本発明のチューナは、主信号の先端及び後端のいずれか一方に連なる前記主信号の一部の区間であるサブガードインターバルを複写したものがガードインターバルとして前記主信号の先端及び後端の他方に連なるように前記主信号の外側に付加されたシンボルが複数連なった受信信号に選局処理を施すものである。そして、本チューナは複数の回路部品を有しており、デジタル復調装置の消費電力を低下させるための以下の手段を有している。第1は、一方のシンボルにおけるガードインターバルが他方のシンボルにおけるサブガードインターバルと連なるように互いに隣接した2つのシンボルの境界を跨ぐ制御期間を特定する制御期間特定手段である。第2は、前記複数の回路部品のうちの少なくともいずれか1つでの消費電力が前記制御期間特定手段が特定した前記制御期間内において当該制御期間外におけるよりも小さくなるように、当該少なくともいずれか1つの回路部品での消費電力を制御する電力制御手段である。
また、本発明のデジタル復調装置は、主信号の先端及び後端のいずれか一方に連なる前記主信号の一部の区間であるサブガードインターバルを複写したものがガードインターバルとして前記主信号の先端及び後端の他方に連なるように前記主信号の外側に付加されたシンボルが複数連なった受信信号を復調するデジタル復調装置であって、受信信号に選局処理を施すチューナと、前記チューナからの信号に復調処理を施す復調器とを構成する複数の回路部品と、一方のシンボルにおけるガードインターバルが他方のシンボルにおけるサブガードインターバルと連なるように互いに隣接した2つのシンボルの境界を跨ぐ制御期間を特定する制御期間特定手段と、前記複数の回路部品のうちの少なくともいずれか1つでの消費電力が前記制御期間特定手段が特定した前記制御期間内において当該制御期間外におけるよりも小さくなるように、当該少なくともいずれか1つの回路部品での消費電力を制御する電力制御手段とを備えている。
また、本発明のチューナ制御方法は、主信号の先端及び後端のいずれか一方に連なる前記主信号の一部の区間であるサブガードインターバルを複写したものがガードインターバルとして前記主信号の先端及び後端の他方に連なるように前記主信号の外側に付加されたシンボルが複数連なった受信信号に選局処理を施すチューナを制御する方法である。そして、本チューナ制御方法は、デジタル復調装置の消費電力を低下させるための以下のステップを有している。第1は、一方のシンボルにおけるガードインターバルが他方のシンボルにおけるサブガードインターバルと連なるように互いに隣接した2つのシンボルの境界を跨ぐ制御期間を特定する制御期間特定ステップである。第2は、前記チューナを構成する複数の回路部品のうちの少なくともいずれか1つでの消費電力が前記制御期間特定ステップで特定された前記制御期間内において当該制御期間外におけるよりも小さくなるように、当該少なくともいずれか1つの回路部品での消費電力を制御する電力制御ステップである。
また、本発明のデジタル復調装置制御方法は、主信号の先端及び後端のいずれか一方に連なる前記主信号の一部の区間であるサブガードインターバルを複写したものがガードインターバルとして前記主信号の先端及び後端の他方に連なるように前記主信号の外側に付加されたシンボルが複数連なった受信信号を復調するデジタル復調装置の制御方法であって、一方のシンボルにおけるガードインターバルが他方のシンボルにおけるサブガードインターバルと連なるように互いに隣接した2つのシンボルの境界を跨ぐ制御期間を特定する制御期間特定ステップと、受信信号に選局処理を施すチューナと、前記チューナからの信号に復調処理及び誤り訂正処理を施す復調器とを構成する複数の回路部品のうちの少なくともいずれか1つでの消費電力が前記制御期間特定ステップにおいて特定された前記制御期間内において当該制御期間外におけるよりも小さくなるように、当該少なくともいずれか1つの回路部品での消費電力を制御する電力制御ステップとを備えている。
また、本発明のチューナ制御用プログラムは、主信号の先端及び後端のいずれか一方に連なる前記主信号の一部の区間であるサブガードインターバルを複写したものがガードインターバルとして前記主信号の先端及び後端の他方に連なるように前記主信号の外側に付加されたシンボルが複数連なった受信信号に選局処理を施すチューナの制御用のプログラムである。そして、本チューナ制御用プログラムは、デジタル復調装置の消費電力を低下させるための以下のステップをチューナに実行させることが可能である。第1は、一方のシンボルにおけるガードインターバルが他方のシンボルにおけるサブガードインターバルと連なるように互いに隣接した2つのシンボルの境界を跨ぐ制御期間を特定する制御期間特定ステップである。第2は、前記チューナを構成する複数の回路部品のうちの少なくともいずれか1つでの消費電力が前記制御期間特定ステップで特定された前記制御期間内において当該制御期間外におけるよりも小さくなるように、当該少なくともいずれか1つの回路部品での消費電力を制御する電力制御ステップである。
また、本発明のデジタル復調装置制御用プログラムは、主信号の先端及び後端のいずれか一方に連なる前記主信号の一部の区間であるサブガードインターバルを複写したものがガードインターバルとして前記主信号の先端及び後端の他方に連なるように前記主信号の外側に付加されたシンボルが複数連なった受信信号を復調するデジタル復調装置の制御用のプログラムであって、一方のシンボルにおけるガードインターバルが他方のシンボルにおけるサブガードインターバルと連なるように互いに隣接した2つのシンボルの境界を跨ぐ制御期間を特定する制御期間特定ステップ、及び、受信信号に選局処理を施すチューナと、前記チューナからの信号に復調処理及び誤り訂正処理を施す復調器とを構成する複数の回路部品のうちの少なくともいずれか1つでの消費電力が前記制御期間特定ステップにおいて特定された前記制御期間内において当該制御期間外におけるよりも小さくなるように、当該少なくともいずれか1つの回路部品での消費電力を制御する電力制御ステップを前記デジタル復調装置に実行させることが可能である。
本発明のチューナ、デジタル復調装置、これらの制御方法及びこれらの制御用プログラムによると、互いに隣接した2つのシンボルの境界を跨ぐ制御期間が特定される。つまり、データの取得に利用されないガードインターバル及びサブガードインターバルをチューナ又は復調器が扱うタイミングでチューナ又は復調器の消費電力の制御が行われるため、電力制御が信号に与える影響によって信号から得られるデータの信頼性が低下するのが抑えられる。そして、本発明においては、ガードインターバル区間のみならずサブガードインターバル区間を含む期間内において制御期間が設定される。したがって、信号状態に変化が生じた場合や電力制御によって信号に与える影響が大きい場合でも、制御期間が柔軟に特定され得る。これによって、不要に短い制御期間となることなく、信号状態に応じた最適な制御期間で消費電力が制御され得る。
また、本発明においては、前記制御期間特定手段が、互いに隣接した2つのシンボルの境界毎に前記制御期間を特定することが好ましい。この構成によると、2つのシンボルの境界毎に制御期間が特定されるので、詳細に消費電力の制御がなされ得る。したがって、信号状態に柔軟に応じた消費電力の制御が行われ得る。
