JP4528696B2 - 香辛料及びその加工方法 - Google Patents
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また、本発明は、該香辛料を用いた加工食品を含めた食品に関する。
さらに、本発明は、飽和水蒸気若しくは110℃〜400℃に加熱した過熱水蒸気にて処理してなる香辛料の加工方法に関する。
しかしながら、このような方法では、以下の問題点があった。
(1) 温度管理が難しく、長時間に至る焙煎処理など、工程が非常に煩雑である。
(2) また、一度に大量の仕込みが出来ないので効率が悪く、また装置の洗浄等に時間がかかる。
(3) 加工条件によっては、原料の壊れによる色ムラや、焦げ付きが発生し、香辛料中に含まれる油脂の酸化や、風味の劣化等を促進させる。
また、本発明は、香辛料が本来保持する風味の増強、若しくは香辛料が従来保持していない風味を付与することが可能な香辛料の加工方法を提供する。
さらに、本発明は、加工に際して簡単に使用できる香辛料を提供すること、本発明の香辛料を使用し、消費者の料理への嗜好性の多様化を満足させ、商品価値の高い新規な食品を提供することを目的とする。
例えば、本発明の香辛料について、例えば、ホールの唐辛子を被処理物とした本発明の唐辛子(ホール)は辛味が強くなり、糸切唐辛子等の細切りした唐辛子を被処理物とした本発明の唐辛子(細切り)は赤みの色彩が鮮やかになり、弾力性が向上し壊れにくいと言う商品価値の向上に付与した。
また、本発明は、低酸素若しくは無酸素条件の密閉系下における飽和水蒸気若しくは過熱水蒸気の処理を行う香辛料を含有する食品についても開示し、香辛料を含有する食品に対する該処理条件として、処理温度においては400℃以下、好ましくは110℃〜370℃、より好ましくは150℃〜340℃、最適には210℃〜300℃であり、処理時間においては60分以下、好ましくは20秒〜40分、より好ましくは50秒〜20分であり、香辛料を含有する食品の種類、使用態様、処理量、飽和水蒸気若しくは過熱水蒸気の装置の能力等により、適宜変更して行えばよい。
従って、飽和水蒸気若しくは110℃〜400℃に加熱した過熱水蒸気の特徴を生かしつつ、各種香辛料を焙煎風味(ロースト感)のある香ばしい香辛料に再加工できる。
本発明の香辛料の加工方法は、例えば、常圧下、低酸素若しくは無酸素条件の密閉系状態で過熱水蒸気を利用した連続式処理装置を用いれば、食品載置コンベアーに載せた香辛料を導き、過熱水蒸気の排気量と酸素濃度の関係テーブルに基づき、過熱水蒸気による噴射ないしは同環境下で処理することにより、すなわち、110℃〜400℃に加熱した過熱水蒸気を10秒〜60分間、噴射ないしは同環境下で、香辛料を処理する香辛料の加工方法があげられる。上記のように過熱水蒸気を噴霧することで、装置内の空気および過熱水蒸気を排気するため、少なくとも該処理装置内の空気の流入を防止しすることができる。本発明の方法によれば、装置内の酸素濃度を可変設定することができる装置を使用することが好ましい。
過熱水蒸気装置の酸素濃度を3%に設定して、シナモン(スティック状)を、ステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、下表1の処理温度、処理時間で連続式処理装置を用いて、本発明の香辛料(シナモン)を得た。得た本発明の香辛料を粉砕後、パネル10人による風味についての官能検査試験を行った。過熱水蒸気処理を行わず、上記の過熱水蒸気処理前の香辛料であるシナモンを粉砕して未処理品とし、該官能検査試験のコントロールとして用いた。
過熱水蒸気装置の酸素濃度を3%に設定して、乾燥した唐辛子をステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、表5の処理温度、処理時間で連続式処理装置を用いて、本発明の唐辛子を得た。得た本発明の唐辛子を粉砕後、該唐辛子自体をパネル10人による風味についての官能検査試験を行った。また、該唐辛子を0.2gふりかけたすうどんを食品として、前記と同様に官能検査試験を行った。
過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を2%に設定して、黒胡椒のホールをステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、表6の処理温度、処理時間でバッチ式処理装置を用いて、本発明の黒胡椒(ホール)を得た。得た本発明の黒胡椒(ホール)を粉砕後、該黒胡椒自体をパネル10人による風味についての官能検査試験を行った。また、該黒胡椒を0.2gふりかけた豚骨ラーメンを食品として、前記と同様に官能検査試験を行った。
