JP2007305337A - マイクロフォーカスx線管 - Google Patents

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大樹 沢辺
Keiji Koyanagi
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Abstract

【課題】
マイクロフォーカスX線管の電子銃のカソードへの正帯電金属イオンの衝突による損傷を軽減し、X線管の寿命を延長する。
【解決手段】
X線管の陰極12の電子銃18の中心軸30は、回転陽極14の回転中心軸32に向かわず、この回転中心軸32から距離Lだけ離れた位置を通るので、ターゲット20の傾斜面20a上に形成される焦点36と回転中心軸32とを結ぶ陽極基準線38と電子銃18の中心軸30とは焦点36において開き角度θで交差することになる。その結果、ターゲット20の焦点36の近傍の等電位線が電子銃18の中心軸30と直交することがなくなるため、ターゲット20上で発生した正帯電金属イオンの走行方向が変わり、正帯電金属イオンの電子銃18のカソードへの衝突が激減する。
【選択図】 図2

Description

本発明は、産業用または医療用のX線装置などに好適なX線管に係り、特に極めて高輝度のX線を発生することができるX線管に関する。
被検体を透過したX線の線量を測定し、その線量の測定結果に基づいてX線画像を作成し、被検体の検査または診断を行うX線装置は、産業用としては種々の製品の欠陥検査や異物検査などに、また医療用としてはX線透視装置やX線撮影装置などに広く応用されている。このようなX線装置では、被検体内の検査対象物が微小な場合に、よい検査または診断を行うためには、検査対象物のできるだけ拡大された像を得ることが望ましい。そのためには、X線管またはそれを内挿するX線発生装置において、X線の発生領域であるX線源(以下、焦点という)の大きさをできるだけ小さくする必要があり、これに伴い微小焦点を有するマイクロフォーカスX線管の需要が高まっている。
一方、高画質のX線透視像を得るためには、X線を発生させる電子線電流(以下、X線管電流という)はできるだけ大きいことが要求される。例えば、食品中の異物検査などをX線感度の低いラインセンサを使用して検査するX線装置や、生産ライン上を流れている検査物(被検体)のX線画像をイメージインテンシファイア(I.I.)カメラのシャツター機能を使用して一瞬の静止画像として得るインラインの自動検査用X線装置などでは、X線管電流の大電流化による感度向上が要求される。また、医療用X線装置においても、X線フィルム撮影とX線透視を兼用する機器では、撮影時間を短縮するためにX線管電流の大電流化による感度向上が必要となる。
しかし、マイクロフォーカスX線管では、X線管電流の大電流化を妨げる因子として、陽極のターゲットに衝突する電子線の電力による焦点の温度上昇(以下、熱衝撃ともいう)の問題がある。マイクロフォーカスX線管の場合、陰極にて極めて細いビームに絞った電子線を陽極のターゲットに入射させるために、焦点における熱入力密度は極めて大きくなり、その結果焦点面の温度上昇も極めて高くなる。そのため、従来のマイクロフォーカスX線管において、製造者が許容している電子線電力(X線管電圧×X線管電流)、すなわち許容負荷は通常の医療用X線管などと比べて極めて小さい値に設定されている。
他方、本発明の対象とするマイクロフォーカスX線管の場合のように、極めて小さい焦点を得るための電子集束方法としては、複数の電極を用いて電子レンズを形成して集束する方法がある。この方式の代表的なものにマイクロフォーカスX線管用の電子銃(以下、電子銃と略称する)がある。この種の電子銃については、特許文献1や特許文献2などに開示されている。以下、図9、図10を用いて、この電子銃の構造、動作について簡単に説明する。図9はこの電子銃を用いたマイクロフォーカスX線管の一例の概略構成を、図10はこの電子銃の概略構成を示している。図9において、マイクロフォーカスX線管100は、電子線を発生する電子銃102を有する陰極104と、電子線が衝突してX線を発生するターゲット106を有する陽極108と、陰極104と陽極108を絶縁支持し、真空気密に内包する外囲器110などから構成される。外囲器110にはターゲット106で発生したX線を外部に取り出すためのX線放射窓112が設けられている。陰極104は電子銃102の他に、電子銃102を支持するステムなどを有する。
特開2003−317996号公報 特開2005−38825号公報
図10では、簡単のため電子銃102の構造を模式的に示している。図10において、電子銃102はカソード114と、3個のグリッド電極116、118、120とから構成される。3個のグリッド電極は、カソード114に近い方から順にG1電極116、G2電極118、G3電極120と呼ばれている。3個のグリッド電極116、118、120はそれぞれ電子線122を通す開口116a、118a、120aを有する。カソード114の電子放射面114aから電子線122が放射され、この電子線122はG1電極116とG2電極118とG3電極120で形成される電子レンズによって集束されて細いビームとなり、ターゲット106に衝突してX線を発生させる。
カソード114は酸化物カソードまたは含浸形カソードのような熱陰極形のもので、高温に加熱して、空間電荷制限領域で用いられる。3個のグリッド電極116、118、120にはカソード114の電位(陰極電位)を基準にしたグリッド電圧が印加される。G1電極116には正のグリッド電圧が印加され、G2電極118には更に高い正のグリッド電圧が印加される。これらのグリッド電圧の値は所望とする電子線122の電流量(X線管電流)や焦点の寸法に応じて制御される。カソード114の電子放射面114aから放射された電子はG1電極116の正電位のグリッド電圧によって引き出されて電子線122となる。G1電極116の開口116aを加速されながら通過した電子線122は、G2電極118のグリッド電圧によって更に加速される。ここで、G2電極118とG1電極116との間の電位差によって電子線122を集束するレンズ作用が生まれる。このレンズ作用によって電子線122は集束されて、G2電極118の開口118aの付近にクロスオーバー124と呼ばれる仮想焦点を形成する。
