JP2003248001A - リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法 - Google Patents

リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】タンパク質の分子間相互作用を精度良く解析
し、これらを高速且つ簡便に行うことができるシステム
を構築することによって、特定のリガンドと分子間相互
作用するタンパク質を効率的にスクリーニングする方法
を提供すること。 【解決手段】単分子膜で被覆した極めて平滑な表面にリ
ガンドを精密配列させた基板と、タンパク質とを接触さ
せ、前記基板表面に特異的に吸着したタンパク質を質量
分析法により解析することにより、前記リガンドとの分
子間相互作用を有するタンパク質をスクリーニングす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タンパク質の分子
間相互作用の解析技術に関し、より詳細には、タンパク
質又はその一部(ドメイン)に対するリガンドを限りな
く平滑な基板表面に固定化し、これに特異的に吸着した
タンパク質を質量分析法を用いて高速且つ高感度に解析
する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ヒトを含む多くの生物種のゲノム
シークエンシングプロジェクトが活発に進められ、ゲノ
ムの遺伝情報の解読が飛躍的なスピードで進んでいる。
そしてこのスピード化を支えているのはハイスループッ
ト化とマイクロアレイ化である。遺伝情報の解読の次に
考えられるのは翻訳されたタンパク質全体の理解であ
る。タンパク質を理解することはその分子機能を知るこ
とであり、そして機能とはどのような分子と相互作用す
るかということである。タンパク質の相互作用する相手
を効率よく見つけ、さらに相互作用する相手の分子がタ
ンパク質のどの部分に結合するのかがわかれば、そのタ
ンパク質の生物学的意義が理解できるはずである。これ
までは一つずつタンパク質を発現させてその機能を調べ
ていく手法が主流であった。このため解析する時間よ
り、精密さが優先された。しかしタンパク質の発現技術
が飛躍的に進化しつつある現在、高速に相互作用を解析
する手段の開発が望まれている(Curr. Opin. Chem. Bio
l. 2001, 5, 34-39.)。
【0003】このようなタンパク質相互作用解析システ
ムの構築にあたっては、対象がヒトの場合には約10万
種類ともいわれている全遺伝子産物であるため、解析ス
ピードの高速化が必要となる。また、微量の試料を用い
て解析することができれば試料調製の手間が軽減される
ことから高感度な検出手段が要求される。
【0004】これらの要求に適合する従来技術として
は、MALDI/TOF型質量分析計を用いる質量分析
法がある。この方法は、レーザーを照射してタンパク質
をイオン化させ、且つ標準装備のターゲットが100検
体以上試料をのせることが可能な、現時点における最も
ハイスル−プットな分析機器である。また、フェムトモ
ルレベルの試料を検出できるので、極めて高感度であ
る。
【0005】MALDI/TOF型質量分析計で分子間
相互作用を検出するシステムとしては、サイファージェ
ンバイオシステムズ社のプロテインチップシステムが知
られている(Electrophoresis 2001, 22, 2898-2902、特
開2001-281222号公報、及び米国特許第6225047参照)。
しかし、このシステムは吸着剤として疎水性吸着やイオ
ン交換などの種々の相互作用を用いているため、それぞ
れの吸着剤に対応した溶出条件の設定が必要となる。ま
た、タンパク質の特異的な相互作用を検出する際の基板
表面の平滑さについては全く考慮されていない。更に、
高価な専用の分析計を用いなければならず、質量分析計
の精度も十分ではないという問題点がある。
【0006】一方、分子間相互作用を詳細に解析する手
段としては表面プラズモン共鳴現象を利用する方法が知
られており、この測定方法に用いるPEGアルカンチオ
ールを用いた混合自己組織化膜の有用性が報告されてい
る(Joydeep Lahiri et al.,Anal. Chem. 1999, 71, 77
7-790)。しかし、この方法は特殊な装置を使用するた
め検出のハイスループット性に欠け、この膜を用いてM
ALDI/TOF型質量分析計で高選択的にしかも簡便
にタンパク質の相互作用を検出する方法は知られていな
い。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明は、上
記従来技術におけるプロテインチップ表面の選択性、即
ち、ターゲットへの特異的な吸着と非特的な吸着とを精
度良く区別してタンパク質の分子間相互作用を精度良く
解析することを課題とする。また、これらを高速且つ簡
便に行うことができるシステムを構築することによっ
て、ゲノム解析の結果得られた数多くのタンパク質の中
から、特定のリガンドと分子間相互作用するタンパク質
を効率的にスクリーニングする方法を提供することを課
題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するためになされたものであって、一つの視点におい
