JP2004006295A - X線管 - Google Patents
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Abstract
【課題】X線焦点の熱負荷容量の改善効果が得られる回転陽極型X線管を提供すること。
【解決手段】断面がV字状の環状溝16が側壁部分に設けられた陽極ターゲット13と、環状溝16内に照射する電子ビームeを発生する陰極23と、陽極ターゲット13と機械的に連結した回転体19およびこの回転体19との嵌合部分に軸受が設けられた固定体20を有し、陽極ターゲット13を回転可能に支持する回転支持機構18と、陽極ターゲット13および陰極23、回転支持機構18を収納する真空容器11と、この真空容器11に取り付けられたX線出力窓12とを具備した回転陽極型X線管において、管軸mを含む共通の仮想平面にそれぞれ交差する環状溝16の開口面M、および、真空容器11のX線出力窓12周辺の円筒部11aが非平行に構成されている。
【選択図】 図1
【解決手段】断面がV字状の環状溝16が側壁部分に設けられた陽極ターゲット13と、環状溝16内に照射する電子ビームeを発生する陰極23と、陽極ターゲット13と機械的に連結した回転体19およびこの回転体19との嵌合部分に軸受が設けられた固定体20を有し、陽極ターゲット13を回転可能に支持する回転支持機構18と、陽極ターゲット13および陰極23、回転支持機構18を収納する真空容器11と、この真空容器11に取り付けられたX線出力窓12とを具備した回転陽極型X線管において、管軸mを含む共通の仮想平面にそれぞれ交差する環状溝16の開口面M、および、真空容器11のX線出力窓12周辺の円筒部11aが非平行に構成されている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明はX線の放出源をして使用されるX線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線管には陽極が回転する回転陽極型X線管、あるいは陽極が回転しない固定陽極型X線管などがある。回転陽極型X線管は、陽極ターゲットが回転できるように、陽極ターゲットを回転支持機構によって支持している。そして、回転状態の陽極ターゲットに電子ビームを衝突させ、X線を放出させる構造になっている。
【0003】
X線管の場合、動作時、陽極ターゲットに電子ビームが衝突すると、その一部が後方に散乱する。後方に散乱した電子いわゆる反跳電子は、たとえば陽極ターゲットから一度離れた後、陽極ターゲット方向に戻り、陽極ターゲット上のX線焦点から離れた位置に衝突する。X線焦点以外の領域に反跳電子が再衝突すると、X線焦点外の利用されないX線が放出される。同時に、陽極ターゲットを加熱させ、X線焦点の熱負荷容量が低下する。
【0004】
そこで、X線焦点の熱負荷容量を改善する方法として、陽極ターゲットの一部に、たとえば断面がV字状の環状溝を形成し、その環状溝内にX線放出部を設けたX線管、いわゆるV溝構造のX線管が提案されている(特許文献1参照)。V溝構造の回転陽極型X線管は、陽極ターゲットの側壁部分などに設けた環状溝内に電子ビームによるX線焦点を形成し、環状溝の部分からX線を放出させる構造になっている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭59−221950号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のX線管たとえばV溝構造の回転陽極型X線管は、環状溝を構成する断面がV字状の2つの傾斜面にX線焦点が形成される。この場合、環状溝の一方の傾斜面から散乱した反跳電子は対向する他方の傾斜面に入射してX線を有効に放出させるように作用し、X線焦点の熱負荷容量が改善する。
【0007】
しかし、V溝構造の回転陽極型X線管は、X線焦点を形成する環状溝の開口面とX線出力窓とが対向し、平行する配置になっている。そのため、管内に残留する気体分子がイオン化すると、発生したプラスイオンがX線出力窓に衝突し、X線出力窓を構成するベリリウムなどの軽元素の材料をエッチングする。その結果、エッチングで遊離した軽元素が真空空間に存在し、放電を発生させる原因になる。また、エッチングが進行するとX線出力窓に穴が明き、真空容器内の真空気密が保てなくなる。
【0008】
また、動作状態に入り、電子ビームの照射で陽極ターゲットの温度が上昇すると、その熱が陽極ターゲットを支持する回転支持機構に伝達し、回転支持機構が熱膨張する。このとき、回転支持機構に支持された陽極ターゲットが管軸方向に移動し、その側壁部分に設けられた環状溝の位置が管軸方向に移動する。この場合、環状溝の位置が移動しても、環状溝内にX線焦点が形成されるようにすると、環状溝の開口部分の管軸方向における寸法を大きくしなければならず、X線焦点のたとえば管軸方向のサイズが大きくなる。
【0009】
また、回転支持機構の熱膨張に限らず、陽極ターゲットと陰極の組立誤差などに起因して、電子ビーム軌道に不所望の位置移動が発生する場合がある。たとえばX線焦点が環状溝以外の陽極ターゲット表面に形成され、所望の焦点熱負荷容量の改善が得られなくなる。また、陽極ターゲット表面を融解させる場合もある。これらの問題は微小焦点であるほど影響が大きい。
【0010】
上記したように従来のV溝構造の回転陽極型X線管は、真空容器内の真空気密の確保が困難であるという問題、あるいは、X線焦点の管軸方向サイズが大きくなるなどの問題があり、X線焦点の熱負荷容量の改善効果を十分に発揮できないという欠点がある。このような問題は、回転陽極型X線管に限らず、固定陽極型X線管でも発生する。
【0011】
本発明は、上記した欠点を解決し、X線焦点の熱負荷容量の改善効果などが得られる回転陽極型あるいは固定陽極型のX線管を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、X線放出部が設けられた環状の溝を有する陽極ターゲットと、前記溝に入射する電子ビームを発生する陰極と、前記陽極ターゲットを回転可能に支持する回転支持機構と、前記陽極ターゲットおよび前記陰極、前記回転支持機構を収納する真空容器と、この真空容器の一部に取り付けられたX線出力窓とを具備したX線管において、前記X線管の管軸を含む共通の仮想平面上に位置する前記溝の開口面部分および前記X線出力窓周辺の前記真空容器部分が平行でないことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について図1を参照して説明する。
【0014】
符号11は回転陽極型X線管を構成する真空容器で、真空容器11の一部たとえば管軸m方向に伸びる円筒部11aの部分にX線を取り出すX線出力窓12が設けられている。真空容器11はたとえばガラスなどの絶縁物および金属で形成されている。図1の場合、少なくともX線出力窓12周辺たとえばX線出力窓12が取り付けられた円筒部11aは金属で構成されている。そして、円筒部11aで囲まれた内部に、たとえば基体部分がMo合金で形成された陽極ターゲット13が配置されている。
【0015】
陽極ターゲット13は陽極構体の一部を構成し、たとえば図示上半分を構成する第1部分13Aと、図示下半分を構成する第2部分13Bとを機械的に結合して構成され、全体の外側部分は肉厚の厚い厚肉部131に形成され、全体の中央部分は肉厚の薄い薄肉部132に形成されている。
【0016】
第1部分13Aは、たとえば外側に位置する肉厚の厚い厚肉部A1と、内側に位置する肉厚の薄い薄肉部A2とで構成され、環状の側壁部分A3はたとえば円錐状に形成されている。外径が小さい方の図示下端面A4の外周領域に傾斜面A5が環状に設けられ、その傾斜面A5などにW−ReからなるX線放射層Xaが設けられている。X線放射層Xaは、たとえば側壁部分A3の一部から傾斜面A5、そして下端面A4の平坦部の一部にわたって設けられている。
【0017】
第2部分13Bは、たとえば外側に位置する肉厚の厚い厚肉部B1と、内側に位置する肉厚の薄い薄肉部B2とで構成され、環状の側壁部分B3はたとえば円錐状に形成されている。外径が大きい方の図示上端面B4の外周領域に傾斜面B5が環状に設けられ、その傾斜面B5などにW−ReからなるX線放射層Xbが設けられている。X線放射層Xbは、たとえば側壁部分B3の一部から傾斜面B5、そして上端面B4の平坦部の一部にわたって設けられている。
【0018】
上記した構造の第1部分13Aおよび第2部分13Bは、第1部分13Aの下端面A4と第2部分13Bの上端面B4が拡散接合などで接合され、また、複数のねじ14で固定され、陽極ターゲット13が構成される。
【0019】
