JP2000156188A - X線管真空容器用のアルミニウムx線透過窓 - Google Patents

X線管真空容器用のアルミニウムx線透過窓

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Abstract

(57)【要約】 金属枠X線管(10)に用いるためのX線透過窓アセン
ブリ(28)は爆発溶接によって接合した2以上の金属
層からなる。好ましくはアルミニウムを含んでなるX線
透過窓(24)はその周縁部にて、通例X線管真空容器
(18)と同じ材料からなる移行層(24)に接合さ
れ、透過窓アセンブリ(28)を形成する。別の実施形
態では、多層窓アセンブリ(32)はX線透過窓(2
4)と、X線管真空容器(18)に溶接可能な移行層
(30)と、周縁放射を減衰して透過X線ビームの縁を
画定する中間層(34)とを備えてなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はX線発生装置に関す
るものであり、さらに具体的にはX線管真空容器のX線
透過窓に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】通例、X線発生装置(X線管と呼
ばれる)は円筒形真空容器内に封入された対向電極を含
んでなる。真空容器は通例ガラス管或いはステンレス鋼
や銅や銅合金のような金属製の円筒である。電極の一つ
は陰極アセンブリであり、回転円盤形陽極アセンブリの
ターゲットトラックから幾らか離れた距離に位置してい
る。陽極の衝突帯は概してタングステン又はタングステ
ン合金のような原子番号の大きい耐火金属で作られてい
る。陰極と陽極の間には典型的には80kV〜140k
Vの電圧差が印加される。高温陰極フィラメントによっ
て熱電子が放出され、電位差によって加速されて陽極の
ターゲット帯に高速で衝突する。電子の運動エネルギー
のごく一部が高エネルギー電磁波であるX線に変換する
が、残りは熱に変換される。X線は焦点からあらゆる方
向に放射される。X線ビームが所望の位置で放出される
ようにX線透過窓が真空容器に作られる。
【0003】真空容器から放出された後、X線は医療検
査や診断手続きのための人体の解剖学的構造部分のよう
な物体に当たりこれを通り抜ける。物体を透過したX線
は検出器で遮断され、内部解剖学的組織の像が形成され
る。さらに、工業用X線管は例えば金属部品の亀裂の検
査や空港での荷物の中身の検査に用い得る。
【0004】診断用X線管におけるX線の発生はその性
質上非常に非効率的なプロセスである。通例、投入電力
の1%未満しかX線に変換されず、残りは陽極で熱に変
換される。従って、X線発生装置内の部品は高温で動作
する。例えば、陽極の焦点は約2700℃もの高温にな
り、陽極の大部分は約1700℃に達する。陽極からの
過剰の熱は真空容器を通して伝達し、冷却流体によって
除去しなければならない。X線窓は焦点のごく近傍にあ
るので、X線窓は熱輻射及びターゲットからの後方散乱
電子に起因する非常に高い熱負荷を受ける。真空容器X
線透過窓に加わるこうした高い熱負荷のため、特に真空
保全性に関して、X線管の耐用年数を通して窓が確実に
無傷のまま保たれるように注意深く設計する必要が生じ
る。大きな繰返し熱応力のために窓の継手に真空漏れが
起こり、X線管の早期破壊を生じる可能性がある。
【0005】真空容器は通例循環絶縁油で満たされたケ
ーシング内に封入される。ケーシングはX線管を支持し
保護する。迷放射線を遮蔽すべくケーシングは鉛で裏打
ちされることが多い。絶縁油は二つの役目を果たしてい
る。一つは真空容器のまわりに循環することで真空容器
を冷却して熱を奪い去ることであり、次に陽極接続と陰
極接続の間の高電圧絶縁を与えることである。別法とし
て、幾つかの従来技術の装置では循環空気でX線管を冷
却することが試みられている。通例アルミニウムで作ら
れるケーシングは真空容器よりも格段に低い温度で動作
する。ケーシングは高温陽極にも後方散乱電子にも直接
暴露されないからである。
【0006】約80kV〜150kVの医療診断用エネ
ルギー域でのガラスのX線減衰は比較的低いので、ガラ
ス真空容器のX線管は通例独立したX線透過窓を含んで
いない。ガラス管は真空容器の壁を窓として用いる。し
かし、金属製真空容器(通例ステンレス鋼又は銅合金で
作られる)を有するX線管では、金属壁のX線減衰(吸
収)が非常に大きいのでX線透過窓を金属製容器の開口
部に取り付けなければならない。
【0007】X線管真空容器用のX線透過窓の選定に当
たっては数多くの特性が望ましいと考えられる。第一
