JP3656159B2 - リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法 - Google Patents
リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3656159B2 JP3656159B2 JP2002046188A JP2002046188A JP3656159B2 JP 3656159 B2 JP3656159 B2 JP 3656159B2 JP 2002046188 A JP2002046188 A JP 2002046188A JP 2002046188 A JP2002046188 A JP 2002046188A JP 3656159 B2 JP3656159 B2 JP 3656159B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- protein
- ligand
- substrate
- screening method
- domain
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
- Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
- Other Investigation Or Analysis Of Materials By Electrical Means (AREA)
- Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンパク質の分子間相互作用の解析技術に関し、より詳細には、タンパク質又はその一部(ドメイン)に対するリガンドを限りなく平滑な基板表面に固定化し、これに特異的に吸着したタンパク質を質量分析法を用いて高速且つ高感度に解析する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ヒトを含む多くの生物種のゲノムシークエンシングプロジェクトが活発に進められ、ゲノムの遺伝情報の解読が飛躍的なスピードで進んでいる。そしてこのスピード化を支えているのはハイスループット化とマイクロアレイ化である。遺伝情報の解読の次に考えられるのは翻訳されたタンパク質全体の理解である。タンパク質を理解することはその分子機能を知ることであり、そして機能とはどのような分子と相互作用するかということである。タンパク質の相互作用する相手を効率よく見つけ、さらに相互作用する相手の分子がタンパク質のどの部分に結合するのかがわかれば、そのタンパク質の生物学的意義が理解できるはずである。これまでは一つずつタンパク質を発現させてその機能を調べていく手法が主流であった。このため解析する時間より、精密さが優先された。しかしタンパク質の発現技術が飛躍的に進化しつつある現在、高速に相互作用を解析する手段の開発が望まれている(Curr. Opin. Chem. Biol. 2001, 5, 34-39.)。
【0003】
このようなタンパク質相互作用解析システムの構築にあたっては、対象がヒトの場合には約10万種類ともいわれている全遺伝子産物であるため、解析スピードの高速化が必要となる。また、微量の試料を用いて解析することができれば試料調製の手間が軽減されることから高感度な検出手段が要求される。
【0004】
これらの要求に適合する従来技術としては、MALDI/TOF型質量分析計を用いる質量分析法がある。この方法は、レーザーを照射してタンパク質をイオン化させ、且つ標準装備のターゲットが100検体以上試料をのせることが可能な、現時点における最もハイスル−プットな分析機器である。また、フェムトモルレベルの試料を検出できるので、極めて高感度である。
【0005】
MALDI/TOF型質量分析計で分子間相互作用を検出するシステムとしては、サイファージェンバイオシステムズ社のプロテインチップシステムが知られている(Electrophoresis 2001, 22, 2898-2902、特開2001-281222号公報、及び米国特許第6225047参照)。しかし、このシステムは吸着剤として疎水性吸着やイオン交換などの種々の相互作用を用いているため、それぞれの吸着剤に対応した溶出条件の設定が必要となる。また、タンパク質の特異的な相互作用を検出する際の基板表面の平滑さについては全く考慮されていない。更に、高価な専用の分析計を用いなければならず、質量分析計の精度も十分ではないという問題点がある。
【0006】
一方、分子間相互作用を詳細に解析する手段としては表面プラズモン共鳴現象を利用する方法が知られており、この測定方法に用いるPEGアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜の有用性が報告されている(Joydeep Lahiri et al., Anal. Chem. 1999, 71, 777-790)。しかし、この方法は特殊な装置を使用するため検出のハイスループット性に欠け、この膜を用いてMALDI/TOF型質量分析計で高選択的にしかも簡便にタンパク質の相互作用を検出する方法は知られていない。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、上記従来技術におけるプロテインチップ表面の選択性、即ち、ターゲットへの特異的な吸着と非特的な吸着とを精度良く区別してタンパク質の分子間相互作用を精度良く解析することを課題とする。また、これらを高速且つ簡便に行うことができるシステムを構築することによって、ゲノム解析の結果得られた数多くのタンパク質の中から、特定のリガンドと分子間相互作用するタンパク質を効率的にスクリーニングする方法を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、一つの視点において、単分子膜で被覆した限りなく平滑な表面にリガンドを精密配列させた基板と、タンパク質とを接触させ、前記基板表面に特異的に吸着したタンパク質を質量分析法により解析(検出)することを特徴とする、前記リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法を提供する。
【0009】
本発明の好ましい実施形態において、前記単分子膜が、ポリエチレングリコールアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜であることを特徴とする。これにより基板表面の選択性(特異的吸着と非特異的吸着との区別)、更にはデータの信頼性が著しく向上する。