拡散接合は、たとえば第1部分13Aおよび第2部分13Bの接合面に拡散接合材料たとえばAuをめっきし、ねじ14による締め付けで圧力を加えると同時に加熱する方法で接合される。この場合、第1部分13Aの下端面A4の平坦部に位置するX線放射層Xaと、第2部分13Bの上端面B4の平坦部に位置するX線放射層Xbは面接触している。また、X線出力窓12は、たとえば第1部分13Aと第2部分13Bとの接合面を横方向に延長したその延長上に位置している。なお、厚肉部131の図示上端面および図示下端面に、輻射率εが0.5以上の輻射促進皮膜15a、15bが直接または接着剤を介して間接的に設けられている。
【0020】
第1部分13Aおよび第2部分13Bは外径などの大きさが相違するものの、両者の側壁部分A3、B3は、たとえば管軸mに対して同じ角度で傾斜し、共通の円錐面Pを形成している。また、第1部分13AのX線放射層Xaと第2部分13BのX線放射層Xbとの間には、陽極ターゲット13の側壁部分たとえば共通の円錐面P部分に開口し、奥の方で閉じた断面がたとえばV字状の環状溝16が形成される。そして、環状溝16に面するX線放射層Xa、Xb上にX線を放出するX線焦点が形成される。
【0021】
環状溝16の開口面Mは円錐面Pに沿って形成されている。たとえば環状溝16の開口面Mは、管軸mを含む仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上で、管軸mと傾斜した向きで交差している。このとき、X線出力窓12およびその周辺の円筒部11aは管軸mと平行する向きで交差し、開口面Mと円筒部11aは非平行に構成されている。
【0022】
また、管軸mを含みX線出力窓12を通る仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上において、環状溝16の開口面Mに垂直に形成される仮想領域QはX線出力窓12を通らない形状および寸法、配置になっている。
【0023】
上記した構成の陽極ターゲット13は、その薄肉部132が継手部17に連結されている。継手部17はたとえば全体が筒状に形成され、上端に外方突出部17aが設けられ、下端に内方突出部17bが設けられ、外方突出部17aの部分に、陽極ターゲット13の薄肉部132がねじ14および拡散接合により結合されている。ねじ14は、陽極ターゲット13の第1部分13Aと第2部分13B、および、陽極ターゲット13と継手部17を共通に固定し、陽極ターゲット13と継手部17を拡散接合する場合の加圧手段としても利用される。また、継手部17の内方突出部17bは、陽極ターゲット13を回転可能に支持する回転支持機構18に連結されている。
【0024】
回転支持機構18は、互いに嵌合する回転体19および固定体20などから構成されている。回転体19は有底円筒状で、外周面の一部に突出部19aが設けられ、その突出部19aに継手部17の内方突出部17bが接合されている。回転体19の内側空間に固定体20が軸受隙間などを保って嵌合し、回転体19と固定体20の嵌合部分に、液体金属潤滑材を充填する動圧式すべり軸受が設けられている。
【0025】
図では、管軸m方向の嵌合部分に設けられたラジアル方向の動圧式すべり軸受Ra、Rb、および、管軸mに直交する向きの嵌合部分に設けられたスラスト方向の動圧式すべり軸受Saが示されている。
【0026】
また、固定体20内部に空洞21が形成され、空洞21内にパイプ22が配置され、空洞21およびパイプ22で冷却媒体が流れる冷却用通路が形成されている。冷却媒体は、たとえば矢印Yで示すように、パイプ22の内側を上昇した後、パイプ22の外側を下降する。
【0027】
陽極ターゲット13の図示上方に陰極23が配置されている。陰極23はその中心軸nが管軸mに対して傾いた向きに配置され、電子ビームeはたとえば真空容器11側に向かって外向きに放出される。
【0028】
動作時、真空容器11の金属部分はたとえば接地して0Vの電位に、陰極23は−70kVの電位に、陽極ターゲット13は+70kVの電位に設定され、陰極23および陽極ターゲット13間に電子光学系が形成される。
【0029】
上記した構成において、陰極23で発生した電子ビームeは電子光学系によって偏向、集束され、たとえば陽極ターゲット13の環状溝16内のX線放射層Xa、Xb上にX線焦点を形成し、X線放射層Xa、XbからX線が放出される。このとき、X線を取り出す方向すなわち利用されるX線束の中心軸R方向とX線放射層Xa、Xbに入射する電子ビームeはほぼ平行し、放出されたX線はX線出力窓12から出力される。
【0030】
上記した構成によれば、陽極ターゲット13の側壁部分とX線出力窓12あるいはその周辺の真空容器11とが非平行になっている。したがって、真空容器11内でイオン化したプラスイオンは、陽極ターゲット13の側壁部分に対して垂直方向に移動するため、X線出力窓12に衝突する数が少なくなる。また、環状溝16の開口面Mに垂直な領域QがX線出力窓12を通らない配置になっている。そのため、X線出力窓12に衝突する反跳電子の数が減少し、X線出力窓12の加熱が防止される。
【0031】
また、陽極ターゲット13を製造する場合、第1部分13Aおよび第2部分13BにX線放射層Xa、Xbを形成し、その後、第1部分13Aおよび第2部分13Bを接合する構造になっている。したがって、V字状の環状溝16をもつ陽極ターゲット13の製造が容易になる。
【0032】
また、陽極ターゲット13を構成する第1部分13Aおよび第2部分13Bが拡散接合され、同時に、陽極ターゲット13と継手部17が拡散接合されている。そのため、陽極ターゲット13の第1部分13Aや第2部分13Bの熱が継手部17などを介して冷却用通路を流れる冷却媒体に確実に伝達し、良好な放熱特性が得られる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について図2を参照して説明する。図2は、図1に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
【0034】
この実施形態の場合、陰極23の前方に、真空容器11の金属部分を介して接地されたビーム成型電極31が配置されている。ビーム成型電極31の一部に電子ビームが通過する貫通孔31aが設けられ、電子ビームeは貫通孔31aを通過する際に成型され、環状溝16内のX線放射層Xa、Xb上にX線焦点を形成する。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態について図3を参照して説明する。図3は、図1に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。この実施形態の場合、陰極23の周囲にバイアス電極41が配置され、バイアス電極41は出力電圧が調整可能なバイアス電源42に接続されている。
【0036】
上記した構成によれば、たとえば回転支持機構18の熱膨張などで環状溝16が管軸m方向に移動した場合、バイアス電極41に印加する正の電圧いわゆる加速電圧を調整する。この加速電圧の調整によって、電子ビームeの速度および軌道を制御し、環状溝16内のX線放射層Xa、Xb上にX線焦点が形成されるようにする。そのため、環状溝16が管軸m方向に移動しても、加速電圧を調整することにより、電子ビームeのX線焦点が環状溝16内に形成される。したがって、環状溝16の開口を小さくすることができ、管軸方向サイズの小さいX線焦点が得られる。
【0037】
この場合、たとえば陰極23および真空容器11の金属部分は0Vの電位に設定され、バイアス電極41はたとえば200V〜2000Vの範囲で調整され、陽極ターゲット13は20kV〜70kVの電位に設定される。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態について図4を参照して説明する。図4は、図3に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。この実施形態の場合、陰極23の近傍に偏向電極51が配置され、偏向電極51は出力電圧が調整可能な偏向電源52の正端子に接続されている。また、陰極23よりも高い電位に設定される中間電極領域たとえば電子光学系の一部を形成する真空容器11の金属部分と接地G間に電流検出手段53が接続されている。電流検出手段53は制御部54を経て偏向電源52に接続されている。
【0039】
上記した構成で、電流検出手段53によって、真空容器11と接地G間つまり真空容器11および陰極23間に流れる電流の大きさが検出される。制御部54は、電流検出手段53で検出された電流値をもとに、その電流値が最小となるように偏向電源52の出力電圧を制御する。
【0040】
たとえば、回転支持機構18の熱膨張で環状溝16が管軸m方向に移動すると、電子ビームeの一部が環状溝16の外側に衝突するようになる。その結果、真空容器11の壁面に入射する反跳電子が増大し、真空容器11および接地G間に流れる電流が増大する。このとき、偏向電極51に印加される電圧を調整して、電子ビームeの軌道を変化させ、たとえば電流値が最小になるように制御する。この制御により、電子ビームeによるX線焦点が環状溝16内に正しく形成される。したがって、環状溝16の開口を小さくしても、X線焦点が正しく形成されるため、たとえば管軸方向サイズの小さいX線焦点が得られる。
