JP4521565B2 - 透明電極膜 - Google Patents

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本発明は、紫外領域から可視にわたって高い透明度をもち低抵抗な電極薄膜の製造方法に関するもので、光電子デバイスの高効率化に応用できる。
近年の情報化技術の高度化に伴い、LEDやレーザなどの発光素子においては記録密度の向上が、また、受光・変換素子においてはさらなる変換効率の改善が求められている。そのためには波長の短い紫外線を利用することが不可欠であり、電気的駆動に必要な表面部にある電極膜の透明度は素子の効率を決定する上で非常に重要になってくる。例えば、太陽電池などでこれまで透過できなかった領域の光を利用することができれば、効率は大きく向上することになる。一般に、数百nmの厚みの薄膜で紫外領域からの光を透過させるには、5eV以上のバンドギャップを持つ材料が必要になるが、この範囲の材料としては、アルミナや酸化チタンなどの絶縁体の酸化物がほとんどで、導電性を示す半導体材料で実用化されている酸化インジウムを主成分とするITO系の2.8eV程度のバンドギャップでは不十分である。その他の材料としては、特開2002−93243のバンドギャップが5eV程度あるガリウムなどの酸化物も有望であるが、処理温度が非常に高いこととITOに匹敵するほど低抵抗な膜は得られてはいないのが現状である。
特開2002−93243号公報
そこで、その一つの解決方法として導電性を示す金属膜を光の吸収が起こらない程薄くすることで、透明度を上げる方法が有効になる。しかしながら、金属膜は一般にその初期成長段階においてVolmer−Weber型の3次元的核成長を行うために、数nmと膜が薄いときには膜は島状構造のため導電性を示さないことが多く、導電性を示す層状構造になるまで膜を厚くした場合、光の透過率は著しく減少してしまうことになる。そこで、その金属膜の島状構造の発生を抑制し、連続した層状構造をもつ膜を作製するための技術が開発された。(特願2003−334683)しかしながら実際に作製された膜厚が数十nm以下の金属の薄膜では、電気伝導を担う電子の平均自由行程と膜厚の大きさがほぼ同じ大きさになるため、膜と基板界面での電子散乱効果(サイズ効果)が無視できなくなり、抵抗値がバルク値に比べて非常に上昇する傾向があった。さらに、実際の金属薄膜は図2に示すように原子オーダのスケールでみると膜表面にかなり凹凸があり、作製方法を改善しても完全に平らにすることはできないことも抵抗率上昇の一つの原因になっていた。つまり、膜厚が非常に薄くなると基板のあらさによる膜構造の不均一性やランダムな成長による結晶粒子の不均一性などが、膜厚に対して無視できない大きさになるために、膜断面が図1の左部で示すような膜の凹凸部分が膜の大部分を占めるようになり、電気伝導に関連する層状部分の厚みが減少する抵抗値上昇の効果(層状構造の厚みの減少効果)が発生する。これら2つの効果により金属の超薄膜では抵抗が非常に上昇した。
一般に、液晶やプラズマディスプレーなどの平面ディスプレーデバイスでは、シート抵抗値が10Ω/sq.以下の透明電極が求められている。例えば金属として金を選んだ場合、その体積抵抗率から10Ω/sq.のシート抵抗を達成するためには2〜3nmの膜厚で十分なはずであるが、現実には上記サイズ効果と層状構造の厚みの減少効果のため数百Ω/sq.程度の高い値を示す。この膜厚の金膜は光の透過率は紫外線域でも80%近くあるが、その高い抵抗値のため低抵抗を必要とされる平面ディスプレーデバイス等に応用することは困難であった。
