JP4535016B2 - 塩化ビニル樹脂組成物、それを用いて作製した塩化ビニル樹脂シートおよび成形体 - Google Patents

塩化ビニル樹脂組成物、それを用いて作製した塩化ビニル樹脂シートおよび成形体 Download PDF

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この発明は火災時の低発煙性、低発熱性を併せもつ塩化ビニル樹脂組成物に関するもので、とくに航空機・船舶・車両などの輸送機器、とりわけ航空機の内装部材として好適な成形体が得られる塩化ビニル樹脂組成物に関する。
従来より、塩化ビニル樹脂は難燃性に優れた素材として工業材料、建築材料、産業機器用材料などの各用途に広く使用されている。しかし、塩化ビニル樹脂は燃焼時に発煙しやすく、低発煙性、低発熱性が求められる航空機・船舶・車両などの輸送機器用、とりわけ航空機の内装部材用途においては、その要求に充分に応えることができなかった。そのため、塩化ビニル樹脂に、難燃剤、発煙抑制剤などの各添加剤を添加し、低発煙性、低発熱性を向上させようとする試みがなされている。例えば塩化ビニル樹脂にモリブデン化合物、水酸化化合物、リン酸化合物などの化合物を添加した処方が提案されている(特許文献1、特許文献2)。また、塩化ビニル樹脂にモリブデン化合物、アンチモン化合物、ハイドロタルサイト類化合物などの化合物を添加した処方が提案されている(特許文献3)。
しかしながら、これら添加剤が添加された組成物であっても、必ずしも発熱、発煙抑制効果が充分に満足できるものは得られておらず、燃焼時の低発煙性、低発熱性を兼ね備えた塩化ビニル樹脂組成物の開発が望まれている。
特開平10−298380 特開2002−28494 特開平07−145287
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、低発煙性、低発熱性に優れ、航空機・船舶・車両などの輸送機器、とりわけ航空機の内装部材として好適な成形体を得ることができる塩化ビニル樹脂組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、発煙抑制が期待される添加剤を各種検討し、従来発煙抑制効果があるとは知られていない特定のアルミニウムマグネシウム化合物において、顕著な発煙抑制効果があることを見出した。さらに、このアルミニウムマグネシウム化合物をモリブデン化合物、アンチモン化合物と合わせて配合することにより、航空機の内装部材用途にも適用できる低発煙性、低発熱性を備えた塩化ビニル樹脂組成物になり得ることを見出した。
すなわち、請求項1にかかる発明は、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、モリブデン化合物2重量部以上、アンチモン化合物2重量部以上、および一般式( 1 )で表わされるハイドロタルサイト類化合物を300〜900℃で焼成して得られるアルミニウムマグネシウム化合物を2重量部以上配合したことを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物を要旨とする。
〔Mg Al (OH) (CO 〕mH O ・・・・・・ (1)
( ただし、式中のa 、b 、c 、d は0 . 1 以上の正数、m は0 または正数)
また、請求項2にかかる発明は、前記アルミニウムマグネシウム化合物が、一般式(1)で表わされるハイドロタルサイト類化合物を300〜900℃で焼成して得られる一般式(2)で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル樹脂組成物を要旨とする。
〔MgAlb (OH)c(CO3d〕mH2O ・・・・・・ (1)
Mgx Aly z ・・・・・・ (2)
(ただし、式中のa、b、c、d、x、y、zは0.1以上の正数、mは0または正数)
上記の通り、本発明の塩化ビニル樹脂組成物は、塩化ビニル樹脂にモリブデン化合物、アンチモン化合物、およびハイドロタルサイト類化合物を300〜900℃で焼成して得られるアルミニウムマグネシウム化合物を特定量以上添加したものとしたため、低発煙性と低発熱性を兼ね備えた難燃性の樹脂組成物となり、航空機・船舶・車両などの輸送機器、とりわけ航空機の内装部材などの用途に好適なものとなるといった効果がある。
本発明における塩化ビニル樹脂は、塩素化度が約56%である一般の塩化ビニル樹脂が好適に使用できる他、塩素化度が60〜73%である後塩素化塩化ビニル樹脂、上記塩化ビニル樹脂と上記塩素化塩化ビニル樹脂との混合樹脂、塩化ビニルと酢酸ビニル樹脂やエチレンなどとの共重合樹脂を使用することが可能である。