て、単分子膜で被覆した限りなく平滑な表面にリガンド
を精密配列させた基板と、タンパク質とを接触させ、前
記基板表面に特異的に吸着したタンパク質を質量分析法
により解析(検出)することを特徴とする、前記リガン
ドとの分子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニ
ング方法を提供する。
【0009】本発明の好ましい実施形態において、前記
単分子膜が、ポリエチレングリコールアルカンチオール
を用いた混合自己組織化膜であることを特徴とする。こ
れにより基板表面の選択性(特異的吸着と非特異的吸着
との区別)、更にはデータの信頼性が著しく向上する。
【0010】本発明の別の好ましい実施形態において、
前記タンパク質を含む試料と接触させた基板表面を水で
洗浄することにより夾雑物の除去と脱塩を行う。これに
より夾雑物を除去するための条件をあらかじめ検討する
という複雑な操作が必要なく、操作を簡便にすると共
に、洗浄後の基板をそのまま用いて高速且つ高感度なM
ALDI−TOF質量分析法による解析を行うことで、
ハイスループットなスクリーニングを可能とする。
【0011】本発明の更に別の好ましい実施形態におい
て、前記タンパク質は無細胞タンパク質合成系を用いて
合成されたタンパク質又はタンパク質ドメインであり、
前記リガンドはタンパク質、ペプチド、アミノ酸、糖、
脂質、核酸又は有機化合物である。
【0012】本発明の他の視点において、ポリエチレン
グリコールアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜
で被覆した平滑な基板表面にリガンドを精密配列させた
リガンド固定化基板が提供される。一つの実施形態にお
いて、前記リガンドは細胞内のシグナル伝達タンパク質
のSH2ドメイン又はSH3ドメインと結合するアミノ
酸又はペプチドであり、これらを固定化した基板を上記
スクリーニング方法に用いることによって細胞の増殖や
分化誘導等の情報伝達機能を有する新規なタンパク質を
スクリーニングしたり、その分子間相互作用に関与する
ドメインを同定したりすることが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】(基板の作製)本発明の方法にお
いて、基板とは、リガンドが例えば物理的吸着又は化学
結合によりその上に提供される固相のことをいう。基板
は単一の材料から構成されていても、或いは複数の材料
を組合わせたり若しくは表面処理を行ったものであって
も良い。タンパク質や低分子を対象とした相互作用を高
選択性をもって検出するためには、その対象分子の構造
の多様性に対処するために基板表面の高機能化を行い、
特異的な相互作用と非特異的な吸着の選択性を高めるこ
とが必要である。このため、限りなく平滑な表面に非特
異的吸着の極めて少ない単分子膜を形成し、これに対象
となるタンパク質や低分子等をリガンドとして固定化す
る。
【0014】まず、基板材料としては、平滑な表面をも
つ固体材料であれば何でも良く、例えば、ガラス、セラ
ミック、ポリエーテル−エーテルケトン(PEEK)等
の平滑な表面を持つプラスチック、テフロン(登録商
標)やシリコンでコートされた材料、ステンレス鋼、ア
ルミニウム、チタン等の金属、合成又は天然のポリマー
又はこれらの組合せ等が挙げられる。例えば、MALD
I−TOF型質量分析装置のターゲットを研磨して平滑
化する方法が考えられる。しかし、研磨した金属表面に
クロムメッキを施した後、2000Åの厚さで金を真空
蒸着して基板表面を原子間力顕微鏡(AFM)で観察し
たところ、その平均粗さ度は約40Åと自己組織化膜の
膜厚に匹敵する粗さを有していた。従って、この程度の
平滑さでは期待するような選択性が得られないことは明
らかである。一方、ガラス表面に金を真空蒸着した基板
表面を、上記と同様に原子間力顕微鏡(AFM)を用い
て調べると、その平均粗さ度が約4Åと極めて平滑であ
り本発明の方法に好適に使用することができる。一般
に、材料表面の平滑さの度合いを考慮すると、シリコン
単結晶、ガラス、金属等の順に優れているが、本発明の
方法に用いる基板表面の平滑さとしては少なくとも10
Å以下、好ましくは約4Å以下の場合に満足のいく結果
が得られる。
【0015】次に、非特異的吸着の極めて少ない単分子
膜としては、ポリエチレングリコール(PEG)、デキ
ストラン、ゼラチン等の合成又は天然の親水性化合物が
挙げられる。PEG末端の水酸基で覆われた基板表面は
非特異的吸着が低いことが報告されており(Anal.Chem.
前掲)、特に好ましい。単分子膜の構成成分は、種々の
鎖長のPEGを1種又は2種以上、任意の比率で混合し
て用いることができるが、好ましくは、短鎖(エチレン
グリコールで2〜4単位)と長鎖(エチレングリコール
で5〜8単位)の両方を適当な比率で混合して用いる。
長鎖の末端のみを各種官能基で活性化して立体障害を避
けるように適切な比率で短鎖(末端は水酸基)と混合
し、上記平滑な担体上で混合自己組織化膜を形成させ
る。図2は、このような単分子膜の構成成分の構造を示
したものである。図2において、自己組織化を行うため
