JPWO2003048363A1 - 対応付け分子とc末端ラベル化蛋白質の複合体および対応付け分子の複合体、ならびにそれらの複合体を利用した蛋白質間相互作用解析方法 - Google Patents

対応付け分子とc末端ラベル化蛋白質の複合体および対応付け分子の複合体、ならびにそれらの複合体を利用した蛋白質間相互作用解析方法 Download PDF

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Abstract

遺伝子型と表現型の対応付け分子と、C末端がピューロマイシン又はその誘導体を含むC末端ラベル化剤によりラベル化されたC末端ラベル化蛋白質との相互作用によって形成される複合体であって、対応付け分子を構成する蛋白質部分以外の部分および該C末端ラベル化剤がそれぞれ相互作用解析に必要な修飾を受けている、対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質の複合体を形成する対応付け分子およびC末端ラベル化蛋白質を用いる蛋白質間相互作用の解析方法。複数の、遺伝子型と表現型の対応付け分子を含み、該対応付け分子間の相互作用によって形成される複合体であり、対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を、対応付け分子を構成する蛋白質部分以外の部分に有することを特徴とする対応付け分子の複合体を形成する対応付け分子を用いる蛋白質間相互作用の解析方法。

Description

技術分野
本発明は、対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質の複合体および対応付け分子の複合体、ならびにそれらの複合体を利用した蛋白質間相互作用解析方法に関する。
背景技術
現在、ウイルスからヒトまで多様な生物のゲノムの塩基配列が解読されようとしている。ゲノムシーケンスの研究では、第2幕のポストシーケンスの研究として、解読したゲノム情報からその意味を解析する研究、すなわち、遺伝子や蛋白質の機能解析の研究が期待されている(Saegusa A.Japan boosts proteomics and cell biology...Nature 401,6751(1999),Dalton R,Abbott A.Can researchers find recipe for proteins and chips? Nature 402,6763(1999))。
蛋白質と遺伝子との間の機能解析における大きな違いの1つは、蛋白質の多くが、生体内で複数で関わり合って相互作用しながら機能を果たしていると言う点である。たとえば細胞が外界からホルモンなどの刺激を受けて、レセプターに結合すると、様々な蛋白質が構造を変え、様々な蛋白質と相互作用することで、膜内と細胞質内の一連のシグナル伝達系が動き出し、最終的には核内の転写調節系におよび、特定の遺伝子の発現が制御される。このような様々な蛋白質−蛋白質間相互作用のネットワークである遺伝子ネットワークを解析することが、ポストゲノム機能解析の新しい大きな研究テーマとなっている(宮本悦子、柳川弘志(2000)シリーズ・ポストシークエンスのゲノム科学3:プロテオミクス,pp.136−156;宮本悦子、柳川弘志(2001)蛋白質・核酸・酵素、46(2),pp.138−147)。このようなポストゲノム機能解析によって、蛋白質間相互作用ネットワーク解析から重要な生体酵素の発見などによる医薬品の創製が期待され、医療、食料、エネルギー、環境など多くの分野の産業で優れたネットワーク解析技術が所望されている。
遺伝子機能の解析技術としては、コンピューターによる大量のゲノムシーケンスデータの中から、蛋白質の構造解析より得た機能モチーフパターンを見つけ出すアルゴリズムなどを駆使して遺伝子機能を解析するバイオインフォマティックス(Sali A.Functional links between proteins.Nature 402,23(1999))、DNAチップなどによりどの遺伝子がいつ働いているかという生物学的情報を得ることを目的とした遺伝子発現プロファイルを解析するトランスクリプトミクス(Schena M,et al.Quantitative monitoring of gene expression patterns with a complementary DNA microarray.Science 270,467(1995))、そして、二次元ゲル電気泳動によるプロテオームの分離と質量分析計による同定(Blackstock W..P,Weir M..P.Proteomics:quantitative and physical mapping of cellular proteins.Trends Biotechnol 3,121(1999))や、蛋白質チップ(Dalton R,Abbott A.Can researchers find recipe for proteins and chips? Nature 402,6763(1999))による蛋白質発現プロファイルを解析するプロテオミクスなどがある。これらの研究の中でも、ゲノムに対するプロテオーム(蛋白質の総体)の研究であるプロテオミクスが特に注目されている。
進化分子工学のツールとして誕生した「遺伝子(遺伝子型)と蛋白質(表現型)の対応付け」を応用して、ポストゲノム機能解析における蛋白質間相互作用を網羅的に解析する方法として、in vitroウイルス法(Miyamoto−Sato E,et al.The constraction of the virus type assignment molecule in evolutionary molecular engineering.Viva Origino 25,35(1997),Nemoto N,et al.In vitro virus:Bonding of mRNA bearing puromycin at the 3’−terminal end to the C−terminal end of its encoded protein on the ribosome in vitro.FEBS Lett.414,405(1997),WO98/16636)、STABLE法(Doi N,Yanagawa H.STABLE:protein−DNA fusion system for screening of combinatorial protein libraries in vitro.FEBS Lett.457,227(1999))、ファージディスプレー法(Smith G.P.Searching for peptide ligands with an epitope library.Science 228,1315(1985))、リボソーム・ディスプレイ法(Mattheakis,L.C.et al.(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91,9022−9026,Mattheakis,L.C.& Dower,W.J.(1995)WO95/11922))、mRNA−ペプチドフュージョン(mRNAディスプレイ)法(Roberts R.W,Szostak J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,12297)などが知られている。
これらの方法は、遺伝子ライブラリーを無細胞翻訳によってその遺伝子がコードしている蛋白質をもつ対応付けライブラリーとすることにより、ある蛋白質(ベイト)と相互作用する蛋白質をもつ対応付け分子の遺伝子群を網羅的に検出(対応付け分子の遺伝子部分を利用してPCRで増幅して検出)するシステムである。このシステムが共通して抱えている問題点は、ライブラリーから網羅的にスクリーニングによって濃縮され絞り込まれた対応付け分子の遺伝子群の詳細な複合体の解析、すなわち、詳細な蛋白質間相互作用解析をいかにハイスループットに行うかである。
蛋白質間の相互作用を解析する方法としては、免疫沈降(Xiong et al.1993 Nature 366,701−704)、GST融合蛋白質によるプルダウン・アッセイ(Kaelin,et al.1991 Cell 64,521−532)、TAP法(Guillaume Rigaut,et al.,Nature biotechnology 17,1030(1999))、酵母ツーハイブリッド法(Fields S,Song O.A novel genetic system to detect protein−protein interactions.Nature 340,245(1989))などが知られている。免疫沈降法では、基本的に目的蛋白質の抗体がないと検出できない。GST融合蛋白質によるプルダウン・アッセイでは、ベイトをGST融合蛋白質として大腸菌などで大量発現させるため、ベイトの準備に手間がかかる。TAP法は、細胞で発現した蛋白質の複合体を網羅的にスクリーニングした後、その複合体の蛋白質を質量分析などで解析する必要がある。酵母ツーハイブリッド法では、酵母の細胞内で、あらゆる生物種からの2種類の蛋白質間の相互作用を調べることが出来るが、酵母細胞で発現するものに限られる。また、1組づつ解析していく必要があり、大規模な総当たり解析が、S.cerevisiae(Ito et al.2000 Proc Natl Acad Sci USA 97(3),1143−7;Uetz et al.2000 Nature 403(6770),623−7)、H.pylori(Rain et al.2001 Nature 409,211−215)、そしてC.elegans(Walhout et al.2000,Science 287(5450),116−22)で報告されているが、そのハイスループット化は容易ではない。また、C末端ラベル化法(Miyamoto−Sato,E.,Nemoto,N.,Kobayashi,K.,Yanagawa,H.:Nucleic Acids Res.28:1176−1182(2000)、特開平11−322781)も提案されてきているが、ラベル化剤の分離や未ラベル化蛋白質の分離などに手間のかかる点で改良の余地がある。
その他、蛋白質間相互作用の測定法として、表面プラズモン共鳴法、蛍光共鳴エネルギー移動法、蛍光偏光解析法、エバネッセント場イメージング法、蛍光相関分光法、蛍光イメージング法などが知られているが、特に、蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy:FCS)は、測定に必要な試料量が少なく、測定時間も短く、ハイスループットな測定法として期待されている。さらに、二種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法(Fluorescence Cross−Correlation Spectro−scopy:FCCS)では、一種類の蛍光色素を用いるFCSでは困難であった同程度の大きさをもつ分子間の相互作用も検出が可能であり、蛋白質間相互作用のハイスループットな測定法として期待される。
発明の開示
本発明の目的は、新規な蛋白質間相互作用解析方法を提供することである。特には、ハイスループットな蛋白質間相互作用解析を実現することである。
ハイスループットな蛋白質間相互作用解析を実現するために解決しなければならない主な問題は、従来のどのような相互作用測定法を利用するにしても、相互作用解析のための蛋白質の準備をなるべく簡単にすることである。すなわち、蛋白質合成、検出や固定のためのタグや蛍光色素などによる蛋白質の修飾、修飾した蛋白質の分離・精製、そして相互作用の形成などの各工程を出来る限り簡略化することである。
本発明者等は上記課題を達成すべく鋭意研究の結果、対応付け分子であるIVVとC末端ラベル化法によるC末端ラベル化蛋白質の複合体または対応付け分子の複合体を利用することで、蛋白質間の相互作用を解析できることを見出した。また、特定の態様で対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質を用いること、または、特定の態様の対応付け分子を用いることで、ハイスループットな蛋白質間相互作用解析を実現できることを見いだした。従って、本発明は以下の複合体及びそれを用いる蛋白質相互作用解析方法を提供する。
従って、本発明は、以下のものを提供する。
1. 遺伝子型と表現型の対応付け分子と、C末端がピューロマイシン又はその誘導体を含むC末端ラベル化剤によりラベル化されたC末端ラベル化蛋白質との相互作用によって形成される複合体であって、対応付け分子を構成する蛋白質部分以外の部分および該C末端ラベル化剤がそれぞれ相互作用解析に必要な修飾を受けている、対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質の複合体。
2. 一種類の対応付け分子と一種類のC末端ラベル化蛋白質から構成され、該対応付け分子が含む蛋白質と該C末端ラベル化蛋白質が同一あるいは異なる、1記載の複合体。
3. 該複合体が一種類の対応付け分子と二種類以上のC末端ラベル化蛋白質から構成される、1記載の複合体。
4. 対応付け分子が、スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子であり、該対応付け分子のスペーサーに対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を有する、1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
5. 無細胞翻訳系で、C末端ラベル化剤の存在下で、該mRNAと該C末端ラベル化蛋白質の蛋白質をコードするmRNAが翻訳されることにより対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質が同時に生成し、生成した対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質との間で相互作用することで形成される複合体であって、無細胞翻訳系におけるC末端ラベル化剤の濃度が、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化効率に十分で、かつ該対応付け分子の形成を阻害しない範囲である、4記載の複合体。
6. 相互作用解析に必要な修飾が検出用修飾および分離用修飾である4又は5記載の複合体。
7. 該対応付け分子がスペーサーに検出用修飾を有する、6記載の複合体。
8. 該対応付け分子がスペーサーに分離用修飾を有する、6記載の複合体。
9. 該対応付け分子がスペーサーに検出用修飾および分離用修飾を有する、6記載の複合体。
10. 該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤が検出用修飾を有する、4〜9のいずれか1項に記載の複合体。
11. 該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤が分離用修飾を有する、4〜9のいずれか1項に記載の複合体。
12. 該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤が検出用修飾および分離用修飾を有する、4〜9のいずれが1項に記載の複合体。
13. 分離用修飾として蛍光性物質を有する、8記載の複合体。
14. 検出用修飾として固定化物質を有する、9記載の複合体。
15. 検出用修飾として蛍光性物質および分離用修飾として固定化物質を有する、9記載の複合体。
16. 検出用修飾として蛍光性物質を有する、10記載の複合体。
17. 分離用修飾として固定化物質を有する、11記載の複合体。
18. 検出用修飾として蛍光性物質および分離用修飾として固定化物質を有する、12記載の複合体。
19. 対応付け分子がスペーサーにCy5を有する場合は、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤がローダミングリーンを有する、13または15記載の複合体。
20. 対応付け分子がスペーサーにローダミングリーンを有する場合は、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤がCy5を有する、13または15記載の複合体。
21. 固定化物質がビオチンである、14、15、17及び18のいずれか1項に記載の複合体。
22. 対応付け分子からmRNAが除去されている、4〜21のいずれか1項に記載の複合体。
23. 1〜22に記載された複合体を形成する対応付け分子及びC末端ラベル化分子を用いる蛋白質間相互作用の解析方法であって、対応付け分子を固定化することを特徴とする、解析方法。
24. 1〜22に記載された複合体を形成する対応付け分子及びC末端ラベル化分子を用いる蛋白質間相互作用の解析方法であって、対応付け分子を固定化しないことを特徴とする蛋白質間相互作用の解析方法。
25. RIもしくは蛍光イメージングアナライズ法による、またはDNAチップもしくはプロテインチップを用いる、23記載の解析方法。
26. 蛍光相互相関分析法による、24記載の解析方法。
27. 複数の、遺伝子型と表現型の対応付け分子を含み、該対応付け分子間の相互作用によって形成される複合体であり、対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を、対応付け分子を構成する蛋白質部分以外の部分に有することを特徴とする対応付け分子の複合体。
28. 同一あるいは異なる蛋白質を含む2種類の対応付け分子からなる、27記載の複合体。
29. 同一あるいは異なる蛋白質を含む3種類以上の対応付け分子からなる、27又は28記載の複合体。
30. 対応付け分子が、スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子であり、かつ該対応付け分子のスペーサーに、対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を有する、27〜29のいずれか1項に記載の複合体。
31. 無細胞翻訳系で複数のmRNAが翻訳されることにより複数の対応付け分子が同時に生成し、生成した対応付け分子間で相互作用することで形成される、30記載の複合体。
32. 相互作用解析に必要な修飾が検出用修飾および分離用修飾である、30又は31記載の複合体。
33. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾を有する、32記載の複合体。
34. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに分離用修飾を有する、32記載の複合体。
35. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに分離用修飾を有し、残りの少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾を有する、32記載の複合体。
36. 検出用修飾として蛍光性物質を有する、32、33及び35のいずれか1項に記載の複合体。
37. 分離用修飾として、固定化物質を有する、32、34及び35のいずれか1項に記載の複合体。
38. 検出用修飾として蛍光性物質、および分離用修飾として固定化物質を有する、35記載の複合体。
39. 固定化物質がビオチンである、37又は38記載の複合体。
40. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾としてCy5を有し、残りの対応付け分子が検出用修飾としてローダミングリーンを有する、36又は38記載の複合体。
41. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾としてローダミングリーンを有し、残りの対応付け分子がスペーサーに検出用修飾としてCy5を有することを特徴とする複合体。
42. 対応付け分子が、mRNAが除去された対応付け分子であり、mRNAが除去された対応付け分子間の相互作用によって形成される30〜41のいずれか1項に記載の複合体。
43. mRNAが除去された対応付け分子のスペーサーに検出用修飾を有する、42記載の複合体。
44. mRNAが除去された対応付け分子のスペーサーに分離用修飾を有する、42記載の複合体。
45. mRNAが除去された対応付け分子のスペーサーに分離用修飾および検出用修飾を有する、42記載の複合体。
46. 27〜45のいずれか1項に記載された複合体を形成する対応付け分子を用いる蛋白質間相互作用の解析方法であって、対応付け分子を固定化することを特徴とする、解析方法。
47. 27〜45のいずれか1項に記載された複合体を形成する対応付け分子をを用いる蛋白質間相互作用の解析方法であって、対応付け分子を固定化しないことを特徴とする、解析方法。
48. RIもしくは蛍光イメージングアナライズ法による、またはDNAチップもしくはプロテインチップを用いる、46記載の解析方法。
49. 蛍光相互相関分析法による、47記載の解析方法。
50. スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子からmRNAを除去することにより得られる対応付け分子であって、スペーサーが、蛋白質のC末端に結合した、ピューロマイシンあるいはピューロマイシンと少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAからなるペプチドアクセプター領域、ペプチドアクセプター領域に結合した、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域、及び、PEG領域に結合した、少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAの塩基に機能修飾を施した機能付与ユニットを含む、対応付け分子。
発明を実施するための最良の形態
蛋白質間の相互作用を解析する際に、それら相互作用している蛋白質の複合体を分離し、検出する工程が必要である。これまで、融合蛋白質などにより分離用の修飾を施したものと、in vitroウイルスなどの対応付け分子により検出用の修飾(遺伝子型の遺伝子タグのRT−PCRによる増幅)を施したものとの複合体とそれを利用した蛋白質間の相互作用の解析については早くから提案してきたが(宮本悦子、柳川弘志(2000)シリーズ・ポストシークエンスのゲノム科学3:プロテオミクス,pp.136−156;宮本悦子、柳川弘志(2001)蛋白質・核酸・酵素、46(2),pp.138−147)、本発明は、IVVのスペーサーに分離用あるいは検出用の機能を持たせて、IVVとC末端ラベル化蛋白質との相互作用による複合体を利用して蛋白質間の相互作用を解析するもので、これまでそのような発想は皆無であった。その理由としては、対応付け分子の本来の目的である遺伝子型を増幅して表現型を検出する技術を必ずしもここでは利用しないことが挙げられる。すなわち、本発明では、融合蛋白などの設計は全く必要ない。特にIVVを用いた場合には、IVVの形成時に、同時にIVVのスペーサーに分離用の修飾(ベイトIVVと呼ぶことがある。)あるいは/および検出用の修飾(プレイIVVと呼ぶことがある。)を施すことが可能で、さらに、C末端ラベル化法によりC末端ラベル化蛋白質のC末端ラベル化剤に分離用の修飾(ベイトC末端ラベル化蛋白質と呼ぶことがある。)あるいは/および検出用の修飾(プレイC末端ラベル化蛋白質と呼ぶことがある。)を施すことが可能である。この様な特徴を持つIVVとC末端ラベル化蛋白質との相互作用による複合体を利用して蛋白質間の相互作用解析を可能としたものである。また、特にIVVを用いた場合には、IVVの形成時に、同時にIVVのスペーサーに分離用の修飾(ベイトIVVと呼ぶことがある。)および検出用の修飾(プレイIVVと呼ぶことがある。)を施すことが可能で、さらに、IVV間相互作用による複合体を利用して蛋白質間の相互作用解析を可能としたものである。すなわち、ハイスループットなプロテオーム解析法として、対応付け分子であるIVVをこれまでとは異なる方法で利用することで、上記の課題を解決し、蛋白質間相互作用解析を行うことができる。
以上により、従来のin vitro virus法などによりライブラリーから網羅的にスクリーニングによって濃縮された対応付け分子の遺伝子群の詳細な複合体の解析、すなわち、詳細な蛋白質間相互作用解析をハイスループットに行うことができる。以下、詳細に説明する。
<1>本発明の複合体を構成する対応付け分子
本明細書において、対応付け分子とは、表現型と遺伝子型と対応付ける分子を意味する。対応付け分子は、遺伝子型を反映する塩基配列を有する核酸を含む遺伝子型分子と、表現型の発現に関与するタンパク質を含む表現型分子とが結合してなる。遺伝子型分子は、遺伝子型を反映する塩基配列を、その塩基配列が翻訳され得るような形態で有するコード分子と、スペーサー部とが結合してなる。
対応付け分子における、表現型分子に由来する部分、スペーサー分子に由来する部分、及び、コード分子に由来する部分をそれぞれ、デコード部、スペーサー部及びコード部と呼ぶ。また、遺伝子型分子における、スペーサー分子に由来する部分、及び、コード分子に由来する部分をそれぞれ、スペーサー部及びコード部と呼ぶ。
