JP3910468B2 - 回転陽極型x線管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は回転陽極型X線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
回転陽極型X線管は、真空容器内に配置した円盤状陽極ターゲットを回転支持機構によって回転可能に支持し、高速で回転する陽極ターゲットに対して電子ビームを照射し、陽極ターゲットからX線を放出させる構造になっている。陽極ターゲットを回転可能に支持する回転支持機構は、互いに嵌合する回転体および固定体から構成され、回転体と固定体の嵌合部分に軸受が設けられている。
【0003】
回転陽極型X線管の軸受には、ボールベアリングのようなころがり軸受、あるいは、軸受面にらせん溝を形成し、ガリウム(Ga)やガリウムーインジウムー錫(Ga−In−Sn)合金などの液体金属潤滑剤を軸受間隙に満たした動圧式すべり軸受が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
回転陽極型X線管は、陰極から放出された電子が、陰極および陽極ターゲット間の電位勾配で加速集束され、たとえば120〜150keVのエネルギーを持って、X線発生源となる焦点を陽極ターゲット上に形成する。高エネルギーの電子が陽極ターゲット上に衝突すると、電子は急速に減速し陽極ターゲットからX線が放出される。
【0005】
陽極ターゲットに衝突する電子の運動エネルギーのうち、1%程度のわずかな部分がX線に変換される。残りのエネルギーは熱に変換され、陽極ターゲットを加熱する。電子の衝突で発生する陽極ターゲットの熱は、回転陽極型X線管を高性能化するために、電子ビーム出力を大きくしてX線の放出量を増加させる場合、あるいは、X線を頻繁に放出させる場合、X線を長時間にわたって連続的に放出させる場合などに障害になる。
【0006】
また、陽極ターゲットに衝突した電子は約50%が後方に散乱する。後方に散乱した電子(以下、反跳電子と記す)は、陽極ターゲットの表面から一度遠ざかる。その後、陰極と陽極間の電位勾配によって陽極ターゲット側に加速され、反跳電子のほとんどが焦点から離れた陽極ターゲットの表面に再び衝突する。再衝突した反跳電子は陽極ターゲットを加熱させる。また、利用しないX線(以下、焦点外X線と記す)を放出させ、X線画像の明瞭度が損なわれる。
【0007】
上記したように反跳電子は、利用可能なX線の発生に寄与せず、陽極ターゲットを加熱しX線管の高性能化を妨げる。
【0008】
そこで、反跳電子を捕捉するシールド構造体を陰極と陽極ターゲット間に配置し、反跳電子による陽極ターゲットの加熱を減少させる方法がある(米国特許第4309637号明細書および特表平11−510955号公報参照)。
【0009】
これらの方法は、シールド構造体を比較的薄い金属壁で構成し、反跳電子が衝突する面と反対側の面を冷却媒体で冷却する構造になっている。反跳電子の衝突で発生するシールド構造体の熱は、熱伝導によって冷却壁面に伝熱し、冷却媒体によって熱交換される。
【0010】
上記の方法は、シールド構造体に発生する熱が冷却媒体による熱交換の能力を上回ると、金属壁部分の温度が上昇する。温度の上昇が大きくなると、金属壁の表面が溶融し、あるいは、金属壁から真空管内に不所望のガスを発生させ、耐電圧性能が低下する。
【0011】
そのため、シールド構造体を用いる方法は、CT装置など高出力のX線撮影装置への適用が困難になっている。たとえば連続72kWの出力をもつCT装置に適用する場合、捕捉される反跳電子の割合が80%と仮定すると、約29kWの熱を冷却媒体に直接伝達する必要がある。しかし、現状のCT装置は、油冷却装置の最大の冷却性能は10kWに満たず、シールド構造体の採用が困難になっている。
【0012】
また、特開2000−200695号公報には、反跳電子を捕捉するために、真空外囲器の外面の一部に、X線透過窓接合用の穴を含んだ形状の熱蓄積アセンブリを設ける方法が開示されている。この熱蓄積アセンブリは、内部に熱交換チャンバを設け、熱交換チャンバ内に冷却媒体を流して熱蓄積アセンブリを冷却する構造となっている。
【0013】
熱蓄積アセンブリを用いる方法は、熱蓄積アセンブリが固定された構造であるため、反跳電子が衝突する領域の表面温度が局部的に高くなる。また、X線照射窓への反跳電子の衝撃を防止することが困難であり、熱交換チャンバを設けるため構造が複雑になる。
【0014】
この発明は、上記の欠点を解消し、反跳電子による加熱を抑え、良好な回転特性を有する回転陽極型X線管を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
