JP4538129B2 - トレッドパターンおよびその成形モールド - Google Patents

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Description

【0001】
(技術分野)
本発明は、重車両用タイヤ用のトレッドパターン、およびこのようなトレッドパターンを成形(モールディング)により製造できるようにするモールドに関する。
【0002】
(背景技術)
滑り易い路面(例えば、水で覆われた路面)上を走行する条件下での、レリーフ要素を備えたタイヤのトレッドパターンの性能を維持し或いは改善をも行うため、前記要素に、溝および/または切込み(incisions;切込みの幅は溝の幅より小さく、一般に3mm以下である)の形態をなす複数の切除部(cutouts)を設けることが知られている。これらの切除部は、全体としてリブの幅を横切り、該リブを形成する溝を相互連結している。
【0003】
滑り易い路面上での性能は切除部の個数が多いほど改善されるが、切除部の個数が多過ぎるとレリーフ要素の剛性が大幅に低下し、このため、滑り易くない路面上での性能が全体的に低下してしまう。実際に、この剛性の低下によって路面と接触しているトレッドパターンの箇所に大きな振幅の運動を引き起こし、これにより、数あるタイヤの欠点のうち、摩耗が局部的(特に、リブの峰部)に生じる、いわゆる異常摩耗が引き起こされ、もはやトレッドの全走行面に亘って摩耗が均一に分布しなくなる。この異常摩耗は、前記トレッドパターンが設けられたタイヤの有効寿命を大幅に低下させる。
【0004】
また、トレッドパターンの各レリーフ要素と路面との間の接触圧力の分布が、トレッドの摩耗の異常性に直接影響を与えることも知られている。例えば、実質的に長手方向(タイヤの周方向に一致する方向)の溝により形成される複数のリブが設けられたトレッドパターンの場合には、断面で見たとき、摩耗につれて幅が増大する溝を成形することが知られている。
【0005】
定義によれば、このような溝により形成されるレリーフ要素の壁は、トレッドの走行面に対するアンダーカットであるといわれる。
【0006】
この構造は、リブの峰部の近傍(各リブの側壁と、路面と接触することを意図した壁面との交差部として定義されている)においてリブをフレキシブルにすることができ、これにより峰部の近くでの路面と各リブとの接触圧力を低下させることができる。この圧力低下は、トレッドが新しいとき、すなわちトレッドの厚さが最大であるときに一層重要である。
【0007】
しかしながら、この後者のトレッドパターンに、滑り易い路面との接地性能をを高めるための複数の切込みを設けるとすれば、リブの峰部の近傍における低圧と、前記切込みの存在に関連した大きい振幅の運動との組合せによって、リブの峰部の近傍には非常に顕著な異常摩耗が発生する。
【0008】
この異常摩耗を防止する1つの既知の方法は、リブの側壁および峰部には切り込まず、リブの表面壁にのみ開口した複数の切込みを設ける方法である。しかしながら、この構造は、走行中に路面と接触するときに切込み内に捕捉される空気に関連する騒音の問題をもたらす。
【0009】
本発明の1つの目的は、タイヤ用トレッドであって、該トレッドのトレッドパターンが、少なくとも2つの溝により形成された複数のレリーフ要素を有し、該レリーフ要素の少なくとも2つの側壁がアンダーカットされており、幾つかの前記レリーフ要素には、新しいときにトレッドの走行面に開口している少なくとも1つの切込みが設けられ構成の、上記欠点をもたないタイヤ用トレッドを提供することにある。
【0010】
(発明の開示)
本発明によれば、溝により形成される複数のレリーフ要素からなるトレッドパターンが設けられ、各レリーフ要素には、走行面の一部を形成しかつ走行時に路面と接触することを意図した表面壁および該表面壁に対してアンダーカットされた少なくとも2つの側壁が設けられ、各側壁と表面壁との交差部が峰部を形成しているタイヤ用トレッドが提案される。
【0011】
本発明によるトレッドは、
少なくとも1つのレリーフ要素には、該レリーフ要素の表面壁および少なくとも1つの側壁に開口する少なくとも1つの切込みが設けられ、
該切込みは、少なくとも第1深さH1と第2深さH2との間では前記表面壁および側壁に共通の峰部に切り込んでおらず、ここで、これらの深さH1、H2はレリーフ要素の表面壁に対して垂直に測定したもので、トレッドの異なる摩耗レベルに対応しており、H2はH1より大きいことを特徴とする.