に、窓材料のX線減衰係数は、最大X線束が透過するよ
うに問題とするX線エネルギー域の全域にわたって低く
なければならない。第二に、窓はX線管の高温動作環境
に耐え得るものでなければならない。第三に、窓材料は
真空容器に接合することができて大気圧及び高い熱応力
下で確かなハーメチックシールを形成するものでなけれ
ばならない。
【0008】窓は、X線出力を最大限にすべく、1mm
のオーダーの比較的薄いものであるべきである。窓自体
は一般に原子番号の小さい材料から製造されるが、これ
らの材料は本質的に低いX線減衰を有する。ここで一般
にチタン(原子番号22)よりも原子番号の大きい窓材
料は除外される。そのため、銅(原子番号29)やステ
ンレス鋼製の窓は効率的には使えない。X線管で材料を
接合するための最も一般的な方法は高温ろう付と溶接の
二つである。溶接は同種金属の接合に最も適している。
X線透過窓と真空容器には通例異なる材料が使われるの
で、それらは概して溶接には向いていない。信頼できる
真空系ろう付は一般に液相線温度が650℃よりも高い
硬ろうで実施される。従って、窓材料は高いろう付温度
に耐え得るものでなければならない。
【0009】従来技術のX線発生装置では、数多くの理
由からベリリウムが金属製X線管真空容器のX線透過窓
の材料として選ばれてきた。ベリリウムは極めて低いX
線減数係数を有しており、事実上あらゆるレベルのX線
を透過させる。ある材料の減衰係数はその材料の原子番
号に関係する。ベリリウムの原子番号は4であり、それ
自体が利用可能な最も透過性の高い材料の一つである。
また、ベリリウムは1277℃という高い融点、低い蒸
気圧及び良好な熱伝導性を有しており、そのためベリリ
ウムは真空窓の優れた材料となる。さらに、その高い融
点のため、ベリリウムは真空容器の金属壁にろう付する
ことができ、ハーメチックシールを与える。
【0010】しかし、ベリリウムには、特に製造の容易
さ、安全性及びコストに関して、幾つかの重大な短所が
ある。ベリリウムの機械加工及び処理には、ベリリウム
ダストの毒性のため、特別な予防策を要する。高温で
は、その表面にベリリウムの酸化物が形成され、適切に
扱わないと環境中に離散してしまうおそれがある。ベリ
リウムは幾分脆い材料でもあり、そのため複雑な形状に
制作するのが難しい。さらに、ベリリウムは非常に低い
減衰係数を有するので、診断用X線だけでなく低エネル
ギーX線も透過する。多くの事例では、低エネルギーX
線は患者に対する線量を単に増すだけなので、追加のフ
ィルターによってさらに減衰させる必要が生じる。通
例、ベリリウム窓を用いた場合、低エネルギーX線を遮
断するためX線管の下流に別のX線フィルターを加えな
ければならない。このように、ベリリウムはX線透過窓
として数多くの重大な欠点を有する。
【0011】従来技術で用いられてきたもう一つの透過
窓材料はチタンである。チタンの減衰係数はベリリウム
よりも格段に大きく、そのため、同程度のX線透過率を
与えるにはチタン窓を非常に薄くしなければならない。
チタン窓の相対的な薄さは構造的な問題を生じ、窓に加
わる大気圧による力のため窓の大きさが制限される。さ
らに、チタンの熱的性質はベリリウムに比べると格段に
劣る。チタンの不十分な熱的性質のため窓温度及び熱応
力が非常に高くなる。従って、チタンもX線透過窓とし
ては数多くの重大な欠点をもつ。
【0012】アルミニウム製透過窓がX線管ケーシング
の窓又はイメージインテンシファイア用の窓等のX線用
途に利用されているが、一般にX線管真空容器の高温・
高応力環境下では利用されていない。例えば、米国特許
第4045699号、同第4153854号及び同第4
763042号には、放射線イメージインテンシファイ
アに利用されるアルミニウム製X線透過窓が開示されて
いる。放射線イメージインテンシファイアは、放射線に
暴露された物体の輝度増強像を与えるため放射線を電子
に変換する電子部品を含んでなる真空容器である。イメ
ージインテンシファイアは、高温ではその精密な電子部
品が損傷したり動作不良を起こしかねないので、通例室
温付近で動作する。さらに、イメージインテンシファイ
アは非常に大きな機械的及び熱作用応力には付されな
い。従って、イメージインテンシファイアにおける透過
窓の環境はX線管真空容器の透過窓とは著しく異なる。
【0013】イメージインテンシファイア用の二層X線
透過窓が米国特許第4054699号に開示されてい
る。一層はX線透過部を含んでなる軽金属からなり、第
二層はイメージインテンシファイアの金属フレームに溶
