JP4541585B2 - 紙送りロール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙送りロールに関し、詳しくは、インクジェットプリンター、レーザプリンター、静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、自動預金支払機(ATM)等における紙送り機構に使用され、高摩擦係数が要求される紙送りロールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電式複写機、レーザプリンター、ファクシミリ等のOA機器や、自動預金支払機ではゴム組成物をロール形状に成形した紙送りロール(ローラ)が使用されている。かかるゴム組成物からなる紙送りロールでは、紙送りを繰り返し行うと、ロールが磨耗するとともにロール表面に紙粉が付着し、紙送り性能が次第に劣化していくという欠点がある。このため、摩擦係数が高く、摩耗の少ないゴム組成物が要求されている。
【0003】
また、近年、静電式複写機、レーザプリンター等のOA機器の使用頻度はより増大し、画像形成(印字)ボリュームも一層拡大しており、紙送りロールの性能も一層の長期安定性が望まれている。
【0004】
このような要求から、紙送りロールについて種々の提案がなされている。例えば、特開平4−89728号公報、特開平5−221059号公報、特開平8−58998号公報等では、ロール表面の円周方向に所定ピッチで筋溝を入れてロール表面に凹凸を形成したり、ロール表面にシボ加工を施して凹凸を形成した紙送りロールが提案されている。
【0005】
また、特開平8−85636号公報では、長期使用時の紙粉付着による摩擦の低下を抑制するために、EPDMに変わり、シリコーン組成物を用いた紙送りロールが提案されている。
【0006】
さらに、本出願人は、特開平11−106067号公報において、ロール表面に凹凸を設けると共に、凹部の内周面のみをハロゲン化した紙送りロールを提案している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特開平4−89728号公報、特開平5−221059号公報、特開平8−58998号公報に提案された紙送りロールを用いても、良好な紙送り性能が得られる枚数は、たがだか数千枚程度であり、長期に亘って良好な紙送り性能を維持できないという問題がある。これは、紙送りにより発生する紙粉は初期段階ではロール表面の凹部に逃がされるが、紙送り枚数が増加するにしたがって凹部に紙粉が蓄積し、凹部が紙粉で埋まってしまい、その結果、紙粉がロール表面の接紙部分である凸部に溢れ出て用紙とロール表面間に介在し,用紙とロール間の摩擦係数が低下してしまうためである。
【0008】
また、特開平8−85636号公報に提案された紙送りロールにおいては、充分な摩擦係数を得るためには、ロール表面を研磨する工程が不可欠であり、シリコーンゴムは研磨面(研磨目)のコントロールが非常に難しいために、初期の摩擦抵抗が低くなるという問題がある。その上に、高価なシリコーンゴムを研磨するためには、別途作業工程が必要であり、生産性が悪く、製造コストが高くなるという問題がある。
【0009】
さらに、本出願人が提案した特開平11−106067号公報は、凹凸を設けた紙送りロールの良好な紙送り性能を長期に亘って維持できる、優れた紙送りロールを提供しているものの、未だ改善の余地があると共に、ハロゲン化という別工程が必要となるため、生産性にも改良の余地がある。
【0010】
本発明は上記した問題に鑑みてなされたものであり、摩擦係数が高く、良好な紙送り性能を長期に亘って維持でき、かつ、生産性に優れ、従来よりも簡単な工程で、より低コストで製造可能なシリコーンゴム製の紙送りロールを提供することを課題としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、シリコーンゴムを主成分とし、23℃における複素弾性率E*(23℃)が0.5MPa以上5.0MPa以下、50℃における損失正接tanδ(50℃)が0.08以下、引き裂き強度Trが2.0N/mm以上であるシリコーンゴム組成物を用いてなり、
内面に微小な凹凸を施した金型を用いて架橋させることにより、ロール表面の表面粗度Rzを10μm以上としていることを特徴とする紙送りロールを提供している。
【0012】