また、本発明においては、前記制御期間特定手段が、ガードインターバル区間よりも長い時間を前記制御期間として特定することが好ましい。この構成によると、ガードインターバル区間より短い時間を制御期間とする場合と比べて消費電力をより低下させることが可能となる。
また、本発明においては、前記制御期間特定手段が、1つ以上おきの前記境界に前記制御期間を特定することが好ましい。この構成によると、制御期間の合計が同じ場合において、境界毎に制御期間が設定される場合と比べて電力を変化させる回数が少なくなり、電力変動に起因する誤りが少なくなる。このため、合計の長さが同じ制御期間を確保する場合に信号から取得されるデータの信頼性が向上する。また、ガードインターバル区間よりも長い制御期間が設定される場合においても、各シンボルにおいて有効シンボル長のFFT窓が確保され得る。したがって、信号から取得されるデータの信頼性を保ちつつ、ガードインターバル区間よりも長い制御期間が設定され得る。
また、本発明においては、前記制御期間特定手段が、受信信号に応じて、互いに隣接した2つのシンボルの境界において前記境界毎に前記制御期間を特定するモードと1つ以上おきの前記境界に前記制御期間を特定するモードとの間で切換可能となっていることが好ましい。この構成によると、消費電力の制御を行うモードとして、信号の状態に応じたより最適なモードの選択が可能になる。
また、本発明においては、前記制御期間特定手段が、受信信号を遅延させる遅延手段と、受信信号と前記遅延手段からの遅延信号との相関を導出する相関導出手段とを備えていることが好ましい。この構成によると、遅延信号と受信信号との相関に基づく制御期間の特定が可能となり、より信号状態に適した消費電力の制御が可能となる。
また、本発明のチューナ又は本発明のデジタル復調装置が有するチューナが、RFアンプ、ミキサ、フィルタ、IFアンプ、及び、VCO・PLLを備えており、前記電力制御手段が、RFアンプ、ミキサ、フィルタ、IFアンプ、及び、VCO・PLLの少なくともいずれか1つでの消費電力を制御することが好ましい。この構成によると、チューナが有する各回路部品に応じていずれかの回路部品の消費電力が制御され得る。
また、本発明においては、前記制御期間内における前記少なくともいずれか1つの回路部品での消費電力がゼロとなるように制御することが好ましい。この構成によると、より大きい消費電力の低下が可能である。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記復調器を構成する回路部品が、ADCを構成する1又は複数の回路部品を含んでおり、前記電力制御手段が消費電力を制御する回路部品が、前記ADCを構成する1又は複数の回路部品のうちの少なくとも1つであることが好ましい。この構成によると、復調器においても消費電力の低下が可能となる。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記遅延手段及び前記相関導出手段が、前記チューナ内に構築されており、前記制御期間特定手段が前記チューナにおいて特定した前記制御期間に関する情報を前記チューナから前記復調器が受け取ることが好ましい。この構成によると、チューナの各回路部品での消費電力の制御を行う場合に使用される相関値の情報がチューナにおいて導出されるので、制御の基となる情報が取得されるタイミングと制御が行われるタイミングとがより合致しやすい。したがって、より適切な情報に基づく消費電力の制御が行われ得る。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記チューナが前記復調器から有効シンボル長に係る情報を含むTMCC情報を受け取り、前記チューナが前記復調器から受け取った前記TMCC情報に基づいて、前記遅延手段が受信信号を有効シンボル長だけ遅延させることが好ましい。この構成によると、復調器において抽出された有効シンボル長に係る正確な情報に基づいて遅延信号が形成されるため、有効シンボル長を探索する手間が省略される。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記遅延手段及び前記相関導出手段が、前記復調器内に構築されており、前記復調器が、前記相関導出手段が導出した前記相関に基づいて受信信号のFFT窓の位置を特定する窓位置特定手段を有していることが好ましい。この構成によると、受信信号の状態に応じた適正なFFT窓が特定され得る。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記窓位置特定手段が前記復調器において特定した受信信号のFFT窓の位置に関する情報を前記復調器から前記チューナが受け取り、前記復調器から前記チューナが受け取った受信信号のFFT窓の位置に関する情報に基づいて、FFT窓と前記制御期間とが重ならないように前記制御期間特定手段が前記制御期間を特定することが好ましい。この構成によると、チューナが相関導出手段を有していなくても、復調器が特定したFFT窓の位置に関する情報に基づいて、FFT窓に重ならない適正な位置に制御期間が設定され得る。したがって、受信信号におけるFFT窓の範囲から取得されるデータの信頼性が向上する。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記制御期間特定手段が特定した前記制御期間に関する情報に基づいて、前記復調器の動作期間を変更する動作期間変更手段をさらに備えていることが好ましい。この構成によると、電力制御による影響が及ぶタイミングを考慮した上で復調器の動作期間の変更がなされ得るので、復調器によってなされる復調処理及び誤り訂正処理がより適切になされ得る。ひいては、復調器によって復調処理がなされた信号から取得されるデータの信頼性が向上する。
また、本発明においては、前記制御期間特定手段が特定した前記制御期間内の受信信号の誤り訂正における信頼性に基づいて、前記復調器の誤り訂正性能を変更する性能変更手段をさらに備えていることが好ましい。この構成によると、電力制御が原因で低下した信頼性に基づく正確な誤り訂正がなされる。したがって、復調器によって復調処理がなされた信号から取得されるデータの信頼性が向上する。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記制御期間特定手段が、受信信号の状態に基づいて、前記制御期間を特定することが好ましい。この構成によると、受信信号の状態に応じたより適切な消費電力の制御が行われ得る。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記制御期間特定手段が、前記復調器からの出力信号から得られるCN比が大きいほど長い前記制御期間を特定することが好ましい。この構成によると、受信信号の状態に応じて、より大きな消費電力の低下がなされ得る。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記制御期間特定手段が、前記復調器からの出力信号から得られるMERが小さいほど長い前記制御期間を特定することが好ましい。この構成によると、受信信号におけるコンスタレーションの規定値からのずれに基づいて、より大きな消費電力の低下がなされ得る。