【0041】
図4の場合、たとえば陰極23は−70kVの電位に、真空容器11の金属部分は0Vの電位に、陽極ターゲット13は70kVの電位に設定される。
【0042】
図4の実施形態では、陰極23の近傍に偏向電極51を配置し、真空容器11および接地G間に流れる電流が最小となるように偏向電極51に印加する電圧を調整している。しかし、陰極23近傍に図3のようなバイアス電極41を配置し、バイアス電極41に印加する電圧を調整する構成にすることもできる。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態について図5を参照して説明する。
【0044】
符号61は回転陽極型X線管を構成する真空容器で、真空容器61は管軸mと交差する前面部61aおよび管軸m方向に伸びる側壁部61aなどから構成され、たとえば前面部61aに、X線を取り出すX線出力窓62が設けられている。真空容器61はたとえばガラスなどの絶縁物および金属で形成され、図の場合、少なくともX線出力窓62を囲むその周辺部は金属で構成されている。そして、真空容器61内部に、基体部分がMo合金などで形成された陽極ターゲット63が配置されている。
【0045】
陽極ターゲット63は、真空容器61の前面部61a側に位置するたとえば円盤状の第1部分63Aと、この第1部分63Aを嵌め込む凹部が中央に設けられたほぼ円盤状の第2部分63Bとを機械的に結合して構成されている。
【0046】
第1部分63Aは、中央部に位置する肉厚が一定の薄肉部A1と、外周部に位置しその上面が傾斜して外側に向って肉厚が徐々に厚くなる厚肉部A2とで構成されている。厚肉部A2の外側壁部分A3の一部たとえば図示上部は、下方部分の外径の方が大きくなる円錐面A31に形成されている。そして、傾斜した上面および円錐面A31、その下方の管軸に平行な垂直面A32の一部にわたり、W−ReからなるX線放射層Xaが設けられている。
【0047】
第2部分63Bは、中央に位置する肉厚が一定で薄い薄肉部B1および第1部分63Aを囲み上面が傾斜した厚肉部B2、薄肉部B1と厚肉部B2との中間に位置する中肉部B3とで構成されている。厚肉部B2の内側壁部B4の一部は図示下方の外径の方が大きくなる円錐面B41に形成されている。そして、厚肉部B2の傾斜した上面の一部および円錐面B41、その下方の管軸に平行な垂直面B42の一部にわたり、W−ReからなるX線放射層Xbが設けられている。
【0048】
上記した構造の第1部分63Aおよび第2部分63Bは、第1部分63Aの平坦な図示下面と第2部分63Bの平坦な図示上面が拡散接合などで接合され、また、複数のねじ64で固定され、陽極ターゲット63が構成される。
【0049】
拡散接合は、たとえば第1部分63Aおよび第2部分63Bの接合面に拡散接合材料たとえばAuをめっきし、ねじ64による締め付けで圧力を加えると同時に加熱する方法で接合される。この場合、第1部分63Aの垂直面A32に位置するX線放射層Xaと、第2部分63Bの垂直面B42に位置するX線放射層Xbは面接触している。また、X線出力窓62は、たとえば第1部分63Aと第2部分63Bとが接触する垂直面A32、B42を管軸m方向に延長したその延長上に位置している。また、第2部分63Bの図示下端面および図示外側壁面に、輻射率εが0.5以上の輻射促進皮膜65a、65bが直接または接着剤を介して間接的に設けられている。
【0050】
第1部分63Aおよび第2部分63Bの図示上面は、それぞれ管軸mに対して同じ角度で傾斜し、たとえば共通の円錐面Pを形成している。また、第1部分63AのX線放射層Xaと第2部分63BのX線放射層Xbとの間に、陽極ターゲット63の上面部分に開口し奥の方が閉じた、たとえば断面がV字状の環状溝66が形成されている。この場合、環状溝66に面するX線放射層Xa、Xb上にX線を放出するX線焦点が形成される。
【0051】
また、環状溝66の開口面Mは円錐面Pに一致して形成されている。たとえばその開口面Mは、管軸mを含む仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上において、管軸mと傾斜して交差する向きになっている。このとき、X線出力窓62およびその周辺の前面部61aは、仮想平面上で管軸mと直交する向きで交差し、開口面Mと前面部61aおよび開口面MとX線出力窓62は非平行に構成されている。
【0052】
また、管軸mを含みX線出力窓62を通る仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上において、環状溝66の開口面Mに垂直に形成される仮想領域QはX線出力窓62を通らない形状および寸法、配置になっている。
【0053】
上記した陽極ターゲット63は継手部17に連結され、継手部17は回転支持機構18に連結され、陽極ターゲット63は回転支持機構18によって回転可能に支持されている。陽極ターゲット63と継手部17の連結構造や継手部17と回転支持機構18の連結構造、および回転支持機構18の構造は、図1とほぼ同様であるため、図1に対応する部分に同じ符号を付し説明は省略する。
【0054】
また、陽極ターゲット63の近傍に、電子ビームeを放出する陰極67が配置されている。
【0055】
動作時、真空容器61のたとえばX線出力窓62周辺の金属部分は接地して0Vの電位に、陰極67は−70kVの電位に、陽極ターゲット63は+70kVの電位に設定され、陰極67および陽極ターゲット63間に電子光学系が形成される。
【0056】
また、陰極67近傍にバイアス電極68が配置され、バイアス電極68は出力電圧を調整できるバイアス電源69の正端子に接続されている。また陰極67よりも高い電位に設定される中間電極領域たとえば真空容器61の金属部分と接地G間に電流検出手段70が接続されている。電流検出手段70は制御部71を経てバイアス電源69に接続されている。
【0057】
上記した構成で、電流検出手段70によって真空容器61および接地G間に流れる電流の大きさが検出される。制御部71は、電流検出手段70で検出された電流値をもとに、その電流値が最小となるようにバイアス電源69の出力電圧を制御する。
【0058】
上記した構成において、陰極67で発生した電子ビームeは電子光学系によって偏向、集束され、たとえば陽極ターゲット63の環状溝66内のX線放射層Xa、Xb上にX線焦点を形成し、X線放射層Xa、XbからX線が放出する。このとき、X線を取り出す方向すなわち利用されるX線束の中心軸R方向とX線放射層Xa、Xbに入射する電子ビームeはほぼ平行し、放出されたX線はX線出力窓62から出力される。
【0059】
上記した構成によれば、陽極ターゲット63の図示上面とX線出力窓62が非平行になっている。この場合、真空容器61内でイオン化したプラスイオンは陽極ターゲット63の図示上面に対して垂直方向に移動するため、X線出力窓62に衝突する数が低下する。また、環状溝66の開口面Mに対し垂直な領域QがX線出力窓62を通らない配置になっている。したがって、X線出力窓62に衝突する反跳電子の数が減少し、X線出力窓62の加熱が防止される。
【0060】
また、回転支持機構18の熱膨張で環状溝66が管軸m方向に移動すると、たとえば電子ビームeの一部が環状溝66の外側に衝突するようになる。その結果、真空容器61の壁面に入射する反跳電子などが増大し、真空容器61および接地G間に流れる電流が増大する。このとき、バイアス電極68に印加される電圧を調整して、電子ビームeの軌道を変化させ、たとえば電流値が最小になるように制御する。この制御で、電子ビームeによるX線焦点が環状溝66内に正しく形成される。したがって、環状溝66の開口を小さくすることができ、面積の小さいX線焦点が得られる。
【0061】
上記した構造では、陽極ターゲット63を製造する場合、第1部分63Aおよび第2部分63BにX線放射層Xa、Xbを形成し、その後、第1部分63Aおよび第2部分63Bを接合する構造となっている。したがって、V字状の環状溝66をもつ陽極ターゲット63の製造が容易になる。
【0062】
また、陽極ターゲット63の第1部分63Aおよび第2部分63Bが拡散接合し、同時に、陽極ターゲット63と継手部67が拡散接合している。そのため、接合部分の熱伝導が良好で、陽極ターゲット63の第1部分63Aや第2部分63Bの熱が継手部17などを介して、固定体20内部の冷却用通路を流れる冷却媒体に確実に伝達され、放熱特性が向上する。
【0063】
