JP4518744B2 - ラミネート電池、その製造方法及びラミネート電池製造用l字金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ラミネート電池、その製造方法及びラミネート電池製造用L字金型に関し、特にサイド封止部からの水分の侵入を低減して、少なくともサイド封止部の幅を小さくしても従来のラミネート電池と同程度の信頼性を有するラミネート電池、その製造方法及びラミネート電池製造用L字金型に関する。
【0002】
【従来の技術】
携帯型の電子機器の急速な普及に伴い、それに使用される電池への要求仕様は、年々厳しくなり、特に小型・薄型化され、高容量でサイクル特性が優れ、性能の安定したものが要求されている。そして、二次電池分野では他の電池に比べて高エネルギー密度であるリチウム非水電解質二次電池が注目され、このリチウム非水電解質二次電池の占める割合は二次電池市場において大きな伸びを示している。
【0003】
このリチウム非水電解質二次電池は、細長いシート状の銅箔等からなる負極芯体(集電体)の両面にリチウムイオンを吸蔵放出する負極活物質を含む負極合剤を塗布した負極と、細長いシート状のアルミニウム箔等からなる正極芯体の両面にリチウムイオンを吸蔵・放出する正極活物質を含む正極合剤を塗布した正極との間に、微多孔性ポリプロピレンフィルム等からなるセパレータを配置し、負極及び正極をセパレータにより互いに絶縁した状態で円柱状又は楕円形状に巻回した後、角型電池の場合は更に巻回電極体を押し潰して偏平巻回電極体を形成し、負極及び正極の各所定部分にそれぞれ負極タブ及び正極タブを接続し、その外側を外装で被覆することにより製造されている。
【0004】
この外装としては、強度を与えるために主として金属製の外装缶が使用されているが、近年に至り重量低減、単位体積当たりの電池容量の増大等の目的でラミネートフィルムを使用したラミネート電池が製造されるようになってきた。(特許文献1参照)
【0005】
以下、下記、図8を用いて従来から慣用的に行われているラミネート電池50の製造工程について説明する。まず最初に、前述の従来例と同様にして偏平巻回電極体11を製造する。その際、この偏平巻回電極体11は、負極の金属製芯体箔露出部に負極タブ12を溶接しておくと共に、正極の金属製芯体箔露出部にも正極タブ13を溶接しておく。
【0006】
続いて、図8(A)に示したように、所定の大きさの周知のラミネートフィルム14、例えばポリエチレンテレフタレート、アルミニウム膜及び無延伸ポリプロピレンの3層構造でなるアルミラミネートフィルム(下記特許文献1の段落[0004]参照)を2つ折りし、この内部に前記偏平巻回電極体11を配置し、必要に応じて負極タブ12及び正極タブ13の導出部に両面に薄いシール材15、15’を配置した後、このラミネートフィルム14のトップ部(タブ側)をバー状の金型(図示せず)を用いて定位方式に制御して溶着し、トップ封止部16を形成する。なお、この際、トップ封止部16外縁には、ラミネートフィルム14から溶けたシーラント層がはみ出して金型に付着しないようにするため、未溶着部16’が設けられている。
【0007】
次に、図8(B)に示したように、バー状の金型を用いて、ラミネートフィルム14のサイド部の一方側を溶着して第1のサイド封止部17を形成する。この場合も第1のサイド封止部17の外縁はラミネートフィルムから溶けたシーラント層がはみ出して金型に付着しないようにするため、未溶着部17'が設けられている。次いで、液状電解質をもう一方のサイド部側18から注入する。そうすると、この液状電解質は、偏平巻回電極体11の内部へ十分に浸透する。その後、図8(C)に示したように、ラミネートフィルム14の他方側をバー型の金型により仮溶着して仮封止部20を形成する。次いで、予備充電及びエージングした後、図8(D)に示したように、ラミネートフィルム14の他方側をバー型の金型で定位方式に制御して溶着して第2のサイド封止部21を形成する。そして、前記ラミネートフィルムの不要部を切断して、図8(E)に示したような従来例のラミネート電池50を得る。
【0008】
このような従来例のラミネート電池の製造方法においては、バー型の金具を用いてトップ封止部16、第1のサイド封止部17及び第2のサイド封止部21と3箇所の封止部を形成する必要があり、しかもこれらの封止部の厚みを均一にするためにバー型の金型を用いて3回も定位方式に制御して封止部を形成する必要があったため、工数が多く製造工程が複雑になっていた。
【0009】
