JP2000119866A - リン酸塩皮膜およびリン酸塩皮膜を有するアルミニウム部材並びにリン酸塩皮膜の製造方法 - Google Patents

リン酸塩皮膜およびリン酸塩皮膜を有するアルミニウム部材並びにリン酸塩皮膜の製造方法

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JP2000119866A
JP2000119866A JP10293748A JP29374898A JP2000119866A JP 2000119866 A JP2000119866 A JP 2000119866A JP 10293748 A JP10293748 A JP 10293748A JP 29374898 A JP29374898 A JP 29374898A JP 2000119866 A JP2000119866 A JP 2000119866A
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Hidekazu Ido
秀和 井戸
Takenori Nakayama
武典 中山
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 塗膜に傷が生じて水が侵入した場合でも基板
金属の腐食を抑制し得るリン酸塩皮膜、及び、処理液へ
のフッ化物イオンの添加や通電をせずともアルミニウム
合金にリン酸塩皮膜を形成し得、又、微細な凹凸を有す
るアルミニウム表面の凹部においてもリン酸塩が良好に
付着しリン酸塩皮膜を形成し得るリン酸塩皮膜の製造方
法を提供する。 【解決手段】 一般式xAl2O3 ・yMO・nH2O で表され
る塩基性物質を含有することを特徴とするリン酸塩皮膜
(但し、M =Mg, Ca, Sr又はBa)、Al又はAl合金を、M
g, Ca, Sr, Baから選ばれる1種類以上の水酸化物の水
溶液に浸漬した後、リン酸塩の水溶液に浸漬することを
特徴とするリン酸塩皮膜の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リン酸塩皮膜およ
びリン酸塩皮膜を有するアルミニウム部材並びにリン酸
塩皮膜の製造方法に関し、特には、塗装下地処理として
密着性、耐食性を向上させるために使用されるリン酸塩
皮膜およびその製造方法に関する技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】通常、リン酸塩処理では、被処理材であ
る基板金属が溶解して該金属の表面のpHが上昇する
が、これが駆動力となって、 Zn(H2PO4)2 → H3PO4 + ZnHPO4 ↓ 3Zn(H2PO4)2→4H3PO4 + Zn3(PO4)2 のような反応が進行し、ZnHPO4やZn3(PO4)2 がリン酸塩
皮膜を形成する。
【0003】リン酸塩処理性改善方法としては、アルミ
ニウム−亜鉛合金めっき鋼板をアルカリ洗浄することに
よりアルミニウムを溶解させ亜鉛を濃化させる方法(特
開平5-171461号公報)や、予め酸又はアルカリ水溶液で
アルミニウムを処理した後、マイナス方向に電圧を印加
することにより、フッ素を含まないリン酸塩処理液でも
化成皮膜を形成できる方法(特開平5-287589号公報)が
ある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】 リン酸塩皮膜は塗
装下地に用いられるが、塗膜になんらかの傷が生じて少
量の水が侵入し、下地金属(基板金属)が腐食溶解した
場合、リン酸塩皮膜を含む塗膜下のpHは低下する。即
ち、基板金属が鉄やアルミニウムの場合には、 Fe3++3H2O → Fe(OH)3+3H + Al3++3H2O → Al(OH)3+3H + のように加水分解し、pHは低下する。このため、基板
金属の鉄やアルミニウム等の腐食を促進する。
【0005】 前述の如くリン酸塩皮膜形成の駆動力