接可能な移行部を含んでなる重金属で形成される。軽金
属材料として具体的に記載された材料はアルミニウムと
チタンであり、重金属材料は銅又は鉄である。この積層
材料は2つの材料を高圧下で圧延することにより商業プ
ロセスで形成される。このタイプの接合プロセスはイメ
ージインテンシファイアのような低温で動作する真空容
器には適している。しかし、このタイプの継手はX線管
真空容器の高温・高応力環境では信頼性の高い長期シー
ルは形成しない。アルミニウム−銅及びアルミニウム−
鉄継手は金属間化合物層を形成し易いが、かかる金属間
化合物層は継手を脆くするとともに真空シールの保全性
を特にX線管真空容器の激しい熱サイクルに付されたと
き低下させる。さらに、米国特許第4045699号と
同一人に譲渡された米国特許第4153854号で指摘
されている通り、高圧圧延で形成された二層シートは質
の均一性に欠けるとともに特に二層間での均一なガス透
過密着性をもたないので不都合である。加えて、二層化
窓はX線管真空容器の高応力・高温環境ではなくて放射
線イメージインテンシファイアの比較的穏やかな低温環
境で使用することを意図したものであった。米国特許第
4045699号に開示された二層窓間の真空シールの
信頼性はそれだけではX線管真空容器に使用するには不
十分である。
【0014】そこで、金属X線管真空容器において上述
の課題が解決されるX線減衰率の低いX線透過窓に対す
るニーズが存在する。
【0015】
【発明の概要】本発明の一つの態様では、X線管真空容
器用のX線透過窓アセンブリは、診断用X線を効率的に
透過させる十分に低いX線減衰係数を有するとともにX
線管真空容器の動作環境において十分な構造支持と真空
封止能力をもたらす無毒性延性透過窓を備えてなる。好
ましくは、透過窓はアルミニウム又はアルミニウム合金
を含んでなる。さらに、窓アセンブリは透過窓と真空封
止継手を形成する移行層をさらに備えてなり、該継手は
爆発溶接によって形成される。移行層はステンレス鋼、
銅、チタン、モリブデン、ニッケル及びそれらの合金か
らなる群から選択される材料を含んでなる。加えて、移
行層材料は窓アセンブリの中央部から除去されて、透過
窓の周縁にフレームを形成する。
【0016】本発明のもう一つの態様では、窓アセンブ
リは、透過窓と移行層の間の高温での脆性金属中間層の
形成を防ぐ拡散障壁をもたらすと同時にX線を減衰する
ための中間層をさらに備えていてもよい。この窓アセン
ブリは、透過窓と中間層と移行層の間に爆発溶接によっ
て形成された真空封止継手を含んでいる。この態様にお
いて、移行層と中間層は共に窓アセンブリの中央部から
除去されて、透過窓の周縁にフレームを形成する。中間
層は、タングステン、タンタル、モリブデン、チタン、
銅及びそれらの合金からなる群から選択される材料を含
んでなるものとし得る。
【0017】本発明のもう一つの態様では、X線発生装
置は、X線管真空容器と、診断用X線を効率的に透過さ
せる十分に低いX線減衰係数を有するとともにX線管真
空容器の動作環境において十分な構造支持と真空封止能
力をもたらす無毒性延性透過窓を備えてなるX線透過窓
アセンブリとを備えてなる。上記と同様に、透過窓はア
ルミニウム又はアルミニウム合金を含んでなるものとし
得る。さらに、この透過窓アセンブリは、透過窓と好ま
しくは爆発溶接によって形成される真空封止継手を形成
する移行層をさらに備えてなる。移行層はステンレス
鋼、銅、チタン、タングステン、モリブデン、ニッケル
及びそれらの合金からなる群から選択される材料を含ん
でなる。また、移行層材料は透過窓の周縁にフレームを
形成する。
【0018】さらに、上記装置は、X線を減衰するため
の中間層をさらに備えていてもよく、爆発溶接した真空
封止継手が透過窓と中間層と移行層の間に形成される。
移行層と中間層は透過窓の周縁にフレームを形成する。
中間層は、タングステン、タンタル、モリブデン、チタ
ン、銅及びそれらの合金からなる群から選択される材料
を含んでなる。
【0019】
【発明の詳しい説明】本発明の一つの態様では、X線管
真空容器用のX線透過窓は、比較的安価で診断用X線を
効率的に透過させる十分に低いX線減衰係数を有する無
毒性延性材料を含んでなる。本発明のX線透過窓は好ま
しくはアルミニウム又はアルミニウム合金を含んでな
る。さらに、このX線透過窓はX線管真空容器の動作環
境において十分な構造支持と真空封止能力をもたらす。
X線透過材は爆発溶接として知られるプロセスによって
別の材料からなる1又はそれ以上の追加層に適切に接合
される。爆発溶接は極めて高い圧力の下で異種金属を接
