JP4532874B2 - 質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法 - Google Patents

質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法 Download PDF

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Description

本発明は、質量分析法を利用して、物質の解析を行う際、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法、ならびに、該情報記録コードから付加情報を読み出す方法に関する。
現在、工業的に生産させる製品には、当該製品を弁別する際に利用する、個別のIDが付与される。加えて、個々の製品毎に、同時に、製品に割り振られている個別のIDと同時に、様々な他の付加的な情報を製品に付記することも多い。このような付加的情報を製品に付記する目的で、広範に利用されている情報記録コードとして、バーコードが挙げられる。バーコードは、バーの太さや並び方、間隔等の情報によって、所定の文字数長の情報をコード化して、コンパクトに表記する手法であり、製品毎に手軽に付記することができる上、また、そのコード化された情報の光学的な読み出しも非常に簡単である利点を有している。そのために、バーコードは、製品毎の情報記録付与手段として、分野を超えて、広く利用されている。
しかし、このコンパクトな表記に適するバーコード技術も、それを付記したい対象がミクロな大きさになると、情報の封入、保存、読み出しは非常に困難になってくる。特に、その付記対象物が、分子レベルのサイズになる場合には、一般の製品に付与されている、光学的な読み出し方式のバーコードをそのまま応用することは、現実的にも困難となる。
なお、付記したい対象がミクロな大きさであっても、そのミクロな対象毎に、様々な情報をコンパクトな形で封入、保存し、必要なときには、簡便な手法で取り出せる形態で、対象上に付記しておくことは、情報化の時代においては、必須な要件ともなっている。
一方、現在進行しているゲノムに関する研究は、ゲノムの遺伝子情報に関して、爆発的な情報の増加を引き起こしている。それに伴い、例えば、遺伝子レベルで解明される塩基配列、それがコードする産物、蛋白質のアミノ酸配列など、ゲノムの遺伝子に付随する膨大な情報の管理が必要となっている。例えば、遺伝子の塩基配列情報は、単なる情報であるので、コンピューター上に記録して管理できるが、かかる遺伝子そのもの(特定の塩基配列を有する核酸分子)等の物理的な存在は、物理的な管理の手法と、その確認手段を必要としている。
一例として、多種類の核酸分子をプローブとして用いるDNAマイクロアレイを作製する場合を考えると、プローブに利用する、塩基配列の異なる一本鎖DNA多種類を扱う必要がある。これら一本鎖DNAは、基本的に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類塩基を有するヌクレオチドが、それぞれ異なる配列で並んでいる鎖状構造を有する分子であり、その塩基配列の違いが種類の違いに対応しているが、各種類毎に、分子が示す色や化学的性質などを測定することで、簡便に見分けることはできない。
これら一本鎖DNAをプローブとして、基板上に固定したマイクロアレイを作製する際、例えば、塩基配列がたった一つ異なるような核酸配列を有する一本鎖DNA多種類を同一のマイクロアレイ上に固定する場合もある。そのような場合、似通った塩基配列を有する一本鎖DNAを保存する多数の収納容器を同時に管理する必要があり、また、必要があれば、個々の一本鎖DNAを弁別する目的で収納容器に振られている管理番号と、各収納容器中に保存される一本鎖DNAの塩基配列が、実際に合致していることを確認する方法も必要である。
従来から、合成されたDNAを保存するエッペンドルフに、該DNA種類の特定用のバーコードを振るなどして、多数種のDNAの管理がなされているが、実際に、エッペンドルフ中に保存されているDNAの塩基配列が、そのバーコードで表示されている特定の塩基配列であるか、否かを確認するためには、実際に、DNA分子について、マトリクス援助レーザー脱着/イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)などにより解析する以外に方法がなかった。
また、複数種プローブを用いて作製されたマイクロアレイでは、各プローブは基板上の所定の位置に固定されているが、一旦作製されたマイクロアレイ上で、各プローブのIDを確認することは非常に困難であった。すなわち、プローブを一旦基板へ固定した後には、最早、該プローブを収納していたエッペンドルフに振られているIDは、弁別には使えず、基板作製の際、仮に取り違えが生じた際には、基板上で簡便に確認する方法はなかった。
本発明は前記の課題を解決するもので、本発明の目的は、例えば、4種類のヌクレオチドを構成単位として、複数個の構成単位ヌクレオチドが鎖状に連結された構造を採っている一本鎖DNA分子のように、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して、付加情報を付与して、特定の情報を簡便に読み出せる情報記録コードとして利用する方法、ならびに、質量分析法を適用して、前記鎖状分子に付与される付加情報に相当する質量変化を検出して、当該分子の鎖状構造の配列を利用して記載される情報記録コードの読み取りを行う方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明は、各構成単位は質量分析可能な原子群であり、この構成単位複数種が鎖状に連結された構造を有する鎖状分子に対して、その構成単位の連結順序(配列)自体をバーコードのような、容易に読み取り可能な情報記録コードへと変換するため、該鎖状分子自体に付加情報を付与した上で、当該分子の特定に利用可能な情報記録コードとして利用する方法を提供する。実際には、該鎖状分子自体に付加情報を付与することで、質量分析法を適用して、配列情報の解析を行う際、前記分子に付与される付加情報に相当する質量変化を検出して、情報記録コードとして利用される配列情報を容易に採取でき、同時に、簡便に情報記録コードの読み取りを行うことを可能とする方法を提供している。
実際に、DNAやRNAの核酸分子における塩基配列、ならびに蛋白質やペプチド分子におけるアミノ酸配列は、その配列自体、その分子を特定する情報を内在するコードとなっている。しかし、これら鎖状分子の配列情報を分子レベルで読み取るためには、例えば、DNAやRNAの核酸分子における塩基配列によって、どのようなアミノ酸配列がコードされているかを解析する上では、通常、細胞内で生合成される蛋白質を組み換え発現する特別な発現系と、それら組み換え発現系が効率よく作用するための環境を必要とし、また、細胞外における組み換え発現系は非常に効率が悪くなるか、全く発現がなされない場合がほとんどであった。従って、DNAやRNAの核酸分子における塩基配列は、当該核酸分子を鋳型とするcDNAを調製した上で、このcDNAの塩基配列シーケンシングを介して解析する手法が広く適用されている。一方、蛋白質やペプチド分子におけるアミノ酸配列の解析は、例えば、ペプチド鎖の一端から、逐次的にアミノ酸を解離させ、そのアミノ酸種類を分析する手法が古くから利用されていた。また、昨今では、質量分析法を用いて、ペプチド鎖から生成される、一連のペプチド断片イオンの質量を測定し、そのペプチド断片イオンの質量差に基づき、かかる質量差に相当するアミノ酸配列の差分を逐次的に特定して、そのアミノ酸配列を解明する手法の利用が進んでいる。なお、この質量分析法を利用して、断片イオンの質量差に基づき、配列を解明する手法は、ペプチド鎖だけでなく、原理的には、一本鎖の核酸分子における配列解析にも応用可能である。