図8に、対応付け分子、スペーサー分子及びコード分子の一例の大まかな構成を示す。この対応付け分子は、ピューロマイシンを含むスペーサー(スペーサー部と呼ぶ)と表現型のコードを反映する塩基配列(コード部と呼ぶ)からなる。この対応付け分子は、コード分子に何らかの方法によってピューロマイシンを含むスペーサー部を結合して遺伝子型分子とし、無細胞翻訳系において、リボソーム上で表現型分子と連結した構成をもつ。スペーサー分子は、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域、少なくともピューロマイシンあるいはピューロマイシンと1残基以上のDNAあるいは/またはRNAからなるCCA領域、少なくとも1残基以上のDNAあるいは/またはRNAを含むドナー領域、さらに、少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAの塩基に機能修飾を施した機能付与ユニット(X)からなる。コード分子は、デコード部の一部の配列からなるDNAあるいは/またはRNAのポリA配列を含む3’末端領域、および、DNAあるいは/またはRNAからなる転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含んだ5’UTR、さらに、主として表現型分子の配列からなるORF領域から構成される。以下、この例を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
<1−1>スペーサー分子
スペーサー分子は、核酸の3’末端に結合できるドナー領域と、ドナー領域に結合した、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域と、PEG領域に結合した、ペプチド転移反応によってペプチドと結合し得る基を含むペプチドアクセプター領域とを含む。
核酸の3’末端に結合できるドナー領域は、通常、1以上のヌクレオチドからなる。ヌクレオチドの数は、通常には1〜15、好ましくは1〜2である。ヌクレオチドはリボヌクレオチドでもデオキシリボヌクレオチドでもよい。
ドナー領域の5’末端の配列は、ライゲーション効率を左右する。コード部とスペーサー部をライゲーションさせるためには、少なくとも1残基以上を含むことが必要であり、ポリA配列をもつアクセプターに対しては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)あるいは2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。塩基の種類としては、C>U又はT>G>Aの順で好ましい。
PEG領域はポリエチレングリコールを主成分とするものである。ここで、主成分とするとは、PEG領域に含まれるヌクレオチドの数の合計が20bp以下、又は、ポリエチレングリコールの平均分子量が400以上であることを意味する。好ましくは、ヌクレオチドの合計の数が10bp以下、又は、ポリエチレングリコールの平均分子量が1000以上であることを意味する。
PEG領域のポリエチレングリコールの平均分子量は、通常には、400〜30,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは2,000〜8,000である。ここで、ポリエチレングリコールの分子量が約400より低いと、このスペーサー分子に由来するスペーサー部を含む遺伝子型分子を対応付け翻訳したときに、対応付け翻訳の後処理が必要となることがあるが(Liu,R.,Barrick,E.,Szostak,J.W.,Roberts,R.W.(2000)Methods in Enzymology,vol.318,268−293)、分子量1000以上、より好ましくは2000以上のPEGを用いると、対応付け翻訳のみで高効率の対応付けができるため、翻訳の後処理が必要なくなる。また、ポリエチレングリコールの分子量が増えると、遺伝子型分子の安定性が増す傾向があり、特に分子量1000以上で良好であり、分子量400以下ではDNAスペーサーと性質がそれほどかわらず不安定となることがある。
ペプチドアクセプター領域は、ペプチドのC末端に結合できるものであれば特に限定されないが、例えば、ピューロマイシン、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド(3’−N−Aminoacylpuromycin aminonucleoside,PANS−アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのPANS−Gly、バリンのPANS−Val、アラニンのPANS−Ala、その他、全アミノ酸に対応するPANS−全アミノ酸が利用できる。また、化学結合として3’−アミノアデノシンのアミノ基とアミノ酸のカルボキシル基が脱水縮合した結果形成されたアミド結合でつながった3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド(3’−Aminoacyladenosine aminonucleoside,AANS−アミノ酸)、例えばアミノ酸部がグリシンのAANS−Gly、バリンのAANS−Val、アラニンのAANS−Ala、その他、全アミノ酸に対応するAANS−全アミノ酸が利用できる。また、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドとアミノ酸のエステル結合したものなども利用できる。その他、ヌクレオシドあるいはヌクレオシドに類似した化学構造骨格を有する物質と、アミノ酸あるいはアミノ酸に類似した化学構造骨格を有する物質を化学的に結合可能な結合様式のものなら全て利用することができる。
ペプチドアクセプター領域は、好ましくは、ピューロマイシンもしくはその誘導体、又は、ピューロマイシンもしくはその誘導体と1残基もしくは2残基のデオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチドからなることが好ましい。ここで、誘導体とはタンパク質翻訳系においてペプチドのC末端に結合できる誘導体を意味する。ピューロマイシン誘導体は、ピューロマイシン構造を完全に有しているものに限られず、ピューロマイシン構造の一部が欠落しているものも包含する。ピューロマイシン誘導体の具体例としては、PANS−アミノ酸、AANS−アミノ酸などが挙げられる。
ペプチドアクセプター領域は、ピューロマイシンのみの構成でもかまわないが、5’側に1残基以上のDNAあるいは/またはRNAからなる塩基配列を持つことが好ましい。配列としては、dC−ピューロマイシン,rC−ピューロマイシンなど、より好ましくはdCdC−ピューロマイシン,rCrC−ピューロマイシン,rCdC−ピューロマイシン,dCrC−ピューロマイシンなどの配列で、アミノアシル−tRNAの3’末端を模倣したCCA配列(Philipps,G.R.(1969)Nature 223,374−377)が適当である。塩基の種類としては、C>U又はT>G>Aの順で好ましい。
スペーサー分子は、ドナー領域とPEG領域との間に、少なくとも1つの機能付与ユニットを含むことが好ましい。機能付与ユニットは、好ましくは、少なくとも1残基のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドの塩基に機能修飾を施したものである。例えば、機能修飾物質として、図9に示した蛍光物質、ビオチン、あるいはHis−tagなど各種分離タグなどを導入したものが可能である。
図9に、スペーサー分子の一例の詳細な構成を示す。スペーサー分子は、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域、ピューロマイシンあるいはピューロマイシンと少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAからなるCCA領域、少なくとも1残基以上のDNAあるいは/またはRNAを含むドナー領域、さらに、少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAの塩基に機能修飾を施した機能付与ユニット(X)からなる。ここでは、機能付与ユニット(X)として蛍光物質T(Fl)とビオチンT(Bio)が用いられている。
<1−2>コード分子
コード分子は、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合した、ポリA配列及び、必要によりその5’側に翻訳増強配列(例えば制限酵素XhoIが認識する配列)を含む3’末端領域を含む核酸である。
コード分子は、DNAでもRNAでもよく、RNAの場合、5’末端にCap構造があってもなくても良い。また、コード分子は任意のベクターやプラスミドに組み込まれたものとしてもよい。
3’末端領域は、好ましくはSNNS配列(例えばXhoI配列)とその下流にポリA配列を含む。スペーサー分子とコード分子とのライゲーション効率に影響を与える要素としては3’末端領域のポリA配列が重要であり、ポリA配列は、少なくとも2残基以上のdAあるいは/またはrAの混合あるいは単一のポリA連続鎖であり、好ましくは、3残基以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは8残基以上のポリA連続鎖である。
コード分子の翻訳効率に影響する要素としては、転写プロモーターと翻訳エンハンサーからなる5’UTR、および、ポリA配列を含む3’末端領域の組み合わせがある。3’末端領域のポリA配列の効果は通常には10残基以下で発揮され。5’UTRの転写プロモーターはT7/T3あるいはSP6などが利用でき、特に制限はない。好ましくはSP6であり、特に、翻訳のエンハンサー配列としてオメガ配列やオメガ配列の一部を含む配列を利用する場合はSP6を用いることが特に好ましい。翻訳エンハンサーは好ましくはオメガ配列の一部であり、オメガ配列の一部としては、TMVのオメガ配列(Gallie D.R.,Walbot V.(1992)Nucleic Acids Res.,vol.20,4631−4638)の一部(029)を含んだものが好ましい。
また、翻訳効率に関し、3’末端領域においては、XhoI配列とポリA配列の組み合わせが重要となる。また、ORF領域の下流部分、すなわちXhoI配列の上流に親和性タグがついたものとポリA配列の組み合わせも重要となる。親和性タグ配列としては、抗原抗体反応など、タンパク質を検出できるいかなる手段を用いるための配列であればよく、制限はない。好ましくは、抗原抗体反応によるアフィニティー分離分析用タグであるFlag−tag配列である。ポリA配列効果としては、Flag−tag等の親和性タグにXhoI配列がついたものとそこへさらにポリA配列がついたものの翻訳効率が上昇する。
上記の翻訳効率に関し効果のある構成は、対応付け効率にも有効である。
ORF領域については、DNAあるいは/またはRNAからなるいかなる配列でもよい。遺伝子配列、エキソン配列、イントロン配列、ランダム配列、あるいは、いかなる自然界の配列、人為的配列が可能であり、配列の制限はない。また、コード分子の5’UTRをSP6+029とし、3’末端領域を、たとえば、Flag+XhoI+A(n=8)とすることで、各長さは、5’UTRで約60bp、3’末端領域で約40bpであり、PCRのプライマーにアダプター領域として組み込める長さである。このため、あらゆるベクターやプラスミドやcDNAライブラリーからPCRによって、5’UTRと3’末端領域をもったコード分子を簡単に作成できる。コード分子において、翻訳はORF領域を超えてされてもよい。すなわち、ORF領域の末端に終止コドンがなくてもよい。
図10に、コード分子の一例の詳細な構成を示す。コード分子は、3’末端領域と、DNAあるいは/またはRNAからなる転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’UTRと、デコード部の配列情報からなる、すなわち表現型タンパク質をコードするORF領域とからなる。ここでは、3’末端領域として、DNAあるいは/またはRNAからなる親和性タグ配列、XhoI配列、ポリA配列を含み、Flag−tag配列を用いている。5’UTRとして、転写プロモーターのSP6、翻訳エンハンサーのオメガ配列の一部である029を含む配列を用いている。
<1−3>遺伝子型分子およびその製造方法
遺伝子型分子は、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合した、ポリA配列を含む3’末端領域を含む核酸であるコード分子の3’末端と、スペーサー分子のドナー領域とが結合してなる。
遺伝子型分子を構成するコード分子は、上記のコード分子においてXhoI配列が必須ではない他は、コード分子について説明したとおりである。しかしながら、XhoI配列を有することが好ましい。
遺伝子型分子は、上記コード分子の3’末端と、スペーサー分子のドナー領域を、通常のリガーゼ反応により結合させることにより製造できる。反応条件としては、通常、4〜25℃で4〜48時間の条件が挙げられ、PEG領域を含むスペーサー分子のPEG領域内のポリエチレングリコールと同じ分子量のポリエチレングリコールを反応系に添加する場合には、15℃で0.5〜4時間に短縮することも可能である。
スペーサー分子とコード分子の組み合わせはライゲーション効率に重要な効果をもたらす。アクセプターにあたるコード部の3’末端領域において、少なくとも2残基以上、好ましくは3残基以上、さらに好ましくは6〜8残基以上のDNAあるいは/またはRNAのポリA配列があること、さらに、5’UTRの翻訳エンハンサーとしては、オメガ配列の部分配列(029;図10)が好ましく、スペーサー部のドナー領域としては、少なくとも1残基のdC(デオキシシチジル酸)あるいは2残基のdCdC(ジデオキシシチジル酸)が好ましい。このことによって、RNAリガーゼを用いることでDNAリガーゼのもつ問題点を回避し、かつ効率を60〜80%に保つことができる。
遺伝子型分子がRNAである場合には、(a)転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含む5’非翻訳領域と、5’非翻訳領域の3’側に結合した、タンパク質をコードするORF領域と、ORF領域の3’側に結合した、ポリA配列を含む3’末端領域を含むコード分子の3’末端と、(b)(1)〜(4)のいずれか1項に記載のスペーサー分子のドナー領域であってRNAからなるものとを、スペーサー分子内のPEG領域を構成するポリエチレングリコールと同じ分子量をもつ遊離のポリエチレングリコールの存在下で、RNAリガーゼにより結合させることが好ましい。
ライゲーション反応時に、PEG領域を含むスペーサー部のPEG領域と同じ分子量のポリエチレングリコールを添加することによって、スペーサー部のポリエチレングリコールの分子量によらずライゲーション効率が80〜90%以上に向上し、反応後の分離工程も省略することができる。
<1−4>対応付け分子及びその製造方法
対応付け分子は、上記の遺伝子型分子を、ペプチド転移反応で、遺伝子型分子内のORF領域によりコードされたタンパク質である表現型分子と連結してなるものである。
対応付け分子は、遺伝子型分子を無細胞翻訳系で翻訳することにより、ペプチド転移反応で、遺伝子型分子内のORF領域によりコードされたタンパク質である表現型分子と連結することを含む。
無細胞翻訳系は、好ましくは、小麦胚芽又はウサギ網状赤血球のものである。翻訳の条件は通常に採用される条件でよい。例えば、25〜37℃で15〜240分の条件が挙げられる。
無細胞翻訳系については、これまで大腸菌(E.coli)、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽の系で対応付け分子の形成が検討され、ウサギ網状赤血球の系でのみ対応付け分子が確認されていたが(Nemoto,N.,Miyamoto−Sato,E.,Yanagawa,H.(1997)FEBS Lett.414,405;Roberts,R.W,Szostak,J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA94,12297)、この態様によれば、PEG領域を含むスペーサー部をもつ対応付け分子として、小麦胚芽の系でも対応付け分子の形成を行うことができる。また、これまでウサギ網状赤血球の系では遺伝子型分子の安定性を欠くために実用性に乏しく、短い鎖長の遺伝子型分子にのみ適用されてきたが(Roberts,R.W,Szostak,J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,12297;Nemoto,N.,Miyamoto−Sato,E.,Yanagawa,H.(1997)FEBS Lett.414,405)、PEG領域を含むスペーサー部をもつ対応付け分子は、小麦胚芽の系ではより安定であり長い鎖長を取り扱える実用的な系である。
<1−5>対応付け分子(IVV)の好ましい態様
本態様の共翻訳におけるIVVは、図20に示すように、翻訳テンプレートによってC末端修飾された蛋白質(=対応付け分子)に関するものである。翻訳テンプレートは、蛋白質に翻訳される情報を持つコード部とPEGスペーサー部からなる。コード部の3’末端にA配列を有し、A配列は、短いポリA配列を含む。短いポリA配列とは、通常には2〜10塩基のAからなる配列である。PEGスペーサー部は、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域において、ポリエチレングリコールの分子量が400以上であることを特徴とする、また、ドナー領域あるいは/かつCCA領域において、少なくとも1つの修飾物質(F1あるいは/かつF2)を含むことを特徴とする。また、CCA領域は、該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、ペプチド転移反応によって結合する機能を有することを特徴とし、代表的にはCCA領域にピューロマイシンを有する。また、修飾物質(F1あるいは/かつF2)が、該翻訳テンプレートあるいは/かつ該翻訳テンプレートから翻訳された蛋白質を固定化あるいは蛍光ラベル化することを特徴とする。固定化物質としてビオチンなどが考えられ、蛍光性物質として、フルオレセイン,Cy5,あるいはローダミングリーン(RhG)などが考えられる。これら、コード部および翻訳テンプレート、およびそのライブラリーが、リボソーム上で翻訳されることにより合成される蛋白質(=対応付け分子)および蛋白質(=対応付け分子)のライブラリーに関するものである。
リボソーム上で翻訳されることにより合成される蛋白質(=C末端ラベル化蛋白質、対応付け分子)およびそのライブラリーのいろいろな組み合わせを用いて、in vitroで蛋白質と物質の相互作用解析が可能であり、たとえば、IVVの一次スクリーニング後の詳細な遺伝子ネットワークを解析する二次スクリーニングに利用できる(図21)。
共翻訳のIVVは、翻訳テンプレートを用いた翻訳によって合成された、翻訳テンプレートでC末端修飾された蛋白質(図20のA;対応付け分子)も利用可能であり、翻訳テンプレート(図20のB)と、PEGによってC末端修飾された蛋白質(図20のC)の構成に特徴を持つ。以下詳細に記述する。
翻訳テンプレート(図20のB)のPEGスペーサー部は、ピューロマイシンがアミノ酸と連結できることを特徴とする以外は第一の発明と同様である。また、コード部も第一の発明と同様であるが、特に、対応付けに適した構成としては、3’末端領域をA配列にすることが重要であり、トータル蛋白の対応付けの効率が著しく向上してフリー蛋白質の量が激減することが確認された。ここでも、コード部の5’末端領域をSP6+029とし、3’末端領域を、たとえば、Flag+XhoI+A(n=8)とすることで、各長さは、5’末端領域で約60bp、3’末端領域で約40bpであり、PCRのプライマーにアダプター領域として設計できる長さである。これによって、あらゆるベクターやプラスミドやcDNAライブラリーからPCRによって、本態様の5’末端領域と3’末端領域をもったコード部を簡単に作成可能となり、PEGスペーサー部をライゲーションすることで、対応付け効率の高い翻訳テンプレートが得られた。
本態様のPEGによってC末端修飾された蛋白質(図20のC)は、蛋白質の相互作用検出などにおいて、コード部を利用しない場合、たとえば、FCCS測定、蛍光リーダー、プロテインチップなどに応用する場合は、RNase Aなどで故意的に切断してもよい。切断することによって、コード部の妨害による蛋白質間相互作用の検出の困難性が解消出来る。また、単独の対応付け分子をプレートやビーズやスライドガラスに固定することも可能である。
リボソーム上で翻訳されることにより合成される蛋白質(=C末端ラベル化蛋白質、対応付け分子)およびそのライブラリーのいろいろな組み合わせを用いて、in vitroで蛋白質と物質の相互作用解析が可能であり、たとえば、IVVの一次スクリーニング後の詳細な遺伝子ネットワークを解析する二次スクリーニングに利用できる(図21)。
<2>C末端ラベル化蛋白質
C末端ラベル化蛋白質は、C末端が修飾された蛋白質であり、図11のAに示すように、ラベル化剤が蛋白質のC末端に結合した構成をもっている。すなわち、C末端ラベル化蛋白質は、蛋白質とラベル化剤とにより構成される。
C末端ラベル化蛋白質を構成する「蛋白質」とは、その機能が既知又は未知である相互作用の解析対象として用いる蛋白質を意味する。本発明のC末端ラベル化蛋白質は、この蛋白質と後述する標的分子との相互作用の有無の測定に使用できる。
この蛋白質は、天然蛋白質又はその変異体、および人工蛋白質又はその変異体の何れでもよい。天然蛋白質は、種々の生物の器官、組織又は細胞に由来するcDNAライブラリーから転写および翻訳される、多様性を有する蛋白質のライブラリーをも含むものである。人工蛋白質は、天然蛋白質の全てもしくは部分配列を組み合わせた配列、又はランダムなアミノ酸配列を含むものである。
C末端ラベル化蛋白質を構成する蛋白質は、全長蛋白質であることが好ましい。本明細書において「全長蛋白質」とは、C末端が完全に翻訳されている蛋白質、すなわち、その蛋白質をコードする塩基配列の終止コドンの一つ前までのコドンが翻訳されて得られた蛋白質を意味する。全長蛋白質のN末端は、シグナルペプチドの切断等何らかのプロセシングを受けていてもよい。
また、C末端ラベル化蛋白質を構成する蛋白質は親和性タグと融合した蛋白質であってもよい。親和性タグの例としては、ポリヒスチジンペプチドやエピトープペプチド、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、プロテインA、マルトース結合蛋白質、カルモジュリン結合ペプチド等が挙げられる。
C末端ラベル化蛋白質は、ラベル化剤存在下で、翻訳テンプレートを翻訳系で発現させて蛋白質合成を行わせ、合成された蛋白質を精製することにより製造することができる。以下、ラベル化剤、翻訳テンプレートおよび製造の例について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<2−1>ラベル化剤
ラベル化剤は、図11のBに示すように、蛋白質の翻訳系でのペプチド転移反応、すなわち、リボソーム上でのペプチド転移反応によって蛋白質と結合し得る基(残基を含む)をもつペプチドアクセプター部が、ヌクレオチドリンカーを介して修飾部と結合した構成をもつ。このラベル化剤の存在下で蛋白質合成を行い、得られるC末端ラベル化蛋白質を精製し、分子間相互作用の検出系を用いることによって、蛋白質相互作用の検出が可能となる。
修飾部に含まれる修飾物質の具体例としては、蛍光性、非蛍光性修飾物質等が挙げられる。蛍光性物質としては、フルオレセイン系列、ローダミン系列、Cy3、Cy5、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素や、緑色蛍光蛋白質(GFP)等の蛍光性蛋白質がある。また、非蛍光性物質としては、ビオチンのような補酵素、蛋白質、ペプチド、糖類、脂質類、色素、ポリエチレングリコール等、何らかの目印となり得る化合物であればいかなるものでもよい。
C末端ラベル化剤においては、修飾部が蛍光基、蛋白質と結合する基(例えばビオチニル基やイミノビオチニル基)、または、その両方をもつことが好ましい。特に、ビオチニル基やイミノビオチニル基を有することは、本発明C末端ラベル化剤による修飾の効率が上昇するため、好ましい。
ペプチドアクセプター部は、蛋白質の翻訳系で、ペプチド転移反応によって蛋白質と結合し得る基をもち、好ましくはピューロマイシン又はその誘導体の残基をもつ。
ピューロマイシンはアミノアシルtRNAと類似した構造をもち、蛋白質合成を阻害する抗生物質として知られているが、低濃度では蛋白質のC末端に結合することが知られている(Miyamoto−Sato,E.et al.(2000)Nucleic Acids Res.28:1176−1182)。本発明で用いることができるピューロマイシン誘導体は、ピューロマイシンと類似した構造を有し、蛋白質のC末端に結合することができる物質であればいかなるものでもよい。具体例としては、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド等が挙げられる。
修飾部とペプチドアクセプター部との間をつなぐヌクレオチドリンカーとは、具体的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが1個ないし複数個つながった核酸または核酸誘導体であり、特に好ましい例として、シトシン塩基を含むリボヌクレオチド(−rC−)またはデオキシリボヌクレオチド(−dC−)が1個ないし複数個つながった化合物が挙げられる。その他、修飾部とペプチドアクセプター部との間に挿入することによって修飾蛋白質の収量を上げることができる物質であればいかなるものでもよい。
ラベル化剤においては、ヌクレオチドリンカーが2’−デオキシシチジル酸、2’−デオキシシチジル−(3’,5’)−2’−デオキシシチジル酸、リボシチジル酸、又は、リボシチジル−(3’,5’)−リボシチジル酸であることが好ましい。