合するための固相金属プロセスである。爆薬を制御した
やり方で爆轟して1又はそれ以上の金属板を押しつけて
非常に強力で信頼性の高い超高真空継手が生ずるように
する。
【0020】本発明のもう一つの態様では、X線透過窓
アセンブリは、伝統的な溶接技術を用いての真空容器へ
の窓の接合を容易にするための移行層をさらに備えてな
る。移行層は好ましくは窓の周縁に形成され、窓を真空
容器に接合して真空容器内部の真空圧に耐えるのに十分
な継手を形成する。さらに、窓と継手は真空容器を通し
て窓と継手に加わる荷重に耐える十分な構造支持を与え
る。移行層は有益には爆発溶接によってX線透過窓材料
に接合され、次いで真空容器に慣用法で溶接されて真空
継手を形成する。移行層は通例真空容器に対する十分な
溶接能力を与える材料を含んでなる。例えば、アルミニ
ウム製X線透過窓とステンレス鋼製真空容器について
は、移行材料は好ましくはステンレス鋼である。アルミ
ニウム製窓と銅製真空容器では、移行層は好ましくは銅
である。
【0021】好適なX線透過窓材料は、問題とするX線
エネルギー域での低い減衰性、高い熱伝導率、高温での
高い耐力、低い蒸気圧、低毒性を有し、しかも製造の容
易なものである。アルミニウム及びその合金がこれらす
べての点で優れた材料である。診断エネルギー域におけ
るアルミニウムの透過性はベリリウムのそれに非常に近
い。例えば、1.5mm厚アルミニウム窓についての7
5kVから120kVまでの積分強度は同じ厚さのベリ
リウム窓で透過される強度の96%である。アルミニウ
ムの熱伝導性は高温においてベリリウムよりも優れてお
り、熱を効率的に伝えて除去することができる。アルミ
ニウム及びその普通の合金はおよそ630℃の融点を有
しており、X線管真空容器の動作環境に耐えることがで
きる。焼きなましアルミニウムの降伏強さは約6000
psiである。この強さは大気圧及び熱負荷による機械
的応力に耐えるのに十分である。さらに、アルミニウム
は延性で無毒性の材料であり、容易かつ安価に製造され
る。アルミニウムの蒸気圧はX線管動作温度においてベ
リリウムと同等である。
【0022】さらに、本発明のアルミニウム製透過窓は
好都合なことに診断用X線を効率的に透過させるに十分
な低いX線減衰係数を有するが、一方で、同程度の厚さ
のベリリウム製窓に比べて低エネルギー側の非診断用X
線を阻止する率が大きい。有用なX線の定義は用途に応
じて異なる。例えば、コンピューター断層撮影用途で
は、有用な診断用エネルギー域は約80keV〜140
keVである。電子ボルト(eV)はエネルギーの単位
であり、真空中で電子が1ボルトの電位差を通して加速
されたときに電子によって獲得されるエネルギーに等し
い。80keV未満のX線は画像生成には用いられない
が、患者の受ける放射線量には寄与するのでかかるレベ
ルの放射線への被爆はできれば避けるべきである。本発
明の透過窓は好ましくは同じ厚さのベリリウムに比べて
80keV未満のX線の透過を阻止する率が大きい。
【0023】本発明では、アルミニウム製窓材料を移行
層材料に接合するのに爆発溶接を有益に利用し、移行層
材料は伝統的な方法で真空容器に溶接される。この構成
は信頼性のある真空シールを生じ、他の金属へのアルミ
ニウムの接合に付随した従来の問題が解決される。ステ
ンレス鋼又は銅製真空容器へのアルミニウム製窓の接合
は数多くの理由のため問題であった。アルミニウムと真
空容器の異種金属との間では適当な溶接継手は容易には
作ることができない。また、アルミニウムの表面には硬
ろうの濡れを阻害する自然酸化層が存在するので、適当
なろう接継手を作るのが困難である。さらに、ろう付プ
ロセスの高温でアルミニウム及びその合金(通例約60
0〜650℃の範囲に融点をもつ)が融解するであろ
う。この融点に係る制約は重要である。X線管の真空環
境で十分な性能を発揮する液相線温度約650℃未満の
ろう付材は仮にあったとしても少数だからである。さら
に、伝統的な溶接及びろう付は接合した材料間に平坦で
平面的な界面を生ずる。しかし、爆発溶接は2つの材料
間に波状の絡み合った界面を形成する。この波状の絡み
合った界面は材料を一つに接合するための表面積を大き
くし、その結果、より強固でより信頼性の高い結合が生
じる。このように本発明では移行層に爆発溶接した透過
窓を提供することにより、他の金属へのアルミニウムの
接合に伴う伝統的な問題を解決する。
【0024】さらに別の態様において、本発明は、動作
中のX線管真空容器環境又は動作前の装置の高温排気処
理のような高温に継手を付したときに起こるアルミニウ
ム−銅継手又はアルミニウム−ステンレス鋼継手間での