1つの同じレリーフ要素の少なくとも2つの側壁はアンダーカットされている。すなわち、少なくとも2つの側壁は、トレッドが摩耗するとレリーフ要素の表面壁の幅が減少するように傾斜している。
【0012】
本発明によるトレッドパターンは、切込み(多数設けることができる)を設けることにより、乾いた路面上で騒音または異常摩耗の問題を生じさせることなく、滑り易い路面上でのトレッドパターンの性能を向上できる。本発明によるトレッドパターンの各レリーフ要素には、路面とのレリーフ要素の接触面上およびレリーフ要素を形成する少なくとも1つの溝に開口する複数の切込みを設けて、走行中に切込みに流入した流体を少なくとも1つの前記溝から排出させることができる。
【0013】
一般に、トレッドの全使用期間中に多数の峰部からの利益が得られるようにするには、切込みの最大深さは、事実上、レリーフ要素を形成する溝の深さに等しくするが、種々の深さにすることができる。
【0014】
特に、路面に対して平行でかつ切込みの平均方向に対して垂直な方向を向いているレリーフ要素が路面との接触力を受けるときに、レリーフ要素に充分な剛性をもたせるには、深さH1は問題とする切込みの深さに比べて小さいことが好ましい。ここで、「小さい」とは、深さH1が、切除部(包含される溝および切込み)の深さのせいぜい10%であることを意味する。
【0015】
各切込みの走行面は、平均方向をもつ幾何学的輪郭(geometric trace)を有し、平均方向は、トレッドの長手方向に対し、前記輪郭の最遠点を結ぶ直線セグメントとがなす角度として定義される。
【0016】
本発明によるトレッドパターンは、切込みの存在により発生される乾燥路面上の走行騒音を顕著に低減できる長所を有している。これは、これらの切込みが少なくとも1つの溝に開口しており、従って、切込みが路面と接触するときに切込み内に進入した空気が排除されるという事実による。
【0017】
切込みが多数であるにも係わらず、このトレッドパターンは、特に峰部の近くでの、路面との各レリーフ要素の接触圧力の分散を比較的小さくできると同時に、トレッドの最初の使用部分(すなわち、トレッドの厚さの約1/2に相当する摩耗レベルまでの部分)での剛性の低下を緩和できるという長所を有する。
【0018】
レリーフ要素の充分な剛性の維持と、レリーフ要素内に捕捉された流体の隣接溝内への最適排除との良好な妥協は、深さH2が前記切込みの深さの約40〜90%である場合に達成される。
【0019】
レリーフ要素の表面壁および少なくとも1つの側壁の両方に開口する切込みは、新しいときには前記レリーフ要素のいかなる峰部にも切り込んでいないことが好ましい(この場合には、深さH1=0である)。この構造の目的は、新しいときの表面壁の近くのトレッドの剛性を低下させることではない。
【0020】
特に優れた1つの変更形態は、新しいときにトレッドの表面壁に開口している複数の切込みをトレッドパターンの1つの同じレリーフ要素に分散させて、これらの切込みが、例えば新しいときにレリーフ要素の峰部に切り込まないようにして、レリーフ要素の一方の側壁および他方の側壁に交互に開口させることである。かくして、レリーフ要素が部分的に摩耗した後は、前記レリーフ要素の表面壁に開口する切込みは、レリーフ要素の単一の峰部に切り込むだけであり、このため、レリーフ要素の一方の側と他方の側との間での剛性のバランスを維持でき、従って剛性の急激な低下が防止される。
【0021】
レリーフ要素の表面壁および少なくとも1つの側壁に開口する少なくとも1つの切除部が設けられた少なくとも1つのレリーフ要素を有するトレッドパターンを製造するのに、既存の形式のモールドは適しておらず、レリーフ要素の峰部を破壊することなくモールドから成形要素を取り出すことは困難なことは明らかである。「取出し(demounting)」とは、成形および加硫後に、トレッドを構成する材料からこれらの成形要素を引き出すことであると理解されたい。
【0022】
1つの既知の可能性は、充填材料を用いて各切込みを成形し、成形後に前記充填材料を除去する方法にあるが、このような方法は作業が困難でありかつ産業的見地から高コストでもある。