図5で、中性点接地の場合は、たとえば陰極67は−70kVの電位、真空容器61の金属部分は0Vの電位に設定され、陽極ターゲット63は70kVの電位に設定される。バイアス電極74はたとえば200V〜2000Vの範囲で調整される。陰極接地の場合は、たとえば陰極67は0Vの電位、真空容器61の金属部分および中間電極領域は陰極67よりも高い100Vの電位に設定され、陽極ターゲット63は70kVの電位に設定される。
【0064】
次に、本発明の他の実施形態について図6を参照して説明する。図6は、図5に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。この実施形態の場合、陰極67近傍に偏向電極72が配置され、偏向電極72は出力電圧が調整可能な偏向電源73の正端子に接続されている。また、真空容器61の金属部分と接地G間に電流検出手段70が接続されている。電流検出手段70によって真空容器61と接地G間に流れる電流が検出される。そして、制御部71によって、たとえばその電流値が最小となるように偏向電源73の出力電圧を制御する。
【0065】
この場合も、偏向電極72に印加する電圧を調整して、電子ビームeの軌道を変化させ、たとえば電流値が最小になるように制御する。この制御で、電子ビームeによるX線焦点が環状溝66内に正しく形成される。したがって環状溝66の開口を小さくでき、サイズの小さいX線焦点が得られる。
【0066】
次に、本発明の他の実施形態について図7を参照して説明する。
【0067】
符号91は固定陽極型X線管を構成する真空容器で、真空容器91はガラスなどの絶縁物や金属で構成されている。真空容器91の一部たとえば所定軸m上にX線出力窓92が設けられている。図の場合、少なくともX線出力窓92の周辺部分は金属で構成されている。そして、真空容器91内に陽極構体93および陰極94が配置されている。
【0068】
陽極構体93は銅製の基体部93aおよびX線放出部を形成するMo製のターゲット部93bなどから構成され、基体部93aの内側に空洞95が形成されている。空洞95内にパイプ96が配置され、空洞95およびパイプ96によって冷却媒体が流れる冷却用通路が形成されている。冷却媒体は、たとえば矢印Yで示すように、パイプ96の内側を上昇した後、パイプ96の外側を下降する。
【0069】
ターゲット部93bは、図示上面a1がたとえば所定軸mに対して傾斜し、その一部たとえば所定軸m上に円錐状の凹部97が形成されている。凹部97の開口面Mは上面a1の傾斜Pに一致し、たとえば所定軸mを含む仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上において、所定軸mと傾斜した向きで交差する。X線出力窓92は、仮想平面上において、たとえば所定軸mと直交する向きで交差し、開口面MとX線出力窓92あるいはX線出力窓92周辺の真空容器91とは非平行に構成されている。また、凹部97の開口面Mに垂直に形成される仮想領域Qは、X線出力窓92を通らない形状および寸法、配置になっている。
【0070】
陰極94近傍にバイアス電極98が配置され、バイアス電極98は出力電圧が調整可能なバイアス電源99の正端子に接続されている。また、陰極94よりも高い電位に設定される中間電極領域たとえば真空容器91の金属部分と接地Gとの間に電流検出手段100が接続され、電流検出手段100は制御部101を介してバイアス電源99に接続されている。
【0071】
上記の構成で、電流検出手段100によって、真空容器91および接地G間に流れる電流が検出される。そして、制御部101によってたとえばその電流値が最小となるようにバイアス電源99の出力電圧が制御される。
【0072】
上記した構成において、陰極94で発生した電子ビームeは電子光学系によって偏向、集束され、たとえばターゲット部93bの凹部97内にX線焦点を形成し、X線が放出される。この場合、X線を取り出す方向すなわち利用されるX線束の中心軸R方向と凹部97に入射する電子ビームeはほぼ平行し、放出されたX線はX線出力窓92から出力される。
【0073】
上記した構成によれば、ターゲット部93bの図示上面とX線出力窓92あるいはその周辺の真空容器91が非平行になっている。そのため、真空容器91内でイオン化したプラスイオンはターゲット部93bの図示上面に対して垂直方向に移動し、X線出力窓92に衝突する数が低下する。また、溝97の開口面Mに対して垂直な領域QがX線出力窓92を通らない配置になっている。したがってX線出力窓92に衝突する反跳電子の数が減少し、X線出力窓92の加熱が防止される。
【0074】
また、電流検出手段100によって、真空容器91と接地G間に流れる電流が検出され、たとえばその電流値が最小となるようにバイアス電極98の出力電圧が制御される。この場合、電子ビームeによるX線焦点が凹部内に正しく形成される。したがって、凹部の開口を小さくでき、小さいX線焦点が得られる。
【0075】
次に、本発明の他の実施形態について図8を参照して説明する。図8は、図7に対応する部分には同じ符号を付し重複する説明は一部省略する。
【0076】
この実施形態の場合、ターゲット部93bが、図示左側に位置する断面が半円形状の第1部分110Aと、図示右側に位置する断面が半円形状の第2部分110Bとを連結して構成されている。
【0077】
たとえば第1部分110Aおよび第2部分110Bには、それぞれ相手と連結する側の面の一部に断面が半円錐状の窪み111A、111Bが形成されている。また、それぞれの窪み111A、111Bの表面を含む領域にRe−WなどからなるX線放射層112A、112Bが形成される。
【0078】
上記した第1部分110Aおよび第2部分110Bを、両者の窪み111A、111Bの部分を一致させて、所定軸m上に円錐状の凹部112が形成されるように接合し、ターゲット部93aを構成する。
【0079】
上記の実施形態は、陽極ターゲットの基体部分をMo合金で形成し、X線放射層をWとRe(10%)合金で形成した場合で説明している。しかし、乳房検査用のX線管などの場合は、陽極ターゲットの基体部分およびX線放射層の両方を純MoやMo合金で形成することもできる。
【0080】
また、電子ビームの制御に電界を使用しているが、磁界で制御してもよく、あるいは電界と磁界を組み合わせて制御することもできる。
【0081】
また、回転陽極型X線管の場合、環状溝を構成するたとえば2つの傾斜面が平坦で、断面がV字状の例で説明している。しかし、環状溝の断面はV字状に限るものではなく、傾斜面に凸面や凹面が形成され、たとえばその内径が開口部に向かってラッパ状に大きくなる形状にすることもできる。また、固定陽極型X線管の場合は、凹部が円錐状の場合で説明している。この場合、凹部は断面が多角形の多角錐状でもよく、また凹部を形成する傾斜面たとえば錐の母線に相当する部分が凸面や凹面を有する曲面状とし、全体として開口部に向かってラッパ状に大きくなる形状であってもよい。
【0082】
また、図4〜図8の実施形態は、たとえば動作時に回転支持機構が熱膨張して環状溝が管軸方向に移動する場合で説明している。しかし、回転陽極型X線管の初期設定時などに、電子ビームを放出して、陰極と真空容器間に流れる電流が最小となるように調整すれば、電子ビームのX線焦点が環状溝内に正しく形成される条件に設定できる。この初期設定時は、陽極ターゲットの基体部分のMo合金などが溶けないように、電子ビームの電流値を実動作時に用いる場合よりも絞った状態で行うことが望ましい。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、X線焦点の熱負荷容量の改善効果が得られるX線管を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図5】本発明の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【符号の説明】
11…真空容器
11a…真空容器の円筒部
12…X線出力窓
13…陽極ターゲット
13A…陽極ターゲットを構成する第1部材
13B…陽極ターゲットを構成する第2部材
14…ねじ
15a、15b…輻射促進膜
16…環状溝
17…継手部
18…回転支持機構
19…回転体
20…固定体
21…空洞
22…パイプ
23…陰極
P…陽極ターゲットの側壁部分の円錐面
Q…仮想領域
M…環状溝の開口面
e…電子ビーム
R…出力X線束
【発明の属する技術分野】
この発明はX線の放出源をして使用されるX線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線管には陽極が回転する回転陽極型X線管、あるいは陽極が回転しない固定陽極型X線管などがある。回転陽極型X線管は、陽極ターゲットが回転できるように、陽極ターゲットを回転支持機構によって支持している。そして、回転状態の陽極ターゲットに電子ビームを衝突させ、X線を放出させる構造になっている。
【0003】