拡散及び脆性金属間化合物の形成という伝統的問題を解
決する。本発明では、高温でのアルミニウムと移行層と
の継手中での脆性金属間化合物の形成を防ぐ拡散障壁と
して機能する第三の材料、すなわち中間層をアルミニウ
ム製窓と移行層材料の間に配設するのが有益である。こ
の中間層は透過窓領域の周縁部の外でX線を効率的に減
衰するためのアパーチャー又はマスクとして作用すると
いう追加の利点を有する。このアパーチャー/マスク
は、焦点の外れた放射線及び周縁放射線の透過を阻止し
てX線管真空容器から放出されるX線ビームの形を画定
するのに役立つ。これにより、画像の質が向上し、患者
又は物体の受ける非イメージングX線線量が低減する。
このアパーチャー/マスクは好ましくはタンタルである
が、タングステン、モリブデン、チタン及びこれらの合
金或いはその他同種の材料で高エネルギーX線を減衰し
アルミニウムと移行材料の間に拡散障壁を与えるもので
もよい。
【0025】図1を参照すると、典型的なX線発生装置
10はX線管真空容器18における真空室16内に陰極
アセンブリ12と回転円盤形陽極アセンブリ14を備え
てなる。陰極アセンブリ12と陽極アセンブリ14を接
続する電気回路を付勢すると、電子の流れ20が陽極ア
センブリ14に向かって加速される。電子の流れ20は
陽極アセンブリ14の表面に衝突して高振動数電磁波す
なわちX線22を生じる。X線22は真空室16を通
り、透過窓24を通して真空容器18を出る。透過窓2
4と真空容器18は継手26で接合しており、継手26
は真空室16の真空保全性を確保するためのシールを提
供する。
【0026】真空容器18は、高温環境において真空室
16及び回転陽極アセンブリ14によって発生する荷重
を構造的に取り扱うことのできる材料で構成される。真
空容器18は好ましくはステンレス鋼であるが、銅、ニ
ッケル、モリブデン、これらの合金又はその他同様の金
属であってもよく、周知の製造法を用いて作られる。真
空容器18はX線発生装置10環境の高温に耐え得るも
のでなければならない。例えば、陽極14は約500〜
2700℃で動作し、陰極12は約600℃に達し、真
空容器18は約300℃に達する温度で動作する。真空
容器18は真空室16内の動作温度によるほか、真空室
16内でのX線22、散乱電子及び赤外(熱)線の吸収
によっても加熱される。
【0027】図2〜5を参照すると、本発明の一つの実
施形態では、X線管真空容器18における二層窓アセン
ブリ28は移行層30に爆発溶接したアルミニウム又は
アルミニウム合金製透過窓24を備えてなる。移行層3
0の材料はアセンブリ28の中央部から取り除かれ、X
線透過窓24をもたらす。アセンブリ28の周縁では、
真空容器18に溶接可能な移行層30材料の適当な溶接
フランジ30aを残して窓24の材料が取り除かれる。
爆発溶接プロセスで形成された窓24と移行層30の間
の継手31は高温・高応力環境において高い信頼性をも
つ真空継手である。移行層30は好ましくはステンレス
鋼からなるが、タングステン、チタン、銅、モリブデ
ン、ニッケル、これらの合金及びその他同様に真空容器
18に容易に溶接可能な金属であってもよい。
【0028】窓アセンブリ28は一回の爆発プロセスで
透過窓24の材料のシートを移行層30のシートに爆発
溶接することによって形成される。得られた積層パネル
を次にフライス削りのような慣用法を用いて機械加工し
て、パネルの中央部から移行層を取り除く。同様に、パ
ネルの縁から窓材料を機械加工で取り去って、溶接フラ
ンジ30aを露出させる。このようにして移行層30
は、透過窓24の周りに、窓24の縁の外に延在する周
縁フレームを形成して、窓アセンブリ28を形成する。
この窓アセンブリを形成する材料の組み合わせは典型的
なベリリウム窓のように脆くはないので、窓アセンブリ
28はどんな所要の曲率にも成形できる。最後に、溶接
フランジ30aを真空容器18に慣用法で溶接して継手
26を形成する。溶接フランジ30aは、アーク溶接、
電子ビーム溶接、トーチ溶接、レーザー溶接等の慣用法
を用いて真空容器18に接合し得る。そこで、窓アセン
ブリ28は真空封止継手31及び26の組み合わせで真
空室18を封止するが、継手31は透過窓24と移行層
30の間で爆発溶接により形成され、継手26は移行層
30とX線管真空容器18の間で慣用的な溶接により形
成される。
【0029】上述の通り、窓24、移行層30及び真空
容器18に使う材料には多数の組み合わせが可能であ
る。そうした二層窓アセンブリ28用の組み合わせの若
干の具体例には以下のものがある。
【0030】
