JP4527388B2 - ポリペプチドとレセプターとの相互作用を検出する方法、該検出する方法を用いてリガンドまたはリガンド変異体をスクリーニングする方法および該検出する方法を用いる診断方法 - Google Patents

ポリペプチドとレセプターとの相互作用を検出する方法、該検出する方法を用いてリガンドまたはリガンド変異体をスクリーニングする方法および該検出する方法を用いる診断方法 Download PDF

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Description

本発明は、タンパク質と膜レセプターとの相互作用を検出する方法、該検出法を用いてリガンドまたはリガンド変異体をスクリーニングする方法および該検出する方法を用いる診断方法に関する。
レセプターは生命の発生、成熟、成長、代謝、維持等に関わる根本的な生体分子であり、膨大な研究者の興味と努力がそれらレセプターの構造、機能、メカニズム、進化機構等に注がれてきた。さらに治療薬や農薬等のターゲットとして、レセプターを用いて多くの化学物質のスクリーニングが実施されてきた。レセプターは、機能や構造により、膜レセプター、核内レセプター、トランスポーター、コファクター、コアクチベーターなどに分類される。これらレセプターとして報告されるタンパク質の種類は近年莫大な数となって増加し続けている。核内レセプターと呼ばれるレセプターとしては、100を超す種類が報告されている。さらに生体膜表面や膜中に存在する膜タンパク質として報告されているレセプターの数も膨大である。
これらレセプタータンパク質と相互作用するポリペプチドのスクリーニングは、有効な薬物を見出すために重要である。特定のタンパク質間の相互作用を検出する方法として、免疫沈降法、ウェスタンブロッティング法等があるが、これらの方法は網羅的な解析には不向きである。酵母Two-Hybrid解析は網羅的な解析を行うことができるが、偽陽性、偽陰性を多く検出してしまい、真陽性、真陰性を即座に判定することが困難である(非特許文献1)。また、網羅的解析方法を代表するDNAアレイ技術をタンパク質解析のツールとして用いたものとしてプロテインチップが開発されている。プロテインチップの原理はDNAチップと同じで、スライドガラスや膜の上にタンパク質を高密度に固定化し、それらと相互作用するタンパク質や核酸などを検出するものである(非特許文献2)。
しかし、多くの場合、タンパク質の反応性は3次元の折りたたみ構造の変化によって変わるため、タンパク質を取り巻く僅かな環境の変化がタンパク質を変性させることもあり、リガンド等のポリペプチドをレセプターとの反応性を保持した状態で担体上に固定化することは困難であると考えられた。
さらに、細胞膜表面に存在する膜レセプターなどは疎水性の高い膜貫通ドメインを保持しているため可溶化し難く、in vitroで膜レセプターとポリペプチドとの相互作用を解析することは困難であると考えられ、複数種のポリペプチドを担体上に固定化し、この固定化ポリペプチドと膜レセプターとの相互作用を迅速かつ簡便に検出する方法は知られていない。
特開平10-174591号公報 竹縄忠臣ら編、バイオマニュアルUPシリーズ、タンパク質の分子間相互作用実験法、羊土社、1996 Lam KS et. al., Nature 354, 82 (1991)
本発明の課題は、膜レセプターとポリペプチドとの相互作用を迅速かつ簡便に検出する方法を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、膜レセプターにおける細胞外ドメインを含むが膜結合に必須の領域を含まないレセプター誘導体を作成し、これを担体上に固定化されたポリペプチドに反応させ、両者の相互作用を検出することにより上記課題が解決できることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
(1)担体上にポリペプチドを固定化し、これに膜レセプターにおける細胞外ドメインを含むが膜結合に必須の領域を含まないレセプター誘導体を反応させ、固定化したポリペプチドとレセプター誘導体との相互作用を検出することにより、ポリペプチドとレセプターとの相互作用を検出する方法。
(2)担体が、基板上にポリペプチドと共有結合しうる官能基、ならびにダイヤモンド、軟ダイヤモンド、炭素系物質および炭化物から選ばれる少なくとも1種の表面層を有する固体支持体である、(1)記載の方法。
(3)ポリペプチドおよび多価アルコールを含むスポッティング溶液を担体上にスポッティングすることによりポリペプチドを担体上に固定化する(1)または(2)記載の方法。
(4)担体上に固定化するポリペプチドが、膜レセプターに対するリガンドまたはリガンド変異体である(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)(4)記載の検出方法を用いて、膜レセプターに対するリガンドの変異体をスクリーニングする方法。
(6)(1)〜(3)のいずれかに記載の検出方法を用いて、膜レセプターに対するリガンドをスクリーニングする方法。
(7)(1)〜(4)のいずれかに記載の検出方法を用いる診断方法。
本発明により、レセプターとポリペプチドとの相互作用を迅速かつ簡便に検出することができ、レセプターに対するリガンドのスクリーニング、レセプターに対して所望の結合活性を有するリガンド変異体のスクリーニングが可能になる。
1.レセプターおよびレセプター誘導体
本発明で対象とする膜レセプターとしては、ペプチドホルモン、神経伝達物質、増殖因子、サイトカイン、カテコールアミンなどに対するレセプターが挙げられ、機能的には3量体Gタンパク共役型レセプター、イオンチャンネル共役型レセプター、プロテインキナーゼ型レセプター、介助レセプター(co-receptor)に分類される。また、形質膜を1回貫通するレセプター、形質膜を4回貫通するレセプターおよび形質膜を7回貫通するレセプター、さらに脂質を介して膜に結合するGPIアンカー型レセプターに分類することもでき、本発明は、形質膜を1回貫通するレセプターやGPIアンカー型レセプターとポリペプチドの相互作用の検出に好適である。具体的にはEGFレセプター、PDGFレセプター、アデノシンレセプター、FGFレセプター、TGFβレセプター、インシュリンレセプター、IGF-Iレセプター、アンジオテンシンレセプター、OBレセプター、メラノコルチンレセプター、アドレナリンレセプター、トロンビンレセプター、オキシトシンレセプター、イノシトール3リン酸レセプター、FSHレセプター、TSHレセプター、インターフェロンレセプター、インターロイキンレセプター、G-CSFレセプター、ケモカインレセプター、チロシンキナーゼレセプター、GDNFレセプター、TNFレセプター、グリピカンなどが挙げられる。
本発明は、EGFレセプターに対し好適に用いられる。EGFレセプターとしては、ErbB1、ErbB2、ErbB3、ErbB4が挙げられ、特に、ErbB1およびErbB4に対し好適に用いられる。
膜レセプターは、膜結合に必須の領域および細胞外に存在しリガンドと相互作用する細胞外ドメインを含む。膜結合に必須の領域とは、膜レセプターにおける、該膜レセプターと細胞膜との結合を担う領域を意味する。そのような領域としては、通常疎水性のアミノ酸で構成される膜貫通ドメインや、脂質を介して膜に結合するGPIアンカーが結合するアミノ酸を含む領域等が含まれるがこれらに限定されるものではない。本発明においてレセプター誘導体とは、膜レセプターにおける細胞外ドメインを含むが膜結合に必須の領域を含まない膜レセプターの誘導体を意味する。以下レセプター誘導体を、可溶性レセプター誘導体と称する場合もある。本発明におけるレセプター誘導体は、疎水性の膜結合に必須の領域を含まないため、水に可溶性である。そして、レセプター誘導体においては、リガンドと相互作用する細胞外ドメインが含まれているため、リガンドとの反応性が維持されている。可溶性を維持する観点から、本発明におけるレセプター誘導体は、膜レセプター構成要素のうちリガンドとの親和性に必須なドメインのみを含み、それ以外のドメインを含まないものが好ましい。レセプター誘導体は、既知の膜レセプターをコードするDNAに基づいて、当技術分野において通常用いられる方法により調製できる。すなわち、レセプター誘導体をコードするDNAをベクターに挿入し、該ベクターで宿主細胞を形質転換し、該形質転換体を培養することにより調製できる。
本発明のレセプター誘導体には、膜レセプターにおける細胞外ドメインを含むが膜結合に必須の領域を含まないポリペプチドに、他のペプチドが融合されたものも含まれる。融合に付される他のペプチドとしては、例えばFLAG(Hopp, T. P. et. al., BioTechnology 6: 1204-1210,1988)、6個のHis(ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、ヒトc-mycの断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag、E-tag、SV40T抗原の断片、lck tag、α-tubulinの断片、B-tag、Protein Cの断片、GST(グルタチオン S-トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、イムノグロブリンヒンジ領域、β-ガラクトシダーゼ、MBP(マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。
これらのペプチドを融合させることにより、レセプター誘導体の精製や標識を容易に実施することができる。また、本発明のレセプター誘導体は、イムノグロブリンヒンジ領域が融合されていることが好ましく、これによりレセプター誘導体をS−S結合により二量体化することができる。多くの場合、二量体化することにより、担体上のポリペプチドとの結合性が高まるため、検出感度を向上させることができる。好ましくは膜レセプターの細胞外ドメインにイムノグロブリンヒンジ領域を融合し、さらにエピトープタグ、特にFLAG-tagを融合する。イムノグロブリンヒンジ領域の存在により、二量体化が促進され、FLAG-tagの存在によりレセプター誘導体の精製およびポリペプチドとの相互作用の検出が容易になる。