【0010】
本発明の別の好ましい実施形態において、前記タンパク質を含む試料と接触させた基板表面を水で洗浄することにより夾雑物の除去と脱塩を行う。これにより夾雑物を除去するための条件をあらかじめ検討するという複雑な操作が必要なく、操作を簡便にすると共に、洗浄後の基板をそのまま用いて高速且つ高感度なMALDI−TOF質量分析法による解析を行うことで、ハイスループットなスクリーニングを可能とする。
【0011】
本発明の更に別の好ましい実施形態において、前記タンパク質は無細胞タンパク質合成系を用いて合成されたタンパク質又はタンパク質ドメインであり、前記リガンドはタンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、脂質、核酸又は有機化合物である。
【0012】
本発明の他の視点において、ポリエチレングリコールアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜で被覆した平滑な基板表面にリガンドを精密配列させたリガンド固定化基板が提供される。一つの実施形態において、前記リガンドは細胞内のシグナル伝達タンパク質のSH2ドメイン又はSH3ドメインと結合するアミノ酸又はペプチドであり、これらを固定化した基板を上記スクリーニング方法に用いることによって細胞の増殖や分化誘導等の情報伝達機能を有する新規なタンパク質をスクリーニングしたり、その分子間相互作用に関与するドメインを同定したりすることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
(基板の作製)
本発明の方法において、基板とは、リガンドが例えば物理的吸着又は化学結合によりその上に提供される固相のことをいう。基板は単一の材料から構成されていても、或いは複数の材料を組合わせたり若しくは表面処理を行ったものであっても良い。タンパク質や低分子を対象とした相互作用を高選択性をもって検出するためには、その対象分子の構造の多様性に対処するために基板表面の高機能化を行い、特異的な相互作用と非特異的な吸着の選択性を高めることが必要である。このため、限りなく平滑な表面に非特異的吸着の極めて少ない単分子膜を形成し、これに対象となるタンパク質や低分子等をリガンドとして固定化する。
【0014】
まず、基板材料としては、平滑な表面をもつ固体材料であれば何でも良く、例えば、ガラス、セラミック、ポリエーテル−エーテルケトン(PEEK)等の平滑な表面を持つプラスチック、テフロン(登録商標)やシリコンでコートされた材料、ステンレス鋼、アルミニウム、チタン等の金属、合成又は天然のポリマー又はこれらの組合せ等が挙げられる。例えば、MALDI−TOF型質量分析装置のターゲットを研磨して平滑化する方法が考えられる。しかし、研磨した金属表面にクロムメッキを施した後、2000Åの厚さで金を真空蒸着して基板表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、その平均粗さ度は約40Åと自己組織化膜の膜厚に匹敵する粗さを有していた。従って、この程度の平滑さでは期待するような選択性が得られないことは明らかである。一方、ガラス表面に金を真空蒸着した基板表面を、上記と同様に原子間力顕微鏡(AFM)を用いて調べると、その平均粗さ度が約4Åと極めて平滑であり本発明の方法に好適に使用することができる。一般に、材料表面の平滑さの度合いを考慮すると、シリコン単結晶、ガラス、金属等の順に優れているが、本発明の方法に用いる基板表面の平滑さとしては少なくとも10Å以下、好ましくは約4Å以下の場合に満足のいく結果が得られる。
【0015】
次に、非特異的吸着の極めて少ない単分子膜としては、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、ゼラチン等の合成又は天然の親水性化合物が挙げられる。PEG末端の水酸基で覆われた基板表面は非特異的吸着が低いことが報告されており(Anal.Chem.前掲)、特に好ましい。単分子膜の構成成分は、種々の鎖長のPEGを1種又は2種以上、任意の比率で混合して用いることができるが、好ましくは、短鎖(エチレングリコールで2〜4単位)と長鎖(エチレングリコールで5〜8単位)の両方を適当な比率で混合して用いる。長鎖の末端のみを各種官能基で活性化して立体障害を避けるように適切な比率で短鎖(末端は水酸基)と混合し、上記平滑な担体上で混合自己組織化膜を形成させる。図2は、このような単分子膜の構成成分の構造を示したものである。図2において、自己組織化を行うために必要な疎水性領域として炭素数が11個のアルキル基を用い、これに親水性を付与するためにエチレングリコール鎖を付加する。一つの実施形態として、リガンドを固定化するために活性化される鎖(活性型)のエチレングリコール鎖は6単位とし、リガンドを固定化しない非活性型のエチレングリコール鎖は3単位としたものが示されている。疎水性領域の末端はガラス基板上にコートされた金と反応させるためにスルフヒドリル化され、活性型の親水性領域の末端はカルボキシメチル化されており、この官能基をもとに用途に応じて種々の官能基へと誘導することができる。これらの基板は、フィルムやビーズ等のように任意の形状とすることができるが、一つの実施形態として質量分析用のプローブの形状とし、そのまま質量分析計に挿入するサンプル提示台とすることができる。
【0016】
(リガンドの固定化)
次にリガンドとなる低分子やタンパク質等を上記基板上に固定化する。固定化は、共有結合、Ni2+等の2価金属イオンによるキレート作用、ビオチン−アビジン等の特異的な親和性、疎水的相互作用、又はSH基とマレイミドの特異的親和性等を利用することができる。また、上記基板を作製した後に固定化してもよく、或は上記基板の作製と同時に行うこともできる。例えば、あらかじめ単分子膜の成分であるPEGアルカンチオールとリガンドを共有結合させておき、これを用いて上記基板を作製することも可能である。リガンドは、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、脂質、核酸及び有機化合物等の中から適宜選択することができ、これらに特異的に結合するタンパク質としては、抗体、タンパク性の抗原、酵素、受容体、DNA結合タンパク質、細胞内のシグナル伝達に関与するタンパク質又はそれらの一部(ドメイン)等が挙げられる。