X線管の場合、動作時、陽極ターゲットに電子ビームが衝突すると、その一部が後方に散乱する。後方に散乱した電子いわゆる反跳電子は、たとえば陽極ターゲットから一度離れた後、陽極ターゲット方向に戻り、陽極ターゲット上のX線焦点から離れた位置に衝突する。X線焦点以外の領域に反跳電子が再衝突すると、X線焦点外の利用されないX線が放出される。同時に、陽極ターゲットを加熱させ、X線焦点の熱負荷容量が低下する。
【0004】
そこで、X線焦点の熱負荷容量を改善する方法として、陽極ターゲットの一部に、たとえば断面がV字状の環状溝を形成し、その環状溝内にX線放出部を設けたX線管、いわゆるV溝構造のX線管が提案されている(特許文献1参照)。V溝構造の回転陽極型X線管は、陽極ターゲットの側壁部分などに設けた環状溝内に電子ビームによるX線焦点を形成し、環状溝の部分からX線を放出させる構造になっている。
【0005】
【特許文献1】
特開昭59−221950号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従来のX線管たとえばV溝構造の回転陽極型X線管は、環状溝を構成する断面がV字状の2つの傾斜面にX線焦点が形成される。この場合、環状溝の一方の傾斜面から散乱した反跳電子は対向する他方の傾斜面に入射してX線を有効に放出させるように作用し、X線焦点の熱負荷容量が改善する。
【0007】
しかし、V溝構造の回転陽極型X線管は、X線焦点を形成する環状溝の開口面とX線出力窓とが対向し、平行する配置になっている。そのため、管内に残留する気体分子がイオン化すると、発生したプラスイオンがX線出力窓に衝突し、X線出力窓を構成するベリリウムなどの軽元素の材料をエッチングする。その結果、エッチングで遊離した軽元素が真空空間に存在し、放電を発生させる原因になる。また、エッチングが進行するとX線出力窓に穴が明き、真空容器内の真空気密が保てなくなる。
【0008】
また、動作状態に入り、電子ビームの照射で陽極ターゲットの温度が上昇すると、その熱が陽極ターゲットを支持する回転支持機構に伝達し、回転支持機構が熱膨張する。このとき、回転支持機構に支持された陽極ターゲットが管軸方向に移動し、その側壁部分に設けられた環状溝の位置が管軸方向に移動する。この場合、環状溝の位置が移動しても、環状溝内にX線焦点が形成されるようにすると、環状溝の開口部分の管軸方向における寸法を大きくしなければならず、X線焦点のたとえば管軸方向のサイズが大きくなる。
【0009】
また、回転支持機構の熱膨張に限らず、陽極ターゲットと陰極の組立誤差などに起因して、電子ビーム軌道に不所望の位置移動が発生する場合がある。たとえばX線焦点が環状溝以外の陽極ターゲット表面に形成され、所望の焦点熱負荷容量の改善が得られなくなる。また、陽極ターゲット表面を融解させる場合もある。これらの問題は微小焦点であるほど影響が大きい。
【0010】
上記したように従来のV溝構造の回転陽極型X線管は、真空容器内の真空気密の確保が困難であるという問題、あるいは、X線焦点の管軸方向サイズが大きくなるなどの問題があり、X線焦点の熱負荷容量の改善効果を十分に発揮できないという欠点がある。このような問題は、回転陽極型X線管に限らず、固定陽極型X線管でも発生する。
【0011】
本発明は、上記した欠点を解決し、X線焦点の熱負荷容量の改善効果などが得られる回転陽極型あるいは固定陽極型のX線管を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、X線放出部が設けられた環状の溝を有する陽極ターゲットと、前記溝に入射する電子ビームを発生する陰極と、前記陽極ターゲットを回転可能に支持する回転支持機構と、前記陽極ターゲットおよび前記陰極、前記回転支持機構を収納する真空容器と、この真空容器の一部に取り付けられたX線出力窓とを具備したX線管において、前記X線管の管軸を含む共通の仮想平面上に位置する前記溝の開口面部分および前記X線出力窓周辺の前記真空容器部分が平行でないことを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について図1を参照して説明する。
【0014】
符号11は回転陽極型X線管を構成する真空容器で、真空容器11の一部たとえば管軸m方向に伸びる円筒部11aの部分にX線を取り出すX線出力窓12が設けられている。真空容器11はたとえばガラスなどの絶縁物および金属で形成されている。図1の場合、少なくともX線出力窓12周辺たとえばX線出力窓12が取り付けられた円筒部11aは金属で構成されている。そして、円筒部11aで囲まれた内部に、たとえば基体部分がMo合金で形成された陽極ターゲット13が配置されている。
【0015】
陽極ターゲット13は陽極構体の一部を構成し、たとえば図示上半分を構成する第1部分13Aと、図示下半分を構成する第2部分13Bとを機械的に結合して構成され、全体の外側部分は肉厚の厚い厚肉部131に形成され、全体の中央部分は肉厚の薄い薄肉部132に形成されている。
【0016】
第1部分13Aは、たとえば外側に位置する肉厚の厚い厚肉部A1と、内側に位置する肉厚の薄い薄肉部A2とで構成され、環状の側壁部分A3はたとえば円錐状に形成されている。外径が小さい方の図示下端面A4の外周領域に傾斜面A5が環状に設けられ、その傾斜面A5などにW−ReからなるX線放射層Xaが設けられている。X線放射層Xaは、たとえば側壁部分A3の一部から傾斜面A5、そして下端面A4の平坦部の一部にわたって設けられている。
【0017】
第2部分13Bは、たとえば外側に位置する肉厚の厚い厚肉部B1と、内側に位置する肉厚の薄い薄肉部B2とで構成され、環状の側壁部分B3はたとえば円錐状に形成されている。外径が大きい方の図示上端面B4の外周領域に傾斜面B5が環状に設けられ、その傾斜面B5などにW−ReからなるX線放射層Xbが設けられている。X線放射層Xbは、たとえば側壁部分B3の一部から傾斜面B5、そして上端面B4の平坦部の一部にわたって設けられている。
【0018】
上記した構造の第1部分13Aおよび第2部分13Bは、第1部分13Aの下端面A4と第2部分13Bの上端面B4が拡散接合などで接合され、また、複数のねじ14で固定され、陽極ターゲット13が構成される。
【0019】
拡散接合は、たとえば第1部分13Aおよび第2部分13Bの接合面に拡散接合材料たとえばAuをめっきし、ねじ14による締め付けで圧力を加えると同時に加熱する方法で接合される。この場合、第1部分13Aの下端面A4の平坦部に位置するX線放射層Xaと、第2部分13Bの上端面B4の平坦部に位置するX線放射層Xbは面接触している。また、X線出力窓12は、たとえば第1部分13Aと第2部分13Bとの接合面を横方向に延長したその延長上に位置している。なお、厚肉部131の図示上端面および図示下端面に、輻射率εが0.5以上の輻射促進皮膜15a、15bが直接または接着剤を介して間接的に設けられている。
【0020】
第1部分13Aおよび第2部分13Bは外径などの大きさが相違するものの、両者の側壁部分A3、B3は、たとえば管軸mに対して同じ角度で傾斜し、共通の円錐面Pを形成している。また、第1部分13AのX線放射層Xaと第2部分13BのX線放射層Xbとの間には、陽極ターゲット13の側壁部分たとえば共通の円錐面P部分に開口し、奥の方で閉じた断面がたとえばV字状の環状溝16が形成される。そして、環状溝16に面するX線放射層Xa、Xb上にX線を放出するX線焦点が形成される。
【0021】
環状溝16の開口面Mは円錐面Pに沿って形成されている。たとえば環状溝16の開口面Mは、管軸mを含む仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上で、管軸mと傾斜した向きで交差している。このとき、X線出力窓12およびその周辺の円筒部11aは管軸mと平行する向きで交差し、開口面Mと円筒部11aは非平行に構成されている。
【0022】
また、管軸mを含みX線出力窓12を通る仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上において、環状溝16の開口面Mに垂直に形成される仮想領域QはX線出力窓12を通らない形状および寸法、配置になっている。
【0023】
上記した構成の陽極ターゲット13は、その薄肉部132が継手部17に連結されている。継手部17はたとえば全体が筒状に形成され、上端に外方突出部17aが設けられ、下端に内方突出部17bが設けられ、外方突出部17aの部分に、陽極ターゲット13の薄肉部132がねじ14および拡散接合により結合されている。ねじ14は、陽極ターゲット13の第1部分13Aと第2部分13B、および、陽極ターゲット13と継手部17を共通に固定し、陽極ターゲット13と継手部17を拡散接合する場合の加圧手段としても利用される。また、継手部17の内方突出部17bは、陽極ターゲット13を回転可能に支持する回転支持機構18に連結されている。
【0024】