となるのは基板金属溶解によるpH上昇であるが、ある
種のアルミニウム合金では溶解性が乏しいためフッ化物
イオンを処理液に添加し溶解性を高める必要がある。こ
のフッ化物イオンは廃液処理を困難にしている。これを
解決しようとしたのが前記特開平5-287589号公報に記載
の方法であるが、この方法においては通電するための設
備があらたに必要になる。
【0006】 自動車パネルなどでは製造工程時の加
工キズの補修などのために表面を荒く研磨し、微細な凹
凸をつけることがあるが、特にアルミニウム材などでは
研磨部、その中でも凹部にはリン酸塩が付着し難く、そ
の結果耐食性が著しく劣化するという問題がある。これ
は前記特開平5-287589号公報等の公報に記載のリン酸塩
処理では解決できないことである。
【0007】上記の如く、従来のリン酸塩皮膜、その製
造方法(リン酸塩処理法)においては、塗膜に傷が生
じて水が侵入した場合に基板金属が腐食するという問題
点、基板金属が溶解性に乏しいアルミニウム合金の場
合に処理液へのフッ化物イオンの添加や通電設備の設置
が必要になるという問題点、微細な凹凸の凹部にはリ
ン酸塩皮膜が形成され難いという問題点がある。
【0008】本発明はこの様な事情に着目してなされた
ものであって、その目的は、塗膜に傷が生じて水が侵入
した場合でも基板金属の腐食を抑制し得るリン酸塩皮
膜、及び、かかるリン酸塩皮膜を備えたアルミニウム部
材、並びに、処理液へのフッ化物イオンの添加や通電を
せずともアルミニウム合金にリン酸塩皮膜を形成し得、
又、微細な凹凸を有するアルミニウム表面の凹部におい
てもリン酸塩が良好に付着しリン酸塩皮膜を形成し得る
リン酸塩皮膜の製造方法を提供しようとするものであ
る。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アルミニ
ウムやアルミニウム合金等の基板金属を水酸化カルシウ
ム水溶液や水酸化ストロンチウム水溶液等のアルカリ性
の水溶液中に浸漬して予め基板金属表面に塩基性物質を
析出させた後、リン酸塩の水溶液に浸漬してリン酸塩処
理することにより、塩基性物質層とリン酸塩からなる皮
膜を形成させ、この形成された皮膜の特性等について調
査した。更に、この皮膜の表面に塗膜を形成し、これに
ついて耐食性等を調査した。
【0010】この結果、皮膜中の塩基性物質が一般式x
Al2 3 ・yMO・nH2 Oで表される塩基性物質で
あって、このMがMg,Ca,Sr又はBaである場合
においては、塗膜に傷が生じて水が侵入したときでも基
板金属の腐食が起こり難いことを見出した。又、上記の
皮膜形成方法において、アルカリ性の水溶液として水酸
化マグネシウム水溶液,水酸化カルシウム水溶液,水酸
化ストロンチウム水溶液,水酸化バリウム水溶液あるい
はこれらの2種以上の混合水溶液を用いた場合、処理液
へのフッ化物イオンの添加や通電をせずともアルミニウ
ム合金にリン酸塩皮膜を形成し得、又、微細な凹凸を有
するアルミニウム表面の凹部においてもリン酸塩の付着
性が良好であり、リン酸塩皮膜を形成し得ることを見出
した。
【0011】本発明は、かかる知見に基づき完成された
ものであり、請求項1〜4記載のリン酸塩皮膜、請求項
5記載のアルミニウム部材、請求項6〜7記載のリン酸
塩皮膜の製造方法としており、それは次のような構成と
したものである。
【0012】すなわち、請求項1記載のリン酸塩皮膜
は、一般式xAl2 3 ・yMO・nH2 Oで表される
塩基性物質を含有することを特徴とするリン酸塩皮膜で
ある。但し、上記式において、MはMg,Ca,Sr又
はBaであり、x,y,nは整数である(第1発明)。
【0013】請求項2記載のリン酸塩皮膜は、一般式x
Al23 ・yMO・nH2 Oで表される塩基性物質層
とリン酸塩層を有することを特徴とするリン酸塩皮膜で
ある。但し、上記式において、MはMg,Ca,Sr又
はBaであり、x,y,nは整数である(第2発明)。