この発明は、真空容器内に配置した陰極構体と、この陰極構体から放射する電子ビームが軌道面上の焦点に入射しX線を放出する陽極ターゲットと、この陽極ターゲットと一体に回転する回転体と、この回転体とともに前記陽極ターゲットを回転可能に支持し、前記回転体との間に軸受が設けられた固定体とを具備した回転陽極型X線管において、前記陽極ターゲットおよび前記回転体と一体で回転する反跳電子トラップを前記軌道面の外側に設けたことを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、その主要部分を抜き出した図1を参照して説明する。符号10は真空容器で、図1の場合、その接地側容器部分のみが示されている。真空容器10の一部にX線窓10aが設けられている。真空容器10内に円盤状陽極ターゲット11が配置され、陽極ターゲット11は回転支持機構12によって回転可能に支持されている。回転支持機構12はたとえば有底円筒状の回転体13およびこの回転体13内側に嵌合する固定体14から構成され、陽極ターゲット11はその回転体13の部分に連結している。
【0017】
たとえば陽極ターゲット11の内側に肉厚の薄い環状の肉薄部15が形成され、また、回転体13の外周部分に環状の突出部16が形成され、陽極ターゲット11の肉薄部15と回転体13の突出部16がたとえば複数のねじ17で固定されている。陽極ターゲット11の一部たとえば図示上面の外周部分に、外側の方が低い傾斜面が環状に形成され、その傾斜面にX線を放出する軌道面18が環状に設けられている。
【0018】
回転体13の図示上部に円板状の反跳電子トラップ19がたとえば複数のねじ20で固定されている。反跳電子トラップ19の側壁部分19aはたとえば上面の方が下面よりも径が大きい傾斜面に形成されている。側壁部分19aのたとえば下端は陽極ターゲット11の軌道面18が形成する環状領域の内端よりも小さくその内側に位置している。
【0019】
回転体13および固定体14の嵌合部分の所定領域に動圧式すべり軸受が設けられている。たとえば回転体13の内周面と固定体14の外周面との間に、軸受面が管軸mに平行なラジアル方向の動圧式すべり軸受21Rが設けられている。また、回転体13の底面と固定体14の端面との間に軸受面が管軸mに直交するスラスト方向の動圧式すべり軸受21Sが設けられている。動圧式すべり軸受21R、21Sは、たとえば軸受面の一方にらせん溝を形成し、このらせん溝の部分に液体金属潤滑剤を供給する構成になっている。
【0020】
また、固定体14の内部に穴22が形成され、穴22の中にパイプ23が配置されている。このとき、矢印Yで示すように、冷却媒体がパイプ23内を上昇し、その後、パイプ23の外側を下降する冷却媒体用通路が形成される。
【0021】
また、陽極ターゲット11の軌道面18に対向して、反跳電子トラップ19が設けられた側に電子ビームを発生する陰極構体24が配置されている。陰極構体24はたとえばマルチフォーカス構造で、電子ビームを発生する陰極24aおよびグリッド電極24bなどから構成されている。グリッド電極24bは絶縁物24cを介して陰極24aの周囲に取り付けられている。
【0022】
マルチフォーカス構造はCT装置で使用される回転陽極型X線管などに用いられている。たとえば複数の電子放出部いわゆるフィラメントが陰極24aに設けられ、使用条件に応じて電子放出部が切り替えられる。電子放出部を切り替えた場合、それぞれの電子放出部から発生する電子が陽極ターゲット11上のほぼ同一の位置に焦点を形成するように、グリット電極24bの電圧が切り替えに合わせて調整される。
【0023】
陰極構体24は、軌道面18上のX線焦点に接する面Sに垂直な垂直線sよりもX線窓10a側に傾いて配置され、陰極構体24が発生する電子ビームeは管軸mに対し傾けた向きに放出される。このとき、反跳電子トラップ19の外側面19aが電子ビームeの進行方向とほぼ平行し、反跳電子トラップ19が形成する電界は電子ビームeを直進させる。
【0024】
上記した配置の場合、図2に示すように、たとえば軌道面上に形成されるX線焦点Fに接する面をS、電子の中心ビームがX線焦点Fに入射する入射方位ベクトルをe、X線を取り出すX線出力方位ベクトルをx、面SのX線焦点F上に垂直に落下する垂直方位ベクトルをsとした場合、入射方位ベクトルeと垂直方位ベクトルsがなす角度θがターゲット角度ψすなわちX線出力方位ベクトルxと面Sがなす角度以上に設定されている。
【0025】