【0023】
本発明の1つの目的は、トレッドの内面および外面を同時に成形するモールド内でトレッドを成形する必要なくして、タイヤの成形および加硫段階中にこのようなトレッドパターンが直接設けられたゴムトレッドを成形するモールドを作ることにある。この実施形態は、別々に製造されたタイヤ素材との組付け段階を必要とする。これは、もちろん非常にコストが嵩むものであり、予加硫されたトレッドとタイヤ素材(予加硫されているか否かとは無関係)との接合強度の問題がないわけではない。
【0024】
本発明によるモールドは、各々のモールド部品がそれら自体の成形/取出し方向をもつ複数のモールド部品からなる。各モールド部品は、トレッドの走行面の部分を成形することを意図した成形表面を有している。また、各モールド部品には成形表面から突出する成形要素が設けられている。トレッドパターンのレリーフ要素を形成する溝を成形することを意図した第1成形要素は、側面および該側面を限定する端面を有し、これらの側面は、トレッドのレリーフ要素の主側壁を成形することを意図したものである。第2成形要素は、レリーフ要素の切除部の成形を意図したものであり、これらの成形要素も、側面および該側面を限定する端面を有している。側面は、第1成形要素により成形される溝の平均方向とは異なる平均方向の切除部をもつ側壁を成形する。
【0025】
本発明によるモールドは、
モールド部品の成形要素の少なくとも1つの側面と、他の成形要素の1つの端面とが協働して接触しかつトレッドの成形時にゴムが通り得るようにする、深さH1と深さH2(H2は、厳密にはH1より大きい)との間に延びているオリフィスの少なくとも一部を形成し、前記深さH1、H2は、モールド部品の成形表面から、該成形表面に対して垂直に測定されたものであり、
前記他方の成形要素と接触している前記成形要素の1つが、モールド部品に対して移動できるようにかつモールド部品の成形/取出し方向に一致する方向またはこれに近い方向に移動できるように取り付けられ、これにより、モールド部品を取出し方向に移動させることからなる第1取出し段階時に、移動可能な成形要素により各オリフィス内で成形されたゴムにより加えられる合力が、前記成形要素をトレッド内に留まらせて他方の成形要素とは接触しなくなるように力を加え、これにより、第2取出し段階時に、移動可能な成形要素をトレッドから引き出すことができるようにして、各オリフィス内で成形されたゴムを破壊することがない取出しを完了できるようにすることを特徴とする。
【0026】
「オリフィスの少なくとも一部を形成し」という表現は、問題とするオリフィスが、全体として、2つの取付け要素の壁により形成されること(この構造は、例えば、図5に示す実施形態のものである)、またはオリフィスが、2つの成形要素の壁および前記成形要素が設けられたモールド部品の成形表面により形成されること(この構造は、例えば、図3A、図3Bおよび図3Cに示す実施形態のものである)を表すものである。
【0027】
本発明によるモールドは、レリーフ要素のアンダーカットされた2つの側壁を有しかつレリーフ要素の表面壁に開口し、かつ少なくとも第1深さH1と第2深さH2(H2は、厳密にはH1より大きい)との間で少なくとも1つの側壁に開口している少なくとも1つの切込みが設けられた少なくとも1つのレリーフ要素を有するトレッドのトレッドパターンの工業的な成形を可能にする長所を有している。
【0028】
(発明を実施するための最良の形態)
以下、本発明によるトレッドパターンおよびモールドの他の可能性および長所について、添付図面を参照して説明する。
【0029】
図1には、タイヤに取り付けることを意図した、新しい状態のトレッド1の一部が示されており、トレッド1には、中央部の3つのリブ3と、該リブ3の各縁部に配置されたリブ4とからなるトレッドパターンが設けられている。3つのリブ3の各々は同じ深さPをもつ2つの溝2により形成されており、トレッドの走行面での溝2の幅はトレッドの摩耗につれて増大する。
【0030】