本発明におけるモリブデン化合物は、酸化モリブデン 、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸カルシウム亜鉛、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カリウム、二硫化モリブデンなどが使用され、それらの平均粒子径は、0.3〜5μm、好ましくは0.5〜2μmである。平均粒子径が0.3μm以下、または5μmを超えると、分散が不十分となり、低発煙性に悪影響を与えるので好ましくない。また、5μmを超えた場合には、成形体に黒い斑点が目立ちやすくなり、外観を確保する観点からも好ましくない。
モリブデン化合物の配合量は、塩化ビニル樹脂100重量部に対し少なくとも2重量部が必要である。2重量部未満では充分な発煙抑制効果が得られない。
本発明に使用されるアンチモン化合物としては、二酸化アンチモン、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどが挙げられる。これら化合物の粒子径は0.1〜20μm、好ましくは0.3〜20μmである必要がある。粒子径が0.1μm未満であると、塩化ビニル樹脂との混合時に、2次凝集を起こし成形時にブツとなるので好ましくない。また、20μmを越えると発熱抑制効果が低下するため好ましくない。
アンチモン化合物は、塩化ビニル樹脂100重量部に対し2重量部以上添加される必要がある。2重量部未満では充分な発熱抑制効果が得られない。
本発明に使用されるアルミニウムマグネシウム化合物は、ハイドロタルサイト類化合物を300〜900℃で焼成することによって得られる。このように焼成することによって、一般的なハイドロタルサイト類化合物とは異なる、とくに発熱、発煙抑制の点で顕著に優れる効果を示すものとなる。
ハイドロタルサイト類化合物は、一般式〔MgAlb (OH)c(CO3d〕mH2O(ただし、式中のa、b、c、dは0.1以上の正数、mは0または正数)で表わされる化合物であり、天然物でも合成物であってもよい。
燃焼温度については300〜900℃とする必要があり、これを逸脱する範囲のものは、燃焼時の発煙抑制を充分にすることができず好ましくない。すなわち、300℃未満ではハイドロタルサイト類化合物からの脱炭酸(脱CO2)、脱水(脱H2O)反応が充分に進まないことにより発煙抑制を充分にすることができず、一方、900℃超過では発煙抑制効果のないスピネル(MgAl24)が多く生成することによるため、同じく発煙抑制を充分にすることができない。
なお、本発明のアルミニウムマグネシウム化合物は、上記一般式〔MgAlb (OH)c(CO3d〕mH2O(ただし、式中のa、b、c、dは0.1以上の正数、mは0または正数)で表わされるハイドロタルサイト類化合物を上記燃焼温度で焼成することによって得られる一般式Mgx Aly z(ただし、式中のx、y、zは0.1以上の正数)で表わされる化合物であることが好ましい。このような化合物とすることで、燃焼時の発煙抑制効果をより確実なものとすることができる。
本発明におけるアルミニウムマグネシウム化合物の大きさは、平均粒径が0.5〜15μmであるのが好ましい。粒度分布は、粒径0.2μm以下が10重量%以下、粒径20μm以上が3重量%以下であるのが好ましい。比表面積は50m2/g以下であるのが好ましい。
アルミニウムマグネシウム化合物の配合量は、塩化ビニル樹脂100重量部に対し少なくとも2重量部が必要である。2重量部未満では充分な発煙抑制効果が得られない。
本発明における各化合物の添加部数については、塩化ビニル樹脂100重量部に対して、モリブデン化合物2重量部以上、アンチモン化合物2重量部以上、およびハイドロタルサイト類化合物を300〜900℃で焼成して得られるアルミニウムマグネシウム化合物を2重量部以上であるが、その総量は25重量部以下とすることが好ましい。すなわち25重量部を超えると、本発明の塩化ビニル樹脂組成物を押出成形によってシート成形しようとする際に、吐出安定性の低下を招くため好ましくない。またシートは機械物性、とくに衝撃強度などの低下を招くため好ましくない。また成形されたシートを真空成形や圧空成形などの2次成形をする場合には、成形性が低下するため好ましくない。なお、真空、圧空成形がなされる分野でとくに衝撃強度を重要視する場合には、その総量は、20重量部以内とするのが望ましい。
本発明の塩化ビニル樹脂組成物には、上述の化合物の他に、補強剤、加工性改良助剤、安定剤、滑剤、着色剤、充填剤、可塑剤などの塩化ビニル樹脂を成形する際に必要な公知の添加剤を適宜配合することができる。