【0017】
一つの基板上に固定化するリガンドの数は一種又はそれ以上任意の数とすることができ、例えば、図3に示した質量分析計のプローブの各穴に同一の、又はそれぞれ別のリガンドを固定化して使用することもできる。同一のリガンドを固定化した複数の基板を用いる場合には、複数の候補タンパク質の中から前記リガンドと分子間相互作用するものを効率よくスクリーニングすることができる。一方、複数のリガンドを固定化した基板を用いる場合には、同一の試料を用いて前記複数のリガンドとの相互作用の差異を検出することができる。試料中のタンパク質は1種でも複数を同時に含んでいてもよい。基板上の各穴の大きさも照射するレーザー光との衝突面積を考慮して適宜設定することができる。
【0018】
(タンパク質試料の調製とリガンドとの接触)
タンパク質試料は、固体でも液体でも良いが一般的には液体、特に水溶液の状態が好ましい。固体状のタンパク質は、適当な溶媒に溶かして液状にすることができる。これらは生物材料であっても良いし、化学合成したものであっても良い。タンパク質は一般的には生物材料由来のものであり、組織や細胞から抽出されるが、簡便には血清中のタンパク質を用いることもできる。好ましくは特定の遺伝子に由来するタンパク質を組換えDNA技術を用いて宿主細胞で合成させて用いられる。遺伝子は、ゲノムDNAのシークエンスが公知の場合には、これらの情報を基にして種々の方法で合成することができる。例えば、ゲノムDNAに基づくcDNAを鋳型として目的の遺伝子をPCRにより増幅し、これらを発現ベクターにクローニングした後、適当な宿主細胞を形質転換して当該形質転換細胞内で目的タンパク質を発現させる。
【0019】
本発明の一つの実施形態において、無細胞タンパク質合成系を用いて候補タンパク質を合成することができる。ゲノム解析の結果新規に見出された、構造や機能が未知のタンパク質について、特定のリガンドとの相互作用を検出するためには、無細胞タンパク質合成系を用いてこれらの候補タンパク質を合成し、本発明のスクリーニングを行うことが極めて効率的である。無細胞タンパク質合成系は、細胞抽出液を用いて試験管内でタンパク質を合成する系であり、上記細胞抽出液としては、リボゾーム、t-RNA等のタンパク質合成に必要な成分を含む、従来より公知の真核細胞又は原核細胞の抽出液が使用可能である。好ましくは小麦胚芽や大腸菌由来のもの(例えば大腸菌S30細胞抽出液)又は高度好熱菌(Thermus thermophilus)由来のものが高い合成量を得る点において好ましい。この大腸菌S30細胞抽出液は、大腸菌A19(rna, met), BL21, BL21 star, BL21 codon plus株等から公知の方法(Pratt, J.M. et al., Transcription and translation - a practical approach, (1984), pp.179-209, Henes, B.D.とHiggins, S.J.編、IRL Press, Oxford参照)に従って調製でき、又はPromega社、Novagen社又はRoche社から市販されるものを使用してもよい。
【0020】
無細胞タンパク質合成系には、バッチ法、フロー法の他、従来公知の技術がいずれも適用可能であり、例えば限外濾過膜法や透析膜法、樹脂に翻訳鋳型を固定化したカラムクロマト法等(Spirin, A.ら、Meth. In Enzymol. 217巻、123〜142頁、1993年参照)を挙げることができる。また、本発明の方法に用いる基板表面で(例えば図3に示したような基板の各ウエル内を基板表面とし、これに細胞抽出液と鋳型遺伝子を導入して)タンパク質を合成し、高機能化された基板表面でタンパク質合成から検出同定までを一括して行うこともできる。
【0021】
(洗浄)
上記タンパク質を基板表面と接触させ、リガンドと特異的に吸着させた後、当該基板を溶出液によって洗浄する。一般的な洗浄方法としては、緩衝溶液、食塩、界面活性剤等を使用して非特異的な吸着物を除去する方法が考えられるが、これらの無機塩はイオン化抑制効果があるため後続する質量分析法による検出を困難にする。即ち、MALDI−TOF型質量分析装置に試料を塗布する際、十分な脱塩操作を行わないと夾雑する無機塩にイオン化エネルギーを奪われ、タンパク質試料のイオン化が阻害されるからである。本発明の好ましい実施形態において、洗浄過程は水のみで行うことができる。これは、平滑な基板表面を一定の密度で官能基がすべて同じ方向を向いているので、高い確率で特異的に相互作用するものを捕捉でき、且つPEGの低い非特異的吸着の相乗効果で、水というもっとも普遍的な溶媒で洗浄することができるからである。これによって、不純物の洗浄と同時に脱塩操作も行うことができ、操作の簡便性と共に著しく効率を上げることが可能となる。
【0022】
(質量分析法による解析)
洗浄後の基板上に保持されたタンパク質は、リガンドと特異的に結合したものであり、質量分析法により解析することができる。質量分析法により解析するためには、基板表面に保持されたタンパク質を適当なエネルギー源にさらし脱着させる。通常は、光エネルギー、特にレーザービームを照射することによって与えられる。
【0023】
このような質量分析方法の一つとしてMALDI−TOF/MS(matrix-assisted laser desorption ionization time-of-flight/mass spectrometry)が知られている。タンパク質試料とシナピン酸(Sinapinic acid: 3,5-Dimethoxy-4-hydroxycinnamic acid)等のレーザー光を吸収するマトリクスとの混合、乾燥後に強力なパルスレーザー光を照射し、マトリクスからのエネルギー移動によるタンパク質試料のイオン化を行い、初期加速による試料分子イオンの飛行時間差でイオンの分子量を分析する方法である。
【0024】
別のイオン化法としては、ESI(electrospray ionization)法が知られ、また、質量分離法としては四重極(quadrupole:Q)型、イオントラップ(ion trap)型等を利用することができる。これらのイオン化法と質量分離法とを適宜組合わせたり、質量分離部を複数連結したタンデム質量分析法(MS/MS)として利用することもできる。
【0025】
(リガンドと分子間で相互作用するタンパク質のスクリーニング)