また、本発明のデジタル復調装置においては、前記制御期間特定手段が、前記復調器からの出力信号から得られる誤り率が低いほど長い前記制御期間を特定することが好ましい。この構成によると、誤り率の程度に応じて、より大きな消費電力の低下がなされ得る。
本発明のデジタル復調装置は、文字、画像、及び音声の少なくともいずれか1つの再現処理を行う携帯電話やデジタルTV等の様々なデジタル受信装置に採用され得る。このようなデジタル受信装置は本発明のデジタル復調装置が復調した受信信号から文字、画像、音声等に係る情報を取得し、文字等の再現処理を行う。
なお、上記の本発明のチューナ制御用プログラム及びデジタル復調装置制御用プログラムは、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)ディスク、フレキシブルディスク(FD)、MO(Magneto Optical)ディスクなどのリムーバブル型記録媒体や、ハードディスクなどの固定型記録媒体のようなコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して配布可能である他、有線又は無線の電気通信手段によってインターネットなどの通信ネットワークを介して配布可能である。また、これらのプログラムは、チューナやデジタル復調装置専用のものでなくてもよく、選局処理やデジタル復調処理に係るプログラムと組み合わせて使用されることにより汎用型のプロセッサをチューナやデジタル復調装置として機能させるプログラムであってもよい。
また、本明細書において「回路部品」とはチューナを構成する回路部品又は復調器を構成する回路部品のことである。具体的には、例えば、図2に示されているチューナ2が有する各部を構成する回路、及び、図5に示されている復調器3が有する復調部301の各部を構成する回路や、これらの回路を構成する1個のトランジスタに等価な部品等、あらゆる単位の部品が回路部品に相当し得る。
以下は、本発明の好適な一実施形態であるデジタル復調装置についての説明である。図1は本デジタル復調装置1の全体の概略構成を示している。
本発明のデジタル復調装置1は携帯電話201(デジタル受信装置)に設けられている。携帯電話201がアンテナから受信した信号Srはデジタル復調装置1によって復調される。そして、復調されてデジタル復調装置1から出力されたTS(Transport Stream)信号から文字や画像や音声に係る情報が取り出され、これらの文字や画像や音声が、携帯電話末201に設けられた図示されていないディスプレイやスピーカを通じて再現されて、端末の使用者に提供される。なお、デジタル復調装置1が、携帯電話の他、デジタルTV、無線LAN装置、無線LANを搭載したPC等(デジタル受信装置)に採用されてもよい。
デジタル復調装置1はチューナ2(信号受取器)、復調器3及び制御部4を有している。チューナ2は復調器3と電気的に接続されている。また、チューナ2はアンテナと電気的に接続されており、このアンテナから送信された信号を受信する。そしてチューナ2は受信した信号Srの増幅等を行い、信号SrをIF(Intermediate Frequency:中間周波数)信号に変換して復調器3へと送信する。復調器3はチューナ2から送信されるIF信号を受信し、IF信号から復調信号、例えばTS信号を形成して出力する。制御部4はチューナ2及び復調器3の動作を制御する。
<チューナ>
以下は、チューナ2についての説明である。図2はチューナ2の構成を示す図である。
チューナ2はRFアンプ部21、ミキサ部22、VCO・PLL部23、フィルタ部24及びIFアンプ部25を有している。チューナ2が受信した信号Srは、RFアンプ部21によって増幅されて、ミキサ部22に送られる。一方、VCO・PLL部23は、後述のチューナ制御部26が送信したチャンネル制御信号に従って、特定のチャンネルに相当する周波数に基づくミキシング信号を形成する(選局処理)。VCO・PLL部23が形成したミキシング信号はミキサ部22に送られる。そして、ミキサ部22は、RFアンプ部21から送られた信号Srと、VCO・PLL部23から送られたミキシング信号とを混合し、IF周波数に応じたIF信号を形成する。
ミキサ部22が形成したIF信号はフィルタ部24に送られる。フィルタ部24はミキサ部22から送られたIF信号から不要な信号成分を除去する。不要な信号成分が除去されたIF信号はIFアンプ部25に送られ、IFアンプ部25によって増幅されて復調器3へと送信される。なお、IFアンプ部25は、増幅したIF信号を、復調器3へと送信するとともにシンボル同期抽出部262にも送信する。
チューナ2は、さらに、チューナ制御部26を有している。チューナ制御部26は、制御部4から送信される制御信号に基づいて、RFアンプ部21、ミキサ部22、VCO・PLL部23、フィルタ部24及びIFアンプ部25を制御する。具体的な制御の内容は後述のとおりである。また、チューナ制御部26は、制御部4の指示に従って、チャンネル制御信号をVCO・PLL部23に送信する。
<受信信号>
以下は、チューナ2が受信する信号Srについての説明である。本実施形態の一例としては、信号Srの伝送において日本の地上波デジタル放送に係る伝送方式が採用された場合が示される。この場合、チューナ2が受け取る信号Srは、ISDB−T(Integrated Services Digital Broadcasting-Terrestrial)方式に係るものである。ISDB−T方式の伝送方式には、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式が採用されている。
なお、本実施形態に係るデジタル復調装置の受信信号は、ガードインターバルを採用している信号であれば良い。したがって、上記のISDB−T方式の他、欧州のDAB(Digital Audio Broadcasting)、DVB−T(Digital Video Broadcasting-Terrestrial),DVB−H(-Handheld)方式、韓国のDMB(Digital Multimedia Broadcasting)方式、無線LANに用いられるIEEE802.11a/b/g方式が採用されたものでもよい。さらに、OFDM方式とガードインターバルを採用したアンテナの無いケーブルTV等に適用されてもよい。
OFDM方式とは以下のような伝送方式である。まず、この方式はデータの搬送に複数の異なる周波数の搬送波が用いられるマルチキャリア方式である。そして、OFDM方式で用いられる搬送波は相互に直交する波形を有している。ここで、「2つの波形が直交する」とは、時間に対する波の振幅を表すそれぞれの関数同士を掛け合わせ、一周期に相当する積分範囲で時間積分したもの(内積)がゼロになることをいう。
