本発明のデジタル復調装置は、受信信号に選局処理を施すチューナとこのチューナからの受信信号に復調処理を施す復調器とを備えたデジタル復調装置であって、前記受信信号に含まれる誤りを訂正する誤り訂正手段と、前記チューナ及び前記復調器を構成する複数の回路部品のうちの少なくとも1つに供給される電力を制御する電力制御手段と、前記電力制御手段により、前記回路部品に供給される電力をある制御電力量だけ変更する制御がある時間行われることによって、前記受信信号に発生することとなる仮想誤りの量を推定する誤り推定手段と、前記誤り推定手段で推定された前記仮想誤りの量から、前記電力制御手段による電力制御が行われることによって受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正手段が訂正できるか否かを判定する訂正可否判定手段と、前記訂正可否判定手段の判定結果に基づいて、前記電力制御手段による電力制御の制御電力量と制御時間の少なくとも一方を変更する制御量変更手段とを有し、前記制御量変更手段は、前記訂正可否判定手段により、受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正手段で訂正できると判定されたときに、前記制御電力量と前記制御時間の少なくとも一方を増加させることを特徴とするものである。
この構成によれば、電力制御手段により、前記回路部品に供給される電力をある制御電力量だけ変更する制御がある時間行われることによって、受信信号に含まれることとなる誤りを、誤り訂正手段が訂正できるか否かが訂正可否判定手段により判定され、その判定結果に基づいて、制御量変更手段により制御電力量と制御時間の少なくとも一方が変更される。そのため、電力制御により受信信号に含まれることとなる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御時間をできるだけ長く設定することが可能になる。従って、取得されるデータの信頼性を維持しつつ、チューナや復調器の消費電力をより効果的に低減することができる。尚、以下の説明において、「回路部品」とは、チューナや復調器の各部を構成する回路に限られるものではなく、回路を構成する1個のトランジスタに等価な部品等、あらゆる単位の部品が回路部品に相当し得る。
また、前記制御量変更手段は、前記訂正可否判定手段により、受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正手段で訂正できると判定されたときに、前記制御電力量と前記制御時間の少なくとも一方を増加させる。この構成によれば、受信信号に含まれることになる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御期間をできるだけ長く設定することが可能になる。
ここで、前記制御量変更手段は、前記訂正可否判定手段により、受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正手段で訂正できないと判定されたときに、前記制御電力量と前記制御時間の少なくとも一方を減少させるように構成されていてもよい。この構成によれば、受信信号に含まれることになる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御期間をできるだけ長く設定することが可能になる。
また、前記訂正可否判定手段の判定結果が変わるまで、前記制御量変更手段は、前記制御電力量と前記制御時間の少なくとも一方を段階的に変更していくように構成されていてもよい。この構成によれば、電力制御が行われたことによって受信信号に含まれることとなる誤りが誤り訂正手段により訂正される範囲内で、制御電力量が最も大きく設定される、あるいは、制御期間が最も長く設定されることになり、より効率的に消費電力を低減できる。
本発明のデジタル受信装置は、前記電力制御手段による電力制御が行われる前の受信信号に含まれる制御前誤りの量を導出する制御前誤り導出手段を備え、前記訂正可否判定手段は、前記誤り推定手段により推定された前記仮想誤りの量と前記制御前誤り導出手段により導出された前記制御前誤りの量から、前記受信信号に含まれることとなる誤りの量を導出することを特徴とするものである。この構成によれば、仮想誤りの量と制御前誤りの量とから、電力制御が行われることによって受信信号に含まれることとなる誤りの総量を正確に導出することが可能になる。
また、前記訂正可否判定手段は、前記電力制御が行われることによって前記受信信号に含まれることになる誤りの量の閾値を導出する閾値導出手段を有し、前記受信信号に含まれることとなる誤りの量が、前記閾値導出手段で導出された前記閾値以下である場合に、その誤りを前記誤り訂正手段が訂正できると判定することが好ましい。この構成によれば、受信信号に含まれることとなる誤りを訂正可能な否かを容易に判定することができる。
また、前記閾値導出手段は、受信信号の変調方式と符号化率の少なくとも一方に基づいて前記閾値を導出するように構成されていてもよい。この構成では、受信信号に採用されている方式に応じた適切な閾値が導出される。
ここで、前記制御前誤り導出手段は、前記電力制御手段による電力制御が行われる前の受信信号の誤り率を導出する誤り率導出手段を有するものであってよい。この構成では、電力制御が行われる前の受信信号の誤り率に基づいて、誤り訂正の可否が判定される。
または、前記制御前誤り導出手段は、前記電力制御手段による電力制御が行われる前の受信信号のコンスタレーションの規定値からのずれを導出するずれ導出手段を有するものであってもよい。この構成では、電力制御が行われる前の受信信号のコンスタレーションの規定値からのずれに基づいて、誤り訂正の可否が判定される。
あるいは、前記制御前誤り導出手段は、前記電力制御手段による電力制御が行われる前の受信信号のCN比を導出するCN比導出手段を有するものであってもよい。この構成では、電力制御が行われる前の受信信号のCN比に基づいて、誤り訂正の可否が判定される。
また、前記電力制御手段が、RFアンプ、ミキサ、フィルタ、IFアンプ、及び、VCO・PLLの少なくとも1つに供給される電力を制御するように構成されていてもよい。この構成によれば、RFアンプ、ミキサ、フィルタ、IFアンプ、及び、VCO・PLLの少なくとも1つの消費電力を効果的に低減することができる。
また、前記受信信号には、インターリーブ処理が施されており、前記誤り訂正手段は、前記インターリーブ処理が施された受信信号にデインターリーブ処理を施すデインターリーブ手段を有するものであってもよい。この構成によれば、受信信号に含まれる誤りは、デインターリーブ処理により分散された後に訂正されるため、より確実に誤りが訂正されうる。
ここで、前記デインターリーブ処理は、受信信号に含まれるシンボルを時間的に並べ替える時間デインターリーブ処理であり、前記電力制御手段は、前記時間インターリーブ処理が行われる単位である時間インターリーブ長以上の時間間隔を空けて、前記回路部品の電力を制御するものであってもよい。この構成によれば、複数回の電力制御によってそれぞれ発生する誤りが時間デインターリーブ処理後に重なり合わないため、受信信号に含まれることとなる誤りが、より確実に訂正可能な範囲に抑えられる。