本発明の一つの実施形態において、(a)ポリエチレングリコールアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜で被覆された平滑な基板表面にリガンドを精密配列させる工程、(b)前記リガンドを固定化した基板表面と候補タンパク質とを接触させる工程、(c)前記タンパク質と接触させた基板表面を水で洗浄する工程、(d)前記洗浄された基板を用いてMALDI−TOF型質量分析計により質量分析を行う工程、及び(e)前記候補タンパク質が工程(d)で検出されるか否かを判定する工程、を含むことを特徴とする、前記リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質をスクリーニングする方法が提供される。図1はこの形態を模式的に示す。図1において、金をコートした平滑な基板表面は上記に詳細に説明したように、単分子層の混合自己組織化膜(Mixed Self-Assembled Monolayers)を用いてその表面が被覆され、続いてリガンドが固定化される。タンパク質としばらく接触させた後、水で洗浄し、リガンドと特異的に結合したタンパク質のみが質量分析法による検出工程に供される。
【0026】
タンパク質分子間又はタンパク質とペプチドや他の低分子との間の相互作用は、タンパク質が分子機能、生物機能を果たす第一歩であり、例えば生体内における物質代謝やシグナル伝達において重要な役割を果たしている。具体的には、ホルモンとその受容体、細胞増殖因子と制御因子、遺伝子の発現調節因子間の相互作用等が挙げられるがこれらに限定されない。ハイスループットなスクリーニングが可能になると、上記のような機能が明らかでないタンパク質の機能解明や、相互作用するタンパク質が不明の生理活性化合物のスクリーニング等の研究が促進される(廣田洋、伊藤隆司、実験医学、第19巻(8)、958-962、2001年参照)。
【0027】
本発明において、シグナル伝達とは、細胞が外界からいろいろなシグナル(ホルモン、増殖因子、サイトカイン等)をそれぞれに特異的な受容体を介して受け取り、細胞内の多数の複雑な反応を経由して核へ伝えて、増殖、分化、移動、細胞死(アポトーシス)などを開始することをいう。細胞内でシグナルが受け渡される経路をシグナル伝達経路といい、シグナルの種類、細胞の型や状態等によって異なる。シグナル伝達経路の入口となる受容体は大別して3型ある。イオンチャネル型は主として神経細胞のシナプス部分にあって、神経伝達物質が結合するとイオンチャネルが短時間開閉して興奮を伝える。Gタンパク質共役型はホルモンの受容体に多く、受容体からのシグナルが三量体型Gタンパク質を経由してcAMPやIP3等のセカンドメッセンジャーの増加を引き起こす。酵素結合型には受容体自体がプロテインキナーゼであるもの(受容体型チロシンキナーゼ)とシグナル分子が結合するとチロシンキナーゼを活性化するもの(JAK−STAT系)とがあり、前者は主に増殖因子の、後者は(狭義の)サイトカインの受容体である。タンパク質のリン酸化という情報は、SH2ドメインをもついろいろなプロテインキナーゼ等によって認識され、シグナルが先へ伝えられる。最後に活性化されたプロテインキナーゼが核内に移行して転写因子をリン酸化(あるいは細胞質内でリン酸化された転写因子が核内に移行)して特定の遺伝子の転写を促進する。
【0028】
SHドメインとは、Src相同領域のことである。プロトオンコジーンの一つsrc遺伝子産物(Src)は、チロシンキナーゼ活性をもち、Src自体のチロシンもリン酸化される。他のチロシンキナーゼ活性をもつがん遺伝子産物やシグナル伝達経路にかかわる因子の研究過程で、Srcタンパク質と構造が類似していて、タンパク質分子間の相互作用に重要な働きをする領域(ドメイン)が発見され、Src相同領域(SH1〜3)と呼ばれるようになった。そのうちSH1ドメインはチロシンキナーゼ領域である。SH2ドメインは近隣のタンパク質のリン酸化されたチロシンを認識して結合する。また、SH3ドメインはプロリンに富むペプチドを認識して相互作用することが知られている。本発明の方法を用いることによって、このようなタンパク質分子間の相互作用を極めて効率的に解析することができ、特定のリガンドと結合する新規なタンパク質を見出し、又は既知のタンパク質の結合領域(ドメイン)を同定することによって、これらのシグナル伝達機構を調節する薬剤の開発や病気の治療方法につながる。
【0029】
更に、本発明の方法によって、タンパク質発現プロファイリングの解析を行うことも可能となる。タンパク質発現プロファイリング方法としてはDNAマイクロアレイを用いる方法が知られているが、この方法は細胞内の転写産物を増幅しなければならないため手間がかかり、測定再現性についても多くの問題が残されている。遺伝子はタンパク質に翻訳されて初めてその機能を発揮するので、DNAマイクロアレイのように転写産物を調べるよりも細胞内のタンパク質を直接調べる方がより現実を反映していると考えられる。しかし、タンパク質はその構造の多様性、相互作用する相手の複雑性に対処しなければならないので、これを検出することはDNAマイクロアレイ法よりもはるかに困難である。また、タンパク質はプロテアーゼによる分解を受けるので、抽出後、速やかに解析しなければならない。即ち、組織からの抽出、展開、洗浄、検出を短時間で行わなければならないと考えられる。本発明のスクリーニング方法はこれらの観点から極めて優れた方法を提供する。
【0030】
(リガンド固定化基板)
ポリエチレングリコールアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜で被覆された平滑な基板表面にリガンドを精密配列させたリガンド固定化基板は、上記本発明のスクリーニング方法に使用することができ、タンパク質の分子間相互作用を解析する研究手段として極めて有用である。例えば、あらかじめ種々のペプチドをリガンドとして固定化しておくことによって、試料として用いたタンパク質の結合特異性を調べることができる。これらのタンパク質としては、抗体や酵素、又は上記シグナル伝達に関与するタンパク質又はその一部(ドメイン)を対象とすることができる。
【0031】
