JP2007125548A - 基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する工程を含む、有機薄膜の製造方法 - Google Patents

基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する工程を含む、有機薄膜の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】製造時間が短縮され、様々な大きさの基材への対応が容易であって、かつ基材が複雑な三次元構造体であっても基材をムラなく洗浄することが可能な、有機薄膜の製造方法を提供すること。
【解決手段】基材表面に有機薄膜を形成する有機薄膜の製造方法であって、基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する工程(A)を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法。好ましくは、オゾン水中のオゾンの濃度が、5〜100ppm、過酸化水素水中の過酸化水素の濃度が1〜30重量%であることを特徴とする有機薄膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、有機薄膜の製造方法に関するものであり、特に、基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する工程を含む、有機薄膜の製造方法に関するものである。
基板等の基材表面に有機薄膜を形成する方法として、様々な方法が知られている。例えば、特許文献1には、活性水素を含む基材の表面上への化学吸着膜製造方法において、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤を、有機溶媒中、金属酸化物、または金属アルコキシド部分加水分解生成物と水で処理した溶液を、前記基材表面に接触させる工程を有することを特徴とする化学吸着膜の製造方法が開示されている。また、特許文献2には、金属原子上に炭化水素基、加水分解性基または水酸基を有する金属化合物、金属系触媒、水を含む有機溶媒溶液を基板に接触させる工程を含む有機薄膜製造方法において、該溶液中の該金属化合物濃度を5〜15ミリモル/kgの範囲とし、金属系触媒を酸化物換算で該金属化合物に対して1〜20モル%の範囲とし、該溶液中の水の濃度を50〜500ppmの範囲とすることを特徴とする有機薄膜製造方法が開示されている。
これらの有機薄膜を製造する際、基材表面に有機薄膜を形成させる前に、基材表面の有機物を分解したり、基材表面に酸化被膜を形成させる目的で、基材にオゾンガス処理が施されることが多かった。オゾンガス処理は、作業員が基材をオゾンガス発生装置内に設置し、オゾンガス発生装置を作動させ、Oガスに紫外線を照射するなどしてオゾンガスを発生させ、オゾンガスと基材とを接触させることにより通常行われていた。
有機薄膜の製造工程において、オゾンガス処理以外の工程は、自動化することが可能であるのに対し、オゾンガス処理工程は、作業員自らが基材をオゾンガス発生装置に設置し、その処理後に該装置から該基材を取り出す必要があり、有機薄膜の製造工程において、自動化することができない工程であった。また、オゾンガス処理工程は、有機薄膜の製造に関する他の工程に比べて処理効率が低く、オゾンガス処理が律速工程となっていた。また、基材が大きい場合、所有しているオゾンガス処理装置内に設置できない場合が生じたりする一方、大きな基材も設置することが可能なオゾンガス処理装置は非常に高価であった。さらに、基材が複雑な三次元構造体である場合は特に、オゾンガス処理にムラが生じることが多く、オゾンガス処理が十分でない部分については、有機薄膜が基材表面上にきれいには形成されないという欠点があった。
一方、オゾンは、強力な酸化能を有する物質であり、その酸化能を利用して、殺菌剤、脱臭剤、脱色剤等の用途が種々提案されている。例えば、特許文献3には、オゾンガス又はオゾン水を利用して、容器、配管類を洗浄する方法が開示されている。また、特許文献4には、半導体ウェハの洗浄処理方法であって、オゾン水、アルカリイオン水、酸性イオン水等の機能水の1種又は2種以上の機能水をスピン回転機構に保持させた被処理体上に供給し、次いで、この被処理体上にエキシマランプを一定時間照射して機能水の洗浄反応を促進させると共に、前記スピン回転機構を介して適宜の工程中に被処理体を回転させながら洗浄するようにしたことを特徴とする被処理体の洗浄処理方法が開示されている。このように、半導体ウェハ上にシリコンや金属被膜を形成する際に、その半導体ウェハの洗浄にオゾン水を利用することは知られていた。
しかし、基材表面に有機薄膜を形成する有機薄膜の製造において、その基材の洗浄にオゾン水を用いることは知られていなかった。同様に、有機薄膜の製造において、その基材の洗浄に過酸化水素水を用いることも知られていない。
国際公開第03/076064号パンフレット 特開2005−177533号公報 特開2005−131453号公報 国際公開第02/101808号パンフレット
本発明の課題は、製造時間が短縮され、様々な大きさの基材への対応が容易であって、かつ基材が複雑な三次元構造体であっても基材をムラなく洗浄することが可能な、有機薄膜の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、基材表面に有機薄膜を形成する有機薄膜の製造方法において、基材の洗浄にオゾン水又は過酸化水素水を用いることによって、製造時間が短縮され、様々な大きさの基材への対応が容易であって、かつ基材が複雑な三次元構造体であっても基材をムラなく洗浄することが可能な、有機薄膜の製造方法が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、
(1)基材表面に有機薄膜を形成する有機薄膜の製造方法であって、基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する工程(A)を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法、
(2)有機薄膜を形成させる工程(B)を工程(A)より後にさらに有することを特徴とする前記(1)に記載の有機薄膜の製造方法、
(3)工程(B)が、工程(A)で処理された基材表面に有機薄膜を形成させる工程(B−1)であることを特徴とする前記(2)に記載の有機薄膜の製造方法、
(4)オゾン水中のオゾンの濃度が、5〜100ppm、又は過酸化水素水中の過酸化水素の濃度が1〜30重量%の範囲内であることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(5)工程(B)が、真空蒸着法、液相成長法、化学気相成長法、ラングミュア法、スパッタリング法、ディップ法、スプレーコート、スピンコート、ローラーコート、刷毛塗り及びスクリーン印刷からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法を用いることを特徴とする前記(2)〜(4)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(6)工程(B)が、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機溶媒溶液に、ディップ法を用いて前記基材を接触させることを含む工程(B−2)であることを特徴とする前記(2)〜(5)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(7)基材を蒸留水で洗浄する工程(C)、及び/又は基材を有機溶媒で洗浄する工程(D)を、工程(A)より前及び/又は後にさらに有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(8)接触させた基材を有機溶媒で洗浄する工程(E)、工程(E)で洗浄した基材を乾燥する工程(F)を、工程(B)より後にさらに有することを特徴とする前記(2)〜(7)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(9)少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤が、式(I)
MXm−n (I)
〔式中、R1は、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、置換基を有し
ていてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基、連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基、又は連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表し、mはMの原子価を表す。nは、1から(m−1)のいずれかの正整数を表し、nが2以上の場合、R1は、同一でも相異なっていてもよい。(m−n)が2以上の場合、Xは同一で
あっても、相異なっていてもよいが、Xのうち、少なくとも一個は加水分解性基である。〕で表される化合物であることを特徴とする前記(6)〜(8)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(10)式(I)で表される化合物が、式(II)