本発明のデジタル復調装置は、前記電力制御手段は、前記回路部品が前記受信信号に含まれるシンボルの先端を処理するタイミングで、その回路部品の電力を制御することを特徴とするものである。この構成によれば、電力制御によって発生する誤りの影響が及ぶシンボルの数が最小となり、電力制御に起因して生じる誤りが小さくなる。
ここで、デジタル復調装置が、前記電力制御手段による電力制御の制御時間がシンボル長よりも長い場合に、前記復調器を構成する複数の回路部品のうちの少なくとも1つの、前記電力制御が行われることによって誤りが生じるシンボルを処理する際の動作を、その性能が低下するように制御する復調制御手段を備えていてもよい。電力制御の制御時間がシンボル長よりも長い場合には、1以上のシンボルが完全につぶれてしまい、そのようなシンボルからは正しいデータを取り出せなくなる。このようなときに、復調器において、完全につぶれてしまったシンボルに対して、信号状態が正常なシンボルと同じ復調処理を施すことは、余分な電力を消費することになり無駄である。そこで、制御時間がシンボル長よりも場合には、復調制御手段により、復調器を構成する回路部品の動作をその性能が低下するように制御することで、復調器の消費電力を低下させることができる。
ここで、前記復調器は、アナログ信号である前記受信信号をデジタル信号に変換するAD変換手段を有し、前記復調制御手段は、前記AD変換手段に供給される電力を減少させることによりその性能を低下させるものであってもよい。この構成によれば、電力制御によって誤りが生じるシンボルを処理する際に、AD変換手段に供給される電力が減少することから、復調器の消費電力が低下する。
また、前記復調器は、アナログ信号である前記受信信号をデジタル信号に変換するAD変換手段と、このAD変換手段からのデジタル信号を処理する複数のデジタル回路とを有し、前記復調制御手段は、前記電力制御が行われることによって誤りが生じるシンボル単位で、前記複数のデジタル回路のうちの少なくとも1つにおける前記受信信号に対する処理を停止させるものであってもよい。この構成によれば、電力制御により誤りが生じたシンボル単位で、少なくとも1つのデジタル回路の処理が停止して演算量等が減少することから、復調器の消費電力が低下する。
以上のデジタル復調装置は、文字、画像、音声及びデータの少なくともいずれか1つの再現処理を行う携帯電話やデジタルTV等の様々なデジタル受信装置に採用され得る。このようなデジタル受信装置は本発明のデジタル復調装置が復調した受信信号から文字、画像、音声、あるいは、データに係る情報を取得し、これらの再現処理を行う。
本発明のデジタル復調装置の制御方法は、受信信号に選局処理を施すチューナとこのチューナからの受信信号に復調処理を施す復調器とを備えたデジタル復調装置の制御方法であって、前記受信信号に含まれる誤りを訂正する誤り訂正ステップと、前記チューナ及び前記復調器を構成する複数の回路部品のうちの少なくとも1つに供給される電力を制御する電力制御ステップと、前記電力制御ステップにより、前記回路部品に供給される電力をある制御電力量だけ変更する制御がある時間行われることによって、前記受信信号に発生することとなる仮想誤りの量を推定する誤り推定ステップと、前記誤り推定ステップで推定された前記仮想誤りの量から、前記電力制御ステップにおいて電力制御が行われることによって受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正ステップで訂正できるか否かを判定する訂正可否判定ステップと、前記訂正可否判定ステップの判定結果に基づいて、前記電力制御ステップによる電力制御の制御電力量と制御時間の少なくとも一方を変更する制御量変更ステップとを有し、前記訂正可否判定ステップにおいて受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正ステップで訂正できると判定されたときに、前記制御量変更ステップにおいて、前記制御電力量と前記制御時間の少なくとも一方を増加させることを特徴とするものである。
この制御方法によれば、電力制御により受信信号に含まれることとなる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御時間をできるだけ長く設定することが可能になる。従って、取得されるデータの信頼性を維持しつつ、チューナや復調器の消費電力をより効果的に低減することができる。
また、前記訂正可否判定ステップにおいて受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正ステップで訂正できると判定されたときに、前記制御量変更ステップにおいて、前記制御電力量と前記制御時間の少なくとも一方を増加させる。これにより、受信信号に含まれることになる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御期間をできるだけ長く設定することが可能になる。
本発明のデジタル復調装置の制御プログラムは、受信信号に選局処理を施すチューナとこのチューナからの受信信号に復調処理を施す復調器とを備えたデジタル復調装置の制御プログラムであって、前記受信信号に含まれる誤りを訂正する誤り訂正ステップと、前記チューナ及び前記復調器を構成する複数の回路部品のうちの少なくとも1つに供給される電力を制御する電力制御ステップと、前記電力制御ステップにより、前記回路部品に供給される電力をある制御電力量だけ変更する制御がある時間行われることによって、前記受信信号に発生することとなる仮想誤りの量を推定する誤り推定ステップと、前記誤り推定ステップで推定された前記仮想誤りの量から、前記電力制御ステップにおいて電力制御が行われることによって受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正ステップで訂正できるか否かを判定する訂正可否判定ステップと、前記訂正可否判定ステップの判定結果に基づいて、前記電力制御ステップによる電力制御の制御電力量と制御時間の少なくとも一方を変更する制御量変更ステップとを有し、前記訂正可否判定ステップにおいて受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正ステップで訂正できると判定されたときに、前記制御量変更ステップにおいて、前記制御電力量と前記制御時間の少なくとも一方を増加させることを特徴とするものである。
この制御プログラムによれば、電力制御により受信信号に含まれることとなる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御時間をできるだけ長く設定することが可能になる。従って、取得されるデータの信頼性を維持しつつ、チューナや復調器の消費電力をより効果的に低減することができる。
また、前記訂正可否判定ステップにおいて受信信号に含まれることとなる誤りを前記誤り訂正ステップで訂正できると判定されたときに、前記制御量変更ステップにおいて、前記制御電力量と前記制御時間の少なくとも一方を増加させる。これにより、受信信号に含まれることになる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御期間をできるだけ長く設定することが可能になる。