データ送信の際には、送信されるデータの各値に応じて変調された複数の搬送波が重ね合わされた変調信号が形成される。つまり、送信されるデータに含まれる複数のデータ値の配列順に従って各データ値が異なる搬送波に振り分けられる。そして、振り分けられたデータ値に応じて搬送波が変調され、変調された複数の搬送波が重ね合わされることによりOFDM信号が形成される。OFDM方式においてこのようにOFDM信号を形成することは、逆フーリエ変換を行うことと同等である。なお、以下の説明において、有効シンボル長とはOFDM方式で用いられる搬送波の周波数間隔の逆数をいう。
次に、直接波以外の遅延波の影響を削減するため、上記のように変調された複数の搬送波が重ね合わされた変調信号にはさらにガードインターバルが挿入される。ガードインターバルは、上記の変調信号において有効シンボル長あたりの信号(主信号に対応)ごとに、この信号の一端部における一部が複写され、他端部に挿入されたものである。このようにガードインターバルが挿入された変調信号が、OFDM信号として送信される。
図3は、デジタル復調装置1が受け取る、ガードインターバルが挿入されたOFDM信号50の模式図である。OFDM信号50のうち、有効シンボル長Teの一端部(先端)にガードインターバルとして挿入された一端部分51a(先端に連なる一部)と、このTeの他端部(後端)に連なる他端部分51bとは、同じ波形を有する長さTgの信号である。つまり、有効シンボル長Teの長さを有する元のOFDM信号(主信号)の後端に連なる一部(サブガードインターバル)が、主信号の先端の外側に連なるガードインターバルとして複写されている。なお、主信号の先端に連なる一部が後端の外側に連なるガードインターバルとして複写されてもよい。
このように、有効シンボル長Teの主信号とガードインターバルの長さとをあわせた長さTsの信号は、1シンボルと呼ばれる。OFDM信号はこのような複数のシンボルが連なって構成される。このOFDM信号が受信側に直接到達する直接波と、時間的に遅延して受信側に到達する反射波などの遅延波とが重ね合わされた信号が受信された場合には、異なるシンボルに含まれる信号が重なり合った部分が受信信号に含まれる。ガードインターバルは、このように異なるシンボルに含まれる信号が重なり合っていない部分を取り出すために用いられている。
また、地上波デジタル放送においては、OFDM信号によって伝送されるデータに対して、伝送経路で発生する雑音や干渉波によって発生する誤りを訂正するための符号化が行われる。符号化にはリードソロモン符号(RS符号)とビタビ符号とが用いられる。デジタル放送で用いられるRS符号においては、伝送される204バイトのデータのうち、後ろ16バイト分がチェックビットであり、204バイト中最大8バイトの誤りが訂正可能である。また、ビタビ符号においては、符号化後の伝送されるnビットに対して、符号化前のデータがkビットのときの符号化率をk/nとして、1/2から7/8が規格化されている。これらRS符号化及びビタビ符号化されたデータを元に戻すために、受信側ではRS復号及びビタビ復号が行われる。
ところで、伝送経路の状態によっては、伝送信号に対して時間的又は周波数的に誤りが集中するバースト誤りが発生する場合がある。また、ビタビ符号化された信号を元に戻すビタビ復号後においては、一般的にバースト誤りが起こることが多い。上記のような誤り訂正によってある長さの信号に発生する誤りを訂正する場合、この長さの信号あたりにおける訂正可能な誤り数には限界がある。したがって、上記のようなバースト誤りが発生すると、誤りの訂正が不可能となる場合がある。
地上波デジタル放送においては、このように伝送信号にバースト誤りが発生した場合にも誤り訂正が可能となるように、伝送信号によって伝送されるデータに対して種々のインターリーブが行われる。インターリーブは、伝送信号に含まれる信号に対応するデータを時間や周波数的に並べ替えるものである。インターリーブには、ビットインターリーブ、バイトインターリーブ、時間インターリーブ及び周波数インターリーブがある。例えば、時間インターリーブ及び時間インターリーブが行われたデータを元に戻す時間デインターリーブは以下のように行われる。
図4は、時間インターリーブ及び時間デインターリーブの一例を示す模式図である。変調された複数の搬送波からなるOFDM信号50は、時間インターリーブにより、シンボル52の長さに対応するデータごとに、あらかじめ決められた順序に従って、図のように並べ替えられる。このように並べ替えられたデータに対応する信号が送信されると、伝送経路の状態によって、信号の一部にバースト誤り53が発生する。そして、この信号が受信されると、受信側で時間デインターリーブが行われる。時間インターリーブによりいったん並べ替えられたデータが、時間デインターリーブにより再び元の順序に戻される。ここで、伝送経路において複数のシンボルに跨って発生したバースト誤り53は、時間デインターリーブによりシンボルごとの誤り54のように分散される。
このように、時間的に誤りが集中するバースト誤りが発生した場合でも、時間デインターリーブ後には誤りが分散されるため、誤り訂正が可能となる。
地上波デジタル放送においては、このほか、データの偏りによる伝送信号のエネルギーの偏りを防ぐため、エネルギー拡散が行われる。エネルギー拡散は、擬似ランダムデータと伝送信号に係るデータとのビット単位の排他的論理和をとって、データをランダム化することにより行われる。
<復調器>
以下は、復調器3についての説明である。図5(a)は復調器3の構成を示すブロック図である。図5(a)に示されているように、復調器3は、チューナ2から送信されたIF信号を復調する復調部301と、復調部301と情報のやり取りを行い、復調部301の各部を制御する復調制御部302とを有している。復調器3は、復調制御部302及び復調部301が有する下記のような複数の回路部品から構成されている。
図5(b)は復調部301の構成を示す図である。復調部301は、ADC部31、AFC・シンボル同期部32、FFT部33、フレーム同期部34、検波部35及び誤り訂正部36を有している。復調部301は、下記のように、IF信号に復調処理及び誤り訂正処理を施す。
チューナ2から送信されたIF信号はADC部31に入力される。ADC部31は、アナログ信号である入力されたIF信号をデジタル信号に変換し、変換したデジタル信号をAFC・シンボル同期部32へと送る。AFC・シンボル同期部32は、ADC部から送られたデジタル信号に対してフィルタ処理などの補正処理等を行う。そして、AFC・シンボル同期部32は、後述のFFT部33による高速フーリエ変換の開始点、つまり、シンボル同期点を決定する(窓位置特定手段)。なお、FFT部33によって高速フーリエ変換が行われる範囲はFFT窓と呼称される。すなわち、シンボル同期点の決定は、デジタル信号においてFFT窓の位置を特定することに相当する。そして、AFC・シンボル同期部32は、同期を取ったデジタル信号をFFT部33へと送る。なお、AFC・シンボル同期部32は、シンボル同期点に係る情報(FFT窓の位置に関する情報)を、制御部4を介してチューナ制御部26へと送る。
なお、シンボル同期点の決定においては、遅延して到達する遅延波等の影響が最も少ない最適な受信が可能な点が同期点として設定される。このような同期点の決定方法として、後述のような信号の相関を参照する方法や、パイロット信号を用いて位相のずれを補正する方法等が用いられる。例えば、AFC・シンボル同期部32が、後述のシンボル同期抽出部262と同様の構成(遅延部172及び相関算出部173)を有しており、デジタル信号の相関値と閾値との比較によって同期点が定められる。