レセプター誘導体の調製に使用されるベクターとしては、当技術分野において一般的に使用されるものを用いることができる。例えば、形質転換における宿主として大腸菌を用いる場合には、例えば、大腸菌内で複製させるための「ori」、および形質転換された大腸菌を選抜するための遺伝子(例えば、アンピシリンやテトラサイクリン、カナマイシン、クロラムフェニコール等の薬剤耐性遺伝子)をベクター上に有することが望ましく、このようなベクターとして具体的には、M13系ベクター、pUC系ベクター、pBR322、pBluescript、pCR-Script、pGEM-T、pDIRECT、pT7等を挙げることができる。
特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば大腸菌での発現を目的とした場合は、lacZプロモーター(Ward et. al., Nature 341: 544-546, 1989)、araBプロモーター(Better et. al., Science 240: 1041-1043, 1988)、またはT7プロモーター等を有するベクターを例示することができる。このようなベクターとしては、上記ベクターの他にpGEX-5X-1(ファルマシア社製)、「QIAexpress system」(キアゲン社製)、pEGFP、およびpET(この場合、宿主はT7 RNAポリメラーゼを発現するBL21が好ましい)等が挙げられる。また、発現ベクターには、ポリペプチド分泌のためのシグナル配列が含まれていてもよい。
他のベクターとしては、例えば哺乳動物由来の発現ベクター(例えばpcDNA3(インビトロゲン社製)や、pEGF-BOS(Nucleic Acids. Res. 18(17): 5322, 1990、pEF、pCDM8)、昆虫細胞由来の発現ベクター(例えば「Bac-to-BAC baculovairus expression system」(ギブコBRL社製)、pBacPAK8)、植物由来の発現ベクター(例えばpMH1、pMH2)、動物ウィルス由来の発現ベクター(例えばpHSV、pMV、pAdexLcw)、レトロウィルス由来の発現ベクター(例えばpZIPneo)、酵母由来の発現ベクター(例えば「Pichia Expression Kit」(インビトロゲン社製)、pNV11 、SP-Q01)、枯草菌由来の発現ベクター(例えばpPL608、pKTH50)等が挙げられる。
CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞等の動物細胞での発現を目的とした場合には、細胞内で発現させるために必要なプロモーター、例えばSV40プロモーター(Mulligan et. al., Nature 277: 108, 1979)、MMLV-LTRプロモーター、EF1プロモーター(Mizushima et. al., Nucleic Acids Res. 18: 5322, 1990)、CMVプロモーター等を持っていることが不可欠であり、細胞への形質転換を選抜するための遺伝子(例えば薬剤(ネオマイシン、G418等)耐性遺伝子)を有すればさらに好ましい。このような特性を有するベクターとしては、例えばpMAM、pDR2、pBK-RSV、pBK-CMV、pOPRSV、pOP13等が挙げられる。
また、複製開始点としては、ポリオーマウィルス、アデノウィルス、ウシパピローマウィルス(BPV)等の由来のものを用いることもできる。さらに、宿主細胞系で遺伝子コピー数増幅のために、発現ベクターは選択マーカーとして、アミノグリコシドトランスフェラーゼ(APH)遺伝子、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子、大腸菌キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(Ecogpt)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子等を含むことができる。
ベクターが導入される宿主としては特に制限はなく、例えば大腸菌や種々の真核細胞等を用いることが可能である。真核細胞を使用する場合、例えば動物細胞、植物細胞、真菌細胞を宿主に用いることができる。動物細胞としては、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、3T3、ミエローマ、BHK(baby hamster kidney)、HeLa、Vero、両生類細胞、例えばアフリカツメガエル卵母細胞(Valle, et. al., Nature 291: 358-340, 1981)、あるいは昆虫細胞、例えばSf9、Sf21、Tn5が知られている。CHO 細胞としては、特に、DHFR遺伝子を欠損したCHO細胞であるdhfr-CHO(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77: 4216-4220, 1980)やCHO K-1(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 60: 1275, 1968)を好適に使用することができる。動物細胞において、大量発現を目的とする場合には特にCHO細胞が好ましい。植物細胞としては、例えばニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum)由来の細胞が挙げられる。真菌細胞としては、酵母、例えばサッカロミセス(Saccharomyces)属、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、糸状菌、例えばアスペルギルス(Aspergillus)属、例えばアスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)が知られている。原核細胞を使用する場合、細菌細胞としては、大腸菌(E. coli)、例えばJM109、DH5α、HB101、XL1Blue、BL21等が挙げられ、その他、枯草菌が知られている。
また、宿主として動物を使用する場合、哺乳類動物、植物、昆虫が挙げられる。哺乳類動物としては、ヤギ、ブタ、ヒツジ、マウス、ウシを用いることができる(Vicki Glaser, SPECTRUM Biotechnology Applications, 1993)。また、植物を使用する場合、例えばタバコを用いることができる。さらに、昆虫としては、例えばカイコを用いることができる。
本発明の形質転換体を作製するためには、上記宿主に上記ベクターを導入する。そのための方法としては、大腸菌等の宿主細胞へのベクターの導入の場合、例えば塩化カルシウム法、エレクトロポレーション法(Chu, G. et. al., Nucl. Acid Res. 15: 1311-1326, 1987)を用いることができる。また、培養細胞等の宿主細胞へのベクターの導入の場合、例えばリン酸カルシウム法(Chen, C. and Okayama, H. Mol. Cell. Biol. 7: 2745-2752, 1987)、DEAEデキストラン法(Lopata, M. A. et. al., Nucl. Acids Res. 12: 5707-5717, 1984、Sussman, D. J.and Milman, G. Mol. Cell. Biol. 4: 1642-1643, 1985)、カチオニックリボソームDOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)を用いた方法、リポフェクチン法(Derijard, B. Cell 7: 1025-1037, 1994、Lamb, B. T. et. al., Nature Genetics 5: 22-30, 1993、Rabindran, S. K. et. al., Science 259: 230-234, 1993)等の方法を用いることが可能である。
さらに、動物にDNAを導入する場合、該DNAを適当なベクター(例えばアデノウイルスベクター(例えばpAdexlcw)やレトロウイルスベクター(例えばpZIPneo)等が挙げられるが、これらに制限されない)に組み込み、例えばレトロウイルス法、リポソーム法、カチオニックリポソーム法、アデノウィルス法等により生体内に導入することが可能である。
また、昆虫にベクターを導入する場合、例えば目的のタンパク質 をコードするDNAを挿入したバキュロウィルスをカイコに感染させることにより行うことができる(Susumu, M. et. al., Nature 315: 592-594, 1985)。また植物にDNAを導入する場合、例えば目的とするタンパク質 をコードするDNAを植物発現用ベクター、例えばpMON 530に挿入し、このベクターをアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のようなバクテリアに導入する。このバクテリアをタバコ、例えばニコチアナ・タバカムに感染させることでベクターを導入することができる(Julian K.-C. Ma et.al., Eur. J. Immunol. 24: 131-138, 1994)。
本発明に係る可溶性レセプター誘導体は、上記の形質転換体を培養することにより生産させることができる。培養は公知の方法に従って行うことができる。例えば、動物細胞の培養であれば、一般的に、培養液としては、DMEM、MEM 、RPMI1640、IMDM等を使用することができる。その際、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできるし、無血清培養してもよい。培養時のpHは、通常、約6〜8であるのが好ましい。培養は、通常、約30〜40℃で約15〜500時間行い、必要に応じて培地の交換、通気、攪拌を加える。