上記問題点を解決するために、本発明では図1の右部に示すような層状構造の金属薄膜の低抵抗化を図るために、主な電子伝導ための層として利用する金属薄膜と、その金属膜表面や粒界での強い電子散乱を抑えるための金属のバルク値に近い電子の平均自由行程程度の数十nm程度の透明度の高い導電性の酸化物半導体膜を積層することで、膜全体の低抵抗化を達成する同時に、全体として薄い電極膜を構成することで紫外域から可視光にわたる広範囲な領域で高い透明度をもつ電極膜が実現できることを特徴とする。
本発明の構造を採用することで、膜が薄い場合に発生する膜表面での強い電子散乱が原因のサイズ効果と層状構造の厚みの減少効果を抑えられるために、バルク金属に近い体積抵抗率を示す金属層の非常に低い抵抗値の膜を作製することができる。さらに、本発明の導電性酸化物の厚みを8〜30nmの範囲にすることで可視光の金属膜の光の反射を防止することができ、単層のものに比べ非常に高い透過率の電極膜を作製するこができる。また、本発明の構造では金属膜の凹凸を導電性酸化物で埋めると同時に、膜表面が金属に比べて硬く滑らかな導電性酸化物で覆うため、金属膜単体では不可能な非常に滑らかな硬い膜表面を形成することが可能であるとともに、この構造では膜全体の厚みが数十nmの範囲になるため、従来の低抵抗な導電性の酸化物半導体膜で作製する場合に必要とされる数百nmの厚膜に比べて材料と処理コストを大幅に抑えることができる。
具体的には、金属薄膜の形態は図3の島状構造、図4の島状と層状が混合した状態と図5の完全に層状になっている状態の3つが考えられる。図3と図4の左側の島状部分は電気伝導とは関係の無い部分で、単に膜の透明度を落としているだけである。それらに本発明の約30nm以下の透明度の高い導電性の酸化物半導体膜を金属薄膜に積層することで、その部分も電気伝導に組み入れることができ膜の抵抗値を下げることができる。一方、理想的な層状構造をもつ図5の構造においても膜界面での強い電子散乱は避けることができず、電子の平均自由行程がその膜厚程度の長さに制限され高い抵抗を示すが、本発明の積層構造をとることで光学特性をあまり劣化させることなく電子の平均自由行程をその膜厚分増加させることができるため、バルク値に近い低い抵抗値を実現することができる。実施例1によると、金薄膜だけではシート抵抗値が90Ω/sq.波長550nmの透過率の値が70%の透明電極しか得られないが、本発明の積層構造を採用することで、シート抵抗値が18Ω/sq.波長550nmの透過率の値が80%の透明電極を作製することができる。
金属の導電層としては、金、銀、銅などの比抵抗の小さな金属を電子の導電層として使用する。比抵抗の小さな金属を選ぶのは、透過率を上げるために同じシート抵抗の膜を作製するための膜厚を最少にするためである。金属膜の酸化が気になる場合は、金の膜にすれば良い。シート抵抗が小さく透明度の高い膜を作製するためには、金属の超薄膜においても緻密な膜構造をもち、さらに表面が滑らかな層状構造をもつことが重要である。図6に、イオンビームスパッタ(IBS)とRFマグネトロンスパッタ(RFMS)と(特願2003−334683)のデュアルイオンビームスパッタ(NDIBS)で作製した金膜の体積抵抗率ρの膜厚依存性を示す。どの膜も上記2つの効果により膜厚が薄くなるにしたがって、ρが上昇することがわかる。これらの中で、通常のRFマグネトロンスパッタよりIBS、さらにNDIBSの膜の方が、金属薄膜は滑らかな層状構造をもつために優れた特性を示す。
