JP4527857B2 - 工事用列車停止装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、工事用列車停止装置に関し、特に、列車の上り線および下り線の双方に各別に独立して警報する工事用列車停止装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道線路、これに近接した工事現場、仮踏切の如き列車の運行に支障を来す恐れのある領域において工事を実施する場合、走行列車に対して警報する工事用列車停止装置を安全対策設備として設置することが義務付けられている。なお、この「工事用列車停止装置」は、走行する列車に対して臨時の停止信号を点滅発光して報知する単なる列車警報装置であって走行する列車に制動を加えてこれを実際に停止させる装置ではない。しかし、当該技術分野においては、この列車警報装置は「工事用列車停止装置」と言い慣わされている。
【0003】
この工事用列車停止装置の従来例を図2を参照して説明するに、これは下り信号発光機11、上り信号発光機12、警報ブザー21、制御部3、非常押ボタンスイッチ30、電源4より成る。工事用列車停止装置の本体は作業現場近傍に設置し、下り信号発光機11および上り信号発光機12は列車の制動距離を考慮して作業現場から700m程度離隔した線路の近傍で列車の運転士の認識し易い位置に上り線および下り線に対応して設置する。ところで、工事用列車停止装置はその本体および信号発光機を工事現場近傍に長期間に亘って仮設しておくものであり、通常は非動作状態とされていて、事故が発生した時にのみ非常押ボタンスイッチ30を押圧操作して事故の発生を報知する。
【0004】
工事用列車停止装置は、非常押ボタンスイッチ30を押圧操作することにより制御部3を介して電源4から下り信号発光機11および上り信号発光機12の双方に給電される。下り信号発光機11および上り信号発光機12はこれにより同時に点滅点灯して列車の運転士に事故の発生を報知する。非常押ボタンスイッチ30を押圧操作すると警報ブザー21にも同時に給電され、警報ブザー21は奏鳴し作業員および住民に事故発生を報知する。工事用列車停止装置には、更に、工事現場、仮踏切から外部の関連部署に事故発生を送信する送信部を付加する場合もある。
【0005】
図2の工事用列車停止装置の他に、安全対策設備として、可搬式列車防護装置が使用されている。通常の場合、電車線保線工事および信号線保守工事の如き線路内工事は、最終列車が通過した後の安全な夜間に線路閉鎖工事として実施される。ところが、線路閉鎖工事に依れない緊急を要する場合、作業区間に可搬式列車防護装置を必ず設置点灯することを条件として線路内工事を実施する。
図3を参照して説明するに、可搬式列車防護装置は、停止信号発光機10、停止信号発光機10を支える支柱51、支柱51を保持する架台5、電源4、電源4を停止信号発光機10に接続する電源ケーブル41より成る。停止信号発光機10は、筒体と、発光素子と、発光素子を点滅発光させる制御回路により構成される。
【0006】
この可搬式列車防護装置の本体は、作業を開始するに先だって、列車の制動距離を考慮して作業現場から700m程度離隔した地点の作業線の線路上或は線路の近傍の上り線或は下り線に対応して仮設する。ここで、停止信号発光機10を作業時間中は発光させた状態としておくことにより、停止信号発光機10の直前において進行してくる列車に対して停止信号を報知することができる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
以上の工事用列車停止装置および可搬式列車防護装置は、停止信号発光機を有して臨時の停止信号を走行する列車に報知する装置である点で共通している。しかし、工事用列車停止装置と可搬式列車防護装置は、上述した通り、その構成を異にしており、工事用列車停止装置を設置したからとはいえ、これを列車防護装置として転用することは許容されていない。即ち、工事用列車停止装置を設置している区間においても、線路閉鎖に依らない線路内工事を実施する場合は、列車防護装置を設置することとされている。
【0008】