〔式中、M、X及びmは前記と同じ意味を表す。R21〜R23、R31及びR32は、
それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、Rは、アルキレン基、ビニレン基、エチニレン基、アリーレン基、又はケイ素原子及び/若しくは酸素原子を含む2価の連結基を表す。Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、含フッ素アルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。pは0又は自然数を表し、qは0又は1を表す。pが2以上のとき、式:C(R31)(R32)で表される基は同一であっても異なっていてもよい。rは0又は1から(m−2)のいずれかの正整数を表し、rが2以上のとき、Yは同一でも相異なっていてもよく、(m−r−1)が2以上のとき、Xは同一でも相異なっていてもよい。但し、Y及びXのうち、少なくとも一個は水酸基又は加水分解性基である。〕で表される化合物であることを特徴とする前記(9)に記載の有機薄膜の製造方法、
(11)金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化又は配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;シラノール縮合触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(6)〜(10)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(12)金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化又は配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物、及びシラノール縮合触媒における金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする前記(11)に記載の有機薄膜の製造方法、
(13)工程(B−2)において、有機溶媒溶液が、所定の範囲内の水分含量に調整され、かつ保持された有機溶媒溶液であることを特徴とする前記(6)〜(12)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(14)所定の範囲内の水分含量における所定の範囲が、30〜1000ppmの範囲であることを特徴とする前記(13)に記載の有機薄膜の製造方法、
(15)有機溶媒溶液の有機溶媒が、炭化水素系溶媒又はフッ化炭素系溶媒であることを特徴とする前記(6)〜(14)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(16)工程(B−2)が、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機溶媒溶液中に、前記基材を浸漬させることを含む工程(B−3)であることを特徴とする前記(6)〜(15)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(17)基材が、金属、ガラス、シリコンウェハー、セラミックス、紙、繊維及びプラスチックからなる群から選ばれる少なくとも一種から構成されていることを特徴とする前記(1)〜(16)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(18)有機薄膜が、単分子膜であることを特徴とする前記(1)〜(17)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、
(19)単分子膜が、化学吸着膜及び/又は自己集合膜であることを特徴とする前記(1)〜(18)のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法、及び
(20)工程(B−2)の有機溶媒溶液中において、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤を含む集合体が形成されていることを特徴とする前記(6)〜(19)のいずれか記載の有機薄膜の製造方法に関する。
本発明の有機薄膜の製造方法は、製造時間が短縮され、様々な大きさの基材への対応が容易であって、かつ基材が複雑な三次元構造体であっても基材をムラなく洗浄することが可能である。
本発明の有機薄膜の製造方法は、基材表面に有機薄膜を形成する有機薄膜の製造方法であって、基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する工程(A)を有することを特徴とする。基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄すると、基材表面に付着した有機物が分解されると共に、基材表面に酸化被膜が形成される。また、基材表面上にレジストが存在する場合は、オゾン水又は過酸化水素水による洗浄によって、レジストが除去される。
本発明におけるオゾン水とは、オゾンを含有する水溶液であれば特に制限されない。本発明におけるオゾン水のオゾン濃度は特に制限されないが、5〜100ppmの範囲内であることが好ましく、40〜60ppmの範囲内であることがより好ましい。なお、オゾンの分解を抑制することから、本発明におけるオゾン水は、炭酸、酢酸等の酸性物質、又はアンモニア等のアルカリ性物質をさらに含有することが好ましい。
本発明におけるオゾン水の製造方法は特に制限されない。オゾン水は、例えば、オゾンガスを水に溶解させることにより製造することができる。オゾンガスを水に溶解させる方法としては、例えば気泡溶解法、隔膜溶解法、充填層溶解法などを用いることができる。また、オゾンガスの製造方法として、例えば放電法、電解法、紫外線ランプ法などを用いることができる。
オゾン水の製造に用いる水は、特に制限されないが、蒸留水であることが好ましく、抵抗値が10メガオーム以上の蒸留水であることがより好ましく、抵抗値が15メガオーム以上の蒸留水であることがさらに好ましい。
一方、本発明における過酸化水素水は、過酸化水素を含有する水溶液であれば特に制限されない。過酸化水素水中の過酸化水素の濃度は、特に制限されないが、1〜30重量%であることが好ましい。
本発明の基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する方法は、基材をオゾン水又は過酸化水素水に接触させる限り特に制限はされず、例えば、基材にオゾン水又は過酸化水素水をスプレーするなどして掛けてもよいし、オゾン水又は過酸化水素水中に基材を浸漬してもよい。基材とオゾン水又は過酸化水素水を接触させる時間は、特に制限されないが、基材の洗浄処理の効率と洗浄効果とのバランスの観点から、10〜60秒であることが好ましい。また、より優れた洗浄効果が得られることから、基材をオゾン水又は過酸化水素水に浸漬した状態で、超音波処理することが好ましい。超音波処理の条件は特に制限されないが、周波数25〜30KHz、処理時間1〜20分、温度20〜25℃での処理が好ましく挙げられる。
本発明の有機薄膜の製造方法は、工程(A)より後に、有機薄膜を形成させる工程(B)をさらに有していてもよい。工程(B)は、工程(A)で処理された基材表面に有機薄膜を形成させる工程(B−1)であってもよい。本発明における「有機薄膜を形成させる工程」は、有機薄膜を形成させる工程である限り特に制限はないが、真空蒸着法、液相成長法、化学気相成長法、ラングミュア法、スパッタリング法、ディップ法(浸漬法)、スプレーコート、スピンコート、ローラーコート、刷毛塗り及びスクリーン印刷からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法を用いることが好ましい。
真空蒸着法とは、真空中において、薄膜物質(薄膜の材料となる物質)を加熱して蒸発させ、蒸発温度より低い温度の基材表面で凝結、固化させ薄膜にする方法である。また、液相成長法とは、薄膜物質を過飽和状態になるように高温で溶媒に溶解させ、その溶液に基材を接触させつつ、その溶液を冷却することにより、基材上に薄膜物質の結晶を析出させて薄膜を形成させる方法である。化学気相成長法とは、薄膜物質を含むガスに、熱や光によってエネルギーを与えたり、高周波でプラズマ化したりすることにより、薄膜物質をラジカル化させて反応性を上昇させ、それを基材表面に吸着させて薄膜を形成させる方法である。ラングミュア法とは、水面上に作った単分子膜を一層ずつ固体基材の表面に移しとり、基材上に分子層を累積していく方法である。スパッタリング法とは、固体の薄膜物質(ターゲット物質)に、加速されたイオンを照射するとターゲット物質表面に原子・分子が外部に放出される性質を利用して、基材表面にターゲット物質を付着させて薄膜を形成させる方法である。ディップ法とは、薄膜物質を含む溶液に基材を浸漬させて、基材表面に薄膜を形成させる方法である。スプレーコートとは、薄膜物質を含む溶液を基材にスプレーすることにより基材表面に薄膜を形成させる方法である。スピンコートとは、円盤上に設置した基材に薄膜物質溶液をのせ、円盤を回転させる事によりこれを均一な液膜とし、これを焼成し薄膜を形成させる方法である。ローラーコートとは、ローラーで有機薄膜物質溶液を基材表面上に薄く塗布し薄膜を形成させる方法である。刷毛塗りとは、刷毛で有機薄膜物質溶液を基材表面上に薄く塗布し薄膜を形成させる方法である。スクリーン印刷とは、枠に張ったスクリーン(布)の上から、薄膜物質(ペースト)をのせ、加圧しながら摺動することにより基材上の薄膜を形成させる方法である。
また、ディップ法の場合において、基材を有機溶媒溶液に浸漬する時間は基材の種類等にも左右され、一概にはいえないが、5分〜24時間とすることができ、5分〜10時間が好ましい。
有機薄膜を形成させるときに用いる有機薄膜材料は、特に制限されないが、例えば、金属系界面活性剤、金属酸化物等が挙げられ、中でも金属界面活性剤が好ましく挙げられる。
また、工程(B)は、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機溶媒溶液に、ディップ法を用いて前記基材を接触させることを含む工程(B−2)であることが好ましく、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機溶媒溶液中に、前記基材を浸漬させることを含む工程(B−3)であることがさらに好ましい。これにより、不純物がより少ないより緻密な有機薄膜をより迅速に形成することができる。
有機溶媒溶液に基材を接触させる工程は、1度に長い時間行ってもよいし、複数回に分けて短時間で行ってもよい。また、有機薄膜の形成を促進するために超音波を用いることもできる。
有機溶媒溶液に基材を接触させる際の有機溶媒溶液の温度は、該溶液が安定性を保てる範囲であれば特に制限されないが、通常、室温から溶液の調製に用いた溶媒の還流温度までの範囲である。有機溶媒溶液を接触に好適な温度とするには、該有機溶媒溶液を加熱してもよいし、基材そのものを加熱してもよいし、その両方を加熱してもよい。
本発明における工程(B−2)中の、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤としては、少なくとも1以上の加水分解可能な官能基と疎水性基とを同一分子内に有するものであれば、特に制限されないが、基材表面上の活性水素と反応して結合を形成することができる加水分解性基を有するものが好ましい。尚、活性水素と反応して結合を形成することができる他の官能基として、水酸基を例示することができる。少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤として、具体的には、前記式(I)で表される化合物を好ましく例示することができる。
前記式(I)中、Rは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基、連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基、又は連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基を表し、より好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数10〜30の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数10〜30のハロゲン化炭化水素基、連結基を含む炭素数10〜30の炭化水素基、又は連結基を含む炭素数10〜30のハロゲン化炭化水素基を表す。
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−へキシル基、イソへキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基等の炭素数1〜30のアルキル基;炭素数1〜30のアルケニル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;等が挙げられる。
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜30のハロゲン化アルキル基、炭素数1〜30のハロゲン化アルケニル基、ハロゲン化アリール基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、フッ素原子が好ましい。具体的には、上記例示した炭化水素基中の水素原子の1個以上がフッ素原子、塩素原子又は臭素原子等のハロゲン原子に置換された基が挙げられる。
これらの中でも、前記炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基としては、炭素数1〜30のアルキル基中の水素原子の2個以上がハロゲン原子に置換された基が好ましく、炭素数1〜30のアルキル基中の水素原子の2個以上がフッ素原子に置換されたフッ素化アルキル基がより好ましい。また、フッ素化アルキル基が分岐構造を有する場合には、分岐部分は炭素数1〜4、好ましくは炭素数1〜2の短鎖であるのが好ましい。
フッ素化アルキル基としては、末端炭素原子にフッ素原子が1個以上結合した基が好ましく、末端炭素原子にフッ素原子が3個結合したCF基部分を有する基がより好ましく、末端が、フッ素原子が置換しない炭化水素基で内部の炭素鎖にフッ素原子が置換した炭素鎖であっても構わない。末端部分に、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子に置換されたペルフルオロアルキル部分を有し、かつ後述する金属原子Mとの間に、−(CH−(式中、hは1〜6の整数を表し、好ましくは2〜4の整数である。)で表されるアルキレン基を有する基が特に好ましい。
フッ素化アルキル基中のフッ素原子数は、[(フッ素化アルキル基中のフッ素原子数)/(フッ素化アルキル基に対応する同一炭素数のアルキル基中に存在する水素原子数)×100]%で表現したときに、60%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましい。
前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基又は置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基の置換基としては、カルボキシル基;アミド基;イミド基;エステル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;または水酸基等が挙げられる。これらの置換基の数は0〜3であることが好ましい。
連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基の炭化水素基としては、具体的には、前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基の炭化水素基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
また、連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基としては、具体的には、前記置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基のハロゲン化炭化水素基として挙げたものと同様のものが挙げられる。
前記連結基は、炭化水素基若しくはハロゲン化炭化水素基の炭素−炭素結合間、又は炭化水素基の炭素と後述する金属原子Mとの間に存在するのが好ましい。
連結基の具体例としては、−O−、−S−、−SO−、−CO−、−C(=O)O−又は−C(=O)NR51−(式中、R51は、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;を表す。)等が挙げられる。
これらの中でも、Rとしては、撥水性、耐久性の観点から、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のフッ素化アルキル基、又は連結基を含むフッ素化アルキル基であるのが好ましい。
のより好ましい具体例としては、CH−、CHCH−、(CHCH−、(CHC−、CH(CH−、CH(CH−、CH(CH−、CH(CH−、CH(CH−、CH(CH−、CH(CH−、CH(CH−、CH(CH10−、CH(CH11−、CH(CH12−、CH(CH13−、CH(CH14−、CH(CH15−、CH(CH16−、CH(CH17−、CH(CH18−、CH(CH19−、CH(CH20−、CH(CH21−、CH(CH22−、CH(CH23−、CH(CH24−、CH(CH25−、
CF−、CFCF−、(CFCF−、(CFC−、CF(CH−、CF(CF(CH−、CF(CF(CH−、CF(CF(CH−、CF(CF(CH−、CF(CF(CH−、CF(CF(CH−、CF(CFO(CF(CH−、CF(CFO(CF(CH−、CF(CFO(CF(CH−、CF(CFCONH(CH−、CF(CFCONH(CH−、CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CH−、
CH(CF(CH−、CH(CF(CH−、CH(CF(CH−、CH(CF10(CH−、CH(CF11(CH−、CH(CF12(CH−、CH(CF(CH−、CH(CF(CH−、CH(CF11(CH−、CHCH(CF(CH−、CHCH(CF(CH−、CHCH(CF10(CH−、CH(CFO(CF(CH−、CH(CF(CHO(CH−、CH(CF(CHO(CH−、CH(CF(CHO(CH−、CHCH(CF(CHO(CH−、CH(CFCONH(CH−、CH(CFCONH(CH−、CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CH−、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる1種の原子を表す。これらの中でも、原料の入手容易性、反応性等の観点からケイ素原子が特に好ましい。
Xは、水酸基又は加水分解性基を表し、加水分解性基としては、水と反応して分解する基であれば特に制約されない。具体的には、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルコキシ基;置換基を有していてもよい炭化水素オキシ基(ただし、アルコキシ基を除く);置換基を有していてもよいアシルオキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;イソシアネート基;シアノ基;アミノ基;またはアミド基等を例示することができる。
炭素数1〜6のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等が挙げられる。
アシルオキシ基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−プロピルカルボニルオキシ基、イソプロピルカルボニルオキシ基、n−ブチルカルボニルオキシ基、プロパノイルオキシ基、脂環式炭化水素オキシ基;シクロプロピルオキシ基、シクロプロピルメチルオキシ、シクロヘキシル基、ノルボニルオキシ基等、アルケニルオキシ基;アリルオキシ基等、アルキニルオキシ基;プロパルギルオキシ基等、アラルキルオキシ基;プロパルギルオキシ基等、アラルキルオキシ基;ビニルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等、芳香族炭化水素オキシ基;フェノキシ基、ナフチルオキシ基等、ベンゾイルオキシ基等が挙げられる。
炭化水素オキシ基の炭化水素としては、炭素数1〜30のアルケニル基、フェニル基、ナフチル基などのアリール基などが挙げられる。
X中の「置換基を有しても良い」の置換基としては、カルボキシル基、アミド基、イミド基、エステル基、水酸基等が挙げられる。
Xとしては、特に、水酸基、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、アシルオキシ基、又はイソシアネート基が好ましく、炭素数1〜4のアルコキシ基又はアシルオキシ基がより好ましい。
mは、金属原子Mの原子価を表す。
nは、1から(m−1)のいずれかの正整数を表す。高密度の有機薄膜を製造する上では、nは1であるのが好ましい。nが2以上のとき、Rは同一であっても相異なっていてもよい。また、(m−n)が2以上のとき、Xは同一であっても相異なっていてもよいが、Xのうち少なくとも一個は加水分解性基であることが好ましい。
式(I)で表される化合物中、好ましい態様の一つとして、式(II)で表される化合物を例示することができる。式(II)中、M、X及びmは、式(I)における意味と同じ意味を表す。R21〜R23、R31及びR32は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素
原子を表す。pは0又は自然数を表し、qは0又は1を表す。pが2以上のとき、式:C(R31)(R32)で表される基は同一であっても異なっていてもよい。
式(II)中、Rは、アルキレン基、ビニレン基、エチニレン基、アリレーン基、または、ケイ素原子及び/または酸素原子を含む2価官能基を表す。具体的には、下記式に示す官能基を例示することができる。
上記式中、a及びbは1以上の任意の自然数を表す。
Yは、水素原子;メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−へキシル基、イソへキシル基等のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等のアルコキシ基;アルキル基の一部又はすべての水素原子がフッ素原子に置換された含フッ素アルキル基;又はアルコキシ基の一部若しくはすべての水素原子がフッ素原子に置換された含フッ素アルコキシ基;等を表す。
rは、0又は1から(m−2)のいずれかの正整数を表すが、高密度の吸着膜を製造するためには、rは0であることが好ましい。rが2以上の場合に、Yは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。(m−r−1)が2以上の場合に、Xは、それぞれ同一でも相異なっていてもよい。但し、Y及びXのうち、少なくとも一個は水酸基又は加水分解性基である。
式(I)で表される化合物の具体例としては、下記に示すものが挙げられる。なお、以下においては、金属原子Mがケイ素原子である化合物を代表例として示しているが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、加水分解性基についても、例示した官能基に限定されず他の加水分解性基が結合したものであってもよい。