例えば、核酸プローブとして利用される、塩基配列が比較的に短いオリゴ核酸分子では、当該オリゴ核酸分子を鋳型として、cDNAを多量に増幅により調製する際、一定以上の塩基長を有さない場合には、増幅用のプラーマーとの結合が困難となり、cDNAの多量増幅が達成できない場合もある。具体的には、増幅用のプラーマーは、少なくとも、十数塩基長のハイブリッド長が必要であり、鋳型とするオリゴ核酸分子が、その2倍以上の塩基長を有さない場合には、効率的な増幅を実施することが困難となる。加えて、核酸プローブ用の塩基配列が比較的に短いオリゴ核酸分子を基板上に固定して、マイクロアレイとした場合には、それを鋳型として、cDNAの多量増幅を行うことはより一層困難となる。従って、一般的なDNAシーケンシング装置を利用する塩基配列解析法は、基板上に固定された塩基配列が比較的に短いオリゴ核酸分子へ適用することは、現実的に困難であり、それに代えて、質量分析法を利用して、塩基配列情報の解析を行う手法の利用が求められている。また、ペプチド鎖をプローブとして、基板上に固定して、マイクロアレイとした場合にも、ペプチド鎖の一端から、逐次的にアミノ酸を解離させ、そのアミノ酸種類を分析する手法に代えて、質量分析法を利用して、アミノ酸配列情報の解析を行う手法の利用が求められている。
DNAやRNAの核酸分子、例えば、一本鎖DNAでは、基本的に、アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)、チミン(T)の4種類の塩基を含むヌクレオチドを構成単位とし、固有の塩基配列に従って、かかる4種の構成単位ヌクレオチドが鎖状に連結された鎖状分子であり、質量分析法を利用して、塩基配列情報の解析を行う場合には、用いる質量分析方式に応じて、該鎖状分子に断片化処理を施し、それぞれ、構成単位ヌクレオチドが整数個からなる多数種のDNA断片イオンを生成させ、これら多数種のDNA断片イオンの質量(m/Z)を測定する。測定されたDNA断片イオンの質量(m/Z)に基づき、一塩基の差異を有するDNA断片イオン二種を特定し、両者の質量(m/Z)の差に相当するヌクレオチドの種類を決定する。その場合、一本鎖DNAは、4種の構成単位ヌクレオチドで構成されており、配列位置が全く異なる部位に相当するDNA断片が、同一の質量(m/Z)を示す確率は無視できず、塩基配列情報の解析において、混同を引き起こす要因となっている。具体的には、一本鎖DNAの末端から数塩基長の部分塩基配列を解明しようとする際、一本鎖DNAの中央部に由来するDNA断片と、末端部に由来するDNA断片とが、配列(順序)は異なるものの、同一の質量(m/Z)を示すと、両者を簡便に弁別する術がなく、塩基配列情報の解析を進める上で、大きな障害となる。ペプチド鎖の構成に関与する天然のアミノ酸は、20種存在するため、全く異なる部位から生成する複数のペプチド断片が、偶々、配列(順序)は異なるものの、同一の質量(m/Z)を示す確率は大幅に低くなるものの、本質的には同じ課題を残している。
本発明では、かかる技術的な問題点を解決して、DNAやRNAなどの核酸分子、蛋白質やペプチド分子のように、質量分析可能な原子群の複数種を構成単位とする鎖状構造を有する分子において、質量分析法を用いて、その構成単位の連結順序(配列)をより簡単に決定することを可能とするため、鎖状分子に付加的な情報を付与して、この付加情報を利用して、鎖状分子自体の配列情報をより容易に解析可能(読み取り可能)とすることで、この付加情報を付した鎖状分子を、簡便に読み出し可能な情報記録コードとして利用している。この付加情報の付与法として、本発明では、鎖状分子の配列途中の決まった位置における構成単位を、その本来の構成単位とは異なる質量(m/Z)を示す、異種の原子群単位で置き換える、あるいは、鎖状分子の末端に、その構成単位とは異なる質量(m/Z)を示す、異種の原子群単位を付加して、この異種の原子群単位を配列位置の基準点を示す標識とする手段を利用している。鎖状分子を断片化した際、多種の断片が生成するものの、この標識を含む断片は、標識に利用する異種の原子群単位は、本来の構成単位とは異なる質量(m/Z)を示すことを利用して、他の断片と容易に弁別が可能となる。例えば、鎖状分子の末端に標識を配置すると、この標識を含み、含まれる構成単位数が異なる一連の断片イオンの質量(m/Z)を、質量(m/Z)の増加する順に並べると、その質量(m/Z)の差分は、一連の断片イオンにおいて、増加する構成単位を示すものと、一義的に解釈できる。その結果、この標識が付されている末端から、鎖状分子を構成している構成単位の種類を逐次的に決定でき、一連の配列情報を容易に読み取ることが可能となる。この質量分析によって解析される、付加的情報として付与される、標識として利用される異種の原子群単位の種類と存在位置、それに続く、鎖状分子自体の一連の配列情報を一体として、情報記録コードとして利用すると、質量分析法を利用して、容易に読み取り可能なコード化情報となる。本発明は、以上に説明する知見に基づき、完成に至ったものである。
すなわち、本発明の第一の形態にかかる、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法は、
質量区分可能な原子群複数種を構成単位として、該構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造を有する鎖状分子を情報記録コードとして利用する方法であって、
前記鎖状分子は、その一端には、前記構成単位である質量区分可能な原子群複数種に対して、質量区分可能な標識用原子または原子群の単位を、前記構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造に連結してなる形態を有し、
(工程1) 前記標識用原子または原子群の単位を、前記構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造に連結してなる形態に、該鎖状分子を調製する工程;
(工程2) 質量分析法によって、前記鎖状分子より生成する、前記標識用原子または原子群の単位と、それと連結される前記構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造の部分配列とからなる断片イオンであって、前記部分配列の構成単位数が種々に異なる一群の断片イオンの分子量を測定する工程;
(工程3) 前記測定工程において、分子量の測定がなされる、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる断片イオンの一群において、
一群の断片イオンの分子量を、その分子量の増加する順に整列させて、
前記部分配列として、前記構成単位を一個含み、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる、第1の断片イオンの分子量を特定し、前記一個の構成単位の種類を決定し、前記鎖状分子における、前記鎖状構造を構成する配列の一端より第1番目の構成単位の種類とし、
前記部分配列として、前記構成単位を二個含み、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる、第2の断片イオンの分子量を特定し、前記第1の断片イオンと第2の断片イオンとの分子量差を算出し、前記鎖状分子における、前記鎖状構造を構成する配列の一端より第2番目の構成単位の種類を決定し、
以降同じ手順に従って、その分子量の増加する順に整列される、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる断片イオンの一群から、前記部分配列として、前記構成単位をn個含み、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる、第nの断片イオンの分子量を特定し、第(n−1)の断片イオンと第nの断片イオンとの分子量差を算出し、前記鎖状分子における、前記鎖状構造を構成する配列の一端より第n番目の構成単位の種類を決定する操作を繰り返し、
前記標識用原子または原子群の単位の存在位置を基準として、前記鎖状構造を構成する配列の一端より、順次、その構成単位の種類の配列情報を読み取る工程;
少なくとも、上記工程1〜工程3とを有し、
前記標識用原子または原子群の単位の種類、ならびに、その存在位置を基準として、順次読み採ることの可能な、前記鎖状構造の一端から続く構成単位の種類の配列とを、情報を記録コードとすることを特徴とする、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法である。
その際、前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、4種類のヌクレオシドA,T,G,Cのいずれかを含んでなり、該ヌクレオシドの種類に伴う分子量差を示すものとすることができる。
あるいは、
前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、4種類のヌクレオシドA,T,G,Cのいずれかを含んでなる天然型のヌクレオチドに加えて、あるいは、代えて、少なくとも、非天然型のヌクレオチドの1種類を含むこともできる。
