JP4533553B2 - X線管 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はターゲットの構造に特徴のあるX線管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
X線管は、ターゲット(対陰極または陽極とも呼ばれる)に電子ビームを照射して、ターゲットの表面上の電子ビーム照射領域からX線を発生させるものである。ターゲットは目的の波長のX線を発生させる金属材料で構成されており、例えば、銅、モリブデン、タングステンなどのX線発生金属からなる。ターゲットの表面上の電子ビーム照射領域は焦点と呼ばれていて、この焦点のサイズにはいろいろなものがある。通常のX線管は1mm×10mm程度の焦点サイズであるが、それよりも小さな焦点サイズが必要になることもある。焦点サイズを小さくするには、ターゲットに照射する電子ビームの断面積を小さく絞ることになる。しかしながら、電子ビームの断面積を非常に小さくするには、次のような理由により、限界がある。第1に、電子ビームの断面積を小さく絞っていくと、電子密度が高くなって電子間の反発が生じるので、断面積を無限に小さくはできない。第2に、電子ビームの最小可能断面積は、電子ビームを絞るレンズ(磁気レンズまたは電界レンズ)の性能に左右されるが、電子ビームを極めて微小に絞るための高性能のレンズを作るのが難しい。第3に電子ビームの断面積を小さくしていくと、電子ビームのエネルギーが微小領域に集中するので、ターゲット材料がそのような高負荷に耐えられなくなる。このような理由により、現在のところ、電子ビームを絞ることでターゲット上に作ることのできる実用的な最小の焦点サイズは直径10μm程度である。このような微小な焦点サイズを有するX線管はマイクロフォーカスX線管と呼ばれている。
【0003】
ところで、後述するように、この発明はターゲットのベースにX線発生材料を埋め込んで、このX線発生材料が微小サイズだけ露出するようにしているが、この点について関連の深い公知技術が存在する。特開平8−115798号公報は、X線管のターゲットに関して、ダイヤモンドのベースに0.2mmの貫通孔をあけて、これにターゲット材料(銅)を埋め込んでいる。しかしながら、この公知技術では、直径0.2mmのX線発生材料(銅)に対して、断面サイズが0.15mmの電子ビームを照射している。したがって、この公知技術でも、電子ビーム照射領域の全面からX線が発生することについては変わりがなく、微小な焦点サイズを得るためには電子ビームを絞らなければならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように電子ビームを絞って小さな焦点サイズを作るには限界があるが、そのような限界よりもさらに小さな焦点サイズが望まれている。焦点サイズを非常に小さくできれば、例えば、次のような利点がある。(1)X線源を楕円ミラーの一方の焦点上に配置し、楕円ミラーの他方の焦点上に試料を配置して、試料の微小領域にX線を照射するシステムでは、X線源の焦点サイズが小さければ小さいほどX線源を点光源とみなせるので、試料上のX線強度が増加する。(2)微小なX線源から放射状に拡散するX線を試料に照射して、試料を透過したX線を2次元の位置敏感型のX線検出手段で検出して、試料の画像を求めるシステムにおいては、X線源を試料に近づければ近付けるほど試料の拡大画像を得ることができ、その場合に、X線源の焦点サイズが小さければ小さいほど、ボケのない鮮明が画像が得られる。
【0005】
したがって、この発明の目的は、電子ビームを絞るだけでは得られないような非常に小さな焦点サイズを得ることのできるX線管を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明のX線管はターゲットの構成に特徴がある。このターゲットは、電子ビームが照射されたときに目的の波長のX線を発生するX線発生部と、電子ビームが照射されても目的の波長のX線をほとんど発生しないベースとからなる。そして、ターゲットの表面上の電子ビーム照射領域の内部には、前記X線発生部と前記ベースの両方が存在していて、電子ビーム照射領域の内部のX線発生部のみから目的の波長のX線が発生する。これにより、電子ビーム照射領域よりも小さい焦点サイズを得ることができる。そして、ターゲットの内部には冷却水が流れる流路が形成されていて、前記X線発生部はターゲットの表面に露出しているとともに前記流路にも露出している。
【0007】