【0014】請求項3記載のリン酸塩皮膜は、前記Mが
Caである請求項1又は2記載のリン酸塩皮膜である
(第3発明)。請求項4記載のリン酸塩皮膜は、皮膜表
面が網目構造である請求項1、2又は3記載のリン酸塩
皮膜である(第4発明)。
【0015】請求項5記載のアルミニウム部材は、請求
項1、2、3又は4記載のリン酸塩皮膜を備えたアルミ
ニウム部材である(第5発明)。
【0016】請求項6記載のリン酸塩皮膜の製造方法
は、アルミニウム又はアルミニウム合金を、Mg,C
a,Sr,Baから選ばれる1種類以上の水酸化物の水
溶液に浸漬した後、リン酸塩の水溶液に浸漬することを
特徴とするリン酸塩皮膜の製造方法である(第6発
明)。
【0017】請求項7記載のリン酸塩皮膜の製造方法
は、前記水酸化物がCa(OH)2 である請求項6記載
のリン酸塩皮膜の製造方法である(第7発明)。請求項
8記載のリン酸塩皮膜の製造方法は、前記リン酸塩がリ
ン酸二水素塩である請求項6又は7記載のリン酸塩皮膜
の製造方法である(第8発明)。
【0018】
【発明の実施の形態】本発明は、例えば次のような形態
で実施する。アルミニウムやアルミニウム合金等の基板
金属を水酸化マグネシウム水溶液,水酸化カルシウム水
溶液,水酸化ストロンチウム水溶液,水酸化バリウム水
溶液あるいはこれらの2種以上の混合水溶液に浸漬した
後、リン酸塩水溶液に浸漬する。そうすると、基板金属
表面に一般式xAl2 3 ・yMO・nH2 Oで表され
る塩基性物質を含有するリン酸塩皮膜が形成される。
【0019】このような形態で本発明に係るリン酸塩皮
膜の製造方法が実施され、そして本発明に係るリン酸塩
皮膜が得られる。基板金属としてアルミニウム部材を用
いると、本発明に係るリン酸塩皮膜を備えたアルミニウ
ム部材が得られる。
【0020】以下、本発明について主にその作用効果を
説明する。
【0021】アルミニウムを水酸化カルシウム水溶液に
浸漬すると、下記式に示す反応により、塩基性塩である
Ca3Al2(OH)12が生じると共にアルミニウム表面に析出し
てアルミニウム表面を覆う。尚、このCa3Al2(OH)12は、
Al2O3・3CaO ・6H2O と書き換えることができ、一般
式xAl2 3 ・yMO・nH2 Oで表される塩基性物
質の一つである。 2Al+3Ca(OH)2 +6H2O →Ca3Al2(OH)12+3H2
【0022】次に、これをリン酸塩処理液であるリン酸
二水素亜鉛水溶液に浸漬すると、上記塩基性塩(塩基性
物質)であるCa3Al2(OH)12が核となって3Zn(H2PO4)2
Ca3Al2(OH)12→2AlPO4 +Ca3(H2PO4)2 +Zn3(PO4)2
12H2Oのような反応が一部進行し、リン酸塩皮膜が形成
される。つまり、予めアルミニウム表面に析出させ付着
させた塩基性塩(塩基性物質)は、リン酸塩形成成分を
中和してリン酸塩形成反応を進行させるとともに、結晶
核としてリン酸塩皮膜の成長を促進する。
【0023】このため、通常のリン酸塩処理液との反応
性が高いアルミニウム材にはもちろんリン酸塩皮膜を容
易に形成し得るが、通常のリン酸塩処理液との反応性が
低いアルミニウム合金材にもリン酸塩皮膜を容易に形成
し得る。
【0024】上記Ca3Al2(OH)12はその一部が核となって
リン酸塩皮膜形成に寄与しそれ自体は変化するが、残部
はCa3Al2(OH)12の形態のままで残留する。このため、上
記リン酸塩処理後のアルミニウム表面にはリン酸塩皮膜
だけでなく、塩基性塩(塩基性物質)であるCa3Al2(OH)
12が存在する。即ち、リン酸塩処理後のアルミニウム表
面のリン酸塩皮膜には塩基性塩(塩基性物質)であるCa
3Al2(OH)12が含まれている。従って、この皮膜上に塗膜
を形成した後、塗膜に傷が生じて水が侵入した場合で
も、基板金属の溶解・加水分解で生成した酸(H + )を
Ca3Al2(OH)12が中和するので、基板金属の溶解・加水分