各リブ3は、走行中に路面と接触することを意図した表面壁6と、2つの側方アンダーカット壁7、8とを有しており、側壁7、8と表面壁6との交差部は、2つの峰部5を形成している。
【0031】
また、各リブ3には表面壁6上に開口している複数の切込み10が設けられており、これらの切込み10は、トレッドが新しいときには、峰部5に切り込んではいない。表面壁6でのこれらの切込み10の輪郭(trace)は矩形であり、図示の実施形態では横方向すなわち長手方向に対して垂直に配向されている。各切込み10は、このトレッドパターンのA−A線に沿う断面図である図2により明瞭に示すように、1つの同じリブの両側壁の下部に開口している。
【0032】
この図2には、リブ3の側壁7、8の輪郭が溝の底に対して角度α(表面壁6の近くでアンダーカットされるようにするため、角度αは90°より大きい)だけ傾斜していることが示されている。切込み10は、リブ3の幅Lより小さい幅Dで、かつ平均輪郭に沿って(「平均輪郭(average trace)」とは、表面壁上での切込み10の端点を結ぶ直線を意味するものと理解されたい)表面壁6上に開口している。切込み10は、深さH2′の位置から溝の底までの部分11′が側壁7に開口している。切込み10はまた、深さH2の位置から溝2の底までの部分11が側壁8に開口している。
【0033】
図2に示されたリブの峰部5の近くに設けられたゴムくさび部分12、13は、形状が三角形でありかつ新しいときのトレッドの走行面(これは、H1がゼロに等しい場合に相当する)と、深さH2またはH2′との間に延びている。他の幾何学的形状を考えることもできる。
【0034】
これらのゴムくさび部分12、13は、例えば路面と接触した場合のように長手方向の接線力を受けたときに、リブの充分なレベルの剛性を維持する。切込み10の底の近くに設けられたゴム部分14も示されており、該ゴム部分14は、リブ3が半分摩耗したときに該リブの剛性の低下を制限する機能を有する。
【0035】
この実施形態では、全ての切込み10は、新しいときには、トレッドの表面上の幅Dは実質的に同じであり、かつ隣接する溝2の深さPと同じ深さを有する。
【0036】
トレッドが或る摩耗レベルに至るまで、トレッドが新しいときの切込み10の存在による剛性の低下を有効に制限するためには、深さH2、H2′は溝2の深さPの40〜90%であるのが好ましい。
【0037】
本発明による各切込みは、レリーフ要素の表面壁上の形状を異なったもの、例えば波形にすることができる。同様に、トレッドの厚さ方向における各切込みの形状を考える場合、これらの切込みは、平面状、湾曲状またはジグザグ状の形状にすることができる。
【0038】
新しいときのトレッドの走行面上でのこの切込みの平均方向(average orientation; すなわち、トレッドの長手方向に対し、切込みの最遠点を結ぶ直線部分がなす角度)は、前記トレッドの長手方向に対して任意の角度にすることができるが、好ましくは、この角度は少なくとも40°にする。
【0039】
以上説明したトレッドパターンを平らなトレッド上に作るのにモールドが使用され、その一部が図3A〜図3Cに概略的に示されている。
【0040】
図3Aの横断面図にはモールド20の一部が示されており、該モールド20には、切込み10を成形するための薄い平ブレード21の形状をなす第1成形要素が固定される。これらのブレード21は切込み10の主壁を成形するための平らな側壁22を有し、これらの側壁22は端壁23により限定されている。モールド20の成形面25から最も離れた端壁22の部分には、切込みの基部のゴム部分14を成形するためのノッチ24が設けられている。これらのゴム部分14の取外しには何らかの特別な困難性は存在しないことに留意すべきである。
【0041】
例えば金属、またはモールドを閉じた瞬間にトレッドの生ゴム中に突き刺さることを可能にする充分な剛性をブレードに付与できる材料で、別のブレード21を作ることができる。
【0042】