ラベル化剤は、上記修飾部とペプチドアクセプター部とを所望のヌクレオチドリンカーを介して、それ自体既知の化学結合方法によって結合させることにより製造することができる。具体的には、例えば、適当な保護基で保護された上記ペプチドアクセプター部を固相担体上に結合させ、核酸合成機等を用いてヌクレオチドリンカーとしてヌクレオチドホスホアミダイト、およびデオキシヌクレオチドホスホアミダイト、修飾物質として蛍光物質やビオチンなどを結合したヌクレオチドホスホアミダイトを順次結合させた後、脱保護を行うことによって作製することができる。上記各部の種類、あるいは結合の種類によっては液相合成法で結合させるかあるいは両者を併用することもできる。また、修飾物質としてニッケル等の金属イオンを用いる場合には、金属イオンが配位しうるニトリロトリ酢酸やイミノジ酢酸等のキレート性の試薬を結合させ、次いで金属イオンを配位させることができる。
<2−2>翻訳テンプレート
翻訳テンプレートは、本発明修飾蛋白質を製造する際に利用できる翻訳テンプレートであり、図11のCに示すように、ポリA配列を含む3’末端領域、転写プロモーターを含んだ5’非翻訳領域(5’UTR)、および、蛋白質のコードされたORF領域から構成される。翻訳テンプレートはDNAでもRNAでもよい。
さらに詳細には、翻訳テンプレートは、蛋白質をコードするORF領域と、ORF領域の5’側に位置する、転写プロモーターおよび翻訳エンハンサーを含んだ5’UTRと、ORF領域の3’側に位置する、ポリA配列(polyA)を含んだ3’末端領域から構成される。
さらに好ましい翻訳テンプレートは、5’UTRの転写プロモーターとしてSP6 RNAポリメラーゼのプロモーター配列を含み、翻訳エンハンサーとしてタバコモザイクウイルス(TMV)のオメガ配列の一部(029)を含む。また、ORF領域がその下流部分に親和性タグ配列を含むことが好ましい。親和性タグ配列は、上述の親和性タグをコードする配列であり、好ましくはHis−tag(ポリヒスチジンタグ)配列を含む。本発明翻訳テンプレートを用いて製造された本発明修飾蛋白質をポリヒスチジンタグを用いて製造する場合には、ポリヒスチジンタグは長い方が、ニッケルキレート樹脂による回収率が向上するため、好ましい。ポリヒスチジンタグの好ましい長さの範囲は、修飾される蛋白質の種類や標識の種類により変化し得るが、通常には、8〜12残基である。
なお、本明細書において「上流」および「下流」とは、転写または翻訳の方向におけるものを意味する。
翻訳テンプレートは、DNAである場合、上記の領域を適当なDNAベクター又はプラスミドに導入することにより得られたDNAベクター又はプラスミドであってもよい。また、翻訳テンプレートは、RNAである場合、5’末端にCap構造があってもなくてもよい
<2−3>C末端ラベル化蛋白質の製造
C末端ラベル化蛋白質の製造に用いられる翻訳系としては、無細胞蛋白質合成系や細胞発現系が挙げられる。無細胞蛋白質合成系の具体例としては、小麦胚芽抽出液、ウサギ網状赤血球抽出液、大腸菌S30抽出液等が挙げられる。これらの無細胞蛋白質合成系の中に、上記翻訳テンプレートを加え、同時に1〜100μMの修飾剤を加え、25〜37℃で1〜数時間保温することによってC末端修飾蛋白質が合成される。合成された修飾蛋白質は、そのまま次の精製プロセスまたは検出プロセスに供することができる。一方、細胞発現系の具体例としては、大腸菌、枯草菌、好熱菌、酵母等の細菌から、昆虫細胞、哺乳類等の培養細胞、さらに線虫、ショウジョウバエ、ゼブラフィッシュ、マウス等に至るまで、遺伝子導入が可能な細胞であればいかなるものでもよい。これらの細胞の中に、上記本発明翻訳テンプレートを導入し、同時に1〜100μMの修飾剤を電気穿孔法、マイクロインジェクション法等により細胞の中に導入し、細胞の至適生育温度で数時間保温することによって修飾蛋白質が合成される。合成された修飾蛋白質は、細胞を破砕することによって回収し次の精製プロセスまたは検出プロセスに供することができる。また、そのまま細胞の中で検出プロセスに供することも可能である。翻訳テンプレートは、用いる翻訳系に合わせて適切なものを選択する。
C末端ラベル化蛋白質を精製する方法としては、アフィニティー、ゲルろ過、イオン交換等のクロマトグラフィーや、電気泳動、沈澱、透析等、一般に蛋白質の精製に用いられるあらゆる方法が利用可能である。好ましくは、アフィニティークロマトグラフィー、ゲルろ過、イオンクロマトグラフィー、電気泳動、沈殿、透析、および、それらの任意の組合せが挙げられる。特に好ましい例として、ポリヒスチジンペプチドやエピトープペプチド、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、プロテインA、マルトース結合蛋白質、カルモジュリン結合ペプチド等の親和性タグを融合した修飾蛋白質を親和性樹脂で精製し、さらに未反応の修飾剤を完全に除去するためにゲルろ過カラムに数回かける方法がある。
また、上記の親和性タグを融合した修飾蛋白質を親和性樹脂で予め精製した後、修飾部のビオチニル基あるいはイミノビオチニル基とアビジンあるいはストレプトアビジンの親和性を利用して、未修飾蛋白質を完全に除き、100%修飾された蛋白質を得る方法もある。
<2−5>C末端ラベル化蛋白質の好ましい態様
本態様の共翻訳におけるC末端ラベル化蛋白質は、図19に示すように、翻訳テンプレートにより翻訳され、修飾剤によってC末端ラベル化された蛋白質を利用することも可能である。翻訳テンプレートは、蛋白質に翻訳される情報を持つコード部とポリエチレングリコールを主成分としたPEGスペーサー部からなる。コード部は、アクセプター領域(A配列)と発現増強配列(X配列)を有し、A配列として、短いポリA配列を含む。短いポリA配列とは、通常には2〜10塩基のAからなる配列である。X配列として、C(あるいはG)NNC(あるいはG)配列を有する配列、たとえば、XhoI配列を有することを特徴とする。PEGスペーサー部は、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域において、ポリエチレングリコールの分子量が400以上であることを特徴とする、また、ドナー領域あるいは/かつCCA領域において、少なくとも1つの機能付与ユニット(F)を含むことを特徴とする。CCA領域は、該翻訳テンプレートによって翻訳された蛋白質と、ペプチド転移反応によって結合する機能を有しないことを特徴とする。機能性修飾物質(F1あるいは/かつF2)が、該翻訳テンプレートあるいは/かつ該翻訳テンプレートから翻訳された蛋白質を固定化あるいは蛍光ラベル化することを特徴とする。固定化物質としてビオチンなどが考えられ、蛍光性物質として、フルオレセイン,Cy5,あるいはローダミングリーン(RhG)などが考えられる。また、修飾剤は、蛋白質のC末端を標識する修飾部とピューロマイシンを含むペプチドアクセプター部、およびそれらを連結するヌクレオチドのリンカー、からなる。また、修飾剤は、修飾部に、機能性修飾物質(F3)を含むことを特徴とする。該F3が、該翻訳テンプレートにより翻訳された蛋白質を固定化あるいは蛍光ラベル化することを特徴とする。固定化物質としてビオチンなどが考えられ、蛍光性物質として、フルオレセイン,Cy5,あるいはローダミングリーン(RhG)などが考えられる。これら、コード部および翻訳テンプレート、およびそのライブラリーが、修飾剤の存在下で、リボソーム上で翻訳されることにより合成されることを特徴とする蛋白質および蛋白質のライブラリーに関するものである。
共翻訳のC末端修飾された蛋白質(C末端ラベル化蛋白質)は、翻訳テンプレートを用いた翻訳によって合成された、修飾剤でC末端修飾された蛋白質(図19のA)でも可能であり、翻訳テンプレート(図19のB)と、修飾剤(図19のC)からなる。ここでの特徴は、特に翻訳テンプレートのコード部の構成にある。以下詳細に記述する。
本態様の翻訳テンプレート(図19のB)のPEGスペーサー部は、ピューロマイシンがアミノ酸と連結出来ないことを特徴とし、第一の発明と同様である。また、コード部も第一の発明と同様であるが、特に、C末端ラベル化に適した構成としては、3’末端領域が、XA配列であることが重要であり、X配列のなかで、最初の4塩基が重要で、CorGNNCorGの配列を持つものが好ましい。ここでも、コード部の5’末端領域をSP6+029とし、3’末端領域を、たとえば、Flag+XhoI+A(n=8)とすることで、各長さは、5’末端領域で約60bp、3’末端領域で約40bpであり、PCRのプライマーにアダプター領域として設計できる長さである。これによって、あらゆるベクターやプラスミドやcDNAライブラリーからPCRによって、本態様の5’末端領域と3’末端領域をもったコード部を簡単に作成可能となり、このコード部に3’UTRの代わりとしてPEGスペーサー部をライゲーションすることで、C末端ラベル化に適した翻訳効率の高い翻訳テンプレートを得られた。
本態様の修飾剤(図19のC)は、タンパク質の翻訳系でのペプチド転移反応、すなわち、リボソーム上でのペプチド転移反応によってタンパク質と結合し得る基(残基を含む)をもつペプチドアクセプター部が、ヌクレオチドリンカーを介して修飾部と結合した構成をもつ。この修飾剤の存在下でタンパク質合成を行い、得られるC末端修飾タンパク質を精製し、分子間相互作用の検出系を用いることによって、タンパク質相互作用の検出が可能となる。修飾部には、PEGスペーサー部と同様に修飾物質(F3)が含まれる。修飾物質として、非放射性修飾物質の具体例としては、蛍光性、非蛍光性修飾物質等が挙げられる。蛍光性物質としては、フルオレセイン系列、ローダミン系列、Cy3、Cy5、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素や、緑色蛍光タンパク質(GFP)等の蛍光性タンパク質がある。また、非蛍光性物質としては、ビオチンのような補酵素、タンパク質、ペプチド、糖類、脂質類、色素、ポリエチレングリコール等、何らかの目印となり得る化合物であればいかなるものでもよい。本態様の修飾剤においては、修飾部が蛍光基、タンパク質と結合する基、または、その両方をもつことが好ましい。ペプチドアクセプター部は、タンパク質の翻訳系で、ペプチド転移反応によってタンパク質と結合し得る基をもち、好ましくはピューロマイシン又はその誘導体の残基をもつ。ピューロマイシンはアミノアシルtRNAと類似した構造をもち、タンパク質合成を阻害する抗生物質として知られているが、低濃度ではタンパク質のC末端に結合することが知られている(Miyamoto−Sato,E.et al.(2000)Nucleic Acids Res.28:1176−1182)。本態様で用いることができるピューロマイシン誘導体は、ピューロマイシンと類似した構造を有し、タンパク質のC末端に結合することができる物質であればいかなるものでもよい。具体例としては、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド等が挙げられる。修飾部とペプチドアクセプター部との間をつなぐヌクレオチドリンカーとは、具体的には、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが1個ないし複数個つながった核酸または核酸誘導体であり、特に好ましい例として、シトシン塩基を含むリボヌクレオチド(−rC−)またはデオキシリボヌクレオチド(−dC−)が1個ないし複数個つながった化合物が挙げられる。その他、修飾部とペプチドアクセプター部との間に挿入することによって修飾タンパク質の収量を上げることができる物質であればいかなるものでもよい。本態様の修飾剤においては、ヌクレオチドリンカーが2’−デオキシシチジル酸、2’−デオキシシチジル−(3’,5’)−2’−デオキシチジル酸、リボシチジル酸、又は、リボシチジル−(3’,5’)−リボシチジル酸であることが好ましい。
本態様の修飾剤は、上記修飾部とペプチドアクセプター部とを所望のヌクレオチドリンカーを介して、それ自体既知の化学結合方法によって結合させることにより製造することができる。具体的には、例えば、適当な保護基で保護された上記ペプチドアクセプター部を固相担体上に結合させ、核酸合成機を用いてヌクレオチドリンカーとしてヌクレオチドホスホアミダイト、およびデオキシヌクレオチドホスホアミダイト、機能性修飾物質として蛍光物質やビオチンなどを結合したホスホアミダイトを順次結合させた後、脱保護を行うことによって作製することができる。上記各部の種類、あるいは結合の種類によっては液相合成法で結合させるかあるいは両者を併用することもできる。また、機能性修飾物質としてニッケル等の金属イオンを用いる場合には、金属イオンが配位しうるニトリロトリ酢酸やイミノジ酢酸等のキレート性の試薬を結合させ、次いで金属イオンを配位させることができる。
<3>本発明の第1の態様の複合体
本態様の複合体は、遺伝子型と表現型の対応付け分子と、C末端がピューロマイシン又はその誘導体を含むC末端ラベル化剤によりラベル化されたC末端ラベル化蛋白質との相互作用によって形成される複合体であって、対応付け分子を構成する蛋白質部分以外の部分および該C末端ラベル化剤がそれぞれ相互作用解析に必要な修飾を受けている、対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質の複合体である。
複合体を構成する対応付け分子及びC末端ラベル化蛋白質は、それぞれ1つでも複数でもよい。また、対応付け分子及びC末端ラベル化蛋白質が含む蛋白質は、同一でも互いに異なっていてもよい。すなわち、本発明の複合体は、或る蛋白質を解する相互作用及び/又は同一の蛋白質間の相互作用による複合体を包含する。本発明の複合体は、例えば、該複合体が一種類の対応付け分子と二種類以上のC末端ラベル化蛋白質から構成されていてもよい。
本発明において対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質に含まれる蛋白質は、蛋白質の全長であっても結合活性部位を含む部分ペプチドでもよい。またアミノ酸配列、およびその機能が既知の蛋白質でも、未知の蛋白質でもよい。これらは、合成されたペプチド鎖、生体より精製されたRNAやcDNAライブラリー等から適当な翻訳系を用いて翻訳したものでもよい。合成されたペプチド鎖はこれに糖鎖が結合した糖蛋白質であってもよい。糖鎖としては、他の蛋白質と相互作用する能力を有する限り、特に制限はなく、その糖配列あるいは機能が、既知の糖鎖でも未知の糖鎖でもよい。好ましくは、既に分離解析され、糖配列あるいは機能が既知の糖鎖が用いられる。
本発明における対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質の「相互作用」とは、通常は、蛋白質間の共有結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、および静電力による結合のうち少なくとも1つから生じる分子間に働く力による作用を示すが、この用語は最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。共有結合としては、配位結合、双極子結合を含有する。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。
対応付け分子は、スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子(IVV)であり、かつ該対応付け分子のスペーサーに、対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を有することが好ましい。
相互作用解析に必要な修飾は通常には検出用修飾および分離用修飾である。
図1のA及びBに、本発明の分離用修飾あるいは検出用修飾を施されたIVVとC末端ラベル化蛋白質の複合体の構成例を示す。
図1のAは、IVVと単数のC末端ラベル化蛋白質の複合体を示す。IVVは、蛋白質1とそれをコードしているmRNA1がスペーサー1を介して連結したものである。スペーサー1は、必要によって修飾剤(X)を導入した構成をとる。C末端ラベル化蛋白質は、蛋白質2のC末端にC末端ラベル化剤(Y)が連結したものである。無細胞共翻訳における相互作用によって、これらC末端ラベル化蛋白質とIVVが複合体を形成すると共に、同時に蛋白質やIVVに必要な修飾が施される。
図1のBはIVVと複数のC末端ラベル化蛋白質の複合体を示す。IVVは、蛋白質1とそれをコードしているmRNA1がスペーサー1を介して連結したものである。複数のC末端ラベル化蛋白質は、複数の蛋白質A,B,C...(ライブラリー)のC末端にC末端ラベル化剤(Y)が連結したものである。スペーサー1は、必要によって修飾剤(X)を導入した構成をとる。無細胞共翻訳における相互作用によって、これら複数のC末端ラベル化蛋白質とIVVが複合体を形成すると共に、同時に複合体の解析に必要な修飾が施される。
本発明のIVVとC末端ラベル化蛋白質の複合体を構成する要素であるIVVは、上述のように、スペーサーと蛋白質がコードされたmRNAをライゲーション反応によって連結して遺伝子型分子をつくり、遺伝子型分子と表現型分子(蛋白質)を無細胞翻訳によってリボソーム上でピューロマイシンを介して連結するものである。このIVVを用いたin vitroウイルス法は、ある機能をもつ蛋白質に対応する遺伝子群をcDNAライブラリーなどから網羅的に検出(対応付け分子の遺伝子部分を利用してPCRで増幅して検出)するシステムである。本発明では、IVVとC末端ラベル化蛋白質間の相互作用の解析において、IVVの分離あるいは/および検出を目的とした物質を修飾剤として導入したスペーサー(図3)を利用すること、かつC末端ラベル化蛋白質の分離あるいは/および検出を目的とした物質を修飾剤として導入したC末端ラベル化剤(図4)を利用することが大きな特徴となっている。また、修飾剤は、スペーサーへ一つの物質を導入することで分離あるいは検出の目的を達成する場合もあるし、スペーサーへ一つの物質を導入することで分離と検出の目的を兼ねられる場合もあるし、スペーサーへ二つの物質を導入して、分離と検出の目的を達成する場合もある。
本発明の複合体を構成する要素であるC末端ラベル化蛋白質は、上述のように、蛋白質の翻訳系でのペプチド転移反応、すなわち、リボソーム上でのペプチド転移反応によって蛋白質と結合し得る基(残基を含む)をもつラベル化剤(図4)をそのC末端に結合することが特徴であり、そのラベル化剤としては、ピューロマイシンが代表的である。ピューロマイシンは、アミノアシルtRNAと類似した構造をもち、蛋白質合成を阻害する抗生物質として知られているが、低濃度では蛋白質のC末端に結合することが知られている(Miyamoto−Sato,E.et al.(2000)Nucleic Acids Res.28:1176−1182)。本発明で用いることができるピューロマイシン誘導体は、ピューロマイシンと類似した構造を有し、蛋白質のC末端に結合することができる物質であればいかなるものでもよい。具体例としては、3’−N−アミノアシルピューロマイシンアミノヌクレオシド、3’−N−アミノアシルアデノシンアミノヌクレオシド等が挙げられる。また、ラベル化剤は放射性物質あるいは非放射性物質を含むことが出来る。具体例としては、RI,蛍光性、非蛍光性修飾物質等が挙げられる。蛍光性物質としては、フルオレセイン系列、ローダミン系列、Cy3、Cy5、エオシン系列、NBD系列等の蛍光色素や、緑色蛍光蛋白質(GFP)等の蛍光性蛋白質がある。また、非蛍光性物質としては、ビオチンのような補酵素、蛋白質、ペプチド、糖類、脂質類、色素、ポリエチレングリコール等、何らかの目印となり得る化合物であればいかなるものでもよい。これら化合物とピューロマイシンとの間をつなぐリンカーは、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドが1個ないし複数個つながった核酸または核酸誘導体であり、特に好ましい例として、シトシン塩基を含むリボヌクレオチド(−rC−)またはデオキシリボヌクレオチド(−dC−)が1個ないし複数個つながった化合物が挙げられる。具体的には、ヌクレオチドリンカーが2’−デオキシシチジル酸、2’−デオキシシチジル−(3’,5’)−2’−デオキシチジル酸、リボシチジル酸、又は、リボシチジル−(3’,5’)−リボシチジル酸であることが好ましい。
C末端ラベル化蛋白質およびスペーサーの分離用修飾剤としては、アビジンあるいはストレプトアビジンとの相互作用が知られているビオチンのような補酵素を代表例として、その他、ニッケル−NTA、抗体、蛋白質、ペプチド、糖類、脂質類、色素、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、現在知られている分離や固定化のための物質の他、何らかの方法でIVVを固定化できる物質であればいかなるものでも良い。詳しい例を挙げると、アビジンおよびストレプトアビジン等のビオチン結合蛋白質/ビオチン、マルトース結合蛋白質/マルトース、G蛋白質/グアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、DNA結合蛋白質/DNA、抗体/抗原分子(エピトープ)、カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、ATP結合蛋白質/ATP、あるいはエストラジオール受容体蛋白質/エストラジオールなどの各種受容体蛋白質/そのリガンドなどが挙げられる。これらの中で、アダプター蛋白質/リガンドの組み合わせとしては、アビジンおよびストレプトアビジンなどのビオチン結合蛋白質、マルトース結合蛋白質/マルトース、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、抗体/抗原分子(エピトープ)、などが好ましく、特にストレプトアビジン/ビオチンの組み合わせが最も好ましい。これらの結合蛋白質は、それ自体既知のものであり、該蛋白質をコードするDNAは既にクローニングされている。アダプター蛋白質の固相表面への結合は、それ自体既知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、タンニン酸、ホルマリン、グルタルアルデヒド、ピルビックアルデヒド、ビス−ジアゾ化ベンジゾン、トルエン−2,4−ジイソシアネート、アミノ基、活性エステルに変換可能なカルボキシル基、又はホスホアミダイドに変換可能な水酸基あるいはアミノ基などを利用する方法を用いることができる。
スペーサーの検出用修飾剤は、放射性および蛍光性修飾物質等が挙げられ、蛍光性物質としては、フルオロセイン系列、ローダミン系列、Cy3,Cy5,エオシン系列、NBD系列等の蛍光物質が挙げられる。これら検出のための修飾剤は、何らかの方法でIVVの蛋白質を検出できる物質ならいかなるものでも良い。
蛍光物質は複数種類を組み合わせて用いてもよい。例えば、対応付け分子がスペーサーにCy5を有する場合は、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤がローダミングリーンを有してもよいし、また、対応付け分子がスペーサーにローダミングリーンを有する場合は、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤がCy5を有してもよい。
本発明の複合体には、対応付け分子であるIVVと単数のC末端ラベル化蛋白質が相互作用しているもの(図1のA)と、IVVと複数のC末端ラベル化蛋白質が相互作用しているもの(図1のB)が含まれる。まず、図1のAでは、一組の同一あるいは異なる蛋白質を含む対応付け分子(IVV)とC末端ラベル化蛋白質の複合体の構成をとっている。IVVは、蛋白質1のmRNAを有し、固有の修飾剤(X1)として分離や固定化あるいは検出のための修飾剤を有する。C末端ラベル化蛋白質は、蛋白質2のC末端がラベル化剤(Y;図1)で修飾されている。ここで、蛋白質1と2は同じ場合と異なる場合があるが、修飾剤(X1)とラベル化剤はその色素の種類や機能などが必ず異なる。本発明は、これらIVVとC末端ラベル化蛋白質の相互作用によって形成された複合体である。次ぎに、図1のBでは、多数のC末端ラベル化蛋白質とIVVが相互作用している構成をとっている。多数のC末端ラベル化蛋白質は、各々の蛋白質はラベル化剤(Y;図1)を有する。これら多数のC末端ラベル化蛋白質については、原理的に、全て同一のラベル化剤で修飾される。本発明は、多数のC末端ラベル化蛋白質とIVVの相互作用によって形成された複合体である。
本発明の複合体は、対応付け分子およびC末端ラベル化蛋白質をそれぞれ調製し、それらを混合することによって得ることができる。
また、本発明者等は、対応付け分子がIVVである場合、無細胞翻訳系で、蛋白質間の相互作用解析において、異なる修飾を有するC末端ラベル化蛋白質を共に翻訳(無細胞共翻訳)により得ると同時に、それらの複合体を形成できれば、蛋白質の検出や固定に必要なタグや蛍光性色素などの修飾も同時に行うことが出来ればハイスループットな蛋白質間相互作用解析が実現できると考えた。しかしながら、C末端ラベル化法は原理的に、翻訳される蛋白質をラベル化剤で無差別に修飾することになり、一つの試験管内で複数の蛋白質に別々の異なる所望のラベル化剤を修飾することは出来ない。そのため、別々の試験管内でC末端ラベル化した二つのC末端ラベル化蛋白質を後から混合する以外に方法はない。よって、蛋白質間の相互作用解析において、一つの試験管内で別々の異なる所望のラベル化剤を各蛋白質に修飾できるとする技術(特開2001−27633号公報)は実際には不可能である。本発明者等は、IVV形成とC末端ラベル化を組み合わせた場合に、C末端ラベル化剤がIVV形成を阻害することがほとんどない条件が存在することを見出し、一つの試験管で異なる所望のC末端ラベル化剤を所望の蛋白質に修飾することに成功した。