回転支持機構18は、互いに嵌合する回転体19および固定体20などから構成されている。回転体19は有底円筒状で、外周面の一部に突出部19aが設けられ、その突出部19aに継手部17の内方突出部17bが接合されている。回転体19の内側空間に固定体20が軸受隙間などを保って嵌合し、回転体19と固定体20の嵌合部分に、液体金属潤滑材を充填する動圧式すべり軸受が設けられている。
【0025】
図では、管軸m方向の嵌合部分に設けられたラジアル方向の動圧式すべり軸受Ra、Rb、および、管軸mに直交する向きの嵌合部分に設けられたスラスト方向の動圧式すべり軸受Saが示されている。
【0026】
また、固定体20内部に空洞21が形成され、空洞21内にパイプ22が配置され、空洞21およびパイプ22で冷却媒体が流れる冷却用通路が形成されている。冷却媒体は、たとえば矢印Yで示すように、パイプ22の内側を上昇した後、パイプ22の外側を下降する。
【0027】
陽極ターゲット13の図示上方に陰極23が配置されている。陰極23はその中心軸nが管軸mに対して傾いた向きに配置され、電子ビームeはたとえば真空容器11側に向かって外向きに放出される。
【0028】
動作時、真空容器11の金属部分はたとえば接地して0Vの電位に、陰極23は−70kVの電位に、陽極ターゲット13は+70kVの電位に設定され、陰極23および陽極ターゲット13間に電子光学系が形成される。
【0029】
上記した構成において、陰極23で発生した電子ビームeは電子光学系によって偏向、集束され、たとえば陽極ターゲット13の環状溝16内のX線放射層Xa、Xb上にX線焦点を形成し、X線放射層Xa、XbからX線が放出される。このとき、X線を取り出す方向すなわち利用されるX線束の中心軸R方向とX線放射層Xa、Xbに入射する電子ビームeはほぼ平行し、放出されたX線はX線出力窓12から出力される。
【0030】
上記した構成によれば、陽極ターゲット13の側壁部分とX線出力窓12あるいはその周辺の真空容器11とが非平行になっている。したがって、真空容器11内でイオン化したプラスイオンは、陽極ターゲット13の側壁部分に対して垂直方向に移動するため、X線出力窓12に衝突する数が少なくなる。また、環状溝16の開口面Mに垂直な領域QがX線出力窓12を通らない配置になっている。そのため、X線出力窓12に衝突する反跳電子の数が減少し、X線出力窓12の加熱が防止される。
【0031】
また、陽極ターゲット13を製造する場合、第1部分13Aおよび第2部分13BにX線放射層Xa、Xbを形成し、その後、第1部分13Aおよび第2部分13Bを接合する構造になっている。したがって、V字状の環状溝16をもつ陽極ターゲット13の製造が容易になる。
【0032】
また、陽極ターゲット13を構成する第1部分13Aおよび第2部分13Bが拡散接合され、同時に、陽極ターゲット13と継手部17が拡散接合されている。そのため、陽極ターゲット13の第1部分13Aや第2部分13Bの熱が継手部17などを介して冷却用通路を流れる冷却媒体に確実に伝達し、良好な放熱特性が得られる。
【0033】
次に、本発明の他の実施形態について図2を参照して説明する。図2は、図1に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
【0034】
この実施形態の場合、陰極23の前方に、真空容器11の金属部分を介して接地されたビーム成型電極31が配置されている。ビーム成型電極31の一部に電子ビームが通過する貫通孔31aが設けられ、電子ビームeは貫通孔31aを通過する際に成型され、環状溝16内のX線放射層Xa、Xb上にX線焦点を形成する。
【0035】
次に、本発明の他の実施形態について図3を参照して説明する。図3は、図1に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。この実施形態の場合、陰極23の周囲にバイアス電極41が配置され、バイアス電極41は出力電圧が調整可能なバイアス電源42に接続されている。
【0036】
上記した構成によれば、たとえば回転支持機構18の熱膨張などで環状溝16が管軸m方向に移動した場合、バイアス電極41に印加する正の電圧いわゆる加速電圧を調整する。この加速電圧の調整によって、電子ビームeの速度および軌道を制御し、環状溝16内のX線放射層Xa、Xb上にX線焦点が形成されるようにする。そのため、環状溝16が管軸m方向に移動しても、加速電圧を調整することにより、電子ビームeのX線焦点が環状溝16内に形成される。したがって、環状溝16の開口を小さくすることができ、管軸方向サイズの小さいX線焦点が得られる。
【0037】
この場合、たとえば陰極23および真空容器11の金属部分は0Vの電位に設定され、バイアス電極41はたとえば200V〜2000Vの範囲で調整され、陽極ターゲット13は20kV〜70kVの電位に設定される。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態について図4を参照して説明する。図4は、図3に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。この実施形態の場合、陰極23の近傍に偏向電極51が配置され、偏向電極51は出力電圧が調整可能な偏向電源52の正端子に接続されている。また、陰極23よりも高い電位に設定される中間電極領域たとえば電子光学系の一部を形成する真空容器11の金属部分と接地G間に電流検出手段53が接続されている。電流検出手段53は制御部54を経て偏向電源52に接続されている。
【0039】
上記した構成で、電流検出手段53によって、真空容器11と接地G間つまり真空容器11および陰極23間に流れる電流の大きさが検出される。制御部54は、電流検出手段53で検出された電流値をもとに、その電流値が最小となるように偏向電源52の出力電圧を制御する。
【0040】
たとえば、回転支持機構18の熱膨張で環状溝16が管軸m方向に移動すると、電子ビームeの一部が環状溝16の外側に衝突するようになる。その結果、真空容器11の壁面に入射する反跳電子が増大し、真空容器11および接地G間に流れる電流が増大する。このとき、偏向電極51に印加される電圧を調整して、電子ビームeの軌道を変化させ、たとえば電流値が最小になるように制御する。この制御により、電子ビームeによるX線焦点が環状溝16内に正しく形成される。したがって、環状溝16の開口を小さくしても、X線焦点が正しく形成されるため、たとえば管軸方向サイズの小さいX線焦点が得られる。
【0041】
図4の場合、たとえば陰極23は−70kVの電位に、真空容器11の金属部分は0Vの電位に、陽極ターゲット13は70kVの電位に設定される。
【0042】
図4の実施形態では、陰極23の近傍に偏向電極51を配置し、真空容器11および接地G間に流れる電流が最小となるように偏向電極51に印加する電圧を調整している。しかし、陰極23近傍に図3のようなバイアス電極41を配置し、バイアス電極41に印加する電圧を調整する構成にすることもできる。
【0043】
次に、本発明の他の実施形態について図5を参照して説明する。
【0044】
符号61は回転陽極型X線管を構成する真空容器で、真空容器61は管軸mと交差する前面部61aおよび管軸m方向に伸びる側壁部61aなどから構成され、たとえば前面部61aに、X線を取り出すX線出力窓62が設けられている。真空容器61はたとえばガラスなどの絶縁物および金属で形成され、図の場合、少なくともX線出力窓62を囲むその周辺部は金属で構成されている。そして、真空容器61内部に、基体部分がMo合金などで形成された陽極ターゲット63が配置されている。
【0045】
陽極ターゲット63は、真空容器61の前面部61a側に位置するたとえば円盤状の第1部分63Aと、この第1部分63Aを嵌め込む凹部が中央に設けられたほぼ円盤状の第2部分63Bとを機械的に結合して構成されている。
【0046】
第1部分63Aは、中央部に位置する肉厚が一定の薄肉部A1と、外周部に位置しその上面が傾斜して外側に向って肉厚が徐々に厚くなる厚肉部A2とで構成されている。厚肉部A2の外側壁部分A3の一部たとえば図示上部は、下方部分の外径の方が大きくなる円錐面A31に形成されている。そして、傾斜した上面および円錐面A31、その下方の管軸に平行な垂直面A32の一部にわたり、W−ReからなるX線放射層Xaが設けられている。
【0047】
第2部分63Bは、中央に位置する肉厚が一定で薄い薄肉部B1および第1部分63Aを囲み上面が傾斜した厚肉部B2、薄肉部B1と厚肉部B2との中間に位置する中肉部B3とで構成されている。厚肉部B2の内側壁部B4の一部は図示下方の外径の方が大きくなる円錐面B41に形成されている。そして、厚肉部B2の傾斜した上面の一部および円錐面B41、その下方の管軸に平行な垂直面B42の一部にわたり、W−ReからなるX線放射層Xbが設けられている。
【0048】