そして、線路内作業に伴う列車防護装置の設置および撤去には当然にこれを実施する人員および手間を必要とする。列車防護装置を設置する位置は、上述した通り作業現場から700mも離隔した位置であるので、その設置および撤去に係わる時間は短時間であるとは言えず、これに従事することにより保守作業時間帯内の実作業時間が減少し、作業効率が低下する。そして、時には保守作業終了時の置き忘れにより列車の運行に支障をきたす場合もある。この様な事情から、工事用列車停止装置を設置している区間においては、この工事用列車停止装置の従来例をベースとし、これを列車防護装置としても利用することができる工事用列車停止装置の早期の開発が要請されていた。
【0009】
この発明は、工事用列車停止装置の従来に更なる構成を付加して、列車防護装置としても利用することができる工事用列車停止装置を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1:下り信号発光機11、上り信号発光機12および警報ブザー21を有し、発光機および警報ブザーに制御部3を介して電源4を選択接続する工事用列車停止装置において、電源4から下り信号発光機11、上り信号発光機12および警報ブザー21に到る各別の第1の駆動経路を形成し、電源4から警報ブザー21の第1の駆動経路を経由して下り信号発光機11および上り信号発光機12に到る各別の第2の駆動経路を形成した工事用列車停止装置を構成した。
【0011】
そして、請求項2:請求項1に記載される工事用列車停止装置において、下り信号発光機11および上り信号発光機12の第1の駆動経路のそれぞれには点灯用スイッチ31、32を介在させ、警報ブザー21の第1の駆動経路には非常押ボタンスイッチ30を介在させた工事用列車停止装置を構成した。
また、請求項3:請求項2に記載される工事用列車停止装置において、下り信号発光機11および上り信号発光機12のそれぞれに対して警報ブザー21の第1の駆動経路側から順方向に接続されるダイオード33、34を第2の駆動経路に介在させた工事用列車停止装置を構成した。
【0012】
更に、請求項4:請求項1ないし請求項3の内の何れかに記載される工事用列車停止装置において、制御部3の操作ボックス6の上部に下り信号動作表示灯36および上り信号動作表示灯37を具備し、下り信号動作表示灯36は電源から下り信号発光機11に到る第1の駆動経路に直列接続し、上り信号動作表示灯37は上り信号発光機12に到る第1の駆動経路に直列接続した工事用列車停止装置を構成した。
【0013】
また、請求項5:請求項2ないし請求項4の内の何れかに記載される工事用列車停止装置において、点灯用スイッチはキーロック式スイッチにより構成した工事用列車停止装置を構成した。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明の実施の形態を図1の実施例を参照して説明する。実施例において、従来例と共通する部材には共通する参照符号を付与している。
図1において、下り信号発光機11は、下り点灯用スイッチ31を介して電源4に接続する第1の駆動経路を経由して駆動点灯される。同様に、上り信号発光機12は、上り点灯用スイッチ32を介して電源4に接続する第1の駆動経路を経由して駆動点灯される。警報ブザー21は非常押ボタンスイッチ30を介して電源4に接続する駆動経路を経由して駆動奏鳴せしめられる。ここで、下り信号発光機11は、更に、非常押ボタンスイッチ30と、非常押ボタンスイッチ30から下り信号発光機11に対して順方向に接続されるダイオード33とを介して電源4に接続する第2の駆動経路を経由して駆動点灯される。このダイオード33は、下り点灯用スイッチ31から上り信号発光機12および警報ブザー21には逆方向に接続されていることになり、これにより阻止されて上り信号発光機12および警報ブザー21には電源4から通電されない。上り信号発光機12も、同様に、非常押ボタンスイッチ30と、非常押ボタンスイッチ30から上り信号発光機12に対して順方向に接続されるダイオード34とを介して電源4に接続する第2の駆動経路を経由して駆動点灯される。このダイオード34は、上り点灯用スイッチ32から下り信号発光機11および警報ブザー21には逆方向に接続されていることになり、これにより阻止されて下り信号発光機11および警報ブザー21には電源4から通電されない。
【0015】