CHCHO(CH15Si(OCH
CFCHO(CH15Si(OCH
CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH
CH(CHSi(CH(CHSi(OCH
CHCOO(CH15Si(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF−(CH=CH)−Si(OCH
CHCHO(CH15Si(OC
CH(CHSi(CH(CH15Si(OC
CH(CHSi(CH(CHSi(OC
CF(CHSi(CH(CHSi(OC
CHCOO(CH15Si(OC
CFCOO(CH15Si(OC
CFCOO(CH15Si(OCH
CF(CF(CHSi(OC
CF(CF(CHSi(OC
CF(CF(CHSi(OC
CF(CF(CH=CH)Si(OC
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(CH)(OC
CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CHSi(CH(OC
CF(CF(CHSi(CH(OCH

CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHSi(OCH
CF(CFO(CF(CHSi(OCH
CF(CFO(CF(CHSi(OCH
CF(CF(CHO(CHSi(OCH
CF(CFCONH(CHSi(OCH
CF(CFCONH(CHSi(OCH
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)−
CONH(CHSi(OCH

CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CF(CHSi(CH)(OCH
CF(CF(CHO(CHSi(CH)(OCH
CF(CFCONH(CHSi(CH)(OCH
CF(CFCONH(CHSi(CH)(OCH
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)−
CONH(CHSi(CH)(OCH
CH(CHSi(OCH
CH(CF(CHSi(OCH
CH(CF(CHSi(CH)(OCH
CH(CF(CHSi(OCH
CH(CF(CHSi(NCO)
CH(CF(CHSi(OCH
CH(CF(CHSi(NCO)
CH(CF(CHSi(OCH
CH(CF(CHSi(NCO)
CHCH(CF(CHSi(OCH
CHCH(CF(CHSi(NCO)
CHCH(CF(CHSi(OCH
CHCH(CF(CHSi(NCO)
CHCH(CF10(CHSi(OCH
CH(CFO(CF(CHSi(OCH
CH(CF(CHO(CHSi(OCH
CH(CF(CHO(CHSi(OCH
CH(CF(CHO(CHSi(OCH
CHCH(CF(CHO(CHSi(OCH
CH(CFCONH(CHSi(OCH
CH(CFCONH(CHSi(OCH
CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)−
CONH(CHSi(OCH

CHCHO(CH15Si(OCH)(OH)
CFCHO(CH15Si(OCH(OH)
CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH)(OH)
CH(CHSi(CH(CHSi(OCH)(OH)
CHCOO(CH15Si(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CH=CH)Si(OCH)(OH)
CHCHO(CH15Si(OC)(OH)
CH(CHSi(CH(CH15Si(OC)(OH)
CH(CHSi(CH(CHSi(OC)(OH)
CF(CHSi(CH(CHSi(OC)(OH)
CHCOO(CH15Si(OC)(OH)
CFCOO(CH15Si(OC)(OH)
CFCOO(CH15Si(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OC)(OH)
CF(CF(CHSi(OC)(OH)
CF(CF(CHSi(OC)(OH)
CF(CF(CH=CH)Si(OC)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OH)

CHCHO(CH15Si(OCH(OH)
CFCHO(CH15Si(OCH(OH)
CH(CHSi(CH(CH15Si(OCH(OH)
CH(CHSi(CH(CHSi(OCH(OH)
CHCOO(CH15Si(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CHCHO(CH15Si(OC(OH)
CF(CF(CH=CH)Si(OCH(OH)
CH(CHSi(CH(CH15Si(OC(OH)
CH(CHSi(CH(CHSi(OC(OH)
CF(CHSi(CH(CHSi(OC(OH)
CHCOO(CH15Si(OC(OH)
CFCOO(CH15Si(OC(OH)
CFCOO(CH15Si(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OC(OH)
CF(CF(CHSi(OC(OH)
CF(CF(CHSi(OC(OH)

CF(CF(CH=CH)Si(OC(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OC)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)

CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CFO(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CFO(CF(CHSi(OCH)(OH)
CF(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)
CF(CFCONH(CHSi(OCH)(OH)
CF(CFCONH(CHSi(OCH)(OH)
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OCH)(OH)

CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CFO(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CFO(CF(CHSi(OCH(OH)
CF(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)
CF(CFCONH(CHSi(OCH(OH)
CF(CFCONH(CHSi(OCH(OH)
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OCH(OH)

CH(CHSi(OCH)(OH)
CH(CF(CHSi(OCH)(OH)
CH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CH(CF(CHSi(OCH)(OH)
CH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CH(CF(CHSi(OCH)(OH)
CH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CHCH(CF(CHSi(OCH)(OH)
CHCH(CF(CHSi(OCH)(OH)
CHCH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CHCH(CF(CHSi(OCH)(OH)
CHCH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CHCH(CF10(CHSi(OCH)(OH)
CH(CFO(CF(CHSi(OCH)(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)
CHCH(CF(CHO(CHSi(OCH)(OH)
CH(CFCONH(CHSi(OCH)(OH)
CH(CFCONH(CHSi(OCH)(OH)
CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OCH)(OH)

CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CF(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CF(CHO(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CFCONH(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CFCONH(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CH(CHSi(OCH(OH)
CH(CF(CHSi(OCH(OH)
CH(CF(CHSi(CH)(OCH)(OH)
CH(CF(CHSi(OCH(OH)
CH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CH(CF(CHSi(OCH(OH)
CH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CH(CF(CHSi(OCH(OH)
CH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CHCH(CF(CHSi(OCH(OH)
CHCH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CHCH(CF(CHSi(OCH(OH)
CHCH(CF(CHSi(NCO)(OH)
CHCH(CF10(CHSi(OCH(OH)
CH(CFO(CF(CHSi(OCH(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)
CHCH(CF(CHO(CHSi(OCH(OH)
CH(CFCONH(CHSi(OCH(OH)
CH(CFCONH(CHSi(OCH(OH)
CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OCH(OH)