G3電極120には数百V程度の正電位のグリッド電圧が印加される。G3電極120に上記のグリッド電圧を印加することによって、クロスオーバー124をターゲット106に投射する電子レンズ(主レンズと呼ばれる)がG3電極120の開口120a付近に形成される。この主レンズはクロスオーバー124から発散しながらG3電極120の開口120aに入射してきた電子線122を集束させて、ターゲット106上に微小スポットの焦点126を形成する役割を持つ。G3電極120の開口120aを通過した電子線122は主レンズによって集束されながらターゲット106まで走行し、ターゲット106上に微小な焦点126を形成する。図11には、参考のために、上記の電子銃を使用した場合の電位分布と電子軌道の計算例を示す。
マイクロフォーカスX線管の陰極のカソードには酸化物カソードや含浸形カソードなどが使用されており、使用中にこれらのカソードの電子出射能力が低下し、X線管電流を減少させる場合がある。このカソードの電子出射能力を低下させる要因の一つとして、正電荷の帯電した金属イオンがカソードの電子放射面に衝突するイオン・ボンバード(ion bombardment)の問題がある。このイオン・ボンバードの問題について、以下、図12を用いて説明する。図12において、図12(a)は従来の回転陽極型マイクロフォーカスX線管の陰極の電子銃と陽極の配置の概略を示した図、図12(b)は従来の回転陽極型マイクロフォーカスX線管での正帯電金属イオンの発生とカソードの電子放射面への衝突の様子を模式的に示した図、図12(c)は従来の回転陽極型マイクロフォーカスX線管での正帯電金属イオンの軌道計算例を示したものである。
図12(a)において、従来の回転陽極型マイクロフォーカスX線管では、陰極の電子銃は図10の電子銃とほぼ同じ構造をしており、陽極は回転陽極型で、円盤状のターゲットを有し、電子銃とターゲットは対向して外囲器(図示せず)内に配置されている。陰極104の電子銃102は図10のものと同様にカソード114とG1電極116とG2電極118とG3電極120とから構成されるが、簡略化して図示されている。陽極108はターゲット106やこれを支持するロータなどを有するが、簡単のため円盤状のターゲット106のみ図示されている。陽極108の中心軸130、すなわちターゲット106の回転軸は図面に垂直で、ロータなどはターゲット106の裏面側に配置されている。電子銃102はターゲット106の周方向で、ターゲット106に対向する位置に適当な間隔をとって配置されている。また、電子銃102の中心軸128と陽極108の中心軸130はほぼ直交するように配置されている。
図12(a)、(b)において、陰極104の電子銃102のカソード114の電子放射面114aから放出された電子線122は3個のグリッド電極、すなわちG1電極116、G2電極118、G3電極120によって極めて細いビーム状に集束されて走行し、陽極108のターゲット106に衝突し、X線を発生させる。ターゲット106上の電子線122が衝突するX線源、すなわち焦点126は電子線122が極めて細く集束されているため微小なものとなる。このターゲット106上の焦点126の位置は陰極104の電子銃102の中心軸128がターゲット106を通る位置とほぼ一致する。図12(b)において、電子線122がターゲット106上の微小な焦点126に衝突すると、その焦点126の部分が加熱されるとともに、焦点126からX線とともに2次電子132が放射される。同時にターゲット106から正電気の帯電した金属イオン134が発生する。この正帯電金属イオン134は電子線122の衝突および焦点126の温度上昇によって発生するものである。また、2次電子132は焦点126の近傍に再び衝突するため、焦点126の周辺においても正帯電金属イオン134が発生する。この正帯電金属イオン134は大部分がターゲット106を組成する成分であるタングステンやレニウムなどのイオンである。
ターゲット106上の焦点126およびその周辺で発生した正帯電金属イオン134の一部は、ターゲット106とG3電極120との間に形成される等電位線およびその電界によって陰極104の電子銃102に向かって走行することになる。この等電位線は、陽極108の中心軸130と平行な方向から見たとき、電子銃102の中心軸128に対してほぼ垂直に形成されているため、その電界によって上記の正帯電金属イオン134は電子銃102の中心軸128とほぼ平行な方向に加速され、殆んど偏向されることなく、陰極104の電子銃102の方向に飛んで行く。そしてその一部の正帯電金属イオン134がカソード114の電子放射面114aやG1電極116、G2電極118、G3電極120の表面に衝突する。正帯電金属イオン134の衝突による影響はカソード114の電子放射面114aで最も大きく、正帯電金属イオン134が衝突したカソード114の電子放射面114aでは、損傷が発生し、表面被覆化合物が剥離したり、元素濃度の割合が変化したりして、電子出射能力の低下を引き起こし、この現象が進行することにより、X線管電流が減少して行くことになる。また、カソード114の寿命も短縮される。図12(c)は従来のマイクロフォーカスX線管において、単純な電極配置での正帯電金属イオンの軌道計算を行ったものである。すなわち、電子銃102とターゲット106が対向して配置された場合の正帯電金属イオン134の軌道を計算したものである。図示の場合には、ターゲット106の焦点126で発生した正帯電金属イオン134はターゲット106とG3電極120の間に形成される電位分布によって加速されて、電子銃102のカソード114の電子放射面114aに向けて走行している。