解によるpHの低下を抑制し得、このため基板金属の腐
食を抑制し得る。
【0025】又、前記の如くアルミニウムの水酸化カル
シウム水溶液への浸漬によりCa3Al2(OH)12がアルミニウ
ム表面を覆うので、微細な凹凸を有するアルミニウム表
面の凹部においてもリン酸塩が良好に付着しリン酸塩皮
膜を形成し得る。即ち、微細な凹凸を有するアルミニウ
ム表面にリン酸塩処理をする場合、凸部においてはpH
上昇によりリン酸塩の析出は進行するが、pH上昇の起
こり難い凹部にはリン酸塩が付着し難い。これに対し、
予め水酸化カルシウム水溶液へ浸漬すると、アルミニウ
ムイオン濃度の高い凸部から順に凹部にかけて全面にCa
3Al2(OH)12が生成し析出して全面を覆い、しかる後、リ
ン酸塩の水溶液に浸漬すると、Ca3Al2(OH)12がリン酸塩
生成の起点(核)となって凹部にもリン酸塩が付着し易
く、そのため、凹部においてもリン酸塩皮膜を形成し得
る。
【0026】以上の如く、アルミニウムを水酸化カルシ
ウム水溶液に浸漬し、しかる後、リン酸塩処理液である
リン酸二水素亜鉛水溶液に浸漬してリン酸塩処理をする
と、処理液へのフッ化物イオンの添加や通電をせずとも
通常のリン酸塩処理液との反応性が低いアルミニウム合
金にもリン酸塩皮膜を容易に形成し得、又、微細な凹凸
を有するアルミニウム表面の凹部においてもリン酸塩が
良好に付着しリン酸塩皮膜を形成し得る。又、かかる方
法により形成されるリン酸塩皮膜には塩基性塩(塩基性
物質)であるCa3Al2(OH)12が含まれているので、この皮
膜上に形成された塗膜に傷が生じて水が侵入した場合で
も、基板金属の溶解・加水分解によるpHの低下を抑制
し得、このため基板金属の腐食を抑制し得る。
【0027】上記水酸化カルシウム水溶液に代えて、水
酸化マグネシウム水溶液,水酸化ストロンチウム水溶
液,水酸化バリウム水溶液あるいはこれらの2種以上の
混合水溶液を用いた場合も、上記と同様の作用効果が得
られる。リン酸塩処理液として上記リン酸二水素亜鉛水
溶液以外のリン酸塩の水溶液を用いた場合も、上記と同
様の作用効果が得られる。そして、上記リン酸塩皮膜が
塩基性塩(塩基性物質)であるCa3Al2(OH)12に代えて一
般式xAl2 3 ・yMO・nH2 Oで表される塩基性
物質(但し、M=Mg,Ca,Sr又はBa)を含む場
合も、上記と同様の作用効果が得られる。又、一般式x
Al23 ・yMO・nH2 O(但し、M=Mg,C
a,Sr又はBa)で表される塩基性物質層とリン酸塩
層とを有するリン酸塩皮膜である場合も、上記と同様の
作用効果が得られる。
【0028】そこで、本発明に係るリン酸塩皮膜は、一
般式xAl2 3 ・yMO・nH2Oで表される塩基性
物質を含有することを特徴とするリン酸塩皮膜であるこ
ととしている(第1発明)。又、一般式xAl23
yMO・nH2 Oで表される塩基性物質層とリン酸塩層
を有することを特徴とするリン酸塩皮膜であることとし
ている(第2発明)。但し、上記式において、MはM
g,Ca,Sr又はBaであり、x,y,nは整数であ
る。
【0029】一方、本発明に係るリン酸塩皮膜の製造方
法は、アルミニウム又はアルミニウム合金を、Mg,C
a,Sr,Baから選ばれる1種類以上の水酸化物の水
溶液に浸漬した後、リン酸塩の水溶液に浸漬することを
特徴とするリン酸塩皮膜の製造方法であることとしてい
る(第6発明)。
【0030】従って、本発明に係るリン酸塩皮膜によれ
ば、この皮膜上に形成された塗膜に傷が生じて水が侵入
した場合でも、基板金属の溶解・加水分解によるpHの
低下を抑制し得、このため基板金属の腐食を抑制し得
る。
【0031】一方、本発明に係るリン酸塩皮膜の製造方
法によれば、処理液へのフッ化物イオンの添加や通電を
せずともアルミニウム合金にリン酸塩皮膜を形成し得、
又、微細な凹凸を有するアルミニウム表面の凹部におい
てもリン酸塩が良好に付着しリン酸塩皮膜を形成し得