すなわち、この態様は、無細胞翻訳系で、C末端ラベル化剤の存在下で、該mRNAと該C末端ラベル化蛋白質の蛋白質をコードするmRNAが翻訳されることにより対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質が同時に生成し、生成した対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質との間で相互作用することで複合体が形成されるとき、無細胞共翻訳系におけるC末端ラベル化剤の濃度を、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化効率に十分で、かつ該対応付け分子の形成を阻害しない範囲とすることを特徴とする。
無細胞共翻訳で、「相互作用」が共翻訳で実現される場合、その無細胞翻訳系については、大腸菌E.coli、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽の系などいずれでも構わない。in vitro virus法では、対応付け分子の形成は、大腸菌E.colではかなり不安定であるが、ウサギ網状赤血球の系(Nemoto N,Miyamoto−Sato E,Yanagawa H.(1997)FEBS Lett.414,405;Roberts R.W,Szostak J.W.(1997)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 94,12297)では安定に確認されており、さらに小麦胚芽の系(WO 02/46395)ではより安定に確認されている。
無細胞共翻訳における翻訳又は転写及び翻訳の条件は、用いる無細胞翻訳系に応じて適宜選択される。
<4>mRNAが除去された対応付け分子を含む第1の態様の複合体
いったん対応付け翻訳によって蛋白質の検出や固定に必要なタグや蛍光性色素などの修飾が施されれば、mRNAを検出や固定に利用しない場合は、mRNA部分は必要なくなる。従って、本発明は、IVVが、mRNAが除去されたIVVであり、mRNAが除去されたIVVとC末端ラベル化蛋白質との間の相互作用によって形成される複合体を提供する。mRNAが相互作用検出で弊害となる場合などにはこの形態を検出に利用することが望ましい。
図1のC及びDに、mRNAが除去されたin vitorウイルス(IVV(mRNA−))を含む複合体の構成例を示す。
図1のCはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質の複合体を示す。蛋白質1とがスペーサー1からなるmRNAを欠いた構成と、蛋白質2とC末端ラベル化蛋白質の相互作用により形成された複合体である。スペーサー1は、蛋白質1に必要な修飾剤(X)を導入した構成をとり、C末端ラベル化蛋白質は、そのC末端に、C末端ラベル化剤(Y)が連結した構成をとる。無細胞共翻訳における相互作用によってIVVとC末端ラベル化蛋白質の複合体を形成すると共に、同時に各蛋白質に必要な修飾が施され、後処理としてRNaseなどでmRNAを消化して、IVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質の複合体を形成する。
図1のDはIVV(mRNA−)と複数のC末端ラベル化蛋白質の複合体を示す。蛋白質1とスペーサー1からなるmRNAを欠いた構成と、複数の蛋白質A、B,C....などがC末端ラベル化剤(Y)で修飾された構成のものが、蛋白質間相互作用により形成された複合体である。スペーサー1は、蛋白質1に必要な修飾剤(X)を導入した構成をとり、蛋白質A、B,C....(ライブラリー)などにC末端ラベル化剤(Y)を導入した構成のものが、無細胞共翻訳によって相互作用することによって複合体を形成すると共に、同時に各蛋白質に必要な修飾が施され、後処理として、RNaseなどでmRNAを消化して、IVV(mRNA−)と複数のC末端ラベル化蛋白質の複合体を形成する。
mRNAの除去方法は特に限定されないが、例えば、RNase処理があげられる。
IVV(mRNA−)のスペーサーの修飾は、上記のIVVと同様でよい。
<5>第1の態様の複合体を用いる蛋白質間相互作用解析方法
本発明の蛋白質間相互作用解析方法は、相互作用させる分子として、本発明の複合体を形成する対応付け分子を用いることを特徴とし、相互作用させる分子として、本発明の複合体を形成する対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質を用いることの他は公知の方法に従って行うことができる。解析方法としては、対応付け分子を固定化する方法及び対応付け分子を固定化しない方法が挙げられる。本発明の解析方法においては、通常には、本発明の分離・固定用あるいは検出用修飾を持つ対応付け分子の複合体を、修飾物質の種類や反応系の種類などにより適宜組み合わせて形成せしめ、該複合体が発する信号において両分子間の相互作用に基づいて発生される上記信号の変化を測定することにより相互作用を解析する。相互作用の解析は、例えば、蛍光相関分光法、蛍光イメージングアナライズ法、蛍光共鳴エネルギー移動法、エバネッセント場分子イメージング法、蛍光偏光解消法、表面プラズモン共鳴法、又は、固相酵素免疫検定法により行われる。前者としては、RIもしくは蛍光イメージングアナライズ法による、またはDNAチップもしくはプロテインチップを用いる解析方法が挙げられ、後者としては蛍光相互相関分析法による解析方法が挙げられる。
図2に、本発明の複合体による蛋白質の相互作用の解析の概略を示す。Aに示すように、本発明の「IVVとC末端ラベル化蛋白質の複合体」は、無細胞共翻訳において、スペーサーの修飾剤(X)で修飾を施されたある蛋白質を含むIVV、そして、C末端ラベル化剤(Y)で修飾を施されたある蛋白質あるいは複数の蛋白質との相互作用によって形成されたものである。このIVVのmRNAを何らかの方法で消化した複合体が「IVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質の複合体」である。これら複合体の相互作用について、FCCS、蛍光リーダー、DNAチップ、プロテインチップなどで解析する。また、96穴プレートを利用することによって大規模解析に容易に発展できる点も特徴である。FCCS解析では、単なる相互作用のあり無しのみ成らず、相互作用の強さの指標としてKdを算出可能となる。また、Bに示すように、無細胞共翻訳において、そのスペーサーの修飾剤(X)に固定化のための修飾を施された「IVV」あるいは「IVV(mRNA−)」とC末端ラベル化剤(Y)で修飾を施されたある蛋白質あるいは複数の蛋白質との相互作用をSDS−PAGEの電気泳動パターンによって解析する。また、96穴プレートを利用して、複数の「IVV」あるいは「IVV(mRNA−)」を固定化してスクリーニングすることによって大規模並行解析に容易に発展できる。
このように、本発明の複合体に修飾されたタグや蛍光性色素を利用して、相互作用を検出するさまざまな方法が挙げられる。具体的には、二種類の異なる蛍光性色素を異なる蛋白質に修飾することでFCCS解析へ、あるいは、固定用のタグと蛍光性色素を異なる蛋白質に修飾することにより蛍光リーダー、プロテインチップなどへ応用可能であり(図2のA)、さらに、IVVに固定用のタグを修飾し、C末端ラベル化により蛍光性色素を複数の蛋白質に修飾することによりスクリーニング後のゲルアッセイなどでin vitroウイルスの蛋白質と相互作用可能な複数の蛋白質についての解析へ応用可能である(図2のB)。また、本発明の複合体を、第1、2の発明の複合体を96穴プレートなどを利用することで、並列的に解析することにより、一挙に大量の蛋白質間相互作用を解析することが可能である。
図2のAに示したのは、IVVまたはIVV(mRNA−)をFCCS測定、蛍光リーダー、DNAチップ、プロテインチップなどへ応用して蛋白質の相互作用を解析する方法である。FCCS測定では、対応付け分子として、修飾剤(X)として蛍光性物質を有するスペーサーと蛋白質をコードしているmRNAのライゲーションによって対応付け分子のテンプレートを用意し、C末端ラベル化蛋白質として、蛍光性物質を有するラベル化剤(Y)と蛋白質をコードしているmRNAのテンプレートを用意する。ここで、修飾剤(X)とラベル化剤(Y)は、FCCS測定が可能な吸収領域をもつ、たとえば、Cy5とローダミングリーンなどの蛍光性物質の組み合わせが選択される。これらの対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質のテンプレートは、無細胞翻訳系で共に翻訳され、修飾剤(X)を有する対応付け分子は、リボソーム上で蛋白質と修飾剤(X)を有するスペーサーを持つmRNAと連結して対応付け分子となり、C末端ラベル化蛋白質は、リボソーム上で蛋白質とラベル化剤(Y)が連結してC末端ラベル化蛋白質となり、それら対応付け分子の蛋白質とC末端ラベル化蛋白質が相互作用により複合体を形成しているかどうかをFCCS測定により解析することになる。また、蛍光リーダーやDNAチップ、プロテインチップに応用する場合も、上記と同様であるが、XとYの少なくとも一方に固定化剤を有し、プレートやビーズやスライドガラスに固定する。このとき、XやYは、検出剤と固定化剤の両方を有していても構わない。また、対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質は一対あるいは複数からなる複合体の両方が可能であり、ある一つの対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質のライブラリーなどの複合体を用いることもできる。あるいはその反対に、ある一つのC末端ラベル化蛋白質に対する対応付け分子のライブラリーなどを用いることもできる。ライブラリーとしては、cDNAライブラリー(ランダムプライミング・ライブラリー、dTプライミング・ライブラリー)、ランダム・ライブラリー、ペプチド・ライブラリー、ホルモン・ライブラリー、抗体・ライブラリー、リガンド・ライブラリー、医薬化合物ライブラリーなどいかなるライブラリーでも構わない。
ここで、mRNA部分は蛋白質の相互作用検出で利用しない場合、たとえば、FCCS測定、蛍光リーダー、プロテインチップなどに応用する場合は、RNase Aなどで故意的に切断することが出来る。図1のCおよびDに切断後の複合体を示す。切断することによって、mRNAの妨害による蛋白質間相互作用の検出の困難性が解消出来る。また、複合体を形成しない単独の対応付け分子をプレートやビーズやスライドガラスに固定することも可能であり、この場合、mRNAを削除したIVVやIVV(mRNA−)を固定化することは、C末端ラベル化蛋白質(特開平11−322781)に比較して、遊離の修飾剤が1/100以下と少ないため固定化の前に精製の必要がないことでも有利である。
図2のBに示したのは、第1の発明をIVVの遺伝子部分を活用してRT−PCRで検出するin vitroセレクション法などへ応用したもので、対応付け分子のXとして固定化できる物質を導入しておき、対応付け分子と相互作用のあるC末端ラベル化蛋白質をスクリーニング後にSDS−PAGEによって検出する。Xによる固定化の仕組みは、いかなるものでも構わない。たとえば、IgG−プロテインAの親和性やカルモジュリンビーズとの親和性を利用したスクリーニング。あるいはプルダウン法でストレプトアビジンあるいはアビジン−ビオチン親和性、GST−tag、Flag−tag,T7−tag,His−tagなどを利用したスクリーニングやそれらを組み合わせたスクリーニングなど。スクリーニングの後、SDS−PAGEで泳動することによって、対応付け分子の蛋白質と相互作用のあるC末端ラベル化蛋白質を検出することが出来る。ここで、C末端ラベル化蛋白質は複数あるいはライブラリーなども用いることが出来る。
図2のAにおいて、96穴のプレートなどを利用することによって、単に一対の蛋白質の相互作用を解析するにとどまらず、多数の組み合わせの相互作用を並列に分析することが可能となり、多数の蛋白質間相互作用の解析および、巨大な蛋白質複合体の構成を解析することも可能となる。特に、二種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法(Fluorescence Cross−Correlation Spectroscopy:FCCS)では、一種類の蛍光色素を用いるFCSでは困難であった同程度の大きさをもつ分子間の相互作用も検出が可能であり、測定に必要な試料量が少なく、測定時間も短く、96穴プレートの自動解析が可能な蛋白質間相互作用解析のハイスループットな手法として期待される。また、図2のBにおいては、in vitroウイルスと複数のC末端ラベル化蛋白質の相互作用を一度に検出することが出来、単に一対の蛋白質の相互作用を解析するにとどまらず、多数の組み合わせの相互作用を並列に分析することが可能となり、巨大な蛋白質複合体の構成を解析することも可能となる。
以下にさらに具体的に解析方法を述べる。
○蛍光相関分光法
蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy(FCS):Eigen,M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,5740−5747(1994))は、共焦点レーザー顕微鏡等の下で、粒子の流動速度、あるいは拡散率、容積収縮等を測定する方法である。
具体的には試料粒子が励起光により励起されて、試料液容積の一部において蛍光を放射し、この放射光を測定し光子割合を得る。この値は、特定の時間に観測されている空間容積中に存在する粒子の数と共に変化する。上述した種々のパラメターは自己相関関数を使用してこの信号の変動から算出され得る。このFCSを行う為の装置もカールツァイス(Zeiss)社等から市販されており、本方法においてもこれらの装置を用いて解析を行うことができる。
この方法を用いてIVVとC末端ラベル化蛋白質あるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質間相互作用の測定又は解析を行う場合、溶液として供することが必要である(液相法)。2種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法(FCCS)は、1種類の蛍光色素を用いるFCSでは困難であった同じくらいの分子量をもつ蛋白質間の相互作用も検出できる。2種類の蛍光色素を用いる他の方法としては蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法が知られているが、FRETが生じるためには2つの蛍光色素が40〜50Å以内に近接する必要があり、蛋白質の大きさや蛍光色素の付いている位置によっては、相互作用していてもFRETが観測されない危険性がある。FCCS法では相互相関の検出は蛍光色素間の距離に依存しないので、そのような問題がない。一方、他の検出系である蛍光偏向解消法と比較すると、FCCS法は必要なサンプル量が少なく、検出時間が短く、測定の自動化が容易等の長所がある。さらにFCCS法では蛍光標識された分子の大きさや数というきわめて基本的な情報が得られるので、表面プラズモン共鳴法のように汎用的な用途に利用できる可能性がある。両者の違いは、表面プラズモン共鳴法では蛋白質が固定化された状態で相互作用を検出するのに対して、FCCS法ではより天然の状態に近い溶液中の相互作用を見ることができる点にある。
通常、蛍光を修飾した蛋白質は、精製し、両分子を何らかの方法で相互作用させる必要がある。本方法においては、その工程を一工程で実現できる。すなわち、無細胞翻訳系で共翻訳によって、IVVとC末端ラベル化蛋白質を形成し相互作用させることが出来る。この方法において、同時に多数の解析を行う方法としては、例えば、特定のIVVと異なる複数のC末端ラベル化蛋白質を共翻訳した溶液をそのまま、あるいはRNase処理によってIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質の複合体として、上記FCS用測定装置の各測定用ウェルにそれぞれ投入する方法が用いられる。
○蛍光イメージングアナライズ法
蛍光イメージングアナライズ法は、固相化された分子に、修飾分子を接触せしめ、両分子の相互作用により、固相化された分子上にとどまった修飾分子から発せられる蛍光を、市販の蛍光イメージングアナライザーを用いて測定又は解析する方法である。
この方法を用いてIVVとC末端ラベル化蛋白質あるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質間相互作用の測定又は解析を行う場合、一方のIVVとC末端ラベル化蛋白質あるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質は上記した方法により固相化されていることが必要である。IVVとC末端ラベル化蛋白質あるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質のC末端ラベル化剤に固定化物質を導入しておくことで実現できる。
IVVとC末端ラベル化蛋白質あるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質を固相化するための基板としては、通常蛋白質や核酸等を固定化するのに用いられるニトロセルロースメンブレンやナイロンメンブレン、あるいはプラスチック製のマイクロプレート等も用いることができる。固相化のためのこれらの物質を、無細胞共翻訳系に投入することで、IVVとC末端ラベル化蛋白質あるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質を固相化すると同時に、複合体を形成することも可能である。また、プレートの場合は、無細胞共翻訳系をプレートに投入することで、IVVとC末端ラベル化蛋白質あるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質を固相化すると同時に、複合体を形成することも可能である。複合体を形成せしめた後、好ましくは過剰に存在する蛍光色素を同緩衝液等により洗浄する工程を行い、固相上にとどまったIVVとC末端ラベル化蛋白質あるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質の修飾物質から発せられる蛍光信号、又は固相化されている修飾分子から発せられる蛍光と固相上にとどまった修飾分子から発せられる蛍光が混ざり合った信号を、市販のイメージングアナライザーを用いて測定あるいは解析することにより、固相化された分子と相互作用する分子を同定することができる。
この方法において、同時に多数の解析を行う方法としては、例えば上記固相表面に、複数のIVVあるいはIVV(mRNA−)を番地付けして固相化する方法、あるいは1種類のIVVあるいはIVV(mRNA−)に固相化されていない複数種のC末端ラベル化蛋白質を接触させる方法等が用いられるが、ここでは、その組み合わせのIVVとC末端ラベル化蛋白質の共翻訳をウェル上で行う方法が可能であるところが特徴である。複数種のIVVあるいはIVV(mRNA−)を接触させる場合には、固相にとどまった該分子を緩衝液の濃度の差等により解離させて取得し、これを既知の方法により分析することにより同定できる。
その他、2種類の蛍光色素を用いる他の分子間相互作用検出法として、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法、ガラス等の透明体に固相化した分子に溶液として第2の分子を接触せしめ、これにエバネッセント場が発生する角度でレーザー光等の光源を照射し、発生したエバネッセント光を検出器によって測定又は解析する方法であるエバネッセント場分子イメージング法(Funatsu,T.,et al.,Nature,374,555−559(1995)等)、蛍光偏光で励起された蛍光分子が、励起状態の間、定常状態を保っている場合には同一の偏光平面で蛍光を放射するが、励起された分子が励起状態中に回転ブラウン運動等を行った場合に、放射された蛍光は励起光とは異なった平面になることを利用する蛍光偏光解消法(Perran,J.,et al.,J.Phys.Rad.,1,390−401(1926))、金属/液体界面で相互作用する分子によって表面プラズモンが励起され、これを反射光の強度変化で測定する表面プラズモン共鳴法(Cullen,D.C.,et al.,Biosensors,3(4),211−225(1987−88))などへの応用が挙げられる。
<6>本発明の第2態様の複合体
本態様の複合体は、複数の、遺伝子型と表現型の対応付け分子を含み、該対応付け分子間の相互作用によって形成される複合体であり、対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を、対応付け分子を構成する蛋白質部分以外の部分に有することを特徴とする対応付け分子の複合体である。
複合体を構成する対応付け分子は2種でも3種以上もよく、それらの対応付け分子が含む蛋白質は、同一でも互いに異なっていてもよい。すなわち、本発明の複合体は、或る蛋白質を介する相互作用及び/又は同一の蛋白質間の相互作用による複合体を包含する。
本発明において対応付け分子に含まれる蛋白質は、蛋白質の全長であっても結合活性部位を含む部分ペプチドでもよい。またアミノ酸配列、およびその機能が既知の蛋白質でも、未知の蛋白質でもよい。これらは、合成されたペプチド鎖、生体より精製されたRNAやcDNAライブラリー等から適当な翻訳系を用いて翻訳したものでもよい。合成されたペプチド鎖はこれに糖鎖が結合した糖蛋白質であってもよい。糖鎖としては、他の蛋白質と相互作用する能力を有する限り、特に制限はなく、その糖配列あるいは機能が、既知の糖鎖でも未知の糖鎖でもよい。好ましくは、既に分離解析され、糖配列あるいは機能が既知の糖鎖が用いられる。
本発明における対応付け分子間の「相互作用」とは、通常は、蛋白質間の共有結合、疎水結合、水素結合、ファンデルワールス結合、および静電力による結合のうち少なくとも1つから生じる分子間に働く力による作用を示すが、この用語は最も広義に解釈すべきであり、いかなる意味においても限定的に解釈してはならない。共有結合としては、配位結合、双極子結合を含有する。また静電力による結合とは、静電結合の他、電気的反発も含有する。また、上記作用の結果生じる結合反応、合成反応、分解反応も相互作用に含有される。
対応付け分子は、スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子(IVV)であり、かつ該対応付け分子のスペーサーに、対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を有することが好ましい。
相互作用解析に必要な修飾は通常には検出用修飾および分離用修飾である。
図12に、本発明の分離用修飾あるいは検出用修飾を施されたIVVの複合体の構成を示す。図12のAに示すように、IVVの単体の構成は、蛋白質とそれをコードしているmRNAがスペーサーを介して連結したものである。スペーサーは、必要によって修飾剤(X)を導入した構成をとる。
図12のBに示すような一対のIVVから成る複合体は、蛋白質1とそれをコードしているmRNA1がスペーサー1を介して連結したIVV1と、蛋白質2とそれをコードしているmRNA2がスペーサー2を介して連結したIVV2が、蛋白質1と蛋白質2の相互作用により形成された複合体である。スペーサー1は、蛋白質1に必要な修飾剤(X1)を導入した構成をとり、スペーサー2は、蛋白質2に必要な修飾剤(X2)を導入した構成をとり、相互作用によって複合体を形成すると共に、同時に各蛋白質に必要な修飾が施されることになる。
図12のCに示すような3つ以上の多数のIVVから成る複合体は、蛋白質1とそれをコードしているmRNA1がスペーサー1を介して連結したIVV1と、複数の蛋白質2、3,4などとそれをコードしているmRNA2、3,4などがスペーサー2、3,4などを持つIVV2、3,4などが、蛋白質間相互作用により形成された複合体である。スペーサー1は、蛋白質1に必要な修飾剤(X1)を導入した構成をとり、スペーサー2、3,4などは、蛋白質2、3,4などに必要な修飾剤(X2、3,4など)を導入した構成をとり、無細胞共翻訳によって相互作用によって複合体を形成すると共に、同時に各蛋白質に必要な修飾が施されることになる。この時、蛋白質1に対するライブラリーの相互作用を検出する際は、検出用修飾剤(X2、3,4など)は共通の場合がある。
本発明の複合体を構成する要素であるIVVは、上述のように、蛋白質がコードされたmRNAとスペーサーをライゲーション反応によって連結して遺伝子型分子をつくり、遺伝子型分子と表現型分子(蛋白質)を無細胞翻訳によってリボソーム上でピューロマイシンを介して連結するものである。このIVVを用いたin vitroウイルス法は、ある機能をもつ蛋白質に対応する遺伝子群をcDNAライブラリーなどから網羅的に検出(対応付け分子の遺伝子部分を利用してPCRで増幅して検出)するシステムである。ここでは、IVVの分離あるいは/および検出を目的とした物質を修飾剤(図12中,X)として導入したスペーサー(図15、16及び3)を蛋白質間相互作用検出に利用することが大きな特徴となっている。また、修飾剤は、スペーサーへ一つの物質を導入することで分離あるいは検出の目的を達成する場合もあるし、スペーサーへ一つの物質を導入することで分離と検出の目的を兼ねられる場合もあるし、スペーサーへ二つの物質を導入して、分離と検出の目的を達成する場合もある。