CHCHO(CH15Si(OH)
CFCHO(CH15Si(OH)
CH(CHSi(CH(CH15Si(OH)
CH(CHSi(CH(CHSi(OH)
CHCOO(CH15Si(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CH=CH)Si(OH)
CHCHO(CH15Si(OH)
CH(CHSi(CH(CH15Si(OH)
CH(CHSi(CH(CHSi(OH)
CF(CHSi(CH(CHSi(OH)
CHCOO(CH15Si(OH)
CFCOO(CH15Si(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CH=CH)Si(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(CH(OH)
CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(OH)
CF(CFO(CF(CHSi(OH)
CF(CFO(CF(CHSi(OH)
CF(CF(CHO(CHSi(OH)
CF(CFCONH(CHSi(OH)
CF(CFCONH(CHSi(OH)
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OH)
CH(CHSi(OH)
CH(CF(CHSi(OH)
CH(CF(CHSi(OH)
CH(CF(CHSi(OH)
CH(CF(CHSi(OH)
CHCH(CF(CHSi(OH)
CHCH(CF(CHSi(OH)
CHCH(CF10(CHSi(OH)
CH(CFO(CF(CHSi(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OH)
CH(CF(CHO(CHSi(OH)
CHCH(CF(CHO(CHSi(OH)
CH(CFCONH(CHSi(OH)
CH(CFCONH(CHSi(OH)
CH(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CF(CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CF(CF(CHSi(CH)(OH)
CF(CF(CHO(CHSi(CH)(OH)
CF(CFCONH(CHSi(CH)(OH)
CF(CFCONH(CHSi(CH)(OH)
CF(CFO[CF(CF)CF(CF)O]CF(CF)CONH(CHSi(CH)(OH)
CH(CF(CHSi(CH)(OH)
これらの化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明における工程(B−2)中の、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物とは、金属系界面活性剤の金属部分又は加水分解性基部分若しくは水酸基部分と、配位結合や水素結合等の化学結合をすることにより、前記金属系界面活性剤の加水分解性基又は水酸基を活性化させ、金属系界面活性剤の縮合を促進させる作用を有する化合物を意味する。工程(B−2)の化合物は、前述の作用を有している限り特に制限されないが、なかでも、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化又は配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物、及びシラノール縮合触媒から群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、金属アルコキシド類、金属アルコキシド類部分加水分解生成物がより好ましい。
金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化又は配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物、及びシラノール縮合触媒における金属としては特に制限されないが、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましく、チタン、ジルコニウム、アルミニウム又はケイ素であるのがより好ましく、チタン又はケイ素が特に好ましい。
金属酸化物は、ゾル、ゲル、固体状等の何れの状態のものも使用することができる。ゲル、ゾルの製造方法は、特に限定されず、例えばシリカゾルを例にとると、珪酸ナトリウム溶液を陽イオン交換する方法、シリコンアルコキシドを加水分解する方法等を例示することができる。特に、有機溶媒中に安定に分散しているゾルが好ましく、さらに、ゾルの粒子径が10〜100nmの範囲であることがより好ましく、10〜20nmの範囲であることがさらに好ましい。ゾルの形状は特に限定されず、球状、細長い形状等、いずれのものも用いることができる。
金属酸化物として、具体的には、メタノールシリカゾル、IPA−ST、IPA−ST−UP、IPA−ST−ZL、NPC−ST−30、DMAC−ST、MEK−ST、MIBK−ST、XBA−ST、PMA−ST(以上、いずれも日産化学工業(株)社製オルガノシリカゾルの商品名を表す。)等を例示することができる。
用いる金属酸化物の量は、化学吸着膜の形成を阻害しない量であれば特に制限されないが、金属系界面活性剤に対して触媒量用いることが好ましく、金属系界面活性剤1モル対して酸化物換算モル数で、0.001〜1モルの範囲で用いることがより好ましく、0.001〜0.2モルの範囲で用いることがさらに好ましい。これらの金属酸化物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
金属水酸化物としては、金属の水酸化物であれば、どのような製造方法で得られたものであってもよい。金属水酸化物の製造方法としては、後述の金属アルコキシド類を加水分解する方法、金属塩を金属水酸化物と反応させる方法等が挙げられる。また、金属水酸化物として市販されているものを、所望により精製して使用することもできる。
金属アルコキシド類のアルコキシ基の炭素数は特に限定されないが、含有酸化物濃度、有機物の脱離の容易さ、入手の容易さ等から、炭素数は1〜4であることがより好ましい。本発明に用いる金属アルコキシド類の具体例としては、Si(OCH、Si(OC、Si(OC−i)、Si(OC−t)等のケイ素アルコキシド;Ti(OCH、Ti(OC、Ti(OC−i)、Ti(OC等のチタンアルコキシド;Ti[OSi(CH、Ti[OSi(C等のテトラキストリアルキルシロキシチタン;Zr(OCH、Zr(OC、Zr(OC、Zr(OC等のジルコニウムアルコキシド;Al(OCH、Al(OC、Al(OC−i)、Al(OC等のアルミニウムアルコキシド;Ge(OC等のゲルマニウムアルコキシド;In(OCH、In(OC、In(OC−i)、In(OC等のインジウムアルコキシド;Sn(OCH、Sn(OC、Sn(OC−i)、Sn(OC等のスズアルコキシド;Ta(OCH、Ta(OC、Ta(OC−i)、Ta(OC等のタンタルアルコキシド;W(OCH、W(OC、W(OC−i)、W(OC等のタングステンアルコキシド;Zn(OC等の亜鉛アルコキシド;Pb(OC等の鉛アルコキシド;等が挙げられる。これらの金属アルコキシド類は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また本発明においては、金属アルコキシド類として、2種以上の金属アルコキシド類の反応により得られる複合アルコキシド、1種もしくは2種以上の金属アルコキシド類と、1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシド、及びこれらの組み合わせを用いることもできる。
2種以上の金属アルコキシド類の反応により得られる複合アルコキシドとしては、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のアルコキシドと、遷移金属のアルコキシドとの反応により得られる複合アルコキシドや、第3B族元素の組合せにより錯塩の形で得られる複合アルコキシド等を例示することができる。
その具体例としては、BaTi(OR)、SrTi(OR)、BaZr(OR)、SrZr(OR)、LiNb(OR)、LiTa(OR)、及び、これらの組合せ、LiVO(OR)、MgAl(OR)、(RO)SiOAl(OR’)、(RO)SiOTi(OR’)、(RO)SiOZr(OR’)、(RO)SiOB(OR’)、(RO)SiONb(OR’)、(RO)SiOTa(OR’)等のケイ素アルコキシドと、前記金属アルコキシド類との反応物及びその縮重合物等が挙げられる。ここで、R及びR’はアルキル基等を表す。
1種もしくは2種以上の金属アルコキシド類と1種もしくは2種以上の金属塩との反応により得られる複合アルコキシドとしては、金属塩と金属アルコキシド類との反応により得られる化合物を例示することができる。
金属塩としては、金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、シュウ酸塩等を、金属アルコキシド類としては、上述した金属アルコキシド類をそれぞれ例示することができる。
用いる金属アルコキシド類の量は、化学吸着膜の形成を阻害しない量であれば特に制限されないが、金属系界面活性剤に対して触媒量用いることが好ましく、金属系界面活性剤1モル対して0.001〜1モルの範囲で用いることがより好ましく、0.001〜0.2モルの範囲で用いることがさらに好ましく、又は酸化物換算モル数で0.001〜1モルの範囲で用いることがより好ましく、0.001〜0.2モルの範囲で用いることがさらに好ましい。これらの金属アルコキシド類は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
金属アルコキシド類部分加水分解生成物は、金属アルコキシド類を完全に加水分解する前に得られるものであって、例えば、金属酸化物ゾルの前駆体、またはオリゴマーの状態で存在するもの等を挙げることができる。
金属アルコキシド類部分加水分解生成物としては、具体的には、有機溶媒中、酸、塩基及び分散安定化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の非存在下、凝集せずに安定に分散している性質を有する分散質を好ましく例示することができる。この場合、分散質とは、分散系中に分散している微細粒子のことをいい、具体的には、コロイド粒子等を例示することができる。ここで凝集せずに安定に分散している状態とは、有機溶媒中、酸、塩基及び/又は分散安定化剤の非存在下、加水分解生成物の分散質が、凝結して不均質に分離していない状態をいい、好ましくは透明で均質な状態をいう。また透明とは、可視光における透過率が高い状態をいい、具体的には、分散質の濃度を酸化物換算で0.5重量%とし、石英セルの光路長を1cmとし、対照試料を有機溶媒とし、光の波長を550nmとする条件で測定した分光透過率で表して、好ましくは80〜100%の透過率を表す状態をいう。加水分解生成物の分散質の粒子径は特に限定されないが、可視光における高い透過率を得るためには、1〜100nmの範囲であることが好ましく、1〜50nmの範囲であることがより好ましく、1〜10nmの範囲であることがさらに好ましい。また、酸、塩基、分散安定化剤については、後述する。
金属アルコキシド類の部分加水分解生成物の製造方法としては、有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下、上記例示した金属アルコキシド類に対し0.5〜2.0倍モル未満の水を用い、−100℃から有機溶媒還流温度範囲で加水分解する方法を好ましく例示することができる。
具体的には、(1)有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下、金属アルコキシド類に対し0.5〜1.0倍モル未満の水を添加する方法、
(2)有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下、加水分解が開始する温度以下、又は0℃以下、好ましくは−50〜−100℃の範囲で、金属アルコキシド類に対し1.0〜2.0倍モル未満の水を添加する方法、
(3)有機溶媒中、酸、塩基、及び/又は分散安定化剤の非存在下、水の添加速度を制御する、添加する水の濃度を水溶性溶媒等を用いて薄める等の方法により加水分解速度を制御しながら、金属アルコキシド類に対し0.5〜2.0倍モル未満の水を室温で添加する方法、等を例示することができる。
上記(1)の方法においては、任意の温度で所定量の水で処理を行った後、加水分解を開始する温度以下、又は−20℃以下の温度条件下で、水をさらに追加して反応を行うことができる。金属アルコキシド類と水との反応は、有機溶媒を用いずに直接金属アルコキシド類と水を混合することにより行うこともできるが、有機溶媒中で行うのが好ましい。具体的には、金属アルコキシド類の有機溶媒溶液に有機溶媒で希釈した水を添加する方法;水を懸濁若しくは溶解した有機溶媒中に、金属アルコキシド類、又はその有機溶媒溶液を添加する方法;のいずれの方法でも行うことができるが、前者の水を後から添加する方法が好ましい。用いる水は、中性であれば特に制限されないが純水または蒸留水を用いるのが好ましく、その量は、上記規定した範囲であれば特に制限されず、目的とする性質を有する分散質によって任意に選択することができる。
有機溶媒中の金属アルコキシド類の濃度は、急激な発熱を抑制し、撹拌が可能な流動性を有する範囲であれば特に限定されないが、5〜30重量%の範囲とすることが好ましい。
上記(1)の方法における金属アルコキシド類と水との反応温度は特に制限されないが、−100〜+100℃の範囲とすることができ、−20℃から用いる有機溶媒又は加水分解によって脱離してくるアルコールの沸点の範囲とすることが好ましい。
上記(2)の方法における水の添加温度は、金属アルコキシド類の安定性に依存するものであり、加水分解開始温度以下、又は0℃以下の温度であれば特に限定されないが、金属アルコキシド類の種類によっては、金属アルコキシド類への水の添加を−50℃〜−100℃の温度範囲で行うことが好ましい。また、低温で水を添加し、一定時間熟成した後、室温から用いた溶媒の還流温度で加水分解し、さらに脱水縮合反応を行うこともできる。
上記(3)の方法における金属アルコキシド類と水との反応は、特殊な冷却装置を用いなくても冷却可能な温度範囲、例えば、0℃から室温の範囲で、水の添加速度を制御する等の温度以外の方法により加水分解速度を制御することにより行うことができる。一定時間熟成した後、室温から用いる溶媒の還流温度で加水分解し、さらに脱水縮合反応を行うこともできる。
用いる有機溶媒としては、その有機溶媒中で、金属アルコキシド類の加水分解生成物が、分散質となって分散できるものであるのが好ましく、金属系界面活性剤を水で処理する反応を低温で行うことができることから、水の溶解度が大きく、低温で凝固しない溶媒がより好ましい。用いる有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒;メチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタンシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン(特開平9−208438号公報等)等;が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。
混合溶媒として用いる場合には、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒と、メタノール、エタノール、イソプロパノ−ル、t−ブタノール等の低級アルコール溶媒系の組み合わせが好ましい。この場合の低級アルコール系溶媒としては、イソプロパノ−ル、t−ブタノール等の2級以上のアルコール系溶媒を用いるのがより好ましい。混合溶媒の混合比は特に制限されないが、炭化水素系溶媒と低級アルコール系溶媒を、体積比で、99/1〜50/50の範囲で用いるのが好ましい。