また、前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、アミノ酸であってもよく、さらには、前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、糖鎖であってもよい。
一方、本発明の第一の形態においては、前記質量区分可能な標識用原子または原子群の単位は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかのハロゲン原子を含むことができる。
さらには、前記質量分析法として、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いることを、本発明の第一の形態にかかる方法の特徴の一つとできる。
また、本発明の第二の形態にかかる、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法も、
質量区分可能な原子群複数種を構成単位として、該構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造を有する鎖状分子を情報記録コードとして利用する方法であって、
前記鎖状分子は、その一端には、前記構成単位である質量区分可能な原子群複数種に対して、質量区分可能な標識用原子または原子群の単位を、前記構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造に連結してなる形態を有し、かつ
光照射によって供給されるエネルギーによって、前記鎖状構造部中において、分断を受け、イオン化された断片イオンの生成が可能であって、
(工程1) 前記標識用原子または原子群の単位を、前記構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造に連結してなる形態に、該鎖状分子を調製する工程;
(工程2) 光照射によって供給されるエネルギーによって、前記鎖状分子より生成する、前記標識用原子または原子群の単位と、それと連結される前記構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造の部分配列とからなる断片イオンであって、前記部分配列の構成単位数が種々に異なる一群の断片イオンの分子量を質量分析法によって測定する工程;
(工程3) 前記測定工程において、分子量の測定がなされる、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる断片イオンの一群において、
一群の断片イオンの分子量を、その分子量の増加する順に整列させて、
前記部分配列として、前記構成単位を一個含み、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる、第1の断片イオンの分子量を特定し、前記一個の構成単位の種類を決定し、前記鎖状分子における、前記鎖状構造を構成する配列の一端より第1番目の構成単位の種類とし、
前記部分配列として、前記構成単位を二個含み、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる、第2の断片イオンの分子量を特定し、前記第1の断片イオンと第2の断片イオンとの分子量差を算出し、前記鎖状分子における、前記鎖状構造を構成する配列の一端より第2番目の構成単位の種類を決定し、
以降同じ手順に従って、その分子量の増加する順に整列される、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる断片イオンの一群から、前記部分配列として、前記構成単位をn個含み、前記標識用原子または原子群の単位と前記部分配列とからなる、第nの断片イオンの分子量を特定し、第(n−1)の断片イオンと第nの断片イオンとの分子量差を算出し、前記鎖状分子における、前記鎖状構造を構成する配列の一端より第n番目の構成単位の種類を決定する操作を繰り返し、
前記標識用原子または原子群の単位の存在位置を基準として、前記鎖状構造を構成する配列の一端より、順次、その構成単位の種類の配列情報を読み取る工程;
少なくとも、上記工程1〜工程3とを有し、
前記標識用原子または原子群の単位の種類、ならびに、その存在位置を基準として、順次読み採ることの可能な、前記鎖状構造の一端から続く構成単位の種類の配列とを、情報を記録コードとすることを特徴とする、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法である。
その際、前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、4種類のヌクレオシドA,T,G,Cのいずれかを含んでなり、該ヌクレオシドの種類に伴う分子量差を示すものとすることができる。
あるいは、
前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、4種類のヌクレオシドA,T,G,Cのいずれかを含んでなる天然型のヌクレオチドに加えて、あるいは、代えて、少なくとも、非天然型のヌクレオチドの1種類を含むこともできる。
また、前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、アミノ酸であってもよく、さらには、前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、糖鎖であってもよい。
一方、本発明の第二の形態においても、前記質量区分可能な標識用原子または原子群の単位は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかのハロゲン原子を含むことができる。
さらには、前記光照射によって供給されるエネルギーによって生成される断片イオンの質量分析法として、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)を用いることを、本発明の第二の形態にかかる方法の特徴の一つとできる。
加えて、本発明の第三の形態においては、上述する本発明にかかる第一の形態、または第二の形態にかかる、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法を適用して、情報記録コードを付与されたマイクロアレイの発明が提供され、
すなわち、本発明の第三の形態にかかるマイクロアレイは、
上記本発明にかかる第一の形態、または第二の形態にかかる、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法を適用して、情報記録コードを付与されたマイクロアレイであって、
該マイクロアレイは、プローブを担体基板上に固定してなる構成を有し、
前記付加情報を付与した質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に、該マイクロアレイにおける必要な情報を付して、前記プローブに少量混合して、プローブとともに、前記担体基板上に固定し、
必要に応じて、質量分析法を用いて、担体基板上に固定される、前記鎖状構造を有する分子を測定して、情報記録コードの読み取りを可能とすることを特徴とする、マイクロアレイである。
その際、前記鎖状構造を有する分子によって記録される、前記マイクロアレイにおける必要な情報は、該マイクロアレイ上の前記プローブを固定するグリッド位置であってもよい。また、前記鎖状構造を有する分子によって記録される、前記マイクロアレイにおける必要な情報は、該マイクロアレイ上に固定される前記プローブの種類であってもよい。
今後、ゲノム情報の蓄積、また、遺伝子から発現される産物に関する知見の集積とともに、これら生物由来の物質の分子レベルでの解析が更に進められている。それに伴い、核酸分子や、蛋白質またペプチド鎖分子などを、プローブとして、分子レベルで使用する機会も、益々増大していくと予想される。これらプローブ用の分子を管理する上では、各分子を収納する容器にはバーコード等で識別コードを表記して管理を行うことは勿論のこと、さらに、一旦、専用の収納容器から取り出し、固体表面に固定した場合にも、その後、必要に応じて、かかるプローブ用分子に関する情報を読み取る際に利用可能な、分子レベルの情報記録コードを付記することが必要となっている。
