JP4539148B2 - 積層セラミック電子部品の製造方法 - Google Patents

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本発明は積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品の製造方法に関するものである。
従来のセラミック電子部品の製造方法として数多くの方法が知られているが、積層セラミックコンデンサの製造方法の一例を説明する。
まず、チタン酸バリウム等の誘電体材料粉末に有機物バインダと可塑剤と溶剤等を加え混練しスラリー化した後、ドクターブレード法等を用いて上記のスラリーを塗工、乾燥し、セラミック生シートを作製する。次に、セラミック生シート上にスクリーン印刷法等により金属を主成分とする導電性ペーストを印刷乾燥して、導体層を形成し有効層用シートを準備する。また、これとは別に導体層を形成していないセラミック生シートのみの無効層用シートを準備する。
次に、支持板上に接着層を設け、これに無効層用シートを複数枚加圧積層する。この上に更に、有効層用シートを重ね、セラミック生シートと導体層とを加圧積層する。この有効層用シートの加圧積層を所望回数繰り返し積層し、更に、この上に再び無効層用シートを複数枚加圧積層して積層体を作製する。なお、有効層用シートの積層は、内部電極となる導体層の複数個の矩形パターンを1層ごとに交互に長手方向に所定寸法ずらしながら行う。
次に、加圧圧着工程で積層体を加圧しセラミック生シートと導体層の各層を圧着して一体化する。
次に、この加圧圧着した積層体を所望の形状に切断した後、さらにセラミック生シートを導体層の各層を圧着し、この生チップを焼結したのち、外部電極を形成して積層セラミックコンデンサを作製する。
なお、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば特許文献1が知られている。
特開平7−78724号公報
しかしながら、上記方法によると、積層体形成時の加圧により、積層体下部では上部より加圧回数が多いために積層体上部より密度が高い状態となっている。この積層体を焼成すると密度の高い部分と低い部分との収縮度合いが異なるため、積層セラミックコンデンサにヒビや剥離等の構造欠陥が発生するという問題点を有していた。ここでヒビとは積層セラミックコンデンサ表面の微小なひび割れ状の欠陥を示し、剥離とは積層された層の間で接着していない部分を言う。
本発明は上記従来の課題を解決するもので、積層セラミックコンデンサにヒビや剥離等の構造欠陥が発生しない製造方法を提供するものである。
上記目的を達成するために、本発明は以下の構成を有する。
本発明は、セラミックシートと内部電極とを交互に積層して積層体ブロックを作成し、上加圧型を加熱し、下加圧型は加熱しない状態で常温以下にして加圧し、さらに積層体ブロックを切断した積層グリーンチップを作成し、上加圧型を加熱し、下加圧型は加熱しない状態で常温以下にして加圧することにより、積層体及び積層グリーンチップにおいて下部より密度が低い上部が選択的に圧縮され、密度が均一となり、焼成時に発生するヒビや剥離等の構造欠陥を防止できる。
本発明にかかる積層セラミックコンデンサは、上加圧型を加熱し、下加圧型は加熱しない状態で常温以下にして加圧することにより、積層体及び積層グリーンチップにおいて下部より密度が低い上部が選択的に圧縮され、密度が均一となり、焼成時に発生するヒビや剥離等の構造欠陥を防止できる。
参考例
以下、参考例を用いて積層セラミックコンデンサを例に説明する。
積層セラミックコンデンサ11は、図4の一部切欠斜視図に示した構造を持ち、誘電体層12と内部電極13とが交互に積層されて積層体を構成し、内部電極13はその端面が積層体の対向する両端面に交互に露出するように積層されており、積層体の両端面に形成された一対の外部電極14に交互に接続されている。
積層セラミックコンデンサ11の上下には、内部電極13を持たない保護層15が形成されている。
図1は参考例における積層体の断面図であり、図2は参考例における積層体の加圧工程を説明するための概略断面図である。
図1、図2において、支持板1上に接着シート2を介してセラミックシート3と導体層4からなる積層体5が積層され、下加圧型6と上加圧型7により加圧される。8は上加圧型加熱用のヒータである。