過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を2%に設定して、乾燥した糸切唐辛子をステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、表7の処理温度、処理時間でバッチ式処理装置を用いて、本発明の糸切唐辛子を得た。得た本発明の糸切唐辛子自体をパネル10人による風味、外観観察、物性についての官能検査試験を行った。また、該糸切唐辛子をトッピングにしたサラダを食品として、前記と同様に官能検査試験を行った。
また、No.1、No.2の条件により得た本発明の糸切唐辛子は、赤みの色彩が鮮やかになり、物性が弾力性を向上させ壊れにくい性質を示した。本発明の過熱水蒸気処理を行うことで、大腸菌群は陰性、カビや酵母は0(ヶ/g)となり一般生菌数も著しく減少した。
過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を2%に設定して、黒胡椒のホールをステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、処理温度230℃、処理時間5分でバッチ式処理装置を用いて加工した。その後、室温まで静置冷却して本発明の黒胡椒を得た。該黒胡椒5gを粉砕せず95%エタノール10gに浸漬後、30分間室温で静置した。その後、ろ紙(#2)によるろ過後、GC-MS分析を行った。コントロールとして、過熱水蒸気処理を行っていない黒胡椒を用いた以外は、同一の条件でGC-MS分析を行った。
本実施例で得た本発明の黒胡椒は、コントロールと比較して、β−ピネン、3−カレン、α−フェランドレン、リモネン、p−シメン、テルピノーレン、テルピネン、β−フェランドレン、コパエン、α−カリオフィレン、α−キュベベン等のテルペン系化合物の香気成分や、ピペロナール等の芳香族アルデヒドの香気成分が優位に減少していた。
過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を2%に設定して、黒胡椒のホールをステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、処理温度250℃、処理時間10分間と、15分間の2種の条件で各々をバッチ式処理装置を用いて加工した。その後、室温まで静置冷却して、本発明の黒胡椒を得た。各々の該黒胡椒5gを、夫々別々に粉砕し95%エタノール10gに浸漬後、30分間室温で静置した。その後、ろ紙(#2)によるろ過後、GC-MS分析を行った。コントロールとして、過熱水蒸気処理を行っていない黒胡椒を用いた以外は、同一の条件でGC-MS分析を行った。
過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を2%に設定して、コリアンダー(ホール)をステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、処理温度210℃、処理時間7分でバッチ式処理装置を用いて加工した。上記の過熱水蒸気処理前の香辛料であるコリアンダー(ホール)を、過熱水蒸気処理の代わりにフライパンを用いて粉砕後に同程度の色になるまで160℃で50分間炒めた。この炒めたコリアンダーをコントロールとして用いた。
各々の処理により得たコリアンダーを室温まで静置冷却した後、粉砕した。この粉砕したコリアンダー粉末3gを95%エタノール9gに浸漬後、25分間室温で静置した。その後、ろ紙(#2)によるろ過後、GC−MS分析を行った。
過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を2%に設定して、クミン(ホール)をステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、処理温度220℃、処理時間7分でバッチ式処理装置を用いて加工した。上記の過熱水蒸気処理前の香辛料であるクミン(ホール)を、過熱水蒸気処理の代わりにフライパンを用いて粉砕後に同程度の色になるまで160℃で55分間炒めた。この炒めたクミンをコントロールとして用いた。
本実施例で得た本発明のクミンは、コントロールには発生していない2,6−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン等の香気成分が発現した。
クミン(ホール:15g)、コリアンダー(ホール:75g)、カルダモン(ホール:40g)、ローレル(5g)、クローブ(ホール:50g)、黒胡椒(ホール:50g)、ナツメグ(パウダー:15g)、シナモン(4g)を配合する香辛料のミックスを、過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を2%に設定して、ステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、処理温度180℃、処理時間5分でバッチ式処理装置を用いて加工し、その後、室温まで静置冷却した。該過熱水蒸気処理により得た上記の香辛料のミックスと、メース(パウダー:15g)を、すり鉢に入れて混合し粉末化し、本発明の香辛料ミックスであるガラムマサラを得た。