分離用修飾剤としては、アビジンあるいはストレプトアビジンとの相互作用が知られているビオチンのような補酵素を代表例として、その他、ニッケル−NTA、抗体、蛋白質、ペプチド、糖類、脂質類、色素、ポリエチレングリコールなどが挙げられ、現在知られている分離や固定化のための物質の他、何らかの方法でIVVを固定化できる物質であればいかなるものでも良い。詳しい例を挙げると、アビジンおよびストレプトアビジン等のビオチン結合蛋白質/ビオチン、マルトース結合蛋白質/マルトース、G蛋白質/グアニンヌクレオチド、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、DNA結合蛋白質/DNA、抗体/抗原分子(エピトープ)、カルモジュリン/カルモジュリン結合ペプチド、ATP結合蛋白質/ATP、あるいはエストラジオール受容体蛋白質/エストラジオールなどの各種受容体蛋白質/そのリガンドなどが挙げられる。これらの中で、アダプター蛋白質/リガンドの組み合わせとしては、アビジンおよびストレプトアビジンなどのビオチン結合蛋白質、マルトース結合蛋白質/マルトース、ポリヒスチジンペプチド/ニッケルあるいはコバルト等の金属イオン、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ/グルタチオン、抗体/抗原分子(エピトープ)、などが好ましく、特にストレプトアビジン/ビオチンの組み合わせが最も好ましい。これらの結合蛋白質は、それ自体既知のものであり、該蛋白質をコードするDNAは既にクローニングされている。アダプター蛋白質の固相表面への結合は、それ自体既知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、タンニン酸、ホルマリン、グルタルアルデヒド、ピルビックアルデヒド、ビス−ジアゾ化ベンジゾン、トルエン−2,4−ジイソシアネート、アミノ基、活性エステルに変換可能なカルボキシル基、又はホスホアミダイドに変換可能な水酸基あるいはアミノ基などを利用する方法を用いることができる。
検出用修飾剤は、放射性および蛍光性修飾物質等が挙げられ、蛍光性物質としては、フルオロセイン系列、ローダミン系列、Cy3,Cy5,エオシン系列、NBD系列等の蛍光物質が挙げられる。これら検出のための修飾剤は、何らかの方法でIVVの蛋白質を検出できる物質ならいかなるものでも良い。
蛍光物質は複数種類を同時に用いてもよい。例えば、対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾としてCy5を有し、残りの対応付け分子が検出用修飾としてローダミングリーンを有してもよいし、対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾としてローダミングリーンを有し、残りの対応付け分子がスペーサーに検出用修飾としてCy5を有していてもよい。
本発明の複合体には、二つの同一あるいは異なる対応付け分子のIVVが相互作用しているもの(図12のB)と、3つ以上の複数の対応付け分子が相互作用しているもの(図12のC)がある。まず、図12のBでは、二つの同一あるいは異なる対応付け分子1,2(たとえば、IVV1、2)が相互作用している構成をとっている。IVV1は、蛋白質1のmRNAを有し、IVV1に固有の修飾剤(X1)として分離や固定化あるいは検出のための修飾剤を有する。IVV2は、蛋白質2のmRNAを有し、IVV2に固有の修飾剤(X2)を有する。ここで、蛋白質1と蛋白質2は同じ場合と異なる場合がある。修飾剤(X1)と修飾剤(X2)については、検出用修飾剤(X1)と検出用修飾剤(X2)の組み合わせの場合は、異なる蛍光性物質の修飾剤の組み合わせとなり、一方が分離用修飾剤(X1)を有する場合と、分離用修飾剤(X1)と検出用修飾剤(X2)の組み合わせの場合がある。次ぎに、図12のCでは、3つ以上の多数のIVVが相互作用している構成をとっている。多数のIVVは、各々の蛋白質のmRNAを有し、修飾剤(X1,2...)を有する。修飾剤(X1,2...)については、該複合体の構成分子として、検出用修飾剤(X1)を有する少なくとも一つのIVV1を持つ、または、該複合体の構成分子として、分離用修飾剤(X1)を有する少なくとも一つのIVV1を持つ構成をもっている。
本発明の複合体は、それぞれの対応付け分子を調製し、それらを混合することによって得ることができるが、本発明者らは、対応付け分子がIVVである場合には、無細胞翻訳系で、2つ以上のIVVを共に翻訳(無細胞共翻訳)すると同時に、蛋白質の検出や固定に必要なタグや蛍光色素などの異なる修飾を所望の蛋白質を含むIVVに行うことが可能であり、かつそれらIVV間の相互作用により複合体を形成出来ることを見いだした。この態様によれば、融合蛋白質など従来のクローニングが必要な方法を用いることなく、IVVのスペーサーの分離用及び検出用の修飾剤(図12中,X)により、蛋白質の検出や固定に必要なタグや蛍光色素などの修飾を実現できる。すなわち、蛋白質合成、検出や固定のためのタグや蛍光性色素などの蛋白質への修飾、修飾した蛋白質の分離・精製、そして相互作用の形成などの各工程を一工程で実現できる。
無細胞共翻訳で「相互作用」が実現される場合、その無細胞翻訳系については、大腸菌E.coli、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽の系などいずれでも構わない。in vitroウイルス法では、対応付け分子の形成は、大腸菌E.colではかなり不安定であるが、ウサギ網状赤血球の系(Nemoto N,Miyamoto−Sato E,Yanagawa H.(1997)FEBS Lett.414,405;Roberts R.W,Szostak J.W.(1997)Proc.Natl,Acad.Sci.USA 94,12297)では安定に確認されており、さらに小麦胚芽の系(WO 02/46395)ではより安定に確認されている。
無細胞共翻訳における翻訳又は転写及び翻訳の条件は、用いる無細胞翻訳系に応じて適宜選択される。
<7>mRNAが除去された対応付け分子を含む第2態様の複合体
いったん対応付け翻訳によって蛋白質の検出や固定に必要なタグや蛍光性色素などの修飾が施されれば、mRNAを検出や固定に利用しない場合は、mRNA部分は必要なくなる。従って、本発明は、IVVが、mRNAが除去されたIVVであり、mRNAが除去されたIVV間の相互作用によって形成される複合体を提供する。mRNAが相互作用検出で弊害となる場合などにはこの形態を検出に利用することが望ましい。
図13に、本発明のmRNAを欠いたIVV(IVV(mRNA−))とその複合体の構成を示す。図13のAに示すIVV(mRNA−)は、IVVのmRNAを除去したものであり、蛋白質とスペーサーから成る。スペーサーは、必ず修飾剤(X)を導入した構成をとる。
図13のBに示す一対のIVV(mRNA−)から成る複合体は、蛋白質1とスペーサー1からなるIVV(mRNA−)1と、蛋白質2とスペーサー2からなるIVV(mRNA−)2が、蛋白質1と蛋白質2の相互作用により形成された複合体である。スペーサー1は、蛋白質1に必要な修飾剤(X1)を導入した構成をとり、スペーサー2は、蛋白質2に必要な修飾剤(X2)を導入した構成をとり、相互作用によって複合体を形成すると共に、同時に各蛋白質に必要な修飾が施されている。
図13のCに示す3つ以上の多数のIVV(mRNA−)から成る複合体;蛋白質1とスペーサー1からなるIVV(mRNA−)1と、複数の蛋白質2、3、4などとスペーサー2、3、4などからなるIVV(mRNA−)2、3、4などが、蛋白質間相互作用により形成された複合体である。スペーサー1は、蛋白質1に必要な修飾剤(X1)を導入した構成をとり、スペーサー2、3、4などは、蛋白質2、3、4などに必要な修飾剤(X2、3、4など)を導入した構成をとり、相互作用によって複合体を形成すると共に、同時に各蛋白質に必要な修飾が施されることになる。この時、蛋白質1に対するライブラリーの相互作用を検出する際は、検出用修飾剤(X2、3、4など)は共通の場合がある。
mRNAの除去方法は特に限定されないが、例えば、RNase処理があげられる。
IVV(mRNA−)のスペーサーの修飾は、上記のIVVと同様でよい。
本発明は、また、この態様の複合体を形成し得る対応付け分子、すなわち、スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子からmRNAを除去することにより得られる対応付け分子であって、スペーサーが、蛋白質のC末端に結合した、ピューロマイシンあるいはピューロマイシンと少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAからなるペプチドアクセプター領域、ペプチドアクセプター領域に結合した、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域、及び、PEG領域に結合した、少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAの塩基に機能修飾を施した機能付与ユニットを含む、対応付け分子を提供する。
この対応付け分子は、上述のスペーサー分子に由来するスペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子からmRNAを除去することにより得ることができる。mRNAの除去は、スペーサーの構成に従って、対応付け分子に機能付与ユニットが残存するように行えばよい。例えば、機能付与ユニット及びペプチドアクセプター領域がDNAからなる場合には、RNase処理により得ることができる。また、ペプチドアクセプター領域及び機能付与ユニットを構成するリボヌクレオチドの種類を考慮した特異性を有するRNaseを用いれば、ペプチドアクセプター領域及び機能付与ユニットはRNAを含んでいてもよい。
<8>第2態様の複合体を用いる蛋白質間相互作用解析方法
本発明の蛋白質間相互作用解析方法は、相互作用させる分子として、本発明の複合体を形成する対応付け分子を用いることを特徴とし、相互作用させる分子として、本発明の複合体を形成する対応付け分子を用いることの他は公知の方法に従って行うことができる。解析方法としては、対応付け分子を固定化する方法及び対応付け分子を固定化しない方法が挙げられる。本発明の解析方法においては、通常には、本発明の分離・固定用あるいは検出用修飾を持つ対応付け分子の複合体を、修飾物質の種類や反応系の種類などにより適宜組み合わせて形成せしめ、該複合体が発する信号において両分子間の相互作用に基づいて発生される上記信号の変化を測定することにより相互作用を解析する。相互作用の解析は、例えば、蛍光相関分光法、蛍光イメージングアナライズ法、蛍光共鳴エネルギー移動法、エバネッセント場分子イメージング法、蛍光偏光解消法、表面プラズモン共鳴法、又は、固相酵素免疫検定法により行われる。前者としては、RIもしくは蛍光イメージングアナライズ法による、またはDNAチップもしくはプロテインチップを用いる解析方法が挙げられ、後者としては蛍光相互相関分析法による解析方法が挙げられる。
図14に、本発明の複合体による蛋白質の相互作用の解析の概略を示す。Aに示すように、本発明の複合体であるIVV複合体あるいはIVV(mRNA−)複合体は、無細胞共翻訳で合成できる。無細胞共翻訳において、スペーサーの修飾剤(X)で修飾を施されたIVVが蛋白質1と蛋白質2あるいは多数の蛋白質との相互作用によって形成されたものが「IVV複合体」である。このIVVのmRNAを除去した複合体が「IVV(mRNA−)複合体」である。これら複合体の相互作用について、FCCS、蛍光リーダー、DNAチップ、プロテインチップなどで解析する。また、96穴プレートを利用することによって大規模解析に容易に発展できる点も特徴である。FCCS解析では、単なる相互作用のあり無しのみならず、相互作用の強さの指標としてのKdを算出可能となる。また、Bに示すように、本発明の複合体であるIVV複合体あるいはIVV(mRNA−)複合体は、無細胞共翻訳において、そのスペーサーの修飾剤(X)にスクリーニングのための修飾を施された「ベイトIVV」と遺伝子タグを持つ「プレイのIVV」とを相互作用せしめたものであり、その相互作用は、遺伝子タグの増幅を利用するRT−PCRとその電気泳動パターンによって解析する。また、96穴プレートを利用することによって大規模並行解析に容易に発展できる点も特徴である。
このように、本発明の複合体に修飾されたタグや蛍光性色素を利用して、相互作用を検出するさまざまな方法が挙げられる。具体的には、二種類の異なる蛍光性色素を異なる蛋白質に修飾することでFCCS解析へ応用可能であり(図14のA)、固定用のタグと蛍光色素を異なる蛋白質に修飾することにより蛍光リーダー、DNAチップ、プロテインチップなどへ応用可能である(図14のA)。さらに、in vitroウイルスの対応付け分子である本来の性質を利用して、一つのin vitroウイルスには固定用のタグを修飾し、96穴プレートなどへの固定による並行スクリーニングを施し、もう一方のin vitroウイルスの遺伝子部分を活用してRT−PCRで検出するin vitroセレクション法などへの応用が考えられる(図14のB)。また、本発明の複合体を96穴プレートなどを利用することで、並列的に解析することにより、一挙に大量の蛋白質間相互作用を解析することが可能である。以下、さらに詳細に説明する。
図14のAに示したのは、IVV,IVV(mRNA−)をFCCS測定、蛍光リーダー、DNAチップ、プロテインチップなどへ応用して蛋白質の相互作用を解析する方法である。FCCS測定では、修飾剤(X1)として蛍光性物質を有するスペーサーと蛋白質をコードしているmRNAのライゲーションによってIVV1のテンプレートを用意し、修飾剤(X2)として蛍光性物質を有するスペーサーと蛋白質をコードしているmRNAのライゲーションによってIVV2のテンプレートを用意する。ここで、修飾剤(X1)と修飾剤(X2)は、FCCS測定が可能な吸収領域をもつ、たとえば、Cy5とローダミングリーンなどの蛍光性物質の組み合わせが選択される。これらのIVV1とIVV2のテンプレートは、無細胞翻訳系で共に翻訳され、修飾剤(X1)を有するIVV1のテンプレートは、リボソーム上で蛋白質1と連結してIVV1となり、修飾剤(X2)を有するIVV2のテンプレートは、リボソーム上で蛋白質2と連結してIVV2となり、それらの蛋白質1と蛋白質2が相互作用により複合体を形成しているかどうかをFCCS測定により解析することになる。また、蛍光リーダーやDNAチップ、プロテインチップに応用する場合も、上記と同様であるが、X1あるいはX2の少なくとも一方に固定化剤を含み、プレートやビーズやスライドガラスに固定する。このとき、Xは、検出剤と固定化剤の両方を兼ねた物質あるいは、二つの物質を導入しても構わない。また、IVVは一対あるいはそれ以上の複数からなる複合体の両方が可能であり、ある一つのIVVとIVVライブラリーなどとの複合体を用いることもできる。IVVライブラリーとしては、cDNAライブラリー(ランダムプライミング・ライブラリー、dTプライミング・ライブラリー)、ランダム・ライブラリー、ペプチド・ライブラリー、ホルモン・ライブラリー、抗体・ライブラリー、リガンド・ライブラリー、医薬化合物ライブラリーなどいかなるライブラリーでも構わない。
ここで、mRNA部分は蛋白質の相互作用検出で利用しない場合(遺伝子タグのRT−PCRによる検出が必要ない場合)、たとえば、FCCS測定、蛍光リーダー、プロテインチップなどに応用する場合は、RNase Aなどで故意的に切断することが出来る。切断することによって、mRNAの妨害による蛋白質間相互作用の検出の困難性が解消出来る。また、複合体を形成しない単独のIVVをプレートやビーズやスライドガラスに固定することも可能であり、この場合、mRNAを削除したIVV(mRNA−)を固定化することは、C末端ラベル化蛋白質(特開平11−322781「蛋白質のラベル化化合物およびその化合物を用いた蛋白質のラベル化方法」柳川弘志ほか)を固定化することに比較して、遊離の修飾剤が1/100以下と少ないため固定化の前の精製や固定化後の洗いでも有利である。また、検出用修飾が施されたIVVやIVV(mRNA−)についても同様に、C末端ラベル化蛋白質と比較して、遊離の修飾剤が1/100以下と少ないためクルードな状態で利用可能となる。
図14のBに示したのは、IVVの遺伝子部分を活用してRT−PCRで検出するin vitroセレクション法などへ応用したもので、ベイト対応付け分子のXとして固定化できる物質を導入しておき、ベイト対応付け分子と相互作用のある蛋白質をスクリーニング後にRT−PCRによってその遺伝子を検出する。Xによる固定化の仕組みは、上記した固定化剤を利用できる。スクリーニングの後、RT−PCRあるいはPCRによって蛋白質の遺伝子配列を知ることが出来る。ここで、検出(プレイ)側のIVVは複数あるいは上述したライブラリーなども用いることが出来る。
図14のAにおいて、96穴のプレートなどを利用することによって、単に一対の蛋白質の相互作用を解析するにとどまらず、多数の組み合わせの相互作用を並列に分析することが可能となり、巨大な蛋白質複合体の構成を解析することも可能となる。特に、二種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法(Fluorescence Cross−Correlation Spectroscopy:FCCS)では、一種類の蛍光色素を用いるFCSでは困難であった同程度の大きさをもつ分子間の相互作用も検出が可能であり、測定に必要な試料量が少なく、測定時間も短く、96穴プレートの自動解析が可能な蛋白質間相互作用解析のハイスループットな手法として期待される。また同様に、図14のBにおいて、分離用修飾剤を有するベイトIVVとの相互作用を検出用飾剤を有するプレイIVVの遺伝子部分を活用してRT−PCRで検出するin vitroセレクション法を96穴のプレートを利用して並行スクリーニングにより、単に一対の蛋白質の相互作用を解析するにとどまらず、多数の組み合わせの相互作用を並列に分析することが可能となり、巨大な蛋白質複合体の構成を解析することも可能となる。
以下にさらに具体的に解析方法を述べる。
○蛍光相関分光法
蛍光相関分光法(Fluorescence Correlation Spectroscopy(FCS):Eigen,M.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,5740−5747(1994))は、共焦点レーザー顕微鏡等の下で、粒子の流動速度、あるいは拡散率、容積収縮等を測定する方法である。
具体的には試料粒子が励起光により励起されて、試料液容積の一部において蛍光を放射し、この放射光を測定し光子割合を得る。この値は、特定の時間に観測されている空間容積中に存在する粒子の数と共に変化する。上述した種々のパラメターは自己相関関数を使用してこの信号の変動から算出され得る。このFCSを行う為の装置もカールツァイス(Zeiss)社等から市販されており、本方法においてもこれらの装置を用いて解析を行うことができる。
この方法を用いてIVVあるいはIVV(mRNA−)間相互作用の測定又は解析を行う場合、溶液として供することが必要である(液相法)。2種類の蛍光色素を用いる蛍光相互相関分光法(FCCS)は、1種類の蛍光色素を用いるFCSでは困難であった同じくらいの分子量をもつ蛋白質間の相互作用も検出できる。2種類の蛍光色素を用いる他の方法としては蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法が知られているが、FRETが生じるためには2つの蛍光色素が40〜50Å以内に近接する必要があり、蛋白質の大きさや蛍光色素の付いている位置によっては、相互作用していてもFRETが観測されない危険性がある。FCCS法では相互相関の検出は蛍光色素間の距離に依存しないので、そのような問題がない。一方、他の検出系である蛍光偏向解消法と比較すると、FCCS法は必要なサンプル量が少なく、検出時間が短く、測定の自動化が容易等の長所がある。さらにFCCS法では蛍光標識された分子の大きさや数というきわめて基本的な情報が得られるので、表面プラズモン共鳴法のように汎用的な用途に利用できる可能性がある。両者の違いは、表面プラズモン共鳴法では蛋白質が固定化された状態で相互作用を検出するのに対して、FCCS法ではより天然の状態に近い溶液中の相互作用を見ることができる点にある。
通常、蛍光を修飾した蛋白質は、精製し、両分子を何らかの方法で相互作用させる必要がある。本方法においては、その工程を一工程で実現できる。すなわち、無細胞翻訳系での共翻訳によって、IVVを形成し相互作用させることが出来る。このクルードなIVV複合体を含む溶液をそのまま、あるいはRNase処理によってIVV(mRNA−)複合体として、好ましくは市販のFCS用装置の測定用ウェルに通常生化学的に用いられる緩衝液等に適当な濃度で投入する方法によって行われる。先に説明したように、クルードな溶液で測定可能となった理由は、IVVが非常に高効率で蛍光色素で修飾可能(60−70%)であり、修飾されていないフリーの蛋白質の存在頻度が非常に低い(20−10%)ため、分離の必要なくそのまま解析可能だからである。
適当な濃度への希釈方法としては、バッファー1(10mM Tris−Cl pH8.0,150mM NaCl,0.1% NP40,0.5mM EDTA,1mM DTT)あるいはバッファー2(10mM Tris−Cl,pH8.0,150mM NaCl,0.1% NP40)、あるいは翻訳系そのもので、10〜50倍に希釈することが挙げられる。サンプル量は、通常には1〜5nMである。
この方法において、同時に多数の解析を行う方法としては、例えば、特定のIVVと異なる複数のIVVを共翻訳したIVV複合体を含む溶液をそのまま、あるいはRNase処理によってIVV(mRNA−)複合体として、上記FCS用測定装置の各測定用ウェルにそれぞれ投入する方法が用いられる。
○蛍光イメージングアナライズ法
蛍光イメージングアナライズ法は、固相化された分子に、修飾分子を接触せしめ、両分子の相互作用により、固相化された分子上にとどまった修飾分子から発せられる蛍光を、市販の蛍光イメージングアナライザーを用いて測定又は解析する方法である。
この方法を用いてIVVあるいはIVV(mRNA−)間相互作用の測定又は解析を行う場合、一方のIVVあるいはIVV(mRNA−)は上記した方法により固相化されていることが必要である。IVVあるいはIVV(mRNA−)のスペーサーの修飾剤に固定化物質を導入しておくことで実現できる。
IVVあるいはIVV(mRNA−)を固相化するための基板としては、通常蛋白質や核酸等を固定化するのに用いられるニトロセルロースメンブレンやナイロンメンブレン、あるいはプラスチック製のマイクロプレート等も用いることができる。固相化のためのこれらの物質を、無細胞共翻訳系に投入することで、IVVあるいはIVV(mRNA−)を固相化すると同時に、複合体を形成することも可能である。また、プレートの場合は、無細胞共翻訳系をプレートに投入することで、IVVあるいはIVV(mRNA−)を固相化すると同時に、複合体を形成することも可能である。複合体を形成せしめた後、好ましくは過剰に存在する蛍光色素を同緩衝液等により洗浄する工程を行い、固相上にとどまったIVVあるいはIVV(mRNA−)の修飾物質から発せられる蛍光信号、又は固相化されている修飾分子から発せられる蛍光と固相上にとどまった修飾分子から発せられる蛍光が混ざり合った信号を、市販のイメージングアナライザーを用いて測定あるいは解析することにより、固相化された分子と相互作用する分子を同定することができる。
この方法において、同時に多数の解析を行う方法としては、例えば上記固相表面に、複数のIVVあるいはIVV(mRNA−)を番地付けして固相化する方法、あるいは1種類のIVVあるいはIVV(mRNA−)に固相化されていない複数種のIVVあるいはIVV(mRNA−)を接触させる方法等が用いられるが、ここでは、その組み合わせのIVV共翻訳をウェル上で行う方法が可能であるところが特徴である。複数種のIVVあるいはIVV(mRNA−)を接触させる場合には、固相にとどまった該分子を緩衝液の濃度の差等により解離させて取得し、これを既知の方法により分析することにより同定できる。
その他、2種類の蛍光色素を用いる他の分子間相互作用検出法として、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)法、ガラス等の透明体に固相化した分子に溶液として第2の分子を接触せしめ、これにエバネッセント場が発生する角度でレーザー光等の光源を照射し、発生したエバネッセント光を検出器によって測定又は解析する方法であるエバネッセント場分子イメージング法(Funatsu,T.,et al.,Nature,374,555−559(1995)等)、蛍光偏光で励起された蛍光分子が、励起状態の間、定常状態を保っている場合には同一の偏光平面で蛍光を放射するが、励起された分子が励起状態中に回転ブラウン運動等を行った場合に、放射された蛍光は励起光とは異なった平面になることを利用する蛍光偏光解消法(Perran,J.,et al.,J.Phys.Rad.,1,390−401(1926))、金属/液体界面で相互作用する分子によって表面プラズモンが励起され、これを反射光の強度変化で測定する表面プラズモン共鳴法(Cullen,D.C.,et al.,Biosensors,3(4),211−225(1987−88))などへの応用が挙げられる。
実施例
以下、具体的に無細胞翻訳系におけるIVVとC末端ラベル化蛋白質の共翻訳により形成された複合体、または、複数のIVVの共翻訳により形成された複合体による蛋白質間相互作用解析に関する実施例を記述するが、下記の実施例は本発明についての具体的認識を得る一助とみなすべきものであり、本発明の範囲は下記の実施例により何ら限定されるものでない。
実施例1 IVVとC末端ラベル化蛋白質の無細胞共翻訳の条件の検討
