
示す図である。尚、図中マーカーとして分子量6千のイ
ンスリン、分子量3,500のインスリンB鎖、分子量
2,500のインスリンA鎖、分子量1,052のブラ
ジキニン及び分子量75のグリシンを用いた。
1におけるSP−Sephadex C−25(H+)
カラムクロマトグラフィーによるACE阻害ペプチドの
分離精製の結果を示す図である。
例1における逆相HPLCによるACE阻害ペプチドの
分離精製の結果を示す図である。
チドの、製造例2で得られた3種類の合成テトラペプチ
ドのマススペクトルを示す図である。
テトラペプチド50mg/kgを、それぞれSHRに経
口投与した場合の収縮期血圧値(mmHg)の経時的変
化を示す図である。尚、図中、対照降圧剤としてカプト
プリル(10mg/kg)を、又、コントロールとして
0.9%の生理食塩水3mlを用いた。
Claims (6)
- 【請求項1】 次式;Tyr−Asn−Lys−L
eu で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を
有する新規なテトラペプチド。 - 【請求項2】 次式;Tyr−Asn−Lys−L
eu で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を
有する新規なテトラペプチドを有効成分として含有する
ことを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤。 - 【請求項3】 次式;Tyr−Lys−Tyr−T
yr で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を
有する新規なテトラペプチド。 - 【請求項4】 次式;Tyr−Lys−Tyr−T
yr で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を
有する新規なテトラペプチドを有効成分として含有する
ことを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤。 - 【請求項5】 次式;Ala−Ile−Tyr−L
ys で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を
有する新規なテトラペプチド。 - 【請求項6】 次式;Ala−Ile−Tyr−L
ys で示されるL体のアミノ酸の配列によるペプチド構造を
有する新規なテトラペプチドを有効成分として含有する
ことを特徴とするアンジオテンシン変換酵素阻害剤。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP11284647A JP3108920B1 (ja) | 1999-08-30 | 1999-08-30 | 新規なテトラペプチドおよびアンジオテンシン変換酵素阻害剤 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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1999
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Biochem.J.,Vol.167,No.2,p.377−382(1977) |
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