以上に鑑み、本発明では、マイクロフォーカスX線管において、陰極の電子銃と陽極のターゲットとの幾何学的配置を改良して、電子銃のカソードへの正帯電金属イオンの衝突による損傷を軽減することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明のマイクロフォーカスX線管(以下、X線管と略称する)は、電子線を発生するカソードと、電子線を細いビームに集束するために電子線の経路に配置される複数個の電極とから成る電子集束系(以下、電子銃という)を有する陰極と、陰極からの電子線が衝突することによりX線を発生するターゲットと、ターゲットを支持固定するターゲット支持体とを有する陽極と、陰極と陽極とを真空気密に封入し、X線を外部に取り出すためのX線放射窓を有する外囲器とを備え、電子銃の複数個の電極はそれぞれ電子線を通過させるための開口を有し、それぞれの電極にカソードを基準にした電圧を印加することにより電子線を集束するための電子レンズを形成するX線管において、電子銃とターゲットとは、電子銃の中心軸とターゲット面のX線源(以下、焦点という)において該ターゲット面に垂直に立てた垂線(以下、焦点位置垂線という)とを陽極の中心軸方向から見たとき、電子銃の中心軸と前記焦点位置垂線とが開き角度を持って交差するように配置されている(請求項1)。
また、本発明のX線管は、電子線を発生するカソードと、電子線を細いビームに集束するために電子線の経路に配置される1個以上の電極とから成る電子銃を有する陰極と、陰極からの電子線が衝突することによりX線を発生するターゲットと、ターゲットを支持固定するターゲット支持体とを有する陽極と、陰極と陽極とを真空気密に封入する外囲器とを備え、電子銃の1個以上の電極は電子線を通過させるための開口を有するX線管において、電子銃と前記ターゲットとは、電子銃の中心軸とターゲット面の焦点においてターゲット面に垂直に立てた焦点位置垂線とを陽極の中心軸方向から見たとき、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とが開き角度をもって交差するように配置されている(請求項2)。
また、本発明のX線管は、電子線を発生するカソードと、電子線を細いビームに集束するために電子線の経路に配置される1個以上の電極とから成る電子銃を有する陰極と、陰極からの電子線が衝突することによりX線を発生するターゲットと、ターゲットを支持固定するターゲット支持体とを有する陽極と、陰極と陽極とを真空気密に封入する外囲器とを備え、電子銃の1個以上の電極は電子線を通過させるための開口を有するX線管において、電子銃とターゲットとは、両者の間に形成される電位分布を陽極の中心軸方向から見たとき、ターゲットの焦点の近傍の等電位線が電子銃の中心軸と直交しないように配置されている(請求項3)。
また、本発明のX線管では、電子銃とターゲットとは、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを、陽極の中心軸及び焦点位置垂線と直交する方向から見たとき、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とが開き角度を持って交差するように配置されている(請求項4)。
また、本発明のX線管では、電子銃の中心軸と焦点位置垂線との開き角度は5度以上である。
また、本発明のX線管では、陽極は外周部に傾斜面または平面または円柱面を有する円盤状のターゲットを備えた回転陽極型であり、電子銃からの電子線による焦点がターゲットの円盤の外周部の傾斜面または平面または円柱面に形成され、電子銃とターゲットとは、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを陽極の回転中心軸方向から見たとき、電子銃の中心軸と焦点位置とが開き角度を持って交差するように配置されている。また、本発明のX線管では、陽極のターゲットは円盤の外周部に傾斜面を有する。
また、本発明のX線管では、陽極は外周部に傾斜面または平面または円柱面を有する円盤状のターゲットを備えた回転陽極型であり、電子銃からの電子線による焦点がターゲットの円盤の外周部の傾斜面または平面または円柱面に形成され、電子銃とターゲットとは、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを陽極の回転中心軸及び焦点位置垂線と直交する方向から見たとき、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とが開き角度を持って交差するように配置されている。また、本発明のX線管では、陽極のターゲットは円盤の外周部に傾斜面を有する。
また、本発明のX線管では、陽極はターゲットがターゲット支持体の先端に設けられた傾斜面または平面に支持された固定陽極型であり、電子銃からの電子線による焦点がターゲット面上に形成され、電子銃とターゲットとは、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを陽極の中心軸方向から見たとき、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とが開き角度を持って交差するように配置されている。また、本発明のX線管では、陽極のターゲットはターゲット支持体の先端に設けられた傾斜面に支持されている。
また、本発明のX線管では、陽極はターゲットがターゲット支持体の先端に設けられた傾斜面または平面に支持された固定陽極型であり、電子銃からの電子線による焦点がターゲット面上に形成され、電子銃とターゲットとは、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを陽極の中心軸及び焦点位置垂線と直交する方向から見たとき、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とが開き角度を持って交差するように配置されている。また、本発明のX線管では、陽極のターゲットはターゲット支持体の先端に設けられた傾斜面に支持されている。
本発明のX線管は、陰極の電子銃がカソードと複数個の電子線を通過させるための開口を有する電極とから成り、それぞれの電極にカソードを基準にした電圧を印加することにより電子線を細いビームに集束するための電子レンズを形成しており、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを陽極の中心軸方向から見たとき、両者が開き角度を持って交差するように、電子銃とターゲットとを配置しているので、電子銃とターゲットとの間に形成される電位分布に関しては、ターゲット面の焦点位置の近傍の等電位線は焦点位置垂線にはほぼ垂直となるが、電子銃の中心軸とは垂直になることはないため、ターゲット面上の焦点またはその近傍で陰極からの電子線またはその2次電子によって発生した正帯電金属イオンは、電子銃の中心軸方向には向かわないので、電子銃の複数個の電極の開口を通してカソードの電子放射面に衝突することは殆んどなくなり、その結果カソードの電子放射面が損傷を受けることなく、長寿命を達成できるので、X線管の寿命が延長され、またX線管電流も低下することがないので、高X線出力を維持することができる(請求項1)。