一つの実施形態として、特定のタンパク質分子間相互作用を介して細胞内のシグナル伝達に関与する多くのタンパク質に見出されるSrc相同領域(SH2又はSH3ドメイン)と結合するリガンドを固定化した基板が提供される。SH2ドメインと結合するリガンドとしてはリン酸化されたチロシン残基、又はこれを含む2〜10アミノ酸残基のペプチドを用いることができ、好ましくはリン酸化チロシンを含むC末端側の4アミノ酸残基、例えばpYEEI(配列番号2)等が挙げられる。また、SH3ドメインと結合するリガンドとしてはプロリンに富むペプチド、例えばRKLPPRPAF(配列番号3)やVPPPVPPRRR(配列番号4)等のようなペプチドが挙げられる。
【0032】
【実施例】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
(実施例1)基板表面の粗さの解析
MALDI/TOF型質量分析装置のターゲット表面を優秀な研磨技術者により可能な限り平滑に研磨した後、その表面にクロムメッキを施し、2000Åの厚さで金を真空蒸着した。その表面を原子間力顕微鏡(AFM)NanoScope IIIa Dimension 3000(Digital Instruments社製)を用いて大気中タッピングモードで測定して表面の粗さを解析したところ、平均粗さ度(Mean roughness:Ra)は3.821 nm、最大高さ(Max height:Rmax)は40.048 nmであった。一方、ガラス表面に金を真空蒸着した基板表面を同じように測定したところ、平均粗さ度(Mean roughness: Ra)は0.367 nm、最大高さ(Max height: Rmax)は6.919 nmであった。この結果より、以下の実施例においては、ガラス表面に金を真空蒸着した基板を用いてリガンドを固定化し、これと相互作用するタンパク質のスクリーニング方法について検討した。なお、上述した金属基板を用いた場合には非特異的な吸着が大きく、データの解析が不可能であった。
【0034】
(実施例2)混合自己組織化膜の合成
膜成分についてはLahiriらの方法(前掲)にしたがった。自己組織化に必要なC11のアルキル鎖に親水性を加えるために一方にエチレングリコールユニット、もう一端をSH基で修飾した。リガンドを固定する活性型の膜構成成分にはエチレングリコール6単位(EG6)、固定しない非活性型の膜構成成分にはエチレングリコール3単位(EG3)とした。また活性型の末端はカルボキシメチル化し、これをもとに用途に応じて各種官能基化することにした。
【0035】
【化1】
【0036】
11-Bromoundec-1-ene (化合物1)とHexaethylene glycol (化合物2)をN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)中、水素化ナトリウム(NaH)を作用させて縮合させ、Undec-1-ene-1-yl-hexaethylene glycol (化合物3)を得た。化合物3に対しt-butyl-bromoacetate (化合物4) を同じ条件で反応させ、3, 6, 9, 12, 15, 18, 21-Heptaoxadoriacont-31-enoic acid, 1, 1-dimethyl ethyl ester(化合物5)とし、トリフルオロ酢酸(TFA)による脱保護を経た後にチオ酢酸(AcSH)をAIBN(2,2'-Azobisisobutyronitrile)存在下メタノール中でUV照射によりラジカルカップリングさせ、(2-{2-[2-(2-{2-[2-(11-Acetylsulfanyl-undecyloxy)-ethoxy]-ethoxy}-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-ethoxy)-acetic acid (化合物7)を得た。この時副生成物としてメチルエステル体(化合物8)が得られた。またNH2活性型膜構成成分と非活性型の膜構成成分についても同様にしてそれぞれ合成した(化合物11及び14)。
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】
(実施例3)混合自己組織化膜の調製
【0040】
【化4】
【0041】
活性型と非活性型の膜構成成分を2:98の比率で混合し、SH基の脱保護を行った(化合物15及び16)。またコントロールとして末端がOH基のみの自己組織化膜の調製も試みた(化合物17)。脱保護と後処理については活性型膜構成分の官能基の違いにより、それぞれ2種類の方法で行った。SH基の脱保護のみならメタノール中でナトリウムメトキシド(NaOMe)で、メチルエステルの脱保護を伴うものはメタノール中で水酸化リチウム(LiOH)を用いた。また後処理についてはNH2基があるものについては1N−塩酸(HCl)で中和し、窒素ガスで吹きつけて乾燥させた。それ以外のものは陽イオン交換樹脂Dowex 50wx-8を混ぜてろ過することで塩基を取り除いた。脱保護した化合物15、16、17については2mMとなるようにエタノール溶液を調製した。実施例1で作製したガラス表面に金を蒸着した基板についてはオゾン水中で30分間超音波洗浄後、窒素ガスを吹きつけて乾燥させ、直ちに混合自己組織化膜のエタノール溶液中に12時間以上浸漬した。基板をエタノール溶液から引き上げた後にメタノールで2分間超音波洗浄後、窒素ガスを吹きつけて乾燥させた。
【0042】
(実施例4)リガンドの固定化
モデルシステムとして、ヒトホスファチジルイノシトール3−キナーゼp85aサブユニットの1−85残基のN末にGSの2残基を付加した以下の配列を有するPI3K-SH3ドメイン(配列番号1)とそのリガンドペプチド(配列番号3)でシステムの有用性を証明した。
【0043】
配列番号1:GSMSAEGYQYRALYDYKKEREEDIDLHLGDILTVNKGSLVALGFSDGQEARPEEIGWLNGYNETTGERGDFPGTYVEYIGRKKISPP(平均分子量9763.8)
【0044】
配列番号3:RKLPPRPAF
【0045】
リガンドペプチドはペプチド自動合成装置、PSSM−8(島津製作所製)を用いてPyBOP/HOBt法で合成した。p85a PI3K-SH3ドメインとRKLPPRPAFの結合定数はアフィニティーキャピラリー電気泳動法にてKb = (5.4±0.098) nM-1と算出した。このペプチドを基板上に固定する方法として、まず、液相中でリガンドペプチドと活性型膜構成成分を縮合させてから基板上に固定する方法を用いた。
【0046】
【化5】
【0047】