このように、本発明の紙送りロールでは、シリコーンゴムを用い、シリコーンゴム組成物の物性値を規定することで、長期使用時の摩擦抵抗の低下を防止すると共に、内面に微小な凹凸を施した金型を用いて架橋させることによりロール表面の表面粗度を規定値に設定することで、研磨工程をなくし、初期の摩擦抵抗の低下を防止することができる。即ち、上記ロール表面の研磨工程が不要であるので、初期の摩擦抵抗の低下を防止でき、かつ、生産性に優れた従来よりも簡単な工程で、より低コストで紙送りロールを製造することができる。また、特定のシリコーンゴム組成物を用いているので、摩擦係数が高く、耐磨耗性にも優れた紙送りロールを得ることができる。
【0013】
シリコーンゴム組成物の23℃における複素弾性率E*(23℃)は、0.5MPa以上5.0MPa以下、好ましくは0.5MPa以上3.0MPa以下としている。上記範囲としているのは、0.5MPaより小さいと、ローラとしての硬度が不十分という問題があるためであり、一方、5.0MPaより大きいと、摩擦係数が低すぎるという問題があるためである。
なお、上記複素弾性率E*(23℃)は、幅4mm、長さ40mm、厚み2mmの試料を温度23℃、周波数10Hz、振幅0.25%の条件で測定した複素弾性率である。
【0014】
シリコーンゴム組成物の50℃における損失正接tanδ(50℃)は、0.08以下、好ましくは0.01以上0.05以下としている。上記範囲としているのは、損失正接の値は小さいほど好ましいためであり、一方、0.08より大きいと、摩擦係数が低すぎるためである。実際上は0.01より小さいシリコーンゴム組成物を得るのは困難であるためであり、好ましくは0.01以上としている。
なお、上記tanδ(50℃)は、幅4mm、長さ40mm、厚み2mmの試料を温度50℃、周波数10Hz、振幅0.25%の条件で測定した損失正接である。
【0015】
シリコーンゴム組成物の引き裂き強度Trは、2.0N/mm以上、好ましくは4.0N/mm以上10.0N/mm以下としている。上記範囲としているのは、2.0N/mmより小さいと、耐磨耗性が劣ったり、加硫後の脱型時に割れを生じたりするためである。一方、引き裂き強度は大きいほど良いが、実際上は10.0N/mm以下とするのが好ましい。
なお、上記引き裂き強度Trは、JIS K6252に記載のクレセント型試験片を使用して測定した引き裂き強度である。
【0016】
ロール表面の表面粗度Rzを10μm以上としている。表面粗度が10μmより小さいと使用初期の摩擦抵抗の変動が大きく、通紙不良を起こすことがあるためである。また、摩擦係数の高いロールとしての使用上、表面粗度は、50μm以下、好ましくは40μm以下、さらに好ましくは30μm以下とするのが良い。
【0017】
本発明のロール表面の表面粗度を設定する方法は、内面に微小な凹凸を施した金型を用いて、シリコーン組成物を架橋させることにより行っている。金型内面に施す微小な凹凸は、規定するロールの表面粗度に近い値に設定することが好ましいが、必ずしもロールの表面粗度と一致させる必要はなく、ロール表面の表面粗度が10μm以上となるような、微小な凹凸であればよい。これにより、研磨工程をなくし、ロール表面を最適な表面粗度に設定することができる。
また、シリコーンゴムとしては、ビニル基含有量が0.2mol%〜1.0mol%であるシリコーンゴムが好ましく、例えば、ビニル基含有量が0.2mol%〜1.0mol%であるメチルビニルシリコーンゴムのようなシリコーンゴムを好適に用いることができ、1種、又は複数種のシリコーンゴムを混合してもよい。
【0018】
上記ロール表面の形状としてはローレット形状、シボ模様形状、梨地様形状等が挙げられるが、特に紙との接触性と紙粉の除去の観点より、ローレット形状とするのが好ましい。ロール表面をローレット形状にすることにより形成される凹凸とは、ロール表面の表面粗度を規定するための微小な凹凸(μmオーダー)とは異なるものである。
即ち、上記表面粗度が10μm以上とは、ロール表面の形状がローレット形状、シボ模様形状等の場合は、ローレット形状等の凸部の表面の表面粗度が10μm以上であることを示し、梨地(ブラスト処理)形状の場合は、ロール表面の表面粗度が10μm以上であることを示している。
【0019】
また、上記ロール表面がローレット形状の場合には、ローレット形状の凸部のピッチ(隣接する凸部の頂点間の距離)を0.2mm以上5.0mm以下、好ましくは0.5mm以上2.0mm以下とし、ローレット形状の凹部(筋溝)の入り口部の幅を0.2mm以上5.0mm以下、好ましくは0.5mm以上2.0mm以下とし、ローレット形状の凹部の深さ(筋溝の深さ)を0.03以上1.5mm以下の範囲に設定するのが良い。