本発明の記録媒体は、前述のデジタル復調装置の制御プログラムを記録したことを特徴とするものである。この構成によれば、取得されるデータの信頼性を維持しつつ、チューナや復調器の消費電力をより効果的に低減することができる。
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。本実施形態のデジタル復調装置1は、例えば、図1に示すような携帯電話201(デジタル受信装置)に設けられている。そして、携帯電話201がアンテナから受信した信号Srはデジタル復調装置1によって復調され、復調された信号から文字、画像、音声、あるいは、プログラムなどのデータが再現されて、これらの情報が、携帯電話201に設けられた図示されていないディスプレイやスピーカーを通じて使用者に提供される。尚、本実施形態では、携帯電話用のデジタル復調装置1を例に挙げて説明するが、携帯電話以外のデジタル受信装置、例えば、デジタルTV、無線LAN装置、あるいは、無線LANを搭載したPC等に用いられるものであってもよい。
次に、携帯電話201のアンテナで受信されて、デジタル復調装置1により復調される信号Sr(受信信号)について少し説明しておく。ここでは、特に、日本の地上波デジタル放送に係る方式、即ち、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式を採用した場合を例に挙げて説明する。
まず、送信される文字、画像、音声のデータはそれぞれ所定の方式に基づいてデジタル化される。さらに、デジタル化されたデータに対して、伝送経路で発生する雑音や干渉波によって発生する誤りを受信側で訂正できるようにするための符号が付加される。このような符号としては、リードソロモン符号(RS符号)と畳み込み符号(ビタビ符号)とが用いられる。地上波デジタル放送で用いられるRS符号においては、伝送される204バイトのデータのうち、後ろ16バイト分がチェックビットであり、204バイト中最大8バイトの誤りが訂正可能である。また、ビタビ符号においては、符号化後の伝送されるnビットに対して、符号化前のデータがkビットのときの符号化率をk/nとして、1/2から7/8が規格化されている。そして、受信側のデジタル復調装置1において、これらRS符号化及びビタビ符号化されたデータを元に戻すRS復号及びビタビ復号がそれぞれ行われることにより、伝送時等で生じた誤りが訂正される。
ところで、伝送経路の状態によっては、伝送信号に対して時間的又は周波数的に誤りが連続的に集中するバースト誤りが発生する場合がある。そして、上記のようなRS符号化の誤り訂正によってある長さの信号に発生する誤りを訂正する場合、この長さの信号あたりにおける訂正可能な誤り数には限界があることから、上記のようなバースト誤りが発生すると、誤りの訂正が不可能となる場合がある。またビタビ符号化において、集中して誤りがあった場合は、誤った符号化訂正を行ってしまい、かえって誤りが増えてしまう場合もある。そこで、ISDB−T方式においては、このように伝送信号にバースト誤りが発生した場合にも誤り訂正が可能となるように、送信側において伝送されるデータを時間的あるいは周波数的に並べ替える種々のインターリーブ処理が施される。そして、受信側において、データを元に戻すデインターリーブ処理が施されることにより、伝送時に生じたバースト誤りが離散的に、かつ分散されることになる(図6参照)。このようなインターリーブ処理及びデインターリーブ処理については、後ほど詳しく説明する。
さらに、データの偏りによる伝送信号のエネルギーの偏りを防ぐため、エネルギー拡散も行われる。このエネルギー拡散は、擬似ランダムデータと伝送信号に係るデータとのビット単位の排他的論理和をとって、データをランダム化することにより行われる。
以上のような種々の処理がなされた後にデータが伝送されることになるが、ISDB−T方式の伝送方式としては、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)方式が採用されている。このOFDM方式は、データの搬送に、周波数の異なる複数の搬送波が用いられるマルチキャリア方式の1種である。
まず、送信データに含まれる複数のデータ値の配列順に従って、各データ値が異なる周波数の搬送波に振り分けられる。次に、複数の異なった周波数の搬送波に振り分けたデータ値列に高速フーリエ逆変換(Inverse Fast Fourier Transform:IFFT)が施されることにより、これら複数の搬送波が重ね合わされてOFDM信号が形成される。ここで、OFDM方式で用いられる搬送波の波形は相互に直交しており、搬送波同士が互いに干渉しないようになっている。尚、「2つの波形が直交する」とは、時間に対する波の振幅を表すそれぞれの関数同士を掛け合わせ、一周期に相当する積分範囲で時間積分したもの(内積)がゼロになることをいう。
さらに、直接波以外の遅延波の影響を低減するため、変調された複数の搬送波が重ね合わされたOFDM信号にはさらにガードインターバルが挿入される。このガードインターバルは、OFDM信号において有効シンボル長あたりの信号ごとに、この信号の一端部が複写されて他端部に挿入されたものである。尚、有効シンボル長とは、搬送波に1つのデータを載せる1つのシンボルの時間長さのことを言い、OFDM方式で用いられる搬送波の周波数間隔の逆数に相当する。このようにガードインターバルが挿入された信号が伝送経路へ送信される。
以上、受信信号Srが、ISDB−T方式で伝送された信号である場合について説明したが、このISDB−T方式の他、欧州のDAB(Digital Audio Broadcasting)、DVB−T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial)、DVB−H(-Handheld)方式、韓国のDMB(Digital Multimedia Broadcasting)方式、無線LANに用いられるIEEE802.11a/b/g/n方式で伝送された信号であってもよい。
次に、アンテナで受信された前述の受信信号Srを復調するデジタル復調装置1について詳細に説明する。図2に示すように、このデジタル復調装置1は、チューナ2、復調器3及び制御部4を有する。チューナ2は携帯電話201(図1参照)のアンテナから信号Srを受信し、この信号Srの増幅等を行い、さらに、信号SrをIF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号Siに変換して復調器3へと送信する。また、復調器3はチューナ2から送信されるIF信号Siを受信し、IF信号Siから復調信号、例えばTS(Transport Stream)信号を生成する。制御部4はチューナ2及び復調器3の動作をそれぞれ制御する。
まず、チューナ2について説明する。図3に示すように、チューナ2はRFアンプ部21、ミキサ部22、VCO・PLL部23、フィルタ部24及びIFアンプ部25を有する。チューナ2で受信された信号Srは、RFアンプ部21によって増幅されて、ミキサ部22に送られる。VCO・PLL部23は、制御部4から送られたチャンネル制御信号に従って、特定のチャンネルに相当する周波数に基づくミキシング信号を形成する。
このミキシング信号はミキサ部22に送られ、ミキサ部22において信号Srとミキシング信号が混合される。さらに、フィルタ部24において、混合された信号から不要な周波数の信号成分が除去されて、選択されたチャンネルに対応するIF信号が生成される(選局処理)。さらに、このIF信号は、IFアンプ部25において増幅されて、IF信号Siが復調器3へ送られる。