本発明に係る可溶性レセプター誘導体は、宿主細胞内または細胞外(培地等)から単離し、実質的に純粋で均一なポリペプチドとして精製することができる。ポリペプチドの分離、精製は、通常のポリペプチドの精製で使用されている分離、精製方法を使用すればよく、何ら限定されるものではない。例えばクロマトグラフィーカラム、フィルター、限外濾過、塩析、溶媒沈殿、溶媒抽出、蒸留、免疫沈降、SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電点電気泳動法、透析、再結晶等を適宜選択、組み合わせればポリペプチドを分離、精製することができる。または、さらにこれらのカラムを複数組み合わせることにより精製することが可能である。
クロマトグラフィーとしては、例えば上記のエピトープタグに対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー等が挙げられる(Strategies for Protein Purification and Characterization: A Laboratory Course Manual. Ed DanielR. Marshak et al., Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1996)。
また、本発明に係る可溶性レセプター誘導体をグルタチオンS-トランスフェラーゼタンパク質との融合タンパク質として、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換えタンパク質として宿主細胞(例えば動物細胞や大腸菌等)内で発現させた場合には、発現させた組み換えタンパク質はグルタチオンカラムまたはニッケルカラムを用いて精製することができる。融合タンパク質の精製後、必要に応じて融合タンパク質のうち、目的のタンパク質以外の領域を、トロンビンまたはファクターXa等により切断し、除去することも可能である。
2.ポリペプチドの担体への固定化
本発明においては、担体にポリペプチドを固定化し、該ポリペプチドに可溶性レセプター誘導体を反応させる。担体に固定化するポリペプチドとしては、膜レセプターと相互作用する可能性のあるポリペプチドであればいずれも対象となりうる。天然に存在するポリペプチドでもよいし、人工的に合成したものでもよい。本発明においてポリペプチドには、オリゴペプチド、タンパク質およびタンパク質断片等も包含される。
未知のポリペプチドを担体上に固定化し、可溶性レセプター誘導体との相互作用、すなわち結合の有無を検出することにより、該可溶性レセプター誘導体が由来する膜レセプターに対するリガンドをスクリーニングすることができる。膜レセプターにおいては、細胞外ドメインがリガンドとの相互作用を担うので、細胞外ドメインを含む本発明の可溶性レセプター誘導体との相互作用を検出することにより、もともとの膜レセプターとの相互作用を検出するのと同様の効果が得られる。
対象となるポリペプチドまたはポリペプチドを含む試料を溶媒に溶解または分散して、スポッティング溶液を調製する。このスポッティング溶液を、担体上にスポッティングした後インキュベートすることにより、ポリペプチドを担体上に固定化することができる。
溶媒としては、例えば、蒸留水、SSC(saline-sodium citrate)、PBS(phosphate buffered saline)、重曹(NaHCO3, sodium bicarbonate)など、極性有機溶媒、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、トリフルオロ酢酸、トリエチルアミン、1-メチル-2-ピロリドン、ジオキサン、酢酸エチルなどから選ばれる1以上の溶媒を使用できる。本発明においては、PBSを使用するのが好ましい。
スポッティングは、ポリペプチドを含むスポッティング溶液を、96穴または384穴等のプラスチックプレートに分注し、分注した溶液をスポット装置等を用いて担体上に滴下することによって行う。スポット装置としては通常は、ピンに試料溶液を保持させ、そのピンを担体表面に接触させ、そして溶液を担体表面に移行させてスポットを形成するピン方式による装置が用いられる。ピンの先端の形状には、ソリッドピンタイプ(特に、溝が切られていないもの)、クイルピンタイプ(万年筆のように溝が切られているもの)など様々なタイプがあり、いずれであっても使用することができる。好ましくは、クイルピンタイプである。また、ピン方式以外にも、インクジェットプリンタの原理を利用したインクジェット方式や、毛細管によるキャピラリ方式などを利用したスポット装置も用いることができる。
スポット当たりのスポッティング溶液のスポッティング量は、当業者であれば適宜決定することができるが、通常、1pL〜1μLの範囲にあり、好ましくは100pL〜100nLの範囲にある。スポットの大きさは、通常、直径が50〜300μmの範囲にある。そして、スポット間の距離は、通常、0〜1.5mmの範囲にあり、好ましくは100〜700μmの範囲にある。スポッティング後、通常、室温〜50℃、好ましくは30〜42℃にて、通常、3時間以下、好ましくは0.5〜1.5時間インキュベートとすることが好ましい。
ポリペプチドを担体に固定化した後、固定化されていないポリペプチド等を除去するため、担体を洗浄する。洗浄液としては、当技術分野で通常用いられているものを使用することができ、例えば、2xSSC、0.2%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)を含む水溶液を使用することができる。このようにして、数百〜数万個のスポットを有する担体を得ることができる。
上記スポッティング溶液には、多価アルコールを含有させるのが好ましい。多価アルコールとは、水酸基を2個以上有する有機化合物を意味し、具体的には、グリセリン、糖類(グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、マルトース、イソマルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、グリコーゲン、アミロース、セルロース、トレハロース、グリコシド、グルコン酸、ガラクトン酸、ガラクツロン酸、マンノン酸、グルコノラクトン)等が挙げられ、特に、グリセリンが好ましい。多価アルコールを含有させることにより、スポティング後の溶液の乾燥を防止することができ、水溶液中での化学反応を抑止することなくポリペプチドを基板表面へ共有結合させて、検出感度を向上させることができる。ポリペプチドを含むスポッティング溶液を用いる態様においては、ポリペプチドを含む溶液の体積が低いためスポットが乾燥しやすいが、スポッティング溶液に上記多価アルコールを含有させることによって乾燥を効果的に防止することができる。スポッティング溶液に含有させる多価アルコールの濃度は、通常5〜30質量%、好ましくは10〜20質量%である。
従って、本発明においては、ポリペプチドを発現する細胞からポリペプチドを精製する前の細胞粗抽出液をそのまま、または上記溶媒に溶解または分散し、これに上記多価アルコールを添加してスポッティング溶液とすることによって、このような未精製のポリペプチドを担体上に固定化できるとともに、可溶性レセプター誘導体との相互作用を検出できることが明らかになった。すなわち、本発明においては、スポッティング溶液中に対象となるポリペプチド以外の不純物が混合している場合であっても、可溶性レセプター誘導体との相互作用を検出することができる。従って、本発明によれば、生体試料、例えば、尿、血液、血清、血漿、だ液、鼻汁、涙液、髄液、リンパ液、汗等をそのまま、または上記溶媒に溶解または分散し、これに多価アルコールを加えてスポッティング溶液として、該試料に含まれるタンパク質を担体上に固定化し、可溶性レセプター誘導体との相互作用を検出することもできる。そうして、このような試料中にレセプターと相互作用する物質が含まれているかどうかを判定することができる。
本発明の一態様においては、ポリペプチドとして、使用するレセプター誘導体が由来するレセプターに結合するリガンドの変異体を担体上に固定化する。リガンド変異体は、上記の可溶性レセプター誘導体の調製と同様に、既知のリガンドをコードするDNAに基づき、リガンド変異体をコードするDNAをベクターに挿入し、該ベクターを用いて宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換体を培養することにより調製できる。精製方法等についてもレセプター誘導体と同様に行うことができるが、上記のとおり、宿主細胞培養液からリガンド変異体を精製する前の細胞粗抽出液を用いてスポッティングを行うこともできる。
膜レセプターとそれに対するリガンドの組み合わせは、当業者であれば選択することができる。例えば、EGFレセプター/EGF、アデノシンレセプター/アデノシン、PDGFレセプター/PDGF、FGFレセプター/FGF、TGFβレセプター/TGFβ、インシュリンレセプター/インシュリン、IGF-Iレセプター/IGF-I、アンジオテンシンレセプター/アンジオテン、OBレセプター/OB、メラノコルチンレセプター/メラノコルチン、アドレナリンレセプター/アドレナリン、トロンビンレセプター/トロンビン、オキシトシンレセプター/オキシトシン、イノシトール3リン酸レセプター/イノシトール3リン酸、FSHレセプター/FSH、TSHレセプター/TSH、インターフェロンレセプター/インターフェロン、インターロイキンレセプター/インターロイキン、G-CSFレセプター/G-CSF、ケモカインレセプター/ケモカイン、チロシンキナーゼレセプター/チロシンキナーゼなどが挙げられる。より具体的には、EGFレセプターファミリーでは、例えば、ErbB1/ベータセルリン、ErbB4/ベータセルリン、ErbB3/ニューレグリン1、ErbB4/ニューレグリン1、ErbB1/EGF, ErbB1/TGF-α, ErbB1/アンフィレギュリン、ErbB1/エピレギュリン、ErbB1/へパリン結合性EGF(HBEGF)、ErbB3/ニューレグリン1、ErbB3/ニューレグリン2α、ErbB3/ニューレグリン2β、ErbB4/ニューレグリン2α、ErbB4/ニューレグリン2β、ErbB4/ニューレグリン3、 ErbB4/ニューレグリン4、ErbB4/HBEGF、ErbB4/エピレギュリンの組み合わせが挙げられる。