本発明における塩化ビニル樹脂組成物を成形する方法については、上述した押出成形の他、カレンダー成形、圧縮プレス成形、射出成形などの常套の成形方法が適用される。
以下に本発明を説明する。なお、原材料としては、以下のものを用意した。
塩化ビニル樹脂:商品名:S−1008、株式会社カネカ社製
モリブデン化合物:モリブデン酸アンモニウム(商品名:TF−2000、日本無機化学社製)
アンチモン化合物:三酸化アンチモン(商品名:STOX、日本精鉱社製)
アルミニウムマグネシウム化合物:一般式Mg4.3 Al2 (OH)13(CO31で表される合成ハイドロタルサイトを600℃で2時間焼成して得られたもので一般式Mg0.7 Al0.3 1.15で表される化合物、商品名:KW−2200、協和化学社製
ハイドロタルサイト:無処理品、一般式〔Mg4.3 Al2 (OH)13(CO3)〕・3.5HO、商品名:DHT−4A、協和化学社製
錫安定剤:商品名:JF―105、三共有機株式会社製
アクリル系補強剤:商品名:カネエースFM、株式会社カネカ社製
加工性改良剤:商品名:P―551、三菱レーヨン株式会社製
滑剤:商品名EW−250、理研ビタミン株式会社製
<実施例1〜3、比較例1〜5>
表1に記した塩化ビニル100重量部に対し、錫安定剤3重量部、アクリル系補強剤5重量部、加工性改良剤3重量部、滑剤2重量部を配合するとともに、表1に示した原材料を同表に示した重量部数配合し、それらをスーパーミキサーにて、100℃まで昇温しながら攪拌混合した後、30℃まで冷却して塩化ビニル系樹脂組成物を得た。つぎに得られた配合物を、直径30mmの2軸押出機を用いて、厚さ3mmの押出シートを作製し、それらシートについて、次の項目で評価を行なった。
(a)発熱性(THR:Total Heat Release)
ASTM E906に準拠して、2分間におけるTotal Heat ReleaseをOhio State University Calorimeterで測定した。65Kw・min/m以下であれば合格、この値を超えた場合は不合格とした。
(b)発熱性(HRR:Heat release Rete)
ASTM E906に準拠して、5分間におけるPeak Heat Release RateをOhio State University Calorimeterで測定した。65Kw/m以下であれば合格、この値を超えた場合は不合格とした。
(c)発煙性(Smoke Density)
ASTM E662−82に準拠して、NBS発煙性試験機により4分後の最大煙濃度を測定した。4分後の最大濃度が200以下であれば合格、この値を超えた場合は不合格とした。
Figure 0004535016
表1に示す通り、本発明の技術範囲内にある実施例1〜3においては、良好な低発煙性、低発熱性を示した。一方、本発明のアルミニウムマグネシウム化合物の添加量が技術範囲を外れている比較例1〜3においては、発煙抑制効果、または、発煙抑制および発熱抑制の両方において効果がみられず、モリブデン化合物の添加量が技術範囲を外れている比較例4においては、発煙抑制および発熱抑制の両方において効果がみられず、アンチモン化合物の添加量が技術範囲を外れている比較例5においては、発熱抑制効果がみられなかった。

Claims (4)

  1. 塩化ビニル樹脂100重量部に対して、モリブデン化合物2重量部以上、アンチモン化合物2重量部以上、および一般式( 1 )で表わされるハイドロタルサイト類化合物を300〜900℃で焼成して得られるアルミニウムマグネシウム化合物を2重量部以上配合したことを特徴とする塩化ビニル樹脂組成物。
    〔Mg Al (OH) (CO 〕mH O ・・・・・・ (1)
    ( ただし、式中のa 、b 、c 、dは0 . 1 以上の正数、m は0 または正数)
  2. 前記アルミニウムマグネシウム化合物が、一般式( 1 )で表わされるハイドロタルサイト類化合物を300〜900 ℃で焼成して得られる一般式( 2 )で表わされる化合物であることを特徴とする請求項1 に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
    〔MgAl(OH)(CO〕mHO ・・・・・・ (1)
    MgxAlyOz ・・・・・・ (2)
    ( ただし、式中のa 、b 、c 、d 、x 、y 、z は0 . 1 以上の正数、m は0 または正数)
  3. 請求項1または2記載の塩化ビニル樹脂組成物を用いて作製した塩化ビニル樹脂シート。
  4. 請求項1または2記載の塩化ビニル樹脂組成物を用いて作製した成形体。
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