また、次のような理由により、微小な焦点サイズであるにもかかわらず、X線強度が安定する。電子ビーム照射領域を非常に小さく絞ってその照射領域の全面からX線を発生させる場合(従来技術)と、電子ビーム照射領域内の一部に存在する微小なX線発生材料からX線を発生させる場合(本発明)とを比較すると、取り出すX線ビームの見かけの焦点サイズを両者同じにした場合には、本発明の方がX線強度の安定性が優れている。なぜならば、本発明の方が電子線照射領域が大きくて管電流が大きくとれるからである。管電流が大きい方が暗電流の影響が少なくなる。これを以下に説明する。X線管の管電流の制御は、暗電流(X線管内の残留ガスを伝わったり、絶縁物の表面を伝わったりして流れる微小電流。外部条件によってたえず変動する)を含めた形で行なわれることになるが、ターゲットに実際に投入される電流は、暗電流を除いたものとなる。したがって、管電流を精密に制御しても、ターゲット投入電流は暗電流の影響で多少変動する。そして、管電流の値が小さくなればなるほど、暗電流の影響が大きくなる。本発明では、従来技術と比較して、管電流をそれほど小さくしなくても微小な焦点サイズが得られるので、X線強度の安定性に優れている。
【0008】
この発明は、原理的には、回転ターゲットでも固定ターゲットでも適用可能である。この発明を回転ターゲットに適用する場合には、回転可能な円筒状のターゲットの外周面に1〜10μmの幅の環状のX線発生材料を露出させるのが好ましい。X線発生材料の幅を1μmよりも小さくすることも可能ではあるが、幅だけを狭くしても、ターゲット上の焦点サイズの最大差し渡し寸法は、電子ビーム照射領域内のX線発生材料の周方向の長さ(電子ビーム照射領域のサイズで決まる)で決まってしまうので、あまり意味がない。そこで、実用的には、X線発生材料の幅の下限値は1μm程度である。また、X線焦点サイズを10μm以上にすることは電子ビームを絞ることですでに実現しているので、この発明においてX線発生材料の幅を10μm以上にすることは利点が少ない。この発明を固定ターゲットに適用する場合にも、ターゲットの表面に1〜10μmの幅の細長いX線材料を露出させるのが好ましい。
【0009】
この発明のターゲットのベースの材質は炭素とすることが好ましい。電子ビーム照射領域内の炭素からX線が発生しても、その特性X線は、X線発生材料の特性X線の波長よりも非常に長いので、炭素の特性X線を実質的に外部に取り出さない材質(例えば、ベリリウムまたは炭素)でX線取出し窓を作れば、炭素の特性X線だけがX線取出し窓で吸収されて、これがX線管の外部に出て行くことがない。さらに、炭素は、軽量であること、高融点であること、熱伝導性が良好であること、導電体であること、などの点で、ターゲットのベース材料として優れている。
【0010】
この発明のX線管は、例えば、X線回折装置、蛍光X線分析装置、透過X線を利用した画像システム、などのX線源として利用できる。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1はこの発明のX線管の第1の実施形態(回転ターゲットX線管に適用したもの)を示す斜視図であり、図2はその断面図(中心線を含む平面で切断した断面図)である。図2において、回転ターゲット10は炭素製の中空円筒状のベース12と、これに埋め込まれた環状のX線発生材料14とからなる。ベース12は取付金具16によって回転台18に固定されている。その構造を説明すると、ベース12の基端にはフランジ部20が形成されていて、このフランジ部20に取付金具16のフランジ部22が接触する。取付金具16の内周面には雌ねじ24が形成されていて、この雌ねじ24が回転台18の外周面の雄ねじ26と噛み合う。取付金具16を回転台18にねじ込むと、ベース12のフランジ部20が回転台18に固定される。回転台18は回転軸36と一体に形成されている。回転ターゲット10の内部に形成された流路には冷却水28が流れており、この冷却水28は、回転台18の溝内に配置されたOリング30によってシールされている。回転ターゲット10の内部には静止ブレード32が配置されていて、この静止ブレード32は静止軸34に固定されている。冷却水28は静止ブレード32によって流れが導かれて、回転ターゲット10の内面を効率良く冷却する。
【0012】
環状のX線発生材料14は二つのベース部品38、40の間に挟まれていて、その厚さは1〜10μmと非常に薄くなっている。以下に説明する実施形態ではX線発生材料14の幅は3μmであるが、1〜10μmの範囲内の所望の値にすることができる。図2に示すように、X線発生材料14は、回転ターゲット10の外周面に露出しているとともに、回転ターゲット10の内部の冷却水28の流路にも露出している。