リガンド変異体をコードするDNAは、当業者であれば、当技術分野において通常用いられる方法、例えば、部位特異的変異誘発法(Hashimoto-Gotoh, T. et.al., Gene 152: 271-275, 1995、Zoller, M. J. and Smith, M. Methods Enzymol. 100: 468-500, 1983、Kramer, W. et. al., Nucleic Acids Res. 12: 9441-9456, 1984、Kramer, W. and Fritz, H. J. Methods. Enzymol. 154: 350-367, 1987、Kunkel, T. A. et. al., Proc Natl Acad Sci USA. 82: 488-492, 1985、Kunkel et. al., Methods Enzymol. 85: 2763-2766, 1988)等を用いて変異を導入することにより調製できる。
可溶性レセプター誘導体の場合と同様に、他のペプチドをリガンド変異体に融合してもよい。リガンドに変異を導入することによりリガンドの翻訳等が阻害され末端まで転写・翻訳されない場合があるが、例えば、リガンド変異体のN末端やC末端にFLAG-tagやHA等のエピトープタグを融合させることにより、末端まで転写・翻訳されていることを確認することができる。
様々な変異を導入した複数種のリガンド変異体を担体上にそれぞれ固定化し、可溶性レセプター誘導体との相互作用を検出することにより、特定のレセプターに対して所望の活性を有するリガンド変異体をスクリーニングすることができる。例えば、上皮増殖因子(EGF)ファミリーに属するベータセルリン(betacellulin)は、EGFレセプターファミリーのErbB1およびErbB4の双方と相互作用するリガンドであることが知られているが、本発明の方法により、ベータセルリン変異体とErbB1およびErbB4との相互作用を検出することにより、ErbB1とは相互作用するがErbB4とは相互作用しないベータセルリン変異体、あるいは、ErbB4とは相互作用するがErbB1とは相互作用しないベータセルリン変異体などをスクリーニングすることができる。
また、本発明の検出方法を用いて、レセプターに競合的に結合して本来の機能を阻害または活性化する薬剤をスクリーニングすることもできる。本発明の薬剤のスクリーニング方法においては、候補化合物またはリガンド変異体を担体にスポッティングして各試料に含まれるポリペプチドを担体上に固定化し、膜レセプターとの相互作用を検出することにより求める候補物質を迅速且つ容易にスクリーニングできる。
3.ポリペプチドを固定化するための担体
ポリペプチドを固定化する担体としては、当技術分野で通常用いられるものを使用できる。例えば、白金、白金黒、金、パラジウム、ロジウム、銀、水銀、タングステンおよびそれらの化合物などの貴金属、およびグラファイト、カーボンファイバーに代表される炭素などの導電体材料;単結晶シリコン、アモルファスシリコン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素などに代表される半導体材料、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)などに代表されるこれら半導体材料の複合素材;ガラス、石英ガラス、アルミナ、サファイア、セラミクス、フォルステライト、感光性ガラスなどの無機材料;ポリエチレン、エチレン、ポリプロビレン、ポリイソブチレン、ポリエチレンテレフタレート、不飽和ポリエステル、含フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、アセタール樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエンスチレン共重合体、ポリフェニレンオキサイドおよびポリスルホンなどの有機材料等が挙げられる。
本発明においては、ポリペプチドを固定化する担体として、基板上にポリペプチドと共有結合しうる官能基、ならびにダイヤモンド、軟ダイヤモンド、炭素系物質および炭化物から選ばれる少なくとも1種の表面層を有する固体支持体を用いるのが好ましい。このような固体支持体を用いることにより、ポリペプチドを強固に固定化することができ、未精製のポリペプチドの固定化も可能になる。
上記固体支持体に用いられる基板の材料としては、例えば、シリコーン、ガラス、繊維、木材、紙、セラミックス、プラスチック(例えば、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂(Acrylonitrile Butadiene Styrene 樹脂)、ナイロン、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、メチルペンテン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂)、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン;金、銀、銅、アルミニウム、タングステン、モリブデン等の金属;前記金属粉末、セラミック粉末等に、前記樹脂をバインダーとして混合、結合形成したもの;前記金属粉末やセラミックス粉末等の原料をプレス成形機で圧粉したものを高温で焼結したものが挙げられる。
本発明の固体支持体は、基板上に表面層を有する。この表面層により、ポリペプチドと共有結合しうる官能基を導入するための化合物を基板上に強固に固定化することができる。
表面層は、ダイヤモンド、軟ダイヤモンド、炭素系物質および炭化物から選ばれる少なくとも1種から形成される。ダイヤモンド、軟ダイヤモンド、炭素系物質および炭化物としては、例えば、合成ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、天然ダイヤモンド、軟ダイヤモンド(例えば、ダイヤモンドライクカーボン)、アモルファスカーボン、炭素系物質(例えば、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ)のいずれか、それらの混合物、またはそれらを積層させたもの、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、炭化珪素、炭化タンタル、炭化トリウム、炭化チタン、炭化ウラン、炭化タングステン、炭化ジルコニウム、炭化モリブデン、炭化クロム、炭化バナジウム等の炭化物を挙げることができる。ここで、軟ダイヤモンドとは、いわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC:Diamond Like Carbon)等の、ダイヤモンドとカーボンとの混合体である不完全ダイヤモンド構造体を総称し、その混合割合は、特に限定されない。本発明においては、軟ダイヤモンドを用いるのが好ましい。
基板が、ダイヤモンド、軟ダイヤモンド、炭素系物質および炭化物から選ばれる少なくとも1種の材料で形成されている場合は、基板上に新たに表面層を形成させる必要はないが、基板がそれ以外の材料で形成されている場合は、表面処理を施すことによりダイヤモンド、軟ダイヤモンド、炭素系物質および炭化物から選ばれる少なくとも1種の材料で形成される表面層を形成させる。
表面処理を施した基板の一例としては、スライドガラスに軟ダイヤモンドを製膜した基板が挙げられる。このような基板は、ダイヤモンドライクカーボンが、水素ガス0〜99体積%、残りメタンガス100〜1体積%を含んだ混合ガス中で、イオン化蒸着法により作成したものであることが好ましい。表面処理によって形成される表面層の厚みは、1nm〜100μmであることが好ましい。
基板への表面処理は、公知の方法、例えば、マイクロ波プラズマCVD(Chemical Vapor Deposit)法、ECRCVD(Electric Cyclotron Resonance Chemical Vapor Deposit)法、ICP(Inductive Coupled Plasma)法、直流スパッタリング法、ECR(Electric Cyclotron Resonance)スパッタリング法、イオンプレーティング法、アークイオンプレーティング法、EB(Electron Beam)蒸着法、抵抗加熱蒸着法、イオン化蒸着法、アーク蒸着法、レーザ蒸着法などにより行うことができる。
また、前記の基板材料の積層体や複合体(例えば、ダイヤモンドと他の物質との複合体、(例えば2相体))を形成することにより、表面層としてもよい。
基板の形状およびサイズは特に限定されないが、形状としては、平板状、糸状、球状、多角形状、粉末状などが挙げられ、サイズは、平板状のものを用いる場合、通常は、幅0.1〜100mm、長さ0.1〜100mm、厚み0.01〜10mm程度である。また、基板の表面または裏面に、反射層としてTi、Au、Pt、Nb、Cr、TiC、TiN等の単層またはこれらの複合膜を製膜してもよい。反射層の厚みは、全体に均一であることが必要なため、好ましくは10nm以上、更に好ましくは100nm以上である。
本発明の固体支持体には、ポリペプチドを静電的に引き寄せるために静電層が設けられていてもよい。静電層としては、ポリペプチドを静電的に引き寄せ、ポリペプチドの固定化量を向上させるものであれば、特に制限はないが、例えば、アミノ基含有化合物など正荷電を有する化合物を用いて形成することができる。
前記アミノ基含有化合物としては、非置換のアミノ基(-NH2)、または炭素数1〜6のアルキル基等で一置換されたアミノ基(-NHR;Rは置換基)を有する化合物、例えばエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、n-プロピルアミン、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、アリルアミン、アミノアゾベンゼン、アミノアルコール(例えば、エタノールアミン)、アクリノール、アミノ安息香酸、アミノアントラキノン、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、プロリン、シスチン、グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、アスパラギン、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、アニリン、またはこれらの重合体(例えば、ポリアリルアミン、ポリリシン)や共重合体;4,4’,4”-トリアミノトリフェニルメタン、トリアムテレン、スペルミジン、スペルミン、プトレシンなどのポリアミン(多価アミン)が挙げられる。