本発明が提供する、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法を適用すると、前記核酸分子や、蛋白質またペプチド鎖分子などのプローブ用分子と共に固体表面に固定することも可能な、鎖状構造を有する分子における、その鎖状構造を構成している、質量分析可能な原子群の構成単位の配列情報ならびに、その鎖状構造の一端の付される標識用原子または原子群の単位を利用する付加的情報を組み合わせて、分子レベルの情報記録コードを構成することを可能とする。例えば、かかる一端に標識を付加した鎖状構造を有する分子は、前記核酸分子や、蛋白質またペプチド鎖分子などのプローブ用分子に対して、適当な配合比率で添加・混合しておくことで、分子レベルの情報記録コードの付与を行うことができる利点を有する。
さらには、本発明にかかる、質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、情報記録コードとして利用する方法では、情報記録の読み取りには、その鎖状構造の一端の付される標識用原子または原子群の単位を、基準として、鎖状構造の部分配列情報の特定と、それ自体を付加的情報として利用することで、質量分析法を採用しているので、共存している核酸分子や、蛋白質またペプチド鎖分子などのプローブ用分子の種類に依存することなく、目的とする鎖状構造を有する分子に由来する情報を高い選択性で読み取ることが可能となっている。
加えて、本発明においては、情報記録コードとして利用される、標識用原子または原子群の単位をその鎖状構造の一端の付することで、付加情報を付与されている鎖状構造を有する分子では、その鎖状構造における、質量分析可能な原子群を構成単位とする配列情報には、人為的に予め選択される任意な配列を利用できるので、標識用原子または原子群の単位の選択とともに、幅広い選択肢の内から選択でき、換言すると、より多様な情報を表記可能なコードとして、幅広い利用用途を有する。
本発明においては、分子レベルの情報記録コードとして、質量区分可能な原子群複数種を構成単位として、該構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造を有する鎖状分子に含まれる、前記鎖状構造部分の配列情報と、この鎖状構造の一端に付与される、標識用原子または原子群の単位自体が示す付加的情報とを組み合わせた、多値化コードで表示される複数桁の数値化コードを利用している。
その際、本発明の方法では、前記鎖状構造部分の配列情報と、この鎖状構造の一端に付与される、標識用原子または原子群の単位自体が示す付加的情報とを読み取る手段として、質量分析法を利用するため、前記鎖状構造を構成する複数種の構成単位として、相互に質量区分可能な原子群の複数種を利用し、また、標識用原子または原子群の単位も、前記構成単位である質量区分可能な原子群複数種に対して、質量区分可能なものを利用することで、個々の単位を質量数の差異によって弁別可能としている。
具体的には、かかる鎖状構造を有する鎖状分子について、質量分析法を適用して、断片化して生成する断片イオンの質量(m/Z)を測定すると、一端に付されている前記標識用原子または原子群の単位を含む断片イオンの一群を、かかる標識用原子または原子群の単位に特徴的な質量数と、他の構成単位を一個または複数個を含んでなる鎖状構造の一部分に相当する質量数との和に由来する質量(m/Z)を示す断片イオン群として、容易に特定できる。例えば、鎖状構造を有する鎖状分子として、図1に例示する、DNA鎖からな鎖状構造に対して、その3’末端に、標識用原子または原子群の単位として、U(Br):5−ブロモ−2’−デオキシウリジンが付与されている、標識を付したDNA分子型情報記録コードの一例103を考えると、該末端の標識U(Br)と、他の構成単位であるDNAユニット;A,T,G,Cで構成されるDNA鎖断片部とを含む断片として、下記する一連の断片が、その質量(m/Z)が増加する一連のイオン種として想定される。
末端の標識: U(Br);
第1の断片: AU(Br);
第2の断片: CAU(Br);
第3の断片: ACAU(Br);
第4の断片: TACAU(Br); ・・・
一方、この鎖状分子103のDNA鎖の中間部より生成する可能性のある断片としては、部分配列CGTの断片や部分配列GTCの断片のように、その質量(m/Z)からは、区別することが困難な複数の断片が存在している。それに対して、上述する該末端の標識U(Br)を含む断片は、標識U(Br)の示す特徴的な質量数に依って、観測される質量(m/Z)の値から容易に選別できる。その後、観測される質量(m/Z)の値が増加する順に並べると、その質量(m/Z)の値差分に基づき、末端の標識が連結される、末端から第1番目の構成単位の種類がA、第2番目の構成単位の種類がCのように、順次、かかる鎖状構造部分の配列情報を一意的に読み取ることを可能としている。すなわち、本発明の方法では、鎖状構造を有する鎖状分子における、鎖状構造部分の配列情報を、該鎖状構造の一端に付す標識用原子または原子群の単位を位置基準(例えば、3’末端)として、一方方向(5’末端へと遡上する方向)へと順次読み取ることを可能としている。また、この末端の標識に、U(Br)を利用していること自体、他の標識として、U(Cl):5−クロロ−2’−デオキシウリジンを利用しているものと、区別する付加的情報として利用される。従って、構成単位であるDNAユニット;A,T,G,Cで構成されるDNA鎖の配列情報は、4進法で表記される複数桁の数値コードに相当し、また、末端の標識自体の種類は、符号情報に相当すると見做すこともでき、符号付きの4進法複数桁数値コードが実現されている。さらには、例えば、ACA+U(Br)のコードにおいては、ACAの三塩基コードは、Thrをコードする6種の遺伝子コードの一種であることを利用して、Thr+ACA+U(Br)という重複する情報コード(Thr)をも含む拡張記録コードを実現するものとして、利用することもできる。同様に、TACAU(Br)のコードにおいては、TAC+A+U(Br)と解釈すると、TACがコードするTyrをも含め、Tyr+TACA+U(Br)という拡張記録コードを実現するものとして、利用することもできる。
以上に説明したように、本発明の方法では、図1に模式的に示す鎖状構造を有する鎖状分子102においては、その鎖状構造部分の配列情報は、本来、方向性を有する情報ではあるものの、質量分析法を利用して、その読み取りを進める際には、その質量(m/Z)の値では、その方向性は表記されない点を克服するため、末端に標識を連結して、この末端の標識を含む断片イオンのみに着目することで、鎖状構造部分の配列情報に含まれる方向性をも表記するデータ群として、容易に解析可能なものとしている。すなわち、図1に記載するバーコード101では、コード情報は、一方の方向へ向かって、数値列コードとして表記されると同様に、末端に標識を連結して、標識を付したDNA分子型情報記録コードの一例103では、かかる末端を起点として、鎖状構造部分の配列情報を読み取ることで、一方の方向へ向かって、数値列コードを実現している。
一方、かかる解析を達成する上では、この末端の標識を含む断片イオンの一群を質量分析して、その質量(m/Z)の値を高い確度で測定する必要がある。質量分析に際して、鎖状分子に外的衝撃を与えて、その鎖状構造中の構成単位毎の連結部において効率的な断裂が生じて、断片化することが好ましい。例えば、かかる構成単位毎の連結部において効率的な断裂が生じるものとしては、前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、4種類のヌクレオシドA,T,G,Cのいずれかを含んでなる核酸鎖が挙げられる。なお、かかる核酸鎖の骨格は、リボヌクレオシド 5’−モノリン酸からなるRNA鎖、デオキシリボヌクレオシド 5’−モノリン酸からなるDNA鎖、さらには、骨格がペプチド鎖で形成されるPNA鎖のいずれも、本発明において好適に利用できる。また、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群が、アミノ酸であるペプチド鎖も、そのペプチド結合(−CO−N)において、より高い確率で分断を受けるので、本発明において好適に利用できる。あるいは、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群が、糖類である糖鎖も、その単糖単位毎において、より高い確率で分断を受けるので、本発明において好適に利用できる。これらの構成単位からなる鎖状構造以外に、各構成単位間の連結部において、より高い確率で分断を受け、また、各構成単位の質量数が互いに容易に区分可能な原子群である限り、種々の形態のモノマー単位からなるコポリマー鎖を、鎖状構造に利用することも可能である。