【0013】
次に、回転ターゲット10の製造方法を説明する。図5(a)は二つのベース部品、すなわち、第1ベース38と第2ベース40の接合付近を拡大して示した断面図である。第1ベース38と第2ベース40は、外周面の直径が60mmである。第1ベース38は両端が開放した中空円筒状であり、一方の端部にはフランジ20(図2を参照)が形成されていて、全体が高密度の炭素でできている。第2ベース40はカップ状で一端だけが開放しており、やはり高密度の炭素でできている。第1ベース38の端面42(フランジの形成されていない端面)には深さが0.05mmの環状の段部43が形成されており、第2ベース40の端面44にも深さが0.05mmの環状の段部45が形成されている。第1ベース38と第2ベース40の肉厚Aは3〜5mmであり、段部43、45の半径方向の長さBは肉厚Aの3分の2程度である。
【0014】
まず、第1ベース38の端面42に、段部43も含めて、第1の金属ロー材46を真空蒸着法などで10μmの厚さで被覆する。この第1の金属ロー材46の材質はTi−Ag−Cu系である。同様に、第2ベース40の端面44にも、段部45を含めて、第1の金属ロー材46を10μmの厚さで被覆する。
【0015】
次に、端面42、44のところだけを(すなわち、段部43、45を除いて)ラッピング加工を施して、端面42、44に形成された第1の金属ロー材46を除去すると共に、端面42、44を高精度の平坦面にする。具体的には、端面42、44を互いに接触させて組ラッピングによるラッピング仕上げを行い、0.1μm程度の表面粗さにする。段部43、45には第1の金属ロー材46がそのまま残ることになる。
次に、図5(b)に示すように、第1ベース38の端面42に、段部43も含めて、X線発生材料14を真空蒸着法などで蒸着する。X線発生材料14の厚さtは約3μmである。このX線発生材料14は、第1ベース38ではなくて、第2ベース40の方に被覆してもよい。この実施形態では、X線発生材料14の材質はタングステンである。
【0016】
その後、厚さ0.1mmの環状の第2の金属ロー材48を段部43、45の間に挟んで、第1ベース38と第2ベース40をロー付けをする。ロー付け条件は、接合部分の荷重が1平方cm当たり約500N(ニュートン)であり、熱処理温度が約900℃である。ロー材が溶けたら降温過程に移る。ロー付けが完了すると、図5(c)の状態になる。接合した第1ベース38と第2ベース40は、その外周面を機械加工して完全な円筒面になるようにする。最終的には、後述するハウジング52(図6を参照)に回転ターゲットを組み込んで実際に回転させた状態で、回転ターゲットの外周面に面振れが生じないように外周面を仕上げ加工する。
【0017】
回転ターゲット10のベース12の材質として上述のように炭素を選択したのは次のような理由による。炭素は軽いので高速回転に向いている。この実施形態の回転ターゲットは8千〜1万rpmの回転速度で回転する。また、一般に使われるターゲット材料(X線発生材料)と比較して、炭素はその特性X線の波長が非常に長いので、電子ビーム照射領域内の炭素からX線が発生しても、これはX線取出し窓で吸収されて、外部に出て行かない。さらに、炭素は高融点でありX線発生材料を接合するときの熱処理に耐える。さらに、炭素は熱伝導が良好であり回転ターゲットを水冷するときに冷却効率が良い。さらに、炭素は導電体であり回転ターゲットに流れる電流(管電流)を金属製の回転軸に逃がすことについても特に支障がない。なお、炭素の形態としては、金属含浸型黒鉛(機械加工ができる)や、内面に金属膜を被覆した黒鉛などを使うことができる。また、炭素以外のベースの材質としては、例えばSiCが考えられる。
【0018】
カーボンを接合するためのロー材としてはチタンを含むことが好ましいので、上述の金属ロー材46、48としてTi−Ag−Cu系を用いている。ところで、X線発生材料とロー材との相性を考えると、チタンを含むロー材を使う場合は、X線発生材料としては、低融点(ロー付け温度)でチタンとの共晶合金を作らない金属(例えば、タングステンやモリブデン)を使うのが好ましい。チタンと合金を作ってしまうような金属(例えば、銅)をX線発生材料として使うと、合金になった場合に、X線発生材料から発生するX線にチタンの特性X線が混じってしまうことになる。このチタンの特性X線はベリリウム窓を透過してしまう。