FFT(Fast Fourier Transform)部33は、AFC・シンボル同期部32から送られたデジタル信号を高速フーリエ変換(FFT)する。つまり、このデジタル信号はOFDM信号なので、逆フーリエ変換された波形、すなわち、データ値に応じて変調された複数の搬送波が重ね合わされた波形を有している。FFT部33は、このように重ね合わされた波形から、データ値に従って変調された複数の搬送波をフーリエ変換によって取り出す。そして、FFT部33は、各搬送波に振り分けられた各データ値に対応するデジタル信号を、データの元の配列順で時間的に並ぶように並べ替えて、OFDM信号形成前のデータに対応するデジタル信号を再形成する。そして、FFT部33はこのデジタル信号をフレーム同期部34へと送る。
フレーム同期部34は、FFT部33から送られたデジタル信号におけるフレーム単位での同期をとる。1フレームは例えば204のシンボルからなり、1フレームの信号から1まとまりのTMCC情報が取得される。フレーム同期部34によって同期が取られたデジタル信号は波形等化部37へと送られると同時に、検波部35へも送られる。
波形等化部37は、デジタル信号に含まれるスキャッタード・パイロット信号等に基づき、フレーム同期部34によって同期が取られたデジタル信号に対して波形等化を行う。そして、波形等化によって信号補正を施した後、データ値に相当するデジタル信号に復調し、復調したデジタル信号を誤り訂正部36へと送る。さらに、波形等化部37は波形等化が施されたデジタル信号の信号状況から受信信号のMER(Modulation Error Ratio)あるいはCN比及びモード情報を導出する。そして、導出したMERあるいはCN比とモードに係る情報を、制御部4を介してチューナ制御部26へと送信する。なお、検波部35は、フレーム同期部34によって同期が取られたデジタル信号を復調し、復調信号に含まれるTMCC情報を取り出す。そして、導出したTMCCに係る情報を、制御部4を介してチューナ制御部26へと送信する。
誤り訂正部36は、図5(b)に示されているように、デインターリーブ部41、復号部42及びエネルギー逆拡散部43を有している。デインターリーブ部41は、波形等化部37から送られたデジタル信号を、デインターリーブする。デインターリーブには、上述のような種々のインターリーブに対応する、周波数デインターリーブ、時間デインターリーブ、ビットデインターリーブ、及び、バイトデインターリーブがある。種々のインターリーブが施されたデジタル信号が、これらのデインターリーブによりインターリーブ前のデジタル信号に戻される。
復号部42は、波形等化部37から送られたデジタル信号を復号する。復号には、上記のように、ビタビ復号及びRS復号があり、ビタビ符号化及びRS符号化が施されたデジタル信号が、これらの復号により符号化前のデジタル信号に戻される。
なお、誤り訂正部36は、訂正した誤りの数に基づき、デジタル信号の誤り率を算出する。そして、算出された誤り率は、チューナ制御部26へと送信される。
エネルギー逆拡散部43は、検波部35から送られたデジタル信号をエネルギー拡散される前のデジタル信号に戻す。
これら種々のデインターリーブ、復号及びエネルギー逆拡散は、送信側で行われた種々のインターリーブ、符号化及びエネルギー拡散の順番に対応する順番で行われる。一般的には、周波数デインターリーブ、時間デインターリーブ、ビットデインターリーブ、ビタビ復号、バイトデインターリーブ、エネルギー逆拡散及びRS復号の順に行われる。
<電力制御>
以下は、チューナ2における電力制御についての説明である。図6は、チューナ制御部26の構成を示す図である。図7はチューナ2において行われる電力制御を示す図である。図6(a)に示されているように、チューナ制御部26は、下記のように電力制御期間を特定する制御期間特定部261及び後述のシンボル同期抽出部262を有している。以下は、チューナ制御部26による電力制御期間の特定及び電力の制御についての説明である。
チューナ2が受け取る信号Sr50は上述のようなOFDM信号である。したがって、シンボルごとにガードインターバルを有している。図7に示されているように、シンボル52a及び52bは、それぞれ、サブガードインターバル53a及び53bを有している。また、シンボル52a及び52bは、それぞれ、サブガードインターバル53a及び53bと同じ波形のガードインターバル54a及び54bを有している。
上記のように、AFC・シンボル同期部32が決定するシンボル同期点69は、サブガードインターバル53b内に位置する。したがって、信号50のうち、シンボル同期点69から開始して有効シンボル長Teの時間的長さを有する期間の信号から、FFT部33によって元のデータに対応する信号が取り出される。チューナ2に入力される信号Sr50に含まれるノイズが小さい場合や、ノイズが含まれていても時間的な変化が少ないノイズである場合等、信号状態に変化が少ない場合であれば、シンボル同期点はほぼ同じ位置に固定される。一方で、不定期にノイズが発生するなど信号の状態が頻繁に変化する場合には、シンボル同期点も変化する。シンボル同期点69から開始して有効シンボル長Teの時間的長さを有する期間64a及び64bの信号は、FFT窓と呼ばれる。信号状態に変化が少なくシンボル同期点にほとんど変化がない場合には、AFC・シンボル同期部32から送られたシンボル同期点に係る情報(FFT窓の位置に係る情報)に基づいて、下記の制御期間の特定が行われる。
図7において、FFT窓64a及び64bの間に位置する期間65はガードインターバル54a及び54bと同じ時間的長さを有している。そして、期間65は、送信されたデータを獲得するためには使用されない期間である。つまり、この期間においては、チューナ2の電力制御によって信号に誤りが生じても、データの受信にはその影響が及びにくい。したがって、チューナ制御部26は、期間65においてチューナ2の電力を制御する。具体的には、以下のような構成によって、チューナ2の電力が制御される。
復調器3のAFC・シンボル同期部32は、シンボル同期点69のタイミングに係る情報(FFT窓の位置に係る情報)を、制御部4を介してチューナ制御部26に送信する。なお、シンボル同期点69の位置情報は、制御部4を介さずに復調器3からチューナ2へと直接送られてもよい。制御期間特定部261は、制御部4からのシンボル同期点69の位置情報に基づいて、ガードインターバル54a及び54bと同じ時間的長さを有する期間65中に、チューナ2の電力を制御する電力制御期間を特定する。つまり、電力制御期間はFFT窓64a及び64bに重ならないように特定される。
