JP4531874B2 - ニッケル・金属水素化物電池 - Google Patents

ニッケル・金属水素化物電池 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、水酸化ニッケルを活物質の主体とする正極と、水素吸蔵合金を主体とする負極とを用いたニッケル・金属水素化物電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体や電子部品を中心としたエレクトロニクス技術の進歩は目覚しく、携帯電話をはじめとするポータブル機器の小型化、軽量化が急速に進んでいる。これらの機器の電源として、様々な種類の二次電池が用いられてきたが、さらに高容量、高性能化が要求され、高エネルギー密度の新型二次電池の開発が望まれている。なかでも、負極に水素吸蔵合金を用いたニッケル・金属水素化物電池は、エネルギー密度が高く、放電性能も優れることから、これらの要望を満足する電池の一つとして、広く用いられている。さらに最近では、クリーンな自動車として注目されている電気自動車の電源に使用されるに至っている。今後、電気自動車のように、比較的高温で電池を充放電しなければならない用途が増えると予測されるが、ニッケル・金属水素化物電池の正極である水酸化ニッケル極板は、高温になると充電効率が低下する傾向があるので、高温充電効率を向上させる方法として、前記正極にカルシウムを添加する手段が挙げられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、カルシウムをニッケル・金属水素化物電池の正極にのみ添加しただけでは、初期あるいは短期間の使用においては、確かに高温充電効率が向上するが、充放電サイクルを繰り返すか、長期間の放置後では、カルシウム添加による高温充電効率向上の効果が低下することを見出した。
【0004】
この発明は、上述の問題点を解消させ、充放電サイクル経過後、もしくは長期間の放置後であっても、高温充電効率の優れたニッケル・金属水素化物電池を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するために、本発明では、水酸化ニッケルを活物質の主体とする正極と、水素吸蔵合金を主体とする負極と、セパレータおよびアルカリ電解液を備えたニッケル・金属水素化物電池であって、前記正極にカルシウムが、水酸化ニッケルに対して0.1〜10重量%含有されており、かつ電解液、セパレータおよび負極の少なくとも一つにカルシウムが含有されていることを特徴とするニッケル・金属水素化物電池を提供することとしている。電解液にカルシウムを添加する場合には、電解液中のカルシウム含有量を10-5〜10-3 Mとすることが好ましい。また、セパレータにカルシウムを添加する場合には、セパレータ中のカルシウム含有量を、セパレータに対して0.01〜1重量%とすることが好ましい。さらに、負極にカルシウムを添加する場合には、負極中のカルシウム含有量を、水素吸蔵合金に対して0.001〜0.1重量%とすることが好ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明のニッケル・金属水素化物電池にあっては、水酸化ニッケルを活物質の主体とする正極と、水素吸蔵合金を主体とする負極と、セパレータおよびアルカリ電解液を備えたニッケル・金属水素化物電池であって、前記正極にカルシウムが0.1〜10重量%含有されており、かつ電解液、セパレータおよび負極の少なくとも一つにカルシウムが含有されていることを特徴とする。好ましくは、電解液中のカルシウム含有量を10-5〜10-3 Mであることを特徴とする。また、好ましくは、セパレータ中のカルシウム含有量をセパレータに対して0.01〜1重量%とする。また、好ましくは、負極中のカルシウム含有量が、水素吸蔵合金に対して0.001〜0.1重量%とする。前述のごとき特徴により、ニッケル・金属水素化物電池の高温充電効率が向上し、かつ、その効果を充放電サイクル経過後や長期間放置した後も維持することができる。
【0007】
その理由は、次のように考えられる。すなわち、正極にカルシウムを添加したニッケル・金属水素化物電池では、充放電を繰り返すかもしくは長期間放置すると、該正極中のカルシウムがアルカリ電解液へ溶出し、カルシウムイオンが電解液中を拡散およびセパレータを経て負極へ移動する。さすれば、正極中のカルシウム含有量の低下を招き、また正極中におけるカルシウム分布の不均一化を引き起こすこととなり、高温充電効率向上の効果が削減されるものと考えられる。
【0008】
一方、本発明のごとく、電解液やセパレータや負極にカルシウムを含有させると、正極に添加したカルシウムの溶出およびカルシウムイオンの移動が抑制され、前記正極中のカルシウムが安定に存在できるようになり、前述ニッケル・金属水素化物電池の高温充電効率の向上をもたらすものと考えられる。