また、たとえば陰極構体24を起点とするX線焦点Fまでの入射方位ベクトルeの面Sへの投影e0 と、たとえばX線焦点Fを起点とするX線窓までのX線出力方位ベクトルxのS面への投影x0 とのなす角度φが90°以下に設定されている。ここでは、投影e0 と投影x0 が一致する場合に角度φ=0°となる。
【0026】
上記の構成において、陽極ターゲット11を高速で回転させ、陰極構体24が発生する電子ビームeの焦点Fを陽極ターゲット11の軌道面18上に形成し、X線を放出させる。このX線は矢印X(図1)で示すように進み真空容器10のX線窓10aから取り出される。
【0027】
このとき、陽極ターゲット11に対する電子ビームeの衝突で、符号E(図1)で示すように反跳電子が発生する。反跳電子Eは、互いに電気的に接続され同じ値の高電位に設定された陽極ターゲット11および反跳電子トラップ19によって捕捉される。
【0028】
反跳電子の衝撃で発生する反跳電子トラップ19の熱は熱伝導で全体に蓄積され、反跳電子トラップ19の温度が上昇する。この熱の一部は反跳電子トラップ19の熱輻射作用により放散される。また、熱の一部は、回転体13からスラスト方向の動圧式すべり軸受21Sなどを介して固定体14に伝熱し、固定体14内を流れる冷却媒体たとえば絶縁油への緩やかな熱伝達作用で放散される。
【0029】
上記したように、比較的短時間に高いパワーで発生した反跳電子の衝撃による熱は反跳電子トラップ19に蓄積され、その後、X線の照射が中断される比較的長時間の間に緩やかに放散される。したがって、軸受部分における急激な温度上昇が回避され、良好な軸受機能が維持される。
【0030】
上記した構成の場合、陰極構体24は、軌道面18に接する面S上でX線焦点Fに垂直な方向よりもX線窓10a側に位置し、角度φ(図2)を90°以下に設定している。この場合、反跳電子の多くが反跳電子トラップ19に向い、X線窓10aに向う反跳電子が減少する。その結果、X線窓10aの温度上昇が抑えられる。
【0031】
また、電子の中心ビームが面Sに入射する入射路と面Sに垂直な線sとがなす入射角度θをターゲット角度ψよりも大きくしている。この場合、反跳電子が広い範囲に分布し、反跳電子によって衝撃される反跳電子トラップ19表面の温度分布が均一化し、局所的な温度上昇が防止される。
【0032】
たとえば、図3(a)の符号Pに示すように、入射角度θがターゲット角度ψよりも小さく、入射方向INが面Sに垂直の場合(θ=0°)、反跳電子の分布は電子ビームが入射する面Sの垂直方向に集中する。一方、図3(b)の符号Qで示すように、入射角度θがターゲット角度ψよりも大きく、入射方向INが面Sに対して傾いている場合(θ=60°)は、焦点F近傍における反跳電子の数密度分布は、入射電子が正反射する方向を最大にして全般になだらかな分布となる。反跳電子は電界の影響によって曲がるようなことがないため、焦点から離れた位置でも、反跳電子の分布Qはなだらかな分布となる。その結果、反跳電子によって衝撃される反跳電子トラップ19表面の温度分布が均一化する。
【0033】
また、反跳電子トラップ19は回転する構造になっている。この場合、反跳電子の衝撃を受ける反跳電子トラップ19の面積が実質的に増加したことと等価になり、温度上昇が抑えられる。
【0034】
また、反跳電子トラップ19に黒化皮膜を設け、あるいは、複数の凹凸溝を形成して表面積を大きくすれば、放熱特性が向上し、より効率よく熱を放散できる。また、反跳電子トラップ19のX線焦点Fに対向する側の表面を耐熱性の高い材料で構成すれば、高温時の溶融や有害ガスの発生を少なくできる。
【0035】
耐熱性の高い材料としては、ニオブおよびニオブ合金、モリブデン、モリブデン合金、タンタル、タンタル合金、タングステン、タングステン合金、レニウム、レニウム合金の中の一つを主とする材料が使用される。
【0036】
また、反跳電子トラップ19のX線焦点Fに対向する側の表面を粗くすれば、反跳電子の衝撃によって発生する2次散乱電子の陽極ターゲット11側への戻りを低減できる。また、反跳電子トラップ19のX線焦点Fに対向する側の表面を原子番号が45以下の材料で被覆すれば、反跳電子の衝撃で発生する2次散乱電子の数を減少できる。
【0037】
次に、本発明の他の実施形態について図4を参照して説明する。図4は、図1に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。また、図4以下では真空容器を省略している。
【0038】
この実施形態の場合、陰極構体24が集束電極41やフィラメント42などから構成されている。集束電極41の平坦な前面43に集束溝44が設けられ、集束溝44の内部にフィラメント42が配置されている。集束電極41の前面43は陽極ターゲット11の軌道面18に対し傾いた配置になっている。図示左側に位置するX線窓(図示せず)側の方が軌道面18たとえば出力用X線の進行路に接近している。この場合、X線窓に向う反跳電子は前面43のX線窓側端部が形成する電界によって陽極ターゲット11方向に戻され、X線窓の過熱が防止される。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態について図5を参照して説明する。図5は、図4に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
【0040】
この実施形態の場合、集束電極41の前面43が軌道面18にほぼ平行な平坦面43aとX線窓側が陽極ターゲット11側に張り出した傾斜面43bから構成されている。この場合も、X線窓の方向に向う反跳電子は集束電極41の傾斜面43bが形成する電界によって陽極ターゲット11方向に戻され、X線窓の過熱が防止される。
【0041】
次に、本発明の他の実施形態について図6を参照して説明する。図6は、図1に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
【0042】
この実施形態の場合、陽極ターゲット11の内側の肉薄部15が回転体13の上端部にたとえば複数のねじ17で固定されている。また、陽極ターゲット11の図示下方たとえば陰極構体24と反対側に位置する回転体13の外周部に高融点材料で形成された支持部材61が固定されている。
【0043】
支持部材61は円板部62およびこの円板部62から陽極ターゲット11の側面に沿って管軸m方向に伸びる円筒部63から構成されている。この場合、円板部62の内側に肉厚の薄い環状の肉薄部64が形成され、また、回転体13の外周部分に環状の突出部65が形成され、支持部材61の肉薄部64と回転体13の突出部65がたとえば複数のねじ66で固定されている。そして、円筒部63の図示上部たとえば陰極構体24側に筒状の反跳電子トラップ67が固定されている。反跳電子トラップ67は、たとえば軌道面18よりも外側に位置し、かつ、軌道面18からX線窓に進むX線出力Xの進路を塞ぐ形に位置し、X線を透過しやすい材料で形成されている。
【0044】
X線を透過しやすい材料としては、グラファイト、CFC(Carbon Fiber Composite)、ベリリウム、ベリリア、B、BN、B4 Cの中の一つを主とする材料が使用される。
【0045】
この場合、図2に示したように、たとえば軌道面18上に形成されるX線焦点Fに接する面をS、電子の中心ビームがX線焦点Fに入射する入射方位ベクトルをe、X線を取り出すX線出力方位ベクトルをx、面SのX線焦点Fに垂直な垂直方位ベクトルをsとした場合に、垂直方位ベクトルsと入射方位ベクトルeがなす角度θはターゲット角度ψ以上に設定されている。また、入射方位ベクトルeの面Sへの投影e0 とX線出力方位ベクトルxの面Sへの投影x0 とのなす角度φが90°以上に設定されている。
【0046】
この場合、図1の構造に比べてX線窓に向う反跳電子の量が多くなる。しかし、X線窓の前に位置する反跳電子トラップ67によって反跳電子が捕捉され、X線窓の加熱が防止される。また、反跳電子トラップ67は回転する構造になっているため、反跳電子の衝撃を受ける面積が実質的に増加したと等価になり、反跳電子トラップ67表面の温度上昇が抑えられる。
【0047】
また、X線窓の前方に反跳電子トラップ67が位置している。そのため、X線窓に対する反跳電子の衝撃が回避される。
【0048】
なお、入射方位ベクトルeの面Sへの投影e0 とX線出力方位ベクトルxの面Sへの投影x0 とのなす角度φを180°、あるいは、この近傍に設定すればX線窓方向に向うX線が増大しX線出力が大きくなる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態について図7を参照して説明する。図7は図6に対応する部分には同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
【0050】
この実施形態の場合、陰極構体24は図4の場合と同様、集束電極41などから構成されている。集束電極41の前面43は全体が平坦に形成されている。また、前面43の一部に集束溝44が設けられ、集束溝44の内部にフィラメント42が配置されている。この場合、集束電極41の前面43は軌道面18とほぼ平行し、回転体13の図示上部に、図1の反跳電子トラップとほぼ同様の構造の陰極側反跳電子トラップ71がたとえばねじ72で固定されている。
【0051】