【表1】
【0031】上記の材料或いはその他同様の材料の如何
なる組み合わせも本発明に利用し得る。
【0032】図6を参照すると、本発明の別の実施形態
では、X線管真空容器における多層窓アセンブリ32は
中間層34と移行層30の双方に爆発溶接した窓24を
備えてなる。窓24及び移行層30は上記で説明したも
のと同じ材料を含んでなるが、中間層34は好ましくは
中間層がX線の通過を阻止するように比較的高いX線減
衰係数を有する材料を含んでなる。その結果、中間層3
4はX線管真空容器から出るX線を集束するのに役立
つ。中間層は好ましくはタングステンであるが、タンタ
ル、モリブデン、チタン、銅、これらの合金、その他同
様の材料も利用し得る。
【0033】多層窓アセンブリ32は、上述の二層窓ア
センブリ28と同様にして形成される。ただし、爆発溶
接プロセスでは、信頼性のある高温・高応力真空継手3
1を形成すべく、中間層34用材料のシートを窓24と
移行層30の間に挿入、結合する。中間層34の材料は
多層窓アセンブリ32の中央部及び周縁部から上述のプ
ロセスと同様にして取り除かれる。窓アセンブリ32は
溶接フランジ30aにて真空容器18に慣用法で溶接さ
れ、真空継手26を形成する。その結果、中間層34
は、焦点の外れた放射線及び周縁放射線の透過を阻止し
てX線管真空容器18から出るX線ビームの形状を画定
するアパーチャー/マスクとして機能する。これによ
り、画像の質が向上するとともに、患者の受ける非イメ
ージングX線線量が低減する。加えて、透過窓24と移
行層30の間に配置される中間層34は、高温での透過
窓と移行層の間の継手における脆性金属間化合物の形成
を防ぐ拡散障壁として機能する。
【0034】図7を参照すると、本発明の別の実施形態
には、窓124に対するカットアウトを形成するインサ
ート140を有する真空容器118を備えてなるX線発
生装置110が包含される。インサート140はろう
付、溶接その他の慣用手段によって真空容器118に接
合し得る。インサート140の好適な材料には、移行層
30について上記で列挙したものと同じ材料が含まれる
ほか、その他容器118と接合して真空シールを形成し
得る材料も含まれる。窓124は移行層130に爆発溶
接されて二層窓アセンブリ128を形成する。インサー
ト140は、以前にベリリウム窓を装着していた真空容
器のような真空容器118の窓アセンブリ128を改装
するときに望ましいことがある。窓アセンブリ128と
インサート140の組み合わせは互いに信頼性のある真
空シールを形成するだけでなく、真空容器118とも信
頼性のある真空シールを形成する。
【0035】図8を参照すると、本発明のまた別の実施
形態には、窓224に対するカットアウトを形成するイ
ンサート240を有する真空容器218を備えてなるX
線発生装置210が包含される。インサート240はろ
う付、溶接その他の慣用手段によって真空容器218に
接合し得る。インサート240の好適な材料には、移行
層30について上記で列挙したものと同じ材料が含まれ
るほか、その他容器218と接合して真空シールを形成
し得る材料も含まれる。窓224は中間層234及び移
行層230に爆発溶接されて多層窓アセンブリ228を
形成する。中間層234は上記で説明した中間層に類似
のものであり、焦点の外れた放射線に対するフィルター
及び脆性金属間化合物の形成を防ぐ拡散障壁を与える。
インサート240は、以前にベリリウム窓を装着してい
た真空容器のような真空容器218の窓アセンブリ22
8を改装するときに望ましいことがある。窓アセンブリ
228とインサート240の組み合わせは互いに信頼性
のある真空シールを形成するだけでなく、真空容器21
8とも信頼性のある真空シールを形成する。
【0036】図9a〜9bを参照すると、本発明は通例
X線装置40に利用される。典型的なX線装置40は、
油ポンプ42、陽極端部44、陰極端部46、及び陽極
端部と陰極端部の間に位置していて図1のX線発生装置
すなわちX線管10を収容する中央セクション48を備
えてなる。X線発生装置10は、鉛裏打ちケーシング5
2内部の流体室50に封入されている(図9b)。室5
0は通例絶縁油のような流体68で満たされているが、
空気を始めとするその他の流体も利用し得る。流体68
は、X線発生装置を冷却するとともにケーシング52を
真空容器18内の高電荷から絶縁するために、装置40
内を循環する。流体68を冷却するためのラジエーター
54が中央セクションの片側に配設されているが、ラジ
エーター内を高温油が循環する際にラジエーターに冷却