に必要な疎水性領域として炭素数が11個のアルキル基
を用い、これに親水性を付与するためにエチレングリコ
ール鎖を付加する。一つの実施形態として、リガンドを
固定化するために活性化される鎖(活性型)のエチレン
グリコール鎖は6単位とし、リガンドを固定化しない非
活性型のエチレングリコール鎖は3単位としたものが示
されている。疎水性領域の末端はガラス基板上にコート
された金と反応させるためにスルフヒドリル化され、活
性型の親水性領域の末端はカルボキシメチル化されてお
り、この官能基をもとに用途に応じて種々の官能基へと
誘導することができる。これらの基板は、フィルムやビ
ーズ等のように任意の形状とすることができるが、一つ
の実施形態として質量分析用のプローブの形状とし、そ
のまま質量分析計に挿入するサンプル提示台とすること
ができる。
【0016】(リガンドの固定化)次にリガンドとなる
低分子やタンパク質等を上記基板上に固定化する。固定
化は、共有結合、Ni2+等の2価金属イオンによるキ
レート作用、ビオチン−アビジン等の特異的な親和性、
疎水的相互作用、又はSH基とマレイミドの特異的親和
性等を利用することができる。また、上記基板を作製し
た後に固定化してもよく、或は上記基板の作製と同時に
行うこともできる。例えば、あらかじめ単分子膜の成分
であるPEGアルカンチオールとリガンドを共有結合さ
せておき、これを用いて上記基板を作製することも可能
である。リガンドは、タンパク質、ペプチド、アミノ
酸、糖、脂質、核酸及び有機化合物等の中から適宜選択
することができ、これらに特異的に結合するタンパク質
としては、抗体、タンパク性の抗原、酵素、受容体、D
NA結合タンパク質、細胞内のシグナル伝達に関与する
タンパク質又はそれらの一部(ドメイン)等が挙げられ
る。
【0017】一つの基板上に固定化するリガンドの数は
一種又はそれ以上任意の数とすることができ、例えば、
図3に示した質量分析計のプローブの各穴に同一の、又
はそれぞれ別のリガンドを固定化して使用することもで
きる。同一のリガンドを固定化した複数の基板を用いる
場合には、複数の候補タンパク質の中から前記リガンド
と分子間相互作用するものを効率よくスクリーニングす
ることができる。一方、複数のリガンドを固定化した基
板を用いる場合には、同一の試料を用いて前記複数のリ
ガンドとの相互作用の差異を検出することができる。試
料中のタンパク質は1種でも複数を同時に含んでいても
よい。基板上の各穴の大きさも照射するレーザー光との
衝突面積を考慮して適宜設定することができる。
【0018】(タンパク質試料の調製とリガンドとの接
触)タンパク質試料は、固体でも液体でも良いが一般的
には液体、特に水溶液の状態が好ましい。固体状のタン
パク質は、適当な溶媒に溶かして液状にすることができ
る。これらは生物材料であっても良いし、化学合成した
ものであっても良い。タンパク質は一般的には生物材料
由来のものであり、組織や細胞から抽出されるが、簡便
には血清中のタンパク質を用いることもできる。好まし
くは特定の遺伝子に由来するタンパク質を組換えDNA
技術を用いて宿主細胞で合成させて用いられる。遺伝子
は、ゲノムDNAのシークエンスが公知の場合には、こ
れらの情報を基にして種々の方法で合成することができ
る。例えば、ゲノムDNAに基づくcDNAを鋳型とし
て目的の遺伝子をPCRにより増幅し、これらを発現ベ
クターにクローニングした後、適当な宿主細胞を形質転
換して当該形質転換細胞内で目的タンパク質を発現させ
る。
【0019】本発明の一つの実施形態において、無細胞
タンパク質合成系を用いて候補タンパク質を合成するこ
とができる。ゲノム解析の結果新規に見出された、構造
や機能が未知のタンパク質について、特定のリガンドと
の相互作用を検出するためには、無細胞タンパク質合成
系を用いてこれらの候補タンパク質を合成し、本発明の
スクリーニングを行うことが極めて効率的である。無細
胞タンパク質合成系は、細胞抽出液を用いて試験管内で
タンパク質を合成する系であり、上記細胞抽出液として
は、リボゾーム、t-RNA等のタンパク質合成に必要な成
分を含む、従来より公知の真核細胞又は原核細胞の抽出
液が使用可能である。好ましくは小麦胚芽や大腸菌由来
のもの(例えば大腸菌S30細胞抽出液)又は高度好熱菌
(Thermusthermophilus)由来のものが高い合成量を得る
点において好ましい。この大腸菌S30細胞抽出液は、
大腸菌A19(rna, met), BL21, BL21 star, BL21 codo
nplus株等から公知の方法(Pratt, J.M. et al., Trans
cription and translation - a practical approach,
(1984), pp.179-209, Henes, B.D.とHiggins, S.J.編、
IRL Press, Oxford参照)に従って調製でき、又はProme
ga社、Novagen社又はRoche社から市販されるものを使用
してもよい。
【0020】無細胞タンパク質合成系には、バッチ法、
フロー法の他、従来公知の技術がいずれも適用可能であ
り、例えば限外濾過膜法や透析膜法、樹脂に翻訳鋳型を
固定化したカラムクロマト法等(Spirin, A.ら、Meth.