また、モールドには、溝2を成形するための第2成形要素が取り付けられ、該成形要素はリブ26の形態をなしている。このリブ26は、モールドの表面31から突出しかつ長手方向(図面に垂直な方向)に延びている第1成形部分27を有し、該第1成形部分27は、モールド20内に設けられるハウジング29内に取付けられるようにするため、第2部分28により延長されている。第2部分28の機能は、成形要素26をモールド20に連結して、モールド20に対する成形要素26の相対移動を、モールドの成形表面31に対して垂直な一方向(この方向は、成形/取出し方向と実質的に同じである)に制限できるようにすることにある。
【0043】
リブ26の第2部分28には、モールド部分20に設けられた肩部25′と協働してハウジング29内での第2部分28の移動を制限するための肩部25が設けられている。
【0044】
成形要素26の成形部分27は、トレッドのリブ3のアンダーカットされた側壁を成形するための2つの側壁29を有している。
【0045】
図3Aに示す成形構造では、ブレード21の端壁23の一部が成形要素26の側壁29に接触しており、かつ成形要素26およびモールド20の表面31と協働して、トレッドの成形中にゴムの通路として機能するオリフィス30を形成する。
【0046】
このモールドで成形および加硫を行った後、トレッドがモールドから取り出される。すなわち、成形要素21、26がトレッドから引き出され、この取出し作業が図3Bおよび図3Cの両図面に概略的に示されている。
【0047】
この作業を説明する前に、第1および第2成形要素が全てモールドと一体であると仮定すると、オリフィス30内で成形されたゴム部分12、13を破壊することなくトレッドを取り出すことは不可能であることに留意されたい。
【0048】
図3Bは取出しの第1部分を示す。この間、モールド20はその取出し方向、すなわちトレッドの厚さに対して実質的に垂直な方向に移動される。また、この移動中、モールド20と一体のブレード21がゴムから引き出される。
【0049】
この第1取出し段階の間、オリフィス30内で成形されたゴム部分12、13が、トレッドからの成形要素26の引出し方向とは反対方向の力を成形要素26の側壁29に加える。これらの力の作用およびハウジング29内でのこの成形要素26の可動取付けを考慮すれば明らかなように、成形要素26はブレード21に対して移動し、従って、オリフィス30内で成形されたゴム部分12、13を取り出すための通路が形成される。
【0050】
モールド20の同方向への並進移動を続けると、成形要素26に設けられた肩部25がモールドの表面に設けられた肩部25′に当接し、成形要素26は、次に、その移動時にモールドにより捕捉される。図3Cに示すこの移動時に、成形要素26の側壁がゴム部分12、13に力を作用する。これにより、トレッドを形成するゴム材料の変形可能な弾性により充分に変形し、ゴム部分12、13を切断することなく成形要素26をトレッドから全体的に引き出すことができる。
【0051】
平らなトレッドを成形するための上記モールドは、リングの形態をなすトレッドを成形するか、タイヤの成形時にタイヤに直接取り付けることに容易に適合できる。
【0052】
図5には、本発明によるモールド50の変更形態が示されており、この変更形態では、2つのオリフィス51、52が、ブレード54の端壁53および2つのリブ55、56の側壁55′、56′により完全に形成される。一方、ブレード54はモールド50に固定され、2つのリブ55、56はモールド内に設けられたハウジング57、58内で移動できるように取り付けられている。また、取出し時にこれらのリブの通路を制限する手段も設けられている。
【0053】
このモールドは、図4に示すようなレリーフ要素40であって、該要素40の壁面47に開口しかつ新しいときにはレリーフ要素の全幅に亘って開口する切込み41が設けられているレリーフ要素40を、ゴムトレッド内に成形することを可能にする。図4には、切込み41が、側壁46では深さH1とH2との間、および他方の側壁45では深さH1′とH2′との間で、レリーフ要素40の側壁45,46には切り込んでいないことが明瞭に示されている。また、切込み41は溝42の全深さまでは成形されておらず、溝42の底からの距離dの位置に留まっている。この位置は、例えば、摩耗インジケータの高さに等しくすることができる。