また、金属アルコキシド類の水による加水分解反応においては、酸、塩基又は分散安定化剤を添加してもよい。酸及び塩基は、凝結してできた沈殿を再び分散させる解膠剤として、また、金属アルコキシド類を加水分解、脱水縮合させてコロイド粒子等の分散質を製造するための触媒として、あるいは生成した分散質の分散剤として機能するものであれば特に制限されない。
この場合の酸または塩基は、凝結してできた沈殿を再び分散させる解膠剤として、また、前述したように、金属アルコキシド類等を加水分解、脱水縮合させてコロイド粒子等の分散質を製造するための触媒として、及び生成した分散質の分散剤として機能するものであれば特に制限されない。
用いる酸としては、例えば、塩酸、硝酸、ホウ酸、ホウフッ化水素酸等の鉱酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、炭酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸等;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート等の光照射によって酸を発生する光酸発生剤;が挙げられる。
用いる塩基としては、例えば、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、アンモニア、ジメチルホルムアミド、ホスフィン等が挙げられる。
分散安定化剤は、分散質を分散媒中に安定に分散させる効力を有する剤であり、例えば、解膠剤、保護コロイド、界面活性剤等の凝結防止剤等を分散安定化剤としてあげることができる。具体的には、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、コハク酸等の多価カルボン酸;ヒドロキシカルボン酸;ピロ燐酸、トリポリ燐酸等の燐酸;アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸n−プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n−ブチル、アセト酢酸sec−ブチル、アセト酢酸t−ブチル、2,4−ヘキサン−ジオン、2,4−ヘプタン−ジオン、3,5−ヘプタン−ジオン、2,4−オクタン−ジオン、2,4−ノナン−ジオン、5−メチル−ヘキサンジオン等の金属原子に対して強いキレート能力を有する多座配位子化合物;スルパース3000、9000、17000、20000、24000(以上、ゼネカ社製)、Disperbyk−161、−162、−163、−164(以上、ビックケミー社製)等の脂肪族アミン系、ハイドロステアリン酸系、ポリエステルアミン;ジメチルポリシロキサン・メチル(ポリシロキシアルキレン)シロキサン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸、カルボキシ変性シリコーンオイル、アミン変性シリコーン等(特開平9−208438号公報、特開平2000−53421号公報等)のシリコーン化合物;等が例示される。
用いる金属アルコキシド類部分加水分解生成物の量は、有機薄膜の形成を阻害しない量であれば特に制限されないが、金属系界面活性剤に対して触媒量用いることが好ましく、金属系界面活性剤1モルに対して酸化物換算モル数で、0.001〜1モルの範囲で用いることが好ましく、0.001〜0.2モルの範囲で用いることがより好ましい。これらの金属アルコキシド類部分加水分解物は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明に用いられる金属アルコキシド加水分解生成物は、金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で加水分解することによって得られる生成物である。該加水分解生成物は、金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で加水分解することによって得られたものであっても、金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量未満の水で部分加水分解することによって、金属アルコキシド類の部分加水分解生成物を得た後、この部分加水分解生成物を、さらに所定量の水(先の部分加水分解に使用した水の量との合計で金属アルコキシド類の2倍当量以上となる量の水)で加水分解することによって得られたものであってもよい。
金属アルコキシド類と水との反応は、有機溶媒を用いずに直接金属アルコキシド類と水を混合してもよいし、有機溶媒中で金属アルコキシド類と水とを反応させてもよいが、有機溶媒中で金属アルコキシド類と水とを反応させることが好ましい。ここで用いる水は、中性であれば特に制限されないが、不純物がより少なく、より緻密な有機薄膜を得る観点から、純水、蒸留水又はイオン交換水を用いるのが好ましい。水の使用量は、前記金属アルコキシド類に対し2倍当量以上であることが好ましく、2〜8倍当量の範囲であることがより好ましく、3〜5倍当量の範囲であることがさらに好ましい。
有機溶媒中で金属アルコキシド類と水とを反応させる方法としては、(1)金属アルコキシド類を含む有機溶媒溶液に、水又は有機溶媒で希釈した水を添加する方法、(2)水を懸濁又は溶解した有機溶媒中に、金属アルコキシド類、又は金属アルコキシド類の有機溶媒溶液を添加する方法、等を例示することができる。この場合、金属アルコキシド類の有機溶媒中の濃度は、急激な発熱を抑制し、撹拌が可能な流動性を有する範囲であれば特に限定されないが、反応溶液全量に対して5〜30重量%の範囲であることが好ましい。
用いる有機溶媒としては、特に制限されないが、その有機溶媒中で、金属アルコキシド類の加水分解生成物が、分散質となって分散できるものであることが好ましく、具体例としては、前記金属アルコキシド類部分加水分解生成物と同様の有機溶媒が好ましい。 ま
た、該加水分解生成物においては、有機溶媒以外の水、酸、塩基又は分散安定化剤等についても前記部分加水分解生成物において用いられたものを同様に使用することができる。金属アルコキシド類の加水分解反応温度は、用いる金属アルコキシド類の反応性や安定性等によるが、−100℃から有機溶媒の還流温度までの範囲とすることができ、−100℃〜−20℃の範囲とすることが好ましい。低温で水を添加し、一定時間熟成した後、反応液の温度を室温から用いた溶媒の還流温度まで昇温して、加水分解、脱水縮合反応をさらに行うこともできる。
キレート化又は配位化された金属化合物は、金属化合物の溶液に、該金属化合物の金属と錯体を形成し得るキレート化剤又は配位化合物を添加することで、調製することができる。キレート化剤又は配位化合物としては、金属水酸化物、金属アルコキシド類、又は金属アルコキシド類を水で処理して得られた加水分解生成物の金属にキレート化又は配位して、錯体を形成し得るものであれば特に限定されない。
キレート化剤又は配位化合物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の飽和脂肪族カルボン酸類;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の飽和脂肪族ジカルボン酸類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、アレイン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;安息香酸、トルイル酸、フタル酸等の芳香族カルボン酸類;クロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等のハロゲノカルボン酸類;アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン等のβ−ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル等のβ−ケトエステル類;テトラヒドロフラン、フラン、フランカルボン酸、チオフェン、チオフェンカルボン酸、ピリジン、ニコチン酸、イソニコチン酸等の複素環化合物類;等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
キレート化剤又は配位化合物の添加量は、金属水酸化物、金属アルコキシド類、又は金属アルコキシド類を水で処理して得られた加水分解生成物の金属1モルに対して、0.1〜10倍モルであることが好ましく、0.3〜2倍モルであることがより好ましく、0.5〜1.2倍モルであることがさらに好ましい。
キレート化剤又は配位化合物を添加した後は、全容を十分に撹拌することで、金属錯体の溶液を得ることができる。撹拌温度は、特に制限されないが、0℃から用いる溶媒の沸点までの温度範囲とすることが好ましい。撹拌時間は、特に制限されないが、数分から数時間とすることが好ましい。キレート化又は配位化された金属化合物は、単離したものを使用することもできるし、前記金属化合物の溶液にキレート化剤又は配位化合物を添加して得られたキレート化又は配位化された金属化合物の溶液として使用することもできる。また、調製したキレート化又は配位化された金属化合物の溶液は保存しておくことができる。
シラノール縮合触媒としては、カルボン酸金属塩、カルボン酸エステル金属塩、カルボン酸金属塩ポリマー、カルボン酸金属塩キレート、チタン酸エステル及びチタン酸エステルキレート等を例示することができる。具体的には、酢酸第一スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクタン酸第一スズ、ナフテン酸鉛、ナフテン酸コバルト、2−エチルヘキセン酸鉄、ジオクチルスズビスオクチリチオグリコール酸エステル塩、ジオクチルスズマレイン酸エステル塩、ジブチルスズマレイン酸塩ポリマー、ジメチルスズメルカプトプロピオン酸塩ポリマー、ジブチルスズビスアセチルアセテート、ジオクチルスズビスアセチルラウレート、チタンテトラエトキサイド、チタンテトラブトキサイド、チタンテトライソプロポキサイド、チタンビス(アセチルアセトニル)ジプロポキサイド等を例示することができる。
本発明の工程(B−2)及び工程(B−3)の有機溶媒溶液に用いる有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、フッ化炭素系溶媒、及びシリコーン系溶媒が好ましく、炭化水素系溶媒がより好ましい。なかでも、沸点が100〜250℃のものが特に好ましい。
具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、石油ナフサ、ソルベントナフサ、石油エーテル、石油ベンジン、イソパラフィン、ノルマルパラフィン、デカリン、工業ガソリン、灯油、リグロイン等の炭化水素系溶媒;CBrClCF、CClFCFCCl、CClFCFCHFCl、CFCFCHCl、CFCBrFCBrF、CClFCClFCFCCl、Cl(CFCFCl)Cl、Cl(CFCFCl)CFCCl、Cl(CFCFCl)Cl等フロン系溶媒、フロリナート(3M社製品)、アフルード(旭ガラス社製品)等のフッ化炭素系溶媒;ジメチルシリコーン、フェニルシリコーン、アルキル変性シリコーン、ポリエーテルシリコーン等のシリコーン系溶媒;が挙げられる。これらの溶媒は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
有機溶媒溶液中の金属系界面活性剤の含有量は、特に制限されないが、工程(B−2)及び工程(B−3)のいずれの場合においても、より緻密な単分子膜を製造する観点から、有機溶媒溶液に対し0.1〜30重量%の範囲であることが好ましい。
また、工程(B−2)の有機溶媒溶液を用いる場合において、金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物の使用量は、形成する単分子の有機薄膜の物性に悪影響を与えない量であれば特に制限されないが、金属系界面活性剤1モルに対して酸化物換算モル数で、0.001〜1モルであることが好ましく、0.001〜0.2モルであることがより好ましい。
本発明の有機薄膜の製造方法は、基材を蒸留水で洗浄する工程(C)、及び/又は基材を有機溶媒で洗浄する工程(D)を、工程(A)より前及び/又は後にさらに有していることが好ましい。これにより、基材表面のゴミ、埃や有機物等の不純物をより高度に取り除き、有機薄膜をより緻密かつ強固に形成することができる。工程(C)と工程(D)を共に有する場合、工程(C)と工程(D)の順序は問わないが、工程(C)の後に工程(D)を有することが好ましい。また、工程(C)及び/又は工程(D)を工程(A)の後に有する場合、工程(C)及び/又は工程(D)を、後述の工程(E)より後に有していてもよいが、工程(E)より前に有していることが好ましい。
ここで、工程(C)中の蒸留水は特に制限されないが、より優れた洗浄効果を得る観点から、抵抗値が10メガオーム以上の蒸留水であることが好ましく、抵抗値が15メガオーム以上の蒸留水であることがより好ましい。
また、工程(D)中の有機溶媒は、特に制限されないが、エタノール、イソプロパノール等のアルコールが好ましく、エタノール及びイソプロパノールが特に好ましい。
また、工程(C)や(D)における洗浄方法は、特に制限されず、例えば、工程(C)の蒸留水や工程(D)の有機溶媒を、基材にスプレーしたり、シャワーするなどして掛けてもよいし、工程(C)の蒸留水や工程(D)の有機溶媒中に基材を浸漬してもよい。より優れた洗浄効果が得られることから、工程(C)の蒸留水や工程(D)の有機溶媒中に基材を浸漬した状態で、超音波処理することが好ましい。超音波処理の具体的な条件としては、上述の、基材をオゾン水又は過酸化水素水に浸漬して超音波処理する場合と同様の条件を例示することができる。また、紫外線やオゾン、プラズマに暴露する物理的な方法をさらに併用すれば、さらに優れた洗浄効果が得られる。
本発明の有機薄膜の製造方法は、工程(B)、(B−1)、(B−2)又は(B−3)より後に、接触させた基材を有機溶媒で洗浄する工程(E)を含んでいてもよい。このような洗浄工程(E)があると、工程(B)、(B−1)、(B−2)又は(B−3)で形成された有機薄膜の表面に付着した余分な試剤や不純物が除去される。また、このような洗浄工程(E)を設けることにより、基材表面に形成された有機薄膜の膜厚を制御することができる。
工程(E)における有機溶媒は、特に制限されないが、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒が好ましい。
洗浄方法としては、基材表面の付着物を除去できる方法であれば特に制限されないが、例えば、上記のような有機溶媒中に基材を浸漬させる方法;真空中、又は常圧下で大気中に放置して、基材表面の付着物を蒸発させる方法;乾燥窒素ガス等の不活性ガスをブローして、基材表面の付着物を吹き飛ばす方法;等を例示することができる。また、より優れた洗浄効果が得られることから、基材を前述の有機溶媒に浸漬した状態で、超音波処理することが、より好ましい方法として挙げられる。
本発明の有機薄膜の製造方法は、工程(E)より後に、工程(E)で洗浄した基材を乾燥する工程(F)をさらに有することが好ましい。乾燥方法は特に制限はされず、基材表面の溶液をエアーナイフなどできってもよいし、自然乾燥させてもよいし、温風をあてるなどの方法が例示できるが、基材表面上に形成された有機薄膜に熱を加えることにより、有機薄膜がより安定化することから、温風をあてる方法が好ましい。
なお、基材を乾燥させる際に基材に熱を加えない場合、本発明の有機薄膜の製造方法は、基材に熱を加える工程をさらに含んでいなくてもよいが、有機薄膜がより安定化することから、基材に熱を加える工程(G)をさらに含んでいることが好ましい。工程(G)の順序は、工程(B)、(B−1)、(B−2)又は(B−3)より後であれば特に制限されないが、工程(E)より後であることが好ましい。加熱する温度は、基材及び有機薄膜の安定性によって適宜選択することができるが、例えば、40〜70℃の範囲を好ましく挙げることができる。
本発明の有機薄膜の製造方法は、工程(A)を含んでいる限り特に制限されず、工程(A)〜(F)の他に、それらのいずれか1以上の工程より前及び/又は後に、いかなる工程を含んでいてもよい。