【0009】
上述の正極、電解液、セパレータまたは負極へカルシウムを含有させるには、例えばカルシウム化合物を添加する。正極、セパレータおよび負極中ではカルシウムは金属カルシウムもしくはカルシウム化合物として、電解液中ではカルシウムイオンとして存在する。添加においては、必要とするカルシウム含有量からカルシウム化合物の添加量を換算する。カルシウム化合物としては、特に限定しないが、例えば水酸化カルシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム等を用いることができる。
【0010】
なお、前記正極中のカルシウム含有量を、水酸化ニッケルに対して0.1〜10重量%に限定したのは、次の理由による。すなわち、カルシウムの含有量が0.1重量%より少ない場合は、充電効率を向上させる効果が充分に得られす、一方該含有量が10重量%より多い場合は、カルシウムは活物質ではないので、正極エネルギー密度の低下をもたらすことによる。
【0011】
そして、上記電解液中のカルシウム含有量を10-5〜10-3 Mに限定したのは、次の理由による。すなわち、カルシウム含有量が10-5 Mより少ないと、正極の充電効率を向上させる効果を充分に持続させられないからであり、また、該含有量が10-3 Mより多いと、電解液へのカルシウムの溶解が困難になるからである。
【0012】
さらに、上記セパレータ中のカルシウム含有量を、セパレータに対して0.01〜1重量%に限定したのは、次の理由による。すなわち、カルシウムの含有量が0.01重量%より少ない場合は、正極の充電効率を向上させる効果を充分に持続させられないからであり、カルシウムの含有量が1重量%より多い場合は、セパレータ中の空孔体積の減少を招き、セパレータの電気抵抗を増大ならしめるからである。
【0013】
そして、上記負極中のカルシウム含有量を、水素吸蔵合金に対して0.001〜0.1重量%に限定したのは、次の理由による。すなわち、カルシウムの含有量が0.001重量%より少ないと、正極の充電効率を向上させる効果を充分に持続させられないからでありまた該含有量が0.1重量%より多いと、負極のエネルギー密度の低下をもたらすからである。
【0014】
【実施例】
本発明を好適な実施例により説明する。
【0015】
(本発明電池A)
少量のコバルトおよび亜鉛を共沈した平均粒径約10μmの水酸化ニッケル粉末100重量部と、水酸化コバルト粉末10重量部と、水酸化カルシウム粉末5重量部とを、0.4重量%カルボキシメチルセルロース水溶液に分散させてペーストを調製した。多孔度95%の発泡ニッケル(住友電工製、商品名セルメット)に前記ペーストを充填・乾燥・プレスすることにより、カルシウム含有ペースト式水酸化ニッケル正極板を製作した。この正極板の水酸化ニッケルに対するカルシウムの含有量は、水酸化カルシウム粉末の添加量から換算して約2.0重量%である。
【0016】
また、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムと水酸化リチウムのモル比率が6:1:0.5であり、20℃での比重が1.3のアルカリ性水溶液を調製し、これにカルシウムを濃度が10-4 Mとなるように溶解して電解液を調製した。
【0017】
また、アクリル酸をグラフト重合することにより親水化処理したポリオレフィン製セパレータを、水酸化カルシウム粉末を分散した水溶液に浸漬し、乾燥させ、カルシウム含有セパレータを作製した。このセパレータ中のセパレータに対するカルシウムの含有量は、水酸化カルシウムの添加量から換算して約0.1重量%である。
【0018】
次に、組成がMmNi3.55Co0.75Mn0.40Al0.30である平均粒径約40μmの水素吸蔵合金粉末100重量部と、導電剤としてのカーボンブラック3重量部と、水酸化カルシウム粉末0.1重量部を混合し、ついで3重量%のポリビニルアルコール水溶液に分散させてペーストを調製した。このペーストを穿孔鋼板に塗布・乾燥・プレスすることにより、カルシウム含有ペースト式水素吸蔵合金負極板を製作した。
【0019】
前記水酸化ニッケル正極板3枚と水素吸蔵合金極板4枚とを、セパレータを介して積層し、極板群を構成した。極板群を電池缶に挿入し、さらに電解液を注液した後、封口して、理論容量が600 mAhの角型ニッケル・金属水素化物電池A(本発明電池A)を製作した。
【0020】
(本発明電池B)
正極および電解液は、本発明電池Aと同じものを用いた。また、その他の構成要素(負極およびセパレータ)は、カルシウム化合物を添加しないものを用いて、本発明電池Bを構成した。
【0021】
(本発明電池C)