次に、サイズ効果などを抑えるための金属のバルク値に近い電子の平均自由行程程度の透明度の高い導電性の酸化物半導体膜を積層する必要がある。図7にターゲット面から基板を45度の方向に基板を設置したIBSにより作製した金膜の体積抵抗率ρと自由電子の平均自由行程λeの膜厚依存性を示す。膜は層状構造を示したときにはじめて良好な電気伝導性を示し、膜厚が薄い100nm以下の範囲では、ρは膜厚が上昇するにしたがって単調に減少する傾向があった。そこで、金膜の電子のλeを概算してみると、膜厚より小さくその値はバルクの40nmまで、膜厚が厚くなるにしたがって増加する傾向があった。これは、膜の抵抗値がほとんどサイズ効果によって決定されることを示している。つまり、バルクの40nm以上の膜厚が無ければ、抵抗値の低い金属膜は得られないことになる。しかしながら、この値まで膜厚を厚くすると膜の透明度は著しく減少してしまい、高い透明度の電極として使用できないことになる。
そこで、膜の電導電子の平均自由行程を上昇させるために、金属膜の上に、あるいは、下でもよいが、数十nmの膜厚でも透明度の高い導電性のある膜を積層することで、界面での強い電子散乱を抑制し、金属膜の電導電子の平均自由行程を上昇させ、膜全体の抵抗を減少させることができる。このとき、電極膜として可視から紫外線領域への広帯域化を狙うためには、当然積層する導電性透明酸化物半導体も広帯域である必要があるが、図11に示すように約60nm以下の膜厚ではITOなどの酸化物半導体の禁止帯幅による光の吸収はあまり問題にならない。
現在までに紫外域で使用できる導電性透明酸化物半導体としてGaO、ZnO系の材料が研究されているが、低温合成で酸化インジウムに錫をドープしたITOに匹敵するほど十分低抵抗な透明な酸化物半導体は得られていない。本発明の低抵抗化の効果を狙うためには、積層する酸化物半導体には禁止帯幅による光の吸収よりも、むしろ金属膜に近い低抵抗率の膜であることが要求される。そのため本発明の効果を発生させるためには、導電性透明酸化物半導体膜としてITOが最も相応しい。
また、下地となる金属の平均自由行程程度の膜厚の導電性酸化膜には、金属薄膜と同様、滑らかな層構造が求められる。この構造が実現できない場合は、図1の右部に示してある構造が不完全になるため、本発明の低抵抗化の効果と反射防止効果は余り期待できない。
ITO膜は通常プラズマスパッタで作製されるが、その膜特性は作製条件に非常に敏感で、プラズマの影響とともにスパッタにおける反跳Arが膜にダメージを与えることが多い。そこでIBSにて、通常のスパッタ法よりターゲットと基板を対向させ基板への反跳Arによる衝撃の少ない作製条件の膜と基板をイオンビームの入射角に対象に設置した反跳Arによる衝撃の多い作製条件の膜を水冷された基板上に作製した。膜厚が300nmのITOの膜表面形態のSEM像を図8に示す。RFMSなどの通常のスパッタ法に近い反跳Arの多い作製条件では、膜表面に大きな粒界が現れ、かなり凹凸の激しい状態に成っていることがわかる。この状態で数十nmの膜を作製しても電気特性の良好な低抵抗な膜を得ることはできない。一方、IBSの反跳Arの少ない作製条件では、非常に凹凸の少ない膜を作製することができた。その表面あらさRaは、膜厚が300nm以下で基板と同等以下の0.4nm以下の値であった。
この条件で作製したITO膜のキャリア密度Ncとその移動度μの膜厚依存性を図9に、膜のシート抵抗ρsと体積抵抗率ρの膜厚依存性を図10に示す。膜厚が10nm以下では、Ncとμが小さく、ρは急激に大きくなっていることがわかる。つまり、このIBSの作製方法で、本発明の低抵抗化の効果を狙うためにはITO膜の厚みは10nm以上にする必要があることが確かめられた。
作製したITO膜の膜厚をパラメータとした透過率Tスペクトラムを図11に示す。波長300〜400nmの領域の透過率から判断すると、広帯域化を達成するためには約60nm以下の膜厚が望ましいことがわかる。しがって、低抵抗で広帯域な透明電極膜を作製するためには、積層する導電性透明酸化物半導体として、10から60nmの範囲の膜厚のITO膜が有効である。