本発明の有機薄膜の製造方法に用いる基材は、特に制限されない。本発明の有機薄膜の製造方法に用いる基材としては、有機溶媒溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材でなくてもよいが、有機溶媒溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材であることが好ましく、活性水素を表面に有する基材であることが特に好ましい。活性水素を表面に有する基材を用いると、基材表面の活性水素と、工程(B)、(B−1)、(B−2)又は(B−3)中の有機溶媒溶液中の分子とが、化学的な相互作用により基材表面に容易に化学吸着膜を形成することができる。ここで、有機溶媒溶液中の有機薄膜を形成する分子と相互作用し得る官能基を表面に有する基材とは、有機溶媒溶液中の有機薄膜を形成する分子と、化学結合し得る官能基を表面に有する基材を意味する。
ここで活性水素とは、プロトンとして解離しやすいものをいい、活性水素を含む官能基としては、水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、ホルミル基(−CHO)、イミノ基(=NH)、アミノ基(−NH)、チオール基(−SH)等が挙げられ、なかでも、水酸基が好ましい。
基材表面に水酸基を有する基材として、具体的には、アルミニウム、銅、ステンレス等の金属;ガラス;シリコンウェハー;セラミックス;プラスチック;紙;天然繊維、合成繊維等の繊維;皮革;その他親水性の物質;等からなる基材が挙げられる。なかでも、金属、ガラス、シリコンウェハー、セラミックス、紙、繊維及びプラスチックからなる基材が好ましい。
プラスチックや合成繊維のように表面に水酸基を持たない材質からなる基材には、予め基材表面を酸素を含むプラズマ雰囲気中で(例えば100Wで20分)処理したり、コロナ処理して親水性基を導入することができる。ポリアミド樹脂又はポリウレタン樹脂等からなる基材は、表面にイミノ基が存在しており、このイミノ基の活性水素と金属系界面活性剤のアルコキシシリル基等とが脱アルコール反応し、シロキサン結合(−SiO−)を形成するので特に表面処理を必要としない。
また、表面に活性水素を持たない基材を用いる場合、この基材の表面に、予めSiCl、SiHCl、SiHCl、Cl−(SiClO)−SiCl(式中、bは自然数)から選ばれる少なくとも一つの化合物を接触させた後、脱塩化水素反応させることにより、表面に活性水素を有するシリカ下地層を形成しておくこともできる。
本発明の工程(B−2)や(B−3)における有機溶媒溶液の調製方法は特に制限されない。本発明の工程(B−2)や(B−3)における有機溶媒溶液は、例えば、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物、及び有機溶媒を含む混合物を攪拌するなどして調製することができる。
撹拌温度は特に制限されないが、例えば−100℃〜+100℃であってもよく、−20℃〜+50℃であることが好ましい。また、撹拌時間も特に制限されないが、数分から数時間行うことができる。
調製した有機溶媒溶液中に、金属酸化物等を含む析出物が生じる場合があるが、これらの析出物等の不純物は、不純物のより少ない緻密な単分子の有機薄膜を得るためには、基材に接触させる前に、それらの不純物を除去又は低減しておくことが好ましい。析出物は、濾過、デカント等の操作で簡便に除去又は低減することができる。
本発明の工程(B−2)における有機溶媒溶液は、所定の範囲内の水分含量に調整され、又は保持された有機溶媒溶液でなくてもよいが、あらゆる材質の基材に対応して、より緻密でより均質な有機薄膜をより速やかに形成することができることから、所定の範囲内の水分含量になるように調整され、かつ保持された有機溶媒溶液であることが好ましい。
有機溶媒溶液の水分含量が所定の範囲内に調整されていると、より緻密な単分子膜が製造され、膜の形成が促進活性化され、金属系界面活性剤の損失量が減少する。また、有機溶媒溶液の水分含量が所定の範囲内に保持されていると、例えば2つ以上の基材について、同一の有機溶媒溶液を用いて、連続的に該有機溶媒溶液に接触させる工程を行った場合であっても、あらゆる材質の基材に対応して、より緻密でより均質な有機薄膜をより速やかに形成することができる。ここで、同一の有機溶媒溶液とは、1つの基材について工程(B−2)を行った後、その工程に用いた有機溶媒溶液の全部を廃棄して新たな有機溶媒溶液に交換したり、その工程に用いた有機溶媒溶液の一部を廃棄して新たな有機溶媒溶液を追加したりする場合を除く意味である。なお、後述するような何らかの方法で水分量が所定の範囲内に保持された溶液は、ここでいう同一の有機溶媒溶液に含まれる。
「所定の範囲内の水分含量」は、用いる基材、金属系界面活性剤、該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物、有機溶媒等の種類により決定することができる。「所定の範囲内の水分含量」として、具体的には、例えば、基材表面への化学吸着がより活発に起こり、より緻密な単分子膜が製造され、かつ、膜の形成が促進活性化される量以上の水分含量や、用いる金属系界面活性剤の損失量がより少なく、該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物がより十分な活性を発揮できるような量以上である水分含量が好ましく挙げられる。
膜の形成を促進活性化される量とは、例えば、ディップ法により該溶液を基材に接触させる場合、10分以内、好ましくは5分以内の1度の接触(ディップ)で、緻密で均質な有機薄膜を基材全面に形成させることができる程度の量をいう。具体的には、工程(B−2)の有機溶媒溶液中の水分含量が、30ppm以上であることが好ましく、30ppmから有機溶媒への飽和水分量の範囲、より具体的には、30〜1000ppmの範囲内であることがさらに好ましく、50〜800ppmの範囲内であることがさらにより好ましい。水分含量が30ppm以上であると、より迅速に有機薄膜の形成を行うことができ、また、水分含量が1000ppm以下であれば、金属系界面活性剤等がより十分な活性を発揮することができる。
なお、ここで示す水分含量は、有機溶媒溶液の一部を採取してカールフィッシャー法で測定した値を示し、その方法原理を用いた装置で測定した値であれば、測定装置については特に限定されない。なお、有機溶媒溶液が均一である場合には、均一な溶液を一部採取して測定し、有機溶媒層と水分層が2層となっている場合には、有機溶媒層より一部採取して測定し、有機溶媒中に水分層が分散し分離不可能な状態な場合には、その分散液をそのまま採取して測定した値を示す。
有機溶媒溶液を所定の範囲内の水分含量に調製する方法は特に制限されないが、
(1)金属系界面活性剤、及び金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含む有機溶媒溶液に水を添加する方法、
(2)金属系界面活性剤と水を含む有機溶媒溶液に、金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を添加する方法、等を例示することができる。
なお、急激な反応を抑えるためには、(1)の方法において添加する水、(2)の方法において添加する金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物は、有機溶媒等で希釈して用いることが好ましい。
所定の範囲内に水分含量を調整する、又は保持する方法として、具体的には、(1)有機溶媒溶液に接触して水層を設ける方法、(2)水分を含ませた保水性物質を、有機溶媒溶液に接触させて設ける方法、(3)有機溶媒溶液を、水分を含む気体に接触させる方法、(4)適宜水を添加する方法、等を例示することができる。これらの方法は単独で用いても、2以上を組み合わせて用いてもよい。
水分含量の調整又は保持に用いる水は、中性であれば特に制限されないが、純水又は蒸留水であることが好ましい。また、工程(B−2)の有機溶媒溶液に用いる有機溶媒は、無水のものでもよいし、あらかじめ一定量の水分を含むものでもよい。
上記(1)の有機溶媒溶液に接触して水層を設ける方法において、炭化水素系溶媒等の、水層と分離する有機溶媒を用いた場合には、有機溶媒層と分離した形で水層を共存させてもよいし、有機溶媒溶液を水層中に循環または通過させた後水槽から分離した有機溶媒層を用いてもよい。低級アルコール等の、水の溶解度が大きく水層と分離しない有機溶媒を用いた場合には、有機溶媒は浸透しないが水は浸透する膜等を介在させて、有機溶媒溶液と水層を接触させる方法等を例示することができる。
上記(2)の水分を含ませた保水性物質を、有機溶媒溶液に接触させて設ける方法における保水性物質としては、特に制限されないが、有機溶媒溶液中において水を分離せず、かつ有機溶媒溶液中に浮遊しない物質であることが好ましい。具体的には、吸水性高分子等の有機系保水材;ゼオライト、珪酸白土、バーミキュライト、多孔質セラミック等の無機系保水材;界面活性剤等の、溶液中に水を核とするミセル分子を形成することのできる化合物;等が挙げられ、なかでも、ゴミ等の混入が避けられる等の理由から、ガラス繊維フィルターが特に好ましい。
また、水分を含ませた保水性物質が、有機溶媒溶液に接触させて設けられている場合、保水性物質として、水分を含ませた状態で溶液中に共存しているのが好ましい。
さらに、有機溶媒への水の溶解度をあげるために親水性の溶媒を用いる方法も考えられる。この場合の親水性溶媒についても、本発明における保水性物質に便宜上含まれる。
保水性物質に含ませる水分量は特に制限されないが、有機溶媒溶液中で水が保水性物質と分離して遊離していない範囲内の水分量が好ましい。また、保水性物質に水分を適時添加して、保水性物質に水分を補給することもできる。また、保水性物質を、溶液と外気の界面、又は外気から溶液内にかけて連続して設けることによって、外気の湿気等を吸湿させ、有機溶媒溶液に水分を補給することもできる。
また、上記(3)の有機溶媒溶液を、水分を含む気体に接触させる方法において、用いる気体は、溶液中の各成分に影響を及ぼさないものであれば特に制限されず、具体的には、空気、窒素ガス、アルゴンガス等を例示することができる。水分を含む気体を得る方法としては、特に制限されないが、気体に水分を含ませる方法;気体を加湿する方法;等が挙げられる。
気体に水分を含ませる方法は、特に制限されないが、ガスを水中に潜らせる、ガスを水または温水表面に接触させる等の水とガスを接触させる方法;水蒸気を含むガスをそのまま用いる方法;等を例示することができる。
気体を加湿する方法は、特に制限されないが、蒸気加湿法、水噴霧加湿法、または気化加熱法等を例示することができる。
水分を含む気体と有機溶媒溶液とを接触させる方法は、特に制限されないが、水分を含む気体を有機溶媒溶液中に吹き込む、または有機溶媒溶液表面に吹き付ける方法;有機溶媒溶液を、水分を含む気体雰囲気下に、必要に応じて撹拌しながら放置する方法;有機溶媒溶液を、加湿された雰囲気下に、必要に応じて撹拌しながら放置する方法;等を例示することができる。水分を含む気体を吹き込む方法においては、必要に応じて吹き込み装置、清浄装置、ろ過装置等を付設するのが好ましい。
また、上記(4)の適宜水を添加する方法は特に制限されないが、例えば、有機溶媒溶液中の水分量の減少を観測し、減少量に応じて水、又は相溶性を有する有機溶媒もしくは同一の有機溶媒で希釈した水を、有機溶媒溶液へ適宜追加する方法;一定量の水を含有する同一組成の有機溶媒溶液を供給する方法;等を例示することができる。
有機溶媒溶液中の水分量を保持しながら、基材を浸漬させる方法としては、具体的には、
(a)水分調整槽と基材浸漬槽を設け、水分調整槽で水分調整した有機溶媒溶液を基材浸漬槽に循環させる方法、
(b)基材浸漬槽を複数設け、一つの基材浸漬槽で基材を浸漬している間に他の浸漬槽において有機溶媒溶液の水分調整を行う方法、
(c)上述したような、所定の範囲内に水分含量を保持する手段を、基材浸漬槽に直接設け、適宜、水分を補給する方法、等が挙げられる。
有機溶媒溶液に基材を接触させる工程(B−2)は、湿度が40%RH以上に保持された空間内において実施しなくてもよいが、湿度が40%RH以上に保持された空間内において実施することが好ましく、湿度が60%RH以上に保持された空間内において実施することがより好ましい。このような空間内においては、有機溶媒溶液中の水分量がより好ましく保持され、基材を連続的に有機溶媒溶液に接触させても、より再現性良く、より緻密な単分子膜を形成することができる。
本発明の有機薄膜の製造方法は、単分子膜の製造にも、2層以上の多層膜の製造にも用いることができるが、単分子膜の製造には特に好適に用いることができる。また、化学的な吸着により基材表面に有機薄膜を形成させる方法としてだけでなく、物理的な吸着により基材表面に有機薄膜を形成させる方法としても用いることができる。
本発明の有機溶媒溶液の保存方法は、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤と、該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含む有機溶媒溶液を水で処理することにより、該有機溶媒溶液中の水分含量を所定の範囲内とし、前記有機溶媒溶液中の水分含量を所定の範囲内に保持した状態で、容器内に密閉する方法等を例示することができる。有機溶媒溶液中の水分含量を所定の範囲内とし、前記有機溶媒溶液中の水分含量を所定の範囲内に保持する方法としては、前述した方法と同様の方法が挙げられる。
本発明の有機溶媒溶液を容器内に密閉することにより、有機溶媒とともに水分が大気中に揮散して水分量が減少するのを防ぐことができる。本発明の有機溶媒溶液は、その水分含量が有機薄膜の形成能に影響するため、保存中においても有機溶媒溶液中の水分含量を所定の範囲内に保持することが好ましい。
上記の本発明の有機薄膜の製造方法を用いることにより、単分子膜、自己集合膜、化学吸着膜、及びそれらの性質をあわせ持つ有機薄膜を得ることができる。
本発明における単分子膜は、化学吸着膜でもなく、自己集合膜でなくてもよいが、化学吸着膜及び/又は自己集合膜であることが好ましい。本発明において、自己集合膜とは、外部からの強制力なしに秩序だった構造を形成してなる膜を意味する。工程(B−2)の有機溶媒溶液中において、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤等の、有機薄膜を形成する分子が集合体を形成している場合には、その有機溶媒溶液を用いて得られる有機薄膜は自己集合膜となる。工程(B−2)中の金属系界面活性剤の分子は、有機溶媒溶液中で、溶媒により溶媒和されて単独に存在するのではなく、幾つかが集まって集合体を形成している。該集合体は、該金属系界面活性剤を、該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物及び水により処理して得ることができる。
集合体の形態は、分子が、疎水性部分同士、または親水性部分同士で分子間力、配位結合、または水素結合等により集合した形態;膜を形成する分子が、共有結合により結合して集合した形態;水等の他の媒体が、核もしくは仲介として、ミセル等を形成した形態;またはこれらが組み合わさった形態;等である。
集合体の形状は特に限定されず、球状、鎖状、帯状等いずれの形状であってもよい。集合体の平均粒径は、特に限定されないが、10〜1000nmの範囲であることが好ましい。
また、集合体のゼーター電位(界面動電電位)の値は、同一溶媒中における基材のゼーター電位の値よりも大きいことが好ましい。集合体のゼーター電位がプラスで、基材のゼーター電位がマイナスであるのが特に好ましい。このようなゼーター電位値を有する集合体を形成する有機溶媒溶液を用いると、結晶性を有する、より緻密な単分子膜を製造することができる。
本発明における化学吸着膜は、基材上に形成されてなる化学吸着膜であって、該基材が結晶性を有さず、かつ、化学吸着膜が結晶性を有することを特徴とする。すなわち、本発明における化学吸着膜は、基材が結晶性であるかないかにかかわらず結晶性を有する。この場合、結晶性とは、多結晶であっても、単結晶であっても構わない。