静電層を表面層と共有結合させずに形成する場合には、例えば、表面処理する際に前記アミノ基含有化合物を製膜装置内に導入することによって、アミノ基を含有する炭素系皮膜を製膜する。また、静電層を表面層と共有結合させずに形成する場合には、静電層と表面層との親和性、即ち密着性を高める点で、基板上に、前記の非置換または一置換されたアミノ基を有する化合物および炭素化合物を蒸着させた後、ポリペプチドと共有結合しうる官能基を導入することが好ましい。ここで用いる炭素化合物としては、気体として供給することができれば特に制限はないが、例えば常温で気体であるメタン、エタン、プロパンが好ましい。蒸着の方法としては、イオン化蒸着法が好ましく、イオン化蒸着法の条件としては、作動圧が0.1〜50Pa、そして加速電圧が200〜1000Vの範囲であることが好ましい。
静電層を表面層と共有結合させて形成する場合には、例えば、表面層を有する基板に、塩素ガス中で紫外線照射して表面を塩素化し、次いで前記アミノ基含有化合物のうち、例えば、ポリアリルアミン、ポリリシン、4,4’,4”-トリアミノトリフェニルメタン、トリアムテレン等の多価アミンを反応させて、基板と結合していない側の末端にアミノ基を導入することにより、静電層を形成することができる。
また、静電層が施された基板にポリペプチドと共有結合しうる官能基を導入する反応(例えば、ジカルボン酸または多価カルボン酸を用いるカルボキシル基の導入)を溶液中で行う場合には、基板を、前記の非置換または一置換されたアミノ基を有する化合物を含有する溶液中に浸漬した後、ポリペプチドと共有結合しうる官能基を導入することが好ましい。前記溶液の溶媒としては、例えば水、N−メチルピロリドン、エタノールが挙げられる。
静電層が施された基板に、ジカルボン酸または多価カルボン酸を用いてカルボキシル基を導入する場合には、予めN−ヒドロキシスクシンイミドおよび/またはカルボジイミド類で活性化させたり、あるいは、反応をN−ヒドロキシスクシンイミドおよび/またはカルボジイミド類の存在下に行うことが好ましい。
基板を、非置換または一置換されたアミノ基を有する化合物を含有する溶液中に浸漬することにより、静電層を形成する場合に、アミノ基含有化合物としてポリアリルアミンを用いると、基板との密着性に優れ、ポリペプチドの固定化量がより向上する。静電層の厚みは、1nm〜500μmであることが好ましい。
本発明の固体支持体は、ポリペプチドと共有結合しうる官能基を有する。該官能基は、基板表面に化学修飾を施すことにより形成することができる。
前記官能基としては、例えばカルボキシル基、活性エステル基、ハロホルミル基、水酸基、硫酸基、シアノ基、ニトロ基、チオール基、アミノ基が挙げられる。
官能基としてカルボキシル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X-R1-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R1は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるハロカルボン酸、例えばクロロ酢酸、フルオロ酢酸、ブロモ酢酸、ヨード酢酸、2-クロロプロピオン酸、3-クロロプロピオン酸、3-クロロアクリル酸、4-クロロ安息香酸;式:HOOC-R2-COOH(式中、R2は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸;ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリメリット酸、ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸;式:R3-CO-R4-COOH(式中、R3は水素原子または炭素数1〜12の2価の炭化水素基、R4は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるケト酸またはアルデヒド酸;式:X-OC-R5-COOH(式中、Xはハロゲン原子、R5は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるジカルボン酸のモノハライド、例えばコハク酸モノクロリド、マロン酸モノクロリド;無水フタル酸、無水コハク酸、無水シュウ酸、無水マレイン酸、無水ブタンテトラカルボン酸などの酸無水物が挙げられる。
前記のようにして導入されたカルボキシル基は、シアナミドやカルボジイミド(例えば、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド)などの脱水縮合剤とN-ヒドロキシスクシンイミドなどの化合物で活性エステル化することができる。
官能基としてハロホルミル基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:X-OC-R6-CO-X(式中、Xはハロゲン原子、R6は単結合または炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるジカルボン酸のジハライド、例えばコハク酸クロリド、マロン酸クロリドが挙げられる。
官能基として水酸基を導入するために用いられる化合物としては、例えば、式:HO-R7-COOH(式中、R7は炭素数1〜12の2価の炭化水素基を表す)で示されるヒドロキシ酸またはフェノール酸が挙げられる。
官能基としてアミノ基を導入するために用いられる化合物としては、例えばアミノ酸が挙げられる。
本発明においては、基板上に表面処理層、好ましくは軟ダイヤモンド層を有し、さらにポリペプチドと共有結合しうる官能基、特にアミド結合を介して結合された末端にカルボキシル基を有する炭化水素基を有する固体支持体を担体として用いることが好ましい。さらに、該官能基は、N-ヒドロキシスクシンイミド等により活性化されていることが好ましい。このような固体支持体は、ポリペプチドを強固に固定化する点、精製ポリペプチドだけでなく粗細胞抽出物などの未精製試料に含まれるポリペプチドをも強固に結合することができる点において特に優れている。その結果、可溶性レセプター誘導体とポリペプチドとの相互作用を高感度で検出することが可能になる。
4.ポリペプチドと可溶性レセプター誘導体の相互作用の検出
次に、ポリペプチドを固定化した担体に、可溶性レセプター誘導体を反応させ、固定化したポリペプチドと可溶性レセプター誘導体との相互作用を検出する方法について説明する。
上記で作成したポリペプチドが固定化された担体は、可溶性レセプター誘導体と反応させる前にブロッキングを行うのが好ましい。ブロッキングは、当技術分野において通常用いられるブロッキング剤、例えば2%BSA含有0.1M Tris塩酸緩衝液、に浸して1時間ほど振とうすることによって実施できる。このときの浸漬温度は、室温である。その後、0.1%のTween20含有PBS等で洗浄し、遠心乾燥させる。このようにブロッキング処理をした後、可溶性レセプター誘導体を含有する溶液を添加する。そして、通常室温で、0.5〜3時間インキュベートし、可溶性レセプター誘導体の細胞外ドメインと担体上のポリペプチドとを反応させる。その後未反応の可溶性レセプター誘導体を除去するため、担体を洗浄する。洗浄液としては、当技術分野で通常用いられているものを使用することができ、例えば、2×SSC、0.2%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)含有水溶液、0.1% Tween20含有PBS等を使用することができる。洗浄後、担体上のポリペプチドに結合することにより担体上に残った可溶性レセプター誘導体を検出する。その結果、可溶性レセプター誘導体が結合したスポットに固定化されていたポリペプチドは、該可溶性レセプター誘導体の細胞外ドメインと結合すること、すなわち該誘導体が由来するレセプターと相互作用することがわかる。
可溶性レセプター誘導体と担体上のポリペプチドとの相互作用は、当技術分野において通常用いられる方法によって検出できる。例えば、可溶性レセプター誘導体に当技術分野で通常用いられる標識を付し、この標識に由来するシグナルに基づいて検出することができる。このような標識としては、放射性同位元素、酵素(例えば、アルカリホスファターゼ、酸性ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼおよびルシフェラーゼ)、蛍光色素(例えばフルオレセイン系列、ローダミン系列、エオシン系列、NBD系列など、具体的には、Cy5、Cy3、IC5、IC3、フルオレセイン、テトラメチルローダミン、テキサスレッド、アクリジンオレンジなど)、ならびに化学発光分子等が挙げられる。
特定の物質および該物質に対して親和性を有する物質を用いて、相互作用を検出することもできる。例えば、可溶性レセプター誘導体をビオチン化し、このビオチン化可溶性レセプター誘導体を担体上のポリペプチドと反応させた後、上記のような標識を付したアビジンを添加し、アビジンとビオチンの結合に基づいて、担体上のポリペプチドに結合した可溶性レセプター誘導体を検出することができる。このような態様で使用できる特定の物質/これに対し親和性を有する物質の組み合わせとしては、例えば、アビジンおよびストレプトアビジン等のビオチン結合タンパク質/ビオチン、マルトース結合タンパク質/マルトース、Gタンパク質/グアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルもしくはコバルト等の金属イオン、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ/グルタチオン、DNA結合タンパク質/DNA、抗体/抗原分子(エピトープ)、カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、ATP結合タンパク質/ATP、エストラジオールレセプタータンパク質/エストラジオールなどの各種レセプタータンパク質/そのリガンド、ならびにケトン基/ヒドラジド基、ジオール基/ヒドラジド基、アジド基/アルキル基、ソラレン/核酸塩基(ピリミジン環またはプリン環などの核酸塩基またはそのアナログ)などが挙げられる。これらの中で、アビジンおよびストレプトアビジンなどのビオチン結合タンパク質/ビオチンの組み合わせが最も好ましい。
