JP4522615B2 - 表面処理アルミニウム材及びアルミニウム成形体 - Google Patents

表面処理アルミニウム材及びアルミニウム成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、表面処理アルミニウム材及びその製造方法並びにアルミニウム成形体に関する。さらに詳しくは、耐食性に優れた表面処理アルミニウム材及びこの表面処理アルミニウム材を成形加工して得られるアルミニウム成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電機部品外筐、エアコンフィン材、自動車や航空機の構造体や建材パネル等のアルミニウム成形体には、従来より、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該金属基材の表面に形成された陽極酸化皮膜(いわゆるアルマイト酸化皮膜)からなる下地層とを有する表面処理アルミニウム材が用いられている。
【0003】
この陽極酸化被膜は、基本的にはアルミニウム板の表面部分に形成される無孔質のバリア層の上に、多孔質層が成長して形成される。通常、このような多孔質陽極酸化被膜の空孔率は、60〜70%である。なお、空孔率とは、陽極酸化被膜の表面を見た場合に、孔のあいている面積を全面積で除算した値である。
【0004】
本発明者は、かかる多孔質陽極酸化被膜を有する表面処理アルミ材の、耐食性、ガス放出性、アルミ基材に対する密着性を改善する目的で、空孔率が5%未満である無孔質の陽極酸化被膜を得る技術について研究開発を進め、その成果を、特開平5−25694号、特開平8−283991号、特開平8−283990号、特開平9−184093号などにおいて特許出願している。
また、本発明者は、無孔質ではなくとも、空孔率が5〜30%である微孔質陽極酸化被膜であれば、耐食性、ガス放出性、密着性を著しく改善できることを知見し、その研究成果を特願2000−379382号として出願した。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、無孔質、又は微孔質の陽極酸化被膜は、多孔質陽極酸化被膜に比較して耐食性等に優れているものであった。しかし、高温の湿潤環境等の強い腐食環境下においては、必ずしも耐腐食強度が充分であるとは言えなかった。
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、高温の湿潤環境等の強い腐食環境下においても適応可能な、優れた耐食性を有する表面処理アルミニウム材及びこの表面処理アルミニウム材を成形加工して得られるアルミニウム成形体を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を検討した結果、表面処理アルミニウム材の腐食が、陽極酸化被膜表面に生じたクラックを基点として発生することを見出した。そして、かかる知見に基づき鋭意検討した結果、リン酸塩又はケイ酸塩を塗布すれば、上記クラックの中にリン酸塩又はケイ酸塩が流れ込み、クラック内から進行する腐食を抑制できることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は上記課題を解決するため、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該金属基材の表面に形成された陽極酸化皮膜からなる下地層と、この下地層の表面に塗布されたリン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アルミニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウムのいずれかからなる塗布層とを備え、前記陽極酸化被膜の空孔率が30%以下であり、前記陽極酸化被膜の膜厚が0.005〜1.0μmであり、前記塗布層の塗布量が0.001〜5g/m であることを特徴とする表面処理アルミニウム材を提供する。本発明によれば、無孔質、又は微孔質の陽極酸化被膜にリン酸塩の一水素塩又は二水素塩の一種以上を塗布することによって、クラックの中にリン酸塩又はケイ酸塩が流れ込み、クラック内から進行する腐食を抑制できるので、極めて良好な耐食性を示す表面処理アルミニウム材とすることができる。
【0008】
本発明において、陽極酸化被膜の膜厚は、0.005μm以上とする。0.005μmより薄ければ耐食性向上の効果が得られないからである。また、陽極酸化被膜の膜厚は0.05μm以上とすることが、より望ましい。これにより、空孔率の安定した皮膜が得られ、良好な耐食性とすることができる。一方、陽極酸化被膜の膜厚は1.0μm以下とする。陽極酸化被膜の膜厚が厚いほど、金属基材を保護して腐食を防止する効果の向上が期待できるものの、あまり厚くしすぎると表面にクラックが発生し、かえって腐食しやすくなるからである。
なお、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アルミニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウムのいずれかを塗布しない場合は、0.3μm以下としなければクラックによる耐腐食性低下が問題となるが、本発明によればクラックの中にこれらの塩が流れ込む。そのため、クラック内からの腐食の進行を抑制でき、陽極酸化被膜の厚みを充分に確保して、極めて良好な耐食性を示す表面処理アルミニウム材とすることができる。また、陽極酸化被膜の膜厚は0.5μm以下とすることがより望ましい。これにより、折り曲げなどの強加工を加えてもクラックを生じ難くなる。したがって、耐食性に優れたアルミニウム材となる。
【0009】
本発明において、前記リン酸塩としては、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アルミニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二アルミニウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム等が使用可能であるが、特に、一水素塩又は二水素塩を用いることが望ましい。
一水素塩又は二水素塩が望ましい理由は明確ではないが、塗布後の乾燥時に水素が分離して、リン酸塩がより強固に酸化被膜表面と結合するため、他のリン酸塩よりも耐食性が増すためであると考えられる。
また、ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム等が使用可能である。
【0010】
本発明において、前記リン酸塩又はケイ酸塩の一種以上からなる塗布層の塗布量は、0.001g/m2以上であることが望ましい。0.001g/m2よりも少ないと、塗布による効果が得られないからである。
また、塗布層の塗布量は、0.1g/m2以上であることが、より望ましい。これにより、ムラなく均一に塗布でき、安定した塗布効果が得られる。
一方、塗布層の塗布量は、5g/m2以下とすることが望ましい。5g/m2を越えても耐食性の向上は見られないので、これよりも多く塗布することは、製造コスト上ふさわしくないからである。
また、塗布層の塗布量は、2.0g/m2以下とすることが、より望ましい。これにより、塗布による表面の白色化がなく、良好な外観が得られる。
【0011】
本発明は、また、本発明に係る表面処理アルミニウム材を、成形加工したことを特徴とするアルミニウム成形体を提供する。成形体としては、たとえば、電機部品外筐、エアコンフィン材、自動車や航空機の構造体や建材パネル等が挙げられる。
本発明によれば、高温の湿潤環境等の強い腐食環境下においても適応可能な耐食性に優れたアルミニウム成形体とすることができる。
なお、成形加工は、金属基材に表面処理を施す前、又は表面処理の途中で行っても良いが、成形加工の前にすべての表面処理を終了させる方が、多量の表面処理を迅速に行えるので望ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る表面処理アルミニウム材Aを示すもので、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材1と、この金属基材1の表面に形成された陽極酸化皮膜からなる下地層2と、この下地層の表面にリン酸塩が塗布された塗布層3とを具備して板状に形成されている。
【0013】
前記金属基材1は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなり、純アルミニウムの他に、純アルミニウム系のJIS1000系合金、Al−Cu系のJIS2000系合金、Al−Mn系のJIS3000系合金、Al−Si系のJIS4000系合金、Al−Mg系のJIS5000系、Al−Mg−Si系のJIS6000系合金、あるいは、Al−Zn−Mg系のJIS7000系合金等から、用途に対応して適宜選択して使用できる。
たとえば、建築パネル等にはJIS4000系合金が、内外装板、装飾部品、銘板等にはJIS5000系合金が、建築、装飾品等にはJIS6000系合金が、フィン材等にはJIS7000系合金が好適に採用できる。
また、金属基材1としては、これらの合金等に溶体化処理、時効処理等の種々の調質処理を施したものも使用される。また、これらの素材の各種圧延板が好んで使用されるが、これらのアルミニウム合金のクラッド材も使用可能である。
【0014】
前記下地層2は、前記金属基材1を陽極酸化することで形成される。この陽極酸化処理(いわゆるアルマイト処理)は、基材を構成するアルミニウム又はアルミニウム合金を電解液に浸漬して陽極処理を行う陽極酸化処理によって陽極酸化被膜を形成するものである。
下地層2は、このような陽極酸化処理を後述する特定の方法で行うことにより、空孔率30%以下の微孔質又は無孔質の陽極酸化被膜(アルマイト被膜)から形成されている。なお、空孔率とは、陽極酸化被膜表面の測定領域において孔の形成されている部分の面積を全測定面積で除算した値、すなわち、空孔率=(孔のあいている面積)/(全測定面積)の関係式で示されるものである。
また、下地層2の膜厚は、0.005〜1.0μmとされている。これは、0.005μmより薄ければ耐食性が得られず、一方、1.0μmよりも厚いと、多孔質化しやすくなり、無孔質膜又は微孔質膜とすることが困難だからである。なお、より望ましい膜厚の範囲は0.05〜0.2μmである。
【0015】
前記塗布層3は、リン酸塩又はケイ酸塩を下地層2に塗布することにより形成されている。リン酸塩の種類に特に限定はないが、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アルミニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二アルミニウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素マグネシウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、リン酸三アンモニウム等が使用可能である。また、ケイ酸塩の種類に特に限定はないが、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム等が使用可能である。
【0016】
塗布層3におけるリン酸塩又はケイ酸塩の塗布量は、0.001〜5g/m2である。これは、0.001g/m2よりも少ないと、塗布による効果が得られず、5g/m2を越えても、耐食性の向上は期待できないからである。なお、より望ましい塗布量は、0.1〜2.0mg/m2である。
【0017】
本実施形態の表面処理アルミニウム材Aによれば、無孔質、又は微孔質の陽極酸化被膜である下地層2を備えているので、孔から腐食性物質が侵入しにくく、耐食性が向上する。
また、リン酸塩又はケイ酸塩を塗布して形成される塗布層3を備えることによって、クラックの中にリン酸塩又はケイ酸塩が流れ込み、クラック内から進行する腐食を抑制できる。
これによって、極めて良好な耐食性を示す表面処理アルミニウム材とすることができる。
【0018】
なお、種々の用途に対応して、塗布層3の表面にさらに別の層が1層、又は2層以上被覆されたものであってもよい。
例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂等の有機樹脂フイルムの層、TiO2(チタニア)、ZnO、SnO2、SrTiO3、WO3、Fe23等を用いた光触媒層、発色層、耐食性皮膜、耐摩耗成膜、導電膜等が、1層、又は2層以上被覆されたものとすることができる。
【0019】
この表面処理アルミニウム材Aは、プレス加工、絞り加工、しごき加工等の塑性加工により必要な形状に加工して種々の目的に使用されるアルミニウム成形体とすることができる。たとえば、電機部品外筐、エアコンフィン材、自動車や航空機の構造体や建材パネル等が挙げられる。
図2は、係るアルミニウム成形体の一実施形態として、エアコン用の熱交換器の一例を示すもので、この例の熱交換器Bは、フィン部材が多数積層された構成のフィン材14に蛇行状態のチューブ13を配して構成されている。
この構造の熱交換器Bはフィン材14が先に説明した表面処理アルミニウム材Aであって、塗布層3の表面にさらに光触媒層をコーティングしてなるものから構成されている。
本実施形態によれば、本実施形態の表面処理アルミニウム材を用いているので、耐食性・耐汚れ性に優れると共に、光触媒をコーティングしていることによりさらに耐汚れ性に優れた熱交換機とすることができる。
【0020】
次に、本実施形態の表面処理アルミニウム材の製造方法について説明する。
本実施形態の表面処理アルミニウム材は、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材の表面を電解処理することにより陽極酸化皮膜を形成し、この陽極酸化皮膜の表面にリン酸塩又はケイ酸塩を塗布することにより、製造することができる。
【0021】
上記陽極酸化皮膜として空孔率30%以下の無孔質又は微孔質の酸化皮膜を形成するには、陽極酸化皮膜が多孔質化する前の段階で電解を停止し、多孔質皮膜が成長する前の段階で電解を停止することで多孔質皮膜が成長する前の段階の皮膜を得ることにより行う方法が好ましい。
【0022】
ここで用いる電解液としては、硼酸、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸から選ばれる1種以上を含む溶液が用いられる。これらの溶液を用いることにより、空孔率を安定して調整することができる。
また、これらの溶液の他に、例えば珪酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、マレイン酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、アジピン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩の内から選ばれた少なくとも一種の塩を用いても良い。添加量は添加する塩の種類や電解条件によっても異なるが、おおむね2〜150g/l程度である。
【0023】
これらの電解液を用いてアルミニウム又はアルミニウム合金からなる基材21を陽極酸化すると、電解の初期段階において無孔質のバリア層と称される陽極酸化皮膜が成長し、この無孔質の陽極酸化皮膜の成長が所定の段階まで進むと、この無孔質の皮膜上に多孔質層が急激に成長して多孔質の陽極酸化皮膜が生成される。ここで多孔質の陽極酸化皮膜とは、無孔質の薄いバリア層の上に多孔質層が成長したものを意味する。
【0024】
次に、この種の陽極酸化皮膜の成長モデルを図3に示すグラフを参照して説明する。
図3に示すグラフの横軸は下地層である陽極酸化皮膜の厚さ、縦軸はその空孔率を示す。この図に示すように、通常多孔質陽極酸化皮膜を製造すると、500〜1000Å程度の膜厚の無孔質膜が生成した後、膜厚がほとんど増加しないまま急激な空孔率の上昇が起こり、空孔率が30%を越えるあたりから膜厚増加と空孔率増加の関係が比例関係に移るような成長曲線を示す。
【0025】
図3に示す成長曲線は、陽極酸化皮膜のモデル的な一例であるが、電解液の濃度や種類、印加電圧、印加電流密度を多少異なる条件としたとしても、ある膜厚の無孔質層が生成した後、空孔率が急激に上昇し、その後空孔率30%を越えるあたりから膜厚増加と空孔率増加の関係が比例関係に移るようになって多孔質陽極酸化皮膜が生成する傾向は同様となる。
【0026】
図3に示す陽極酸化皮膜の成長モデルからみると、下地層2として用いる空孔率30%以下の無孔質又は微孔質の陽極酸化皮膜を得るためには、陽極酸化皮膜の成長過程で空孔率が低い状態において電解処理を停止すれば良いこととなる。尚、図3に示す成長モデルからみると、電解の初期段階では空孔率5%以下の無孔質層陽極酸化皮膜も存在するので、陽極酸化処理の最初期段階において電解を停止することで無孔質陽極酸化皮膜を得ることもできる。
【0027】
下地層2として無孔質又は微孔質陽極酸化皮膜を得るには、膜厚0.005〜1.0μm以下の範囲、空孔率30%以下となるような電解条件で電解処理を停止すれば良い。これらの条件において陽極酸化皮膜のより好ましい範囲としては、膜厚0.05μm〜0.5μm、空孔率10%である。
【0028】
ここで用いる電解液として、硼酸、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸の1種又は2種以上を選択する場合、一般に、電解電圧(V)×(14〜16)の値を陽極酸化皮膜の膜厚が越えると、多孔質化を開始することがわかっている。よって、この電圧以下で膜厚を制御するならば、無孔質の陽極酸化皮膜あるいは微孔質の陽極酸化皮膜を形成することができる。この関係から、微孔質陽極酸化皮膜を製造する場合に膜厚(Å)は、電解電圧(V)×25よりも小さく設定することが好ましく、電解電圧(V)×18よりも小さく設定することがより好ましい。
【0029】
さらに、前記陽極酸化皮膜上にリン酸塩の塗布層3を形成する。この塗布層3は、リン酸塩又はケイ酸塩を、水に溶解して塗布したり、バインダー、有機物、エポキシ系やアクリル系等の樹脂組成物等に混ぜて塗布することができる。
また、塗布の方法に特に限定はなく、ロールコート法、スプレーコート法、バーコート法、ディッピング法などの従来から知られている方法を採用することができる。
塗布層の望ましい塗布量は、他の共存物の有無にかかわらず、リン酸塩又はケイ酸塩として、0.001〜5g/m2である。
【0030】
【実施例】
表1に本発明の実施例及び比較例を示す。表1は、種々の条件で下地層及び塗布層を形成した表面処理アルミニウム材について、各々SST試験、湿潤試験により耐食性を評価した結果を示すものである。なお、本発明は表1に示す実施例に限定されるものではない。
【0031】
【表1】
Figure 0004522615
【0032】
表1に示す各実施例及び比較例の製造方法は以下のとおりである。まず、アルミニウム合金素材として0.1mmまで圧延したJIS5052板材を準備した。この板材を10%NaOH水溶液で50℃で30秒間エッチングした後、30秒間水洗した。引き続き、10%HNO3溶液で30秒間洗浄した後、30秒間水洗した。
【0033】
次いで、上記アルミニウム合金を陽極にして、電解処理を行い陽極酸化被膜の下地層を形成した。各々の電解条件と形成された下地層の空孔率及び膜厚を表1に示した。
尚、下地層の空孔率は、陽極酸化皮膜表面を10万倍の電子顕微鏡で観察し、表面に存在する孔の総面積を板材の全面積で除して算出した。
【0034】
電解処理を終了した後、板材を15秒間水洗し、110℃の温度で乾燥した。そして、この板材に塗布塩を水に溶解してロールコーターで塗布した後、150℃で5分間乾燥した。
塗布塩の種類、塗布量は、各々表1に示すとおりである。
【0035】
このようにして得られた各実施例、比較例の表面処理アルミニウム材について、SST試験、湿潤試験を行い、耐食性を評価した。
SST試験は、5%NaClを35℃において720時間1〜2ml/時で噴霧した後の表面状態を観察して行った。そして、外観に変化がないものを○、やや変化が見られるものを△、腐食されたものを×とした。
【0036】
また、湿潤試験は、50℃で95%以上の相対湿度を有する環境に168時間暴露して行った。そして、外観に全く変化がないものを◎、一部に軽い変色はあるが腐食は見られないものを○、全面に変色はあるが腐食は見られないものを△、腐食されたものを×とした。
【0037】
表1に結果を示すように、下記のことが確認された。まず、試験例7等に示すように、下地層の空孔率20%以下では、いずれの試験結果も良好であったが、試験例8に示すように空孔率30%では、湿潤試験の試験項目で、△という問題があった。さらに、比較例3に示すように、空孔率35%ではSST試験の結果が△、湿潤試験の結果が×であった。これにより、下地層の空孔率は、30%以下とすべきことが確認された。
【0038】
次に、試験例1、6等に示すように、下地層の膜厚が0.005〜1.0μmの範囲では、いずれの試験項目も良好であったが、比較例4、5に示すように、この範囲をわずかでもはずれると、SST試験及び湿潤試験の双方で×の欠かであった。これにより、下地層の膜厚は、0.005〜1.0μmとすべきことが確認された。
【0039】
次に、試験例に示すように、塗布塩が、リン酸塩又はケイ酸塩の場合は、ほぼ良好な結果であったが、試験例18〜20に示すように、一水素塩、二水素塩以外のリン酸塩を塗布した場合は、湿潤試験の結果が△であった。また、比較例6〜8に示すように、塗布塩が、リン酸塩又はケイ酸塩のいずれでもない場合は、SST試験及び湿潤試験の双方の結果が×であった。これにより、塗布塩として好適なのはリン酸塩又はケイ酸塩であり、リン酸塩の場合は、一水素塩又は二水素塩が望ましいことが確認された。
【0040】
次に、試験例9〜11等に示すように、リン酸塩の塗布量が、0.001〜5g/mの場合では、いずれの試験項目も良好であったが、比較例2,6に示すように、この範囲をわずかでもはずれるといずれの試験項目でも良好な結果が得られなかった。これにより、リン酸塩の塗布量は、0.001〜5g/mとすべきことが確認された。さらに、試験例1と、試験例10とを比較して理解されるように、リン酸塩の塗布量は、0.1〜2g/mとすることがより望ましいことが確認された。
【0041】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように、本発明の表面処理アルミニウム材は、高温の湿潤環境等の強い腐食環境下においても、優れた耐食性を発揮するので、電機部品外筺、エアコンフィン材、自動車や航空機の構造体や建材パネル、アルミニウムの2ピース缶等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る表面処理アルミニウム材の1実施形態の構造を示す断面図である。
【図2】 本発明に係るアルミニウム成形体の1実施形態として、エアコン用の熱交換機の一例を示す斜視図である。
【図3】 陽極酸化皮膜を形成する場合の膜厚と空孔率の関係を示すモデル図である。
【符号の説明】
A・・・表面処理アルミニウム材、1・・・金属基材、
2・・・下地層(陽極酸化皮膜)、3・・・塗布層(リン酸塩)、
B・・・熱交換機、13・・・チューブ、14・・・フィン材

Claims (4)

  1. アルミニウム又はアルミニウム合金からなる金属基材と、該金属基材の表面に形成された陽極酸化皮膜からなる下地層と、この下地層の表面に塗布されたリン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素アルミニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウムのいずれかからなる塗布層とを備え、前記陽極酸化被膜の空孔率が30%以下であり、前記陽極酸化被膜の膜厚が0.005〜1.0μmであり、前記塗布層の塗布量が0.001〜5g/m であることを特徴とする表面処理アルミニウム材。
  2. 前記陽極酸化被膜の膜厚が0.04〜1.0μmであり、空孔率が20%以下であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理アルミニウム材。
  3. 前記陽極酸化被膜の膜厚が0.05〜0.5μmであり、前記塗布層の塗布量が0.01〜5g/m であることを特徴とする請求項1に記載の表面処理アルミニウム材。
  4. 請求項1から請求項3の何れかに記載の表面処理アルミニウム材を、成形加工したことを特徴とするアルミニウム成形体。
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