このようなラミネート電池の製造工程に関し、前述の従来例の問題点を解決し、工数を減らして製造工程を簡略化し得る方法として、本発明者等は既にヒートシール用L字金型を使用するラミネート電池の製造方法を開発している。そこで、本願発明の理解のために、まずこのL字金型を使用したラミネート電池の製造方法を図1〜図4を用いて説明する。なお、図1は従来のL字金型を使用したラミネート電池10の製造工程を示す図、図2は図1(A)の工程で使用する従来のL字金型を示す図、図3は図1(D)で得られた電池の平面図(図3(A))及び各側面図(図3(B)〜図3(D))、図4は最終的に得られた従来のラミネート電池10の平面図及び底面図である。なお、以下において、図8に示された従来例の構成と同―構成の部分には同じ符号を付与して説明することとする。
【0010】
まず最初に、前述の従来例と同様にして偏平巻回電極体11を製造する。その際、この偏平巻回電極体11は、負極の金属製芯体箔露出部に負極タブ12を溶接しておくと共に、正極の金属製芯体箔露出部にも正極タブ13を溶接しておく。
【0011】
続いて、図1(A)に示したように、所定の大きさの周知のラミネートフィルム14を2つ折りし、この内部に前記偏平巻回電極体11を配置し、必要に応じて負極タブ12及び正極タブ13の導出部に両面に薄いシール材15、15'を配置した後、このラミネートフィルム14のトップ部(タブ側)とサイド部の一方側を、図2に示したL字金型40を用いて定位方式に制御して同時に溶着し、トップ封止部16及び第1のサイド封止部17を形成する。なお、この際、トップ封止部16及び第1のサイド封止部の外縁には、ラミネートフィルム14から溶けたシーラント層がはみ出してL字金型に付着しないようにするため、それぞれ未溶着部16'及び17'が設けられている。
【0012】
このL字金型40の一方は、図2の平面図(図2(A))及び各側面図(図2(B)〜図2(D))に示したように、トップ封止部41及びサイド封止部42を有し、トップ封止部41及びサイド封止部42の高さは同じになっている。L字金型40の2箇所のくぼみ43及び44はそれぞれ負極タブ及び正極タブの導出部である。また、他方のL字金型(図示せず)の封止部分は全面が同じ高さとなっている。従って、図1のトップ封止部16の厚みaと第1のサイド封止部17の厚みb(図3参照)は同一になる。
【0013】
次いで、液状の未重合状態のポリマー電解質原料をもう一方のサイド部側18から注入する。そうすると、このポリマー電解質原料は、液状であるため、偏平巻回電極体11の内部へ十分に浸透する。その後、図1(B)に示したように、ラミネートフィルム14の他方側をバー型の金型19により仮溶着して仮封止部20を形成する。
【0014】
次いで、全体を所定温度に加熱して未重合状体のポリマー電解質原料を重合・硬化させ、予備充電及びエージングした後、図1(C)に示したように、ラミネートフィルム14の他方側をバー型の金型19で溶着して第2のサイド封止部21を形成する。そして、前記ラミネートフィルムの不要部を切断して、図1(D)に示したようなラミネート電池10を得る。
【0015】
この状態のラミネート電池は、所定の封止度を達成するため、第1のサイド封止部17および第2のサイド封止部21の幅c(図3参照)が大きいのでラミネート電池10の外形寸法が大きくなるため、通常は、図4(A)の平面図及び図4(B)の底面図に示したように、第1及び第2のサイド封止部17、21を2度折りして、ラミネート電池10が完成される。このように、サイド部の溶着部(封止部分)の折り曲げを2回行うのは、電池の封止を完全に行うためと、封止幅が広いので2度折り偏平巻回電極体11の厚みにあわせるためである。
【0016】
このような従来のラミネート電池では、前述のごとくラミネートフィルムによるトップ封止部16の厚みa及びサイド封止部17及21の厚みbは同じに保たれ、約175μm以上約185μm以下、平均約180μmに保たれている。
【0017】
【特許文献1】
特開2002−42881号公報(段落〔0002〕〜〔0013〕)
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来のラミネート電池は、アルミラミネートフィルムを外装体に用いた場合、封止部の厚みが厚くなるように溶着すると、水分透過通路となるシーラント層の断面積が大きくなるので、水分の浸入が起こりやすく、電池膨れやフッ化水素(HF)発生によるアルミニウム層/シーラント層間のデラミネーションが起こりやすくなり、また、封止幅を狭くすると、当然水分の浸入が起こりやすくなり、封止の信頼性は低下するという問題点が存在していた。
更に、トップ部(タブ側)とサイド側とを同時に通常のL字金型を用いて溶着して封止した場合、水分の浸入を低下させるために溶着層の厚みを薄くしすぎるとトップ封止部でタブ材とラミネートフィルム中のアルミニウムとの間のショートが発生しやすくなり、また、封止により潰れたシーラント層がはみ出して電池の全長が長くなるという不具合があった。
【0019】