下記表8、表9、表10の配合により、各処理条件の香辛料ミックスを用いてタンドーリチキンを得た。該タンドーリチキンを、パネル10人による風味、外観観察についての官能検査試験を行った。
(2)三個のボウルに、各々にスパイスA、スパイスBまたはスパイスCを個々に含有する下記マサラソースの材料を入れて、各々を泡立て器で良く混ぜ合わせた。
(3)各ボウルの各マサラソースに(1)を入れ、冷蔵庫で半日間漬け込んだ。
(4)鶏肉表面のソースを軽く拭い、溶かしバターを塗り、オーブンで250℃、20分間焼いた。
コントロールとして、表10に記載した香辛料のミックスを混合してスパイスCを得た。なお、ガラムマサラは、実施例9で得た本発明のガラムマサラを用いた。
各処理条件のウコン粉末を用いた下記表11の配合によるウコンドリンクを得た。
各ウコン粉末を含む下記表11の配合で混合後、1.7gを100mlの水に溶解し、得たウコンドリンクの風味、外観観察についてパネル15人による官能検査試験を行った。
ウコン粉末A、ウコン粉末B及びウコン粉末Cは、各々下記条件のウコン(10mmφ×60mmの塊状)を本実施例で用いた。過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を2%に設定して、ステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、処理温度230℃、処理時間12分でバッチ式処理装置を用いて加工し、その後、室温まで静置冷却した。該過熱水蒸気処理により得たウコンを粉末状に粉砕し本発明のウコン粉末Aを得た。
コントロールとして、上記の過熱水蒸気処理やフライパンによる加熱処理をせず、加熱処理前のウコン(粒状)を粉末状に粉砕してウコン粉末Cを得た。
過熱水蒸気装置本体の酸素濃度を1%に設定して、ネギ(スライス)70部に対しパーム油(融点10℃)30部を噴霧コーティングした該ネギをステンレス製トレイに重ならない様に均一に広げ、処理温度210℃、処理時間4分でバッチ式処理装置を用いて加工し、その後、室温まで静置冷却し、本発明の乾燥ネギを得た。比較試験(1)は、ネギ(スライス)70部に対しパーム油(融点10℃)30部を噴霧コーティングした該ネギを、フライパンを用いて160℃で18分間炒めた後、室温まで静置冷却した。比較試験(2)は、フライパンによる処理温度を120℃に及び処理時間を75分に変更した以外は、上記比較試験(1)と同様にして得た。本実施例で得た本発明の乾燥ネギと、比較試験(1)及び(2)の乾燥ネギとの油脂劣化の違いを見る為に、各々の乾燥ネギのPOVを測定した。
コントロールとして、上記でネギの噴霧コーティングに使用した油脂(パーム油)についてのPOVを測定した。
従来、火力を必要とする調理加工食品を工場レベルで大量生産する場合、熱効率の面で充分な加工ができていなかったが、本発明により、酸素濃度、処理温度、処理時間を任意に選択することによって熱効率に優れた加工を実現でき、広範囲にわたって加工の自由度が向上した。また、従来、香ばしい調理感のある香辛料の加工においては、前処理、収率、作業性の面で限界があったが、本発明により、極めて短時間に、収率よく加工できるようになった。加工中、酸素が介在しないか非常に少ないので、油脂の酸化等、品質の劣化が抑えられるという効果も奏する。
Claims (7)
- スパイス及びハーブから選ばれる1種以上の未粉砕の香辛料を、酸素濃度3%以下の低酸素若しくは無酸素条件の密閉系下において、飽和水蒸気若しくは過熱水蒸気のいずれか又はこれらの組み合わせにて処理してなる香辛料。
- スパイス及びハーブから選ばれる1種以上の未粉砕の香辛料を、酸素濃度3%以下の低酸素若しくは無酸素条件の密閉系下において、110℃〜400℃に加熱した過熱水蒸気を噴射処理してなる香辛料。
- 処理に付す香辛料が、香辛料そのまま、又は予め香辛料を油脂と混合若しくは香辛料に油脂をコーティングしてなる香辛料である請求項1又は2記載の香辛料。
- 請求項1〜3のいずれか1項記載の香辛料を、加工食品を含めた食品に用いてなる食品。
- スパイス及びハーブから選ばれる1種以上の未粉砕の香辛料を、酸素濃度3%以下の低酸素若しくは無酸素条件の密閉系下において、飽和水蒸気若しくは過熱水蒸気にて処理してなる香辛料の加工方法。
- スパイス及びハーブから選ばれる1種以上の未粉砕の香辛料を、酸素濃度3%以下の低酸素若しくは無酸素条件の密閉系下において、110℃〜400℃に加熱した過熱水蒸気を噴射処理してなる香辛料の加工方法。
- 処理に付す香辛料が、香辛料そのまま、又は予め香辛料を油脂と混合若しくは香辛料に油脂を噴霧コーティングしてなる香辛料である請求項5又は6記載の香辛料の加工方法。
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