る。又、上記の如く基板金属の腐食を抑制し得るリン酸
塩皮膜を形成することができる。
【0032】前記水酸化カルシウム水溶液、水酸化マグ
ネシウム水溶液,水酸化ストロンチウム水溶液,水酸化
バリウム水溶液の中、コストや反応性の点において水酸
化カルシウム水溶液が最も有利であることから、これを
用いることが望ましい(第7発明、第3発明)。尚、こ
れらの水溶液以外のアルカリ物質溶解溶液、例えば水酸
化ナトリウム水溶液を用いた場合、塩基性塩皮膜を形成
し得ず、そのため前記本発明に係るリン酸塩皮膜の製造
方法における如き作用効果を奏し得ない。
【0033】本発明に係るリン酸塩皮膜の製造方法によ
って形成されるリン酸塩皮膜の表面は、図3に示す如
く、網目構造を有している。かかる網目構造の皮膜表面
はアンカー効果により塗膜との密着性がよい。この点か
ら、リン酸塩皮膜の表面をかかる網目構造とすることが
望ましい(第4発明)。
【0034】前記リン酸塩の水溶液としては、リン酸二
水素塩の水溶液を使用できる(第8発明)。リン酸二水
素塩の水溶液としては、例えばリン酸二水素亜鉛水溶液
を使用できる。
【0035】本発明に係るリン酸塩皮膜の基板金属とし
ては、特には限定されず、例えばアルミニウム部材を使
用でき、その場合は本発明に係るリン酸塩皮膜を備えた
アルミニウム部材となる(第5発明)。
【0036】本発明に係るリン酸塩皮膜における塩基性
物質の含有量は、特には限定されないが、90%を超にし
た場合、皮膜と基板金属との密着性が低下する。かかる
点からは塩基性物質の含有量を90%以下にすることが望
ましい。
【0037】本発明に係るリン酸塩皮膜の量(厚み)
は、少量でもよく、例えば0.1g/m2 程度でもよいが、1
〜3g/m2とした場合に特に耐食性が良好である。
【0038】本発明に係るリン酸塩皮膜の製造方法にお
けるMg,Ca,Sr,Baの水酸化物の水溶液として
は、これらの水酸化物が飽和濃度以下で溶解した水溶液
を使用してもよいが、これらの水酸化物の溶解度は小さ
いので、飽和濃度の水溶液あるいは飽和濃度超の水溶
液、即ちこれらの水酸化物の懸濁液として使用する方が
塩基性塩皮膜形成のされ易さの点から望ましい。
【0039】前記Mg,Ca,Sr,Baの水酸化物の
水溶液の温度については、この水溶液への浸漬処理の際
の作業性の観点からは低い方がよいが、30℃未満では浸
漬処理時間が長くなるので30℃以上とすることが望まし
い。この浸漬処理時間については、20〜120 秒とするこ
とが望ましい。それは、20秒未満では塩基性塩皮膜形成
量が不充分であり、120 秒超にしてもそれ以上の効果の
改善(塩基性塩皮膜形成量の向上)が見られないからで
ある。
【0040】尚、特開平5-171461号公報記載の方法にお
いて、アルミニウム−亜鉛合金めっき鋼板をアルカリ性
の溶液に浸漬しているが、この公報記載の発明の実施例
からも明らかな如く、この公報記載の方法は水酸化ナト
リウム水溶液へ浸漬してアルミニウムを優先的に溶解さ
せているだけであり、塩基性塩皮膜は形成されていな
い。このことは従来のアルカリエッチングにおいても言
えることであり、アルミニウム表面には薄い酸化皮膜し
か残存していない。従って、これらは本発明とは構成及
び作用効果が顕著に相違する。
【0041】又、従来銅含有アルミニウム合金において
はリン酸塩処理性が良好であることが知られているが、
これは銅含有アルミニウム合金の溶解性が高いため、p
Hが上昇してリン酸塩皮膜形成反応が進行し易くなるた
めである。しかし、このように銅を含有させてリン酸塩
処理性を改善する方法は、銅の含有によってアルミニウ
ム合金の耐食性が低下するので、リン酸塩処理性改善方
法としては好ましくない。これに対して、本発明におい
ては、かかるアルミニウム合金の耐食性の低下等の支障
を招くことなく、リン酸塩処理性を向上させ得る。
【0042】
【実施例】(実施例1)水酸化カルシウムを蒸留水に添