また、本発明のX線管は、陰極の電子銃がカソードと1個以上の電子線を通過させる開口を有し、電子線を細いビームに集束する電極とから成り、更に電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを陽極の中心軸方向から見たとき、両者が開き角度を持って交差するように、電子銃とターゲットが配置されているので、電子銃とターゲットとの間に形成される電位分布に関しては、陰極からの電子線によって発生する正帯電金属イオンを加速するためのターゲット面上の焦点近傍の電界の向きが電子銃の中心軸とは別の方向を向いているので、ターゲットで発生した正帯電金属イオンが電子銃の1個以上の電極の開口を通してカソードの電子放射面に衝突することは殆んどなくなり、その結果、カソードの電子放射面が損傷を受けることなく、長寿命を達成できるので、X線管の寿命が延長され、またX線管電流も低下することがないので、高X線出力を維持することができる(請求項2)。
また、本発明のX線管は、陰極の電子銃がカソードと1個以上の電子線を通過させる開口を有し、電子線を細いビームに集束する電極とから成り、更に電子銃とターゲットとは、両者の間に形成される電位分布を陽極の中心軸方向から見たとき、ターゲットの焦点の近傍の等電位線が電子銃の中心軸と直交しないように配置されているので、陰極からの電子線によって発生した正帯電金属イオンを加速するためのターゲット面上の電界の向きが電子銃の中心軸とは別の方向を向いているので、ターゲット面上で発生した正帯電金属イオンが電子銃の1個以上の電極の開口を通してカソードの電子放射面に衝突することは殆んどなくなり、その結果カソードの電子放射面が損傷を受けることなく、長寿命を達成できるので、X線管の寿命が延長され、またX線管電流も低下することがないので、高X線出力を維持することができる(請求項3)。
また、本発明のX線管では、電子銃とターゲットとは、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを、陽極の中心軸方向から見たときと、陽極の中心軸及び焦点位置垂線と直交する方向から見た時の両方で、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とが開き角度を持って交差するように配置されているので、請求項1〜3で得られる陽極の中心軸と直交し、かつ焦点位置を含む平面での電位分布の改良効果と共に、電子銃の中心軸と焦点位置垂線を含む平面での電位分布の改良による効果を享受することができる。しかし、後者の場合電子銃の中心軸と焦点位置垂線との開き角度を大きくしないと、意に反して前者の改良の効果を減少させることもある(請求項4)。
また、本発明のX線管では、電子銃の中心軸と焦点位置垂線との開き角度を5度以上としているので、ターゲット面上で発生した正帯電金属イオンが電子銃のカソードの電子放射面に衝突する頻度は従来品と比べ約1/5以下に減少するので、カソードの正帯金属イオンの衝突による損傷は大幅に低減され、カソードの寿命は延長され、X線管の寿命も延長される。
また、本発明のX線管では、陽極は円盤状のターゲットを備えた回転陽極型であり、焦点がターゲットの円盤の外周部の傾斜面または平面または円柱面に形成され、電子銃とターゲットとが、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを、陽極の回転中心軸方向から見たとき、両者が開き角度を持って交差するように配置されているので、このような回転陽極型X線管においては、請求項1、2の場合と同様な効果が得られる。
また、本発明のX線管では、陽極は円盤状のターゲットを備えた回転陽極型であり、焦点がターゲットの円盤の外周部の傾斜面または平面または円柱面に形成され、電子銃とターゲットとが、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを、陽極の回転中心軸及び焦点位置垂線と直交する方向から見たとき、両者が開き角度を持って交差するように配置されているので、このような回転陽極線管においては、請求項4の場合と同様な効果が得られる。
また、本発明のX線管では、陽極はターゲットがターゲット支持体の先端に設けられた傾斜面または平面に支持された固定陽極型であり、焦点がターゲット面上に形成され、電子銃とターゲットとが、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを、陽極の中心軸方向から見たとき、両者が開き角度を持って交差するように配置されているので、このような固定陽極型X線管においては、請求項1、2の場合と同様な効果が得られる。
また、本発明のX線管では、陽極はターゲットがターゲット支持体の先端に設けられた傾斜面または平面に支持された固定陽極型であり、焦点がターゲット面上に形成され、電子銃とターゲットとが、電子銃の中心軸と焦点位置垂線とを、陽極の中心軸及び焦点位置垂線と直交する方向から見たとき、両者が開き角度を持って交差するように配置されているので、このような固定陽極線管においては、請求項4の場合と同様な効果が得られる。
以下、本発明の実施例を添付図面により説明する。