一方、鎖状構造部分の一端に連結される、標識用原子または原子群の単位は、鎖状構造を構成する構成単位複数種と、その質量数が有意に相違するものであれば、本発明において利用することができる。但し、質量分析における、断片化、イオン化の過程において、かかる標識用原子または原子群の単位自体がフラグメント化される、あるいは、標識用原子が脱落を生じ易いと、該標識用原子または原子群の単位に由来する特徴的な質量数を示す、標識用原子または原子群の単位を含む断片の生成率の抑制が起こり、一般に望ましくない。換言すると、かかる標識用原子または原子群の単位は、質量分析における、断片化、イオン化の過程において、かかる標識用原子または原子群の単位自体がフラグメント化される、あるいは、標識用原子が脱落を生じる可能性が低いものが好ましい。
逆に、鎖状構造を構成する各構成単位も、質量分析における、断片化、イオン化の過程において、その構成単位を構成する原子群の一部が欠落する場合もある。この一部欠落が生じた原子群の示す質量数と、かかる標識用原子または原子群の単位が示す質量数が、偶々一致すると、標識用原子または原子群の単位を含む断片を特定する際、干渉成分となるので好ましくない。換言すると、鎖状構造を構成する各構成単位に由来し、その一部欠落が生じた原子群の示す質量数と、かかる標識用原子または原子群の単位が示す質量数とは、有意に相違するような標識用原子または原子群の単位を利用するとより好ましい。
上述する標識用原子または原子群の単位における好適な要件を考慮すると、標識用原子または原子群の単位中に、ハロゲン原子を含むものが好適なものとなる。この標識に利用可能なハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素原子を挙げることができる。加えて、標識用原子または原子群の単位と、鎖状構造部とを連結する際、その連結は、鎖状構造を構成する各構成単位間の連結と同種の連結であることがより好ましい。例えば、鎖状構造部が核酸鎖である際には、標識用原子または原子群の単位として、ハロゲン原子置換を有する核酸単位を利用することが好ましい。特には、核酸鎖の骨格は共通し、ヌクレオチドの塩基部の環上に、ハロゲン原子置換を有するものを利用することがより好ましい。また、鎖状構造部がペプチド鎖である際には、標識用原子または原子群の単位として、ハロゲン原子置換を有するアミノ酸単位を利用することが好ましい。特には、アミノ酸の骨格は共通し、その側鎖上に、ハロゲン原子置換を有するアミノ酸単位を利用することがより好ましい。
本発明において、分子レベルの情報記録コードとして利用する、標識用原子または原子群の単位をその一端に連結した鎖状構造を有する鎖状分子においては、標識用原子または原子群の単位の種類と、この鎖状構造の配列自体は、記載される情報に応じて、予め決定した上で、目的とする鎖状分子に調製する必要がある。そのため、鎖状分子中の情報記録コードに利用する部分は、ステップ合成法を適用して、所望の配列と末端に標識用原子または原子群の単位を有するものとして作製することが好ましい。例えば、標識用原子または原子群の単位をその一端に連結した鎖状構造が、核酸鎖である際には、3’末端に標識用の塩基を有するDNA単位を樹脂基材上に付し、それに引き続き、5’末端へと所望の塩基配列を有するDNA鎖を固相合成により伸長させて、目的とする核酸鎖とすることができる。なお、固相合成において、5’末端に、さらに、基板への固定に利用する修飾基を付与することもできる。一連の固相合成反応が終了したのち、樹脂基材からの切り離し、合成時に利用した保護基の脱保護などの操作は、通常の核酸分子の合成法に準じて行うことができる。
また、標識用原子または原子群の単位をその一端に連結した鎖状構造が、ペプチド鎖である際には、例えば、C末端に標識用の側鎖を有するアミノ酸単位を樹脂基材上に付し、それに引き続き、N末端へと所望のアミノ酸配列を有するペプチドを固相合成により伸長させて、目的とするペプチド鎖とすることができる。なお、固相合成の際、基板への固定に利用する修飾基を、該鎖状分子の他の一端に付け加えることもできる。一連の固相合成反応が終了したのち、樹脂基材からの切り離し、合成時に利用した保護基の脱保護などの操作は、通常のペプチド合成法に準じて行うことができる。
本発明にかかる鎖状分子を分子レベルの情報記録コードとして利用する方法は、例えば、かかる鎖状分子を利用して、マイクロアレイ上に分子レベルの情報記録コードを付す際に好適に適用できる。マイクロアレイは、各種プローブを担体基板の表面にアレイ状に固定化することで作製されるが、その際、かかる鎖状分子も、同様に基板表面に固定することで、基板に固定された分子レベルの情報記録コードとして利用することができる。すなわち、該マイクロアレイを構成する各種プローブを利用したアッセイを行った後、そのマイクロアレイの種別等の情報を確認する必要が生じた際、分子レベルの情報記録コードとして固定されている鎖状分子を質量分析することで、その情報記録コードを読み取ることが可能である。その際、情報記録コード用の鎖状分子自体は、各種プローブを利用したアッセイ操作に対して、干渉、阻害を引き起こさない形態とすることが好ましい。
例えば、隣接して担体基板上に固定されているプローブ分子がハイブリダイゼーション反応用のDNA分子である場合、情報記録コード用の鎖状分子は、前記ハイブリダイゼーション反応と干渉を生じない、塩基配列と配列長を有するDNA分子型情報記録コードとすることが望ましい。記録すべき情報量に応じて、鎖状分子中に含まれる情報記録コード用の鎖状構造の長さを適宜選択するが、記録すべき情報量を、複数の鎖状分子を組み合わせて、記録する形態とすることもできる。具体的には、図2に例示するように、マトリックス状に配置されるブロックに関する情報が、その行と列との組み合わせに分離できる場合には、行に由来する部分情報を記録する第一の鎖状分子と、列に由来する部分情報を記録する第二の鎖状分子とを組み合わせ、両者を混合して担体基板上の各ブロックに固定することで、所望とする二次元マトリックス状の情報を記録することも可能である。
該マイクロアレイ上に記録する情報は、例えば、マイクロアレイ上に固定される各プローブの種類を示すコードであってもよく、その場合には、各プローブに対して、当該情報コードの読み取り可能な鎖状分子を所定の添加率で混合した上で、同時に、基板上にスポット固定することが望ましい。また、収納容器中に各プローブを保管する時点で、対応する情報コードの読み取り可能な鎖状分子を所定の添加率で混合しておくことができる。
また、該マイクロアレイ上に記録する情報は、各プローブをスポット固定するアレイ上の番地情報、例えば、グリッド位置を特定する情報であってもよく、その場合には、各プローブのスポットに併せて、グリッド位置情報を示す鎖状分子を対応するグリッド位置に固定することが望ましい。
さらには、図2に例示するように、マイクロアレイ上のスポット位置を、ブロック化し、各ブロック内に、複数のスポット位置を配置するように、個別のスポット位置を特定する情報が、複数の階層で構成される場合には、各階層の情報を複数の鎖状分子により記録する形態を採用することで、多様な情報についても、分子レベルの情報記録コードとして付すことが可能となる。
本発明においては、鎖状構造部分の配列情報と、この鎖状構造の一端に付与される、標識用原子または原子群の単位自体が示す付加的情報とを読み取る手段として、質量分析法を利用するが、上述するように、標識用原子または原子群の単位と構成単位の複数個を含む断片イオンのように、比較的に大きな質量(m/Z)を測定する必要があり、一般に、比較的に大きな質量(m/Z)の測定により適する質量分析法を利用することが好ましい。例えば、一次イオンを照射することで、断片化と二次イオンの生成がなされる、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を利用することが好ましい。
加えて、本発明においては、鎖状分子に由来する断片イオンの生成過程は、光照射によって供給されるエネルギーによって、鎖状分子に含まれる鎖状構造部中において、分断を受け、イオン化された断片イオンを生成するものであってもよい。その際には、かかる光照射を利用した、断片化とイオンの生成機構を採用する、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)を用いることが好ましい。