期間65中のどれだけの長さの期間を電力制御期間とするかは、信号の状態に基づいて決定される。電力制御が行われるタイミングがFFT窓に近づくほど、FFT窓に与える影響が大きくなるためである。上記の通り、チューナ制御部26には波形等化部37及び誤り訂正部36からMER、CN比あるいは誤り率に係る情報が送信される。制御期間特定部261は、これらのMER、CN比及び誤り率に係る情報に基づいて、電力制御期間を特定する。CN比が大きいほど又はMERや誤り率が小さいほど信号状態は良い。制御期間特定部261は、CN比が大きいほど電力制御期間を長く設定し、あるいは、MERや誤り率が小さいほど電力制御期間を長く設定する。すなわち、信号状態が悪いときにはFFT窓から離れたタイミングで電力制御が行われ、信号状態が良いときにはFFT窓に近いタイミングで電力制御が行われる。これによって、信号状態の良好に応じた最適の長さで、電力制御期間が特定され得る。
また、制御期間特定部261は、チューナ2の各部の電力制御を行った際に信号に発生する誤りの程度を示す情報をあらかじめ保有している。制御期間特定部261は、このような誤りの程度を示す情報と、上記のMER、CN比及び誤り率等の信号状態を示す情報とに基づいて、電力制御期間を、FFT窓64a又は64bと期間65との境界を超えて特定する。つまり、電力制御によって発生する誤りの程度によっては、復調器3の誤り訂正部36がその誤りを訂正可能である。このような場合には、FFT窓に発生する誤りがFFT窓からのデータの取り出しにあまり影響を与えずに、長い電力制御期間が設定され得る。
そして、制御期間特定部261が特定した電力制御期間に従って、チューナ制御部26は、RFアンプ部21、ミキサ部22、VCO・PLL部23、フィルタ部24及びIFアンプ部25のうち、少なくともいずれかの電力を低下させる。
なお、AFC・シンボル同期部32から送られるシンボル同期点69のタイミングの情報に基づいてチューナ2の電力制御が行われる場合、チューナ2の電力制御は過去のシンボル同期点に係る情報に基づいて行われることになる。しかし、受信信号の状態に変化が少ない場合にはシンボル同期点はほぼ一定のタイミングに固定されるので、過去の情報に基づく電力制御が行われても、FFT窓に使用されるシンボル同期点のタイミングとのずれが生じにくい。
電力曲線61は、このようにチューナ制御部26によって制御されたRFアンプ部21等の電力の一例を示している。電力曲線61は、FFT窓64a及び64bの期間中には通常の電力を有しており、ガードインターバルの長さに相当する期間65には通常の電力よりも低い電力を有している。期間65はシンボル52aのガードインターバル54aがシンボル52bのガードインターバル54aに連なるように互いに隣接する2つのシンボル52a及び52bの境界を跨いでいる。また、期間65は信号50に含まれる互いに隣接した2つのシンボルの境界毎に設定されている。
このように、ガードインターバル54aの期間及びサブガードインターバル53bの2つの期間に跨って電力制御期間が設定されるため、シンボル同期点69に基づく適切な期間で可能な限り長い電力制御期間の設定がなされ得る。一方で、1つのガードインターバル区間中に電力制御期間が限定される場合において、シンボル同期点に基づいて電力制御期間が設定されないときにはFFT窓に電力制御による誤りが生じやすくなる。また、シンボル同期点に基づいて電力制御期間が設定されるときには、電力制御期間が必ずガードインターバルより短くなる。したがって、本実施形態の電力制御によると、1つのガードインターバル区間中に電力制御期間が限定される場合と比べ、受信信号に悪影響を与えない範囲で可能な限り低電力に抑える適切な電力制御が可能となる。
電力曲線62は、チューナ制御部26による電力制御の別の形態を示している。電力曲線62は、チューナ2が受け取る信号Srに、遅延して到達する遅延波がほとんど含まれていない場合に用いられる。このような遅延波が含まれていない場合には、シンボル同期点70はサブガードインターバル53bの後端に設定可能である。これに基づき、電力曲線62によって示される電力制御においては、チューナ2の各部がガードインターバル54a及びサブガードインターバル53bの両者の期間を含む電力制御期間66に亘って低電力に抑えられる。
電力制御期間66は、信号50に含まれる互いに隣接した2つのシンボルの境界毎に期間65が設定されている電力曲線61とは異なり、上記の境界の1つおきに設定される。つまり、電力曲線61においては1つのシンボルにつき1つの制御期間が設定されているが、電力曲線62においては2つのシンボルにつき1つの電力制御期間66が設定されることになる。なお、電力制御期間66は上記2つのシンボルの2つ以上おきの境界に設定されてもよい。これによって、各シンボルにおいて有効シンボル長のFFT窓が確保される。このような電力曲線62の電力制御によると、電力を変更する頻度が少なくなるため、電力を変化させる回数が少なくなり、電力変動に起因する誤りが少なくなる。また、電力を低減させるための電力制御期間を長くとることが可能となり、より効率的な電力制御が可能となる。
チューナ制御部26は、互いに隣接する2つのシンボル52a及び52bの境界毎に電力制御を行うモードと、互いに隣接した2つのシンボルの1つおきの境界毎に電力制御を行うモードとを選択的に使用できる。後者の電力制御モードにおいては、例えば上記の電力曲線62が使用される場合には、2つの隣り合うシンボルの境界いっぱいまでFFT窓の範囲が設定されることとなる。このため、遅延して到達する遅延波が存在する場合には、前のシンボルの信号がFFT窓に含まれることとなる。このような問題を回避するため、チューナ制御部26は、上記のような遅延して到達する遅延波が含まれているか否かを判断する。そして、このような遅延波がほとんど含まれていないと判断した場合には、後者の電力制御モードを、さもなければ前者の電力制御モードを採用する。これによって、上記のような遅延波が信号に含まれているかどうかに応じた最適なモードで電力制御が行われ得る。なお、遅延して到達する遅延波が含まれるか否かは、下記のような相関値を利用する方法や、パイロット信号を用いて位相のずれを導出してずれ量を評価する方法等により判断される。
なお、上記のように、期間66とFFT窓との境界を超えて電力制御期間が設定されても良い。この場合には、電力制御期間がガードインターバルの2倍より長い時間に設定され、電力消費がより抑えられ得る。さらに、期間65又は66のような電力設定期間において、チューナ2の各部の消費電力がゼロとなるように制御されてもよい。これにより、電力消費がさらに抑えられる。
<シンボル同期抽出>
以下は、信号状態に変化が多くシンボル同期点が頻繁に変化するような場合の電力制御についての説明である。
上記のように復調器3から送信されるシンボル同期点の位置情報に基づいてチューナ2の電力制御が行われる場合、チューナ2の電力制御は過去のシンボル同期点に係る情報に基づいて行われることになる。これによって、信号状態に変化が多くシンボル同期点が頻繁に変化するような場合においては、電力制御のタイミングとシンボル同期点のタイミングとがずれることになる。このようなタイミングのずれが生じると、FFT窓に相当する信号をチューナ2が扱うタイミングで電力制御が行われる等、不適切なタイミングで電力制御が行われる場合が生じる。このように電力制御のタイミングとシンボル同期のタイミングとにずれが生じるのを防止するため、チューナ制御部26は、図6(a)に示されているように、シンボル同期抽出部262を有している。