リガンドペプチドはC末端で基板に固定するためN末端と側鎖のアミノ基をFmoc(9-Fluorenylmethoxycarbonyl)基で保護した。次に鍵中間体であるカルボン酸(6)にN-(6-Aminohexyl)carbamic Acid t-butyl Esterをニ塩化エチレン(EDC)を用いて縮合させ化合物20とし、TFAでBoc(tert-Butoxycarbonyl)基を脱保護し、アミノ体21とした。そして化合物19と21をHATU/HOAtを用いて縮合させ(化合物22)、さらにラジカル反応でSAc基を導入した(化合物23)。化合物23を2%の濃度にして非活性型膜構成成分14を混ぜてメタノール中NaOMeで脱アセチル化した後に2mMのエタノール溶液を調製し、同様に基板を浸漬して混合自己組織化膜をはった。このときFmoc基も同時に脱保護された。
【0048】
【化6】
【0049】
(実施例5)混合自己組織化膜を被覆した基板上での固相ペプチド合成によるリガンドの固定化
一方、2mMの濃度に調整したFmocRK(Fmoc)LPPRPAF/HATU/HOAt/DIEAのDMF溶液(1ml)にNH2基板をいれて2時間超音波処理を行った。基板を引き上げてメタノール中で超音波洗浄を行い、20%ピペリジン/DMF中で30分間超音波処理し、Fmoc基を外した。これにより、基板上でペプチドを固相合成することも確認できた。
【0050】
(実施例6)スクリーニング
実施例4の方法によって自己組織化膜をはった基板をもちいて電子顕微鏡用のカーボンテープでMALDI/TOF用のターゲットに固定し、シリコンと塩化ビニルでできた型を貼り合せ、四隅をクリップで固定した(図3参照)。
【0051】
一回のスクリーニングでは4種類のチップを用いた。ペプチドリガンド(RKLPPRPAF)チップ(R)、NH2チップ(N)、OHチップ(O)、及び金表面のみのチップ(A)にそれぞれPI3K-SH3ドメイン (5−R、N、O、A) とミオグロビン(6−R、N、O、A) をのせて30分間インキュベーションし、ピペットでタンパク溶液を排出し、10mlの水で一回ピペッティングした後、マトリックスと混合・乾燥し、レーザーを照射してイオン化した。
【0052】
PI3K-SH3ドメインは、ヒトPI3K p85αサブユニットのSrc相同領域(SH3)であり、多次元NMRによる立体構造とリガンドとの結合様式等が報告されている(Koyama S. et al., Cell, 1993, 72(6), 945-52)。N末端の1−85アミノ酸残基部分をコードする塩基配列をポリメラーゼ連鎖反応で増幅し、その後発現ベクターpGEX4T-3に組み込んだ。このようにして構築した発現プラスミドpGEX4T-3-SH3を大腸菌DH5αに形質転換し、終濃度50μg/mlのアンピシリンを含む500mlの2xYT培地中、37℃で大量培養を行った。培養液の光学密度(OD600)が0.7に達した時に、IPTGを終濃度0.5mMになるように添加し、GST融合SH3タンパク質の発現を誘導した。誘導開始6時間後の培地から約1.6グラムの菌体を回収した。この菌体を緩衝液(50mM Tris-HCl(pH8.0), 50mM NaCl, 1mM EDTA, 1mM DTT, 1mM PMSF)に懸濁し、懸濁液を超音波処理にかけて大腸菌を破砕した。GST融合SH3タンパク質を可溶化させるため、Triton X-100を終濃度1%になるように加えて4℃で30分間混合した。混合液を4℃で15,000 rpm、15分間遠心分離し、可溶性画分を回収した。Glutathione Sepharose 4B beads (Amersham Pharmacia社)を用いて精製したGST融合SH3タンパク質をトロンビンでGST部分とSH3ドメインに切断し、その後、陰イオン交換カラム(Resource Q; Amersham Pharmacia社)で組換えSH3タンパク質とGSTタンパク質を分離した。得られた組換えSH3タンパク質は、約1.3mg/mlになるようにMicrocon YM-3(Amicon社)を用いて濃縮し、SDS−PAGEで純度検定を行った。また、アミノ酸シークエンサー分析の結果、N末端から10残基のアミノ酸配列が確認できた。すなわち、SH3タンパク質のN末端にGSTタンパク質のC末端アミノ酸2残基(グリシンとセリン)が付加していることが確認できた。さらに、このSH3タンパク質の分子量をアプライドバイオシステムズ社ESI/QSTAR−TOF質量分析装置で確認したところ、推定分子量9,763.8と非常に近い値9762.9が実測された。
【0053】
このようにして合成したPI3K-SH3ドメイン又はミオグロビンを含むタンパク溶液をそれぞれ以下の表1及び表2に示す組成で調製した。
【0054】
【表1】
PI3K-SH3ドメインを含むタンパク質溶液
【0055】
【表2】
ミオグロビンを含むタンパク質溶液
【0056】
最初に分子量校正のためスクリーニング操作をしないPI3K-SH3ドメインとミオグロビン(Myoglobin)を測定し、それらのマススペクトルデータを図4及び図5に示した。ミオグロビンの分子量(図5において1価イオンのピークがm/z=16951.48、2価イオンのピークがm/z=8475.74に検出される。)を外部標準として用いた。
【0057】
この結果ペプチドリガンドチップにはPI3K-SH3ドメインが相互作用していることが図6に示したマススペクトルデータ(m/z=9763.82に検出されるピーク)から判定でき、他にOHチップに僅かにイオンピークが観測されるのみで(図10参照)混合自己組織化膜の優れた選択性を示した。インキュベーション後の洗浄操作も水で一回ピペッティングすることで達成されるので、高速化、汎用化に必要十分な要素が備わったことになる。また一回のスクリーニングに消費したタンパク質は65mMの濃度で2mlすなわち130pmolで可能であることも示している。実際はその9割以上を回収しているので実際の消費量はそれ以下であった。また対照実験で行ったミオグロビンについてはR、N、O、Aのどのチップでもイオンピークは観測できなかった(図7、9,11,13参照)。
【0058】
【発明の効果】
本発明の方法によって、タンパク質やペプチド等のリガンドと分子間相互作用するタンパク質を高速且つ簡便にスクリーニングすることができる。これにより、ゲノム解析の結果得られた数多くのタンパク質の生体内での分子機能を系統的且つ網羅的に解析することができる。その結果、例えば特定の病気に関与するタンパク質の活性発現部位、発現機構を知ることができるようになれば、それによって病気にきめ細かく対処することも可能になり、またそのタンパク質を選択的・特異的に標的とする医薬の設計・開発にも繋がる。