あるいは、相互作用させた後の担体を、そのままレーザ脱離/イオン化−飛行時間型質量分析で分析することもできる。イオン化法の様式としては、マトリックス補助レーザ脱着(MALDI)法が好ましい。
本発明はまた、ポリペプチドと可溶性レセプター誘導体の相互作用を検出することにより特定の疾患を診断する方法に関する。本発明の診断方法においては、ポリペプチドと可溶性レセプター誘導体の相互作用を検出し、患者由来の試料に含まれる特定の膜レセプターに対するリガンドの量を測定し、その測定値に基づいて該膜レセプターおよびそのリガンドが関連すると考えられる疾患を診断することができる。例えば、患者の様々な部位に由来する生体試料を担体にスポッティングして各試料に含まれるポリペプチドを担体上に固定化し、膜レセプターとの相互作用を検出することにより、患者のどの部位で対照となる膜レセプターに対するリガンドが多く発現しているかを分析することができ、これにより簡便かつ有効な診断を実施することができる。本発明の方法においては、基板上にポリペプチドと共有結合しうる官能基、ならびにダイヤモンド、軟ダイヤモンド、炭素系物質および炭化物から選ばれる少なくとも1種の表面層を有する固体支持体を用いることが好ましく、また、生体試料に多価アルコールを添加してスポッティングすることが好ましい。これにより、生体試料を精製することなくポリペプチドを固定化できるとともに膜レセプターとの相互作用を検出することもできる。
膜レセプターまたはリガンドとそれに関連する疾患との組み合わせとしては、例えば、癌細胞で高発現がみられるErbB1受容体およびそれに結合して細胞の増殖を促進し病巣の増大を引き起こすリガンドと癌疾患との組み合わせが挙げられる。ErbB1に結合するリガンドは1種類に限定されないため、試料中の特定の因子を検出しても真の原因因子を見逃してしまう可能性がある。しかし、可溶性レセプターを用いて試料中の因子を検出することにより、患者の試料中における病巣を増大させる因子を検出し、評価・診断を行うことが可能になる。また、このような因子は癌細胞が増殖するために必要なリガンドとなっていると考えられるので、このような因子と競合的に結合し癌の増殖を抑制する低分子ペプチドのスクリーニングにも利用可能である。さらに、応用可能な例として自己免疫疾患が挙げられる。この疾患は血液中に自己の細胞表面物質を認識してしまう抗体(自己抗体)ができ、これが自己の細胞を攻撃することにより慢性的な炎症を起こすことが知られている。この場合、自己抗体は細胞表面に対するリガンドとみなすことができ、この方法を利用し、患者血液中の自己抗体をスポットして、可溶性レセプターを反応させることにより自己抗体が認識する物質の情報を得て、診断を下すことが可能である。また自己抗体が認識する低分子をスクリーニングして、自己抗体を中和するペプチドまたは化合物を得ることもできる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)ErbB細胞外ドメイン-ヒンジ-FLAG発現ベクターの調製
1-1. ErbB1細胞外ドメイン(ErbB1 ECD)-FLAG
pCO12-EGFR保持菌体を白金耳でとり50μg/mlアンピシリンを含むLB寒天培地(LB-Amp50 Agar)にストリークしコロニーアイソレイションを行った。次に50μg/mlアンピシリンを含むLB培地(LB-Amp50)5mlに植菌し、37℃で一晩、280/分で振盪培養した。培養した大腸菌を室温で3000rpm、10分間遠心し集菌してQIAprep Spin Miniprep Kit(QIAGEN)でプラスミドを抽出した。このプラスミド溶液を1μl(144ng相当)を0.2mlチューブに採り、2.5mM dNTP(TaKaRa)を6μl、10×PFUバッファを5μl、10μMフォワードプライマー♯530(配列番号1)と10μMリバースプライマー♯531(配列番号2)をそれぞれ1μlずつ、滅菌Ultra Pure Water(UPW)を35.5μl加え最後にPfu Turbo DNA polymerase(STRATAGENE)を0.5μl加えてサーマルサイクラーにセットし、95℃で2分、95℃で30秒、60℃で30秒、72℃で2分、30サイクル、72℃で10分の条件で反応を行い、ErbB1細胞外ドメイン(ECD)遺伝子を増幅した。ErbB1のN末端側にXhoIサイトを作り、ErbB1の膜貫通ドメインの上流にAgeIサイトを作った。反応液をエタチンメイト(NIPPON GENE)を使ってエタノール沈澱させ沈澱を18μlの滅菌UPWに溶解し、そこに10×PCRバッファ(SIGMA)を2.5μl、10mM dNTP(SIGMA)を4μl、Taq DNA polymerase(SIGMA)を0.5μl加えて72℃で1時間反応させ、先に増幅したErbB1 ECD遺伝子の3'末端にアデニンをテイリングさせた。この反応液をアガロース電気泳動して、2kbpのバンドを切り出してそこから、CONCERTTM Rapid Gel Extraction System(LIFE TECHNOLOGIES)でDNAを抽出した。そしてこれをエタノール沈殿し、沈殿を10μlの滅菌UPWに溶解した。アガロース電気泳動でErbB1細胞外ドメイン(ErbB1 ECD)のバンドを確認し、ErbB1細胞外ドメインとpCR2.1(TA cloning vector, Invitrogen)のモル比を100:1で混合しT4 DNA リガーゼ(NIPPON GENE)を1μl加え、16℃水槽で一晩反応させた。このライゲーション反応液の全量を無菌的にコンピテントセルXL-1 Blueに加え、30分間氷上に置き、42℃で1分間ヒートショックして、即氷上に置き充分冷却してからSOC培地を400μl加えて37℃で1時間培養して形質転換を行った。培養液を50μlの20mg/ml X-Galと10μlの100mM イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)とともにLB-Amp50 Agarに塗り広げ37℃で一晩培養して青白選択を行った。出てきたコロニーの内、白コロニーを採り100μlのLB-Amp50に植菌して7時間、280/分で振盪培養した。これを3分間遠心して上清を吸引し、ペレットを50μlの1% Triton X-100で溶菌した。そしてこの液を1μl、10μMフォワードプライマー♯547(配列番号27)、10μMリバースプライマー♯548(配列番号8)をそれぞれ1μl、2.5mM dNTPを2μl、10×PCRバッファを2.5μl、滅菌UPWを17.25μl、Taq DNA ポリメラーゼを0.25μlを混合しサーマルサイクラーにセットし、95℃で10分、94℃で1分、50℃で1分、72℃で1分、30サイクル、72℃で10分の条件で反応させた。反応液をアガロース電気泳動し、700bpのバンドがみえるもの3クローンを5mlのLB-Amp50に植菌して、37℃で一晩振盪培養した。そして、QIAprep Spin Miniprep Kitでプラスミドを抽出して、XhoI、AgeIの消化およびEcoRIによりクローニングベクターへのErbB1 ECD挿入を確認した。更にDNAシーケンサでErbB1 ECDの全塩基配列を確認した(用いたプライマーは♯361(配列番号7)、♯547(配列番号27)、♯548(配列番号8)、M13(-21)primer(配列番号14)(Applied Biosystems))。配列を確認したプラスミドはXhoI、AgeIで切断し反応液をアガロース電気泳動してErbB1 ECD(2kbp)のバンドを切り出した。切り出したゲルからCONCERTTM Rapid Gel Extraction SystemでDNAを抽出し、更にエタチンメイトでエタノール沈澱し、沈澱を10μlの滅菌UPWに溶解した。同時に、pEGFP-N1(pBO315)をXhoIとAgeIで切断し、70℃で15分おいて制限酵素を失活させた。そして、ErbB1 ECD遺伝子とpBO315のモル比が100:1となるように混合しT4 DNAリガーゼ(NEB)を1μl加えて、16℃で一晩反応させた。反応液を全量XL-1 Blueに導入して形質転換し50μg/mlカナマイシン含有 LB寒天培地(LB-Kn50 Agar)に植菌して37℃で一晩培養した。出現コロニーを5個取り50μg/mlカナマイシン含有 LB培地(LB-Kn50)5mlにそれぞれ植菌し一晩振盪培養した。QIAprep Spin Miniprep Kitでプラスミドをそれぞれ抽出しXhoIおよびAgeIで切断しpBO315にErbB1 ECDが挿入されたことを確認した。確認後、1つのクローンをAgeI、NotIで切断しpBO315からEGFPの配列を排除した。アガロース電気泳動を行い6kbpの断片を切り出した。この切り出したゲルからCONCERTTM Rapid Gel Extraction SystemでDNAを抽出し10μlの滅菌UPWに溶解させた。
一方、リンカーのFLAG-tagは100μM 合成オリゴヌクレオチド♯536、♯537(配列番号15、16)をそれぞれ2.5μlずつと10mM ATPを2μl、10×T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(PNK)バッファ(NEB)10μl、滅菌UPWを82μl、T4 PNK(NEB)を1μlを0.2mlチューブに混合し、サーマルサイクラーにセットして、37℃で1時間リン酸化反応を行い、続いて95℃で5分間DNAの変性反応を行い、65℃で5分間、37℃で30分間と徐々に温度を下げてアニールさせた。