まず、チタン酸バリウムを主成分とするセラミック粉末と分子量40万以上のポリエチレンからなるセラミックシートを準備する。
このセラミックシートの表面にニッケルを主成分とする金属ペーストを用いスクリーン印刷法で所望の形状に導体層を形成し乾燥させ、内部電極シートを準備する。
次に、積層工程について説明する。図1に示すように、まず支持板1上に接着シート2を形成する。接着シート2は支持板1と積層体5を一体化するために、積層体5と支持板1の両方に接着性を有している。接着力は積層体5と支持板1とがはがれない程度に強固である。しかし、切断後に分離する必要があるため、一定温度以上の加熱によって積層体5との接着性は消失する機能を有する。
次に支持板1上の接着シート2の上にセラミックシート3を、加熱加圧し接着する。これを繰り返しセラミックシートを20枚積層して内部電極がなく、セラミックシートのみで構成された下側の保護層を形成する。
続いて、この下側保護層の上面に内部電極シートを加熱加圧し接着する。
この内部電極シートを内部電極がセラミックシートを挟んで対向するように交互に加熱
加圧して接着することをくり返して、セラミックシートを300層積層する。
さらに、この上にセラミックシートを20枚積み重ねて上側の保護層を形成し、図1に示す積層体5を得る。
次に、図2に示すように下加圧型6の所定の位置に支持板1に接着シート2で固定された積層体5を配置する。その後ヒータ8により上加圧型7をセラミックシートが軟化する温度140℃に加熱しながら20MPa/cm2で60秒間加圧し、一体化させて積層体を完成する。
このとき下加圧型6は加熱せず、常温のままとしている。
次に、積層体を、回転刃を用いて冷却水を噴射しながら切断する。
回転刃の厚みは50〜500μmのものが一般的である。
その後、支持板1、接着シート2とともに150℃に加熱し接着シート2より分離して、個片の積層グリーンチップとする。積層グリーンチップを窒素ガス中で脱バインダ処理した後、ニッケルが酸化されない窒素水素の混合ガス雰囲気中で1300℃まで加熱して焼成し、焼結体を得る。
次に焼結体を面取して、焼結体の両端面に内部電極を露出させる。続いて焼結体の両端面と側面に銅を主成分とする電極ペーストを塗布した後、800℃の窒素雰囲気中で焼付けを行った後、スズメッキを行い外部電極を設け、参考例における積層セラミックコンデンサを作製し、試料番号1とする。
また、上記参考例と異なるのは、積層体の加圧時に上加圧型と下加圧型の両方を140℃に加熱した状態で加圧することのみで、その他は参考例と同様にして従来例による積層セラミックコンデンサを作製し、試料番号2とした。
参考例により作製した試料番号1の積層セラミックコンデンサと従来例の試料番号2の積層セラミックコンデンサ各5000個について、顕微鏡により構造検査を行った結果を(表1)に示す。上下の加圧型を加熱した従来例の試料番号2と比較して、本参考例による試料番号1の積層セラミックコンデンサでは、構造欠陥の発生はなく、また電気的特性も良好であった。
Figure 0004539148
(実施の形態
以下、実施の形態を用いて、本発明について説明する。
図3は本発明の実施の形態における積層体を切断した後の積層グリーンチップの加圧工程を説明するための概略断面図である。
図3において、支持板1上に接着シート2によりセラミックシートと導体層よりなる積層体を切断した積層グリーンチップ9が固定されており、下加圧型6と上加圧型7により加圧される。8は上加圧型加熱用のヒータである。
まず、参考例と同様の方法で図1に示すような500層の積層体を作製する。
次に、図2に示した参考例と同様の方法で、上加圧型のみをセラミックシートが軟化する温度140℃に加熱しながら20MPa/cm2で60秒間加圧し、一体化させて積層体を作製する。
このとき下加圧型6は加熱せず、常温のままとしている。
次に、この積層体を、回転刃を用いて冷却水を噴射しながら切断し、切断後の積層グリーンチップ9を得る。
次に図3に示すように、下加圧型6の所定の位置に切断された切断後のグリーンチップ9を配置する。その後ヒータ8により上加圧型7を140℃に加熱しながら10MPa/cm2で10秒間加圧する。
このときも下加圧型6は加熱せず、常温のままとしている。