【0059】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスクリーニング方法を説明するための模式図である。
【図2】本発明の一実施形態において基板表面を被覆する混合自己組織化膜の構造を示したものである。
【図3】本発明の一実施形態において質量分析法による質量数の測定に用いるプローブを示したものである。
【図4】対照実験としてスクリーニング操作をせずにPI3K-SH3ドメインを質量分析した結果(マススペクトルデータ)である。
【図5】対照実験としてスクリーニング操作をせずにミオグロビンを質量分析した結果(マススペクトルデータ)である。
【図6】本発明の方法により、RKLPPRPAFペプチドを固定化した基板を用いて、PI3K-SH3ドメインを含む試料をスクリーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
【図7】本発明の方法により、RKLPPRPAFペプチドを固定化した基板を用いてミオグロビンを含む試料をスクリーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
【図8】対照実験として、NH2チップを用いて、PI3K-SH3ドメインを含む試料をスクリーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
【図9】対照実験として、NH2チップを用いて、ミオグロビンを含む試料をスクリーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
【図10】対象実験として、OHチップを用いて、PI3K-SH3ドメインを含む試料をスクリーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
【図11】対照実験として、OHチップを用いて、ミオグロビンを含む試料をスクリーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
【図12】対照実験として、金表面のみのチップを用いて、PI3K-SH3ドメインを含む試料をスクリーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
【図13】対照実験として、金表面のみのチップを用いて、ミオグロビンを含む試料をスクリーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
Claims (9)
- 単分子膜で被覆した平滑な表面にリガンドを精密配列させた基板と、タンパク質とを接触させ、前記基板表面に特異的に吸着したタンパク質を質量分析法により解析することを特徴とする、前記リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法。
- 前記単分子膜が、ポリエチレングリコールアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜である請求項1に記載のスクリーニング方法。
- 前記タンパク質と接触させた基板表面を水で洗浄することにより夾雑物の除去と脱塩を行う請求項1又は2に記載のスクリーニング方法。
- 前記質量分析法による解析が、前記タンパク質を特異的に吸着した基板を用いてMALDI−TOF質量分析法により質量数を測定することである請求項1〜3何れか一項に記載のスクリーニング方法。
- 前記タンパク質が、無細胞タンパク質合成系を用いて合成されたタンパク質又はタンパク質ドメインである請求項1〜4何れか一項に記載のスクリーニング方法。
- 前記リガンドがタンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、脂質、核酸及び有機化合物からなる群から選択されるものである請求項1〜5何れか一項に記載のスクリーニング方法。
- ポリエチレングリコールアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜で被覆した平滑な基板表面にリガンドを精密配列させたリガンド固定化基板。
- 前記リガンドが、細胞内のシグナル伝達タンパク質のSH2ドメイン又はSH3ドメインと結合するアミノ酸又はペプチドである請求項7に記載のリガンド固定化基板。
- 請求項7又は8に記載のリガンド固定化基板と、タンパク質とを接触させ、前記基板表面に特異的に吸着したタンパク質を質量分析法により解析することを特徴とする、前記リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002046188A JP3656159B2 (ja) | 2002-02-22 | 2002-02-22 | リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002046188A JP3656159B2 (ja) | 2002-02-22 | 2002-02-22 | リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003248001A JP2003248001A (ja) | 2003-09-05 |
JP3656159B2 true JP3656159B2 (ja) | 2005-06-08 |
Family
ID=28659682
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002046188A Expired - Fee Related JP3656159B2 (ja) | 2002-02-22 | 2002-02-22 | リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3656159B2 (ja) |
Families Citing this family (10)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP3788513B2 (ja) | 2003-09-11 | 2006-06-21 | セイコーエプソン株式会社 | 固相基板上への分子の固定化方法およびそれを用いるバイオセンサの製造方法 |