上記した構造の第1部分63Aおよび第2部分63Bは、第1部分63Aの平坦な図示下面と第2部分63Bの平坦な図示上面が拡散接合などで接合され、また、複数のねじ64で固定され、陽極ターゲット63が構成される。
【0049】
拡散接合は、たとえば第1部分63Aおよび第2部分63Bの接合面に拡散接合材料たとえばAuをめっきし、ねじ64による締め付けで圧力を加えると同時に加熱する方法で接合される。この場合、第1部分63Aの垂直面A32に位置するX線放射層Xaと、第2部分63Bの垂直面B42に位置するX線放射層Xbは面接触している。また、X線出力窓62は、たとえば第1部分63Aと第2部分63Bとが接触する垂直面A32、B42を管軸m方向に延長したその延長上に位置している。また、第2部分63Bの図示下端面および図示外側壁面に、輻射率εが0.5以上の輻射促進皮膜65a、65bが直接または接着剤を介して間接的に設けられている。
【0050】
第1部分63Aおよび第2部分63Bの図示上面は、それぞれ管軸mに対して同じ角度で傾斜し、たとえば共通の円錐面Pを形成している。また、第1部分63AのX線放射層Xaと第2部分63BのX線放射層Xbとの間に、陽極ターゲット63の上面部分に開口し奥の方が閉じた、たとえば断面がV字状の環状溝66が形成されている。この場合、環状溝66に面するX線放射層Xa、Xb上にX線を放出するX線焦点が形成される。
【0051】
また、環状溝66の開口面Mは円錐面Pに一致して形成されている。たとえばその開口面Mは、管軸mを含む仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上において、管軸mと傾斜して交差する向きになっている。このとき、X線出力窓62およびその周辺の前面部61aは、仮想平面上で管軸mと直交する向きで交差し、開口面Mと前面部61aおよび開口面MとX線出力窓62は非平行に構成されている。
【0052】
また、管軸mを含みX線出力窓62を通る仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上において、環状溝66の開口面Mに垂直に形成される仮想領域QはX線出力窓62を通らない形状および寸法、配置になっている。
【0053】
上記した陽極ターゲット63は継手部17に連結され、継手部17は回転支持機構18に連結され、陽極ターゲット63は回転支持機構18によって回転可能に支持されている。陽極ターゲット63と継手部17の連結構造や継手部17と回転支持機構18の連結構造、および回転支持機構18の構造は、図1とほぼ同様であるため、図1に対応する部分に同じ符号を付し説明は省略する。
【0054】
また、陽極ターゲット63の近傍に、電子ビームeを放出する陰極67が配置されている。
【0055】
動作時、真空容器61のたとえばX線出力窓62周辺の金属部分は接地して0Vの電位に、陰極67は−70kVの電位に、陽極ターゲット63は+70kVの電位に設定され、陰極67および陽極ターゲット63間に電子光学系が形成される。
【0056】
また、陰極67近傍にバイアス電極68が配置され、バイアス電極68は出力電圧を調整できるバイアス電源69の正端子に接続されている。また陰極67よりも高い電位に設定される中間電極領域たとえば真空容器61の金属部分と接地G間に電流検出手段70が接続されている。電流検出手段70は制御部71を経てバイアス電源69に接続されている。
【0057】
上記した構成で、電流検出手段70によって真空容器61および接地G間に流れる電流の大きさが検出される。制御部71は、電流検出手段70で検出された電流値をもとに、その電流値が最小となるようにバイアス電源69の出力電圧を制御する。
【0058】
上記した構成において、陰極67で発生した電子ビームeは電子光学系によって偏向、集束され、たとえば陽極ターゲット63の環状溝66内のX線放射層Xa、Xb上にX線焦点を形成し、X線放射層Xa、XbからX線が放出する。このとき、X線を取り出す方向すなわち利用されるX線束の中心軸R方向とX線放射層Xa、Xbに入射する電子ビームeはほぼ平行し、放出されたX線はX線出力窓62から出力される。
【0059】
上記した構成によれば、陽極ターゲット63の図示上面とX線出力窓62が非平行になっている。この場合、真空容器61内でイオン化したプラスイオンは陽極ターゲット63の図示上面に対して垂直方向に移動するため、X線出力窓62に衝突する数が低下する。また、環状溝66の開口面Mに対し垂直な領域QがX線出力窓62を通らない配置になっている。したがって、X線出力窓62に衝突する反跳電子の数が減少し、X線出力窓62の加熱が防止される。
【0060】
また、回転支持機構18の熱膨張で環状溝66が管軸m方向に移動すると、たとえば電子ビームeの一部が環状溝66の外側に衝突するようになる。その結果、真空容器61の壁面に入射する反跳電子などが増大し、真空容器61および接地G間に流れる電流が増大する。このとき、バイアス電極68に印加される電圧を調整して、電子ビームeの軌道を変化させ、たとえば電流値が最小になるように制御する。この制御で、電子ビームeによるX線焦点が環状溝66内に正しく形成される。したがって、環状溝66の開口を小さくすることができ、面積の小さいX線焦点が得られる。
【0061】
上記した構造では、陽極ターゲット63を製造する場合、第1部分63Aおよび第2部分63BにX線放射層Xa、Xbを形成し、その後、第1部分63Aおよび第2部分63Bを接合する構造となっている。したがって、V字状の環状溝66をもつ陽極ターゲット63の製造が容易になる。
【0062】
また、陽極ターゲット63の第1部分63Aおよび第2部分63Bが拡散接合し、同時に、陽極ターゲット63と継手部67が拡散接合している。そのため、接合部分の熱伝導が良好で、陽極ターゲット63の第1部分63Aや第2部分63Bの熱が継手部17などを介して、固定体20内部の冷却用通路を流れる冷却媒体に確実に伝達され、放熱特性が向上する。
【0063】
図5で、中性点接地の場合は、たとえば陰極67は−70kVの電位、真空容器61の金属部分は0Vの電位に設定され、陽極ターゲット63は70kVの電位に設定される。バイアス電極74はたとえば200V〜2000Vの範囲で調整される。陰極接地の場合は、たとえば陰極67は0Vの電位、真空容器61の金属部分および中間電極領域は陰極67よりも高い100Vの電位に設定され、陽極ターゲット63は70kVの電位に設定される。
【0064】
次に、本発明の他の実施形態について図6を参照して説明する。図6は、図5に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。この実施形態の場合、陰極67近傍に偏向電極72が配置され、偏向電極72は出力電圧が調整可能な偏向電源73の正端子に接続されている。また、真空容器61の金属部分と接地G間に電流検出手段70が接続されている。電流検出手段70によって真空容器61と接地G間に流れる電流が検出される。そして、制御部71によって、たとえばその電流値が最小となるように偏向電源73の出力電圧を制御する。
【0065】
この場合も、偏向電極72に印加する電圧を調整して、電子ビームeの軌道を変化させ、たとえば電流値が最小になるように制御する。この制御で、電子ビームeによるX線焦点が環状溝66内に正しく形成される。したがって環状溝66の開口を小さくでき、サイズの小さいX線焦点が得られる。
【0066】
次に、本発明の他の実施形態について図7を参照して説明する。
【0067】
符号91は固定陽極型X線管を構成する真空容器で、真空容器91はガラスなどの絶縁物や金属で構成されている。真空容器91の一部たとえば所定軸m上にX線出力窓92が設けられている。図の場合、少なくともX線出力窓92の周辺部分は金属で構成されている。そして、真空容器91内に陽極構体93および陰極94が配置されている。
【0068】
陽極構体93は銅製の基体部93aおよびX線放出部を形成するMo製のターゲット部93bなどから構成され、基体部93aの内側に空洞95が形成されている。空洞95内にパイプ96が配置され、空洞95およびパイプ96によって冷却媒体が流れる冷却用通路が形成されている。冷却媒体は、たとえば矢印Yで示すように、パイプ96の内側を上昇した後、パイプ96の外側を下降する。
【0069】
ターゲット部93bは、図示上面a1がたとえば所定軸mに対して傾斜し、その一部たとえば所定軸m上に円錐状の凹部97が形成されている。凹部97の開口面Mは上面a1の傾斜Pに一致し、たとえば所定軸mを含む仮想平面たとえば図の紙面に一致する仮想平面上において、所定軸mと傾斜した向きで交差する。X線出力窓92は、仮想平面上において、たとえば所定軸mと直交する向きで交差し、開口面MとX線出力窓92あるいはX線出力窓92周辺の真空容器91とは非平行に構成されている。また、凹部97の開口面Mに垂直に形成される仮想領域Qは、X線出力窓92を通らない形状および寸法、配置になっている。