先ず、本発明に係るマイクロフォーカスX線管の第1の実施例について、図1と図2を用いて説明する。図1は本発明に係るマイクロフォーカスX線管の第1の実施例の概略構成を示す図、図2は図1の電子銃とターゲットとの配置関係を示す図である。図1において、本実施例のマイクロフォーカスX線管(以下、X線管と略称する)10は、回転陽極型のX線管であり、陰極12と、回転陽極(以下、陽極という)14と、陰極12と陽極14とを絶縁支持し、真空気密に内包する外囲器16とから構成される。陰極12は、電子を発生し、これを細いビーム状に集束する電子銃18を有し、陽極14は陰極12からの電子が衝突してX線を発生するターゲット20を有し、ターゲット20は円盤状をしており、ロータなどのターゲット支持体によって回転自在に支持されている。外囲器16はターゲット20を囲む大径部22と、陰極12を絶縁支持する陰極絶縁部24と、陽極14を絶縁支持する陽極絶縁部26などを有し、大径部22の上面にはX線を外部に取り出すためのX線放射窓28が取り付けられている。従来のX線管では、陰極と陽極は、陰極の電子銃の中心軸が陽極の回転中心軸とほぼ直交し、かつターゲット上の焦点軌道面が形成する平面(以下、焦点軌道平面という)上にのるか、焦点軌道平面にほぼ平行になるように配置されていたのに対し、本実施例のX線管10では、陰極12と陽極14は、陰極12の電子銃18の中心軸30と、陽極14の回転中心軸32が直交することなく、少しずれるように配置されている。
図2には、本実施例のX線管10内の、陰極12の電子銃18と陽極14のターゲット20との配置関係が示されている。図2において、図2(a)は図1の上面図、図2(b)は図1の側面図である。図2(a)は、図1においてターゲット20の上面側すなわち外囲器16のX線放射窓28の側から見たものであり、図2(b)は図2(a)においてX線管10を陽極14の回転中心軸32のまわりに焦点36が左端に見える所まで回転した状態で見た側面図である。図2(a)において、陰極12の電子銃18が陽極14のターゲット20と対向して配置されている。このときの位置関係では、電子銃18の中心軸30は従来品の如く陽極14の回転中心軸32と直交するものではなく、陽極14の回転中心軸32から垂線距離Lだけ離れた平面内を通るように、電子銃18とターゲット20が対向している。陽極14の回転中心軸32とターゲット20上の焦点36を通る線(以下、陽極基準線と呼ぶことにする)38と、電子銃18の中心軸30とはほぼ焦点36の位置で交差している。従来品では、電子銃18の中心軸30はこの陽極基準線38上にのっていたが、本実施例では、電子銃18の中心軸30と陽極基準線38との間に交差角度θが生じるようにしたものである。すなわち、本実施例では、電子銃18の中心軸30が電子銃18の中心軸30と陽極基準線38を含む平面上でターゲット20上の焦点36を中心にして、陽極基準線38に対し交差角度θだけ回転している。ここで、電子銃18の中心軸30と陽極基準線38を含む平面は上記の焦点軌道平面56に相当するものである。上記の交差角度θについては、以下電子銃18の中心軸30の回転方向変位角度と呼ぶことにする。また、図2(b)において、電子銃18の中心軸30をターゲット20の傾斜面20aを基準にして見た場合、焦点36の位置でターゲット20の傾斜面20aに立てた垂直線(以下、焦点位置垂線と呼ぶ)58に対し、電子銃18の中心軸30は角度θだけ傾いた位置にある。本実施例での電子銃18の中心軸30の焦点位置垂線58に対する傾き角度θは従来品と同等なものであるが、本実施例では、この傾き角度θはターゲット20の傾斜面20a自体の陽極14の回転中心軸32に対する傾き角度が変化した場合に変化する。この電子銃18の中心軸30の焦点位置垂線58に対する傾き角度θはターゲット20の回転半径方向の傾き角度であるので、以下電子銃18の中心軸30の回転半径方向傾き角度と呼ぶことにする。本実施例のX線管では、図2(a)に示す如く、電子銃18の中心軸30を陽極基準線38に対し回転方向偏位角度θだけ回転させているため、後で説明する如く、陰極12からの電子線34の衝突によってターゲット20上で発生する正帯電金属イオンが電子銃18のカソードの電子放射面に衝突する頻度が激減して、カソードを損傷することがなくなるので、X線管の長寿命化が達成され、またX線管電流の減少にともなうX線量の減少も起こらなくなるという効果がある。
次に、図3、図4を用いて、本実施例のX線管の動作および効果について説明する。図3は、本実施例のX線管における電子線および正帯電金属イオンの動きを説明するための模式図、図4は本実施例のX線管の電子銃部分の電位分布とターゲットからの正帯電金属イオンの軌道の計算例である。両図とも図2(a)と同様にターゲット20の上面のX線放射窓28側から見たものである。先ず、図3を用いて、本実施例のX線管における電子線の動きについて説明する。図3には、本実施例のX線管での、電子銃18の概略構成と、電子線34の走行状況と、ターゲット20上での正帯電金属イオンの発生および走行状況が示されている。図3において、陰極12の電子銃18は、特許文献2などで開示されたX線管の電子銃と同様に、電子線34を発生するカソード40と、電子線34を細いビームに集束する3個のグリッド電極、すなわちG1電極42と、G2電極44と、G3電極36などから構成される。カソード40は酸化物または含浸型カソードのような熱陰極であり、高温で、空間電荷制限領域で用いられる。G1電極42とG2電極44は耐熱性金属材料から成る円板状の電極で、中心部に電子線34を通す小さな開口42a、44aを有する。G3電極46は耐熱性金属材料から成る円筒状の電極で、中心部に大きな開口46aを有する。G1電極42にはカソード40の電位(陰極電位)に対して正のグリッド電圧(G1電圧)が印加され、G2電極44には陰極電位に対して正でG1電圧よりも高いグリッド電圧(G2電圧)が印加される。また、G3電極46には陰極電位に対して正の数百V程度のグリッド電圧(G3電圧)が印加される。これらのグリッド電圧の値は、所望とする電子線34の電流量(X線管電流)や焦点寸法に応じて調整される。
カソード40の電子放射面40aから出射した熱電子はG1電極42の正電圧すなわちG1電圧によって引き出され、G1電極42の開口42aを加速されながら通過し、電子線34を形成する。この電子線34はG2電極44に印加されるG2電圧によって更に加速される。G2電極44の近傍では、G1電圧とG2電圧の電位差によって電子線34を集束する電子レンズ(プレフォーカスレンズ)が形成され、このプレフォーカスレンズのレンズ作用によって電子線34が集束される。このプレフォーカスレンズの集束作用によって電子線34はG2電極44の開口44aの付近にクロスオーバーと呼ばれる仮想焦点48を形成する。また、G3電極46に陰極電位に対して数百V程度高い正のG3電圧が印加されることによって、G3電極46の近傍には上記のクロスオーバー48をターゲット20上に焦点36として投射する電子レンズ(主レンズ)が形成される。この主レンズは、クロスオーバー48から発散しながらG3電極46の開口46aに入射して来た電子線34を集束させて、ターゲット20上に微小スポットの焦点36を形成する役割を持つ。この主レンズの集束作用を受けて電子線34はG3電極46からターゲット20まで走行し、ターゲット20の傾斜面20a上に微小な焦点(マイクロフォーカス)36を形成する。上記において、電子線34はほぼ電子銃18の中心軸30に沿ってカソード40の電子放射面40aからターゲット20上の焦点36まで走行する。