In Enzymol. 217巻、123〜142頁、1993年
参照)を挙げることができる。また、本発明の方法に用
いる基板表面で(例えば図3に示したような基板の各ウ
エル内を基板表面とし、これに細胞抽出液と鋳型遺伝子
を導入して)タンパク質を合成し、高機能化された基板
表面でタンパク質合成から検出同定までを一括して行う
こともできる。
【0021】(洗浄)上記タンパク質を基板表面と接触
させ、リガンドと特異的に吸着させた後、当該基板を溶
出液によって洗浄する。一般的な洗浄方法としては、緩
衝溶液、食塩、界面活性剤等を使用して非特異的な吸着
物を除去する方法が考えられるが、これらの無機塩はイ
オン化抑制効果があるため後続する質量分析法による検
出を困難にする。即ち、MALDI−TOF型質量分析
装置に試料を塗布する際、十分な脱塩操作を行わないと
夾雑する無機塩にイオン化エネルギーを奪われ、タンパ
ク質試料のイオン化が阻害されるからである。本発明の
好ましい実施形態において、洗浄過程は水のみで行うこ
とができる。これは、平滑な基板表面を一定の密度で官
能基がすべて同じ方向を向いているので、高い確率で特
異的に相互作用するものを捕捉でき、且つPEGの低い
非特異的吸着の相乗効果で、水というもっとも普遍的な
溶媒で洗浄することができるからである。これによっ
て、不純物の洗浄と同時に脱塩操作も行うことができ、
操作の簡便性と共に著しく効率を上げることが可能とな
る。
【0022】(質量分析法による解析)洗浄後の基板上
に保持されたタンパク質は、リガンドと特異的に結合し
たものであり、質量分析法により解析することができ
る。質量分析法により解析するためには、基板表面に保
持されたタンパク質を適当なエネルギー源にさらし脱着
させる。通常は、光エネルギー、特にレーザービームを
照射することによって与えられる。
【0023】このような質量分析方法の一つとしてMA
LDI−TOF/MS(matrix-assisted laser desorpt
ion ionization time-of-flight/mass spectrometry)が
知られている。タンパク質試料とシナピン酸(Sinapinic
acid: 3,5-Dimethoxy-4-hydroxycinnamic acid)等のレ
ーザー光を吸収するマトリクスとの混合、乾燥後に強力
なパルスレーザー光を照射し、マトリクスからのエネル
ギー移動によるタンパク質試料のイオン化を行い、初期
加速による試料分子イオンの飛行時間差でイオンの分子
量を分析する方法である。
【0024】別のイオン化法としては、ESI(electro
spray ionization)法が知られ、また、質量分離法とし
ては四重極(quadrupole:Q)型、イオントラップ(ion tra
p)型等を利用することができる。これらのイオン化法と
質量分離法とを適宜組合わせたり、質量分離部を複数連
結したタンデム質量分析法(MS/MS)として利用すること
もできる。
【0025】(リガンドと分子間で相互作用するタンパ
ク質のスクリーニング)本発明の一つの実施形態におい
て、(a)ポリエチレングリコールアルカンチオールを
用いた混合自己組織化膜で被覆された平滑な基板表面に
リガンドを精密配列させる工程、(b)前記リガンドを
固定化した基板表面と候補タンパク質とを接触させる工
程、(c)前記タンパク質と接触させた基板表面を水で
洗浄する工程、(d)前記洗浄された基板を用いてMA
LDI−TOF型質量分析計により質量分析を行う工
程、及び(e)前記候補タンパク質が工程(d)で検出
されるか否かを判定する工程、を含むことを特徴とす
る、前記リガンドとの分子間相互作用を有するタンパク
質をスクリーニングする方法が提供される。図1はこの
形態を模式的に示す。図1において、金をコートした平
滑な基板表面は上記に詳細に説明したように、単分子層
の混合自己組織化膜(Mixed Self-Assembled Monolayer
s)を用いてその表面が被覆され、続いてリガンドが固定
化される。タンパク質としばらく接触させた後、水で洗
浄し、リガンドと特異的に結合したタンパク質のみが質
量分析法による検出工程に供される。
【0026】タンパク質分子間又はタンパク質とペプチ
ドや他の低分子との間の相互作用は、タンパク質が分子
機能、生物機能を果たす第一歩であり、例えば生体内に
おける物質代謝やシグナル伝達において重要な役割を果
たしている。具体的には、ホルモンとその受容体、細胞
増殖因子と制御因子、遺伝子の発現調節因子間の相互作
用等が挙げられるがこれらに限定されない。ハイスルー
プットなスクリーニングが可能になると、上記のような
機能が明らかでないタンパク質の機能解明や、相互作用
するタンパク質が不明の生理活性化合物のスクリーニン
グ等の研究が促進される(廣田洋、伊藤隆司、実験医
学、第19巻(8)、958-962、2001年参照)。
【0027】本発明において、シグナル伝達とは、細胞
が外界からいろいろなシグナル(ホルモン、増殖因子、
サイトカイン等)をそれぞれに特異的な受容体を介して
受け取り、細胞内の多数の複雑な反応を経由して核へ伝
えて、増殖、分化、移動、細胞死(アポトーシス)など
を開始することをいう。細胞内でシグナルが受け渡され
る経路をシグナル伝達経路といい、シグナルの種類、細
胞の型や状態等によって異なる。シグナル伝達経路の入
口となる受容体は大別して3型ある。イオンチャネル型
は主として神経細胞のシナプス部分にあって、神経伝達
物質が結合するとイオンチャネルが短時間開閉して興奮
を伝える。Gタンパク質共役型はホルモンの受容体に多
く、受容体からのシグナルが三量体型Gタンパク質を経
由してcAMPやIP等のセカンドメッセンジャーの
増加を引き起こす。酵素結合型には受容体自体がプロテ
インキナーゼであるもの(受容体型チロシンキナーゼ)と
シグナル分子が結合するとチロシンキナーゼを活性化す
るもの(JAK−STAT系)とがあり、前者は主に増
殖因子の、後者は(狭義の)サイトカインの受容体であ
る。タンパク質のリン酸化という情報は、SH2ドメイ
ンをもついろいろなプロテインキナーゼ等によって認識