図6(b)は、シンボル同期抽出部262の構成を示す図である。IFアンプ部25は、上記の通り、増幅したIF信号を、復調器3へと送信するとともにシンボル同期抽出部262にも送信する。
シンボル同期抽出部262は、IFアンプ部25から送信されたIF信号に基づいて、遅延して到達する遅延波の影響等が排除された最適な受信が可能なシンボル同期点を、復調器3のAFC・シンボル同期部32とは独立に抽出する。シンボル同期抽出部262は抽出したシンボル同期情報に係る信号をチューナ制御部26へと送る。チューナ制御部26は、シンボル同期抽出部262が抽出した同期点を使用して、図7に示されているような電力制御期間を特定する。チューナ制御部26は、AFC・シンボル同期部32から送信された同期点に係る情報を使用するモードとシンボル同期抽出部262が抽出した同期点に係る情報を使用するモードとを、信号状態が安定かどうかに基づいて切り替える。
このように、電力制御期間の決定において、復調器3側のAFC・シンボル同期部32から送信されるシンボル同期点に係る情報に代えてチューナ2側のシンボル同期抽出部262からのシンボル同期情報が使用されることにより、シンボル同期のタイミングと電力制御のタイミングとにずれが生じにくくなり、適切な電力制御期間が決定される。
シンボル同期抽出の方法としては、IF信号とIF信号を遅延させた遅延信号との相関に基づいてシンボル同期を抽出する方法が採られる。具体的には、以下のとおりである。
シンボル同期抽出部262は、シンボル同期の抽出に当たって、復調器3から送られるモード情報と、TMCC情報に含まれるガード比に係る情報を参照する。TMCC情報は、上記の通り、復調器3の検波部35からシンボル同期抽出部262へと送信される。なお、モード情報とTMCC情報は、制御部4やチューナ制御部26を介することなく、検波部35からシンボル同期抽出部262へと直接送られてもよい。
図6(b)に示されているように、シンボル同期抽出部262は、入力部171、遅延部172、相関算出部173及び同期情報形成部174を有している。
入力部171は、IFアンプ部25から送られたIF信号を受信し、受信したIF信号を遅延部172及び相関算出部173へと送る。遅延部172は、あらかじめチューナ制御部26から送られたモード情報を受け取っている。遅延部172は、受け取ったモード情報に基づいて有効シンボル長の分だけ時間的に遅延させつつ、入力部171から送られたIF信号を順次相関算出部173へと送る。
あるいは、モード情報から有効シンボル長の情報が復調器3において取り出され、取り出された情報がシンボル同期抽出部262へと送信されてもよい。そして、送信された情報に基づいて遅延部172が有効シンボル長の分だけIF信号を時間的に遅延させてもよい。
相関算出部173は、入力部171から直接送られたIF信号と、遅延部172から送られた遅延されたIF信号との相関値を算出する。なお、相関値のかわりに、送られた2つのIF信号を加算して絶対値を取るなど、相関に類似した計算方法によって算出された値が使用されてもよい。算出された相関値は同期情報形成部174へと送られる。同期情報形成部174は、相関算出部173から送られた相関値に基づいてシンボル同期点を導出し、導出したシンボル同期点に係る情報をチューナ制御部26に送る。
以下は、相関算出部173による相関の算出及び同期情報形成部174によるシンボル同期点の抽出についての、さらに詳細な説明である。図8は、IF信号50等から相関算出部173によって算出された相関値を示す図である。
図8(a)は、遅延して到達する遅延波などの影響がないIF信号50の相関値を示している。相関値は、上記の通り有効シンボル長の分だけIF信号が遅延された遅延信号と遅延のないIF信号との間で算出される。例えば、図8(a)において時刻t3の相関値は、遅延された遅延信号の時刻t3での信号と、時刻t3から有効シンボル長の分だけ遡った時刻t1での遅延のないIF信号とから算出された相関値を示している。時刻t3の相関値は、同一シンボル内のサブガードインターバル53及びこのサブガードインターバルと同様の信号であるガードインターバル54とから算出されるため、高い相関値を有している。一方、時刻t4の相関値は、時刻t4の信号と、一つ前のシンボルに相当する時刻t2の信号とから算出されるため、相関値は低い。このように算出された相関値から、ガードインターバルの時間的位置等が導出される。
一方で、図8(b)は遅延して到達する遅延波150が存在する場合の相関値を示している。この場合、IF信号は送信された元の信号50と遅延波150とが重ね合わされた信号である。図8(a)においてはガードインターバル54に相当する期間での相関値は高い値を示していたが、図8(b)においては、遅延波150によって1つ前のシンボルに属する信号が重ね合わされているため、期間91のように一部低い相関値を示す部分が生じる。つまり、1つ前のシンボルが重ね合わされていない信号を抽出するためには、送信された元の信号におけるサブガードインターバル53の先端から、期間91の長さだけ時間的に後の時点以降の信号を抽出すればよいことになる。したがって、シンボル同期点は時点169であり、同期情報形成部174は、時点169をシンボル同期点とするシンボル同期情報を形成する。
なお、相関値に基づいて同期点を抽出する際、相関値が所定の閾値を超えたかどうかを判断し、その判断結果に基づいてシンボル同期点を抽出することとしてもよい。さらには相関値に従い、相関値が高い場合には電力を減少させ、相関値が低い場合には電力を元に戻す制御が行われてもよい。また、過去の相関値の平均を評価する等により全体としてIF信号が低い相関値を示していると判断された場合には相関値の閾値が低く設定される等、IF信号の信号状態に応じて閾値が変更されてもよい。
<電力制御期間を考慮した復調制御>
ところで、チューナ2において電力制御が行われると、上記のように、電力制御による影響が信号に及ぶ。そして、復調器3において、電力制御による影響を含んだ信号をFFT窓内に採用してそのシンボルを復調すると、誤りが発生しやすくなり、誤り訂正によっても十分に誤り訂正がなされない場合が生じ得る。このような問題を回避するため、図9に示されているように、復調器3の復調制御部302(図5(a)参照)は、動作期間変更部371及び性能変更部372を有している。
チューナ制御部26は、制御期間特定部261が電力制御期間を特定すると、特定された電力制御期間に係る情報を、制御部4を介して復調制御部302へと送る。復調制御部302の動作期間変更部371は、チューナ制御部26から送られた電力制御期間に係る情報に基づいて、復調部301のFFT部33を制御する。つまり、FFT窓の範囲を含む電力制御期間が設定されている場合には、電力制御期間を含まないようなFFT窓を設定するように、動作期間変更部371がAFC・シンボル同期部32を制御する。あるいは、電力制御期間を含まない範囲でFFTを行うように、FFT部33を制御する。なお、FFT部33以外のフレーム同期部34等の動作期間を変更するように復調部301が制御してもよい。