以上の工事用列車停止装置を使用して下り線路内作業を実施する場合、下り点灯用スイッチ31を押圧操作して閉成する。これにより、電源4から下り点灯用スイッチ31を介して下り信号発光機11に到る第1の駆動経路が形成され、下り信号発光機11は駆動点灯される。この場合、下り点灯用スイッチ31を閉成しても、下り点灯用スイッチ31から上り信号発光機12および警報ブザー21にはダイオード33が逆方向に接続されているので、これにより阻止されて上り信号発光機12および警報ブザー21には通電されない。
【0016】
上り線路内作業を実施する場合、上り点灯用スイッチ32を押圧操作して閉成する。これにより、電源4から上り点灯用スイッチ32を介して上り信号発光機12に到る第1の駆動経路が形成され、上り信号発光機12は駆動点灯される。この場合、上り点灯用スイッチ32を閉成しても、上り点灯用スイッチ32から下り信号発光機11および警報ブザー21にはダイオード34が逆方向に接続されているので、これにより阻止されて下り信号発光機11および警報ブザー21には通電されない。
【0017】
工事現場において事故が発生した場合、非常押ボタンスイッチ30を押圧操作して閉成する。これにより電源4から非常押ボタンスイッチ30を介して警報ブザー21に到る駆動経路が形成され、警報ブザー21は駆動奏鳴せしめられる。ここで、非常押ボタンスイッチ30を押圧操作してこれを閉成した場合、電源4から非常押ボタンスイッチ30およびダイオード33を介して下り信号発光機11に到る第2の駆動経路が形成される。この第2の駆動経路を介して、下り信号発光機11も駆動点灯される。同様に、電源4から非常押ボタンスイッチ30およびダイオード34を介して上り信号発光機12に到る第2の駆動経路が形成される。第2の駆動経路を介して、上り信号発光機12も駆動点灯されるに到る。
【0018】
上述した通り、下り点灯用スイッチ31を押圧操作して閉成することにより、下り信号発光機11のみ駆動点灯され、上り信号発光機12および警報ブザー21は駆動されない。そして、上り点灯用スイッチ32を押圧操作して閉成することにより、上り信号発光機12のみ駆動点灯され、下り点灯用スイッチ31および警報ブザー21は駆動されない。即ち、この工事用列車停止装置は、工事を実施しようとする作業線に対応する一方の側の点灯用スイッチ31或いは点灯用スイッチ32を押圧操作して対応する下り信号発光機11或いは上り信号発光機12のみを駆動点灯することができる。また、非常押ボタンスイッチ30を押圧操作して閉成することにより、警報ブザー21が駆動奏鳴せしめられると共に、下り点灯用スイッチ31および上り信号発光機12の双方も駆動点灯される。
【0019】
以上のことは、この発明の工事用列車停止装置は、これ1台で、一方の側の点灯用スイッチ31或いは点灯用スイッチ32を押圧操作することにより図3の可搬式列車防護装置の作用効果を奏すると共に、非常押ボタンスイッチ30を押圧操作することにより図2の工事用列車停止装置の従来例の作用効果を奏するものであることを意味している。換言すれば、この工事用列車停止装置は、工事用列車停止装置として利用する場合は、下り信号発光機11および上り信号発光機12、警報ブザー21のすべてを警報器として動作させることができ、列車防護装置として利用する場合は、下り信号発光機11および/或は上り信号発光機12を警報器として動作させることができるものである。
【0020】
図4および図5を参照して第2の実施例を説明する。
ところで、工事用列車停止装置において、下り信号発光機11および上り信号発光機12は工事現場からおよそ700m程度離隔した線路の近傍まで電源ケーブル41を延伸して、列車の運転士の認識し易い位置および向きに上り線および下り線に対応して設置されている。従って、点灯用スイッチを押圧操作しても、下り信号発光機11および上り信号発光機12が点灯したか否かを工事現場から認識することは一般に不可能である。ここで、制御部3の操作ボックス6の上部に下り信号動作表示灯36および上り信号動作表示灯37を具備せしめた。この下り信号動作表示灯36は、電源から下り信号発光機11に到る第1の駆動経路に直列接続した。上り信号動作表示灯37は上り信号発光機12に到る第1の駆動経路に直列接続した。
【0021】