本願の発明者等は、前記のような従来技術の問題点を解消すべく種々検討を行った結果、少なくとも封止部分の厚みが従来のものよりも薄くなるように溶着すれば、水分透過路となるシーラント層の断面積が小さくなるので、その分だけ水分の浸入量が少なくなることに着目し、サイド封止部の厚みをできるだけ薄くしてシーラント層の断面積を小さくすることにより水分浸入を低下させ、他方、トップ部での封止部分の厚みは、タブ材と外装材のアルミニウム層とのショートの防止のために、従来のものと同程度とすることにより、少なくともサイド部からの水分浸入が小さくなった分はラミネート電池の信頼性が向上することを見出し、加えて、サイド封止部の幅を従来よりも狭くすることが可能となるので、その分だけ電極活物質量を増やすことができ、ラミネート電池の高容量化が可能であることをも見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0020】
すなわち、本発明は、前記の問題点を解決することを課題とし、ラミネート電池のトップ封止部は従来どおりの厚みになるようにラミネートフィルムを溶着し、それ以外の封止部の厚みはトップ部よりも薄くなるようにして封止の信頼性を高めたラミネート電池、その製造方法及びラミネート電池製造用L字金型を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。本発明の第1の態様によれば、少なくとも正極、負極を有する電極組立体と、電解質と、ラミネート外装を有するラミネート電池において、該ラミネート外装のサイド封止部の厚みを前記正極及び負極のタブが導出されているトップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みよりも薄くなるようにしたことを特徴とするラミネート電池が提供される。係る態様によれば、ラミネート外装のサイド封止部の厚みをトップ封止部のラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みよりも薄くしたので、その分だけサイド封止部からの水分浸入が減るため、この水分によるラミネート電池の劣化を低減させることができるようになる。
【0022】
係る態様においては、前記電極組立体は、正極と、負極とを、セパレータを介して積層巻回した後、押し潰して製造した偏平巻回電極体からなり、前記電解質が非水電解質であることが好ましい。非水電解質は水と反応すると化学反応を起こしてラミネートを腐食させる場合があるので、非水電解質を使用した電池では空気中の水分が封止部から侵入しないようにする必要があるが、本実施態様によれば封止性が向上しているので特に非水電解質を使用した電池に有効である。
【0023】
また、係る態様においては、前記トップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みが175μm以上185μm以下であり、前記サイド封止部の厚みが150μm以上160μm以下であることが好ましい。このような構成を備えていることにより、前記トップ封止部のラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みは従来例のラミネート電池の場合と同程度であるが、サイド封止部の厚さは従来例のラミネート電池よりも薄くなっているから、その分だけサイド部封止部からの水分浸入を減少させることができ、ラミネート電池の信頼性を向上させることができる。
【0024】
また、本発明の別の態様によれば、少なくとも以下の(1)〜(2)の工程を有することを特徴とするラミネート電池の製造方法が提供される。
(1)少なくとも正極、負極を有する電極組立体を、底部を2つ折りに折り曲げたラミネートフィルムの内部に挿入する工程、
(2)該ラミネートフィルムの一方のサイド部と前記正極及び負極のタブが導出されているトップ部とを、該一方のサイド封止部の厚みが前記トップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みよりも薄くなるようにL字金型を用いて同時に溶着する工程。
係る方法によれば、簡単にかつ高精度に前記第1の態様のラミネート電池を製造することができるようになり、加えて液状の電解質を使用しているため、容易に電極組立体の内部に電解質を添加することができる。
【0025】
係る態様においては、前記L字金型として、トップ封止部の高さがサイド封止部の高さよりも低くなっているものを使用することが好ましい。係る方法を採用すれば、一度の溶着処理で、容易に前記トップ封止部の厚みは従来例のラミネート電池の場合と同程度であるが、サイド封止部の厚さは従来例のラミネート電池よりも薄くなっているラミネート電池を製造することができる。
【0026】