され、シグナルが先へ伝えられる。最後に活性化された
プロテインキナーゼが核内に移行して転写因子をリン酸
化(あるいは細胞質内でリン酸化された転写因子が核内
に移行)して特定の遺伝子の転写を促進する。
【0028】SHドメインとは、Src相同領域のことで
ある。プロトオンコジーンの一つsrc遺伝子産物(Src)
は、チロシンキナーゼ活性をもち、Src自体のチロシン
もリン酸化される。他のチロシンキナーゼ活性をもつが
ん遺伝子産物やシグナル伝達経路にかかわる因子の研究
過程で、Srcタンパク質と構造が類似していて、タンパ
ク質分子間の相互作用に重要な働きをする領域(ドメイ
ン)が発見され、Src相同領域(SH1〜3)と呼ばれ
るようになった。そのうちSH1ドメインはチロシンキ
ナーゼ領域である。SH2ドメインは近隣のタンパク質
のリン酸化されたチロシンを認識して結合する。また、
SH3ドメインはプロリンに富むペプチドを認識して相
互作用することが知られている。本発明の方法を用いる
ことによって、このようなタンパク質分子間の相互作用
を極めて効率的に解析することができ、特定のリガンド
と結合する新規なタンパク質を見出し、又は既知のタン
パク質の結合領域(ドメイン)を同定することによっ
て、これらのシグナル伝達機構を調節する薬剤の開発や
病気の治療方法につながる。
【0029】更に、本発明の方法によって、タンパク質
発現プロファイリングの解析を行うことも可能となる。
タンパク質発現プロファイリング方法としてはDNAマ
イクロアレイを用いる方法が知られているが、この方法
は細胞内の転写産物を増幅しなければならないため手間
がかかり、測定再現性についても多くの問題が残されて
いる。遺伝子はタンパク質に翻訳されて初めてその機能
を発揮するので、DNAマイクロアレイのように転写産
物を調べるよりも細胞内のタンパク質を直接調べる方が
より現実を反映していると考えられる。しかし、タンパ
ク質はその構造の多様性、相互作用する相手の複雑性に
対処しなければならないので、これを検出することはD
NAマイクロアレイ法よりもはるかに困難である。ま
た、タンパク質はプロテアーゼによる分解を受けるの
で、抽出後、速やかに解析しなければならない。即ち、
組織からの抽出、展開、洗浄、検出を短時間で行わなけ
ればならないと考えられる。本発明のスクリーニング方
法はこれらの観点から極めて優れた方法を提供する。
【0030】(リガンド固定化基板)ポリエチレングリ
コールアルカンチオールを用いた混合自己組織化膜で被
覆された平滑な基板表面にリガンドを精密配列させたリ
ガンド固定化基板は、上記本発明のスクリーニング方法
に使用することができ、タンパク質の分子間相互作用を
解析する研究手段として極めて有用である。例えば、あ
らかじめ種々のペプチドをリガンドとして固定化してお
くことによって、試料として用いたタンパク質の結合特
異性を調べることができる。これらのタンパク質として
は、抗体や酵素、又は上記シグナル伝達に関与するタン
パク質又はその一部(ドメイン)を対象とすることがで
きる。
【0031】一つの実施形態として、特定のタンパク質
分子間相互作用を介して細胞内のシグナル伝達に関与す
る多くのタンパク質に見出されるSrc相同領域(SH2
又はSH3ドメイン)と結合するリガンドを固定化した
基板が提供される。SH2ドメインと結合するリガンド
としてはリン酸化されたチロシン残基、又はこれを含む
2〜10アミノ酸残基のペプチドを用いることができ、
好ましくはリン酸化チロシンを含むC末端側の4アミノ
酸残基、例えばpYEEI(配列番号2)等が挙げられ
る。また、SH3ドメインと結合するリガンドとしては
プロリンに富むペプチド、例えばRKLPPRPAF
(配列番号3)やVPPPVPPRRR(配列番号4)
等のようなペプチドが挙げられる。
【0032】
【実施例】以下の実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。
【0033】(実施例1)基板表面の粗さの解析 MALDI/TOF型質量分析装置のターゲット表面を
優秀な研磨技術者により可能な限り平滑に研磨した後、
その表面にクロムメッキを施し、2000Åの厚さで金を真
空蒸着した。その表面を原子間力顕微鏡(AFM)Nano
Scope IIIa Dimension 3000(Digital Instruments社
製)を用いて大気中タッピングモードで測定して表面の
粗さを解析したところ、平均粗さ度(Mean roughness:R
a)は3.821 nm、最大高さ(Max height:Rmax)は40.048 nm
であった。一方、ガラス表面に金を真空蒸着した基板表
面を同じように測定したところ、平均粗さ度(Mean roug
hness: Ra)は0.367 nm、最大高さ(Max height: Rmax)は
6.919 nmであった。この結果より、以下の実施例におい
ては、ガラス表面に金を真空蒸着した基板を用いてリガ
ンドを固定化し、これと相互作用するタンパク質のスク
リーニング方法について検討した。なお、上述した金属
基板を用いた場合には非特異的な吸着が大きく、データ
の解析が不可能であった。
【0034】(実施例2)混合自己組織化膜の合成 膜成分についてはLahiriらの方法(前掲)にしたがっ
た。自己組織化に必要なC11のアルキル鎖に親水性を
加えるために一方にエチレングリコールユニット、もう
一端をSH基で修飾した。リガンドを固定する活性型の
膜構成成分にはエチレングリコール6単位(EG6)、
固定しない非活性型の膜構成成分にはエチレングリコー
ル3単位(EG3)とした。また活性型の末端はカルボ
キシメチル化し、これをもとに用途に応じて各種官能基
化することにした。
【0035】
【化1】
【0036】11-Bromoundec-1-ene (化合物1)とHexaet
hylene glycol (化合物2)をN,N’−ジメチルホルム
アミド(DMF)中、水素化ナトリウム(NaH)を作
用させて縮合させ、Undec-1-ene-1-yl-hexaethylene gl