本発明の基材を有機溶媒溶液に接触させると、該有機溶媒溶液中の金属系界面活性剤が基材表面に吸着され、薄膜が形成される。金属系界面活性剤が基材表面に吸着される機構の詳細は明らかではないが、表面に活性水素を有する基材の場合には次のように考えることができる。すなわち、有機薄膜形成用溶液中においては、金属系界面活性剤の加水分解性基が水により加水分解された状態となっている。そして、この状態の金属系界面活性剤が基材表面の活性水素と反応して、基材と強固な化学結合を形成してなる薄膜が形成される。この薄膜は、基材の活性水素と反応して形成されるものであって、単分子膜となる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
(1)金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液の調製−1
チタンテトライソプロポキシド(A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%、日本曹達(株)製)12.4gを4つ口フラスコ中で、トルエン45.0gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/液体窒素バス中で−80℃に冷却した。別に、イオン交換水1.3g(HO/Ti=1.6(モル比))をイソプロパノール11.3gに混合後、−80〜−70℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−80〜−70℃に維持した。滴下終了後、30分間冷却しながら攪拌後、室温まで攪拌しながら昇温して、無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%の部分加水分解溶液(金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液:C−1)を得た。
(2)金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液の調製−2
窒素ガス置換した4つ口フラスコ中で、チタンテトライソプロポキシド(A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%、日本曹達(株)製)530gをトルエン1960gに溶解し、エタノール/ドライアイスバスで−15℃に冷却した。別に、イオン交換水30.4g(モル比(HO/Ti)=0.9)をイソプロパノール274gに混合し、上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながら90分間で滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−15〜−10℃に維持した。滴下終了後、−10℃で30分間、室温まで昇温後1時間攪拌を続け、無色透明の液体を得た。この溶液をエタノール/ドライアイスバスで−80℃に冷却し、イオン交換水20.3g(HO/Ti=0.6(モル比))とイソプロパノール183gの混合溶液を90分間で滴下しながら攪拌した。滴下終了後、3時間かけて室温に戻し、この溶液を90〜100℃で2時間還流し、酸化チタン換算濃度で5重量%の無色透明な部分加水分解溶液(金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液:C−2)を得た。この溶液は、平均粒径が5.6nmでシャープな単分散性のゾルであった。
(3)金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液の調製−3
チタンテトライソプロポキシド(A−1:純度99.9%、酸化チタン換算濃度28.2重量%、日本曹達(株)製)17.8g(62.6mmol)と脱水トルエン65.31gを液温18℃、窒素ガス雰囲気下に、フラスコ中で混合攪拌し溶解した。そこへ水1.7g(93.9mmol、H2O/Ti=1.5(モル比))、脱水イソプロパノール
30.4g、脱水トルエン30.4gの混合物(水の濃度は、イソプロパノールとトルエンの混合溶媒に対する水の飽和溶解度の22%に相当する)を液温18〜20℃で撹拌しながら2時間で滴下したところ、淡い黄色透明の溶液が得られた。さらに液温18℃で1.5時間攪拌すると少し黄色が強くなり、その後、2.5時間還流すると無色の透明液となった。溶液の酸化物濃度は3.4重量%であった。この溶液にトルエンを加え、酸化物濃度1.0重量%になるように希釈し、金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液(C−3)を得た。
(4)金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液の調製−4
イソプロパノール(IPA)に分散したシリカゾル(IPA−ST−S、25重量%、日産化学工業(株)製)を脱水トルエンに分散し、シリカ換算濃度1重量%の分散液(金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液:C−4)を得た。
(5)金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液の調製−5
チタンテトライソプロポキシド(A−1:純度99%、酸化チタン換算濃度28.2重量%、日本曹達(株)製)12.4gを4つ口フラスコ中で、トルエン45.0gに溶解し、窒素ガス置換した後に、エタノール/ドライアイスバス中で−20℃に冷却した。別に、イオン交換水1.26g(HO/Ti=1.6(モル比))をイソプロパノール11.3gに混合後、−20℃に冷却した状態で、上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながら滴下した。滴下中は、フラスコ内の液温を−20℃に維持した。滴下終了後、30分間冷却しながら攪拌後、室温まで攪拌しながら昇温して、無色透明な酸化チタン換算濃度5重量%の部分加水分解溶液(金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液:C−5)を得た。
(6)金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液の調製−6
テトラキス(トリメチルシロキシ)チタニウム(Gelest社製)を脱水トルエンに溶解して、濃度1重量%の金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物の溶液(C−6)を得た。
(7)金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液の調製−7
イオン交換水を−40℃で滴下するほかは、金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液の調製−1と同様にして、部分加水分解溶液(金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液:C−7)を得た。
(8)金属系界面活性剤−1
有機溶媒溶液の調製用の金属界面活性剤として、下記のM−1を用いた。
M−1:n−オクタデシルトリメトキシシラン(ODS):Gelest社製
(9)金属系界面活性剤−2
有機溶媒溶液の調製用の金属界面活性剤として、下記の方法によりM−2:n−オクタデシルトリヒドロキシシラン(ODHS)を得た。
窒素ガス置換した4つ口フラスコ中で、脱水エタノール82g、0.1N−塩酸0.6g、水9gを仕込み、0℃に冷却した。次に上記4つ口フラスコ中へ攪拌しながらオクタデシルトリエトキシシラン7.8gを滴下した。滴下後、反応液を室温で3時間保持した。反応液をろ過後、室温にて2時間真空乾燥し、白色粉末(M−2)を4.4g(収率:72%)得た。
(10)有機溶媒溶液の調製方法−1
脱水トルエンにイオン交換水を加え、強く攪拌して、第1表に示す含水トルエンを調製した。この含水トルエンに金属系界面活性剤M−1を最終濃度が0.5重量%になるように加え、室温で30分間攪拌した。次に、この溶液に金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液C−1〜C−4を、第1表に示す所定量滴下し、滴下終了後、室温で3時間攪拌して、溶液(SA−1〜SA−10)を得た。
(11)有機溶媒溶液の調製方法−2
水分量350ppmの含水トルエンに金属系界面活性剤M−1を最終濃度が0.5重量%になるように加え、室温で30分間攪拌した。この溶液に金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液C−1〜C−4を所定量滴下し、滴下終了後、室温で3時間攪拌した。これらの溶液100gを瓶に移し、十分に水を含んだ直径3cmのガラス繊維濾紙(GA−100、東洋濾紙(株)製)を瓶の底に沈ませて蓋をした。室温で2時間静置して溶液(SA−11〜SA−14)を得た。
(12)有機溶媒溶液の調製方法−3
水分量350ppmの含水トルエンに、金属系界面活性剤M−1を最終濃度が0.5重量%になるように加え、室温で30分間攪拌した。この溶液に金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液C−1〜C−7を所定量滴下し、滴下終了後、室温で3時間攪拌した。これらの溶液100gを瓶に移し、18L/分の送風器と木下式ガラスボールフィルターをバブリングに用いて、25℃で、飽和水蒸気をバブリングさせて、水分量調整した溶液(SA−15〜SA−18、SA−22〜SA−25)を得た。
(13)有機溶媒溶液の調製方法−4
脱水トルエンにイオン交換水を加え、強く攪拌して、水分量を100ppmにした含水トルエンを調製した。この溶液に金属系界面活性剤M−1を最終濃度が0.5重量%になるように加え、室温で30分間攪拌した。この溶液に金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液C−3を第1表に示す所定量滴下し、滴下終了後、室温で3時間攪拌した。これらの溶液100gを瓶に移し、10gのイオン交換水を加え、蓋をして25℃で乳化し
ないように軽く5分間攪拌し、水を飽和させた溶液(SA−19、SA−20)を得た。水は、攪拌後、下層に分離していた。
(14)有機溶媒溶液の調製方法−5
有機溶媒溶液の調製方法−3(金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物C−3使用)の方法に準じ、水分量が不明のトルエンを用い、バブリング時間を調整し、水分量が250ppmの溶液(SA−21)を得た。
(15)有機溶媒溶液の調製方法−6
水分量400ppmのテトラヒドロフラン(THF)に、金属系界面活性剤M−2を最終濃度が0.5重量%になるように加え、室温で3時間撹拌した。この溶液100gを瓶に移し、十分に水を含んだ直径3cmのガラス繊維濾紙(GA−100、東洋濾紙(株)製)を瓶の底に沈ませて蓋をした。室温で2時間静置して溶液(SA−26)を得た。
(16)有機溶媒溶液の調製方法−7
比較例用の有機溶媒溶液(R−1〜R−6)を以下のように調製した。
R−1:イオン交換水を加えない以外は有機溶媒溶液の調製方法−1と同様に調製した。R−2〜R−4:脱水トルエンにイオン交換水を加え、強く攪拌して、水分量が100、210、94ppmであるトルエンを調製した。この溶液に金属系界面活性剤M−1を最終濃度が0.5重量%になるように加え、室温で30分間攪拌した。次に、この溶液に金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物C−2を所定量滴下し、滴下終了後、室温で3時間攪拌して調製した。
R−5:金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液を加えない以外は有機溶媒溶液の調製方法−1と同様に調製した。
R−6:脱水トルエンに金属系界面活性剤M−1を溶解し、室温で30分間攪拌後、金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液C−5を滴下し、室温で3時間攪拌して調製した。
(17)有機溶媒溶液の評価
各溶媒または溶液中の水分量、平均粒径、ゼーター電位を下記の方法で測定した。結果を第1表にまとめて示す。
第1表中、処理前の水分量は、SA−1〜SA−10、R−1〜R−6においてはトルエン中の水分量を、SA−11〜SA−14においてはガラス繊維濾紙を入れる前の溶液の水分量を、SA−15〜SA−18、SA−22〜SA−25においてはバブリングする前の溶液の水分量を、SA−19、SA−20においては水を加える前の溶液の水分量を表す。
<水分量>
電量滴定法カールフィッシャー水分計(CA−07、(株)ダイアインスツルメンツ製)により測定した。
<平均粒径>
動的光散乱法粒子径測定装置(HPPS、Malvern社製)により測定した。
<ゼーター電位>
レーザーゼーター電位計(ELS−8000、大塚電子(株)製)により測定した。
*(M−1のモル数):(C溶液中の金属成分の金属酸化物換算モル数)
第1表から、SA−1〜SA−10においては、トルエン中の水分量は、有機溶媒溶液を調製した時点で、当初の半分位に減少することがわかった。その原因は、今のところ不明ではあるが、容器の壁への付着、大気への揮散等が考えられる。
SA−11〜SA−21から、後から水を添加する方法、水を含ませたガラス繊維濾紙を溶液中に共存させる方法、水蒸気を吹き込む方法により、水分量を増やすことができることがわかった。このことは、何らかの原因で水分量が減った有機溶媒溶液であっても、水分を保持できる手段を施すことにより、所定量以上の水分量を確保することができ、保存後溶液を使用する場合に、新たに溶液中の水分量を調整することなく有機溶媒溶液として用いることができることがわかった。
第1表のSA−23〜SA−25の結果より、調製された溶液は外観的には透明であるが、粒子を形成していることがわかった。また、この粒子は、水分および金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液を添加することにより形成されていることがわかった。このことより、金属系界面活性剤M−1が、水、及び金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物との何らかの相互作用により集合体を形成したものと推定された。
調製された溶液は、正のゼーター電位を示した。同一溶液において、基板となるソーダライムガラス、無機アルカリガラス、シリコンウェハーのゼーター電位を測定したところ、それぞれ−42mV、−69mV、−35mVであり、溶液のゼーター電位の値より小さかった。水および金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物溶液を添加しない場合の溶液のゼーター電位値は、0mVであった。
(18)蒸留水(純水)中での基材の洗浄
基材として、ソーダライムガラス(SLG)基板を用意した。15メガオーム以上の抵抗値を有する常温の蒸留水(純水)中に、前記基板を浸し、超音波処理を施しながら10分間超音波洗浄を行った。超音波処理は、超音波処理機 IUC−7321N(東京超音
波技研(株))を用いて、周波数28KHz、処理時間20分、温度20℃で行った。超音波洗浄後、約60℃の温風をあてて乾燥処理を行った。
(19)有機溶媒(アルコール)中での基材の洗浄
乾燥処理した基板を、常温のエタノール中に浸し、10分間、超音波をかけて超音波洗浄を行った。洗浄後、約60℃の温風をあてて乾燥処理を行った。
(20)オゾン水又は過酸化水素水による洗浄
15メガオーム以上の抵抗値を有する純水中にオゾンを溶解させて、オゾン濃度を80ppmに調整した常温のオゾン水を調製した。このオゾン水を基板表面上に、オゾン水量0.5L/分でかけて洗浄を行った。洗浄後、基板表面を純水及びエタノールで洗浄し、約60℃の温風をあてて乾燥処理を行った。
又、オゾン水に代えて、常温で10重量%濃度の過酸化水素水に基板を浸漬し、基板表面の洗浄を行った。洗浄後、オゾン水の場合と同様に乾燥処理を行った。
(21)有機薄膜の形成
純水及びエタノールで洗浄したSLG基板を、上記の有機溶媒溶液(SA−6)中に浸漬した後、有機溶媒溶液から引き上げた。SLG基板に付着した液をエアーで吹き飛ばした後、常温の有機溶媒(NSクリーン:株式会社ジャパンエナジー製)中で1分間、超音波洗浄を行った。洗浄後、基板表面に約60℃の温風をあてて乾燥処理を行った。その結果、基板表面にきれいに密着して形成された膜厚2.5nmの有機薄膜が得られた。