さらに、性能変更部372が、チューナ制御部26から送られた電力制御期間に係る情報に基づいて、誤り訂正部36を制御してもよい。例えば、FFT窓の範囲に電力制御期間が設定されている場合には、誤り訂正部36が信号の誤りを訂正する際に誤り訂正能力が高い状態で誤り訂正を行うように、性能変更部372が誤り訂正部36を制御する。あるいは、信号における電力制御期間の位置や割合等から、そのシンボルの信号の信頼性を導出し、その信頼性に基づいて、復号部42のビタビ復号化を行うように性能変更部372が誤り訂正部36を制御する。
なお、以下は、ビタビ符号等の畳み込み符号化された信号に含まれるデータの誤り訂正の一例である。畳み込み符号化された信号には、入力信号に含まれる各データに先行する1つ以上のデータの並び方に依存した符号化信号が出力される。一方、所定数のデータが連なったデータ列において、各データ及びチェックデータの並び方に対応する重みが入力信号の大きさに基づきあらかじめ設定されている。そして、このようなあらかじめ設定された重みに基づき、誤りが生じて本来のデータの並び方になっていないデータ列が、誤りが生じる前の正しい並び方に近い並び方のデータ列に訂正される。
これに基づき、上記のような誤り訂正の性能変更は以下のように行われてもよい。つまり、電力の制御が行われた場合には電力制御期間に相当する信号に誤りが生じるため、その位置の信頼性が低下する。したがって、上記のようにあらかじめ設定された重みではもはや正確なデータの並びが再現され得ない。そこで、電力制御期間の位置に従って、その位置のデータを含むデータ列の重みが、その位置のデータの信頼性が低くなるように変更される。そして、変更された重みに従って誤り訂正がなされる。これによって、電力制御が原因で低下した信頼性に基づくより正確な誤り訂正がなされる。
なお、復調制御部302の制御によって復調部301の各部の動作期間や性能が変更されるのではなく、電力制御期間に基づいて、これらの各部が自律的に動作期間等を変更してもよい。
このように、チューナ制御部26から送られた電力制御期間に係る情報に基づいて復調部301による復調及び誤り訂正処理がなされることにより、信号から取り出されるデータの信頼性がより向上する。
<電力制御の全体の流れ>
以下は、チューナ制御部26が行うチューナ2の電力制御における全体の流れについての説明である。図10は、このような電力制御の全体の流れを示すフローチャートである。
まず、チューナ制御部26は、復調部301から送られたシンボル同期点に係る情報を受け取る(S1)。このシンボル同期点に係る情報に基づいて、チューナ制御部26は、信号の状態が安定しており、シンボル同期点に変化が少ない状態か否かを判断する(S2)。なお、復調部301からの情報に基づかず、信号の状態が安定か否かをチューナ制御部26が独自に判断してもよい。
次に、信号が安定しているとチューナ制御部26が判断した場合には(S2、YES)、チューナ制御部26は、直接波あるいは、最も大きい主波に対して遅延して到達する遅延波が信号に含まれており、主波に対するその遅延波の遅延時間が長く且つ大きいか否かを評価する(S3)。なお、上記のように、このような遅延波が信号に含まれるか否かは、例えば、相関値を算出してその値と閾値とを比較する等により判断される。そして、このような遅延波が信号に含まれているとチューナ制御部26が判断した場合には(S3、YES)、制御期間特定部261が、復調部301からのシンボル同期点に係る情報に基づいて、隣接する2シンボルの境界毎に電力制御期間を特定する(S4)。一方、上記のような遅延波が信号に含まれていないとチューナ制御部26が判断した場合には(S3、NO)、制御期間特定部261が、復調部301からのシンボル同期点に係る情報に基づいて、隣接する2シンボルの1つおきの境界毎に電力制御期間を特定する(S9)。
次に、制御期間特定部261が特定した電力制御期間に基づいて、チューナ制御部26が、チューナ2に含まれる各部の少なくともいずれか1つの消費電力を制御する(S5)。
次に、制御期間特定部261が特定した電力制御期間に係る情報が、チューナ制御部26から復調制御部302へと送られる(S6)。そして、送られた情報に基づいて、復調制御部302が、復調部301の各部の動作期間や性能を変更する。
次に、S1からS6に至るまでの時間に応じたウェイトの長さだけ、チューナ制御部26が待機する(S7)。すなわち、上記のS1〜S6までの一連の処理を1シンボルの長さ毎に行うように、チューナ制御部26が待機する。その後、S1からの処理がなされる。
一方で、信号が安定していないとチューナ制御部26が判断した場合には(S2、NO)、シンボル同期抽出部262が、有効シンボル長だけ遅延させた遅延波と信号との相関を算出し、算出した値と閾値とを評価することにより、シンボル同期点を抽出する(S8)。そして、抽出されたシンボル同期点に基づいて、S3以降の処理がなされる。
<変形例>
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
上述の実施形態ではチューナ2及び復調器3のいずれにも、シンボル同期抽出部262やAFC・シンボル同期部32といった、シンボル同期点を抽出する構成が構築されている。しかし、チューナ2がシンボル同期抽出部262を有していなくてもよい。これは、上記のように、信号の状態が安定している場合には、AFC・シンボル同期部32からの同期点に係る情報に基づいて、電力制御期間の特定が可能だからである。
また、上述の実施形態では、復調器3からモード情報を得て、遅延部172の遅延時間を設定してシンボル同期情報を抽出する構成が構築されている。しかし、規格により有効シンボル長のパターンは限られているため、規格に規定されている全ての遅延時間に基づく相関を導出することにより、シンボル同期情報を抽出する構成としてもよい。この場合にはモード情報が必要ないため、チューナ2のみで本発明が構成されてもよい。
また、上述の実施形態においては、チューナ2における電力制御によって信号に与える、過渡的な影響については述べられていない。つまり、電力制御による影響は、電力制御のタイミングと同時に瞬間的に発生するのみならず、その後の一定の期間に亘って波及する場合がある。上記の電力制御期間の特定は、このような過渡的な影響を考慮した上で行われてもよい。ただし、この場合には、電力制御期間が不要に短くなりすぎないように、電力制御による過渡的な影響が正確に考慮された上で電力制御期間が特定されていることが好ましい。つまり、電力制御による影響は、電力制御が行われた瞬間から徐々に小さくなるため、ある程度影響が小さくなった時点にFFT窓の先端が設定されてもよい。したがって、チューナ制御部26が、電力制御の過渡的な影響によって信号に発生する誤りが、誤り訂正部36によって訂正可能な範囲内かどうかを判断することが好ましい。そして、訂正可能な範囲内の限界まで長い電力制御期間を、チューナ制御部26が設定することが好ましい。これによって、電力制御による過渡的な影響が正確に考慮された上での最適な電力制御がなされ得る。
また、上述の実施形態では、チューナ2の各部において消費電力の制御が行われていたが、復調器3のADC部31において消費電力の制御が行われてもよい。これによって、復調装置の消費電力がさらに抑えられる。