IVV形成とC末端ラベル化蛋白質の翻訳を両立させる(両方を無細胞共翻訳する)ためには、添加するC末端ラベル化剤の濃度の検討が重要である。IVVのスペーサーの3’末端はピューロマイシン又はその誘導体であり、C末端ラベル化剤の3’末端もピューロマイシン又はその誘導体である。よって、使用するC末端ラベル化剤の濃度が高すぎると、IVV形成を阻害し、低すぎると、蛋白質のC末端ラベル化効率が悪くなる。C末端ラベル化剤の濃度を最適に決定するために、使用するC末端ラベル化剤について、各無細胞翻訳糸で、IVVの形成を阻害しない濃度を検討することが必要である。本実施例では、蛋白質としてJunを用いて、小麦胚芽の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))における、C末端ラベル化剤としてのFlu−dCpPuroの添加濃度を変化させたときのJunのC末端ラベル化効率と対応付け分子(Jun−Flu−IVV)の形成阻害率について検討した。
方法:
Junは、pEU−T7JunFlagベクター(配列番号1)からPCR(プライマー5’SP6(0−29)T7(配列番号2)と3’FlagA(配列番号3)、PCRプログラムST60(表4参照))によってDNAテンプレートを準備した。pEU−T7JunFlagベクターは、市販のベクターpUC(Takara)にマウス精巣cDNAライブラリー(Takara)からクローニングしたc−Jun(179−335)を組み込んだものである。フルオロセインを有するスペーサー(p(dCp)T(Flu)pPEG(2000)p(dCp)Puro;図4)の合成は、図5のBに概略を示す方法を用いて合成した。ここで化合物1はIkedaらが報告した方法(Ikeda,S.et al.(1998)Tetrahedron Lett.39:5975−5978)を用い合成した。用いたヌクレオチドホスホアミダイト(それぞれdC、T(Fl)及びT(Bio)を与えるホスホアミダイト)、PEGホスホアミダイト又は化学リン酸化剤の構造は図5のAに示す。ヌクレオチドホスホアミダイトおよび化学リン酸化剤はグレンリサーチ社(アメリカ合衆国、バージニア州)より購入した。平均分子量2000のポリエチレングリコール(PEG)は日本油脂(東京都渋谷区)より購入した。平均分子量4000のPEGはフルカ社(スイス)より購入した。PEGアミダイトはJaschkeらが報告した方法(Jaschke,A.et al.(1993)Tetrahedron Lett.34:301−304)を用い合成した。なお、図5中、DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を、Fmocはフルオレン−9−メトキシカルボニル基を示す。
化合物1(400mg,ピューロマイシン残基10μmol含有)に対し、以下のA〜Dの処理を、所定の配列に従い、所定数のヌクレオチドおよびPEGが導入されるまで繰り返し行なった。
A.3%トリクロロ酢酸−塩化メチレン溶液1mLを加え室温で3分間放置後、塩化メチレン5mLで3回洗浄する。再度同じ操作を繰り返した後、無水アセトニトリル5mLで5回洗浄する。
B.ヌクレオチドホスホアミダイト、PEGアミダイト又は化学リン酸化剤30μmol、0.457Mテトラゾール−無水アセトニトリル溶液100μL、および無水アセトニトリル1mLを加え、室温で15分間振盪する。アセトニトリル5mLで5回洗浄する。
C.50mMヨウ素溶液(テトラヒドロフラン−ピリジン−水=75:20:5)1mLを加え室温で3分間放置後、ピリジン5mLで3回洗浄する。再度同じ操作を繰り返した後、無水ピリジン5mLで5回洗浄する。
D.10%無水酢酸−ピリジン溶液1mLおよび触媒量の4,4−ジメチルアミノピリジンを加え室温で20分間放置後、ピリジン5mLで5回、塩化メチレン5mLで5回洗浄する。
上記の処理により、所定の配列で、所定数のヌクレオチド及びPEGが導入された化合物1に濃アンモニア水1.5mLおよびエタノール0.5mLを加え、室温で14時間振盪した。ろ過により固相担体(CPG)を取り除き、ろ液を凍結乾燥した。残査をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS−A SH−343−5,溶離液:10〜60%アセトニトリル−0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)30分間の直線濃度勾配、流速:10mL/分]で精製後、PEG領域を含むスペーサー分子を得た。
なお、記号の意味は以下の通りである。p:リン酸基、dC:デオキシシチジン、PEG(数字):数字で示す平均分子量を有するPEG、Puro:ピューロマイシン、T(Fl):蛍光色素で標識されたチミジン、T(Bio):ビオチンで標識されたチミジン。
スペーサーとJun mRNAを以下の組成の反応液でライゲーション(15℃,20h)し、RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、Jun−Flu−IVVのRNAテンプレートを作成した。
Figure 2003048363
以下の組成の小麦胚芽の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))を用いて、用意したJun−Flu−IVVのRNAテンプレート(Jun(mRNA)−Flu−スペーサー)の翻訳(26℃,60min)を行い、15%SDS−PAGEで10μl中2μlをチャージして泳動した。この時、C末端ラベル化剤Flu−dCpPuroを0.02μMから200μMまで変化させて対応付け分子を形成するのに阻害しない濃度を検討した。
Figure 2003048363
結果:
図6に示したように、C末端ラベル化剤Flu−dCpPuroは、この小麦胚芽の系では、20μM以上添加すると、C末端ラベル化効率が劇的に低下すると共に、対応付け分子の形成阻害効率が劇的に上昇する。この結果、共翻訳において、Jun−Flu−IVVの形成効率も良く、C末端ラベル化蛋白質の合成効率も良いFlu−dCpPuroの濃度条件は、2μM付近から20μM付近であることがわかった。これらの濃度では、Jun−Flu−IVVの形成は全く阻害されず、C末端ラベル化効率もそこそこ得られた。C末端ラベル化効率については、10μM付近から20μM付近で特に好ましい結果が得られた。
実施例2 SDS−PAGEによる蛋白質間相互作用の解析
相互作用が既知の蛋白質としてFos/Junの組合せを用いて、Fos−Flu−ビオチン−IVVとC末端ラベル化Jun蛋白質の複合体を無細胞翻訳系で共翻訳によって形成させ、Fos/Junの両方に相互作用のないサイクリンB1も添加した系で、SDS−PAGEで相互作用を検出した。FosのDNAテンプレートをPCRによって作成し、転写してmRNAテンプレートとした。FosのmRNAテンプレートと、修飾剤としてビオチンおよびフルオロセインを有するスペーサーをライゲーションし、Fos(mRNA)−Flu−ビオチン−スペーサーを作成した。次ぎに、JunのmRNAテンプレートとサイクリンB1のmRNAテンプレートをPCRによって作成した。JunとサイクリンB1のmRNAテンプレートと先に作成したFos(mRNA)−Flu−ビオチン−スペーサーテンプレート、そしてC末端ラベル化剤Flu−dCpPuroを対応付け分子を形成するのに阻害しない濃度で添加し、小麦胚芽の無細胞翻訳系で共翻訳を行い、C末端ラベル化サイクリンB1の共存下でのC末端ラベル化JunとFos−Flu−ビオチン−IVVとの相互作用について、アビジンビーズでスクリーニングしてSDS−PAGEで検出した。
方法:
Fosは、pNzzCBPFosベクター(配列番号4)から、TaKaRa Ex Taq(宝酒造)を用いて、PCR(プライマー5’SP6(029/F.H.)(配列番号5)と3’FosFlag[X]A(配列番号6)、PCRプログラムST62(表4参照))によってDNAテンプレートを準備した。pNzzCBPFosベクターは、市販のベクターpCMV(Stratagene)にマウス精巣cDNAライブラリー(Takara)からクローニングしたc−Fos(118−211)を組み込んだものである。Junは、実施例1と同様にして用意した。サイクリンB1は、pCMVzzCBPcB1ベクター(配列番号7)からPCR(プライマー5’SP6(029)cB1(配列番号8)と3’(646)FlagA(配列番号9)、PCRプログラムCYCB1(表4参照))によってDNAテンプレートを準備した。pCMVzzCBPcB1ベクターは、市販のベクターpCMV(Stratagene)に完全長サイクリンB1遺伝子を組み込んだものである。ベイトDNA(配列番号10)は、Fos/Junの結合配列を含むDNA−Fos/Junをテンプレートとし、PCR(プライマー5’DNA(配列番号11)と3’DNA(配列番号12)、PCRプログラムV−2(表4参照))によって準備した。Fos、JunおよびサイクリンB1のDNAテンプレートをRiboMAXTM Large Scale RNA Production Systems(Promega)を用いて転写(37℃,2h)し、RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、各mRNAテンプレートを準備した。フルオロセインとビオチンを有するスペーサー(p(dCp)T(Bio)T(Flu)pPEG(2000)p(dCp)Puro;図4)の合成は上記のように行った。スペーサーとFos mRNAテンプレートを実施例1と同様にライゲーション(15℃,20h)し、RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、Fos(mRNA)−Flu−ビオチン−スペーサーを作成した。
用意したFos(mRNA)−Flu−ビオチン−スペーサーテンプレートとJunのmRNAテンプレートのみ、あるいはJunとサイクリンB1のmRNAテンプレート、そしてC末端ラベル化剤Flu−dCpPuroを対応付け分子を形成するのに阻害しない20μMの濃度で添加し(実施例1で検討)、以下の組成の小麦胚芽の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))を用いて共翻訳(26℃,60min)を行った。比較実験として、Fos(mRNA)−Flu−ビオチン−スペーサーテンプレートを添加しない系でも同様の実験を行った。
Figure 2003048363
共翻訳後、50μlの無細胞翻訳系に50μlのバッファー(10mM Tris−Cl pH8.0,150mM NaCl,0.1% NP40,0.5mM EDTA,1mM DTT)と50μlの磁性アビジン・ビーズを加え、30分室温でインキュベートし、磁性スタンドで分離し上清を捨て、3〜5回バッファー1で洗浄し、最終的に、50μlの磁性アビジン・ビーズを得た。うちビーズ10μlを用いて、15%SDS−PAGE泳動電気泳動によって確認した。
結果:
図7に示したように、SDS−PAGEでは、Fos−Flu−ビオチン−IVVはウエルに残り、相互作用していたC末端ラベル化Jun蛋白質のみが検出される。Fosの添加されていない共翻訳の系では、C末端ラベル化Jun、C末端ラベル化サイクリンB1共に検出されなかったが(Fos−,レーン2)、Fosの添加された共翻訳の系では、Fos−Flu−ビオチン−IVV、C末端ラベル化Junのみ、あるいはC末端ラベル化JunとC末端ラベル化サイクリンB1が翻訳され、Fos−Flu−ビオチン−IVVとC末端ラベル化サイクリンB1の相互作用は検出されなかったが、どちらの実験でもFos−Flu−ビオチン−IVVとC末端ラベル化Junの相互作用が確認できた(Fos+,レーン2)。このシステムによって、複数の未知の遺伝子から特定の蛋白質との相互作用を持つ蛋白質を解析可能なことが確認された。
Figure 2003048363
実施例3 FCCSへの応用
相互作用が既知の蛋白質としてFos/Junの組合せを用いて、無細胞翻訳系で共翻訳によってFos/Jun複合体を形成させ、FCCSで相互作用を測定した。FosおよびJunのDNAテンプレートをPCRによって作成し、転写してmRNAテンプレートとした。FosのmRNAテンプレートと、修飾剤としてCy5あるいはローダミングリーン(RhG)を有するスペーサーをライゲーションし、Fos(mRNA)−Cy5−スペーサーとFos(mRNA)−RhG−スペーサーを作成した。同様に、JunのmRNAテンプレートとRhGを有するスペーサーをライゲーションし、Jun(mRNA)−RhG−スペーサーを作成した。Fos(mRNA)−Cy5−スペーサーとJun(mRNA)−RhG−スペーサーの組み合わせについて、小麦胚芽の無細胞翻訳系で共翻訳し、Fos−Cy5−IVVとJun−RhG−IVVの相互作用についてFCCSで測定した。また、コントロールとして相互作用の可能性のないことが知られているFos−Cy5−IVVとFos−RhG−IVVを測定した。
方法:
Fosは、pNzzCBPFosベクター(配列番号4)から、TaKaRa Ex Taq(宝酒造)を用いて、PCR(プライマー5’SP6(029/F.H.)(配列番号5)と3’FosFlag[X]A(配列番号6)、PCRプログラムST62(表8参照))によってDNAテンプレートを準備した。pNzzCBPFosベクターは、市販のベクターpCMV(Stratagene)にマウス精巣cDNAライブラリー(Takara)からクローニングしたc−Fos(118−211)を組み込んだものである。Junは、pEU−T7JunFlagベクター(配列番号1)からPCR(プライマー5’SP6(0−29)T7(配列番号2)と3’FlagA(配列番号3)、PCRプログラムST60(表8参照))によってDNAテンプレートを準備した。pEU−T7JunFlagベクターは、市販のベクターpUC(Takara)にマウス精巣cDNAライブラリー(Takara)からクローニングしたc−Jun(179−335)を組み込んだものである。ベイトDNAは、Fos/Junの結合配列を含むDNA−Fos/Jun(配列番号14)をテンプレートとし、PCR(プライマー5’DNA(配列番号11)と3’DNA(配列番号12)、PCRプログラムV−2(表8参照))によって準備した。FosとJunのDNAテンプレートをRiboMAXTM Large Scale RNA Production Systems(Promega)を用いて転写(37℃,2h)し、RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、各mRNAテンプレートを準備した。Cy5あるいはローダミングリーン(RhG)を有するスペーサー(p(dCp)T(Cy5又はRhG)pPEG(2000)p(dCp)Puro)は以下のように合成した。
スペーサーの合成
PEGスペーサーは、図15、16及び3に示す方法で合成した。図15中、化合物1はIkedaらが報告した方法(Ikeda,S.et al.(1998)Tetrahedron Lett.39:5975−5978)を応用し合成した。ビオチンを含むホスホアミダイト試薬4およびその他のホスホアミダイト試薬(2、3、5)はグレンリサーチ社(アメリカ合衆国、バージニア州)より購入した。平均分子量2000のPEGは日本油脂(東京都渋谷区)より購入し、それを原料にしてホスホアミダイト試薬(6)を、Jaschkeらが報告した方法(Jaschke,A.et al.(1993)Tetrahedron Lett.34:301−304)を用い合成した。図16のCy5活性エステル(7)はアマシャムファルマシアバイオテク社(イギリス、バッキンガムシャー)より、Rhodamine Green(RhG)活性エステル(8)はモレキュラプローブ社(アメリカ合衆国、オレゴン州)より購入した。なお、図15、16及び3中DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を示す。
化合物1(400mg,ピューロマイシン10mmol含有)に対し、以下のA〜Dの処理を所定の配列に従い、所定数のヌクレオチドおよびPEGが導入されるまで繰り返し行なった。
A.3%トリクロロ酢酸−塩化メチレン溶液を1mL加え室温で3分間放置後、塩化メチレン5mLで3回洗浄する。再度同じ操作を繰り返した後、無水アセトニトリル5mLで5回洗浄する。
B.ホスホアミダイト試薬(2〜6)30mmol、0.457Mテトラゾール−無水アセトニトリル溶液100mL、および無水アセトニトリル1mLを加え、室温で15〜60分間震盪する。その後、アセトニトリル5mLで5回洗浄する。
C.50mMヨウ素溶液(テトラヒドロフラン−ピリジン−水=75:20:5)を1mL加え室温で3分間放置後、ピリジン5mLで3回洗浄する。再度同じ操作を繰り返した後、無水ピリジン5mLで5回洗浄する。
D.10%無水酢酸−ピリジン溶液1mLおよび触媒量の4,4−ジメチルアミノピリジンを加え室温で20分間放置後、ピリジン5mLで5回、塩化メチレン5mLで5回洗浄する。
上記の処理を行ない、所定の配列および所定数のヌクレオチドが導入された化合物1に濃アンモニア水1.5mLおよびエタノール0.5mLを加え、室温で14時間震盪した。ろ過により固相担体(CPG)を取り除き、ろ液を凍結乾燥した。残渣をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS−A SH−343−5,溶離液10−60%アセトニトリル−0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)30分間の直線濃度勾配、流速10mL/分]で精製後、化合物9を得た。化合物9を30%アセトニトリル−水0.1mLに溶かし、化合物7あるいは8を10mmol、および1M炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8.3)を10mL加え室温で2時間放置した。反応液を同上の条件のHPLCで精製後、産物を含む画分を濃縮した。残渣を60%トリフルオロ酢酸−水1mLにより室温で30分処理後、濃縮乾固し、残渣を濃アンモニア水1mLにより室温で15分処理後、濃縮乾固した。残渣を同上の条件のHPLCで精製後、産物を含む画分を濃縮し、PEGスペーサー(10)を得た。蛍光性色素のみ又は固定化物質のビオチンのみの場合、あるいは何も導入されていない場合のPEGスペーサーの合成は、ホスホアミダイト試薬(2〜6)の組合せ及び反応の順序を変えて、また、蛍光性色素がフルオレセインである場合は下記のホスホアミダイト試薬を用いて、上記と同様に行った。
Figure 2003048363
以上の手順により以下のPEGスペーサーを得た。
Figure 2003048363
Figure 2003048363
FosのmRNAテンプレートとスペーサー(p(dCp)T(Cy5又はRhG)pPEG(2000)p(dCp)Puro)を以下の組成の反応液でライゲーション(15℃,20h)し、RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、Fos−Cy5−スペーサーとFos−RhG−スペーサーを作成した。同様に、JunのmRNAテンプレートとRhGを有するスペーサー(p(dCp)T(RhG)pPEG(2000)p(dCp)Puro)をライゲーションし、Jun−RhG−スペーサーを作成した。
Figure 2003048363
用意したFos−Cy5−スペーサーとFos−RhG−スペーサーあるいはFos−Cy5−スペーサーとJun−RhG−スペーサーの組み合わせについて、以下の組成の小麦胚芽の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))あるいはウサギ網状赤血球の無細胞翻訳系(Rabbit Reticulocyte Lysate System(Promega))を用いて共翻訳(それぞれ26℃,60minあるいは30℃,30min)を行った。各コントロールとして翻訳系にヘパリン(翻訳を阻害する薬品)を加えたサンプルも作成した。
Figure 2003048363
Figure 2003048363
共翻訳後、バッファー1(10mM Tris−Cl pH8.0,150mM NaCl,0.1% NP40,0.5mM EDTA,1mM DTT)を用いて15倍に希釈した。相互作用が期待されないFos−Cy5−IVVとFos−RhG−IVVの組み合わせと、相互作用が期待されるFos−Cy5−IVVとJun−RhG−IVVの組み合わせについて、ヘパリン入りとヘパリンなしで、FCCS測定(Fluorescence Correlation Microscope(Zeiss))を行った。測定条件は、3nMのサンプルをチェンバーに10μlのせ、Cy5;633nmとRhG;488nmの吸収で相関(Cross Correlation)を測定した。なお、共翻訳後に最終的なヘパリン濃度は揃えて測定した。
結果:
Fos−Cy5−IVVとJun−RhG−IVVの組み合わせでは、ヘパリンなし(図17のA;黒丸)とヘパリン入り(図17のA;黒四角)で、相関(Cross Correlation)が異なり、in vitroウイルスを形成しているヘパリンなしのものでは、自己相関関数(G(τ))が高かった。Fos−Cy5−IVVとFos−RhG−IVVの組み合わせでは、ヘパリンなし(図17のB;黒丸)とヘパリン入り(図17のB;黒四角)とで自己相関関数(G(τ))に差はなかった。よって、無細胞共翻訳において異なる二つのIVVを、異なる所望の色素で修飾し、かつ相互作用による複合体を形成させるこの方法で、それら蛋白質を何ら分離精製することなくFCCSで相互作用を検出できることが示された。
実施例4 In vitroセレクションへの応用
相互作用が既知の蛋白質としてFos/Junの組合せを用いて、Fos−IVVをベイトとし、Jun−IVVをプレイとし、無細胞翻訳系での共翻訳によってFos/JunのIVV複合体を形成させ、相互作用をRT−PCRで検出した。Fos−IVVおよびJun−IVVのDNAテンプレートをPCRによって作成し、転写してmRNAテンプレートとした。Fos−IVVのmRNAテンプレートと、実施例1に従って合成した修飾剤としてビオチン(biotin)を有するスペーサーをライゲーションし、Fos(mRNA)−Bio−スペーサーを作成した。同様に、JunのmRNAテンプレートとスペーサーをライゲーションし、Jun(mRNA)−スペーサーを作成した。Fos(mRNA)−Bio−スペーサーとJun(mRNA)−スペーサーあるいはJun(mRNA)−スペーサーのみ(Fos無し)を、小麦胚芽の無細胞翻訳系で共翻訳あるいは翻訳し、Fos−Bio−IVVとJun−IVVを合成した。これをFosテンプレートのスペーサーに付加されているビオチンを用いてアビジンビーズでスクリーニングし、RT−PCRによりJun−IVVの遺伝子タグを増幅しFos/Jun相互作用を検出した(図18)。
方法:
Fosは、pNzzCBPFosベクター(配列番号4)から、TaKaRa Ex Taq(宝酒造)を用いて、PCR(プライマー5’SP6(029/F.H.)(配列番号5)と3’Fos[X]HisA(配列番号13)、PCRプログラムV−2(表8参照))によってDNAテンプレートを準備した。PNzzCBPFosベクターは、市販のベクターpCMV(Stratagene)にマウス精巣cDNAライブラリー(Takara)からクローニングしたc−Fos(118−211)を組み込んだものである。Junは、pEU−T7JunFlagベクター(配列番号1)からPCR(プライマー5’SP6(0−29)T7(配列番号2)と3’FlagA(配列番号3)、PCRプログラムST60(表8参照))によってDNAテンプレートを準備した。pEU T7JunFlagベクターは、市販のベクターpUC(Takara)にマウス精巣cDNAライブラリー(Takara)からクローニングしたc−Jun(179−335)を組み込んだものである。ベイトDNAは、Fos/Junの結合配列を含むDNA−Fos/Jun(配列番号14)をテンプレートとし、PCR(プライマー5’DNA(配列番号11)と3’DNA(配列番号12)、PCRプログラムV−2(表8参照))によって準備した。FosとJunのDNAテンプレートをRiboMAXTM Large Scale RNA Production Systems(Promega)を用いて転写(37℃,2h)し、RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、各mRNAテンプレートを準備した。修飾剤としてビオチン(biotin)を導入する以外は実施例1と同様に合成したスペーサー(p(dCp)T(Bio)pPEG(2000)p(dCp)Puro)と、FosのmRNAテンプレートとを、実施例3と同様にライゲーションし、Fos−Bio−スペーサーを作成した。また、スペーサー(p(dCp)pPEG(2000)p(dCp)Puro)とJunのmRNAテンプレートとを実施例3と同様にライゲーションし、Jun−スペーサーを作成した。用意したFos−Bio−スペーサーとJun−スペーサーの組み合わせ、あるいはベイト無しのJun−スペーサーのみについて、実施例3と同様にして、50μlスケールの小麦胚芽の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))あるいはウサギ網状赤血球の無細胞翻訳系(Rabbit Reticulocyte Lysate System(Promega))を用いて共翻訳(それぞれ26℃,60minあるいは30℃,30min)を行った。共翻訳後、50μlの無細胞翻訳系に50μlのバッファー1と50μlの磁性アビジン・ビーズを加え、30分室温でインキュベートし、磁性スタンドで分離し上清を捨て、3〜5回バッファー1で洗浄し、最終的に、50μlの磁性アビジン・ビーズを得た。うちビーズ2μlをテンプレートとしてRT−PCR(プライマー5’029−F3(配列番号15)と3’Flag−R3(配列番号16)、プログラムRT−30(表8参照))を行った。ここで、RT−PCRでは、Junのテンプレートのみが増幅されるようにプライマーは設計されている。RT−PCRの結果は、アガロースゲル電気泳動によって確認した。