【0054】
アンダーカット壁を備えたトレッドのレリーフ要素を成形するための、図3および図5の実施形態で説明したモールドの製造原理は、アンダーカット側壁を全く備えていないレリーフ要素の成形にも使用できる。
【0055】
図6Aおよび図6Bは、摩耗レベルの如何に係わらずレリーフ要素の満足できる剛性レベルを維持できるレリーフ要素上での切込みの分布の変更形態を示す。図6Aには新しいときのレリーフ要素60が示されており、該レリーフ要素60は4つの側壁で形成され、これらのうちの2つの側壁61、62は、レリーフ要素の走行面63に対してアンダーカットされている。アンダーカットされた側壁61、62と走行面63との交差部は、2つの縁部64、65を形成している。
【0056】
このレリーフ要素60には、新しいときに要素の走行面63に開口している4つの切込み66が設けられている。新しいときには、どの切込みも峰部64、65に切り込んでいない。また、これらの切込み66は、一方の側壁61および他方の側壁62に交互に開口している。
【0057】
図6Bには、前記レリーフ要素60が部分的に摩耗して、切込み66が、側壁61、62と新しい走行面63′とにより形成された新しい峰部64′、65′に切り込んだ瞬間が示されている。切込み66が一方の側壁および他方の側壁に交互に開口している状態が明瞭に示されている。このようにして、レリーフ要素60のこの摩耗レベルから摩耗可能限度に至るまで、レリーフ要素60に充分な剛性を保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複数のリブを有しかつリブの側壁がアンダーカットされている本発明によるトレッドのトレッドパターンの一部を示す斜視図である。
【図2】図1のトレッドの長手方向に対して垂直な平面に沿うA−A断面図である。
【図3A】図1に示したトレッドパターンを成形するためのモールドを示す一断面図である。
【図3B】図1に示したトレッドパターンを成形するためのモールドを示す一断面図である。
【図3C】図1に示したトレッドパターンを成形するためのモールドを示す一断面図である。
【図4】本発明による切込みの変更形態を示す図面である。
【図5】図4の切込みを成形するための本発明によるモールドの変更形態を示す図面である。
【図6A】両側壁に交互に開口する切込みを有する本発明によるトレッドパターンの変更形態を示す図面である。
【図6B】図6Aのトレッドパターンが部分的に摩耗した状態を示す図面である。

Claims (9)

  1. 溝(2)により形成される複数のレリーフ要素(3、4)を備えたトレッドパターンが設けられ、各レリーフ要素には、走行時に路面と接触することを意図した表面壁(6)および該表面壁に対してアンダーカットされた少なくとも2つの側壁(7、8)が設けられ、各側壁と表面壁との交差部が峰部(5)を形成しているタイヤ用トレッド(1)において、
    少なくとも1つのレリーフ要素(3)には、該レリーフ要素の表面壁(6)および少なくとも1つの側壁(7または8)に開口する少なくとも1つの切込み(10)が設けられ、
    該切込み(10)は、少なくとも第1深さH1と第2深さH2との間では前記表面壁および側壁に共通の峰部(5)に切り込んでおらず、ここで、これらの深さH1、H2はレリーフ要素の表面壁に対して垂直に測定したもので、トレッドの異なる摩耗レベルに対応しており、H2はH1より大きい、
    ことを特徴とするタイヤ用トレッド。
  2. 前記深さH2は、少なくとも1つの切込み(10)が開口するレリーフ要素(3)の側壁(7、8)を形成する溝(2)の深さPの40〜90%の間にある、
    請求項1記載のタイヤ用トレッド。
  3. 前記少なくとも1つの切込み(10)が、表面壁(6)と第1深さH1の間、および第2深さH2の下方で一の側壁に開口し、
    表面壁(6)と他の第1深さH1’の間、および他の第2深さH2’の下方で他の側壁に開口し、
    ここで、H2’>H1’である、