空気流を通すべくラジエーター54と機能的に接続した
ファン56及び58を有していてもよい。油ポンプ42
は油を装置42及びラジエーター54等に循環するため
に配設される。装置40を付勢するため、陽極レセプタ
クル60及び陰極レセプタクルに電気的接続が配設され
る(図9b)。
【0037】図9bを参照すると、X線装置40は、好
ましくはアルミニウムでできていて、X線の通過を遮蔽
するための鉛で裏打ちされたケーシング52を備えてな
る。装置40内のX線発生装置もしくはX線管10は図
1に関して上記で説明した通りである。上述の通り、X
線発生装置10には非常に高い電圧及び電流が利用さ
れ、電圧は約80kV〜150kVの範囲であり、電流
は約250〜550mAの範囲である。真空容器18外
側で鉛裏打ちケーシング52の内部には固定子が回転円
盤形ターゲット陽極14に対して配置されている。装置
40から物体(上述した通り)に向けてX線を放射する
窓66がケーシング52に、真空容器18の透過窓24
に対して機能的に形成されている。
【0038】ケーシング52は主に室50内部に循環流
体68を収容しており、発生したX線52を窓64以外
のすべての領域で遮断し、かつX線発生装置10を収納
する。ケーシング52は真空容器18に付随しているよ
うな高温及び真空圧には付されない。
【0039】要約すると、本発明の爆発溶接アルミニウ
ム製透過窓の利点としては、ベリリウムよりも安価であ
ること、特に予防策を講じなくても容易に機械加工、曲
げ加工、圧延及び成形できること、処分に特別の条件を
要しないこと、無害な材料であること、爆発溶接が非常
に高い強度及び真空保全性をもつこと、並びに一体マス
ク/アパーチャーがビーム形状を規定するとともに焦点
の外れたX線の透過を阻止することがある。中間層は、
また、X線透過窓材料と移行層の継手における脆性金属
間化合物の形成を防ぐ。
【0040】ステンレス鋼にろう付したベリリウムのよ
うな従来技術の真空継手は、これら2つの材料間の熱膨
張率の不一致による破壊を起こしやすい。爆発溶接は材
料を完全に一体化して接合する一体継手を生じるので、
本発明の継手はステンレス鋼とベリリウムのろう接継手
よりも堅固である。爆発で生じた継手は母材よりも強い
ことが多い。さらに、真空容器と移行層の間の溶接は、
特にステンレス鋼/ステンレス鋼及び銅/銅等の移行層
/真空容器の組み合わせのように2つの同じ材料を用い
た場合、ベリリウムとステンレス鋼のろう付けよりも堅
固である。
【0041】本発明のまた別の有益な特徴は、アルミニ
ウム窓はベリリウム又はチタン製X線真空容器窓よりも
一段と容易に機械加工及び成形されることである。ベリ
リウムは余りに脆いので、多くの従来技術のX線管真空
容器は平らなベリリウム窓が使用できるように機械加工
された平坦領域を有していた。しかし、本発明では、特
に窓用の平坦領域を機械加工しなくても、真空容器の輪
郭と調和するようにアルミニウム窓を容易に成形するこ
とができ、かくして全体的経済性が改善される。
【0042】加えて、アルミニウムは空気に暴露される
と無毒性の安定な酸化物層を形成する。一方、空気に暴
露されたベリリウム窓には特に高温で酸化ベリリウムが
形成される。酸化ベリリウムは非常に毒性が高く、吸入
すると危険である。この問題を避けるため、高温で空気
に暴露される用途にベリリウムを使うときは、空気から
ベリリウムを封止しておくためベリリウムを被覆しなけ
ればならない。X線管真空容器で冷却用空気を利用する
場合には、このことで製品に余計な懸念と生産コストが
加わる。そこで、本発明のアルミニウム製透過窓は好都
合にも、健康及び環境問題についての特段の加工処理も
心配も伴わずに、空気に暴露することができる。
【0043】最後に、本発明のアルミニウム製透過窓は
好都合にも低エネルギーX線を透過しない。図10を参
照すると、グラフは各種材料の1.5mm厚の窓につい
て様々なエネルギーレベルでの相対的X線透過性を表
す。低エネルギー側では、アルミニウムはベリリウムよ
りも格段に透過性が低い。ただし、診断用エネルギーレ
ベルでは、アルミニウムはベリリウムの約96%程の透
過性である。このように、本発明のアルミニウム製透過
窓は好都合なことに、ベリリウム窓を用いたときに往々
にして必要とされるような低エネルギーX線を遮断する
ための余計な下流フィルターを必要としない。
【0044】本発明をその好ましい実施形態に関して説
明してきたが、その他の実施形態でも同じ結果を得るこ
とができる。本発明の様々な変更及び修正は当業者には
自明であり、特許請求の範囲はかかる修正及び均等すべ
てをカバーするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は本発明のX線発生装置の部分断面側面
図である。
【図2】 図2はその下面図である。
【図3】 図3はX線発生装置内側からみた真空容器及
び透過窓の部分平面図である。
【図4】 図4は図3の線4−4に沿ったX線透過窓の
断面図である。
【図5】 図5はX線発生装置外側からみた真空容器及
び透過窓の部分平面図である。
【図6】 図6はX線透過窓の一つの好ましい実施形態
の図4と同様の断面図である。
【図7】 図7はX線発生装置用透過窓のさらに別の実
施形態の図4及び図6と同様の断面図である。
【図8】 図8はX線発生装置用透過窓の別の実施形態
の図7と同様の断面図である。
【図9】 図9aはX線発生装置又はその内部に設置さ
れたX線管を有する代表的なX線装置の平面図である。
図9bは図9aのX線装置から取り外したX線発生装置
を含む部品の断面図である。
【図10】 図10は、ベリリウム(Be)、炭素グラ
ファイト(C)、アルミニウム(Al)、チタン(T
i)、鉄(Fe)及び銅(Cu)の1.5mm厚窓の相
対的X線透過率を示すグラフであり、窓の透過性の相対
的な強度を縦軸に、千電子ボルト単位で表すエネルギー
を横軸に示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 チャールズ・ビー・ケンドール アメリカ合衆国、ウィスコンシン州、ブル クフィールド、ウィロウ・リッジ・レー ン、16825番

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 診断用X線を効率的に透過させる十分に
    低いX線減衰係数を有するとともにX線管真空容器(1
    8)の動作環境に耐え得る真空封止能力を有する無毒性
    延性透過窓(24)を備えてなる、X線管真空容器(1
    8)用のX線透過窓アセンブリ(28)。
  2. 【請求項2】 前記透過窓(24)がアルミニウムを含
    んでなる、請求項1記載のX線透過窓アセンブリ(2
    8)。
  3. 【請求項3】 前記透過窓(24)との真空封止継手
    (31)を形成する移行層(30)をさらに備えてな
    る、請求項1又は請求項2記載のX線透過窓アセンブリ
    (28)。
  4. 【請求項4】 前記移行層(30)がステンレス鋼、
    銅、チタン、モリブデン、ニッケル及びそれらの合金か
    らなる群から選択される材料を含んでなる、請求項1又
    は請求項2又は請求項3記載のX線透過窓アセンブリ
    (28)。
  5. 【請求項5】 前記真空封止継手(31)が前記透過窓
    (24)と前記移行層(30)の間の爆発溶接によって
    形成される、請求項3又は請求項4記載のX線透過窓ア
    センブリ(28)。
  6. 【請求項6】 前記移行層(30)が前記透過窓(2
    4)の周縁にフレームを形成する、請求項3又は請求項
    4又は請求項5記載のX線透過窓アセンブリ(28)。
  7. 【請求項7】 X線減衰用中間層(34)及び移行層
    (30)をさらに備えてなり、前記透過窓(24)と該
    中間層(34)と該移行層(30)の間に真空封止継手
    (31)が形成されており、前記透過窓(24)がアル
    ミニウムを含んでなる、請求項1又は請求項4又は請求
    項5又は請求項6記載のX線透過窓アセンブリ(2
    8)。
  8. 【請求項8】 前記移行層(30)と前記中間層(3
    4)が前記透過窓(24)の周縁にフレームを形成す
    る、請求項7記載のX線透過窓アセンブリ(28)。
  9. 【請求項9】 前記移行層(30)がステンレス鋼、
    銅、チタン、タングステン、モリブデン、ニッケル及び
    それらの合金からなる群から選択される材料を含んでな
    り、かつ前記中間層(34)がタングステン、タンタ
    ル、モリブデン、チタン、銅及びそれらの合金からなる
    群から選択される材料を含んでなる、請求項7又は請求
    項8記載のX線透過窓アセンブリ(28)。
  10. 【請求項10】 前記真空封止継手(31)が前記透過
    窓(24)と前記中間層(34)と前記移行層(30)
    の間の爆発溶接によって形成される、請求項7又は請求
    項8又は請求項9記載のX線透過窓アセンブリ(2
    8)。
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