次に、図2を参照しながら、図3、図4を用いて、正帯電金属イオンの働きについて説明する。本実施例のX線管10では、図2(a)に示した如く、陰極12の電子銃18の中心軸30は陽極14の回転中心軸32と直交せず、陽極基準線38と回転方向変位角度θをもって交差する。ターゲット20の傾斜面20a上の焦点36は電子銃18の中心線30が陽極基準線と交差した位置に形成される。このため、本実施例のX線管における電位分布としては、図4に示すように、電子銃18とターゲット20との間の等電位線50が、電子銃18のG3電極46の近傍では、G3電極46の前面46bにほぼ平行で、電子銃18の中心軸30に対しほぼ垂直であるのに対し、ターゲット20上の焦点36に近づくにつれて、ターゲット20の傾斜面20aとほぼ平行になり、電子銃18の中心軸30に対しては垂直でなくなってくる。すなわち、ターゲット20上の焦点36の近傍では、電子銃18の中心軸30に対し垂直ではなく、回転方向変位角度θだけ傾いた等電位線50が形成されている。
図3において、電子銃18からの電子線34は、電子銃18とターゲット20との間では殆んど偏向されずにターゲット20まで走行し、焦点36に衝突する。電子線34が焦点36に衝突すると、焦点36からX線とともに2次電子52や正帯電金属イオン54が発生する。X線はX線放射窓28を通して外部に取り出されて利用されるが、2次電子52はターゲット20に再び衝突し、エネルギーの低いX線や正帯電金属イオン54を発生する。正帯電金属イオン54はターゲット20を構成するタングステンなどの金属原子がイオン化したものであるが、主としてターゲット20の周辺に形成されるターゲット20の傾斜面20aに垂直な電界、すなわち電子銃18の中心軸30に対し回転方向変位角度θだけ傾いた等電位線50による電界によって加速されて、陰極12の電子銃18に向かって走行する。図4には、ターゲット20の焦点36の近傍で発生した正帯電金属イオン54の走行軌道の計算例が示されている。図4において、焦点36の近傍で発生した正帯電金属イオン54の走行軌道はターゲット20の表面の近くでは、ターゲット20の表面に平行な電位分布、すなわち電子銃18の中心軸30に対し回転方向変位角度θだけ傾いた電位分布によってターゲット20の表面に直交する方向に加速され、その後殆んど偏向されずに直進している。その結果、正帯電金属イオン54はG3電極46やG2電極44に衝突することになり、カソード40の電子放射面40aには殆んど衝突しなくなる。そのため、カソード40の電子放射面40aが損傷を受けることはなくなる。また、図3においては、ターゲット20の焦点36の周辺も含めて正帯電金属イオン54の走行軌道が模式的に記載されているが、ターゲット20の傾斜面20aが電子銃18の中心軸30に対し直交せず傾斜しているため、正帯電金属イオン54は電子銃18の中心軸30に対し少し傾斜した方向に走行し、G3電極46やG2電極44に衝突している。その結果、本実施例のX線管では正帯電金属イオン54がカソード40の電子放射面40aに衝突することはなくなり、カソード40が損傷を受けることなく長期間使用可能となるので、X線管の寿命が延長される。これに伴いX線管電流も長時間減少することなく保持されるので、高X線量状態で使用することができる。
次に、ターゲット20上で発生した正帯電金属イオン54がどのくらいの確率で電子銃18のカソード40の電子放射面40aに衝突するかについて説明する。先に説明した如く、正帯電金属イオン54は陰極12からの電子線34およびこの電子線34によって発生する2次電子52によってターゲット20上の焦点36およびこの焦点36の周辺部では生成され、ターゲット20の周辺の電位分布および電界によって主として陰極12の方向に放射される。この正帯電金属イオン54のターゲット20からの放射については、ターゲット20の傾斜面20a上の焦点36の位置に垂直線、すなわち焦点位置垂線58を立てた場合、正帯電金属イオン54はこの焦点位置垂線58の方向に最も多く放射され、この焦点位置垂線58からの傾き角度(例えば回転方向変位角度θ)が大きくなるにつれてその放射量が減少して行くことが計算や実験などでわかってきている。図5は正帯電金属イオンの放射量と回転方向変位角度θとの関係の一計算例である。この計算では、正帯電金属イオン54は電子銃18からの電子線(1次電子)34によって発生したものと、焦点36からの2次電子52によって発生したものが一定の比率で混合しているものとして取り扱っている。図5において、横軸は回転方向変位角度θ、縦軸は正帯電金属イオン54の放射量の比率である。図5によれば、正帯電金属イオン54の放射量は角度θが5度ぐらいまでの範囲では急激に減少し、5度で約1/5となり、それ以上の角度では漸減している。前者は1次電子34によって発生した正帯電金属イオン54が主体となっており、後者は2次電子52によって発生したものが主体となっているものと見られる。また、正帯電金属イオン54の放射量のレベルは角度θが20度ぐらいになると10%以下の値まで減少している。以上のことから、回転方向変位角度θとしては数度でも効果が得られるが、5度以上とることが有効であり、また20度以上とれば従来の1/10以下に低減することが可能となる。