次に、復調器3について説明する。図4に示すように、復調器3は、チューナ2からのIF信号Siに復調処理を施す復調部40と、この復調部40の各部を制御する復調制御部41とを備えている。
まず、復調部40について説明する。図5に示すように、復調部40は、ADC部31、AFC・シンボル同期部32、FFT部33、フレーム同期部34、検波部35、波形等化部37及び誤り訂正部36を有する。そして、この復調部40は、チューナ2から送られたIF信号に復調処理及び誤り訂正処理を施す。
チューナ2から送信されたIF信号SiはADC部31に入力される。ADC部31(AD変換手段)は、アナログ信号であるIF信号Siをデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をAFC・シンボル同期部32へと送る。AFC・シンボル同期部32は、ADC部31から送られたデジタル信号に対してフィルタ処理などの補正処理等を行う。さらに、AFC・シンボル同期部32は、後述のFFT部33によるフーリエ変換の開始点、つまり、シンボル同期点を決定する。そして、同期が取られたデジタル信号をFFT部33へと送る。さらに、AFC・シンボル同期部32は、有効シンボル長を示すモードに係る情報を導出し、このモードに係る情報を制御部4へ送る。ここで、有効シンボル長を示すモードには、モード1(有効シンボル長252μs)、モード2(有効シンボル長504μs)及びモード3(有効シンボル長1008μs)がある。
尚、シンボル同期点の決定においては、遅延して到達する遅延波等の影響が最も少ない最適な受信が可能な点が同期点として設定される。このような同期点の決定方法として、信号の相関を参照する方法や、パイロット信号を用いて位相のずれを補正する方法等が用いられる。
FFT(Fast Fourier Transform:高速フーリエ変換)部33は、AFC・シンボル同期部32から送られたデジタル信号をフーリエ(時間−周波数)変換する。FFT部33に入力されるデジタル信号はOFDM信号であることから、逆フーリエ変換された波形、即ち、データ値に応じて変調された複数の搬送波が重ね合わされた波形を有する。そして、FFT部33は、このように重ね合わされた波形から、データ値に従って変調された複数の搬送波のデジタル信号をフーリエ変換によって取り出す。さらに、FFT部33は、各搬送波に振り分けられた各データ値に対応するデジタル信号を、データの元の配列順で時間的に並ぶように並べ替えて、OFDM信号形成前のデータに対応するデジタル信号を再生する。そして、FFT部33はこのデジタル信号をフレーム同期部34へと送る。
フレーム同期部34は、FFT部33から送られたデジタル信号におけるフレーム単位での同期をとる。1フレームは204のシンボルからなり、後述するように、この1フレームの信号から1まとまりのTMCC情報が取得される。フレーム同期部34によって同期が取られたデジタル信号は波形等化部37へと送られると同時に、検波部35へも送られる。
波形等化部37は、デジタル信号に含まれるスキャッタードパイロット信号等に基づき、フレーム同期部34によって同期が取られたデジタル信号に対して波形等化を行う。そして、波形等化によって信号補正を施した後、データ値に相当するデジタル信号に復調し、復調したデジタル信号を誤り訂正部36へ送る。また、波形等化部37は、波形等化が施されたデジタル信号に含まれるスキャッタードパイロット信号等に基づき各搬送波のコンスタレーションの規定値からのずれを導出する(ずれ導出手段)。そして、導出したコンスタレーションの規定値からのずれから、受信信号のMER(Modulation Error Ratio)あるいはCN比に係る情報を取り出して制御部4へと送る。
一方、検波部35は、1フレームの信号ごとに含まれるTMCC情報を取り出し、このTMCCに係る情報を復調制御部41及び制御部4へと送る。TMCC情報には、64QAM、16QAM、QPSK等のキャリア変調方式、畳み込み符号化率(1/2、2/3、3/4、5/6、7/8)、ガードインターバル長等の伝送方式に係る情報が含まれる。また、ガードインターバル長として、有効シンボルの1/4,1/8,1/16及び1/32の長さの何れかが採用される。
誤り訂正部36(誤り訂正手段)は、波形等化部37からのデジタル信号にデインターリーブ処理を施すデインターリーブ部43,44,45,47と、符号化デジタル信号の誤り訂正を行い、デジタル信号に復号処理を施す復号部46,49と、エネルギー逆拡散部48とを有する。
デインターリーブ部としては、送信側で行われた種々のインターリーブ処理に対応する、周波数デインターリーブ、時間デインターリーブ、ビットデインターリーブ、及び、バイトデインターリーブをそれぞれ行う、周波数デインターリーブ部43、時間デインターリーブ部44、ビットデインターリーブ部45、バイトデインターリーブ部47がある。そして、種々のインターリーブ処理が施されたデジタル信号が、これらのデインターリーブ処理により、インターリーブ処理前のデジタル信号に戻される。
ここで、送信側のインターリーブ処理と受信側のデインターリーブ部によるデインターリーブ処理について補足しておく。例えば、送信側の時間インターリーブと、この時間インターリーブが施されたデータを元に戻す受信側の時間デインターリーブは、以下のように行われる。図6は、時間インターリーブ及び時間デインターリーブの一例を示す模式図である。この図6においては、インターリーブ及びデインターリーブ処理が施される前後の3つの信号Siが示されている。これらの信号Siは、それぞれ、時間的に連続する複数のシンボルSbからなる。
変調された複数の搬送波からなるOFDM信号Siは、送信側の時間インターリーブにより、シンボルSbの長さに対応するデータごとに、あらかじめ決められた順序に従って、図6のように並べ替えられる。このように並べ替えられたデータに対応する信号が送信されたときに、伝送経路の状態によって、信号の一部に連続的なバースト誤り101が発生したとする。
このバースト誤り101を含む信号Siが携帯電話201で受信されると、時間インターリーブにより一旦並べ替えられたデータが、時間デインターリーブにより再び元の順序に戻される。このとき、伝送経路において複数のシンボルに跨って発生したバースト誤り101は、時間デインターリーブによりシンボルごとの誤り102のように分散される。
即ち、図6に示すように、時間インターリーブによって各シンボルは時間インターリーブ前の時間的な位置よりも後ろの位置に移動するように並べ替えが行われる。また、各シンボルにおける周波数の異なる搬送波に含まれる信号は、並べ替え後の信号におけるそれぞれ別の時間的な位置に含まれることとなる。このように、時間的に誤りが集中するバースト誤りが発生した場合でも、時間デインターリーブ後には誤りが分散されるため、復号部における復号処理により誤り訂正が可能となる。