次に、参考例と同様に積層グリーンチップを分離、焼成、外部電極を形成して実施の形態における積層セラミックコンデンサを作製し、試料番号3とした。
ここで、切断後の積層グリーンチップの加圧は行わないこと以外は、参考例に準じた方法で積層セラミックコンデンサを作製し、試料番号4とした。
また、上記本発明の実施の形態と異なるのは、切断後の積層グリーンチップの加圧は行わず、積層体の加圧時に上加圧型と下加圧型の両方を140℃に加熱した状態で加圧することのみで、その他は実施の形態と同様にして積層セラミックコンデンサを作製し、実施の形態における従来例の積層セラミックコンデンサを作製し、試料番号5とした。
本実施の形態により作製した試料番号3及び試料番号4の積層セラミックコンデンサ各5000個について、顕微鏡により構造検査を行った結果を(表2)に示す。
積層体を、上下の加圧型を加熱した従来例による試料番号5の積層セラミックコンデンサと比較して、本実施の形態による試料番号3の積層セラミックコンデンサでは構造欠陥の発生はなく、電気的特性も良好であった。
また、本実施の形態で作製した積層体は、参考例で作製した積層体よりも積層数が多く、より積層体の上部と下部の密度に大きな差があるために、参考例に準じる方法で、切断後の積層グリーンチップを加熱加圧しなかった試料番号4の積層セラミックコンデンサでは、構造欠陥の発生を完全に防止することはできなかった。
Figure 0004539148
なお、上記参考例,実施の形態1においては、積層体ブロックの切断を回転刃により行うものであり、回転刃の刃幅による切断溝が確実に形成されるため、特に実施の形態において切断後の加圧により、積層体個片どうしが再度くっついてしまうことを防止することができる。
また、上記参考例,実施の形態1においては下加圧型は加熱せず常温としたが、常温以下であれば良く、冷却水等により冷却を行ってもよい。
さらに、上記参考例,実施の形態1においてセラミックシートとしてはチタン酸バリウムを主成分とするセラミック粉末と分子量40万以上のポリエチレンからなるセラミックシートを用いたが、これに限定されるものではなく、ポリエチレンの代わりにポリプロピレンなどのポリオレフィンとセラミック粉末より構成したセラミックシートを用いても良く、またセラミック粉末とポリビニルブチラール樹脂やアクリル樹脂などのバインダと可塑剤などからなるセラミックシートを用いてもよい。
本発明にかかる積層セラミック電子部品の製造方法は、積層体ならびに積層体切断後の積層グリーンチップを上加圧型のみを加熱しつつ加圧することにより積層体や積層グリーンチップの密度分布を解消し、焼成時の収縮を均一にできるため、焼成時に発生するヒビや剥離等の構造欠陥を防止でき、積層セラミックコンデンサ等のセラミック電子部品の製造方法として有用である。
参考例における積層体の断面図 同加圧工程を説明するための概略断面図 本発明の実施の形態における積層体の加圧工程を説明するための概略断面図 積層セラミックコンデンサの一部切欠斜視図
1 支持板
2 接着シート
3 セラミックシート
4 導体層
5 積層体
6 下加圧型
7 上加圧型
8 加熱用ヒータ
9 切断後の積層グリーンチップ
11 積層セラミックコンデンサ
12 誘電体層
13 内部電極
14 外部電極
15 保護層

Claims (1)

  1. セラミック粉末と有機物よりなるセラミックシートを作製する第1の工程と、前記セラミックシートと導電体層とを交互に所定の回数積層して積層体を得る第2の工程と、前記積層体を加圧する第3の工程と、加圧後の積層体を切断して個片の積層グリーンチップを得る第4の工程と、前記積層グリーンチップを加圧する第5の工程と、前記積層グリーンチップを焼成した後外部電極を形成する第の工程とを含み、前記第3の工程において加圧は上加圧型と下加圧型を用いて前記積層体を上下方向から加圧するものであり、かつ前記上加圧型を加熱し、前記下加圧型は加熱しない状態で常温以下にして加圧し、前記第5の工程において加圧は上加圧型と下加圧型を用いて前記積層グリーンチップを上下方向から加圧するものであり、かつ前記上加圧型を加熱し、前記下加圧型は加熱しない状態で常温以下にして加圧する積層セラミック電子部品の製造方法。
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