上記寸法に設定することにより、紙送り時に充分なグリップ力が得られる程度の接触面積をもって凸部表面が用紙に接触する一方、ロール表面が用紙に当接して紙送りが始まると、ロールと用紙間に介在する紙粉が凹部に速やかに逃がされ、紙送りが終わった後は紙粉をロール(凹部)からスムーズに離散させることができる。
【0020】
上記シリコーンゴム組成物中のゴム成分としては、シリコーンゴムが100%であることが好ましいが、必要に応じて、シリコーンゴム以外のゴム成分(その他のゴム成分)を配合することもできる。その他のゴム成分を配合する際、全ゴム成分の重量に対して、その他のゴム成分の重量は10重量%以下、好ましくは5重量%以下とするのが良い。
その他のゴム成分としては、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)、天然ゴム(NR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム、スチレンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)等から選択される1種または複数種のゴム成分を好適に用いることができる。
【0021】
上記シリコーンゴムを主成分とするゴム成分100重量部に対して架橋剤を0.1重量部以上5重量部以下の割合で配合して架橋することが好ましい。これにより、ロール表面の凹凸の成形性を高めることができる。
【0022】
また、紙送りロールには、紙を送る目的で紙送りの方向に回転させて使うロール(ナジャー(1本で使用)、フィード(後述するリタードと2本セットで使用))と、紙の重送を防止する目的で紙送りの方向と逆の方向にトルクをかけて使用するロール(リタード)の三種類があり、それぞれのロールに要求される特性は若干異なっている。
具体的には、それぞれのロールについて、上記23℃における複素弾性率E*(23℃)は、以下の範囲とするのが良い。
ナジャーに用いるシリコーンゴム組成物の複素弾性率は、2.0MPa以下、好ましくは0.5MPa以上1.5MPa以下としている。
フィードに用いるシリコーンゴム組成物の複素弾性率は、0.5MPa以上2.5MPa以下、好ましくは1.0MPa以上2.0MPa以下としている。
リタードに用いるシリコーンゴム組成物の複素弾性率は、1.0MPa以上3.0MPa以下、好ましくは1.5MPa以上2.5MPa以下としている。
【0023】
上記シリコーンゴム組成物は、通常、シリコーンゴム等のゴム成分、架橋剤、必要に応じて配合する各種配合剤を配合した後、オープンロール、バンバリーミキサー、ニ−ダー等の公知のゴム混練装置を用いて80℃〜150℃にて、5分〜20分混練りするのが良い。
【0024】
上記シリコーンゴム組成物を内面に凹凸を施した金型を用いて架橋させて、紙送りロールを常法により作製することができる。すなわち、成形と同時に架橋を行う手法で紙送りロールを作成する場合、型部を所望のロール形状にした金型を150℃〜180℃にて、5分〜40分加熱し、ロールを成形するのが良い。また、必要に応じて2次加硫を行うこともできる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態にかかる円筒形状の紙送りロール1を示し、その中空部に円柱形状の芯金(シャフト)2を圧入して取り付けている。
【0026】
紙送りロール1は、ゴム成分がシリコーンゴムのみからなり、23℃における複素弾性率E*(23℃)が2.62MPa、50℃における損失正接tanδ(50℃)が0.035、引き裂き強度Trが5.63N/mmであるシリコーンゴム組成物を用いている。また、シリコーンゴム100重量部に対して、架橋剤を1.8重量部の割合で配合している。
【0027】
上記シリコーンゴム組成物を混練りした後、ローレット溝を設けると共に、内面に微小な凹凸を施した金型を用いて、シリコーンゴム組成物を架橋し、トランスファー成形によりロール表面の表面粗度が13μmである紙送りロールを得ている。
【0028】
紙送りロール1の表面はローレット形状とし、図2に示すように、凹部1aの深さd:0.3mm、凹部1aの入り口部の幅W:0.53mm、凸部1bのピッチL:1.03mmとなるような凹凸からなるローレット形状としている。なお、凸部1bの表面1cの表面粗度を13μmとし、ロール表面の表面粗度を13μmとしている。