    請求項1または2記載のタイヤ用トレッド。
  4. 前記トレッドが新しいときには、少なくとも1つのレリーフ要素では、切込み(10)がレリーフ要素の峰部に切り込んでいない、
    請求項1〜3のいずれか1項記載のタイヤ用トレッド。
  5. 前記レリーフ要素は、トレッドの長手方向に配向されたリブ(3)であり、各リブ(3)はその表面壁(6)および側壁(7、8)に開口している複数の切込み(10)を備え、該切込み(10)は、少なくとも第1深さH1と、該第1深さH1より大きい第2深さH2との間では前記リブ(3)の峰部(5)と交差せず、ここで、これらの深さH1、H2はレリーフ要素の表面壁に対して垂直に測定したもので、トレッドの異なる摩耗レベルに対応している、
    請求項1〜4のいずれか1項記載のタイヤ用トレッド。
  6. 少なくとも1つのレリーフ要素は、少なくとも2つの切込み(10)を有し、前記各切込みは、新しいときにはレリーフ要素の表面壁(6)および1つのみの側壁(7、8)に開口しており、前記切込み(10)は少なくとも第1深さH1と第2深さH2との間ではレリーフ要素の峰部に切り込んでおらず、これらの深さはトレッドの異なる摩耗レベルに対応しており、前記切込みは、一方の側壁および他方の側壁に交互に開口している、
    請求項1または2に記載のタイヤ用トレッド。
  7. 前記深さH1とH2との間ではレリーフ要素の峰部に切り込んでいない切込みの表面壁の輪郭は、トレッドの長手方向に対して少なくとも40°の平均方向を有する、
    請求項1〜6のいずれか1項記載のタイヤ用トレッド。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載のトレッドが設けられていることを特徴とするタイヤ。
  9. タイヤのトレッドの一部を成形するためのモールド部品(20、50)であって、該モールド部品(20、50)が成形表面(31、50′)を備え、該成形表面(31、50′)にはトレッドの切除部を成形するための成形要素(21、54、26、55、56)が突出し、これらの各成形要素には側面(22、29、55′、56′)および該側面を限定する端面(23、53)が設けられ、成形/取出し方向に移動できるモールド部品において、
    モールド部品(20、50)の成形要素(26、55、56)の少なくとも1つの側面(29、56、56′)と、他の成形要素(21、54)の1つの端面(23、53)とが協働して接触しかつトレッドの成形時にゴムが通り得るようにする、深さH1と深さH2との間に延びているオリフィス(30、51、52)の少なくとも一部を形成し、前記深さH1、H2は、モールド部品(20、50)の成形表面(31、50′)から、該成形表面に対して垂直に測定されたものであり、
    前記他方の成形要素(21、54)と接触している前記成形要素(26、56、56′)の1つが、モールド部品(20)に対して移動できるようにかつモールド部品(20)の成形/取出し方向に一致する方向またはこれに近い方向に移動できるように取り付けられ、モールド部品を取出し方向に移動させることからなる第1取出し段階時に、各オリフィス(30、51、52)内で成形されたゴム部分により移動可能な成形要素(26、56、56′)に加えられる合力が、前記成形要素をトレッド内に留まらせて他方の成形要素(21、54)とは接触しなくなるように力を加え、これにより、第2取出し段階時に、移動可能な成形要素をトレッドから引き出すことができるようにして、各オリフィス(30、51、52)内で成形されたゴムを破壊することがない取出しを完了できるようにし、
    少なくとも1つの移動可能な成形要素(26)は、トレッドのトレッドパターンのレリーフ要素のアンダーカット壁を成形することを意図しており、前記成形要素は、モールド部品(20)に対して取出し方向に移動できるようにモールド部品(20)に設けられたハウジング内に取り付けられ、取出しを可能にする、
    ことを特徴とするモールド部品。
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