また、送信側のバイトインターリーブでは、204バイトのRS符号化の単位でデータが分散されるように、バイト単位の信号の並べ替えが行われる。また、ビットインターリーブでは、ビット単位で信号の並べ替えが行われる。さらに、周波数インターリーブでは、OFDM信号Siに含まれる複数の搬送波間でシンボルの並べ替えが行われる。そして、受信側のバイトデインターリーブ、ビットデインターリーブ、及び、周波数デインターリーブにより、それぞれ、インターリーブ前のデータに戻される。
波形等化部37から送られたデジタル信号を復号する復号部としては、ビタビ復号部46とRS復号部49とがある。そして、送信側においてビタビ符号化及びRS符号化が施されたデジタル信号は、前述のデインターリーブ処理でその誤りが分散された後に、ビタビ復号部46及びRS復号部49により符号化前のデジタル信号に戻されることにより、伝送時等で生じた誤りが訂正される。尚、本実施形態において、「誤り訂正が可能」とは、復号の後でのビット誤り率が所定値以下となる場合をいう。例えば、RS復号後のビット誤り率が1×10−11以下となる場合が、RS復号及びビタビ復号による誤り訂正が可能な場合である。
エネルギー逆拡散部48は、波形等化部37から送られたデジタル信号を、エネルギー拡散される前のデジタル信号に戻す。
ここで、復号部のうち、ビタビ符号化された信号を復号するビタビ復号部46についてさらに詳しく説明する。ビタビ符号化された信号の各データには、このデータに先行する1つ以上のデータの並び方に依存したデータが付加されている。そして、ビタビ復号部46は、ある時点に入力されたデータとこれに先行して入力されたデータからなる所定数のデータが連なったデータ列を抽出する。さらに、抽出された入力データ列から矛盾がないと判断される並べ方で並べられた同数のデータからなる、複数通りのデータ列とを比較する。このとき、入力データ列が誤りを含んでいない場合には、候補として挙げられた複数通りのデータ列の1つとデータの並びが一致する。しかし、入力データ列が誤りを含んでいる場合には、このデータ列の何れかのビットが反転しており、候補として挙げられた複数通りのデータ列と一致しない。そこで、複数列のデータ列のうち、入力データ列と比較して反転しているビットの数(ハミング距離)が小さいデータ列が最も確からしいと推定して、入力データ列を推定されたデータ列に訂正する。
以上は、ビタビ符号化の硬判定の場合について説明したが、一般的にはさらに性能を向上させるため、演算量・メモリ量は増加するがデータの信頼性を用いた軟判定が用いられている。通信分野で用いられる軟判定は、各搬送波の復調データの位相と大きさが本来あるべき位置とどの程度ずれているかによって信頼性を設定し、誤りのある無しに関わらず、各データのハミング距離に反映してデータ列の確からしさを推定している。
このように、ビタビ復号部46に入力されるデータ列の各データには、上述のように受信状況などにより予め信頼性が設定されており、ビタビ復号部46は、この信頼性に基づいてハミング距離を算出することにより、誤り訂正性能を向上させる。
また、前述したように、ビタビ符号方式は、先行するデータの履歴から符号化を行う方法であることから、このビタビ符号化された信号を復号するビタビ復号部46において、トレースバック長(過去に遡って参照するデータの数)が長いほど、誤り訂正性能は高くなる。そこで、ビタビ復号部46は、信頼性に基づいてトレースバック長を変更することによりその誤り訂正性能を変更するように構成されていてもよい。即ち、信頼性が高い場合(信号状態が良好な場合)には、トレースバック長を短くすることにより復号処理の演算量等を少なくして消費電力を低減できる。一方、信頼性が低い場合(信号状態が悪い場合)には、トレースバック長を長くすることにより、誤りをより確実に訂正することができるようになる。
さらには、この畳み込み符号化された信号を復号するビタビ復号部46において、データの信頼性を反映させた軟判定を用いる場合には、信頼性を反映させない硬判定と比較して、誤り訂正性能は高くなる。そこで、ビタビ復号部46は、入力された信号Siの信頼性に基づいて、硬判定と軟判定を切り換えることによりその誤り訂正性能を変更するように構成されていてもよい。即ち、信号状態が良好で信頼性が高い場合には、この信頼性に基づくハミング距離の算出を行わない硬判定を選択することにより、復号処理の演算量等を少なくして消費電力を低減できる。一方、信号状態が悪く信頼性が低い場合には、信頼性に基づいてハミング距離を算出する軟判定を選択することにより、消費電力は増すが、誤りをより確実に訂正することができるようになる。
尚、誤り訂正部36は、訂正した誤りの数に基づき、デジタル信号のビット誤り率を導出し(誤り率導出手段)、導出したビット誤り率を制御部4へと送る。このビット誤り率は、ビットデインターリーブ処理が施された直後の信号のビット数に対する、ビタビ復号及びRS復号によって訂正されたビット数の割合であってよい。あるいは、バイトデインターリーブ処理が施された直後の信号のビット数に対する、RS復号によって訂正されたビット数の割合であってもよい。
以上説明した種々のデインターリーブ、復号及びエネルギー逆拡散は、送信側で行われた種々のインターリーブ、符号化及びエネルギー拡散の順番に対応する逆の順番で行われる。即ち、図5に示すように、周波数デインターリーブ、時間デインターリーブ、ビットデインターリーブ、ビタビ復号、バイトデインターリーブ、エネルギー逆拡散及びRS復号の順に行われる。
次に、復調制御部41について説明する。復調制御部41は、制御部4からの指令を受けて、復調部40を構成する複数の回路部品の動作を制御する。ここで、復調制御部41は、それぞれの機能を果たすように特化された回路からなる部品であってもよいし、あるいは、汎用のCPU、ROM、RAM等を備え、ROMに記録されたプログラムをCPUで実行させることにより、それぞれの機能を果たすように構成されていてもよい。
また、この復調制御部41は、チューナ2から復調部40に入力されるIF信号の強さが一定となるように、チューナ2のRFアンプ部21及びIFアンプ部25(図3参照)のゲインを制御するAGCコントローラへ、IF信号の大きさに係る情報を出力する。
次に、制御部4について説明する。制御部4(制御手段)は、CPU、ROM、RAM等を備え、ROMに記録された種々のプログラムをCPUで実行させることにより、チューナ2及び復調器3の各部の動作に係る種々の制御を行うように構成されている。このような種々の制御の中でも、チューナ2及び復調部3を構成する複数の回路部品のうちの少なくとも1つに供給される電力の制御について、特に説明する。制御部4は、例えば、チューナ2を構成する回路部品であるRFアンプ部21、ミキサ部22、VCO・PLL部23、フィルタ部24及びIFアンプ部25の消費電力をある期間減少させ、あるいは、電源をOFFにすることにより、デジタル復調装置1の全体の消費電力を低下させる。
ところで、制御部4により、前述したような回路部品の電力制御が行われることによって、信号Siに誤りが発生する場合がある。図7は、この電力制御が信号Siへの影響を示すタイミングチャートである。尚、以下の説明では、信号の受信状態が安定しており、特に断りがない限り、電力制御によって発生する誤り以外の誤りが常に一定である場合が想定されている。