GB2427916B (en) * | 2004-01-13 | 2008-08-06 | Waters Investments Ltd | Substrate adapter for use in mass spectroscopy analysis |
CN1314968C (zh) * | 2004-03-11 | 2007-05-09 | 复旦大学 | 痕量多肽或蛋白质富集及其直接分析方法 |
JP5464784B2 (ja) * | 2005-10-05 | 2014-04-09 | 日本曹達株式会社 | 基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する工程を含む、有機薄膜の製造方法 |
JP4768417B2 (ja) * | 2005-11-28 | 2011-09-07 | 富士フイルム株式会社 | バイオセンサー |
JP4780407B2 (ja) * | 2006-11-21 | 2011-09-28 | 独立行政法人産業技術総合研究所 | 表面に混合薄膜を設けた基板及び該基板を使用するたんぱく質の検出方法 |
JP5203600B2 (ja) * | 2006-12-05 | 2013-06-05 | 田中貴金属工業株式会社 | 体外診断薬用金コロイド |
JP5286266B2 (ja) * | 2007-07-24 | 2013-09-11 | 日本曹達株式会社 | 有機薄膜の基材への作製方法 |
EP3104172B1 (en) | 2014-02-03 | 2020-04-29 | Kyocera Corporation | Sensor apparatus |
WO2018143357A1 (ja) * | 2017-02-01 | 2018-08-09 | 国立大学法人浜松医科大学 | 標的物質と親和性の高い物質をスクリーニングする方法 |
-
2002
- 2002-02-22 JP JP2002046188A patent/JP3656159B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003248001A (ja) | 2003-09-05 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US7148058B2 (en) | Protein microarrays on mirrored surfaces for performing proteomic analyses | |
EP1297338B1 (en) | Microarrays for performing proteomic analyses | |
US7153682B2 (en) | Microarrays on mirrored substrates for performing proteomic analyses | |
Schena | Protein microarrays | |
CN100369181C (zh) | 滞留层析和蛋白质芯片排列在生物学和医药上的应用 | |
US9506916B2 (en) | Method for a highly sensitive detection and quantification of biomolecules using secondary ion mass spectrometry (SIMS) and related technologies | |
US11639938B2 (en) | Multiplexed bead-based analytical assays | |
JP3750020B2 (ja) | C末端修飾タンパク質およびその製造方法、ならびに、c末端修飾タンパク質の製造に用いる修飾剤および翻訳テンプレート、ならびに、c末端修飾タンパク質を用いたタンパク質相互作用の検出方法 | |
JP3656159B2 (ja) | リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法 | |
JP2003522961A (ja) | セグメント合成 | |
JP2005326165A (ja) | タンパク質相互作用解析のための抗タグ抗体チップ | |
JP7227214B2 (ja) | 系統的な探索、成熟化および伸長プロセスにより同定した、タンパク質に対する特異的ペプチドバインダー | |
JP2005098830A (ja) | 質量分析法によるタンパク質相互作用物質のスクリーニング方法 | |
US20040137608A1 (en) | Chemical microarrays and method for constructing same | |
US20120172249A1 (en) | Method for a highly sensitive detection and quantification of biomolecules using secondary ion mass spectrometry (sims) | |
JP2002372517A (ja) | 質量分析法によるタンパク質の構造解析方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A711 | Notification of change in applicant |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712 Effective date: 20031201 |
|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20040531 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20040611 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20050201 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20050222 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080318 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090318 Year of fee payment: 4 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |