JP4523093B2 - 2−アミノ−ブロモピラジン類の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶媒中、脱臭化水素剤の存在下、少なくとも1つの水素原子をピラジン核に有する2−アミノピラジン類を臭素と反応させて2−アミノ−ブロモピラジン類を製造する方法に関するものである。2−アミノ−ブロモピラジン類は医薬原料等として有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶媒中、脱臭化水素剤の存在下、少なくとも1つの水素原子をピラジン核に有する2−アミノピラジン類を臭素と反応させて2−アミノ−ブロモピラジン類を製造する方法は公知であり、反応溶媒としてハロゲン化水素が使用されている。例えば、クロロホルム溶媒中、脱臭化水素剤としてのピリジンの存在下、2−アミノ−5−メチルピラジン又は2−アミノ−3−メチルピラジンを、臭素と室温で反応させて2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルピラジン又は2−アミノ−5−ブロモ−3−メチルピラジンを製造する方法[Journal of Heterocyclic Chemistry,17,143(1980)]、また同様の方法で2−アミノピラジンから2−アミノ−5−ブロモピラジン及び/又は2−アミノ−3,5−ジブロモピラジンを製造する方法[Journal of Heterocyclic Chemistry,19,673(1982)]が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来法は、いずれも反応溶媒であるクロロホルムを原料の2−アミノピラジン類1重量部に対して約160重量部使用している。本発明者らは従来の2−アミノ−ブロモピラジン類の製造において大量に使用されている反応溶媒の使用量の低減について検討を行った。従来法によれば、例えば2−アミノ−5−メチルピラジンから2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルピラジンが収率74%で得られているが、後述の比較例のとおり溶媒としてのクロロホルムの使用量を少なくすると目的とする2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルピラジンの収率が低下することが判明した。このように従来法は、溶媒を大量に使用しなければらないため容器効率が悪く、工業的に2−アミノ−ブロモピラジン類を製造するには適した方法とは言い難い。
したがって本発明は、溶媒中、脱臭化水素剤の存在下、少なくとも1つの水素原子をピラジン核に有する2−アミノピラジン類を臭素と反応させて2−アミノ−ブロモピラジン類を製造する方法において、溶媒の使用量を少なくして2−アミノ−ブロモピラジン類を好収率で製造できる生産性のよい方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、上記従来法のクロロホルムを溶媒として使用する方法において、クロロホルムにエーテル類及びエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を添加すると、従来に比べて少ない溶媒量で目的の2−アミノ−ブロモピラジン類を収率よく製造できた。更に検討したところクロロホルムに代えてエーテル類及びエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物だけを溶媒として使用しても、従来に比べて少ない溶媒量で目的の2−アミノ−ブロモピラジン類を収率よく製造できたのである。
このようにエーテル類及びエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物又は当該化合物とハロゲン化炭化水素の混合物を溶媒として使用すると、従来に比べて少ない溶媒量で目的の2−アミノ−ブロモピラジン類を収率よく製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち本発明は、溶媒中、脱臭化水素剤の存在下、少なくとも1つの水素原子をピラジン核に有する2−アミノピラジン類を臭素と反応させて2−アミノ−ブロモピラジン類を製造する方法において、エーテル類及びエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物又は当該化合物とハロゲン化炭化水素の混合物を溶媒として使用することを特徴とする2−アミノ−ブロモピラジン類の製造方法に関する。
【0006】
本発明は、従来に比べて溶媒の使用量を少なくして反応を行っても好収率で2−アミノ−ブロモピラジン類を製造できる生産性のよい2−アミノ−ブロモピラジン類の製造法である。また本発明によれば、環境に悪影響を及ぼすクロロホルム等のハロゲン化炭化水素の使用量を少なくして又はハロゲン化炭化水素を使用しなくても2−アミノ−ブロモピラジン類を好収率で製造できる。このように本発明はアミノ−ブロモピラジン類の工業的製造法として優れた方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明において使用する少なくとも1つの水素原子をピラジン核に有する2−アミノピラジン類(以下、単に2−アミノピラジン類という。)は、好ましくは、一般式(1):
【0008】
【化2】
(式中、R1、R2及びR3は互いに同じか又は異なってそれぞれ水素原子、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルコキシ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表し、R4及びR5は互いに同じか又は異なってそれぞれ水素原子又はアルキル基を表す。ただしR2及びR3の少なくとも1つは水素原子である。)で示される化合物が挙げられる。上記一般式(1)中、R1、R2及びR3で表されるアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられ、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基である。R1、R2及びR3で表されるアラルキル基としては、ベンゼン核にメチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等の置換基を1つ以上有していてもよいベンジル基及びフェネチル基等が挙げられ、好ましくは、ベンジル基である。R1、R2及びR3で表されるアリール基としては、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子等の置換基を1つ以上有していてもよいフェニル基、ナフチル基等が挙げられ、好ましくはフェニル基である。R1、R2及びR3で表されるアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等が挙げられ、好ましくはメトキシ基である。またR1、R2及びR3で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、好ましくは臭素原子である。一般式(1)中、R4及びR5で表されるアルキル基は、上記R1、R2及びR3で表されるアルキル基と同様である。特に好ましい2−アミノピラジン類は、上記一般式(1)において式中のR1、R2及びR3が互いに同じか又は異なってそれぞれ水素原子又はアルキル基を表し、R4及びR5がそれぞれ水素原子を表す化合物であり、その具体例としては、2−アミノピラジン、2−アミノ−3−メチルピラジン、2−アミノ−5−メチルピラジン、2−アミノ−6−メチルピラジン等が挙げられる。
【0009】
本発明においては、2−アミノピラジン類を臭素と反応させる際に、溶媒としてエーテル類及びエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物又は当該化合物とハロゲン化炭化水素の混合物を使用することが重要である。
【0010】
エーテル類としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、エチルイソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル等の脂肪族エーテル類、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等の脂環式エーテル等が挙げられる。またエステル類としては、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、酪酸メチル、酪酸エチル等の脂肪族カルボン酸のアルキルエステルが挙げられる。
【0011】
本発明の溶媒がエーテル類及びエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物とハロゲン化炭化水素との混合物であるとき、ハロゲン化炭化水素としては、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素、塩化エチル、塩化エチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等が挙げられる。このとき混合物中のエーテル類及びエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量は通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上となるようにするのがよい。混合物中のエーテル類及びエステル類からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物の含有量が上記範囲よりも少なくてもハロゲン化炭化水素だけを溶媒としたときに比べて溶媒の使用量を少なくして目的物を好収率で製造することができるが、上記範囲であれば溶媒の量をより少なくすることができる。
【0012】
本発明の溶媒の使用量は、2−アミノピラジン類1重量部に対して通常5〜150重量部、好ましくは30〜80重量部であり、使用量が多い程目的物の収率が向上する傾向がある。溶媒の使用量が5重量部よりも少ないと収率が低くなり、一方150重量部よりも多く使用しても反応には特に問題はないが容器効率が悪くなることから上記範囲がよい。
【0013】
本発明によれば、反応に使用した2−アミノピラジン類から該2−アミノピラジン類がピラジン核に有する少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つ臭素原子に置換された2−アミノ−ブロモピラジン類が得られる。例えば、上記一般式(1)で示される2−アミノピラジン類からは、当該2−アミノピラジン類における式中のR2及びR3の少なくとも1つの水素原子が少なくとも1つ臭素原子に置換された2−アミノ−ブロモピラジン類が製造できる。そして一般式(1)で示される2−アミノピラジン類において式中のR2又はR3のいずれか一方が水素原子であり、他方が水素原子以外の置換基であるとき、R2又はR3のいずれかである水素原子が臭素原子に置換された2−アミノ−モノブロモピラジン類が得られる。また一般式(1)中のR2及びR3の両者が水素原子であるとき、これら水素原子のいずれか1つが臭素原子に置換された2−アミノ−モノブロモピラジン類及び/又はこれら水素原子の両者が臭素原子に置換された2−アミノ−ジブロモピラジン類が得られ、臭素の使用量が多くなるにしたがって2−アミノ−ジブロモピラジン類の生成割合が増大する。
【0014】
本発明における臭素の使用量は、2−アミノピラジン類及び目的とする2−アミノ−ブロモピラジン類に応じて、2−アミノピラジン類1モルに対して通常0.5〜5モル、好ましくは0.9〜3モルの範囲から適宜選択される。
【0015】
2−アミノピラジン類がピラジン核に水素原子を1つだけ有するときには、上記臭素の使用量の範囲において対応する2−アミノ−モノブロモピラジン類を好収率で得ることができるが、特に好ましくは2−アミノピラジン類1モルに対して0.9〜1.1モルの臭素を使用するのがよい。
【0016】
また2−アミノピラジン類がピラジン核に水素原子を2個有するときには、2−アミノ−モノブロモピラジン類及び/又は2−アミノ−ジブロモピラジン類が生成し、上記臭素の使用量の範囲において少量であるときに2−アミノ−モノブロモピラジン類が選択的に生成し、使用量が多くなるにしたがって2−アミノ−ジブロモピラジン類の生成割合が増大し、最終的に2−アミノ−ジブロモピラジン類が選択的に生成する。2−アミノブロモピラジン類1モルに対する臭素の使用量が1.3モル以下、好ましくは0.9〜1.1モルのとき2−アミノ−モノブロモピラジン類が主生成物として好収率で生成し、2−アミノブロモピラジン類1モルに対する臭素の使用量が1.8モル以上、好ましくは1.8〜2.2モルのとき2−アミノ−ジブロモピラジン類が主生成物として好収率で生成する。
【0017】
また本発明には脱臭化水素剤を使用する。脱臭化水素剤としては、従来公知のものが使用できる。脱臭化水素剤の具体例としては、ピリジン、ピコリン、ルチジン等のピリジン塩基類、トリエチルアミン、トリn−ブチルアミン、トリn−アミルアミン、トリエチレンジアミン等の第3級アミン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等のカルボン酸塩類などが挙げられ、好ましくはピリジン塩基類である。
【0018】
脱臭化水素剤の使用量は、本発明の反応により副生する臭化水素の生成量に基づいて決定され、副生する臭化水素と等モル以上の脱臭化水素剤が用いられるが、通常反応に使用する臭素1モルに対して1モル以上の脱臭化水素剤が使用され、好ましくは臭素と等モルの脱臭化水素剤を使用する。
【0019】
また本発明の反応を実施する方法としては、例えば、2−アミノピラジン類及び溶媒の混合物に、攪拌下、臭素又は臭素と溶媒との混合物を加えて反応させる方法が挙げられる。反応温度は、通常−10℃〜100℃、好ましくは30〜60℃である。また、反応圧は特に制限はなく、減圧下、常圧下及び加圧下のいずれでも反応を行うことができるが、常圧下で反応を行うのが簡便である。
【0020】
反応終了後の反応混合物からは、従来公知の単離精製操作を行って2−アミノ−ブロモピラジン類を容易に単離することができる。
【0021】
【実施例】
以下に実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明を以下の実施例のみに限定するものではない。以下の実施例における転化率及び収率は、以下の定義にしたがって計算した。
【0022】
【数1】
【0023】
【数2】
【0024】
実施例1
2−アミノ−5−メチルピラジン5.5g(0.050モル)、ピリジン4.2g(0.053モル)及び1,4−ジオキサン240gの混合物に、攪拌下、40℃で臭素8.5g(0.053モル)を0.5時間かけて滴下し、その後同温度で1.5時間撹拌して反応させた。反応終了後の反応液を室温まで冷却し、10gの水を加えてしばらく撹拌し、次いで静置して2層に分液させた。分液した上層を取り出し、得られた溶液をガスクロマトグラフィーで分析した結果、2−アミノ−5−メチルピラジンの転化率は99.9%及び2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルピラジンの収率は78%であった。
【0025】
比較例1
実施例1において1,4−ジオキサン240gに代えてクロロホルム270gを使用し、反応温度を19〜26℃とした以外は実施例1と同様に行った。その結果、2−アミノ−5−メチルピラジンの転化率は99.9%及び2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルピラジンの収率は50%であった。
【0026】
実施例2
実施例1において1,4−ジオキサン240に代えて1,4−ジオキサン44gとクロロホルム196gの混合溶媒を使用した以外は実施例1と同様に行った。その結果、2−アミノ−5−メチルピラジンの転化率は99.9%及び2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルピラジンの収率は75%であった。
【0027】
実施例3
実施例1において1,4−ジオキサンに代えて酢酸エチル240gを使用した以外は実施例1と同様に行った。その結果、2−アミノ−5−メチルピラジンの転化率は99.9%及び2−アミノ−3−ブロモ−5−メチルピラジンの収率は71%であった。
Claims (1)
- 溶媒中、ピリジン塩基類又は第3級アミンからなる脱臭化水素剤の存在下、一般式(1):
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