【0029】
紙送りロール1は、上記複素弾性率が2.62MPaであり、図3に示すように、紙14の重送を防止する目的で紙送りの方向と逆の方向にトルクをかけて使用するリタード(Retard)用のロール10として特に好適に用いることができる。また、図3に示すように、シリコーンゴム組成物の複素弾性率等を変更し、紙を送る目的で紙送りの方向に回転させて使うナジャー(Nudger)用のロール11、フィード(Feed)用のロール12として用いることもできる。なお、図中の矢印は、各ローラの回転方向、及び紙14の送り方向を示す。
【0030】
これにより、紙送りロール1は、初期の摩擦抵抗の低下を防止し、良好な紙送り性能を長期に亘って維持することができる。さらには、研磨工程を削減でき、従来よりも簡単な工程で、かつ、より低いコストで紙送りロールを得ることができる。
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例について詳述する。
実施例1〜8及び比較例1〜6について、下記の表1に記載のシリコーンゴムコンパウンド100重量部に対して、表1に記載の架橋剤を各々括弧内に記載の重量部(phr)にて配合して2本ロールにて混練りし、実施例1〜8及び比較例1〜6のシリコーンゴム組成物を調整した。
【0032】
【表1】
【0033】
なお、上記表1中、信越とは信越化学工業(株)、東レとは東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)、東芝とはGE東芝シリコーン(株)を表している。また、架橋剤の欄において、C−8は2,5−ジメチル−2,5−ビス(ターシャリーブチルパーオキシ)ヘキサン(25%ペースト)信越化学工業(株)製、C−11は信越化学工業(株)製の架橋剤、C−3はジクミルパーオキサイド(20%ペースト)信越化学工業(株)製、TC−8は2,5−ジメチル−2,5−ジターシャリーブチルパーオキシヘキサン(50%ペースト)GE東芝シリコーン(株)製を表している。
【0034】
成形にはトランスファー成形タイプの金型を用い、加硫条件170℃×15分、2次加硫条件200℃×4時間にて、外径19mm、内径8mm、幅10mmの実施例1〜8及び比較例1〜6の各ロールを作成した。金型の内面は表1に示すように、凹凸処理を施した。
【0035】
即ち、表1中、「表面」の欄に「ローレット」、「みがき」及び「ブラスト」と記載されているように、金型の内面には、上記各形状の溝を設けると共に、表面粗度を規定するために微小な凹凸処理を施した。これら金型の内面に凹凸処理を施したものは、研磨工程は行わなかったが、ロールの表面粗度Rzが、各々異なり、「ローレット」はRzが13μm、「みがき(型)」はRzが8μm及び「ブラスト(型)」はRzが21μmであるロールが各々得られた。なお、ローレット型としては、ロール表面が、凹部の深さd:0.3mm、凹部の入り口部の幅W:0.53mm、凸部のピッチL:1.03mmの寸法になるものを用いた。
また、「けんま」と記載されている金型の内面には処理は行わず、ロール作製後に通常の研磨工程を行うことにより、ロールの表面粗度Rzが52μmであるロールが得られた。
【0036】
さらに、後述する物性評価用のシートとして、実施例1〜8及び比較例1〜6のシリコーンゴム組成物の各々からプレス加硫により、加硫条件170℃×10分、2次加硫条件200℃×4時間にて、幅4mm、長さ40mm、厚み2mmである実施例1〜8及び比較例1〜6の各シートを作製した。
【0037】
上記のように作製した各実施例及び各比較例の物性評価用のシートについて下記の物性試験を行った。また、上記のように作製した各実施例及び各比較例の紙送りロールについて、下記の特性測定を行った。その結果を下記の表2に示す。
【0038】
【表2】
【0039】
(複素弾性率E*(23℃)の測定)
(株)島津製作所製の粘弾性スペクトルメーターを用いて、幅4mm、長さ40mm、厚み2mmの資料を温度23℃、周波数10Hz、振幅0.25%の条件で測定した。
【0040】
(損失正接tanδ(50℃)の測定)
(株)島津製作所製の粘弾性スペクトルメーターを用いて、幅4mm、長さ40mm、厚み2mmの資料を温度50℃、周波数10Hz、振幅0.25%の条件で測定した。
【0041】
(引き裂き強度Trの測定)
クレセント型試験片を使用し、JIS K 6252に準拠して行った。
【0042】