【0019】
そこで、チタンと合金を作ってしまうような金属(例えば、銅)をX線発生材料として使う場合は、上述の第1の金属ロー材46としてニッケルやクロムを含む高温ロー材(加熱温度は1000℃付近)を使い、一方で、第2の金属ロー材48としてAg−Cu−In系の低温ロー材(約720℃で接合可能)を使うのが好ましい。こうすると、X線発生材料として銅、銀、クロムなどを使うことができる。
【0020】
図6は上述のような回転ターゲット10を備えるX線管における回転ターゲット10の取付部分の構造を示す縦断面図(中心線を含む平面で切断した断面図)である。X線管のチャンバー50(真空容器)には、回転ターゲット10を支持するハウジング52が、そのフランジ部54のところでボルトで固定されている。ハウジング52の内部には回転駆動用のモータを構成するステータ56とロータ58がある。ステータ56はハウジング52に固定されており、ロータ58は回転軸36に固定されている。回転軸36の先端には回転台18が一体に形成されている。この回転台18には上述のように回転ターゲット10が固定されている。回転軸36は、その先端側を2個の軸受60で回転可能に支持され、基端側を1個の軸受62で回転可能に支持されている。回転軸36とハウジング52の間は磁性流体シール装置66によって真空シールされている。回転軸36の内部には中空の静止軸34が通っており、静止軸34の内部には、冷却水導入口64から冷却水が導入される。静止ブレード32に導かれて回転ターゲット10を冷却した冷却水は、回転軸36の内周面と静止軸34の外周面との間の通路を戻ってきて、通路66につながる冷却水排出口から出ていく。
【0021】
ところで、回転ターゲット10が回転する間、電子ビームが当たるX線発生材料14の空間的な位置(焦点位置)は常に一定であることが理想的である。もし、回転ターゲット10の外周面の中心線がその回転中心線から偏心していると、回転中に焦点位置が図6のY方向に周期的に変動することになる。また、回転ターゲット10の外周面の中心線がその回転中心線に対して傾斜していると、回転中に焦点位置が図6のX方向に周期的に変動することになる。したがって、回転軸34の外周面の中心線と回転ターゲット10の外周面の中心線とが完全に一致するように、回転ターゲット10の外周面を精度良く加工する必要がある。さらに、回転軸34が回転中に振れを生じないように、軸受60、62も高精度のものを使う必要がある。先端側に2個の軸受60を使用している(通常は1個である)のは、回転振れをできるだけ生じないようにするための対策である。この実施形態では軸受60、62としてボールベアリングを用いているが、空気静圧軸受を使うこともできる。焦点位置のY方向の変動量は5μm以下にするのが好ましく、X方向の変動量は1μm以下にするのが好ましい。この実施形態のX線管を実測したところ、回転中のY方向における焦点位置の変動量は4μm程度であり、X方向の変動量は1μm以下であった。
【0022】
次に、このX線管の動作について説明する。図1及び図2において、熱陰極74(図2を参照)から電子ビーム68を放射すると、これは回転ターゲット10の外周面に照射される。すると、電子ビーム照射領域内に存在するX線発生材料14のみから目的の波長のX線が発生し、このX線ビーム70がX線取り出し窓72(図1を参照)から取り出される。X線発生材料14の材質をタングステンにした場合は、タングステンのKα1の特性X線(波長=0.0209nm)を取り出すことができる。X線取出し窓72はX線管のチャンバー50(図6を参照)に設けられている。X線取出し窓72はベリリウムでできており、上述のタングステンの特性X線はベリリウムを透過して外部に出ていく。ところで、回転ターゲット10の炭素製のベース12の一部も電子ビーム照射領域内に存在しているので、このベース12からもX線が発生する。しかし、炭素の特性X線の波長はタングステンの特性X線の波長と比較して非常に長いので(数nm程度)、ベリリウム製のX線取出し窓72で吸収されて、X線管の外部には出て行かない。
【0023】
図2において、この実施形態で使用している熱陰極74は、通常のコイルフィラメントのタイプではなくて、炭素製の加熱体に六ホウ化ランタン76を埋め込んだものを用いている。
【0024】