ycol (化合物3)を得た。化合物3に対しt-butyl-bromo
acetate (化合物4) を同じ条件で反応させ、3, 6,9, 1
2, 15, 18, 21-Heptaoxadoriacont-31-enoic acid, 1,
1-dimethyl ethyl ester(化合物5)とし、トリフルオ
ロ酢酸(TFA)による脱保護を経た後にチオ酢酸(A
cSH)をAIBN(2,2'-Azobisisobutyronitrile)存
在下メタノール中でUV照射によりラジカルカップリン
グさせ、(2-{2-[2-(2-{2-[2-(11-Acetylsulfanyl-undec
yloxy)-ethoxy]-ethoxy}-ethoxy)-ethoxy]-ethoxy}-eth
oxy)-acetic acid (化合物7)を得た。この時副生成物
としてメチルエステル体(化合物8)が得られた。また
NH活性型膜構成成分と非活性型の膜構成成分につい
ても同様にしてそれぞれ合成した(化合物11及び1
4)。
【0037】
【化2】
【0038】
【化3】
【0039】(実施例3)混合自己組織化膜の調製
【0040】
【化4】
【0041】活性型と非活性型の膜構成成分を2:98
の比率で混合し、SH基の脱保護を行った(化合物15
及び16)。またコントロールとして末端がOH基のみ
の自己組織化膜の調製も試みた(化合物17)。脱保護
と後処理については活性型膜構成分の官能基の違いによ
り、それぞれ2種類の方法で行った。SH基の脱保護の
みならメタノール中でナトリウムメトキシド(NaOM
e)で、メチルエステルの脱保護を伴うものはメタノー
ル中で水酸化リチウム(LiOH)を用いた。また後処
理についてはNH基があるものについては1N−塩酸
(HCl)で中和し、窒素ガスで吹きつけて乾燥させ
た。それ以外のものは陽イオン交換樹脂Dowex 50wx-8を
混ぜてろ過することで塩基を取り除いた。脱保護した化
合物15、16、17については2mMとなるようにエ
タノール溶液を調製した。実施例1で作製したガラス表
面に金を蒸着した基板についてはオゾン水中で30分間
超音波洗浄後、窒素ガスを吹きつけて乾燥させ、直ちに
混合自己組織化膜のエタノール溶液中に12時間以上浸
漬した。基板をエタノール溶液から引き上げた後にメタ
ノールで2分間超音波洗浄後、窒素ガスを吹きつけて乾
燥させた。
【0042】(実施例4)リガンドの固定化 モデルシステムとして、ヒトホスファチジルイノシトー
ル3−キナーゼp85aサブユニットの1−85残基の
N末にGSの2残基を付加した以下の配列を有するPI3K
-SH3ドメイン(配列番号1)とそのリガンドペプチド
(配列番号3)でシステムの有用性を証明した。
【0043】配列番号1:GSMSAEGYQYRALYDYKKEREEDIDL
HLGDILTVNKGSLVALGFSDGQEARPEEIGWLNGYNETTGERGDFPGTYV
EYIGRKKISPP(平均分子量9763.8)
【0044】配列番号3:RKLPPRPAF
【0045】リガンドペプチドはペプチド自動合成装
置、PSSM−8(島津製作所製)を用いてPyBOP/HOBt
法で合成した。p85a PI3K-SH3ドメインとRKLPPRPAFの結
合定数はアフィニティーキャピラリー電気泳動法にてK
= (5.4±0.098) nM-1と算出した。このペプチドを基
板上に固定する方法として、まず、液相中でリガンドペ
プチドと活性型膜構成成分を縮合させてから基板上に固
定する方法を用いた。
【0046】
【化5】
【0047】リガンドペプチドはC末端で基板に固定す
るためN末端と側鎖のアミノ基をFmoc(9-Fluorenyl
methoxycarbonyl)基で保護した。次に鍵中間体であるカ
ルボン酸(6)にN-(6-Aminohexyl)carbamic Acid t-bu
tyl Esterをニ塩化エチレン(EDC)を用いて縮合さ
せ化合物20とし、TFAでBoc(tert-Butoxycarbon
yl)基を脱保護し、アミノ体21とした。そして化合物
19と21をHATU/HOAtを用いて縮合させ(化
合物22)、さらにラジカル反応でSAc基を導入した
(化合物23)。化合物23を2%の濃度にして非活性
型膜構成成分14を混ぜてメタノール中NaOMeで脱
アセチル化した後に2mMのエタノール溶液を調製し、
同様に基板を浸漬して混合自己組織化膜をはった。この
ときFmoc基も同時に脱保護された。
【0048】
【化6】
【0049】(実施例5)混合自己組織化膜を被覆した
基板上での固相ペプチド合成によるリガンドの固定化 一方、2mMの濃度に調整したFmocRK(Fmoc)LPPRPAF/HA
TU/HOAt/DIEAのDMF溶液(1ml)にNH基板をい
れて2時間超音波処理を行った。基板を引き上げてメタ
ノール中で超音波洗浄を行い、20%ピペリジン/DM
F中で30分間超音波処理し、Fmoc基を外した。こ
れにより、基板上でペプチドを固相合成することも確認
できた。
【0050】(実施例6)スクリーニング 実施例4の方法によって自己組織化膜をはった基板をも
ちいて電子顕微鏡用のカーボンテープでMALDI/T
OF用のターゲットに固定し、シリコンと塩化ビニルで
できた型を貼り合せ、四隅をクリップで固定した(図3
参照)。
【0051】一回のスクリーニングでは4種類のチップ
を用いた。ペプチドリガンド(RKLPPRPAF)チップ(R)、
NHチップ(N)、OHチップ(O)、及び金表面のみの
チップ(A)にそれぞれPI3K-SH3ドメイン (5−R、N、
O、A) とミオグロビン(6−R、N、O、A) をのせ
て30分間インキュベーションし、ピペットでタンパク溶
液を排出し、10mlの水で一回ピペッティングした
後、マトリックスと混合・乾燥し、レーザーを照射して
イオン化した。
【0052】PI3K-SH3ドメインは、ヒトPI3K p85αサブ
ユニットのSrc相同領域(SH3)であり、多次元NM
Rによる立体構造とリガンドとの結合様式等が報告され
ている(Koyama S. et al., Cell, 1993, 72(6), 945-5