なお、上記の特性測定における各測定値の好ましい範囲は、複素弾性率E*(23℃)は0.5MPa以上5.0MPa以下、50℃における損失正接tanδ(50℃)は0.08以下とし、表2の判定の欄に「△」を記した。また、中でもさらに好ましい値は、複素弾性率E*(23℃)は0.5MPa以上3.0MPa以下、50℃における損失正接tanδ(50℃)は0.01以上0.05以下、引き裂き強度Trは2.0N/mm以上とし、判定の欄に「○」を記した。上記以外の好ましくない範囲は、判定の欄に「×」を記した。
【0043】
(摩擦係数の測定)
摩擦係数を図4に示す以下の方法で測定した。すなわち、紙送りロール21とテフロン板23との間に、ロードセル25に接続したA4サイズの紙24(富士ゼロックス社のP−A4)をはさみ、図4中、黒矢印で示す様に、紙送りロール21の回転軸22に鉛直荷重W(W=250g)を加え、紙送りロール21をテフロン板23に圧接させた。次いで、温度23℃、湿度55%の条件下で、上記、紙送りロール21を図4中、実線の矢印aで示す方向に、周速255mm/秒で回転させた。通紙の前後において、図4中、白矢印で示す方向に発生した紙24の搬送力F(g)をロードセル25で測定し、F(g)及び荷重W(W=250g)とから、下記の数式1より摩擦係数μを求めた。
【0044】
(数式1)
μ=F(g)/W(g)
【0045】
(初期摩擦係数及び2万枚通紙後の摩擦係数の測定)
ヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンタ(Laser Jet4Plus)に紙送りロールを取り付けて、温度23℃、湿度55%の条件下で、A4サイズの紙(富士ゼロックス社のP−A4)を20,000枚通紙した前後の紙送りロールの摩擦係数を前記方法により各々測定し、20,000枚通紙する前の摩擦係数を、初期摩擦係数(表2中、初期μ)とし、20,000枚通紙した後の摩擦係数を2万枚通紙後の摩擦係数(表2中、20K後μ)とした。
【0046】
(摩擦係数の低下率の測定)
ヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンタ(Laser Jet4Plus)に紙送りロールを取り付けて、温度23℃、湿度55%の条件下で、A4サイズの紙(王子製紙社のSA金藤)を1000枚通紙した前後の紙送りロールの摩擦係数を前記方法により各々測定し(μ0、μ1000)、下記の数式2により摩擦係数の低下率(表2中、μ低下率)を算出した。
【0047】
(数式2)
摩擦係数の低下率(%)=100×(μ0−μ1000)/μ0
なお、上記式中、μ0は1000枚通紙前の紙送りロールの摩擦係数であり、μ1000は1000枚通紙後の紙送りロールの摩擦係数である。
【0048】
(磨耗量の測定)
ヒューレットパッカード社製のレーザービームプリンタ(Laser Jet4Plus)に紙送りロールを取り付けて、温度23℃、湿度55%の条件下で、A4サイズの紙(富士ゼロックス社のP−A4)を20,000枚通紙前後の紙送りロールの重量減を測定することにより、摩耗量(mg)(表2中、まもう)を求めた。
【0049】
なお、上記の特性測定における各測定値の好ましい範囲は、初期μは1.4以上、20K後μは1.4以上、摩耗量(mg)は70以下、摩擦係数低下率(μ低下率)(%)は50以下とし、表2の判定の欄に「△」を記した。また、さらに好ましい値は、初期μは1.5以上、20K後μは1.5以上、摩耗量(mg)は60以下、摩擦係数低下率(μ低下率)(%)は40以下とし、判定の欄に「○」を記した。上記以外の好ましくない範囲は、判定の欄に「×」を記した。
【0050】
表1から分かるように、実施例1〜8の紙送りロールは、内面に凹凸を施した金型を用いて架橋させることによりロール表面の表面粗度を10μm以上とした。詳細には、実施例1〜3及び5〜8は、ローレット形状が金型の内面に施されており、かつ、ロールの表面粗度Rzは13μmであった。実施例4の紙送りロールは、金型の内面にはブラストが施されており、かつ、表面粗度Rzは21μmであった。また、実施例1〜8の紙送りロールに用いたシリコーンゴム組成物は、複素弾性率E*(23℃)、tanδ(50℃)及びTrの各数値がいずれも規定の範囲内であった。
【0051】
表2に示される様に、実施例1〜8の紙送りロールは、初期摩擦係数が1.42〜1.46であり、20K後μは1.41〜1.62であり、摩耗量(mg)は52〜68であり、μ低下率は33〜45であり、すなわちロール性能試験結果が全て好ましい値であった。従って、実施例1〜8の紙送りロールは、初期の摩擦抵抗が高く、耐磨耗性にも優れ、長期使用による摩擦係数の低下が小さい、優れた紙送りロールであることが確認できた。