図3は回転ターゲット上の電子ビーム照射領域の付近を拡大して示した斜視図である。この例では、電子ビーム照射領域78の形状は直径Dが約30μmの円形である。電子ビーム照射領域78のちょうど中央をX線発生材料14が横切るように、回転ターゲット10上の電子ビーム照射位置が調整されている。したがって、電子ビーム照射領域78では、そのほぼ中央に帯状のX線発生材料14があり、その両側に炭素製のベース12が存在している。この例では、X線発生材料14の幅tは3μmである。幅が3μm(X線発生材料14の幅tに等しい)で長さが30μm(電子ビーム照射領域の直径Dに等しい)のX線発生領域(ターゲット上の焦点となる)から発生するX線ビーム70は、取り出し角θ=6度(ターゲット表面に対するX線ビームの取り出し角度)で取り出すと、その断面寸法は、幅がtに等しくて、高さHがDの約10分の1となる。すなわち、見かけの焦点サイズはおよそ3μm×3μmとなる。このように極めて微小な焦点サイズが得られたのは、X線発生材料14の幅tを3μmと非常に小さくできたからである。6度の取り出し角にすれば(通常のX線管はこのような取り出し角になっている)、高さHは電子ビーム照射領域78の直径Dの10分の1になるので、X線発生材料14の幅tの10倍程度の直径の電子ビーム照射領域78を作れば、X線ビーム70の幅と高さが、X線発生材料の幅tと同程度のサイズとなる。
【0025】
図4は電子ビーム照射領域のサイズを変更した別の例である。この例では、図3と同じ回転ターゲット10に対して、電子ビーム照射領域78のサイズを次のように変更している。この電子ビーム照射領域78は、幅Wが30μm、長さLが100μmである。この場合でも、図3と全く同じ焦点サイズのX線ビーム70が得られる。なぜならば、X線発生材料14に限っていえば、これに照射される電子ビームの面積が図3の場合と同じだからである。すなわち、電子ビーム照射領域78の長さLを長くしても焦点サイズには影響がなく、幅Wだけが焦点サイズに影響している。したがって、X線発生材料14の幅tと、電子ビーム照射領域の幅W(X線発生材料14の長手方向の寸法)だけが、焦点サイズに影響している。
【0026】
実際のX線管では、図3のような直径30μmの電子ビーム照射領域を作るよりも、図4に示すように幅Wだけが30μmとなるような細長い電子ビーム照射領域を作る方が容易である。
【0027】
次に、この発明のX線管の第2の実施形態(固定ターゲットX線管に適用したもの)を説明する。図7は固定ターゲットの製造工程を示す斜視図である。図7(a)に示すように、細長い直方体の形状をした炭素製(例えば、金属含浸型黒鉛)の第1ベース80と、これと同じ形状及び材質の第2ベース82とを用意して、これらの間にX線発生材料14を挟んで固定ターゲットを作るものである。帯状のX線発生材料14の幅は約50μm、厚さは約3μmである。
【0028】
まず、第1ベース80と第2ベース82の互いに対向する面にカーボン接着剤(接着剤自体が炭素材料でできている)を塗布する。それから、帯状のX線発生材料14を第1ベース80と第2ベース82の間の幅方向の中央位置に挟んでこれらを接合する。具体的には、最初に、第1ベース80と第2ベース82に圧力をかけながら大気中で400℃まで加熱してカーボン接着剤を硬化させる。次に、真空炉で1000℃まで加熱してカーボン接着剤を完全に固化させる。このときは圧力は必要ない。図7(b)は接合後の状態を示す。
【0029】
次に、この細長い直方体のブロックを、適当な厚さ(例えば、0.5〜1mm)になるように、長手方向に垂直な平面で切断(スライス)して、図7(c)に示すように、多くのターゲット片84を作ることができる。各ターゲット片84は、その中央部にX線発生材料がわずかに露出したものとなる。
【0030】
図8(a)はこのようにして作られたターゲット片84の平面図である。全体としてはほぼ正方形であり、第1ベース80と第2ベース82の間に接合面86があり、この接合面の中央付近にX線発生材料14が露出している。その露出サイズはおよそ50μm×3μmである。このサイズは、図7(a)の帯状のX線発生材料14の断面寸法に等しい。
【0031】
ところで、実際に製造したものを観察すると、接合面86は肉眼では判別できず、第1ベース80と第2ベース82の境界はほとんど認識できない。そして、接合面86の中央付近にあるはずのX線発生材料14もまた、そのサイズがきわめて小さいがゆえに、肉眼ではほとんど見ることができない。図8(a)では接合面86とX線発生材料14を誇張して描いてある。
【0032】