2)。N末端の1−85アミノ酸残基部分をコードする塩
基配列をポリメラーゼ連鎖反応で増幅し、その後発現ベ
クターpGEX4T-3に組み込んだ。このようにして構築した
発現プラスミドpGEX4T-3-SH3を大腸菌DH5αに形質転換
し、終濃度50μg/mlのアンピシリンを含む500ml
の2xYT培地中、37℃で大量培養を行った。培養液
の光学密度(OD60 0)が0.7に達した時に、IPTGを
終濃度0.5mMになるように添加し、GST融合SH
3タンパク質の発現を誘導した。誘導開始6時間後の培
地から約1.6グラムの菌体を回収した。この菌体を緩
衝液(50mM Tris-HCl(pH8.0), 50mMNaCl, 1mM EDTA, 1m
M DTT, 1mM PMSF)に懸濁し、懸濁液を超音波処理にかけ
て大腸菌を破砕した。GST融合SH3タンパク質を可
溶化させるため、Triton X-100を終濃度1%になるよう
に加えて4℃で30分間混合した。混合液を4℃で15,0
00 rpm、15分間遠心分離し、可溶性画分を回収した。
Glutathione Sepharose 4B beads (Amersham Pharmacia
社)を用いて精製したGST融合SH3タンパク質をト
ロンビンでGST部分とSH3ドメインに切断し、その
後、陰イオン交換カラム(Resource Q; Amersham Pharm
acia社)で組換えSH3タンパク質とGSTタンパク質
を分離した。得られた組換えSH3タンパク質は、約1.
3mg/mlになるようにMicrocon YM-3(Amicon社)を用いて
濃縮し、SDS−PAGEで純度検定を行った。また、
アミノ酸シークエンサー分析の結果、N末端から10残
基のアミノ酸配列が確認できた。すなわち、SH3タン
パク質のN末端にGSTタンパク質のC末端アミノ酸2
残基(グリシンとセリン)が付加していることが確認で
きた。さらに、このSH3タンパク質の分子量をアプラ
イドバイオシステムズ社ESI/QSTAR−TOF質
量分析装置で確認したところ、推定分子量9,763.8と非
常に近い値9762.9が実測された。
【0053】このようにして合成したPI3K-SH3ドメイン
又はミオグロビンを含むタンパク溶液をそれぞれ以下の
表1及び表2に示す組成で調製した。
【0054】
【表1】 PI3K-SH3ドメインを含むタンパク質溶液
【0055】
【表2】 ミオグロビンを含むタンパク質溶液
【0056】最初に分子量校正のためスクリーニング操
作をしないPI3K-SH3ドメインとミオグロビン(Myoglobi
n)を測定し、それらのマススペクトルデータを図4及
び図5に示した。ミオグロビンの分子量(図5において
1価イオンのピークがm/z=16951.48、2価イオンのピー
クがm/z=8475.74に検出される。)を外部標準として用
いた。
【0057】この結果ペプチドリガンドチップにはPI3K
-SH3ドメインが相互作用していることが図6に示したマ
ススペクトルデータ(m/z=9763.82に検出されるピー
ク)から判定でき、他にOHチップに僅かにイオンピー
クが観測されるのみで(図10参照)混合自己組織化膜
の優れた選択性を示した。インキュベーション後の洗浄
操作も水で一回ピペッティングすることで達成されるの
で、高速化、汎用化に必要十分な要素が備わったことに
なる。また一回のスクリーニングに消費したタンパク質
は65mMの濃度で2mlすなわち130pmolで可能
であることも示している。実際はその9割以上を回収し
ているので実際の消費量はそれ以下であった。また対照
実験で行ったミオグロビンについてはR、N、O、Aの
どのチップでもイオンピークは観測できなかった(図
7、9,11,13参照)。
【0058】
【発明の効果】本発明の方法によって、タンパク質やペ
プチド等のリガンドと分子間相互作用するタンパク質を
高速且つ簡便にスクリーニングすることができる。これ
により、ゲノム解析の結果得られた数多くのタンパク質
の生体内での分子機能を系統的且つ網羅的に解析するこ
とができる。その結果、例えば特定の病気に関与するタ
ンパク質の活性発現部位、発現機構を知ることができる
ようになれば、それによって病気にきめ細かく対処する
ことも可能になり、またそのタンパク質を選択的・特異
的に標的とする医薬の設計・開発にも繋がる。
【0059】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> RIKEN <120> Method for screening protein having inter-molecular interaction with ligand <130> RJH13-179T <140> <141> <160> 4 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 87 <212> PRT <213> Homo sapiens <400> 1 Gly Ser Met Ser Ala Glu Gly Tyr Gln Tyr Arg Ala Leu Tyr Asp Tyr 1 5 10 15 Lys Lys Glu Arg Glu Glu Asp Ile Asp Leu His Leu Gly Asp Ile Leu 20 25 30 Thr Val Asn Lys Gly Ser Leu Val Ala Leu Gly Phe Ser Asp Gly Gln 35 40 45 Glu Ala Arg Pro Glu Glu Ile Gly Trp Leu Asn Gly Tyr Asn Glu Thr 50 55 60 Thr Gly Glu Arg Gly Asp Phe Pro Gly Thr Tyr Val Glu Tyr Ile Gly 65 70 75 80 Arg Lys Lys Ile Ser Pro Pro 85 <210> 2 <211> 4 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <221> MOD_RES <222> (1) <223> PHOSPHORYLATION <400> 2 Tyr Glu Glu Ile 1 <210> 3 <211> 9 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: a peptide ligand for SH3 domain <400> 3 Arg Lys Leu Pro Pro Arg Pro Ala Phe 1 5 <210> 4 <211> 10 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence: a peptide ligand for SH3 domain <400> 4 Val Pro Pro Pro Val Pro Pro Arg Arg Arg 1 5 10