更に本発明の別の態様によれば、一対のL字金型からなり、該一対のL字金型の少なくとも一方のL字金型の一辺の高さが他辺の高さより低くなっている前記ラミネート電池製造用L字金型が提供される。この金型を使用すれば、容易に前記トップ封止部の厚みは従来例のラミネート電池の場合と同程度であるが、サイド封止部の厚さは従来例のラミネート電池よりも薄くなっているラミネート電池を製造することができる
【0027】
係る態様によれば、前記一辺の高さが他辺の高さより低い方に、正極及び負極のタブ導出用の溝部が設けられていることが好ましい。このような金型を用いることによりトップ部の厚さを容易に所定の厚さに維持できるようになるので、この部分でのラミネートフィルム中のアルミニウム層とタブ部とがショートすることが減少する。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい態様について説明するが、以下に示す実施例は本発明の技術思想を具体化するためのラミネート電池、その製造方法及びラミネート電池製造用L字金型を例示するものであって、本発明をこれらのものに限定することを意図するものではない。
【0029】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例及び比較例を詳細に説明するが、両者の相違点は使用したL字金型の相違に基づくサイド封止部の厚み及び幅のみであって、それらの製造方法は既に上述したL字金型を使用したラミネート電池の製造方法と実質的に同一であるので、必要に応じて図1を参照して説明することとする。
【0030】
まず、実施例及び比較例に共通のラミネート電池の製造工程について説明する。最初に、アルミニウム製金属製芯体箔上にリチウムイオンを吸蔵放出する正極活物質を含む正極合剤を塗布した正極と、銅製金属製芯体箔上にリチウムイオンを吸蔵放出する負極活物質を含む負極合剤を塗布した負極とを、微多孔性ポリプロピレンフィルムからなる2枚のセパレータを介して互いに絶縁した状態で巻回した後、押し潰して偏平巻回電極体11を製造した。その際、この偏平巻回電極体11は、負極の金属製芯体箔露出部に負極タブ12を溶接しておくと共に、正極の金属製芯体箔露出部にも正極タブ13を溶接しておいた。なお、正極活物質としてはLiCoO2を、負極活物質としては炭素材料を用いた。
【0031】
この成型した偏平巻回電極体11を、図1(A)に示したように、所定の大きさの周知のラミネートフィルム14を2つ折りし、この内部に前記偏平巻回電極体11を配置し、必要に応じて負極タブ12及び正極タブ13の導出部に両面に薄いシール材15、15'を配置した後、このラミネートフィルム14のトップ部(タブ側)とサイド部の一方側をL字金型を用いて定位方式で同時に溶着してトップ封止部16及び第1のサイド封止部17を形成する。この際比較例1〜5で使用したL字金型は、既に図2に示したようなトップ封止部41の高さ及びサイド封止部42の高さが同じものである。このL字金型を用いて製造したラミネート電池10の形状は、既に述べたように、図3に記載したとおりになる。
【0032】
一方、実施例1及び2に使用した一方のL字金型は、図5の平面図(図5(A))及び各側面図(図5(B)〜図5(D))に示したように、トップ封止部41、サイド封止部42、くぼみ43及び44を有している点では図3に記載のものと同様であるが、トップ封止部41の高さとサイド封止部42の高さはサイド封止部42の方が高くなっている。従って、このL字金型を用いて製造したラミネート電池10の形状は、図6に記載したとおりになり、トップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みaとサイド封止部の厚みbとの差a−bが本発明のそれぞれのL字金型におけるサイド封止部42の高さとトップ封止部41の高さの差の和に相当する。なお、他方のL字金型(図示せず)の封止部分は全面が同じ高さとしてもよい。
【0033】
次いで、液状の未重合状態のポリマー電解質原料を、もう一方のサイド部側18から注入する。未重合状態のポリマー電解質原料は、所定の割合に混合した混合溶媒に6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1mol/lの割合で溶解した電解液とポリプロピレングリコールジアクリレート
【化1】
又は、ポリプロピレングリコールジメタクリレート
【化2】
を、重量比で12:1で混合した溶液に重合開始剤としてt−へキシルパーオキシピパレートを5000ppm添加したものを使用した。なお、電解質としてはLiPF6のほかにLiBF4、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2及びこれらを混合したものを適宜選択して使用することができる。
【0034】
次いで、図1(B)に示したように、ラミネートフィルム14の他方側20をバー型の金型19により仮溶着して仮封止部20を形成し、60℃のオーブン中に3時間静置して重合・硬化させた。その後予備充電及びエージングを行った。