本実施例のX線管では、ターゲット20上で発生した正帯電金属イオン54が電子銃18のカソード40の電子放射面40aに衝突する頻度を少なくするために、電子銃18の中心軸30が焦点位置垂線58に対し、より大きな角度で傾くように電子銃18を配置している。図2に示した如く、電子銃18の中心軸30は焦点位置垂線58に対し、回転半径方向では回転半径方向傾き角度θだけ、回転方向では回転方向変位角度θだけ傾けられている。上記の回転半径方向の傾き角度に関しては、従来品の電子銃の中心軸においても本実施例の回転半径方向傾き角度θと同等レベルの傾き角度が付与されていたが、本実施例では、更に回転半径方向とは直交する回転方向について、電子銃18の中心軸30に対し回転方向変位角度θの傾き角度を付与して、正帯電金属イオン54が電子銃18のカソード40の電子放射面40aに衝突する頻度が少なくなるようにしている。
次に、図6を用いて、本発明に係るX線管の第2の実施例について説明する。図6は本発明に係るX線管の第2の実施例の電子銃とターゲットとの配置関係を示す図である。本実施例のX線管では電子銃とターゲットとの配置関係が異なる以外は第1の実施例のX線管と同じである。図6において、本実施例では、電子銃18の中心軸30が陽極14の回転中心軸32と焦点36を通る陽極基準線38と、焦点36において回転方向変位角度θで交差している。一方、回転半径方向傾き角度θに関しては図2(b)に示した第1の実施例と同様であり、従来品と同程度の傾き角度である。本実施例においても、電子銃18の中心軸30とターゲット20の傾斜面20aの焦点36における接線の方向が直交していないため、電子銃18のG3電極46の前面近傍の等電位線50とターゲット20の焦点36の近傍の等電位線50とでは方向が異なり、後者の等電位線50は電子銃18の中心軸30と直交することがないので、ターゲット20の焦点36またはその近傍で発生した正帯電金属イオン54は電子銃18の中心軸30と平行な走行軌道をとることはないので、カソード40の電子放射面40aに衝突することは殆んどなくなり、その結果、カソード40の電子放射面40aは損傷を受けずにすみ、長寿命を維持することができる。
次に、図7を用いて、本発明に係るX線管の第3の実施例について説明する。図7は、本発明に係るX線管の第3の実施例の電子銃とターゲットとの配置関係を示した図である。図7において、図7(a)は陽極14の回転中心軸32を垂直にしたときの正面図、図7(b)は陽極14のターゲット20の上側すなわちX線放射窓側から見た上面図、図7(c)は陽極14の回転中心軸32を垂直にして、その周りに回転させて焦点36の位置が最も左側に来るようにしたときの正面図である。本実施例のX線管では、陰極12の電子銃18は陽極14の回転中心軸32を中心にして、ターゲット20上の焦点軌道平面56上に位置するのではなく、その焦点軌道平面56よりも上側、すなわちX線放射窓に寄った側に配置されている。このため、本実施例のX線管では、電子銃18の中心軸30はターゲット20上の焦点36の位置を基準にして、回転方向の角度、すなわち回転方向変位角度θのみならず、ターゲット20の傾斜面20aに対する角度、すなわち回転半径方向傾き角度θも変更されている。図7(a)では、電子銃18の中心軸30がターゲット20の上側に回転移動して、ターゲット20の傾斜面20aに対する角度が変化していることが判る。図7(b)、(c)は、電子銃18の中心軸30が焦点位置垂線58または陽極基準線38に対してどの程度傾いているかを示した図で、図7(b)からは電子銃18の中心軸30が回転方向に回転方向変位角度θだけ傾いていることが、図7(c)からは電子銃18の中心軸30が回転半径方向に回転方向傾き角度θだけ傾いていることが判る。本実施例の如く、電子銃18の中心軸30は焦点位置垂線58に対し、回転方向変位角度θのみならず、回転半径方向傾き角度θも変更可能であり、これらの傾き角度θ、θを従来品よりも大きい角度にすることにより、正帯電金属イオン54が電子銃18のカソード40の電子放射面40aに衝突する確率を低減させることができ、その結果X線管の寿命を延長することができる。
次に、図8を用いて、本発明に係るX線管の第4の実施例について説明する。本実施例のX線管では、陽極は固定陽極型である。図8は本実施例のX線管の陰極の電子銃と陽極のターゲットとの配置関係を示す図である。図8において、図8(a)は陽極とターゲットを正面側から見た図、図8(b)は図8(a)の側面図である。本実施例では、陰極の電子銃と陽極を除いた部分は従来品とほぼ同じ構造をしているので、他の部分の図示は省略した。陽極(固定陽極)62は直方体状でタングステンなどから成るターゲット64と、略円柱状64で、ターゲット64を固定支持し銅材などから陽極母材(ターゲット支持体に相当)65とから成り、ターゲット64は陽極母材65の先端の傾斜面62aに鋳造またはろう付けなどによって固定されている。陰極12の電子銃18は回転陽極型のものとほぼ同じ構造である。図8(a)、(b)において、陽極62の傾斜面62aに鋳造によって埋め込まれたターゲット64に対向して陰極12の電子銃18が配置されている。陽極62の傾斜面62aのほぼ中心に焦点36が形成されるので、この焦点36の位置に焦点位置垂線58を立てると、この焦点36において、電子銃18の中心軸30と焦点位置垂線58と陽極62の中心軸66などが交差することになる。両図において、電子銃18の中心軸30と焦点位置垂線58を背面側に投影すると、両者の線30、58によって角度αとαが形成される。角度αは陽極62のターゲット64の面を正面から見た場合の電子銃18の中心軸30の焦点位置垂線58に対する傾き角度であり、以下、正面方向傾き角度(α)と呼び、角度αは陽極62のターゲット64を側面方向から見た場合の電子銃18の中心軸30の焦点位置垂線58に対する傾き角度であり、以下側面方向傾き角度(α)と呼ぶことにする。これらの傾き角度を回転陽極型のX線管のものと対比した場合、正面方向傾き角度αは回転方向変位角度θに相当し、側面方向傾き角度αは回転半径方向傾き角度θに相当する。本実施例では、電子銃18の中心軸30を焦点位置垂線58に対し正面方向については正面方向傾き角度αだけ傾け、側面方向については側面方向傾き角度αだけ傾けた点において従来品と相違する。正面方向傾き角度αについては新たに付加したものであり、側面方向傾き角度αについては角度の大きさを変更したものである。