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスクリーニング方法を説明するための
模式図である。
【図2】本発明の一実施形態において基板表面を被覆す
る混合自己組織化膜の構造を示したものである。
【図3】本発明の一実施形態において質量分析法による
質量数の測定に用いるプローブを示したものである。
【図4】対照実験としてスクリーニング操作をせずにPI
3K-SH3ドメインを質量分析した結果(マススペクトルデ
ータ)である。
【図5】対照実験としてスクリーニング操作をせずにミ
オグロビンを質量分析した結果(マススペクトルデー
タ)である。
【図6】本発明の方法により、RKLPPRPAFペプチドを固
定化した基板を用いて、PI3K-SH3ドメインを含む試料を
スクリーニングした結果(マススペクトルデータ)であ
る。
【図7】本発明の方法により、RKLPPRPAFペプチドを固
定化した基板を用いてミオグロビンを含む試料をスクリ
ーニングした結果(マススペクトルデータ)である。
【図8】対照実験として、NHチップを用いて、PI3K
-SH3ドメインを含む試料をスクリーニングした結果(マ
ススペクトルデータ)である。
【図9】対照実験として、NHチップを用いて、ミオ
グロビンを含む試料をスクリーニングした結果(マスス
ペクトルデータ)である。
【図10】対象実験として、OHチップを用いて、PI3K
-SH3ドメインを含む試料をスクリーニングした結果(マ
ススペクトルデータ)である。
【図11】対照実験として、OHチップを用いて、ミオ
グロビンを含む試料をスクリーニングした結果(マスス
ペクトルデータ)である。
【図12】対照実験として、金表面のみのチップを用い
て、PI3K-SH3ドメインを含む試料をスクリーニングした
結果(マススペクトルデータ)である。
【図13】対照実験として、金表面のみのチップを用い
て、ミオグロビンを含む試料をスクリーニングした結果
(マススペクトルデータ)である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/68 ZNA G01N 33/68 ZNA // C12N 15/09 C12Q 1/68 A C12Q 1/68 C12N 15/00 F (72)発明者 淺沼 三和子 神奈川県横浜市鶴見区末広町1丁目7番22 号 理化学研究所 横浜研究所内 (72)発明者 横山 茂之 神奈川県横浜市鶴見区末広町1丁目7番22 号 理化学研究所 横浜研究所内 Fターム(参考) 2G045 DA13 DA36 FA11 4B024 AA11 BA80 CA01 HA11 4B029 AA07 AA23 BB15 CC11 FA10 FA12 4B063 QA18 QA19 QQ02 QQ79 QQ96 QR48 QR55 QR84 QS32 QX02

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】単分子膜で被覆した平滑な表面にリガンド
    を精密配列させた基板と、タンパク質とを接触させ、前
    記基板表面に特異的に吸着したタンパク質を質量分析法
    により解析することを特徴とする、前記リガンドとの分
    子間相互作用を有するタンパク質のスクリーニング方
    法。
  2. 【請求項2】前記単分子膜が、ポリエチレングリコール
    アルカンチオールを用いた混合自己組織化膜である請求
    項1に記載のスクリーニング方法。
  3. 【請求項3】前記タンパク質と接触させた基板表面を水
    で洗浄することにより夾雑物の除去と脱塩を行う請求項
    1又は2に記載のスクリーニング方法。
  4. 【請求項4】前記質量分析法による解析が、前記タンパ
    ク質を特異的に吸着した基板を用いてMALDI−TO
    F質量分析法により質量数を測定することである請求項
    1〜3何れか一項に記載のスクリーニング方法。
  5. 【請求項5】前記タンパク質が、無細胞タンパク質合成
    系を用いて合成されたタンパク質又はタンパク質ドメイ
    ンである請求項1〜4何れか一項に記載のスクリーニン
    グ方法。
  6. 【請求項6】前記リガンドがタンパク質、ペプチド、ア
    ミノ酸、糖、脂質、核酸及び有機化合物からなる群から
    選択されるものである請求項1〜5何れか一項に記載の
    スクリーニング方法。
  7. 【請求項7】ポリエチレングリコールアルカンチオール
    を用いた混合自己組織化膜で被覆した平滑な基板表面に
    リガンドを精密配列させたリガンド固定化基板。
  8. 【請求項8】前記リガンドが、細胞内のシグナル伝達タ
    ンパク質のSH2ドメイン又はSH3ドメインと結合す
    るアミノ酸又はペプチドである請求項7に記載のリガン
    ド固定化基板。
  9. 【請求項9】請求項7又は8に記載のリガンド固定化基
    板と、タンパク質とを接触させ、前記基板表面に特異的
    に吸着したタンパク質を質量分析法により解析すること
    を特徴とする、前記リガンドとの分子間相互作用を有す
    るタンパク質のスクリーニング方法。
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