非常押ボタンスイッチ30は、通常、上面はスリットを入れた保護カバー35により覆われ、これにより様々の誤操作を防止している。非常時は、この保護カバー35を破壊して非常押ボタンスイッチ30にアクセスする。事故はまれにしか発生せず、保護カバー35を破壊した場合はこれを新品に交換する。これに対して、下りおよび上り点灯用スイッチ31、32は操作頻度は高く、操作する度び毎に交換するのは煩雑に過ぎる。従って、下り点灯用スイッチ31および上り点灯用スイッチ32を、保護カバー35による誤操作防止スイッチではなくして操作復旧の容易な下り点灯用キーロック式スイッチ31’および上り点灯用キーロック式スイッチ32’を使用する。これらキーロック式スイッチを動作させるには専用のキーを必要とするが、これは作業責任者が保管管理することとして誤操作を防止している。
【0022】
【発明の効果】
以上の通りであって、この発明による工事用列車停止装置は、これを設置した工事区間内において、線路閉鎖工事に依れない線路内作業を実施する場合においても、新たに列車防護装置を設置することなく安全な作業体制をとることができる。これにより、列車防護装置に要する費用およびこれを取り扱う手間および時間を省略することができ、これは工事に要するコストを全体として低下することにつながる。そして、付加されるべき制御部の構成は極く簡単なものであり、これを従来の工事用列車停止装置に付加して容易にこれをこの発明の工事用列車停止装置に改造することができる。
【0023】
そして、制御部の操作ボックスの上部に下り信号動作表示灯および上り信号動作表示灯を具備し、下り信号動作表示灯は電源から下り信号発光機に到る第1の駆動経路に直列接続し、上り信号動作表示灯は上り信号発光機に到る第1の駆動経路に直列接続したことにより、工事現場に居ながらにして遠方の下り信号動作表示灯および上り信号動作表示灯の動作状態を確実に認識することができる。。
また、点灯用スイッチはキーロック式スイッチにより構成することにより、保守を容易に誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例を説明する図。
【図2】従来例を説明する図。
【図3】他の従来例を説明する図。
【図4】他の実施例を説明する図。
【図5】操作ボックスを説明する図。
【符号の説明】
10 停止信号発光機
11 下り信号発光機
12 上り信号発光機
21 警報ブザー
3 制御部
30 非常押ボタンスイッチ
31 下り点灯用スイッチ
31’下り点灯用キーロック式スイッチ
32 上り点灯用スイッチ
32’上り点灯用キーロック式スイッチ
33 ダイオード
34 ダイオード
35 保護カバー
36 下り信号動作表示灯
37 上り信号動作表示灯
4 電源
41 電源ケーブル
5 架台
51 支柱
6 操作ボックス

Claims (5)

  1. 下り信号発光機、上り信号発光機および警報ブザーを有し、これら発光機および警報ブザーに制御部を介して電源を選択接続する工事用列車停止装置において、
    電源から下り信号発光機、上り信号発光機および警報ブザーに到る各別の第1の駆動経路を形成し、
    電源から警報ブザーの第1の駆動経路を経由して下り信号発光機および上り信号発光機に到る各別の第2の駆動経路を形成したことを特徴とする工事用列車停止装置。
  2. 請求項1に記載される工事用列車停止装置において、
    下り信号発光機および上り信号発光機の第1の駆動経路のそれぞれには点灯用スイッチを介在させ、警報ブザーの第1の駆動経路には非常押ボタンスイッチを介在させたことを特徴とする工事用列車停止装置。
  3. 請求項2に記載される工事用列車停止装置において、
    下り信号発光機および上り信号発光機のそれぞれに対して警報ブザーの第1の駆動経路側から順方向に接続されるダイオードを第2の駆動経路に介在させたことを特徴とする工事用列車停止装置。
  4. 請求項1ないし請求項3の内の何れかに記載される工事用列車停止装置において、
    制御部の操作ボックスの上部に下り信号動作表示灯および上り信号動作表示灯を具備し、下り信号動作表示灯は電源から下り信号発光機に到る第1の駆動経路に直列接続し、上り信号動作表示灯は上り信号発光機に到る第1の駆動経路に直列接続したことを特徴とする工事用列車停止装置。
  5. 請求項2ないし請求項4の内の何れかに記載される工事用列車停止装置において、
    点灯用スイッチはキーロック式スイッチにより構成したことを特徴とする工事用列車停止装置。
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