加し混合して水酸化カルシウムの懸濁液を調製した。こ
の液を50℃に加熱した後、この液にアルミニウム板を2
min 浸漬し、これにより塩基性塩を表面に析出させた。
この浸漬後のアルミニウム板表面についてのXRD測定
結果(X線回折パターン)を図1に示す。この図1から
も塩基性塩であるCa3Al2(OH)12が形成されていることを
確認することができる。
【0043】上記浸漬後のアルミニウム板を60℃の0.1
mol/Lリン酸二水素亜鉛水溶液に1min 浸漬し、これに
よりリン酸塩皮膜を形成させた。この浸漬後のアルミニ
ウム板表面の皮膜についてのX線回折パターンを図2に
示す。この図2から、この皮膜(リン酸塩皮膜)は塩基
性塩であるCa3Al2(OH)12とリン酸塩であるリン酸亜鉛と
から形成されていることがわかる。
【0044】上記リン酸塩皮膜形成後のアルミニウム板
表面(リン酸塩皮膜の表面)にカチオン型電着塗料を20
μm 塗装した。次に、この塗装面にJIS Z 2371に準じて
クロスカットを入れ、しかる後、塩水噴霧試験(JIS Z
2371)を40日間実施し、クロスカットからの最大塗膜ふ
くれ幅を測定した。その結果を表1に示す。
【0045】(実施例2)実施例1でのアルミニウム板
と同様のアルミニウム板にサンドペーパをかけて表面に
微細な凹凸をつけたものについて、実施例1の場合と同
様の水酸化カルシウムの懸濁液への浸漬処理、リン酸二
水素亜鉛水溶液への浸漬処理を行ったところ、図2に示
した物質の生成が確認された。又、走査電子顕微鏡観察
により凹部への皮膜付着性が良好であることが確認され
た。
【0046】上記リン酸二水素亜鉛水溶液への浸漬処理
後のアルミニウム板表面にカチオン型電着塗料を20μm
塗装した。次に、実施例1の場合と同様の方法によりク
ロスカットを入れ、塩水噴霧試験を40日間実施し、クロ
スカットからの最大塗膜ふくれ幅を測定した。その結果
を表1に示す。
【0047】(比較例1)水酸化カルシウム懸濁液への
浸漬処理(塩基性塩析出処理)を行わず、この点を除き
実施例1の場合と同様の処理及び測定を行った。即ち、
実施例1の場合と同様のアルミニウム板について実施例
1の場合と同様のリン酸二水素亜鉛水溶液への浸漬処
理、塗装、クロスカット入れ、塩水噴霧試験、クロスカ
ットからの最大塗膜ふくれ幅の測定を行った。その測定
結果を表1に示す。
【0048】(比較例2)比較例1でのアルミニウム板
と同様のアルミニウム板にサンドペーパをかけて表面に
微細な凹凸をつけたものについて、比較例1の場合と同
様の処理及び測定を行った。その測定結果を表1に示
す。
【0049】(比較例3)実施例1の場合と同様のアル
ミニウム板について水酸化ナトリウム水溶液への浸漬処
理を行った後、実施例1の場合と同様のリン酸二水素亜
鉛水溶液への浸漬処理、塗装、クロスカット入れ、塩水
噴霧試験、クロスカットからの最大塗膜ふくれ幅の測定
を行った。その測定結果を表1に示す。
【0050】(比較例4)実施例1の場合と同様のアル
ミニウム板について水酸化カリウム水溶液への浸漬処理
を行った後、実施例1の場合と同様のリン酸二水素亜鉛
水溶液への浸漬処理、塗装、クロスカット入れ、塩水噴
霧試験、クロスカットからの最大塗膜ふくれ幅の測定を
行った。その測定結果を表1に示す。
【0051】(実施例3)実施例1の場合と同様のアル
ミニウム板を水酸化バリウムの懸濁液(50℃)に2min
浸漬した。この浸漬後のアルミニウム板表面にはバリウ
ム塩の析出が観察された。
【0052】上記浸漬後のアルミニウム板について実施
例1の場合と同様のリン酸二水素亜鉛水溶液への浸漬処
理、塗装、クロスカット入れ、塩水噴霧試験、クロスカ
ットからの最大塗膜ふくれ幅の測定を行った。その測定
結果を表1に示す。
【0053】
【表1】
【0054】(試験結果、測定結果)表1からわかる如
く、比較例1〜4の場合、最大塗膜ふくれ幅が2.1 〜2.