正極およびセパレータは、本発明電池Aと同じものを用いた。また、電解液および負極は、カルシウム化合物を添加しないものを用いて、本発明電池Cを構成した。
【0022】
(本発明電池D)
正極および負極は、本発明電池Aと同じものを用いた。また、電解液およびセパレータは、カルシウム化合物を添加しないものを用いて、本発明電池Dを構成した。
【0023】
(比較電池A)
正極、負極、電解液、セパレータのいずれにも、カルシウム化合物を添加しなものを用いて、比較電池Aを構成した。
【0024】
(比較電池B)
正極は本発明電池Aと同じく、カルシウム化合物を添加したものを用い、負極、電解液およびセパレータは、カルシウム化合物を添加しないものを用いて、比較電池Bを構成した。
【0025】
以上の電池を、25℃で数回の充放電からなる化成充放電を施してから、高温充電効率の測定および充放電サイクルを行った。
【0026】
高温充電効率は、次の手順で測定した。まず、常温での放電容量を確認するため、25℃で600 mA(1CmA)にて66分間充電し、10分間休止した後、120 mA(0.2CmA)にて端子間電圧が1.0 Vになるまで放電した。その後、高温充電として、45℃で60 mA(0.1 CmA)にて、充電量が先の常温での放電容量と同じ値となるよう充電を行った。そして、25℃で3時間放置してから、120 mAにて端子電圧が1.0 Vになるまで放電した。なお、高温充電効率は、高温充電効率(%)=(45℃で60 mAにて充電した後の放電容量)/(45℃で60 mAにて充電した時の充電電気量)×100なる式で定義した。
【0027】
充放電サイクルは、次のようにして実施した。すなわち、25℃で600 mAにて54分間充電し、600 mAにて48分間放電するという条件で実施した。充電と放電の間の休止時間は、10分間である。100サイクルごとに、高温充電効率を測定した。
【0028】
充放電サイクルの進行にともなう、高温充電効率の推移を図1に示す。本発明電池A(正極、電解液、セパレータおよび負極にカルシウム化合物を添加した電池)、本発明電池B(正極および電解液にカルシウム化合物を添加した電池)、本発明電池C(正極およびセパレータにカルシウム化合物を添加した電池)および本発明電池D(正極および負極にカルシウム化合物を添加した電池)は、600サイクル経過後においても約95%の高温充電効率を維持できた。一方、カルシウム化合物を添加しなかった比較電池Aでは、高温充電効率は約88〜91%と、いずれのサイクル数においても本発明電池を下回った。また、正極にのみカルシウム化合物を添加した比較電池Bでは、サイクル初期の高温充電効率は約96%と優れていたが、600サイクル経過後は約90%に低下した。
【0029】
次に、正極へのカルシウムの添加が、電池の高温充電効率およびエネルギー密度におよぼす影響について詳細に調べた。まず、正極中のカルシウムの含有量が水酸化ニッケルに対して0.05、0.1、2、5、10および20重量%になるように、水酸化カルシウムを添加し、正極ペーストを調製した。そして、各々のペーストを発泡ニッケルに充填、乾燥、プレスして正極板とした。発泡ニッケルに対するペーストの充填体積は、すべて本発明電池Aの場合と同じにした。電解液、セパレータおよび負極は、いずれも本発明電池Aと同じとした。電池ケースのサイズは、67 mm×16.4 mm×5.6 mmである。放電電圧を1.2 Vとし、化成後の放電容量(0.2 CmA放電時)から、電池のエネルギー密度(Wh / l)を求めた。結果を図2に示す。正極中のカルシウム含有量を0.1重量%以上にすると、高温充電効率が95%以上になった。また、含有量が10重量%になると、電池のエネルギー密度は約130 Wh / lにまで低下した。よって、実用の電池に要求される性能を考慮すると、添加量は10重量%以下にとどめるのが好適と思われる。
【0030】
また、電解液中のカルシウム含有量が、電池の高温充電効率(1および600サイクル目)、エネルギー密度におよぼす影響について調べた。本発明電池B(正極と電解液にカルシウム化合物を添加した電池)をベースとして、電解液中のカルシウム含有量を5×10-6、1×10-5、1×10-4、2×10-4、5×10-4、および1×10-3 Mに調整し、電池を製作した。結果を図3に示す。電解液中のカルシウム含有量を1×10-5 M以上にすると、600サイクル経過後においても、高温充電効率は94%以上であった。また、1×10-3 Mより含有量を大きくすることは困難であった。よって、電解液への添加量は1×10-5〜1×10-3 Mとするのが好適と思われる。
【0031】