結果:
図18に示したように、ベイトFos−Bio−IVVとプレイJun−IVV(ベイト+)、あるいはベイトは無しでプレイJun−IVVのみ(Fos−)の無細胞翻訳およびスクリーニング後のRT−PCRにより、Fos−Bio−IVV(ベイト)あるなしで有意な差(100−1000倍)が観察され、Fos−Bio−IVVとJun−IVVの相互作用、すなわち、Fos/Jun相互作用が検出された。よって、この方法で、無細胞共翻訳において異なる二つのIVVの一方(ベイト)に固定化剤(ここではビオチン)を修飾することが可能であり、ビオチンを用いてベイトIVVと相互作用しているプレイIVVを分離し、その遺伝子タグの増幅により相互作用のある蛋白質を検出できることが示された。
Figure 2003048363
実施例5 C末端ラベル化蛋白質の作成
コード分子は、マウス由来のc−junまたはc−fos(Gentz R,Rauscher FJ 3d,Abate C,Curran T(1989)Science243:1695−9;Neuberg M,Schuermann M,Hunter JB,Muller R(1989)Nature338:589−90)の組み込まれているプラスミド(c−junは、pEU−T7JunFlag(配列番号17);c−fosは、pCMVFosCBPzz(配列番号18))からPCRで作成した。PCRのプライマーとしては、c−junでは5’UTR領域について1種類(プライマー;5’SP6−029(配列番号19))と3’末端領域については13種類(プライマー;3’A8=A(配列番号22)、3’X(CTCGAG)(配列番号23)、3’X(CTCGAG)A8=XA(配列番号24)、3’X(CTCGCC)A8(配列番号25)、3’X(CTCG)A8(配列番号26)、3’X(CTC)A8(配列番号27)、3’X(CTCT)A8(配列番号28)、3’X(TTCG)A8(配列番号29)、3’X(GTCC)A8(配列番号30)、3’X(CATG)A8(配列番号31)、3’X(CTCC)A8(配列番号32)、3’X(GTCG)A8(配列番号33)、3’none(配列番号21))、c−fosでは5’UTR領域について1種類(プライマー;5’T7(0’)−bait(配列番号20))と3’末端領域については2種類(プライマー;3’baitFosD(配列番号34),3’baitFosDA(配列番号35))を用い、計15種類のDNAテンプレートを調製し、QIAquick PCR Purification Kits(QIAGEN)で精製した。これらのDNAテンプレートを、RiboMAXTM Large Scale RNA Production Systems(Promega)をもちいて転写(37℃,2h)し、合成したmRNAをRNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、mRNAテンプレート(コード分子)を得た。
まず、得られたmRNAテンプレートを翻訳テンプレートとして用いて、翻訳を行った。翻訳テンプレート2pmolを用いて、Wheat Germ Extract(Promega)の10μlの系で翻訳(26℃,60min)を行い、翻訳と同時に、修飾剤として240pmolのFluor−dCpPuroを用いて、蛋白質のラベル化(Miyamoto−Sato,E.,Nemoto,N.,Kobayashi,K.,and Yanagawa,H.(2000)Nucleic Acids Res.28:1176−1182;Nemoto,N.,Miyamoto−Sato,E.and Yanagawa,H.(1999)FEBS Lett.,462:43−46)を行い、15%SDS−PAGEで電気泳動し、バンドの蛍光(フルオレセイン)をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio−Rad)で測定した。その結果をまとめたグラフを図22に示す。
図22から、ポリA配列(A配列)よりSNNS配列(X配列)を有する場合に、さらにSNNS−ポリA配列(XA配列)を有する場合に、翻訳量が増加することが示された。このことから、XA配列を持つ翻訳テンプレートは、一般的な翻訳やC末端ラベル化により好ましいといえる。また、X配列を変えたときの翻訳結果から、X配列がA配列と組み合わさって効果を現すには、最低4塩基からなることが必要であり、第一番目と第四番目の塩基はCかGであることが要求され、SNNS(SはCまたはG)の構成が必要であることが示された。
さらに、mRNAテンプレートの3’側にPEGスペーサー分子(下記製造例1〜4参照)をライゲーションした翻訳テンプレートを作成した。ここでは、T4 RNAリガーゼ(宝酒造)をもちいて、PEGスペーサー部((dC)(T),PEG4000,PEG4000Puro−Boc)と、コード分子(Jun−X(CTCGAG)A8=Jun−XA(プライマー3’X(CTCGAG)A8=XAを用いて得られたもの))またはコード分子(Fos−D(−A)または3’baitFos−DA(+A)(プライマー3’baitFosDまたは3’baitFosDAを用いて得られたもの))とのライゲーション(15℃,20h)を行い、RNeasy Mini Kits(QIAGEN)で精製し、8M尿素4%PAGEで電気泳動し、エチレンブロマイド(EtBr)で染色し、バンドの蛍光(EtBrとフルオレセイン)をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio−Rad)で検出した。ライゲーションした2pmolの翻訳テンプレートを用いて、Wheat Germ Extract(Promega)あるいは、PROTEIOS(Toyobo)を用いて、10μlの系で翻訳(26℃;1,3,6,20hr)を行い、翻訳と同時に、修飾剤として240pmolのFluor−dCpPuroを用いて、蛋白質のラベル化(Miyamoto−Sato,E.,Nemoto,N.,Kobayashi,K.,and Yanagawa,H.(2000)Nucleic Acids Res.28:1176−1182;Nemoto,N.,Miyamoto−Sato,E.and Yanagawa,H.(1999)FEBS Lett.,462:43−46)を行い、15%SDS−PAGEで電気泳動し、バンドの蛍光(Fluorescein)をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio−Rad)で測定した。RNAの安定性実験は、PEGスペーサー部の蛍光を用いて、RNAの残量をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio−Rad)で測定した。対照としてライゲーションしていない翻訳テンプレートを用いて同様の手順を行った。それらの結果をまとめたグラフを図23および図24に示す。
図23から、コード部の配列は基本的にはどのような配列でもPEGスペーサー部をライゲーションすることで翻訳量が増加することが示された(図23のA)。また、XA配列を持つコード部をもつ翻訳テンプレート(XA)では、XA配列もPEGスペーサー部も持たないコード分子(None)に比べて、翻訳量が約3〜4倍増加していることが示された。また、XA配列を持つコード部では、PEG4000Puro−Bocの構成が最も翻訳量が増加することが示された(図23のB)。よって、一般的な翻訳やC末端ラベル化を行う場合にはPEGスペーサー部がライゲーションされたXA配列を持つ翻訳テンプレートを用いることが適しているといえる。図24から、XA配列を持つコード分子(●;XA)、XA配列を持たないコード分子(□;None)は3時間で翻訳量は飽和に達したが、PEG4000Puro−Bocをもつ翻訳テンプレート(○;XA+PEG400Puro−Boc)は、6時間でも翻訳の増加が見られた(図24のA)。また、その翻訳量は、6時間で比較すると、PEG4000Puro−Bocをもつ翻訳テンプレート(○)は、XA配列を持つコード分子(●;XA)の約2倍、XA配列を持たないコード分子(□;None)の約4倍であった(図24のA)。コード分子と、PEGスペーサー部をもつ翻訳テンプレートとの安定性を比較すると、コード分子(●;XA)は、そのmRNAが1時間で50%減るのに対して、PEGスペーサー部をもつ翻訳テンプレート(○)は、13時間でようやく50%減ることから、PEGスペーサー部をもつコード分子(○)の安定性が非常によいことがわかる(図24のB)。以上から、翻訳テンプレート(○)の翻訳量が増加したのは、ライゲーションされたPEG4000Puro−Bocによる安定性向上が原因と考えられる。
実施例6 IVVの作成
コード分子(mRNAテンプレート)にPEGスペーサー分子(下記製造例1〜4参照)をライゲーションしたものを翻訳テンプレートとして用いた。ここでは、実施例5で得たコード分子のmRNAテンプレート(Jun−XA,Jun−A8=Jun−A)とPEGスペーサー部(PEG2000Puro)を実施例5と同様の方法でライゲーションした。ライゲーションしたmRNAテンプレートを小麦胚芽の無細胞翻訳系としてWheat Germ Extract(Promega)をもちいて、実施例5と同様の方法で翻訳し、対応付け分子を8M尿素10%SDS−PAGEで電気泳動し、蛍光(フルオレセイン)によってマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio−Rad)で検出した。また、フリー蛋白質の量は、翻訳と同時に、修飾剤としてFluor−dCpPuroを用いて、蛋白質のラベル化(Miyamoto−Sato,E.,Nemoto,N.,Kobayashi,K.,and Yanagawa,H.(2000)Nucleic Acids Res.28:1176−1182;Nemoto,N.,Miyamoto−Sato,E.and Yanagawa,H.(1999)FEBS Lett.,462:43−46)を行い、8MUrea10%SDS−PAGEおよび15%SDS−PAGEで電気泳動し、バンドの蛍光(フルオレセイン)をマルチ画像解析装置、Molecular Imager FX(Bio−Rad)で測定し、あわせて、T7−tagによる抗体を用いたウエスタンブロットで総蛋白量を決定した。それらの結果をまとめたグラフを図25に示す。
図25から、対応付け分子は、XA配列を持つコード部とA配列を持つコード部について比較すると、添加するRNA量を変化させたときの対応付け効率は両方とも70%でほとんど変わらないことが示された(図25のA)。しかしながら、添加したRNAテンプレートから合成された蛋白質総量(フリー蛋白質+対応付け分子=100%)に対する対応付け効率については、添加するRNA量を変化させたとき、A配列を持つコード部の場合は90%(フリー蛋白質10%)を超える高い効率を示すことが示された(図25のB)。一方、XA配列を持つコード部の場合は、フリー蛋白質の生成割合が高い(図25のB)。よって、対応付け分子にはXA配列よりもA配列を持つコード部が適しているといえる。
製造例1 PEGスペーサー分子(11)の合成
PEGスペーサー分子(11)は、図26に示す試薬を用い、図27に示す方法で合成した。図26中アミダイト試薬(1〜5)はグレンリサーチ社(アメリカ合衆国、バージニア州)より購入した。平均分子量1000、2000、3000のPEGは日本油脂(東京都渋谷区)より購入した。平均分子量4000のPEGはフルカ社(スイス)より購入した。それらを原料にしてアミダイト試薬(6)を、Jaschkeらが報告した方法(Jaschke,A.et al.(1993)Tetrahedron Lett.34:301−304)を用い合成した。図26中10はIkedaらが報告した方法(Ikeda,S.et al.(1998)Tetrahedron Lett.39:5975−5978)で合成した。なお、図26中DMTrは4,4’−ジメトキシトリチル基を、図27中Fmocは9−フルオレンメトキシカルボニル基を示す。
10(400mg,ピューロマイシン10μmol含有)に対し、以下のA〜Dの処理を所定の配列に従い、所定数のヌクレオチドおよびPEGが導入されるまで繰り返し行なった。
A.3%トリクロロ酢酸−塩化メチレン溶液を1mL加え室温で3分間放置後、塩化メチレン5mLで3回洗浄する。再度同じ操作を繰り返した後、無水アセトニトリル5mLで5回洗浄する。
B.ヌクレオチドアミダイト30μmol、0.457Mテトラゾール−無水アセトニトリル溶液100μL、および無水アセトニトリル1mLを加え、室温で15分間振盪する。アセトニトリル5mLで5回洗浄する。
C.50mMヨウ素溶液(テトラヒドロフラン−ピリジン−水=75:20:5)1mLを加え室温で3分間放置後、ピリジン5mLで3回洗浄する。再度同じ操作を繰り返した後、無水ピリジン5mLで5回洗浄する。
D.10%無水酢酸−ピリジン溶液1mLおよび触媒量の4,4−ジメチルアミノピリジンを加え室温で20分間放置後、ピリジン5mLで5回、塩化メチレン5mLで5回洗浄する。
上記の処理をし所定の配列および所定数のヌクレオチドが導入された10に濃アンモニア水1.5mLおよびエタノール0.5mLを加え、室温で14時間震盪した。ろ過により固相担体(CPG)を取り除き、ろ液を凍結乾燥した。残査をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS−A SH−343−5,溶離液10−60%アセトニトリル−0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)の30分間の直線濃度勾配、流速:10mL/分]で精製後、PEGスペーサー分子(11)を得た。得られたPEGスペーサー分子(11)の構造及び収率を以下に示す。
Figure 2003048363
Figure 2003048363
製造例2 PEGスペーサー分子(14)の合成
PEGスペーサー分子(14)は、図26に示す試薬を用い、図27及び28に示す方法で合成した。図26中、ローダミングリーン(RhodG)活性エステル(7)はモレキュラプローブ社(アメリカ合衆国、オレゴン州)より、Cy5活性エステル(8)およびCy3活性エステル(9)はアマシャムファルマシアバイオテク社(イギリス、バッキンガムシャー)より、購入した。図28中、12はIkedaらが報告した方法(Ikeda,S.et al.(1998)Tetrahedron Lett.39:5975−5978)を応用し合成した。なお、図26中、Bocはtert−ブトキシカルボニル基を示す。
12(400mg,ピューロマイシン10μmol含有)に対し、PEGスペーサー分子(11)の合成の場合と同様のA〜Dの処理を所定の配列に従い、所定数のヌクレオチドおよびPEGが導入されるまで繰り返し行なった。
上記の処理を行ない、所定の配列および所定数のヌクレオチドが導入された12に濃アンモニア水1.5mLおよびエタノール0.5mLを加え、室温で14時間震盪した。ろ過により固相担体(CPG)を取り除き、ろ液を凍結乾燥した。残査をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS−A SH−343−5,溶離液:10−60%アセトニトリル−0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)の30分間の直線濃度勾配、流速:10mL/分]で精製後、13を得た。13を30%アセトニトリル−水0.1mLに溶かし、7,8または9を10μmol、および1M炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8.3)を10μL加え室温で2時間放置した。反応液を同上の条件のHPLCで精製後、産物を含む画分を濃縮した。残査を60%トリフルオロ酢酸−水1mLにて室温で30分処理後、濃縮乾固した。残査を濃アンモニア水1mLにて室温で15分処理後、濃縮乾固した。残査を同上の条件のHPLCで精製後、産物を含む画分を濃縮し、PEGスペーサー分子(14)を得た。なお、図29中、RhodGは図26中7の、Cy5は図26中8の、Cy3は図26中9の、蛍光色素残基部をそれぞれ示す。得られたPEGスペーサー分子(14)の構造及び収率を以下に示す。
Figure 2003048363
製造例3 Boc保護PEGスペーサー分子(15)の合成
図30に示したように、12(400mg,ピューロマイシン10μmol含有)より、PEGスペーサー部(11)と同じ方法を用いてBoc保護PEGスペーサー部(15)を合成した。得られたBoc保護PEGスペーサー分子(15)の構造と収率を以下に示す。
p(dCp)T(Fl)pPEG(4000)p(dCp)Puro(Boc)
収率41%
製造例4 ピューロマイシン非含有PEGスペーサー分子(16)の合成
Jaschkeらが報告した方法(Jaschke,A.et al.(1993)Tetrahedron Lett.34:301−304)に従い合成した。得られたピューロマイシン非含有PEGスペーサー分子(16)の構造と収率を以下に示す。
p(dCp)T(Fl)pTpPEG(4000)
収率55%
製造例5 修飾剤1〜7の合成
修飾剤1〜7は、図31および図32に示した試薬を用い、図33および34にその概略を示す方法を用いて合成した。図31中、アミダイト試薬(15〜19)はグレンリサーチ社(アメリカ合衆国、バージニア州)より、スクシンイミド試薬(20〜22)はピアス社(アメリカ合衆国、イリノイ州)より購入した。
10または12(400mg,ピューロマイシン10μmol含有)に対し、PEGスペーサー分子(11)の合成に関して示したA〜Dの処理を所定数のアミダイト試薬が導入されるまで繰り返し行なった。その後、50mM炭酸ナトリウム−水を2mLまたは濃アンモニア水1.5mLおよびエタノールを0.5mL加え、室温で14時間震盪した。ろ過により固相担体(CPG)を取り除き、ろ液を減圧濃縮した。残査をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS−A SH−343−5,溶離液:10−60%アセトニトリル−0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)の30分間の直線濃度勾配、流速:10mL/分]で精製後、凍結乾燥した。その後、修飾剤によっては、残査を30%アセトニトリル−水1mLに溶解させ、1M炭酸水素ナトリウム−水(pH8.3)を0.1mL、およびスクシンイミド試薬(7,8または20)0.1mmolをN,N’−ジメチルホルムアミド0.5mLに溶解させた液を加え、室温で2時間放置した。その後、減圧濃縮し、残査をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS−A SH−343−5,溶離液:10−60%アセトニトリル−0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)の30分間の直線濃度勾配、流速:10mL/分]で精製後、凍結乾燥した。その後、修飾剤によっては、残査を80%酢酸−水2mLに溶解させ、室温で4時間放置後、減圧濃縮した。残査を30%アセトニトリル−水1mLに溶解させ、1M炭酸水素ナトリウム−水(pH8.3)を0.1mL、およびスクシンイミド試薬(21または22)0.1mmolをN,N’−ジメチルホルムアミド0.5mLに溶解させた液を加え、室温で2時間放置した。その後、Poly−PakII(グレンリサーチ社)で脱塩し減圧濃縮した。その後、上記の残査に60%トリフルオロ酢酸−水2mLを加え、室温で30分間放置後、減圧濃縮した。残査をHPLC[カラム:YMC社(京都府)製YMC pack ODS−A SH−343−5,溶離液:10−60%アセトニトリル−0.1M酢酸トリエチルアンモニウム水溶液(pH7.0)の30分間の直線濃度勾配、流速:10mL/分]で精製後、凍結乾燥した。得られた修飾剤1〜7の物性データを以下に示す。
Figure 2003048363
実施例7 FCCS(IVV−IVV相互作用の検出)
実施例1と同様にして、相互作用が既知の蛋白質としてFos/Junを用いて、無細胞翻訳系で共翻訳によってFos/Jun複合体を形成させ、FCCSで相互作用を測定した。実施例1において、Fosのテンプレートを作る際に用いるPCRの3’プライマーとして3’FosFlag1A(配列番号36)を用い、Junのテンプレートを作る際に用いるPCRの3’プライマーとして3’Flag1A(配列番号37)を用い、スペーサーとしては、PEG4000を用いた以外は同様に行い、Fos(mRNA)−Cy5−spacer、Fos(mRNA)−RhG−spacer、そしてJun(mRNA)−RhG−spacerを作成した。すなわち、実施例1では、mRNAはXA配列を持つが、本実施例では、mRNAはA配列を持ち、かつ分子量の高いPEG4000を用いることで、より翻訳時に遊離の蛋白が少なくなりIVV効率が向上する条件で測定した。Fos(mRNA)−Cy5−spacer、Fos(mRNA)−RhG−spacerとFos−Cy5−spacer、Jun−RhG−spacerの組み合わせについて、小麦胚芽の無細胞翻訳系で共翻訳し、Fos−Cy5とFos−RhG、およびFos−Cy5とJun−RhGの相互作用についてFCCSで測定した(図1)。ここで、無細胞翻訳系で共翻訳の条件は、各テンプレート1pmolを無細胞翻訳系10ulに添加し、共翻訳後の希釈は、バッファー1で10倍に希釈し、最終的測定濃度は10nMとした以外は、全て実施例1に従った。Fos−Cy5とFos−RhGの自己相関関数(G(τ);図35,−○−)とFos−Cy5とJun−RhGの自己相関関数(G(τ);図35,−□−)を比較すると、相互作用の期待されないFos−Cy5とFos−RhGの自己相関関数(G(τ))は1に近いものであり、相互作用が期待されるFos−Cy5とJun−RhGの自己相関関数(G(τ))は1からより離れており大きな値を示すことが確認された。ここで、Fos−Cy5とJun−RhGのKdを算出してみると約140nMとなり、文献値の100nMにほぼ等しかった。ここで、Kd=(CRhG−Ccross)(Ccy5−Ccross)/Ccrossである(CRhG:Jun−RhGの濃度、Ccy5:Fos−Cy5の濃度、Ccross:Fos/Jun相互作用しているものの濃度)。
実施例8 FCCS(IVV−IVV(RNase処理)相互作用の検出)
実施例7と同様にして、小麦胚芽の無細胞翻訳系で共翻訳後にRNase処理をしたものとしていないものでFos−Cy5とFos−RhG、およびFos−Cy5とJun−RhGの相互作用についてFCCSで測定した(図36)。ここで、無細胞翻訳系で共翻訳後の希釈は、バッファー1で6倍に希釈し、次にRNase Aを5nMになるように添加し、室温で10min放置した。最終的測定濃度は約20nMとした以外は、全て実施例7に従った。Fos−Cy5とFos−RhGの自己相関関数(G(τ);図36,灰色)とFos−Cy5とJun−RhGの自己相関関数(G(τ);図36,黒)を比較すると、共翻訳後にRNase処理をしないもの(図36のA)でもしたもの(図36のB)でも、相互作用の期待されないFos−Cy5とFos−RhGの自己相関関数(G(τ))はより1に近いものであり、相互作用が期待されるFos−Cy5とJun−RhGの自己相関関数(G(τ))は1からより離れており大きな値を示すことが確認された。ここで、RNase処理をしてFCCS測定する方法は、測定条件がmRNAの違いに左右されることなくより普遍的な測定方法と考えられる。
実施例9 プロテインチップ(IVV−IVVおよびIVV−C末端ラベル化蛋白質相互作用の検出)
実施例7と同様にして、相互作用が既知の蛋白質としてFos/Junを用いて、無細胞翻訳系で200nMのFos(mRNA)−Cy5−spacer(biotin)あるいは、Jun(mRNA)−Cy5−spacer(biotin)を単独で翻訳し、Microgrid II(Biorobotics)を用いて、スライドグラス(XENOSLIDE S,streptavidine slides(XENOPORE))あるいは、スライドグラス(STRERTAVIDINslides(glass slides with a Streptavidin coated sutface),greiner bio−one)に40nMでプロットした。次に、プロットしたFos−Cy5−IVV、Jun−Cy5−IVVをスライドグラスに固定化するために、湿度を55%に保ったアレイヤー中に1時間放置した。固定化するIVVに使用するスペーサーは、Cy5のみならずビオチンが導入されたものを用いた。1%BSAでブロッキングした後、スポットエリアにハイベイドシール(Thermo Hybaid(Thermobio Analysis Japan))を貼った。固定化した蛋白質については、T7およびJun抗体(図37のA)とスペーサーのCy5の波長による検出(図37のB,C)で確認した。
400nMのFos(mRNA)−Cy3−spacer、Jun−Cy3−spacerあるいは、cB1(mRNA)−Cy3−spacer(cB1のDNAテンプレートの作成方法は、プライマー3’(646)FlagAの代わりに、3’(646)Flag1A(配列番号38)を使用した他は実施例2に従った。)を無細胞翻訳系で上からかける側のIVVを合成し、5mMのRNase Aで37℃で1時間処理したものをハイベイドシールを貼ったスポットエリアに添加した(図37のB)。あるいは無細胞翻訳系で上からかける側のC末端ラベル化蛋白質(Fos)を合成したものをハイベイドシールを貼ったスポットエリアに添加した(図37のC)。上からカバーシールをして密閉し、アルミホイルで遮光して室温で1時間で反応させた後、スライドグラスをGenePix4000B(Inter Mefical co.,Itd.)でCy5とCy3の波長で解析した。