Claims (21)

  1. 基材表面に有機薄膜を形成する有機薄膜の製造方法であって、基材をオゾン水又は過酸化水素水で洗浄する工程(A)を有することを特徴とする有機薄膜の製造方法。
  2. 有機薄膜を形成させる工程(B)を工程(A)より後にさらに有することを特徴とする請求項1に記載の有機薄膜の製造方法。
  3. 工程(B)が、工程(A)で処理された基材表面に有機薄膜を形成させる工程(B−1)であることを特徴とする請求項2に記載の有機薄膜の製造方法。
  4. オゾン水中のオゾンの濃度が、5〜100ppmの範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  5. 過酸化水素水中の過酸化水素の濃度が1〜30重量%の範囲内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  6. 工程(B)が、真空蒸着法、液相成長法、化学気相成長法、ラングミュア法、スパッタリング法、ディップ法、スプレーコート、スピンコート、ローラーコート、刷毛塗り及びスクリーン印刷からなる群から選ばれる少なくとも1種の方法を用いることを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  7. 工程(B)が、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機溶媒溶液に、ディップ法を用いて前記基材を接触させることを含む工程(B−2)であることを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  8. 基材を蒸留水で洗浄する工程(C)、及び/又は基材を有機溶媒で洗浄する工程(D)を、工程(A)より前及び/又は後にさらに有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  9. 接触させた基材を有機溶媒で洗浄する工程(E)、工程(E)で洗浄した基材を乾燥する工程(F)を、工程(B)より後にさらに有することを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  10. 少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤が、式(I)
    MXm−n (I)
    〔式中、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基、連結基を含む炭素数1〜30の炭化水素基、又は連結基を含む炭素数1〜30のハロゲン化炭化水素基を表し、Mは、ケイ素原子、ゲルマニウム原子、スズ原子、チタン原子、及びジルコニウム原子からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属原子を表し、Xは、水酸基又は加水分解性基を表し、mはMの原子価を表す。nは、1から(m−1)のいずれかの正整数を表し、nが2以上の場合、Rは、同一でも相異なっていてもよい。(m−n)が2以上の場合、Xは同一であっても、相異なっていてもよいが、Xのうち、少なくとも一個は加水分解性基である。〕で表される化合物であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  11. 式(I)で表される化合物が、式(II)
    〔式中、M、X及びmは前記と同じ意味を表す。R21〜R23、R31及びR32は、それぞれ独立して水素原子又はフッ素原子を表し、Rは、アルキレン基、ビニレン基、エチニレン基、アリーレン基、又はケイ素原子及び/若しくは酸素原子を含む2価の連結基を表す。Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、含フッ素アルキル基又は含フッ素アルコキシ基を表す。pは0又は自然数を表し、qは0又は1を表す。pが2以上のとき、式:C(R31)(R32)で表される基は同一であっても異なっていてもよい。rは0又は1から(m−2)のいずれかの正整数を表し、rが2以上のとき、Yは同一でも相異なっていてもよく、(m−r−1)が2以上のとき、Xは同一でも相異なっていてもよい。但し、Y及びXのうち、少なくとも一個は水酸基又は加水分解性基である。〕で表される化合物であることを特徴とする請求項10に記載の有機薄膜の製造方法。
  12. 金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物が、金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化又は配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物;シラノール縮合触媒から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項7〜11のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  13. 金属酸化物;金属水酸化物;金属アルコキシド類;キレート化又は配位化された金属化合物;金属アルコキシド類部分加水分解生成物;金属アルコキシド類を該金属アルコキシド類の2倍当量以上の水で処理して得られた加水分解生成物、及びシラノール縮合触媒における金属が、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、インジウム、スズ、タンタル、亜鉛、タングステン及び鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項12に記載の有機薄膜の製造方法。
  14. 工程(B−2)において、有機溶媒溶液が、所定の範囲内の水分含量に調整され、かつ保持された有機溶媒溶液であることを特徴とする請求項7〜13のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  15. 所定の範囲内の水分含量における所定の範囲が、30〜1000ppmの範囲であることを特徴とする請求項14に記載の有機薄膜の製造方法。
  16. 有機溶媒溶液の有機溶媒が、炭化水素系溶媒又はフッ化炭素系溶媒であることを特徴とする請求項7〜15のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  17. 工程(B−2)が、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤、及び該金属系界面活性剤と相互作用し得る化合物を含有する有機溶媒溶液中に、前記基材を浸漬させることを含む工程(B−3)であることを特徴とする請求項7〜16のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  18. 基材が、金属、ガラス、シリコンウェハー、セラミックス、紙、繊維及びプラスチックからなる群から選ばれる少なくとも一種から構成されていることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  19. 有機薄膜が、単分子膜であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  20. 単分子膜が、化学吸着膜及び/又は自己集合膜であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の有機薄膜の製造方法。
  21. 工程(B−2)の有機溶媒溶液中において、少なくとも1以上の加水分解性基を有する金属系界面活性剤を含む集合体が形成されていることを特徴とする請求項7〜20のいずれか記載の有機薄膜の製造方法。
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