そして先に調製したEGFPを除いたベクター断片とFLAG-tagのモル比が1:100となるように混合しT4 DNAリガーゼを1μl加えて、16℃で一晩反応させた。反応液は全てXL-1 Blueの形質転換に使用し、形質転換体はLB-Kn50 Agarに植菌した。一晩培養後、コロニーをとって5mlのLB-Kn50に植菌し37℃で一晩振盪培養した。そして、QIAprep Spin Miniprep Kitでプラスミドを抽出し制限酵素でFLAG挿入を確認した。挿入が確認されたクローンを2mlのLB-Kn50に植菌して37℃で7時間振盪培養した。培養液を1ml別の250ml LB-Kn50に移しオービタルシェイカーで一晩振盪培養(150rpm)した。培養液を500ml高速遠心筒に移し4℃で5000rpm、7分間遠心した(HITACHI himac CR20)。上清を捨て、菌体ペレットを少量のリンゲル液に懸濁し50ml高速遠心管に移した。そして4℃で5000rpm、10分間遠心し上清を捨てた。次にこのペレットをAlkaline Lysis SolutionI(50mM glucose 25mM Tris-Cl(pH8.0)10mM EDTA(pH8.0))5mlに懸濁し次に10mg/ml Lysozymeを500μl加えた。そして、Alkaline Lysis Solution II(0.2N NaOH 1% SDS)を10ml加えて数回静かに上下反転させて撹拌した。室温で10分間静置した後、氷冷しておいたAlkaline Lysis Solution III(3M 酢酸ナトリウム(pH5.2))を7.5ml加えて溶液が均一になるように数回上下に振った。氷上で10分間置いた後、4℃で11000rpm、30分間遠心した。遠心後上清を2本の30mlガラス遠心管に均等に分注し2-プロパノールを6.9mlずつ加えて良く混ぜた。10分間室温で静置して、25℃で8000rpm、15分間遠心した。上清を捨て沈澱を70%エタノールで洗い、沈澱を乾かしてそれぞれの遠心管に3mlのTE8.5を加え沈澱を溶かし、3.3gの塩化セシウムを加えて溶かした。これらを超遠心用チューブ2本に移し、更に20mg/mlエチジウムブロマイドをそれぞれのチューブに50μlずつ添加してしっかりと栓をした。ローターにチューブをセットして、20℃で62000rpm、6時間超遠心を行った。チューブをローターからはずし21ゲージの注射針(テルモ)をチューブの肩に刺し、18ゲージの注射針(テルモ)をセットした1ml注射筒(テルモ)でプラスミドのバンドを抜き取った。その際、495nmの光をチューブに当ててバンドを蛍光させた。抜き取った液は、1.5mlチューブに移しTE 飽和ブタノールを400μl加えてボルテックスし3分間遠心して赤く染まった有機相(上層)をピペットマンで吸引した。この操作を5回繰り返して、エチジウムブロマイドを除去した。このエチジウムブロマイドを除去した液は15mlガラス遠心管2本に移しこの溶液の3倍量の滅菌UPWを加えて混合した後、8倍量のエタノールを加えて良く混ぜ、氷上に15分間置いた。そして4℃で13000rpm、15分間遠心し、上清を捨て、沈澱を合計1mlのTE8.5に溶かした。これらを4本の1.5mlチューブに移しそれぞれに10μlずつ3M 酢酸ナトリウム(pH5.2)を加えてボルテックスし、更に520μlずつエタノールを加えてボルテックスしてドライアイス-エタノールバスに30分間浸けて、10分間遠心した。エタノールで沈澱を洗ってから乾燥させて、合計400μlの10mM Tris-HCl pH8.5 1mM EDTA(TE8.5)に溶解した。この菌体とプラスミドはそれぞれ-80℃、-20℃でpBO507として保存した。
1-2. ErbB4細胞外ドメイン(ErbB4 ECD)-FLAG
human fetal heart cDNAを1μl、10×pfxバッファを5μl、10×エンハンサーを5μl、50mM Mg2SO4を1μl、10μM フォワードプライマー♯532(配列番号3)、10μMリバースプライマー♯533(配列番号4)をそれぞれ1μlずつ、2.5mM dNTPを6μl、滅菌UPWを29μl、PLATINUM pfx DNAポリメラーゼ(GIBCO BRL)を1μlを0.2mlチューブに混合しサーマルサイクラーにセットして、94℃で2分、94℃で1分、55℃で1分、68℃で5分、35サイクル、68℃で10分の条件で反応させて、ErbB4遺伝子の全長を増幅させた。続いてこの反応液を1μl、10×PFUバッファを5μl、10μMフォワードプライマー♯534(配列番号5)、10μMリバースプライマー♯535(配列番号6)をそれぞれ1μlずつ、2.5mM dNTPを6μl、滅菌UPWを35.5μl、PFU turbo DNA ポリメラーゼを0.5μlを0.2mlチューブに加えて混ぜ、サーマルサイクラーにセットして、95℃で10分、95℃で30秒、65℃で30秒、72℃で2分30秒、35サイクル、72℃で10分の条件で反応させて、ErbB4細胞外ドメイン(ECD)遺伝子を増幅しN末端側にBglIIサイトを、そしてErbB4 膜貫通ドメイン上流にはAgeIサイトを作った。反応液をエタチンメイトを使って18μlの滅菌UPWに溶解した。これに、10×PCRバッファを2.5μl、10mM dATPを3μl、2.5mM dNTPを1μl、Taq DNAポリメラーゼは0.5μlそれぞれ加えて、72℃で1時間反応させて、DNAの3'末端にアデニンをテイリングさせた。また、上記のErbB1の操作と同様にしてTAクロ−ニングベクターのpCR2.1とライゲーションさせ、XL-1 Blueに形質転換し植菌する時に、X-Gal、IPTGを同時に加えて培養し青白選択を行った。白コロニーをErbB4 ECDの660bpを増幅するプライマー♯549、♯550(配列番号9、10)を用いてダイレクトPCRを行い、TAクロ−ニングベクターへのErbB4 ECDの挿入を確認した。更に、制限酵素AgeI、BglIIの消化および、EcoRIによる切断で挿入を確認した。また、プライマー♯361(配列番号7)、♯549(配列番号9)、♯550(配列番号10)、♯563(配列番号11)、♯564(配列番号13)、M13(-21)プライマー(配列番号14)を用いて、DNA塩基配列を確認した。確認後、ベクターをAgeI、BglIIで切断しアガロース電気泳動をしてErbB4 ECDのバンドを切り出した。ゲルからCONCERTTM Rapid Gel Extraction SystemでDNAを抽出し10μlの滅菌UPWに溶解させた。同時にpBO315もAgeI、BglIIで切断し反応液を65℃で15分置いて、制限酵素を失活させた。そしてErbB4 ECD遺伝子とFLAG-tagのモル比が1:100になるように混合し、T4 DNAリガーゼを1μl加え、16℃で一晩反応させた。そして、反応液の全量をXL-1 Blueの形質転換に用い形質転換体をLB-Kn50 Agarに植菌して、37℃で一晩培養した。出現コロニーを5mlのLB-Kn50に植菌し一晩培養してQIAprep Spin Miniprep Kitでプラスミドを抽出し、AgeI、BglIIで切断してスクリーニングした。以下、1-1と同様にして、FLAG-tagを挿入し、そして、プラスミドを塩化セシウム密度勾配超遠心により大量精製した。
1-3. レセプターECDのC末端側へのマウスIgG1ヒンジ領域の挿入(ErbB ECD-ヒンジ-FLAGの調製)
まず、ErbB1 ECD-FLAGベクター、ErbB4 ECD-FLAGベクター500ngをAgeIで切断した。反応液をエタチンメイトでエタノール沈澱し、沈澱を乾燥させてから17μlの滅菌UPWに溶かした。これに2μlのBacterial Alkaline Phosphatase(BAP)バッファ(TaKaRa)を加え、更にBAP(TaKaRa)を1μl加えて65℃で1時間反応させた。反応後滅菌UPWを80μl加え、更にフェノール/クロロホルムイソアミルアルコール(CIAA, クロロホルム:イソアミルアルコール=24:1)を100μl加えボルテックスした。室温で15分間遠心し水層(上層、無色透明)をピペットマンで回収し新しいチューブに移した。そこへ、再びフェノール/CIAAを加え同様の操作を2回繰り返した。最後に、CIAAを100μl加えボルテックスし、5分間遠心して水槽を回収した。そして、3M NaOAcを5μl加えエタノールを100μl加えて良く混ぜドライアイスエタノールバスに10分間置いた後10分間遠心して上清を除去し70%エタノールで沈澱を洗い、それから沈澱を乾かして10μlの滅菌UPWに溶解した。
マウスIgG1ヒンジ領域は100μM合成オリゴヌクレオチド♯584、♯585(配列番号18、19)をそれぞれ2.5μlずつ、10mM ATPを2μl、10×T4 PNKバッファを10μl、滅菌UPWを82μl、T4 PNKを1μlを0.2mlチューブに入れて、サーマルサイクラーにセットし、37℃で1時間反応させその後、95℃で5分間、60℃で5分間、37℃で30分間おいて調製した。
そして、AgeIで切断したErbB ECD-FLAG遺伝子とマウスIgG1ヒンジを混合し、T4 DNA リガーゼでライゲーションさせた。そして、ライゲーション反応液をコンピテントセルXL-1 Blueに形質転換して、LB-Kn50 Agarに植菌した。37℃で一晩培養して、コロニーを取り、塩基配列をDNAシーケンサーで確認した。また、1-1と同様にプラスミドの大量精製を行った。
(実施例2)ErbB細胞外ドメイン(ErbB ECD)-ヒンジ-FLAGの調製
2-1. ErbB ECD-ヒンジ-FLAG発現HEK293H細胞の樹立
ヒト胚性腎293H(HEK293H)細胞を293 SFM II(GIBCO)で培養した。細胞を回収し8×106個ずつ2本の1.5mLチューブに分注した。これを遠心して上清を除去しEP 培地(10mM グルコース、100μM DTT/RPMI1640)を800μLずつ加えて懸濁した。そしてプラスミドDNA:ErbB1 ECD-ヒンジ-FLAG発現ベクター(pBO547)またはErbB4 ECD-ヒンジ-FLAG発現ベクター(pBO548)を10μgずつ加え4mmギャップエレクトロポレーションキュベット(MβP)に移した。そしてGene pulser II(BIO-RAD)を用い0.26kV-950μFでプラスミドを導入した。T75cm2細胞培養ボトルに10% FCS-DMEMを入れ、エレクトロポレーションした細胞を加えた。そして、37℃、5% CO2で24時間培養した。それから、培養液を回収し1200rpm、5分、4℃で遠心し上清を除去し細胞を2mLずつの1mg/mL G418、100μg/mL カナマイシン / 293 SFM II(1mg/mL G418-293 SFM II)に懸濁し、生細胞数を計数した(ErbB1 ECD-ヒンジ-FLAG:8.2×105個、ErbB4 ECD-ヒンジ-FLAG:6.4×105個)。そしてT75cm2ボトルに18mLの1mg/mL G418-293 SFM IIを入れ、細胞を加えた。17〜21日間培養してG418耐性の細胞を選択した。