図37より、固定化したIVVがmRNAが付いていても(図37のA)いなくても(図37のB,C)検出出来ることがわかった。また、スペーサーのCy5による検出(図37のB,C)は抗体(図37のA)同様に非常に鮮明であることがわかった。また、上からかける蛋白質は、IVV(図37のB,Cy3)でもC末端ラベル化蛋白質(図37のC,Cy3)でもシグナルが検出された。また、図37のBに示すように、Fos−Cy3−IVV(+Fos)を上からかけた場合は、Jun−Cy5−IVVを固定化したスポットに強いシグナルが得られ、Jun−Cy3−IVV(+Jun)を上からかけた場合は、Fos−Cy5−IVVとJun−Cy5−IVVを固定化したスポットに強いシグナルが得られ、FosともJunとも相互作用のないcB1−Cy3−IVV(+Jun)を上からかけた場合は、強いシグナルが得られるスポットは特にはなかった。図37のAの抗体(Cy3付き)や図37のB,CのIVVのCy5付きのスペーサーによる検出から、IVVが効率的にビオチン−アビジン親和性によってスライドに固定化されていることが示された。抗体で検出できただけでなく、固定化IVVのスペーサーのCy5による検出も明瞭であり、IVVの場合はスライドへの非特異的結合などによるバックが低いことが伺えた。このことは、単に相互作用のあるなしの判定のみならず、DNAチップと同様に、プロテインチップとして、固定化したIVVや上からかけたIVVの定量化が可能であることを示している。
実施例10 プロテインチップ
図38に示すように、プロテインチップを用いる共翻訳によるIVV−IVV複合体の相互作用検出が実施可能である。ここでは、実施例7と同様にして、たとえば、相互作用が既知の蛋白質としてFos/Junを用いて、無細胞翻訳系でFos(mRNA)−spacer(biotin)とJun(mRNA)−Cy5−spacerを共翻訳し、スライドグラスにプロットして固定化した後、Cy3を持つ第三のIVVを上からかけることによりFos/Junと複合体を形成する蛋白質を探索することが可能となる。Cy3を持つ第三のIVVの代わりに、Jun抗体(Cy3)をふりかけてFos/Junの相互作用検出を行うこともできる。プロテインチップを用いる蛋白質相互作用の検出において、ある蛋白質(ここではFos)と1:1で直接的に相互作用する蛋白質については、実施例9の方法で検出できるが、1:多分子で間接的に相互作用する第三の蛋白質については、図38のように共翻訳を利用することで始めて検出可能となる。IVVにおいては、二つ以上の蛋白質をいくつでも共翻訳することが可能であり、その場合でも、各蛋白質に別々の所望の色素や固定化物質といった修飾剤をスペーサーを介して導入することが可能であり、このことによって、図38のように、蛋白質複合体をスライドへ固定化し、そこへどの組み合わせの複合体と相互作用しているかを知りたい第三の蛋白質のIVVを上からかけて複合体を形成する相手を見つけることなどが可能となる。また、反対に、単独のIVVを固定化しておいて、第二第三の蛋白質を共翻訳したものを上からかけて複合体を検出することも可能である。
産業上の利用可能性
本発明によれば、IVVあるいはIVV(mRNA−)とC末端ラベル化蛋白質間の相互作用による複合体を利用して、IVVのスペーサーに分離用あるいは検出用の修飾剤を施し、かつC末端ラベル化蛋白質のC末端ラベル化剤に分離用あるいは検出用の修飾剤を施すことにより、通常、翻訳後に行われる各種の蛋白質への修飾反応の工程を一工程で実現することが可能である。本発明は、非固定あるいは固定化による多くの蛋白質間相互作用解析法へ応用可能である。また、IVVとC末端ラベル化蛋白質の性質の違いを利用して、SDS−PAGEゲルアッセイ(核酸を含むIVVは泳動されないがC末端ラベル化蛋白質は泳動されることを利用)などで簡単に複数の蛋白質間相互作用検出が可能となる。
また、本発明によれば、IVVあるいはIVV(mRNA−)を翻訳する際に、IVVのスペーサーを用いて所望の分離用あるいは/および検出用の修飾を施すことが可能であり、通常、翻訳後に行われる各種の蛋白質への修飾反応の工程を一工程で実現し、特に、「無細胞共翻訳」によって、通常、翻訳後に行われる相互作用形成の工程を一工程で実現できる。また、IVVの形成効率が高く、遊離の蛋白質(対応付け分子と共に生産される遺伝子型を持たないフリーの蛋白質)も少ないために、通常必要な蛋白質へ修飾した蛍光色素や未修飾の蛋白質の分離精製の工程も必要ない。本発明は、非固定あるいは固定化による多くの蛋白質間相互作用解析法へ応用可能である。
【配列表】
Figure 2003048363
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【図面の簡単な説明】
図1は、本発明の分離用修飾あるいは検出用修飾を施されたIVVとC末端ラベル化蛋白質の複合体の構成例を示す。
図2は、本発明の複合体による蛋白質の相互作用の解析の概略を示す。
図3は、IVVのスペーサーの詳細な構成を示す。スペーサーは、ピューロマイシンを有したポリエチレングリコール(PEG)を主成分としたもので、修飾剤(Xa)としてビオチンT(Bio)など、修飾剤(Xb)として蛍光物質T(Fl)、T(Cy5)、T(RhG)などが例として挙げられる。
図4は、C末端ラベル化剤の構成を示す。Aは、Flu−dC−Puroの構成を示す。C末端ラベル化剤に検出用修飾として蛍光性物質(フルオロセイン)が導入されている。Bは、Bio−T(TAMRA)−dC−Puroの構成を示す。C末端ラベル化剤に検出用修飾として蛍光性物質(TAMRA)および分離用修飾剤として固定化剤(Bio;ビオチン)が導入されている。
図5は、実施例1で用いたスペーサー分子の合成スキームを示す。Aは合成に用いる化合物の構造、Bは工程を示す。
図6は、小麦胚芽の無細胞翻訳系においてIVV形成とC末端ラベル化蛋白質の翻訳を両立(無細胞共翻訳)できるC末端ラベル化剤の添加濃度の検討結果を示す。小麦胚芽の無細胞翻訳系(Wheat Germ Extract(Promega))における、C末端ラベル化剤としてFlu−dCpPuroの添加濃度を変化させたときのJunのC末端ラベル化効率(白丸)とJun−Flu−IVVの形成阻害率(黒丸)を示す。
図7は、無細胞共翻訳によるIVV複合体を用いたin vitroセレクション解析の概略及び結果(電気泳動写真)を示す。結果における記号の意味は以下の通りである。レーン1;スクリーニング上清、レーン2;スクリーニング溶出液。Fos+;Fos(mRNA)−Flu−ビオチン−スペーサー添加、Fos−;Fos(mRNA)−Flu−ビオチン−スペーサ−無添加。サイクリンB1/Jun(−/+);JunのmRNA添加、サイクリンB1/Jun(+/+);サイクリンB1およびJunのmRNA添加。
図8は、対応付け分子、スペーサー分子及びコード分子の構造の概略を示す。
図9は、スペーサー分子の一例の詳細な構成を示す。D:ドナー領域、X2及びX1:機能付与ユニット、PEG:PEG領域、A:ペプチドアクセプター領域。Bio:ビオチン、Fl:蛍光色素。
図10は、コード分子の一例の詳細な構成を示す。
図11は、C末端修飾蛋白質(A)、修飾剤(B)、および、翻訳テンプレート(C)の構成を示す図である。
図12は、本発明の分離用修飾あるいは検出用修飾を施されたIVVの複合体の構成を示す。
図13は、本発明のmRNAを欠いたIVV(IVV(mRNA−))とその複合体の構成を示す。
図14は、本発明の複合体による蛋白質の相互作用の解析の概略を示す。
図15及び図16は、スペーサーの合成と構成の例を示す。スペーサーは、ピューロマイシンを有したポリエチレングリコール(PEG)を主成分としたもので、修飾剤(Xa)としてビオチンT(Bio)など、修飾剤(Xb)として蛍光物質T(Fl)、T(Cy5)、T(RhG)などが例として挙げられる。
図17は、無細胞共翻訳によるIVV複合体を用いたFCCS解析の概略及び結果を示す。グラフの横軸は時間マイクロ秒(us)、縦軸はG(τ)。G(τ)は平均蛍光強度をIとすると、時間tにおける蛍光強度I(t)ならびにt+τにおける蛍光強度I(t+τ)の積で表される。(G(τ)=<I(t)I(t+τ)>)
A:Fos−Cy5−IVVとJun−RhG−IVV(黒丸)
Fos(mRNA)−Cy5−スペーサーとJun(mRNA)−RhG−スペーサー(ヘパリン添加;黒四角)
B:Fos−Cy5−IVVとFos−RhG−IVV(黒丸)
Fos(mRNA)−Cy5−スペーサーとFos(mRNA)−RhG−スペーサー(ヘパリン添加;黒四角)
図18は、無細胞共翻訳によるIVV複合体を用いたin vitroセレクション解析の概略及び結果(電気泳動写真)を示す。Fos+/−;ペイトFos−Bio−IVVがあり/なし。レーン1;スクリーニング後のビーズをテンプレートとしたもの。レーン2;ビーズを100倍に希釈したもの。レーン3;ビーズを10000倍に希釈したもの。M;マーカー。
図19は、本発明の翻訳テンプレート(A)ならびにその構成要素であるコード分子(B)及びスペーサー分子(C)の構成を示す。翻訳テンプレートは、コード分子由来のコード部とスペーサー分子由来のスペーサー部からなる。F1及びF2は蛍光色素を示す。
図20は、C末端修飾された蛋白質(対応付け分子)(A)、本発明の翻訳テンプレート(B)、及び、修飾剤(C)の構成を示す。
図21は、本発明の対応づけ分子やC末端ラベル化法による物質や蛋白質の相互作用解析の一次スクリーニングと二次スクリーニングの説明図を示す。本発明翻訳テンプレートから合成されたC末端修飾タンパク質(修飾剤でC末端修飾された蛋白質、翻訳テンプレートでC末端修飾された蛋白質(対応付け分子)、PEGによってC末端修飾された蛋白質を利用したタンパク質を、標的分子との間の相互作用の解析に利用可能である。一次スクリーニングの後、物質や蛋白質と相互作用の詳細をFCCSやマイクロアレイなどによりさらに解析することが可能である。
図22は、コード分子の3’末端配列の違いによる翻訳量の比較を示す。c−junの遺伝子配列を有する、異なる12種類の3’末端配列を持つコード分子(A8=A配列)の翻訳量の比較。X配列のバリエーションと必要な条件を示した。詳細は、実施例1参照。
図23は、翻訳テンプレートがPEGスペーサー部を持たない場合及び異なるPEGスペーサー部を持つ場合の翻訳量の比較を示す。
A:c−fosの遺伝子配列を有するA配列もX配列も持たないコード分子(None(mRNA))と,A配列を持つコード分子(A(mRNA))、およびdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro−Bocをライゲーションした翻訳テンプレート(+PEG4000dCdCPuro−Boc,)の翻訳量の比較。詳細は、実施例1参照。
B:c−junの遺伝子配列を有するA配列もX配列も持たないコード分子(None(mRNA)),XA配列を持つコード分子(XA(mRNA))、およびコード分子(XA(mRNA))に(dC)T(Flu)T(XA+(dC)),dCdCT(Flu)TPEG4000(XA+PEG4000),dCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro−Boc(XA+PEG4000dCdCPuro−Boc)をライゲーションした翻訳テンプレートの翻訳量の比較(電気泳動の結果(写真)も示す)。詳細は、実施例1参照。
図24は、翻訳テンプレートの翻訳量と安定性を示す。
A:c−junの遺伝子配列を有するXA配列を持つコード分子(●;XA配列)、A配列もX配列も持たないコード分子(□;None配列)、およびコード分子(XA配列)とdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro−Bocをライゲーションした翻訳テンプレート(○)の翻訳量のタイムコース。詳細は、実施例1参照。
B:c−junの遺伝子配列を有するコード分子(●;XA配列)と、およびコード分子(XA配列)とdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro−Bocをライゲーションした翻訳テンプレート(○)の安定性のタイムコース。詳細は、実施例1参照。
図25は、本発明の翻訳テンプレートが異なるPEGスペーサー部を持つ場合の翻訳量の比較(電気泳動の結果(写真)も示す)を示す。
A:c−junの遺伝子配列を有するコード分子(XA配列,A配列)とdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro−Bocをライゲーションした場合の翻訳テンプレートの添加量の違いによる対応付け分子の形成効率。IVV;対応付け分子、Ligated mRNA;コード部にPEGスペーサー部がライゲーションされた翻訳テンプレート。レーン1〜6;RNA添加量が10,25,50,100,200,400nM.詳細は、実施例2参照。
B:c−junの遺伝子配列を有するコード分子(XA配列,A配列)とdCdCT(Flu)PEG4000dCdCPuro−Bocをライゲーションした場合の翻訳テンプレートの添加量の違いによるフリー蛋白質(Free protein)の合成率(対応付け分子の形成量+フリー蛋白質の合成量=100%)。レーン1〜6;RNA添加量が10,25,50,100,200,400nM.詳細は、実施例2参照。
図26〜30は、本発明に使用されるPEGスペーサー分子とその合成スキームを示す。
図31〜34は、本発明に使用される修飾剤とその合成スキームを示す。
図35は、無細胞共翻訳によるIVV複合体を用いたFCCS解析(実施例7)の結果を示す。小麦胚芽の無細胞翻訳系で共翻訳し、Fos−Cy5−IVVとJun−RhG−IVVの複合体をFCCSで測定した(−○−)。コントロールとして相互作用の可能性のないことが知られているFos−Cy5−IVVとFos−RhG−IVVの組み合わせを測定した(−□−)。グラフの横軸は時間マイクロ秒(us)、縦軸はG(τ)である。G(τ)は平均蛍光強度をIとすると、時間tにおける蛍光強度I(t)ならびにt+τにおける蛍光強度I(t+τ)の積で表される(G(τ)=<I(t)I(t+τ)>)。
図36は、無細胞共翻訳によるIVV複合体を用いたFCCS解析(実施例8)の結果を示す。
A:Fos−Cy5−IVVとJun−RhG−IVVの相互作用(黒色線)、及び、Fos−Cy5−IVVとFos−RhG−IVVの相互作用(灰色線)。
B:RNase A処理をしてmRNA部分を分解してFos−Cy5−IVVとJun−RhG−IVVの相互作用をFCCSで測定した(黒色線)。また同様にして、コントロールとして相互作用の可能性のないことが知られているFos−Cy5−IVVとFos−RhG−IVVを測定した(灰色線)。
図37は、IVV複合体あるいはIVV−C末端ラベル化蛋白質複合体を用いたプロテインチップ解析の概略及び結果(写真)を示す。
A:無細胞翻訳系でJun(mRNA)−spacer(biotin)を単独で翻訳し、スライドグラスにIVVの文字を描くようにプロットし、スペーサーのビオチンでスライドグラスのアビジンに固定化した。T7およびJunの抗体によりIVVの固定化を確認した。
B:相互作用が既知の蛋白質としてFos/Junを用いて、無細胞翻訳系でFos(mRNA)−Cy5−spacer(biotin)、Jun(mRNA)−Cy5−spacer(biotin)あるいはcB1(mRNA)−Cy3−spacer(biotin)を単独で翻訳し、スライドグラスにプロットし固定化した。固定化したIVVについて、スペーサーのCy5の波長による検出で確認した。上からかける側のIVVを無細胞翻訳系で合成し、RNase A処理したものをスポットエリアに添加し、スライドグラスをCy3の波長で解析して相互作用を検出した。
C:上からかける蛋白質として、C末端ラベル化蛋白質(Fos(Cy3))を無細胞翻訳系で合成したものをスポットエリアに添加する以外は、Bと同様にして、スライドグラスをCy5とCy3の波長で解析し相互作用を検出した。
図38は、共翻訳によるIVV複合体を用いたプロテインチップ解析の概略を示す。

Claims (50)

  1. 遺伝子型と表現型の対応付け分子と、C末端がピューロマイシン又はその誘導体を含むC末端ラベル化剤によりラベル化されたC末端ラベル化蛋白質との相互作用によって形成される複合体であって、対応付け分子を構成する蛋白質部分以外の部分および該C末端ラベル化剤がそれぞれ相互作用解析に必要な修飾を受けている、対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質の複合体。
  2. 一種類の対応付け分子と一種類のC末端ラベル化蛋白質から構成され、該対応付け分子が含む蛋白質と該C末端ラベル化蛋白質が同一あるいは異なる、請求項1記載の複合体。
  3. 該複合体が一種類の対応付け分子と二種類以上のC末端ラベル化蛋白質から構成される、請求項1記載の複合体。
  4. 対応付け分子が、スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子であり、該対応付け分子のスペーサーに対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の複合体。
  5. 無細胞翻訳系で、C末端ラベル化剤の存在下で、該mRNAと該C末端ラベル化蛋白質の蛋白質をコードするmRNAが翻訳されることにより対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質が同時に生成し、生成した対応付け分子とC末端ラベル化蛋白質との間で相互作用することで形成される複合体であって、無細胞翻訳系におけるC末端ラベル化剤の濃度が、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化効率に十分で、かつ該対応付け分子の形成を阻害しない範囲である、請求項4記載の複合体。
  6. 相互作用解析に必要な修飾が検出用修飾および分離用修飾である請求項4又は5記載の複合体。
  7. 該対応付け分子がスペーサーに検出用修飾を有する、請求項6記載の複合体。
  8. 該対応付け分子がスペーサーに分離用修飾を有する、請求項6記載の複合体。
  9. 該対応付け分子がスペーサーに検出用修飾および分離用修飾を有する、請求項6記載の複合体。
  10. 該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤が検出用修飾を有する、請求項4〜9のいずれか1項に記載の複合体。
  11. 該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤が分離用修飾を有する、請求項4〜9のいずれか1項に記載の複合体。
  12. 該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤が検出用修飾および分離用修飾を有する、請求項4〜9のいずれか1項に記載の複合体。
  13. 分離用修飾として蛍光性物質を有する、請求項8記載の複合体。
  14. 検出用修飾として固定化物質を有する、請求項9記載の複合体。
  15. 検出用修飾として蛍光性物質および分離用修飾として固定化物質を有する、請求項9記載の複合体。
  16. 検出用修飾として蛍光性物質を有する、請求項10記載の複合体。
  17. 分離用修飾として固定化物質を有する、請求項11記載の複合体。
  18. 検出用修飾として蛍光性物質および分離用修飾として固定化物質を有する、請求項12記載の複合体。
  19. 対応付け分子がスペーサーにCy5を有する場合は、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤がローダミングリーンを有する、請求項13または15記載の複合体。
  20. 対応付け分子がスペーサーにローダミングリーンを有する場合は、該C末端ラベル化蛋白質のラベル化剤がCy5を有する、請求項13または15記載の複合体。
  21. 固定化物質がビオチンである、請求項14、15、17及び18のいずれか1項に記載の複合体。
  22. 対応付け分子からmRNAが除去されている、請求項4〜21のいずれか1項に記載の複合体。
  23. 請求項1〜22に記載された複合体を形成する対応付け分子及びC末端ラベル化分子を用いる蛋白質間相互作用の解析方法であって、対応付け分子を固定化することを特徴とする、解析方法。
  24. 請求項1〜22に記載された複合体を形成する対応付け分子及びC末端ラベル化分子を用いる蛋白質間相互作用の解析方法であって、対応付け分子を固定化しないことを特徴とする蛋白質間相互作用の解析方法。
  25. RIもしくは蛍光イメージングアナライズ法による、またはDNAチップもしくはプロテインチップを用いる、請求項23記載の解析方法。
  26. 蛍光相互相関分析法による、請求項24記載の解析方法。
  27. 複数の、遺伝子型と表現型の対応付け分子を含み、該対応付け分子間の相互作用によって形成される複合体であり、対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を、対応付け分子を構成する蛋白質部分以外の部分に有することを特徴とする対応付け分子の複合体。
  28. 同一あるいは異なる蛋白質を含む2種類の対応付け分子からなる、請求項27記載の複合体。
  29. 同一あるいは異なる蛋白質を含む3種類以上の対応付け分子からなる、請求項27又は28記載の複合体。
  30. 対応付け分子が、スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子であり、かつ該対応付け分子のスペーサーに、対応付け分子間の相互作用解析に必要な修飾を有する、請求項27〜29のいずれか1項に記載の複合体。
  31. 無細胞翻訳系で複数のmRNAが翻訳されることにより複数の対応付け分子が同時に生成し、生成した対応付け分子間で相互作用することで形成される、請求項30記載の複合体。
  32. 相互作用解析に必要な修飾が検出用修飾および分離用修飾である、請求項30又は31記載の複合体。
  33. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾を有する、請求項32記載の複合体。
  34. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに分離用修飾を有する、請求項32記載の複合体。
  35. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに分離用修飾を有し、残りの少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾を有する、請求項32記載の複合体。
  36. 検出用修飾として蛍光性物質を有する、請求項32、33及び35のいずれか1項に記載の複合体。
  37. 分離用修飾として、固定化物質を有する、請求項32、34及び35のいずれか1項に記載の複合体。
  38. 検出用修飾として蛍光性物質、および分離用修飾として固定化物質を有する、請求項35記載の複合体。
  39. 固定化物質がビオチンである、請求項37又は38記載の複合体。
  40. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾としてCy5を有し、残りの対応付け分子が検出用修飾としてローダミングリーンを有する、請求項36又は38記載の複合体。
  41. 対応付け分子の少なくとも一つがスペーサーに検出用修飾としてローダミングリーンを有し、残りの対応付け分子がスペーサーに検出用修飾としてCy5を有することを特徴とする複合体。
  42. 対応付け分子が、mRNAが除去された対応付け分子であり、mRNAが除去された対応付け分子間の相互作用によって形成される請求項30〜41のいずれか1項に記載の複合体。
  43. mRNAが除去された対応付け分子のスペーサーに検出用修飾を有する、請求項42記載の複合体。
  44. mRNAが除去された対応付け分子のスペーサーに分離用修飾を有する、請求項42記載の複合体。
  45. mRNAが除去された対応付け分子のスペーサーに分離用修飾および検出用修飾を有する、請求項42記載の複合体。
  46. 請求項27〜45のいずれか1項に記載された複合体を形成する対応付け分子を用いる蛋白質間相互作用の解析方法であって、対応付け分子を固定化することを特徴とする、解析方法。
  47. 請求項27〜45のいずれか1項に記載された複合体を形成する対応付け分子を用いる蛋白質間相互作用の解析方法であって、対応付け分子を固定化しないことを特徴とする、解析方法。
  48. RIもしくは蛍光イメージングアナライズ法による、またはDNAチップもしくはプロテインチップを用いる、請求項46記載の解析方法。
  49. 蛍光相互相関分析法による、請求項47記載の解析方法。
  50. スペーサーを介して蛋白質とそれをコードするmRNAを連結した対応付け分子からmRNAを除去することにより得られる対応付け分子であって、スペーサーが、蛋白質のC末端に結合した、ピューロマイシンあるいはピューロマイシンと少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAからなるペプチドアクセプター領域、ペプチドアクセプター領域に結合した、ポリエチレングリコールを主成分としたPEG領域、及び、PEG領域に結合した、少なくとも1残基のDNAあるいは/またはRNAの塩基に機能修飾を施した機能付与ユニットを含む、対応付け分子。
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