図12に、ITO膜と同様のスパッタ条件で作製した金薄膜単体Auと、それに29nmの膜厚のITO膜(ρsの280Ω/sq.)を積層したITO/Au膜のシート抵抗ρsの膜厚依存性を示す。Au単体のものは、9.4nmから膜が連続になり導電性を示し、膜厚が増加するにしたがって抵抗が減少する傾向を示した。一方、ITO/Au膜では、Auが2.1nmからでも導電性を示すが、Auの部分は島状になっているため、導電性は積層したITO膜に近い100Ω/sq.台の高い値を示した。そして、島状組織がお互いに連結しはじめる膜厚が7nmから18Ω/sq.と低い値を示した。これはITO/Au膜のITO膜は、金属膜が完全に連続になっていなくても島状組織を電気的に結合する効果があることを示している。
次に図13に、金薄膜単体(Au)とITO膜を積層したITO/Au膜の体積抵抗率ρの膜厚依存性を示す。ITO/Au膜のρは、Au膜の厚みのみを用いて計算してある。Auのρは、膜厚が9.4nmから膜厚が厚くなるにしたがって、急激に減少する傾向があった。一方、ITO/Au膜のρは7nmより厚い連続膜の範囲では、1.2〜1.5×10−5Ωcmの範囲で徐々に上昇する傾向が見られるが、Auの膜よりも低い値を示している。
ところで、この効果にはITO膜がAu膜に電気的に並列に入る現象も含まれるため、その影響を考慮する必要がある。そこで、単純にITO膜とAu膜が並列に入ったとして計算した膜のシート抵抗の値RAu//RITOと実測された積層膜のシート抵抗の値RITO/Auを図14に示す。膜厚が7nmで計算されたRAu//RITOは約100Ω/sq.の値であるに対して、実測のRITO/Auは18Ω/sq.と実測値の方が遙かに小さな値を示すことが確かめられた。この差が本発明の低抵抗化の効果を示している。
図15にシート抵抗値ρsと波長550nmの透過率T550の関係を示す。金単体ではT550は最大75%であるが、積層構造をとることで90%近い特性のものを、また、同じρsでも透過率の高い膜を作製することができる。
図16に膜厚が12nmの金薄膜単体(Au)に積層するITO膜の膜厚tITOを変化させた場合の透過率Tスペクトラムを示す。400〜800nmの可視領域では、ITO膜の膜厚が増加するにしたがって透明度が上昇する効果が認められた。特に650nm付近の波長範囲でその効果が著しく、可視光の透明度を上げるためには膜厚が29nm程度が最も優れている。一方、波長400nm以下の紫外線域の透過率は、ITO膜の特性から減少するが250nmでも20%以上の透過率をもっており、特開2002−93243のガリウムなどの酸化物に匹敵する高い透過率と10Ω/sq.台の低い抵抗率を実現した。この効果は、Auが完全な島状構造のときには現れなかった。
以上のことから、本発明で紫外域に高い透明度を得るためには、ITO膜の厚みを約60nm以下に薄くすればよく、酸化物は比較的硬度も高いので金属層の保護膜としての機能もあり、使用目的に応じてそれらの膜厚を制御すれば良いことがわかる。
低抵抗化のためには、金属薄膜の部分は膜厚が薄いときでも層状構造の膜を作製することが重要である。そのため一般的なPVD法における膜成長過程を考えれば、金属材料として高融点金属が相応しいと考えられる。そこで、タンタル(Ta)、白金(Pt)と低融点であるがITOのドーパントとして使用されている錫(Sn)の3種類の膜をIBSにて作製し、それら金属薄膜のシート抵抗ρsと波長300と550nmの光の透過率T550とT300の関係を調べた。その結果を図17に示す。Ta、PtはAuより膜厚の薄い領域から層状構造ができるが、材料自体の比抵抗の高さからAuと同じシート抵抗を得るためにはその差の分厚い膜が必要になることと、さらに微結晶化するため膜の抵抗値も非常に高く、Auよりも低抵抗で高い透過率の膜を作製することができないことがわかった。一方、低融点のSnの関しては、膜が層状になるのは数十nm以上の非常に厚い領域からで、導電性が得られる膜厚において透明度はほとんどなかった。以上の結果から金属薄膜としては、比抵抗の小さいAuが最も優れていると考えられた。その他の材料としては、比抵抗の小さい銀Ag、銅Cuなども有効である。それらの中で酸化しにくく安定なAuが最も信頼性があり有望な材料と考えられる。