なお、MALDI−TOF法は、近年生体高分子の質量分析に広く用いられている手法であり、汎用されるマトリックスとしては、アミノ酸を構成単位とする、蛋白質やペプチドの分析に適用する際には、2,5−DHB(2,5−ydroxyenzoic acid)が、核酸分子の分析に適用する際には、3−HPA(3−ydroxyicolinic cid)、ペプチド工学、特には、プロテオミクスへの応用を考える場合には、HCCA(α−yano−4−ydroxyinnamic cid)などが、一般に知られている。本発明においても、MALDI−TOF法の利用に際して、対象とする鎖状分子に応じて、これら汎用されるマトリックスから適宜選択して利用することが可能である。
本発明にかかるマイクロアレイでは、マイクロアレイを構成する担体基板に対して、上述する鎖状分子を利用した分子レベルの情報記録コードを付して、該マイクロアレイにおける必要な情報を管理することが可能となっている。なお、マイクロアレイに用いるプローブ分子自体について、その一部に情報記録コード用の配列部分を設け、標識用原子または原子群の単位を付け加えて、プローブ機能と情報記録コードの機能とを併せ持つものとして利用することも可能である。例えば、プローブ分子として機能する部分は、所望のアミノ酸配列を含むペプチド鎖からなり、一方、分子レベルの情報記録コードとして機能する部分は、コード情報記録用の糖鎖からなるものとし、分子全体は、該糖鎖で修飾されたペプチド鎖とすることで、プローブ機能と情報記録コードの機能とを併せ持つものとできる。
本発明の方法においては、情報記録コードの読み取りには、質量分析法を利用して、質量差に基づき、構成単位の種類を特定する手法を利用するので、利用する鎖状分子の形態が、核酸鎖、ペプチド鎖、糖鎖のように、その構成単位の種類に依存せず、広範な鎖状構造を有する分子に応用することができる。従って、情報の記録に利用する鎖状構造部として、各構成ユニットを一つ一つ変えながら、所望の配列を示す鎖を合成していく方法が確立している、化学的な共重合ポリマー鎖などを応用できれば、そのバリエーションは大きく広がる。すなわち、一つ一つの構成ユニットを、選択的に順番に合成していく技術の改良がなされていけば、本発明で利用される鎖状分子として、応用できる分子の種別は多彩になる。同時に、これら多様な構造単位を利用する分子は、情報格納素子として応用することで、多くの用途が拡大していく。
以下に例示する実施例2においては、本発明にかかる分子レベルの情報記録コードを、マイクロアレイのブロック位置を確認する情報として、応用する例を示すが、上述するように、分子レベルの情報記録コードとする鎖状分子を複数種併用することで、ブロック内のスポット毎に個別の情報を付与することも可能であり、スポット毎に分子レベルの情報記録コードとする鎖状分子の複数種を一括して質量分析することで、スポットのIDを知ることもできる。また、専用の収納容器内に保管している各プローブ分子などに関しても、その専用の収納容器に付されるバーコードに加えて、各プローブ分子に対応する分子レベルの情報記録コード用の鎖状分子を混合しておくことで、専用の収納容器から取り出した後も、その追跡管理が可能となる。
特には、これら分子レベルの情報記録コード用の鎖状構造部分を、対象分子そのものに埋め込むことができれば、分子一つ一つに、その識別用のIDを記載することも可能になってくる。この分子レベルの情報記録コードを内在させる手法は、分子自体が巨大であり、かつ、何か特定の機能を有するような場合には、特に役に立つことと思われる。現在は、ナノマシンの究極の姿として、機能性超高分子そのものをナノサイズのマシンとして用いる研究が進められているが、そのような場合にも、識別用のIDを記載する手段として使用可能である。
核酸プローブ型の一本鎖DNAを固定した基板を、特開平11−187900号公報に記載の方法に準じて作製した。
(1)基板洗浄
1×3インチ角、厚さ1mmの合成石英基板をラックにいれ、純水で軽く濯ぎ、スピンドライによって乾燥させた後、5分間のUV洗浄を行った。その後、洗剤中で2分間超音波洗浄を行い、対で、水洗により、前記洗剤を除去した。純水で漱いだ後、純水中で再び超音波洗浄を2分間行った。
(2)表面処理
アミノ基を結合したシランカップリング剤、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピル トリメトキシシラン KBM603(信越化学工業)の0.1%水溶液を室温下で20分攪拌し、上記シラン化合物の分子内のメトキシ基を加水分解した。次いで、このシランカップリング剤溶液を、上記(1)の洗浄処理を終えた基板表面にスピンコート法により塗布した。塗布済みの基板を、150℃に加熱したオーブン中で一時間ベークして、最終的に、基板表面にアミノ基を導入した。
一方、N−マレイミドカプロイオキシスクシニミド(EMCS)1.5mgをジオキサン15mLに溶解し、このEMCS溶液を、前記シランカップリング剤によるアミノ基導入処理を施した基板表面上に、スピンコート法により塗布した。この段階で、シランカップリング剤によって基板表面に担持されているアミノ基と、EMCS溶液のスクシイミド基が反応し、基板表面にはEMCS由来のマレイミド基が存在することになる。
(3)基板固定用の一本鎖DNAの合成
DNA合成業者(ベックス)に依頼して、配列番号:1の一本鎖オリゴ核酸を合成した。
配列番号:1
5’ HS−(CH26−O−PO2−O−TACAU(Br) 3’
ここで、A、T、G、Cは、それぞれ塩基としてアデニン、チミン、グアニン、シトシンを有するヌクレオチドを示す。また、U(Br)は、5−ブロモ−2’−デオキシウリジンであり、合成時に、以下に示すフォスフォアミダイト体(グレンリサーチ社)を用いて導入した。
Figure 0004532874
なお、該DNAを固相合成する際、3’末端に標識として導入されるU(Br)は、下記するU(Br)結合CPGカラム(グレンリサーチ社)を用いて導入した。
Figure 0004532874
一方、このDNAの5’末端には、基板上への固定に利用するスルファニル基(−SH)を付すため、合成時に、チオールモディファイア(グレンリサーチ社)を用いて、5’末端のチオール化修飾を施した。DNA合成後、脱保護、DNAの回収は定法により行い、また、精製には、HPLCを用いて、DNAと3’末端の標識を含め、5塩基長に相当するものを採取した。上記の手順に従う合成から精製までの一連の工程は、全て合成業者に依頼して行った。
(4)インクジェット方式によるDNA及びマーカーの吐出、基板への結合
上記配列番号:1の一本鎖DNAを8μMの濃度で、グリセリン15.0wt%、尿素15.0wt%、ジエチレングリコール9.0wt%、及びアセチレンアルコール(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)0.01wt%を含む水性溶媒(クリアインク)中に溶解した。また、マーカーに関しても、DNAと同様に上記の成分をもつクリアインクに溶解した。サーマル・ジェット法の一種である、バブル・ジェット法を採用しているバブル・ジェット・プリンター BJF−850(キャノン)用のプリンターヘッドBC−50(キャノン)を、数100μlの溶液を吐出可能とするべく改造した。このインクジェット・ヘッドの改造タンク部に上記DNA溶液を注入した。バブル・ジェット・プリンター BJF−850(キャノン)を基礎とする、吐出描画機に、(2)で作製したマレイミド基の導入処理を終えた基板を装着し、その基板表面にDNA溶液をスポッティングした。なお、スポッティング時の吐出量は、4pl/dropletで、スポッティングの範囲は基板の中央部、10mm×10mmの範囲に200dpi、すなわち127μmのピッチで吐出した。なお、この吐出条件では、基板表面にスポッティングされたドットの直径は、約50μmであった。
スポッティング終了後、基板を30分間加湿チャンバー内に静置し、石英ガラス基板表面のマレイミド基と、核酸プローブ用DNA5’末端のスルファニル基(−SH)とを反応させ、DNA鎖を固定した。次いで、DNA鎖を固定した基板を超純水中で保存した。
(5)基板上に固定された一本鎖DNAのTOF−SIMSによる観察
前記(4)で作製したDNA固定基板について、その固定された状態の一本鎖DNAを、ION TOF社 TOF−SIMSを用いて測定した。なお、一本鎖DNA由来の断片二次イオンの生成に用いる一次イオンは、Auガンから発生するイオンを用いた。金イオンには、一次イオン種として、Au3 +も包含され、高い質量の二次イオン種の生成に適している。