5 と大きく、耐食性がよくない。これはCa3Al2(OH)12
よるpH低下抑制作用がないためである。比較例2の場
合は比較例1の場合よりも耐食性が劣っているが、これ
はサンドペーパで荒らして形成された凹凸表面の凹部に
リン酸塩の付着が少ないため、その部分に沿って腐食が
進行したためであると考えられる。比較例3及び比較例
4の場合は、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム
水溶液への浸漬処理後のアルミニウム板表面を観察して
も皮膜の形成は認められなかったことから、pH低下抑
制作用はなく、通常のリン酸塩皮膜と同様の状態と考え
られる。
【0055】これに対し、実施例1〜3の場合、最大塗
膜ふくれ幅が0.1 〜0.2 と小さく、耐食性が極めて優れ
ている。これはCa3Al2(OH)12によるpH低下抑制作用に
より腐食の進行が抑えられたためである。実施例2の場
合、サンドペーパをかけて表面を荒らして凹凸表面を形
成したにもかかわらず、実施例1の場合と同様に耐食性
が極めて優れている。これは、アルミニウム表面の凹部
にもリン酸塩皮膜が形成されているためである。実施例
3の場合は塩基性塩(塩基性物質)としてバリウム塩を
含有するリン酸塩皮膜を形成したものであるが、カルシ
ウム塩を含有するリン酸塩皮膜を形成した実施例1の場
合と同様に塩基性塩によるpH低下抑制作用により腐食
の進行が抑えられているため、耐食性が良好である。
【0056】
【発明の効果】本発明に係るリン酸塩皮膜によれば、こ
の皮膜上に形成された塗膜に傷が生じて水が侵入した場
合でも、基板金属の溶解・加水分解によるpHの低下を
抑制し得、このため基板金属の腐食を抑制し得る。
【0057】一方、本発明に係るリン酸塩皮膜の製造方
法によれば、処理液へのフッ化物イオンの添加や通電を
せずともアルミニウム合金にリン酸塩皮膜を形成し得、
又、微細な凹凸を有するアルミニウム表面の凹部におい
てもリン酸塩が良好に付着しリン酸塩皮膜を形成し得
る。又、上記の如く基板金属の腐食を抑制し得るリン酸
塩皮膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1に係る水酸化カルシウム懸
濁液への浸漬後のアルミニウム板表面についてのX線回
折パターンを示す図である。
【図2】 本発明の実施例2に係る水酸化カルシウム懸
濁液への浸漬後のアルミニウム板表面についてのX線回
折パターンを示す図である。
【図3】 本発明に係るリン酸塩皮膜の製造方法によっ
て形成されたリン酸塩皮膜の表面の走査型電子顕微鏡観
察によるスケッチ図である。

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式xAl2 3 ・yMO・nH2
    で表される塩基性物質を含有することを特徴とするリン
    酸塩皮膜。但し、上記式において、MはMg,Ca,S
    r又はBaであり、x,y,nは整数である。
  2. 【請求項2】 一般式xAl23 ・yMO・nH2
    で表される塩基性物質層とリン酸塩層を有することを特
    徴とするリン酸塩皮膜。但し、上記式において、MはM
    g,Ca,Sr又はBaであり、x,y,nは整数であ
    る。
  3. 【請求項3】 前記MがCaである請求項1又は2記載
    のリン酸塩皮膜。
  4. 【請求項4】 皮膜表面が網目構造である請求項1、2
    又は3記載のリン酸塩皮膜。
  5. 【請求項5】 請求項1、2、3又は4記載のリン酸塩
    皮膜を備えたアルミニウム部材。
  6. 【請求項6】 アルミニウム又はアルミニウム合金を、
    Mg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種類以上の水酸
    化物の水溶液に浸漬した後、リン酸塩の水溶液に浸漬す
    ることを特徴とするリン酸塩皮膜の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記水酸化物がCa(OH)2 である請
    求項6記載のリン酸塩皮膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記リン酸塩がリン酸二水素塩である請
    求項6又は7記載のリン酸塩皮膜の製造方法。
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