図8(b)は図8(a)のターゲット片84の外周を円形に加工したものである。中央のX線発生材料14が円形の中心にくるように加工をしてある。このようにすると、X線発生材料14のところに電子ビームの照射位置を位置決めするのに、ターゲット片84の外周を基準にしてX線発生材料14の位置を探すことができる。最終的には、実際にX線を発生させて、電子ビームがX線発生材料14に照射されているかどうかを確認することになる。
【0033】
図10は図8(b)のターゲット片84を組み込んだ固定ターゲットX線管の一部を示した縦断面図(中心線を含む平面で切断した断面図)である。円筒状のターゲット基台88の端面には円形の凹部が形成されていて、この凹部にターゲット片84がロー材(例えば、Ti−Ag−Cu系)で接着固定されている。ターゲット基台88の内側は冷却水89によって冷却される。電子銃74からの電子ビーム68がターゲット片84のX線発生材料に当たると、そこからX線ビーム70が発生して、X線取出し窓90から外部に出ていく。
【0034】
図9はターゲット片84の電子ビーム照射領域の付近を拡大して示した斜視図である。第1ベース80と第2ベース82の接合部86のところにX線発生材料14が露出している。その露出サイズは、長さCが約50μm、幅tが約3μmである。電子ビーム照射領域78の形状は直径Dが約30μmの円形である。この状態で発生するX線ビームは図3に示すのとほぼ同じになる。すなわち、取り出し角θ=6度で取り出したときのX線ビームの断面寸法は、およそ3μm×3μmとなる。
【0035】
【発明の効果】
この発明のX線管は、ターゲットの表面上の電子ビーム照射領域内に、電子ビームが照射されたときに目的の波長のX線を発生するX線発生部と、電子ビームが照射されても目的の波長のX線をほとんど発生しないベースとが存在するようにしたので、電子ビーム照射領域よりも小さい焦点サイズを作ることができて、きわめて微小な焦点サイズのマイクロフォーカスX線源を得ることができる。また、微小な焦点サイズであるにもかかわらず、管電流があまり小さくならないのでX線強度も安定する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のX線管の一つの実施形態における回転ターゲットを示す斜視図である。
【図2】図1の回転ターゲットの断面図である。
【図3】図1の回転ターゲット上の電子ビーム照射領域の付近を拡大して示した斜視図である。
【図4】図3の電子ビーム照射領域のサイズを変更した別の例の斜視図である。
【図5】回転ターゲットの一部を拡大して示した分解断面図である。
【図6】図1の回転ターゲットを備えるX線管における回転ターゲットの取付部分の構造を示す縦断面図である。
【図7】固定ターゲットの製造工程を示す斜視図である。
【図8】固定ターゲットのターゲット片の平面図である。
【図9】固定ターゲットのターゲット片の電子ビーム照射領域の付近を拡大して示した斜視図である。
【図10】固定ターゲットX線管の一部を示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 回転ターゲット
12 ベース
14 X線発生材料
16 取付金具
18 回転台
36 回転軸
38 第1ベース
40 第2ベース
46 第1の金属ロー材
48 第2の金属ロー材
68 電子ビーム
70 X線ビーム
72 X線取り出し窓
74 熱陰極

Claims (3)

  1. ターゲットに電子ビームを照射して、ターゲットの表面上の電子ビーム照射領域からX線を発生させるX線管において、次の特徴を備えるX線管。
    (a)前記ターゲットは、前記電子ビームが照射されたときに目的の波長のX線を発生するX線発生部と、前記電子ビームが照射されても目的の波長のX線をほとんど発生しないベースとからなる。
    (b)前記電子ビーム照射領域の内部には前記X線発生部と前記ベースの両方が存在していて、前記電子ビーム照射領域の内部の前記X線発生部のみから目的の波長のX線が発生する。
    (c)前記ターゲットの内部には冷却水が流れる流路が形成されていて、前記X線発生部は前記ターゲットの表面に露出しているとともに前記流路にも露出している。
  2. 請求項1に記載のX線管において、前記X線発生部は回転可能な円筒状のターゲットの外周面に露出した1〜10μmの幅の環状のX線発生材料であることを特徴とするX線管。
  3. 請求項1または2に記載のX線管において、前記ベースは炭素でできており、X線取出し窓は炭素の特性X線を実質的に外部に取り出さない材質で作られていることを特徴とするX線管。
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