【0070】
陰極94近傍にバイアス電極98が配置され、バイアス電極98は出力電圧が調整可能なバイアス電源99の正端子に接続されている。また、陰極94よりも高い電位に設定される中間電極領域たとえば真空容器91の金属部分と接地Gとの間に電流検出手段100が接続され、電流検出手段100は制御部101を介してバイアス電源99に接続されている。
【0071】
上記の構成で、電流検出手段100によって、真空容器91および接地G間に流れる電流が検出される。そして、制御部101によってたとえばその電流値が最小となるようにバイアス電源99の出力電圧が制御される。
【0072】
上記した構成において、陰極94で発生した電子ビームeは電子光学系によって偏向、集束され、たとえばターゲット部93bの凹部97内にX線焦点を形成し、X線が放出される。この場合、X線を取り出す方向すなわち利用されるX線束の中心軸R方向と凹部97に入射する電子ビームeはほぼ平行し、放出されたX線はX線出力窓92から出力される。
【0073】
上記した構成によれば、ターゲット部93bの図示上面とX線出力窓92あるいはその周辺の真空容器91が非平行になっている。そのため、真空容器91内でイオン化したプラスイオンはターゲット部93bの図示上面に対して垂直方向に移動し、X線出力窓92に衝突する数が低下する。また、溝97の開口面Mに対して垂直な領域QがX線出力窓92を通らない配置になっている。したがってX線出力窓92に衝突する反跳電子の数が減少し、X線出力窓92の加熱が防止される。
【0074】
また、電流検出手段100によって、真空容器91と接地G間に流れる電流が検出され、たとえばその電流値が最小となるようにバイアス電極98の出力電圧が制御される。この場合、電子ビームeによるX線焦点が凹部内に正しく形成される。したがって、凹部の開口を小さくでき、小さいX線焦点が得られる。
【0075】
次に、本発明の他の実施形態について図8を参照して説明する。図8は、図7に対応する部分には同じ符号を付し重複する説明は一部省略する。
【0076】
この実施形態の場合、ターゲット部93bが、図示左側に位置する断面が半円形状の第1部分110Aと、図示右側に位置する断面が半円形状の第2部分110Bとを連結して構成されている。
【0077】
たとえば第1部分110Aおよび第2部分110Bには、それぞれ相手と連結する側の面の一部に断面が半円錐状の窪み111A、111Bが形成されている。また、それぞれの窪み111A、111Bの表面を含む領域にRe−WなどからなるX線放射層112A、112Bが形成される。
【0078】
上記した第1部分110Aおよび第2部分110Bを、両者の窪み111A、111Bの部分を一致させて、所定軸m上に円錐状の凹部112が形成されるように接合し、ターゲット部93aを構成する。
【0079】
上記の実施形態は、陽極ターゲットの基体部分をMo合金で形成し、X線放射層をWとRe(10%)合金で形成した場合で説明している。しかし、乳房検査用のX線管などの場合は、陽極ターゲットの基体部分およびX線放射層の両方を純MoやMo合金で形成することもできる。
【0080】
また、電子ビームの制御に電界を使用しているが、磁界で制御してもよく、あるいは電界と磁界を組み合わせて制御することもできる。
【0081】
また、回転陽極型X線管の場合、環状溝を構成するたとえば2つの傾斜面が平坦で、断面がV字状の例で説明している。しかし、環状溝の断面はV字状に限るものではなく、傾斜面に凸面や凹面が形成され、たとえばその内径が開口部に向かってラッパ状に大きくなる形状にすることもできる。また、固定陽極型X線管の場合は、凹部が円錐状の場合で説明している。この場合、凹部は断面が多角形の多角錐状でもよく、また凹部を形成する傾斜面たとえば錐の母線に相当する部分が凸面や凹面を有する曲面状とし、全体として開口部に向かってラッパ状に大きくなる形状であってもよい。
【0082】
また、図4〜図8の実施形態は、たとえば動作時に回転支持機構が熱膨張して環状溝が管軸方向に移動する場合で説明している。しかし、回転陽極型X線管の初期設定時などに、電子ビームを放出して、陰極と真空容器間に流れる電流が最小となるように調整すれば、電子ビームのX線焦点が環状溝内に正しく形成される条件に設定できる。この初期設定時は、陽極ターゲットの基体部分のMo合金などが溶けないように、電子ビームの電流値を実動作時に用いる場合よりも絞った状態で行うことが望ましい。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、X線焦点の熱負荷容量の改善効果が得られるX線管を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図5】本発明の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【符号の説明】
11…真空容器
11a…真空容器の円筒部
12…X線出力窓
13…陽極ターゲット
13A…陽極ターゲットを構成する第1部材
13B…陽極ターゲットを構成する第2部材
14…ねじ
15a、15b…輻射促進膜
16…環状溝
17…継手部
18…回転支持機構
19…回転体
20…固定体
21…空洞
22…パイプ
23…陰極
P…陽極ターゲットの側壁部分の円錐面
Q…仮想領域
M…環状溝の開口面
e…電子ビーム
R…出力X線束
Claims (8)
- X線放出部が設けられた環状の溝を有する陽極ターゲットと、前記溝に入射する電子ビームを発生する陰極と、前記陽極ターゲットを回転可能に支持する回転支持機構と、前記陽極ターゲットおよび前記陰極、前記回転支持機構を収納する真空容器と、この真空容器の一部に取り付けられたX線出力窓とを具備したX線管において、前記X線管の管軸を含む共通の仮想平面上に位置する前記溝の開口面部分および前記X線出力窓周辺の前記真空容器部分が平行でないことを特徴としたX線管。
- X線放出部が設けられた環状の溝を有する陽極ターゲットと、前記溝に入射する電子ビームを発生する陰極と、前記陽極ターゲットを回転可能に支持する回転支持機構と、前記陽極ターゲットおよび前記陰極、前記回転支持機構を収納する真空容器と、この真空容器の一部に取り付けられたX線出力窓とを具備したX線管において、前記X線管の管軸を含み前記X線出力窓を通る仮想平面上で、前記仮想平面上の前記溝の開口面部分に垂直に形成した仮想領域が前記X線出力窓を通らないことを特徴としたX線管。
- 環状の溝を有する陽極ターゲットと、前記溝に入射する電子ビームを発生する陰極と、前記陽極ターゲットを回転可能に支持する回転支持機構と、前記陽極ターゲットおよび前記陰極、前記回転支持機構を収納する真空容器と、この真空容器の一部に取り付けられたX線出力窓とを具備したX線管において、前記陽極ターゲットが、第1X線放出層を有する第1部材と、第2X線放出層を有し前記第1部材に連結する第2部材とで構成され、前記第1部材の前記第1X線放出層および前記第2部材の前記第2X線放出層が前記環状の溝に面していることを特徴としたX線管。
- X線放出部が設けられた凹部を有する陽極構体と、前記凹部に入射する電子ビームを発生する陰極と、前記陽極構体および前記陰極を収納する真空容器と、この真空容器の一部に取り付けられたX線出力窓とを具備したX線管において、前記凹部および前記X線出力窓を通る共通の仮想平面上に位置する前記凹部の開口面部分および前記X線出力窓部分が平行でないことを特徴としたX線管。
- X線放出部が設けられた凹部を有する陽極構体と、前記凹部に入射する電子ビームを発生する陰極と、前記陽極構体および前記陰極を収納する真空容器と、この真空容器の一部に取り付けられたX線出力窓とを具備したX線管において、前記凹部および前記X線出力窓を通る仮想平面上で、前記仮想平面上の前記凹部の開口面部分に垂直に形成される仮想領域が前記X線出力窓を通らないことを特徴としたX線管。
- 陰極が発生した電子ビームの軌道を変更する補正手段と、前記陰極よりも電位が高い中間電極領域および接地間に流れる電流の大きさが最小となるように前記補正手段を制御する制御手段とを設けた請求項1ないし請求項5のいずれか1つに記載のX線管。
- X線放出部が設けられた凹部または環状の溝を有する陽極構体と、前記凹部または環状の溝に入射する電子ビームを発生する陰極と、前記陽極構体および前記陰極を収納する真空容器と、この真空容器の一部に取り付けられたX線出力窓とを具備したX線管において、前記陰極が発生した電子ビームの軌道を変更する補正手段を設けたことを特徴としたX線管。
- 陰極よりも電位が高い中間電極領域および接地間に流れる電流の大きさが最小となるように補正手段を制御する制御手段を設けた請求項7記載のX線管。
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