【0052】
その上、実施例のロールは、研磨工程を要しないので、従来よりも簡単な工程で、かつ、より低いコストで製造でき、生産性においても優れている。
また、全実施例中、ローレット型が内面に施されている金型を用い、複素弾性率E*(23℃)、損失正接tanδ(50℃)及び引裂強度Trの各数値が、より好ましい範囲内である実施例1、3、6、及び7のロールは、ロール性能試験結果において、さらに優れた結果を示しており、非常に優れた紙送りロールであることが確認できた。
【0053】
一方、比較例1は引裂強度Trが2.0より小さい値であるため、磨耗量が60mgよりも大きく、ロールとして不適であった。
比較例2は、実施例3と同じシリコーン組成物を用い、金型の内面には、みがきによる凹凸処理が施されているが、ロールの表面粗度Rzが8μmであり、10μmよりも小さい値であるため、20K後μおよびμ低下率の結果が悪く、ロールとして不適であった。
比較例3は、実施例3と同じシリコーン組成物を用いたが、金型の内面には凹凸処理が施されておらず、従来のロール作製後の研磨工程を行ったために、初期μ及びμ低下率が悪く、ロールとして不適であった。また、研磨工程を行うために製造コストの上昇も問題であった。
【0054】
比較例4及び比較例5は、tanδ(50℃)が0.08より大きい値であるため、比較例4はロール性能試験結果の全てが不適であり、比較例5もμ低下率以外のロール性能試験結果の全てが不適であった。
比較例6は、複素弾性率E*(23℃)が5.0より大きい値であるため、初期μおよび20K後μの結果が悪くロールとして不適であった。
【0055】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、シリコーンゴム組成物の物性値を規定し、内面に微小な凹凸を施した金型を用いて架橋させることによりロール表面の表面粗度を設定することで、長期使用時の摩擦抵抗の低下を防止すると共に、紙粉の付着による摩擦抵抗の低下を防止することができる。従って、摩擦係数が高く、耐磨耗性にも優れた紙送りロールを得ることができる。
【0056】
また、ロール表面の研磨工程が不要であるので、初期の摩擦抵抗の低下を防止でき、かつ、従来よりも簡単な工程でロールを作製することができ、大幅なコストダウンを達成することができる。さらには、ロール表面の形状をローレット形状にすることにより、よりいっそう、長期間に亘って、高い摩擦係数と耐摩耗性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の紙送りロールの概略図である。
【図2】 本発明の紙送りロールの表面形状を示す図である。
【図3】 紙送りロールの種類を示す説明図である。
【図4】 紙送りロールの摩擦係数を測定するための装置の該略図である。
【符号の説明】
1 紙送りロール
1a 凹部
1b 凸部
1c 表面
L 凸部のピッチ
W 凹部の入り口部の幅
d 凹部の深さ
21 紙送りロール
22 回転軸
23 テフロン板
24 紙
25 ロードセル
Claims (2)
- シリコーンゴムを主成分とし、23℃における複素弾性率E*(23℃)が0.5MPa以上5.0MPa以下、50℃における損失正接tanδ(50℃)が0.08以下、引き裂き強度Trが2.0N/mm以上であるシリコーンゴム組成物を用いてなり、
内面に微小な凹凸を施した金型を用いて架橋させることにより、ロール表面の表面粗度Rzを10μm以上としていることを特徴とする紙送りロール。 - 上記ロール表面がローレット形状である請求項1に記載の紙送りロール。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001124518A JP4541585B2 (ja) | 2001-04-23 | 2001-04-23 | 紙送りロール |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001124518A JP4541585B2 (ja) | 2001-04-23 | 2001-04-23 | 紙送りロール |
Publications (2)
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