次に、セパレータ中のカルシウム含有量が、電池の高温充電効率(1および600サイクル目)およびエネルギー密度におよぼす影響について調べた。本発明電池C(正極とセパレータにカルシウム化合物を添加した電池)をベースとして、セパレータ中のカルシウム含有量を0.005、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0および2.0重量%に調整し、電池を製作した。結果を図4に示す。含有量が0.01重量%以上になると、600サイクル経過後の高温充電効率が93%以上となった。また、1.0重量%を超えた含有量となると、エネルギー密度が著しく低下した。これは水酸化カルシウム添加により、セパレータが目詰まりを起こすなどして、内部抵抗が増大し、電池の容量が低下したものと考えられる。よって、セパレータ中のカルシウム含有量は0.01〜1重量%とするのが好適と思われる。
【0032】
次に、負極中のカルシウム含有量が、電池の高温充電効率(1および600サイクル目)およびエネルギー密度におよぼす影響について調べた。本発明電池D(正極と負極にカルシウム化合物を添加した電池)をベースとして、負極中のカルシウム含有量を0.0005、0.001、0.005、0.01、0.05、0.1、および0.2重量%に調整し、電池を製作した。結果を図5に示す。含有量が0.001重量%以上の場合には、600サイクル経過後の高温充電効率が94%以上となった。また、0.1重量%を超えて添加すると、エネルギー密度が低下した。これは水酸化カルシウムの添加により、負極の導電性が低下し、電池の容量が低下したものと推察される。よって、負極中のカルシウム含有量は0.001〜0.1重量%とするのが好適と思われる。
【0033】
なお、上記の実施例では、カルシウム化合物として水酸化カルシウムを用いたが、カルシウム化合物は塩化カルシウム、炭酸カルシウム等なんであっても構わない。また、ペースト式電極を例にして示したが、焼結式電極や粉末加圧式電極であっても、同様の効果が得られる。また、上記の実施例では、ペーストを作製する際に水酸化カルシウム粉末を添加したが、カルシウム化合物を添加する方法は、電極を作製した後に電極表面にコートしても構わないし、活物質粉末にコートしても構わない。あるいは、当該電池を構成する部材がカルシウムを含有したものであって、電池作製時に本発明にかかるカルシウムの含有量を満たすものを用いる場合も、同様の効果を奏する。
【0034】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明の構成を実施することにより、充放電サイクル経過後も高温充電効率の優れたニッケル・金属水素化物を得ることができる。また、高価な材料を用いる必要がないので、コストを低く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における本発明電池(A,B,C,D)および比較電池(A,B)の充放電サイクル数と高温充電効率との関係を示す図。
【図2】本発明の実施例における本発明電池Aの正極中のカルシウム含有量と高温充電効率およびエネルギー密度との関係を示す図。
【図3】同電池Bの電解液中のカルシウム含有量と高温充電効率およびエネルギー密度との関係を示す図。
【図4】同電池Cのセパレータ中のカルシウム含有量と高温充電効率およびエネルギー密度との関係を示す図。
【図5】同電池Dの負極中のカルシウム含有量と高温充電効率およびエネルギー密度との関係を示す図。

Claims (3)

  1. 水酸化ニッケルを活物質の主体とする正極と、水素吸蔵合金を主体とする負極と、セパレータおよびアルカリ電解液を備えたニッケル・金属水素化物電池であって、前記正極中にカルシウムが、水酸化ニッケルに対して0.1〜10重量%含有されており、かつ電解液にカルシウムが含有されておりこの電解液中のカルシウム含有量が10 -5 〜10 -3 Mであることを特徴とするニッケル・金属水素化物電池。
  2. 水酸化ニッケルを活物質の主体とする正極と、水素吸蔵合金を主体とする負極と、セパレータおよびアルカリ電解液を備えたニッケル・金属水素化物電池であって、前記正極中にカルシウムが、水酸化ニッケルに対して0.1〜10重量%含有されており、かつセパレータにカルシウムが含有されておりこのセパレータ中のカルシウム含有量が、セパレータに対して0.01〜1重量%であることを特徴とするニッケル・金属水素化物電池。
  3. 水酸化ニッケルを活物質の主体とする正極と、水素吸蔵合金を主体とする負極と、セパレータおよびアルカリ電解液を備えたニッケル・金属水素化物電池であって、前記正極中にカルシウムが、水酸化ニッケルに対して0.1〜10重量%含有されており、かつ負極にカルシウムが含有されておりこの負極中のカルシウム含有量が、水素吸蔵合金に対して0.001〜0.1重量%であることを特徴とするニッケル・金属水素化物電池。
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