曲線70は、電力制御対象である回路部品への供給電力を示している。また、曲線71は、信号Siに含まれる誤りの量を示している。電力制御部94による電力制御が行われて、回路部品に供給される電力が、ある制御電力量ΔPだけ、ある時間Tの間減少したときには、この電力減少に起因して、信号Siには誤り74aが発生する。尚、図7においては、電力制御によって発生する誤り74aが、信号Siに含まれるシンボルSbのうちの1つのシンボル73内に収まっている場合が想定されている。
ところで、信号Siの1つのシンボル73に含まれる誤りは、種々のデインターリーブ処理により分散される。例えば、図7に示すように、時間デインターリーブ処理により時間インターリーブ長Liの範囲で分散される。つまり、制御部4による電力制御に起因して生じた誤り74aは、図7の一点鎖線の矢印が示すように、時間デインターリーブ処理によって時間インターリーブ長Li内において分散された誤り74bとなるため、誤り訂正部36により誤りを訂正しやすくなる。
しかし、電力制御が行われる期間Tの長さによっては、電力制御に起因して生じた誤り74aがデインターリーブ処理により分散されても、その分散された誤り74bが、誤り訂正部36で訂正可能な閾値を超える場合もある。このような場合には、誤り訂正部36で誤り74bを完全に訂正できず、一部が信号Siに残存することになるため、最終的に取得されるデータの信頼性が低下してしまう。そこで、本実施形態のデジタル復調装置1は、電力制御が行われることによって生じる誤りが、誤り訂正部36が訂正できる範囲内に収まる範囲内で、電力制御の制御時間を設定するように構成されている。
図8に示すように、制御部4は、誤り推定部91、訂正可否判定部92、制御量変更部93、及び、電力制御部94を備えている。
誤り推定部91(誤り推定手段)は、回路部品の電力を予め設定された所定の制御電力量ΔPだけ減少させる制御が、ある制御時間Tの間行われたと仮定した場合に、信号Siに発生することとなる仮想的な誤りの量(仮想誤りの量)を推定するとともに、誤りが発生するシンボルを特定する。この仮想誤りの量は、電力制御の対象となる部品、その制御電力量ΔP、キャリア変調方式、あるいは、符号化率等に係る変数に依存する。そこで、誤り推定部91は、これらの変数と誤り量との対応関係を示すテーブルを予め保持しており、このテーブルと検波部35から送られたキャリア変調方式などを含むTMCC情報に基づいて仮想誤りの量を導出する。あるいは、誤り推定部91は、前述の変数と誤り量の関数から仮想誤りの量を求めるものであってもよい。
訂正可否判定部92(訂正可否判定手段)は、電力制御が行われることによって信号Siに含まれることとなる誤りを誤り訂正部36が訂正できるか否かを判定する。具体的には、訂正可否判定部92は、まず、誤り推定部91で推定された誤り量(仮想誤りの量)と、誤り訂正部36(誤り率導出手段、制御前誤り導出手段)で導出されたビット誤り率(制御前誤りの量)とから、電力制御が行われたときに信号Siに含まれることとなる誤りの総量を算出する。
その一方で、訂正可否判定部92は、誤り訂正部36が誤り訂正可能な誤りの量を閾値として保持している。そして、算出された誤りの総量と閾値とを比較することで、誤りを訂正可能か否かを容易に判定できるようになっている。即ち、信号Siに含まれる誤りの総量がこの閾値以下である場合には、訂正可否判定部92は、電力制御が行われたときに信号Siが含むこととなる誤りを誤り訂正部36で訂正できると判定する。一方、信号Siに含まれる誤りの総量が前述の閾値を超える場合には、訂正可否判定部92は、電力制御が行われたときに信号Siが含むこととなる誤りを誤り訂正部36で訂正できないと判定する。尚、前述したように、本実施形態では、信号状態が比較的安定している場合が想定されていることから、誤り訂正部36から送られる誤り率は一定の時間範囲(例えば、時間インターリーブ長Li)における平均値でよい。
尚、誤り推定部91が、仮想誤りの量として、電力制御によって発生する仮想的なノイズの量を導出してもよい。この場合、訂正可否判定部92は、制御前誤り量として、波形等化部37から送られたCN比に係る情報から、制御前の信号SiのCN比を導出する(CN比導出手段)。さらに、誤り推定部91で推定された仮想的なノイズの量と、制御前の信号SiのCN比とから、電力制御が行われることによって信号Siに含まれることとなる誤りの総量に相当する、制御後のCN比を算出する。そして、この制御後のCN比を、CN比に関する所定の閾値と比較することにより、誤り訂正の可否を判定することになる。
あるいは、誤り推定部91が、仮想誤りの量として、電力制御によって発生するコンスタレーションの規定値からの仮想的なずれを導出してもよい。この場合、訂正可否判定部92は、この仮想的なコンスタレーションのずれと、波形等化部37(ずれ導出手段)で導出された制御前のコンスタレーションのずれから、電力制御が行われることによって信号Siに含まれることとなる誤りの総量に相当する、制御後のコンスタレーションのずれを算出する。そして、この制御後のコンスタレーションのずれを、コンスタレーションのずれに関する所定の閾値と比較することにより、誤り訂正の可否を判定することになる。
尚、訂正可否判定部92が保持する誤り量に関する閾値は、キャリア変調方式や畳み込み符号の符号化率によって異なる。このため、訂正可否判定部93は、キャリア変調方式等と種々の閾値との対応関係を示すテーブルを保持しており、このようなテーブルとTMCC情報とから適正な閾値を求める(閾値導出手段)。
そして、訂正可否判定部92により、電力制御が行われたと仮定したときに受信信号に含まれることとなる誤りを誤り訂正部36で訂正可能であると判定されたときには、電力制御部94(電力制御手段)は、回路部品に供給される電力を、予め設定された制御電力量ΔPだけ制御時間Tの間減少させる制御を行う。
一方、訂正可否判定部92により、受信信号に含まれることとなる誤りを誤り訂正部36で訂正できないと判定されたときには、制御量変更部93が前述の制御時間Tを減少させる。このように、電力制御の制御時間Tを減少させると、この電力制御が行われることによって信号Siに生じる誤りの量が減るため、誤り訂正部36において誤りを訂正しやすくなる。そこで、訂正可否判定部92の判定結果が変わるまで(即ち、電力制御が行われたと仮定したときに信号Siに含まれることとなる誤りを誤り訂正部36で訂正可能と判定されるまで)、制御量変更部93は制御時間Tを段階的に減少させる。そして、誤り訂正可能と判定されたときには、電力制御部94は、最終的に決定された制御時間Tの間、電力減少制御を行う。この構成によれば、電力制御が行われたことによって信号Siに含まれることとなる誤りが、誤り訂正部36により確実に訂正されることとなり、正確なデータを取得できるようになる。
尚、訂正可否判定部92により、受信信号に含まれることとなる誤りを誤り訂正部36で訂正できないと判定されたときには、制御量変更部93が、制御時間Tを減少させる代わりに、1回の電力制御における制御電力量ΔPを減少させることにより、電力制御が行われることによって信号Siに生じる誤りの量を減らすように構成されていてもよい。あるいは、制御量変更部93が、制御電力量ΔPと制御時間Tとを同時に変更するように構成されていてもよい。この場合、誤り訂正部36で訂正可能な範囲において、回路部品への供給電力が最も少なくなるように、制御電力量ΔPと制御時間Tが設定される。