【0035】
次いで、図1(C)に示したように、ラミネートフィルム14の他方側21をバー型の金型19で溶着して第2のサイド封止部21を形成し、前記ラミネートフィルムの不要部を切断して、図1(D)に示したようなラミネート電池10を得た。得られた電池の規格は、設計容量が750mAhであり、溶着部の構成を除いて実施例及び比較例とも全て同一のものである。
【0036】
(実施例1及び2、比較例1〜5)
そして、実施例1及び2としては、図5に示した本発明のL字金型を2種類(h=20μm及び30μmのもの)使用した。実施例1では、h=20μmのL字金型を使用し、定位制御してトップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みaが180μm、サイド封止部の厚みbが160μmとなるようにし、また、サイド封止部の幅cは1.5mmとなるように切断して実施例1のラミネート電池を製造した。また、実施例2としては、h=30μmのL字金型を使用し、定位制御してトップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みaが180μm、サイド封止部の厚みbが150μmとなるようにし、また、サイド封止部の幅cが1.5mmとなるように切断して実施例2のラミネート電池を製造した。
【0037】
さらに比較例1〜6としては、図2に示した従来例のL字金型を使用し、溶着に際しては定位制御してトップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みa及びサイド封止部の厚みbが180μm(比較例1〜4)及び150μm(比較例5)となるようにし、更にサイド封止部の幅cが4.0mm(比較例1及び5)、2.5mm(比較例2)、1.5mm(比較例3)、1.0mm(比較例4)となるようにしてそれぞれ比較例1〜5のラミネート電池を得た。
【0038】
上記実施例1〜2、比較例1〜5の電池のそれぞれについて、実操業ラインで数万個単位で電池を作製し、ショートの有無及びトップ封止部からの樹脂のはみ出しの有無を調査した。結果を表1に示した。さらに、ショート及び樹脂のはみ出しがなかったそれぞれの電池から所定数サンプリングして、80℃、相対湿度RH=90%の条件下に20日間放置加速試験を行い、電池の膨れの大きさの平均値を求めた。その結果を表1にまとめて示した。
【0039】
【表1】
【0040】
上記の表の結果から、トップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みaを180μmとすると、ショート率は0.01%未満であり、また、トップ封止部からの樹脂のはみ出しもないことが確認されたが、トップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みaを150μmと薄くする(比較例5)と、ショート率は、ロットごとに変化するが、約10〜20%にもなり、実用に耐えないことがわかる。
【0041】
さらに、比較例1〜4の結果から、サイド封止部の厚みbが一定でその幅cが狭くなると、水分透過度が増大するために電池膨れ量が大きくなることがわかる。そして、実施例1及び2の結果から、サイド封止部の厚みbを薄くすると、サイド封止部の幅cを1.5mmと小さくしても水分透過量を従来のものと同程度に押えることができるようになり、電池膨れを従来のものと同程度におさえることができるようになる。
【0042】
したがって、サイド封止の厚みbが薄い本発明のラミネート電池では、サイド封止部の幅を従来のものと同程度となせば、より水分の侵入を低下させることができるから、より信頼性が高く、過酷な条件下で使用し得るラミネート電池を得ることができる。他方では、サイド封止部の幅cを水分透過量が従来のものと同程度となる範囲で狭くすれば、その分だけ偏平巻回電極体の体積を大きくすることができるようになるので、体積当たりの電池容量を増大させることができるようになる。すなわち、サイド封止部17及び21の幅cを狭くすれば、このサイド封止部17及び21を折り曲げると、本発明のラミネート電池10の平面図及び底面図はそれぞれ図7(A)及び図7(B)に示したとおりになり、一度折りすればすむ。したがって、偏平巻回電極体11のサイズが一定であれば、本発明のラミネート電池の横幅Wはサイド封止部を二度折りする必要があった従来例のラミネート電池の横幅W'(図4参照)よりも小さくなり、逆に本発明のラミネート電池の横幅Wを従来例のラミネート電池の横幅W'を同じになるようにするなら、その分だけ偏平巻回電極体11のサイズを大きくすることができるので電池の容量を大きくすることができる。
【0043】