図18に膜厚を165nmと350nmのITO膜表面のSEM像を示す。膜厚が165nm以下の場合、膜表面が非常に滑らかでFE−SEMでもその粒界を観察することができなかった。膜厚が350nm以上で大きな粒界が現れ、それが膜厚の増加とともに明確になり膜表面があれてくることがわかった。そこで、AFMで表面あらさRaを測定したところ、膜厚が165nm以下では基板とほぼ同じ0.46nm以下で、それ以上の厚みから増加する傾向を示し、膜厚が350nmで1.4nmになった。このことは、ITO単体で低抵抗な膜を作製する場合膜をある程度厚くする必要があるが、その状態では電極表面があれるため、高い平坦度が求められるデバイスへの応用は期待できないことを示している。
非常に滑らかな表面をもつITO膜の効果を示すために、図19に膜厚がIBSで作製された25nmの膜厚のAu膜とさらにITO膜を積層した膜のAFM像の比較を行った。Au単体の膜では直径が約20nmの粒子成長が発生し、膜表面に大きな凸凹が現れているが、本発明のITO膜を積層することでその凸凹が埋められ、図1の右部に示すような非常に滑らかな膜表面が形成されていた。そのため、滑らかな表面をもつ低抵抗な透明電極膜として、本発明の構造の膜が優れていることを示している。
図20に金薄膜単体(Au)とさらにITOを積層した膜の表面あらさRaの膜厚の関係を示す。Raは一辺が1μmの正方形領域のAFM像から求めてある。両者とも膜厚が9.4nmまでのAuの膜が島状構造のときには、膜厚が増加するにしたがってRaは増加する傾向があるが、それ以上の厚みの膜が島状構造のときには、Raが減少する傾向を示した。特に、ITOを積層した膜のRaは非常に小さくなり、基板表面のRaの0.4より小さな0.14nmの値を示した。このことは、本発明の膜の断面構造が完全に図1の状態になっていることを示している。そのため、金属薄膜単体では、基板表面があれている場合、膜自体が局所的に切れてしまう可能性があり、広範囲に連続した電極膜を形成することが困難で、それを防ぐためにある程度厚い膜を付ける必要があるが、本発明の積層構造ではその効果は軽減できるため、基板の表面あらさを小さくすることができない樹脂フィルムなどの基板でも滑らかな表面の膜を作製できる。このことは本発明の膜は、有機ELなどの透明電極として非常に有効である。また、膜が全体で数十nmと非常に薄いため、フレキシブルな基板でも剥離し難く、電子ペーパやフレキシブルなディスプレへの応用も容易である。
図21にITO膜と金薄膜単体と本発明のρsが18と10Ω/sq.の膜の透過率特性を示す。ρsが10Ω/sq.のITO膜単体では、400nm以下の波長で急激にTが減少するが、本発明の膜ではなだらかに減少していることがわかる。また、膜が薄いために光の干渉が発生せず、可視領域においてITO膜と同等な透過率を示している。中でもρsが18Ω/sq.の場合は、400nmで60%以上650nmで90%以上の透過率の膜を作製することができた。
この様に本発明は、実施例から膜界面あるいは粒界での電子散乱効果を抑えるとともに、金属薄膜単層では電気伝導に関連しない層状構造の上の島状構造の領域も電気伝導領域に組み込むことができるため低抵抗で、紫外域から可視にわたる広い範囲において、高い透明度をもつ滑らかな電極膜を実現することができる非常に有効な方法であることが示された。