また、図7に示すように、あるシンボル73の範囲内で生じた誤り74aは、時間デインターリーブ後には、時間インターリーブ長Liの範囲にわたって信号Siに及ぶ。そのため、電力制御部94は、複数回の電力制御によりそれぞれ生じる誤りが重ならないように、時間インターリーブ長Li以上の時間間隔を空けて電力制御を行うことが好ましい。この場合には、誤り訂正部36において信号Siの誤りを訂正しやすくなる。
また、図7、図8に示すように、電力制御部94は、回路部品がシンボル73の先端を処理するタイミングで、その回路部品の電力減少制御を開始することが好ましい。この場合には、電力制御によって発生する誤りの影響が及ぶシンボルの数が最小となるため、電力制御に起因して生じる誤りが少なくなる。
以上の説明では、図7に示すように、制御部4により電力制御が行われることによって発生する誤りが、信号Siに含まれる複数のシンボルSbのうち1つのシンボル73の範囲内に収まっている場合を例に挙げて説明したが、電力制御の制御時間Tの長さによっては、連続する複数のシンボル73に亙って誤りが生じる場合もある。例えば、図9は、1回の電力制御の制御期間Tが2以上のシンボル73a,73bに跨っており、これら連続する2つのシンボル73a,73bに誤りが生じる場合を示している。この場合には、2つのシンボル73a,73bに生じた誤り74aは、それぞれ時間インターリーブ長Liに亙って分散されるため、時間デインターリーブ後には、これら2つのシンボル73a,73bに生じた誤り74bが一部重なり合い、曲線72のようになる。そして、重なり合った誤りが閾値を超えない場合には、誤り訂正部36による訂正が可能となる。
ところで、この図9に示すように、前述の制御量変更部93により最終的に設定された制御時間TがシンボルSbの有効シンボル長よりも長く、且つ、その制御時間Tの間における回路部品への供給電力がほぼ0(電源OFF状態)となる場合には、1以上のシンボルが完全につぶれてしまい、そのシンボルのデータを取り出すことができなくなる。この場合に、復調部40において、このような完全につぶれてしまったシンボルに対して、信号状態が正常なシンボルと同じ復調処理を施すことは、余分な電力を消費することになり無駄である。
そこで、復調制御部41(復調制御手段)は、制御量変更部93により最終的に決定された制御時間Tが、AFC・シンボル同期部32から送られたモード情報に含まれる有効シンボル長より長いときには、電力制御が行われることによって仮想的な誤りが生じると予測されたシンボルを処理する際の復調部40の各部の動作を、その性能が低下するように制御して、復調器3全体の消費電力を低下させる。
この復調制御部41による性能低下制御についてより具体的に説明する。まず、復調制御部41は、前述の誤り推定部91により仮想的な誤りが発生すると予測されたシンボルを処理するタイミングで、ADC部31の分解能(ビット数)、あるいは、サンプリング周波数を小さくするなど、ADC部31の性能を低下させるように供給電力を減少させる。あるいは、ADC部31の電源をOFFにしてもよい。
さらに、復調制御部41は、ADC部31で変換されたデジタル信号を処理するFFT部33等のデジタル回路の少なくとも1つに対して、誤りが生じてつぶれてしまうと予測されるシンボル単位で、電源をOFFにするなどして信号Siの処理を停止させる。
まず、AFC・シンボル同期部32においては、ADC部31から正常なデータが入力されなくなるので、シンボル同期処理を停止させる。このとき、前後のデータに悪影響が出るのを防止するために直前の状態を保持させる。例えば、AFC・シンボル同期部32が信号の相関を参照してシンボル同期点を決定する場合には、その自己相関計算を止めて、シンボル同期点に係る情報を前の状態に保持させる。また、FFT部33におけるFFT処理を停止させる。
ところで、FFT処理を停止すると正確なシンボルのデータを抽出できなくなる。また、FFT処理を停止しない場合であっても、FFT以外の処理(例えば、シンボル同期等)の停止によって、正確なシンボルのデータの抽出はできなくなる。この場合、当該シンボルにかかるTMCC情報が誤るため、検波部35における検波処理(TMCC情報の取り出し)を当該シンボルにおいて停止させ、前のフレームの当該シンボルにかかるTMCCのデータに基づき、当該シンボルのTMCC情報を保持あるいは再現させる。また、波形等化部37において波形等化処理を停止させる。ここで、ノイズの影響を少なくするため、時間的にスキャッタードパイロット信号を用いてフィルタ処理、あるいは平均化処理を行って等化処理を行う場合には、前後のシンボルに悪影響が出るのを防ぐため、このようなフィルタ処理や平均化処理に、信号状態が悪化したシンボルの情報を用いない。
さらに、周波数デインターリーブ部43における周波数デインターリーブ処理を止める。
このように、復調制御部41が、シンボル単位で、AFC・シンボル同期部32から周波数デインターリーブ部43までのデジタル回路の処理を停止させるため、各デジタル回路における不必要な演算量等が減り、消費電力が小さくなる。
尚、前述したように、復調制御部41は、チューナ2のRFアンプ部21及びIFアンプ部25のゲインを制御するAGCコントローラへ、IF信号の大きさに係る情報を出力するが、上記の制御が行われたときにはそのIF信号に係る情報が誤るため、この制御を行う場合にはその前のシンボルにおける情報を保持してAGCコントローラへ出力する。
そして、以上の性能低下制御が行われた後に、信号状態が正常な(電力制御に起因する誤りが発生しない)シンボルが入力されるときには、復調制御部41は、ADC部31の供給電力を元に戻すと共に、FFT部33等のデジタル回路を元の状態に戻して、信号Siに対する処理を正常に行わせる。
ところで、復調制御部41により、ADC部31の電力減少制御やそれ以降のデジタル回路の処理を停止する制御が行われたときには、周波数デインターリーブ部43から時間デインターリーブ部44へデータが出力されなくなり、時間デインターリーブ処理を正常に行うことができなくなる。そこで、本実施形態では、図5に示すように、復調部40内に、デジタル回路の処理がシンボル単位で停止したときに、信号Siの代わりに時間デインターリーブ部44へシンボル単位のダミー信号を供給するダミー信号生成部50が構築されている。このダミー信号生成部50は、復調制御部41からの指令を受けて、信号状態が悪化したシンボルの代わりに、時間デインターリーブ部44へダミー信号を出力する。具体的には、ADC部31の電力制御が行われたときに、ADC部31から出力されるクロックに従って、ダミー信号生成部50からダミー信号が時間デインターリーブ部44へ出力される。
ここで、前述したように、ビタビ復号部46に入力されるデータ列の各データには、受信状況などに基づいて予め信頼性が設定され、ビタビ復号部46は、この信頼性に基づいて誤り訂正性能を変更するようになっている。しかし、前述の復調制御部41による制御が行われると、ビタビ復号部46には、設定された信頼性とは関係なく、誤った信号(ダミー信号)が入力されることになるため、ビタビ復号部46における誤り訂正性能が低下する虞がある。
そこで、ダミー信号生成部50は、ダミー信号の信頼性を最も低く設定する。この場合には、ダミー信号が入力されたときには、ビタビ復号部46は、入力された信号の信頼性が最も低いものとしてハミング距離を算出することにより、ダミー信号以外の信号に基づいて誤り訂正を行うため、その誤り訂正性能を向上させることができる。さらに、ダミー信号が入力されたときには、ビタビ復号部46は、トレースバック長を長くすることにより誤り訂正性能を高くする。そのため、ダミー信号を含む入力信号の誤りをより正確に訂正できる。