なお、実施例1及び2ではトップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みは180μmで測定を行ったが、従来から普通に使用されている175μm以上185μm以下であればショート率及び樹脂のはみ出しに問題は生じない。また、サイド封止部の厚みは、上記実施例1及び2に示した結果から、150μm以上160μm以下とすることが好ましい。
【0044】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、サイド封止部の厚みが薄くなるように溶着したので、水分透過路のシーラント部断面積が小さくなり、水分の浸入量が少なくなって電池膨れが抑えられたラミネート電池が得られ、加えてトップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みは従来のものと同程度に保ったので、ショート率が少なく樹脂のはみ出しも少ないラミネート電池を得ることができる。
【0045】
更に、従来のものよりサイド封止部からの水分透過が抑えられたため、電池のサイド封止部の幅を従来よりも狭くすることが可能となるので、その分だけラミネート電池の高容量化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、L字金型を使用したラミネート電池10の製造工程を示す図である。
【図2】図2は、図1(A)の工程で使用する従来のL字金型を示す図である。
【図3】図3は、図1(D)で得られた従来例の電池の平面図(図3(A))及び各側面図(図3(B)〜図3(D))である。
【図4】図4は、従来のラミネート電池10の平面図(図4(A))及び底面図(図4(B))である。
【図5】図5は、図1(A)の工程で使用する本発明のL字金型を示す図である。
【図6】図6は、図1(D)で得られた本発明の電池の平面図(図6(A))及び各側面図(図6(B)〜図6(D))である。
【図7】図7は、本発明のラミネート電池10の平面図(図7(A))及び底面図(図7(B))である。
【図8】図8は、従来のラミネート電池の製造工程を示す図である。
【符号の説明】
11 偏平巻回電極体
12 負極タブ
13 正極タブ
14 ラミネートフィルム
16 トップ封止部
17 第1のサイド封止部
19 バー型の金型
20 仮封止部
21 第2のサイド封止部
40 L字金型
41 トップ封止部
42 サイド封止部
Claims (7)
- 少なくとも正極、負極を有する電極組立体と、電解質と、ラミネート外装を有するラミネート電池において、該ラミネート外装のサイド封止部の厚みを前記正極及び負極のタブが導出されているトップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みよりも薄くなるようにしたことを特徴とするラミネート電池。
- 前記電極組立体は、正極と、負極とを、セパレータを介して積層巻回した後、押し潰して製造した偏平巻回電極体からなり、前記電解質が非水電解質であることを特徴とする請求項1に記載のラミネート電池。
- 前記トップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みが175μm以上185μm以下であり、前記サイド封止部の厚みが150μm以上160μm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のラミネート電池。
- 少なくとも以下の(1)〜(2)の工程を有することを特徴とするラミネート電池の製造方法。
(1)少なくとも正極、負極を有する電極組立体を、底部を2つ折りに折り曲げたラミネートフィルムの内部に挿入する工程、
(2)該ラミネートフィルムの一方のサイド部と前記正極及び負極のタブが導出されているトップ部とを、該一方のサイド封止部の厚みが前記トップ封止部においてラミネートフィルム同士が溶着されている部分の厚みよりも薄くなるようにL字金型を用いて同時に溶着する工程。 - 前記L字金型として、前記トップ封止部の高さが前記サイド封止部の高さよりも低くなっているものを使用したことを特徴とする請求項4に記載のラミネート電池の製造方法。
- 一対のL字金型からなり、該一対のL字金型のうち少なくとも一方のL字金型の一辺の高さが他辺の高さより低くなっていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のラミネート電池製造用L字金型。
- 前記一辺の高さが他辺の高さより低い方に、正極及び負極のタブ導出用の溝部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載のラミネート電池製造用L字金型。
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