本発明の透明電極では、紫外線から可視光にわたる広範囲な領域で透明度が高く、低い値を示す特長をもっているため、その波長領域で利用される平面ディスプレなどの発光デバイスや太陽電池などのエネルギー変換型受光電気デバイスの特性向上に応用できる。また、非常に滑らかな膜表面を形成できるために、樹脂フィルム上の有機ELディスプレ用の透明電極としても最適である。
従来の金属膜と本発明の積層構造の膜の概念図である。 金薄膜の表面SEM像である。 従来の島状構造を持つ金属薄膜(左)と本発明の積層構造の膜(右)の電導電子の動きを示した断面図である。 従来の島状と層状構造を合わせ持つ金属薄膜(左)と本発明の積層構造の膜(右)の電導電子の動きを示した断面図である。 従来の完全な層状構造を持つ金属薄膜(左)と本発明の積層構造の膜(右)の電導電子の動きを示した断面図である。 様々な方法で作製された金Au膜の体積抵抗率ρの膜厚依存性である。 基板をターゲット面から45度の方向に設置したイオンビームスパッタ法IBSで作製されたAu膜の体積抵抗率ρと電子の平均自由行程λeの膜厚依存性である。 IBSで作製されたAu膜のITO膜のSEM像である。 IBSで作製されたITO膜のキャリア密度Ncとその移動度μの膜厚依存性である。 ITO膜のシート抵抗ρsと体積抵抗率ρの膜厚依存性である。 ITO膜の膜厚をパラメータとした透過率Tスペクトラムである。 金薄膜単体(Au)とITO膜を積層した(ITO/Au)膜のシート抵抗ρsの膜厚依存性である。 金薄膜単体(Au)とITO膜を積層した(ITO/Au)膜の体積抵抗率ρの膜厚依存性である。 実測のシート抵抗値ρsと上部のITO膜を並列接続した場合のシート抵抗ρsの計算値RITO//RAuと実測されたRITO/Auの比較図である。 Au単層膜と積層膜のシート抵抗ρsと波長550nmの透過率T550の関係である。 金薄膜単体(Au)に積層するITO膜の膜厚を変化させた場合の透過率Tのスペクトラムである。 様々な金属の薄膜のシート抵抗値ρsと波長300と550nmの光の透過率T300とT550の関係である。 膜厚が165nmと350nmのITO膜表面のSEM像である。 膜厚が25nmのAu膜とさらにITO膜を積層した膜のAFM像である。 金薄膜単体(Au)とさらにITOを積層した膜の表面あらさRaの膜厚の関係である。 ITO膜と金薄膜単体と本発明のρsが18と10Ω/sq.の膜の透過率Tのスペクトラムである。
符号の説明
1 金属薄膜
2 透明酸化物半導体
3 電導電子
4 基板
5 金属内での電子の平均自由行程
6 透明酸化物半導体内での電子の平均自由行程
7 島状構造の厚み
8 層状構造の厚み

Claims (5)

  1. イオンビームスパッタ法あるいはデュアルイオンビームスパッタ法で作製される30nm以下の層状構造をもつ金属層を有する透明電極膜であって、その金属のバルク値の平均自由行程に近い厚みの層状構造の導電性透明酸化物半導体を積層させる構造により、金属層の膜表面や粒界の電子散乱による抵抗上昇が抑制され、シート抵抗が50Ω/sq.以下であることを特とする透明電極膜
  2. 前記金属層に金を用いたことを特徴とする請求項1記載の透明電極膜
  3. 前記導電性透明酸化物半導体として酸化インジウムを含有することを特徴とする請求項1記載の透明電極膜
  4. 前記導電性透明酸化物半導体の厚みを10〜30nmにすることによって金属膜の光の反射を抑えたことを特徴とする請求項1記載又は請求項2記載又は請求項3記載の透明電極膜
  5. 前記導電性透明酸化物半導体が、基板とターゲットを対向させ反跳Arを抑制した基板配置のイオンビームスパッタ法を用いて作製したことを特徴とする請求項3記載の透明電極膜
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