DNAより生成する断片イオンは、プリン塩基のA,G,ピリジン塩基のT,Cの4種類の塩基をもつデオキシリボヌクレオチドによって構成されている。このデオキシリボヌクレオチド中に含まれる塩基部分の構造と、その式量を以下に示す。
アデニン:C5N5H5
分子量:135
Figure 0004532874
グアニン:C5N5OH5
分子量:151
Figure 0004532874
シトシン:C4N3OH5
分子量:111
Figure 0004532874
チミン:C5N2O2H6
分子量:126
Figure 0004532874
また、DNA鎖のバックボーンを構成する2’−デオキシリボース−5’−リン酸骨格部の構造と、その式量を以下に示す。
2’−デオキシリボース−5’−リン酸骨格部:C5H7O5P
分子量:178
Figure 0004532874
本実施例において、DNA鎖の3’−末端に導入する標識として利用する5−ブロモ−2’−デオキシウリジン中のU(Br):5−ブロモウラシル塩基は、以下の式量を示し、チミン塩基のメチル基に代えて、Br原子が置換しているが、二重鎖となった際、A−TあるいはA−U対と同様に、A−U(Br)対を構成できる。
ブロモウラシル:C4N2O2H4Br
分子量:191
このDNA鎖の3’−末端に5−ブロモ−2’−デオキシウリジンを標識として導入した際には、一次イオン衝撃により生成する断片イオンには、この標識を含む、3’−末端側の部分鎖に相当する断片が含まれる。この標識を含む断片は、共通するU(Br):
5−ブロモ−2’−デオキシウリジン:385(3’末端は、−OHで終端される。)と、それに続くDNA鎖部における、鎖を構成するヌクレオチド一つ分の質量差分は、上記塩基が2’−デオキシリボース−5’−リン酸骨格部の1’位に付加した単位の式量に相当し、それぞれ、
2’−デオキシアデノシン−5’−リン酸単位:312
2’−デオキシグアノシン−5’−リン酸単位:328
2’−デオキシシチジン−5’−リン酸 単位:288
2’−デオキシチミジン−5’−リン酸 単位:303
となる。
配列番号:1の塩基配列を有するDNA鎖より生成する、標識U(Br)を含む断片としては、
標識U(Br)自体:m=385を基準として、
標識U(Br)とその直前の一ヌクレオチドを含むAU(Br) :Δm/Z=312
標識U(Br)とその直前の二ヌクレオチドを含むCAU(Br) :Δm/Z=288
標識U(Br)とその直前の二ヌクレオチドを含むACAU(Br):Δm/Z=312
それぞれ、鎖を構成するヌクレオチド一つ分の質量差分を示す一連の断片三種が想定される。
実際に、TOF−SIMSの測定データを見ると、ヌクレオチド二つ分のフラグメント・イオンに相当する質量(m/Z)範囲においては、標識U(Br)を含む断片に対応するシグナルとしては、AU(Br)に対応するものが見出される。一方、TU(Br)、GU(Br)、CU(Br)に対応する質量(m/Z)においては、明確なピークは見出されない。具体的には、AU(Br)に対応するシグナルのピーク強度を基準として、その1/5以上のピーク強度を示すシグナル中には、TU(Br)、GU(Br)、CU(Br)に対応する質量(m/Z)を有するものは見出されない。
さらに、ヌクレオチド三つ分のフラグメント・イオンに相当する質量(m/Z)範囲においては、CAU(Br)に対応する質量(m/Z)を有するシグナルは、識別可能であったが、それ以外に標識U(Br)を含む断片と推測できる質量(m/Z)のシグナルは全く識別できない。すなわち、標識U(Br)と他に二ヌクレオチドを含む断片に相当する質量(m/Z)において、CAU(Br)に対応する質量(m/Z)を有するシグナルのみが有意なピークとして、観測されている。
ちなみに、一次イオンとして、Gaイオンを用いたTOF−SIMSの測定では、分子量300以上の範囲では、観測されるシグナル自体が非常に弱いものになり、Auイオンを用いる場合のように、質量(m/Z)の大きなフラグメントは観察されなかった。例えば、ヌクレオチド二つ分のフラグメント・イオンに相当する質量(m/Z)範囲は、質量(m/Z)600〜700程度と、分子量300を大きく超えており、一次イオンとして、Gaイオンを用いた測定では、標識U(Br)と他に一ヌクレオチドを含む断片である、AU(Br)の断片に相当するシグナルすら有意に識別可能なピークを示していない。従って、一次イオンとして、Gaイオンを用いた測定では、それ以外のTU(Br)、GU(Br)、CU(Br)の断片と、AU(Br)の断片との間で、有意なピーク強度の差を示すことを検証するに十分なシグナル強度(断片生成量)を得ることができていない。
加えて、生体高分子に関して、フラグメンテーションをなるべく起こさずに、高分子のまま、その質量を高い精度で測定する方法は、現在著しい進展をみせている。具体的には、MALDI―TOF MAS法以外にも、TOF−SIMS法を利用する手法でも、一次イオン源として、ゴールド(Au)銃に続いて、ビスマス(Bi)銃の利用が検討され、その適用範囲の拡大を図る改良された方法の開発がなされつつある。これら改善されたイオン化手段、検出手法を利用することで、長鎖長の核酸配列を観察することも可能となる。
DNA合成業者(ベックス)に依頼して、配列番号:2,3の一本鎖DNA分子を合成した。
配列番号:2
5’ HS−(CH26−O−PO2−O−TTXU(Br) 3’
配列番号:3
5’ HS−(CH26−O−PO2−O−TTXU(Cl) 3’
但し、Xは、A,G,C,Tの4種類のいずれかを表しており、
配列番号:2では、3’−末端の標識は5−ブロモ−2’−デオキシウリジンであり、
配列番号:3では、3’−末端の標識は5−クロロ−2’−デオキシウリジンであり、
それぞれ、この標識の直前のヌクレオチドが異なる4種類の分子を個別に合成した。
本実施例2では、作製された各4種の一本鎖DNA分子が、マイクロアレイ上でのプローブ群(ブロック)の位置を示すコードとして利用できることを検証した例を示す。例えば、マイクロアレイを、図1に示すの構成とし、各プローブ群(ブロック)は、プローブをスポットする位置は、12×12のマトリックス配置を形成し、一つの基板上には、各プローブ群(ブロック)を、4×4のブロック・マトリックス様に配置している。4×4のブロック・マトリックス上のどの位置に、当該プローブ群(ブロック)が、配置されているかを表示するコードとして、上記の各4種の一本鎖DNA分子を利用する。
4×4のブロック・マトリックスに対して、
行番号を示すコードとして、U(Br)を標識とする配列番号:2の一本鎖DNA分子を利用し、A:一行目、T:二行目、G:3行目、C:4行目を示すコードとし、
列番号を示すコードとして、U(Cl)を標識とする配列番号:3の一本鎖DNA分子を利用し、A:一列目、T:二列目、G:3列目、C:4列目を示すコードとする。
対応する行番号、列番号で特定されるブロック内にスポットされるプローブに対して、その行番号、列番号を示す、U(Br)を標識とする配列番号:2の一本鎖DNA分子とU(Cl)を標識とする配列番号:3の一本鎖DNA分子とを、それぞれ5%程度混合した上、コード用の一本鎖DNA分子二種と本来のプローブとの混合溶液を、基板上の当該ブロック内、所望のスポット・アドレスに印字する。
なお、本実施例では、プローブ用の一本鎖DNAとして、下記配列番号:4の塩基配列を有する18merのオリゴ核酸分子を用いた。
配列番号:4
5’ HS−(CH26−O−PO2−O−ACT−GGC−CGT−CGT−TTT−ACA 3’
実施例1と同様の方法で、図2に示すような全体配置をとるマイクロアレイを作製した。作製したマイクロアレイについて、基板上の固定された一本鎖DNAを、ION TOF社 TOF−SIMSを用いて測定した。なお、一次イオンには、Auガンから発生するイオンを用いた。
各スポットにおけるTOF−SIMSの測定データ中から、標識U(Br)を含む断片と標識U(Cl)を含む断片に相当するピークを、実施例1に記載する各ヌクレオチドの式量に基づき算出した質量(m/Z)の計算値を参照して、それぞれ選別した。その結果、ブロック毎に、その行番号を示すコードとする、U(Br)を標識とする配列番号:2の一本鎖DNA分子と、列番号を示すコードとする、U(Cl)を標識とする配列番号:3の一本鎖DNA分子とに対応して、AU(Br)、TU(Br)、GU(Br)、CU(Br)のいずれか一つの相当するシグナル、ならびに、AU(Cl)、TU(Cl)、GU(Cl)、CU(Cl)のいずれか一つの相当するシグナルのみが、それぞれ有意なピーク強度で見出されている。