2-2. ErbB ECD-ヒンジ-FLAG -ヒンジ-FLAGの精製
175cm2細胞培養用フラスコ(BD FalconTM)に60mLの1mg/mL G418、100μg/mL カナマイシン入り293 SFM-II(GIBCO)を入れ3.5×106個のHEK293H/ ErbB ECD-ヒンジ-FLAG発現ベクターpBO547またはpBO548を撒いて37℃、5% CO2で6〜8日間培養した。この培養液を600〜800mL回収し、5,000rpm、10min、4℃で遠心(HITACHI himac CR20, rotor NO. 30)し上清を精製に用いた。TALON 2mL Disporsable Gravity Column(CLONTECH)にリン酸緩衝化食塩水(PBS)、pH7.4を2回通して濯いだ。それからAnti-FLAG(登録商標)M2 Agarose Affinity Gel(SIGMA)1mLをカラムに充填した。次にPBSをゲルのグリセリンが抜けるまで流し、そして、0.1M リン酸バッファ(pH3.5)を1mLずつ3回流してゲルを洗った。続いてPBSを1mLずつ5回カラムに通しカラムを平衡化した。次に培養上清をカラムに通した。その後、20mLのPBSでカラムを洗い、0.1M リン酸バッファ(pH3.5)でレセプターを溶出した。溶出液は1mLに対して2M リン酸バッファ(pH8.0)を90μLで受けて中和した。
2-3. ErbB ECD-ヒンジ-FLAGのビオチン化
ビオチン-(AC5)2-スルホ-OSu(スルホスクシンイミジルN-[N'-(D-ビオチニル)-6-アミノヘキサノイル]-6'-アミノヘキサノエート)(同仁化学)をUPWに溶解して3.3mMの溶液を作った。モル比でErbB ECD-ヒンジ-FLAG:ビオチン=1:12となるように混合し室温で4時間反応させた。反応を0.1Mグリシン50μLを加えて止めて、反応液の全量をUPWで2.5mLにして、PBSで平衡化したPD-10カラム(Amersham pharmacia biotech)にアプライして3mLのPBSで溶出してバッファ交換した。
(実施例3)リガンドの調製
3-1. 組み換えヒトベータセルリン(rhBTC)
rhBTCの精製は、Seno et al.(1996)Human Betacellulin, a Member of the EGF Family Dominantly Expressed in Pancreas and Small Intestine, is Fully Active in a Monomeric Form.Growth Factors 13, 181-191に従って行った。
3-2. Myc-BTC-HA粗抽出液
Myc-BTC-HA発現プラスミド(pBO651)を構築し、E.coli BL21(DE3)pLysSに導入し、50μg/mLアンピシリン、10μg/mLクロラムフェニコール含有LB培地でOD660が0.3になるまで培養した。その後、イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を終濃度0.4mMとなるように加え、更に3時間培養した。培養液を遠心して菌体を回収し、-80℃で凍結し、37℃で解凍した。菌体ペレットを培養液の1/50量の50mMリン酸バッファ(pH7.4)で懸濁し氷上に1時間おいて溶菌し、更にソニケーションした。遠心して上清を回収しMyc-BTC-HA粗抽出物とした。
(実施例4)固体支持体の作成
25mm(幅)x75mm(長さ)x1mm(厚み)のスライドガラスを、ポリアリルアミン水溶液(0.1g/l)に浸漬することにより、静電層を形成した。その後、静電層のアミノ基に、多価カルボン酸としてのポリアクリル酸を、0.1Mの1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミドの存在下で縮合した。そして、0.1M リン酸緩衝液(pH6)300mlに0.1mの1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド・塩酸塩と20mMのN-ヒドロキシスクシンイミドを溶解した活性化液中に30分間浸漬することによって活性化した。
(実施例5)相互作用の確認
96穴プレートにrhBTCを0.2mg/mLから2倍の系列希釈で、Myc-BTC-HAを含む細胞粗抽出液または対照としてMyc-BTC-HAを発現しないベクター(NC)を含む細胞粗抽出液を1.2倍と2倍から2倍の系列希釈でサンプルを調製した。各サンプルは10%グリセリンを含む。活性化した実施例4の固体支持体にGT-MASS SYSTEM(日本レーザー電子)でサンプルをスポットし、飽和食塩水を含ませた濾紙を敷いたシャーレに入れて37℃で1時間反応させた。次に15mLの2% BSA、0.1M Tris-Cl(pH7.4)/PBSに固体支持体を浸けて室温で1時間ブロッキングを行った。0.1% Tween-20含有PBS(PBST)で3回固体支持体を洗い遠心した、その後、1% BSAを含む100μg/mLビオチン化ErbB1 ECD-ヒンジ-FLAGを30μLかけてカバーグラスで覆い、室温で1時間反応させた。PBSTで3回洗い遠心した。そして、0.1% BSAを含むPBSに10μg/mL アビジン-Cy3、1μg/mL BSA-ビオチンを混合した液(反応30分前に調製)を30μLかけてカバーグラスで覆い室温で1時間反応させた。PBSTで4回洗い最後にPBSで1回濯いで遠心し、GTMASS SCANNERでCy3の蛍光を読み取った。蛍光画像を図3に示す。この蛍光画像においては、右方向へ同一の試料を連続してスポットしているので水平に並ぶ3点については組み換えベータセルリンの濃度がほぼ一定、上方向に向けて試料を2倍ずつ希釈したものをスポットしているので組み換えベータセルリンの濃度は上へ行く程低くなっている。蛍光強度をGTMASS ANALYSISを用いて解析した結果を図4に示す。以上の結果から、ErbBと相互作用するポリペプチドの固定化量が多いスポットほど、ErbB細胞外ドメインが多く結合していることがわかる。以上から、本発明の方法により、ポリペプチドと膜レセプターとの相互作用を検出できることが示された。
また、レセプター誘導体と反応させるときに、ビオチン化ErbB1 ECD-ヒンジ-FLAG(20μg/mLに固定)に加えて、無標識のErbB1 ECD-ヒンジ-FLAGを競合物質として加え(10μg/mL〜200μg/mL)混合した。その結果、競合物質が増加するほど蛍光は減少することが明らかとなった。以上から、担体上におけるベータセルリンとErbB1 ECD-ヒンジ-FLAGの相互作用を特異的に検出できることが示された。
ErbB 細胞外ドメイン(ECD)-ヒンジ-FLAGの構造を模式的に表す図である。 ErbB1 ECD-ヒンジ-FLAGのアミノ酸配列およびErbB4 ECD-ヒンジ-FLAGのアミノ酸配列(上)、ならびにC末端およびN末端にエピトープタグを有するベータセルリンのアミノ酸配列(下)を構造的に表す図である。 実施例5で、担体上に固定化された組み換えヒトベータセルリン精製品(左)、Myc-ベータセルリン−HAを含む粗抽出物(中央)および対照ベクターを含む粗抽出物(右)に、ビオチン化ErbB1 ECD-ヒンジ-FLAGを相互作用させ、さらにCy3−アビジンを反応させて撮影した蛍光画像である。 図3の蛍光画像において、各スポットにおける組み換えベータセルリン濃度と蛍光強度との関係(左)、各スポットにおけるMyc-ベータセルリン−HAを含む粗抽出物の希釈倍率と蛍光強度との関係(右)を表す図である。NCは対照ベクターを表す。 ビオチン化ErbB ECD-ヒンジ-FLAGとアビジン-Cy3-ビオチンBSA複合体との相互作用を表す図である。

Claims (7)

  1. 担体上にポリペプチドを固定化し、これに細胞表面上の膜レセプターにおける細胞外ドメインを含むが膜結合に必須の領域を含まず、該細胞外ドメインにイムノグロブリンヒンジ領域が融合し、さらにエピトープタグが融合したレセプター誘導体を反応させ、固定化したポリペプチドとレセプター誘導体との相互作用を検出することにより、ポリペプチドとレセプターとの相互作用を検出する方法。
  2. エピトープタグがFLAG-tagである、請求項1記載の方法。
  3. 担体が、基板上にポリペプチドと共有結合しうる官能基、ならびにダイヤモンド、軟ダイヤモンド、炭素系物質および炭化物から選ばれる少なくとも1種の表面層を有する固体支持体である、請求項1または2記載の方法。
  4. ポリペプチドおよび多価アルコールを含むスポッティング溶液を担体上にスポッティングすることによりポリペプチドを担体上に固定化する請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
  5. 担体上に固定化するポリペプチドが、膜レセプターに対するリガンドまたはリガンド変異体である請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。
  6. 請求項5記載の方法を用いて、膜レセプターに対するリガンドの変異体をスクリーニングする方法。
  7. 請求項1〜4のいずれか1項記載の方法を用いて、膜レセプターに対するリガンドをスクリーニングする方法。
JP2003413855A 2003-12-11 2003-12-11 ポリペプチドとレセプターとの相互作用を検出する方法、該検出する方法を用いてリガンドまたはリガンド変異体をスクリーニングする方法および該検出する方法を用いる診断方法 Expired - Fee Related JP4527388B2 (ja)

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