次に、電力制御部94による電力制御を含む一連の制御について、図10のフローチャートを参照して説明する。尚、図10において、Sn(n=1,2,3・・・)は各ステップを示す。
まず、制御部4は、復調器3から有効シンボル長のモード、受信信号の伝送方式等のTMCC情報を取得する(S1)。次に、誤り推定部91により、回路部品の電力を予め設定された所定の制御電力量ΔPだけ減少させる制御が、ある制御時間Tの間行われたと仮定した場合に、誤りが発生すると予想されるシンボルを特定し、その仮想的な誤りの量を推定する(S2:誤り推定ステップ)。そして、訂正可否判定部92により、誤り推定部91で推定された仮想誤りの量と、誤り訂正部36から送られた誤り率等(制御前誤りの量)とから、信号Siに含まれることとなる誤りの総量を算出して所定の閾値と比較し、この誤りを誤り訂正部36が訂正可能か否かを判定する(S3:訂正可否判定ステップ)。
訂正可否判定部92において、誤り訂正部36により信号Siに含まれることになる誤りの訂正が可能であると判定された場合には(S3:Yes)、電力制御部94により、予め設定された所定の制御電力量ΔPだけ、所定の制御時間Tの間、回路部品の電力を減少させる制御を行う(S4:電力制御ステップ)。尚、このとき、電力制御部94は、回路部品がシンボルの先端を処理するタイミングで、その回路部品の電力を減少させる。
一方、訂正可否判定部92において、誤り訂正部36により、信号Siに含まれることになる誤りの訂正が不可能であると判断された場合には(S3:No)、制御量変更部93により制御時間Tと制御電力量ΔPの少なくとも一方を減少させる(S5:制御量変更ステップ)。ここで、訂正可否判定部92において、電力制御が行われたと仮定したときに信号Siに含まれることとなる誤りを誤り訂正部36で訂正可能と判定されるまで、制御量変更部93は制御時間Tと制御電力量ΔPの少なくとも一方を減少させる(S2,S3,S5)。そして、信号Siに含まれることとなる誤りが訂正可能と判定されたときには(S3:Yes)、電力制御部94により、最終的に決定された制御時間Tの間、決定された制御電力量ΔPだけ回路部品の電力を減少させる制御を行う(S4)。
ここで、電力制御の制御時間Tが有効シンボル長よりも長く、さらに、回路部品への供給電力が0(電源OFF)に近い値まで減少する場合には(S6:Yes)、1以上のシンボルが完全につぶれることから、復調制御部41により、復調部40を構成する回路部品がそのシンボルを処理する際の動作を、その性能が低下するように制御する(S7)。具体的には、ADC部31に供給される電力を減少させる、あるいは、電源をOFFさせる。さらに、ADC部31から出力されたデジタル信号を処理する、AFC・シンボル同期部32から周波数デインターリーブ部41までの複数のデジタル回路のうちの少なくとも1つにおける処理を停止させる。一方、電力制御の制御時間Tが有効シンボル長よりも短い場合には(S6:No)、復調制御部41は、復調部40の性能低下制御を行わない。但し、電力制御の制御時間Tが有効シンボル長よりも短い場合であっても、電力制御の影響が大きくシンボルがつぶれてしまう場合には、復調制御部41による性能低下制御を行う。
そして、以上の種々の制御が行われることによって信号Siに最終的に含まれることとなった誤りを、誤り訂正部36により訂正する(S8)。
以上説明したデジタル復調装置1によれば、次のような効果が得られる。
電力制御部94により、回路部品へ供給される電力をある制御電力量だけ変更する制御がある時間行われることによって受信信号に含まれることとなる誤りを、誤り訂正部36が訂正できるか否かが訂正可否判定部92により判定され、その判定結果に基づいて、制御量変更部93により制御期間や制御電力量が変更される。具体的には、訂正可否判定部92により、信号Siに含まれることとなる誤りを訂正できないと判定されたときには、制御量変更部93は、電力制御の制御時間や制御電力量を減少させる。そのため、電力制御が行われることによって受信信号に含まれることとなる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御時間をできるだけ長く設定することが可能になる。従って、取得されるデータの信頼性を維持しつつ、消費電力を効果的に低減することができる。
電力制御の制御時間が有効シンボル長よりも長く、シンボルが完全につぶれるような場合には、復調制御部41は、復調部40を構成する回路部品の、そのシンボルを処理する際の動作を、その性能が低下するように制御する。そのため、復調器3において無駄な復調処理が行われなくなり、復調器3の消費電力が低下する。
次に、前記実施形態に種々の変更を加えた変更形態について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
1]前記実施形態では、訂正可否判定部92により、信号Siに含まれることとなる誤りを訂正できないと判定されたときには、制御量変更部93により、電力制御の制御電力量や制御時間を減少させているが、逆に、訂正可否判定部92により、信号Siに含まれることとなる誤りを訂正できると判定されたときには、制御量変更部93により、電力制御の制御電力量と制御時間の少なくとも一方を増加させてもよい。即ち、誤り訂正可能と判定されている間は、制御電力量や制御期間を段階的に増加させていき、誤り訂正不可能と判定されたときは、直前に訂正可能と判定されたときの制御電力量や制御時間を採用して電力制御を行う。このような構成でも、電力制御が行われることによって受信信号に含まれることとなる誤りを訂正できる範囲内で、制御電力量をできるだけ大きく設定する、あるいは、制御時間をできるだけ長く設定することが可能になる。
2]前記実施形態では信号状態が安定している状態が想定されているが、信号状態が不安定な場合にも本発明を適用可能である。但し、前述のように、信号状態が安定している場合には、訂正可否判定部92による訂正可否の判定の際に、時間インターリーブ長単位で平均した誤り率やCN比等が用いて誤りを算出してもよいが、信号状態が不安定な場合(例えば、電力制御による誤り以外の誤りが大きく変動する場合)には、さらに小さな時間単位で平均した誤り率やCN比等が用いられることが好ましい。この場合には、より短い時間間隔で誤りの算出が行われるため、信号状態が不安定で誤り量が短期間に変化する場合にも誤りを訂正可能かどうかが確実に判断することができる。あるいは、誤り率やCN比等として、ある時間範囲での平均的な値ではなく、瞬間的な値が用いられてもよい。
3]前記実施形態では、制御部4がチューナ2及び復調器3の外部に構築されているが、制御部4の機能を有する各部がチューナ2や復調器3の内部に構築されていてもよい。あるいは、前述した実施形態のデジタル復調装置1を備えた携帯電話等のデジタル受信装置を制御するホストCPUとこのCPUを機能させるプログラムとによって、制御部4が構築されていてもよい。また、復調制御部41も復調器3の内部に構築されている必要は必ずしもなく、復調器3の外部に構築されていてもよい。