従って、各スポットにおいて観測される、標識U(Br)と他に一ヌクレオチドを含む断片の種類と、標識U(Cl)と他に一ヌクレオチドを含む断片の種類とを特定することで、そのスポットには、U(Br)を標識とする配列番号:2の一本鎖DNA分子4種のいずれが、行番号を示すコードとして付加され、また、U(Cl)を標識とする配列番号:3の一本鎖DNA分子4種のいずれが、列番号を示すコードとして付加されているかを読み取ることができる。すなわち、U(Br)を標識とする配列番号:2の一本鎖DNA分子の一種と、U(Cl)を標識とする配列番号:3の一本鎖DNA分子の一種との組み合わせを、実際に測定しているスポットがどのブロックに属するスポットであるかを記載するための情報記録コードとして利用でき、また、容易に、読み取りが可能であることが検証される。
本発明にかかる鎖状構造を有する鎖状分子を情報記録コードとして利用する方法は、例えば、今後、ゲノム情報を応用し、各種プローブを利用するアッセイ技術分野において活用されるマイクロアレイなどに、分子レベルの識別コードとして、マイクロアレイの使用において、必要な情報を直接付与することを可能とする。
鎖状構造分子自体が有する配列情報を、情報記録コードとして利用する際、その読み取りを容易とする目的で付与される、付加的情報(標識)の一例と、一次元的なコード情報の記録への利用方法を模式的に示す図である。 実施例2に示す、マイクロアレイの作製における、各プローブ群(ブロック)内のプローブ・スポット位置と、マトリックス状に配置されるブロック位置の一例と、マトリックス状のブロック配置を示す情報記録コードとして、付加的情報(標識)を付した鎖状分子(核酸)を利用した例を模式的に示す図である。
符号の説明
101 バーコード
102 鎖状構造分子の概念
103 標識を付したDNA分子型情報記録コードの一例

Claims (11)

  1. 情報記録コードを付与されたマイクロアレイであって、
    質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、前記情報記録コードとして利用されており、
    該マイクロアレイは、プローブを担体基板上に固定してなる構成を有し、
    前記付加情報を付与した質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に、該マイクロアレイにおける必要な情報を付して、前記プローブに少量混合して、プローブとともに、前記担体基板上に固定し、
    質量分析法を用いて、担体基板上に固定される、前記鎖状構造を有する分子を測定して、情報記録コードの読み取りを可能としており、
    前記質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子は、
    質量区分可能な原子群複数種を構成単位として、該構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造を有する鎖状分子であり、
    前記鎖状分子は、その一端には、前記構成単位である質量区分可能な原子群複数種に対して、質量区分可能な標識用原子または原子群の単位を、前記構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造に連結してなる形態を有しており、
    前記標識用原子または原子群の単位の種類、ならびに、その存在位置を基準として、順次読み採ることの可能な、前記鎖状構造の一端から続く構成単位の種類の配列とを、情報の記録コードとしている
    ことを特徴とする、マイクロアレイ。
  2. 前記質量分析法として、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF−SIMS)を用いる
    ことを特徴とする、請求項1に記載のマイクロアレイ。
  3. 情報記録コードを付与されたマイクロアレイであって、
    質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に対して付加情報を付与して、前記情報記録コードとして利用されており、
    該マイクロアレイは、プローブを担体基板上に固定してなる構成を有し、
    前記付加情報を付与した質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子に、該マイクロアレイにおける必要な情報を付して、前記プローブに少量混合して、プローブとともに、前記担体基板上に固定し、
    質量分析法を用いて、担体基板上に固定される、前記鎖状構造を有する分子を測定して、情報記録コードの読み取りを可能としており、
    前記質量分析可能な原子群を構成単位とする鎖状構造を有する分子は、
    質量区分可能な原子群複数種を構成単位として、該構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造を有する鎖状分子であり、
    前記鎖状分子は、その一端には、前記構成単位である質量区分可能な原子群複数種に対して、質量区分可能な標識用原子または原子群の単位を、前記構成単位を複数個が特定の配列で連結されてなる鎖状構造に連結してなる形態を有し、かつ
    光照射によって供給されるエネルギーによって、前記鎖状構造部中において、分断を受け、イオン化された断片イオンの生成が可能であり、
    前記標識用原子または原子群の単位の種類、ならびに、その存在位置を基準として、順次読み採ることの可能な、前記鎖状構造の一端から続く構成単位の種類の配列とを、情報の記録コードとしている
    ことを特徴とする、マイクロアレイ。
  4. 前記光照射によって供給されるエネルギーによって生成される断片イオンの質量分析法として、マトリクス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI−TOF MS)を用いる
    ことを特徴とする、請求項3に記載のマイクロアレイ。
  5. 前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、4種類のヌクレオシドA,T,G,Cのいずれかを含んでなり、該ヌクレオシドの種類に伴う分子量差を示す
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロアレイ。
  6. 前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、少なくとも、非天然型のヌクレオチドを含む
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロアレイ。
  7. 前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、アミノ酸である
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロアレイ。
  8. 前記鎖状分子が有する、鎖状構造の構成単位とされる、前記質量区分可能な原子群は、糖鎖である
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロアレイ。
  9. 前記質量区分可能な標識用原子または原子群の単位は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素のいずれかのハロゲン原子を含む
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のマイクロアレイ。
  10. 前記鎖状構造を有する分子によって記録される、前記マイクロアレイにおける必要な情報は、該マイクロアレイ上の前記プローブを固定するグリッド位置である
    ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のマイクロアレイ。
  11. 前記鎖状構造を有する分子によって記録される、前記マイクロアレイにおける必要な情報は、該マイクロアレイ上に固定される前記プローブの種類である
    ことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載のマイクロアレイ。
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