上記した構成の場合、陽極ターゲット11に衝突し後方に散乱される反跳電子は、回転する反跳電子トラップ67および回転する陰極側反跳電子トラップ71の両方で補足される。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態について図8を参照して説明する。図8は図7に対応する部分には同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
【0053】
この実施形態は、反跳電子トラップ67が陽極ターゲット11の外周部に固定されている。この場合も、回転する反跳電子トラップ67および回転する陰極側反跳電子トラップ71の両方で反跳電子が補足される。
【0054】
次に、本発明の他の実施形態について図9を参照して説明する。図9は図7に対応する部分に同じ符号を付し重複する説明を一部省略する。
【0055】
この実施形態は、支持部材61の円板部62が陽極ターゲット11の裏面たとえば陰極構体24と反対側の面に接合されている。この場合も、回転する反跳電子トラップ67および回転する陰極側反跳電子トラップ71の両方で反跳電子が補足される。
【0056】
また、上記した各実施形態の場合、反跳電子トラップの外周部たとえば反跳電子が衝突する近傍は熱交換チャンバが設けられない実質的に中実の構造になっている。そのため反跳電子トラップの構造が簡単になる。
【0057】
また、上記の各実施形態の場合、動作時、陰極に陰極電圧を印加し、真空容器に金属容器電圧を印加し、反跳電子トラップおよび陽極ターゲットに陽極電圧が印加される。この場合、陰極電圧を−70kV、金属容器電圧を0kV、陽極電圧を+70kVに設定する中性点接地、あるいは、陰極電圧を−140kV、金属容器電圧を0kV、陽極電圧を0kVに設定する陽極接地が採用される。
【0058】
【発明の効果】
本発明によれば、反跳電子による加熱を抑え、良好な回転特性を有する回転陽極型X線管が実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図2】陽極ターゲットの軌道面における電子ビームおよびX線出力などの関係を説明するための模式図である。
【図3】陽極ターゲットで発生する反跳電子の分布を説明するための特性図である。
【図4】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図8】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【図9】本発明の他の実施形態を説明するための概略の断面図である。
【符号の説明】
10…真空容器
10a…X線窓
11…陽極ターゲット
12…回転支持機構
13…回転体
14…固定体
15…陽極ターゲットの薄肉部
16…回転体の突出部
17…ねじ
18…軌道面
19…反跳電子トラップ
20…ねじ
21R…ラジアル方向の動圧式すべり軸受
21S…スラスト方向の動圧式すべり軸受
22…穴
23…パイプ
e…電子ビーム
m…管軸
S…陽極ターゲット上の軌道面に接する面
s…面Sに対する垂直線
F…X線焦点
X…X線出力
E…反跳電子
Claims (7)
- 真空容器内に配置した陰極構体と、この陰極構体から放射する電子ビームが軌道面上の焦点に入射しX線を放出する陽極ターゲットと、この陽極ターゲットと一体に回転する回転体と、この回転体とともに前記陽極ターゲットを回転可能に支持し、前記回転体との間に軸受が設けられた固定体とを具備した回転陽極型X線管において、前記陽極ターゲットおよび前記回転体と一体で回転する反跳電子トラップを前記軌道面の外側に設けたことを特徴とする回転陽極型X線管。
- 反跳電子トラップが、陽極ターゲットの軌道面と真空容器に設けたX線窓とを結ぶ出力X線の進路上に位置する請求項1記載の回転陽極型X線管。
- 反跳電子トラップが陽極ターゲットの軌道面を囲む筒状部分を有する請求項1記載の回転陽極型X線管。
- 反跳電子トラップがX線を透過する材料で形成されている請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の回転陽極型X線管。
- X線を透過する材料は、グラファイトおよびCFC、ベリリウム、ベリリア、B、BN、B 4 Cの中の1つを主とする材料である請求項4記載の回転陽極型X線管。
- 管軸方向にみて陽極ターゲットよりも陰極構体側に、前記陽極ターゲットおよび回転体と一体で回転する反跳電子トラップを軌道面の内側に設けた請求項1記載の回転陽極型X線管。
- 固定体の内部に冷却媒体が流れる流路が形成されている請求項1ないし請求項6のいずれか1つに記載の回転陽極型X線管。
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