本実施例では、電子銃18の中心軸30と焦点位置垂線58との間の傾き角度について、正面方向では新しく正面方向傾き角度αを付加し、それと直交する側面方向では側面方向傾き角度αを変更することにより、両線の焦点位置垂線58に対する傾き角度を大きくし、方向を変えるようにしているので、陰極12の電子銃18からの電子線34によって陽極62のターゲット64上の焦点36およびその近傍で発生した正帯電金属イオンが電子銃18のカソードの電子放射面に衝突する頻度が減少するため、カソードの損傷が大幅に軽減され、X線管の寿命が延長される。
上記の本発明に係るX線管の第1〜第4の実施例では、陰極12の電子銃18の構造を、カソード40と3個のグリッド電極42、44、46から構成されるものとして説明してきたが、電子銃18の構成するものはこれらに限定されず、電子線を発生するカソードと、この電子線を細いビームに集束する1個以上の電極であればよく、また、電極の有する開口の形状も円形の穴に限定されず、角形の穴や、外周部が1個以上開いた溝状のものであっても、本発明を適用することは可能である。また、陽極14、62のターゲット20、64に焦点面については傾斜面20a、62aとして説明してきたが、焦点面としてはこれらに限定されず、回転陽極型においては、ターゲットが円板形状などの場合、平面部分の外周部分や円板の外周面(円柱面)なども焦点面となり得るし、また固定陽極型においては、陽極の先端が平面などの場合、その平面部分なども焦点面となり得るので、そのような構成の陽極であっても、本発明を適用することは可能である。
本発明に係るマイクロフォーカスX線管の第1の実施例の概略構成を示す図。 図1の電子銃とターゲットとの配置関係を示す図。 本実施例のX線管における電子線および正帯電金属イオンの動きを説明するための模式図。 本実施例のX線管の電子銃部分の電位分布とターゲットからの正帯電金属イオンの軌道の計算例。 正帯電金属イオンの放射量と回転方向変位角度θとの関係の一計算例。 本発明に係るX線管の第2の実施例の電子銃とターゲットとの配置関係を示す図。 本発明に係るX線管の第3の実施例の電子銃とターゲットとの配置関係を示す図。 本発明に係るX線管の第4の実施例の陰極の電子銃と陽極のターゲットとの配置関係を示す図。 従来のマイクロフォーカスX線管の一例の概略構成。 図9のX線管に用いられる電子銃の概略構成。 図10の電子銃を使用した場合の電位分布と電子軌道の計算例。 従来の回転陽極型マイクロフォーカスX線管におけるイオン・ボンバードの問題を説明するための図。
符号の説明
10・・・マイクロフォーカスX線管(X線管)
12・・・陰極
14・・・回転陽極(陽極)
16・・・外囲器
18・・・電子銃
20、64・・・ターゲット
20a、62a・・・傾斜面
28・・・X線放射窓
30・・・電子銃の中心軸(中心軸)
32・・・陽極の回転中心軸
34・・・電子線(1次電子)
36・・・焦点(X線源)
38・・・陽極基準線
40・・・カソード
40a・・・電子放射面
42・・・G1電極(第1グリッド電極)
42a、44a、46a・・・開口
44・・・G2電極(第2グリッド電極)
46・・・G3電極(第3グリッド電極)
50・・・等電位線
52・・・2次電子
54・・・正帯電金属イオン
56・・・焦点軌道平面
58・・・垂線(焦点位置垂線)
62・・・固定陽極(陽極)
65・・・陽極母材
66・・・陽極の中心軸
θ・・・回転半径方向傾き角度
θ・・・回転方向変位角度
α・・・側面方向傾き角度
α・・・正面方向傾き角度

Claims (4)

  1. 電子線を発生するカソードと、電子線を細いビームに集束するために電子線の経路に配置される複数個の電極とから成る電子集束系を有する陰極と、陰極からの電子線が衝突することによりX線を発生するターゲットと、ターゲットを支持固定するターゲット支持体とを有する陽極と、陰極と陽極とを真空気密に封入し、X線を外部に取り出すためのX線放射窓を有する外囲器とを備え、電子集束系の複数個の電極はそれぞれ電子線を通過させるための開口を有し、それぞれの電極にカソードを基準にした電圧を印加することにより電子線を集束するための電子レンズを形成するマイクロフォーカスX線管において、前記電子集束系と前記ターゲットとは、前記電子集束系の中心軸と前記ターゲット面のX線源において該ターゲット面に垂直に立てた垂線とを前記陽極の中心軸方向から見たとき、前記電子集束系の中心軸と前記垂線とが開き角度を持って交差するように配置されていることを特徴とするマイクロフォーカスX線管。
  2. 電子線を発生するカソードと、電子線を細いビームに集束するために電子線の経路に配置される1個以上の電極とから成る電子集束系を有する陰極と、陰極からの電子線が衝突することによりX線を発生するターゲットと、ターゲットを支持固定するターゲット支持体とを有する陽極と、陰極と陽極とを真空気密に封入する外囲器とを備え、電子集束系の1個以上の電極は電子線を通過させるための開口を有するマイクロフォーカスX線管において、前記電子集束系と前記ターゲットとは、前記電子集束系の中心軸と前記ターゲット面のX線源において前記ターゲット面に垂直に立てた垂線とを前記陽極の中心軸方向から見たとき、前記電子集束系の中心軸と前記垂線とが開き角度をもって交差するように配置されていることを特徴とするマイクロフォーカスX線管。
  3. 電子線を発生するカソードと、電子線を細いビームに集束するために電子線の経路に配置される1個以上の電極とから成る電子集束系を有する陰極と、陰極からの電子線が衝突することによりX線を発生するターゲットと、ターゲットを支持固定するターゲット支持体とを有する陽極と、陰極と陽極とを真空気密に封入する外囲器とを備え、電子銃の1個以上の電極は電子線を通過させるための開口を有するマイクロフォーカスX線管において、前記電子集束系と前記ターゲットとは、両者の間に形成される電位分布を前記陽極の中心軸方向から見たとき、前記ターゲットの焦点の近傍の等電位線が前記電子銃の中心軸と直交しないように配置されていることを特徴とするマイクロフォーカスX線管。
  4. 請求項1乃至3記載のマイクロフォーカスX線管において、前記電子集束系と前記ターゲットとは、前記電子集束系の中心軸と前記垂線とを、前記陽極の中心軸及び前記垂線と直交する方向から見たとき、前記電子集束系の中心軸と前記垂線とが開き角度を持って交差するように配置されていることを特徴とするマイクロフォーカスX線管。
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