JP4517446B2 - カップ状容器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、上縁部に外方または内方にカールした口縁部を有するカップ状容器に関するものであり、詳しくは口縁部周囲を蓋材でシールする際に完全密封シールを可能にしたカップ状容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙製のカップ状容器、例えば紙カップは、一般的には、図5(a)〜(c)に示すように、四隅にアールが取ってある扇形状の胴紙の一方の端縁をもう一方の端縁に重ね合わせて接合させ、下方に向かって先細る円筒形状の胴部材とし、別に底部材用ロールからほぼ円形状に打ち抜かれた底紙を外周縁部を下向きに起立させて底部材とし、前記胴部材の下部内面に底部材の外周縁部の内面を接合させ、さらに外周縁部を覆うように前記胴部材の下端縁部が内方に折り曲げられ、前記底部材の外周縁部の外面に接合して底部を構成させ、最後に前記胴部材の上部周縁を外方に向けてカールさせ、口縁部を形成させたものである。胴部材の端縁同士の重なり合った部分を上から観察すると一直線になっている。
【0003】
そして、近年はカップ状容器である紙カップにジュース等の飲料やヨーグルト等の液体食品などを収容後、紙カップの開口部を覆うように、紙カップの上部に薄紙、プラスチックフィルム、アルミニウム箔等を単体で、あるいはそれらを適宜に積層した複合シートの状態で蓋材として被せ、この蓋材と口縁部周縁とをヒートシール、超音波シール、高周波シール等のシール方法を用いて密封シールした後、流通工程を経て最終的に消費されるという長期保存可能な容器としての使われ方も増加している。
【0004】
紙製容器、例えば紙カップがこのような使われ方をする場合には、カップ状容器と蓋材との間の密封シールが完全に行われる必要があるが、適正なシール条件の範囲が狭く、適正条件範囲を外れた場合には、図5(c)に示すように、口縁部で胴部材の端縁同士が重なり合った部分は連続しているため口縁部15の段差部分と蓋材20との間に隙間sが出来てしまうことが多く、いくら圧力を加えても紙の厚みがあるため、この隙間sを完全に埋めることは難しいという問題がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙カップに代表される口縁部を有する紙製容器と蓋材とを口縁部周縁で密封シールして長期保存可能な容器として使用する場合における以上のような問題点に着目してなされたもので、胴部材の口縁部に、端縁同士の重なり部分の段差があっても口縁部周縁と蓋材との密封シールが可能なシール条件範囲が広いカップ状容器を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の発明は、カップ原紙の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を設けた積層シートから構成される胴紙と底紙とからなるカップ状容器であり、前記胴紙の上端縁近傍には少なくとも1本以上の周方向に略平行な切断線を有する刻み模様が施され、この刻み模様を有する端縁辺を上面にしてもう一方の端縁辺と重ねて胴貼り部を形成させ、該胴紙の下端部は底紙と接合され、上端部は外方にカールして口縁部が形成され、前記刻み模様が前記口縁部の上側に配置されるように成形されたことを特徴とするカップ状容器である。
【0007】
このように少なくとも1本以上の周方向に略平行な切断線を有する刻み模様が口縁部の上側に配置されるようにしてカップ状容器に成形されているので、口縁部を上下方向の力で加圧した際、胴紙の胴貼り部分の段差が埋まり易い。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記口縁部の直径をRとしたとき、前記刻み模様が胴紙の端縁からπR/2の距離を隔てて設けられていることを特徴とするカップ状容器である。
【0009】
このように、前記刻み模様が胴紙の端縁からπR/2の距離を隔てて設けられているので、口縁部の上側部分に刻み模様が正しく形成され、口縁部を上下方向の力で加圧した際、胴紙の重ね合わせ部分の段差が埋まり易い。
【0010】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記胴貼り部の周方向の長さをSとしたとき、前記刻み模様の幅L1 との間に、S>L1 の関係があることを特徴とするカップ状容器である。
【0011】
このように、胴貼り部の周方向の長さSと、刻み模様の幅L1 との間は、S>L1 の関係にあるので、刻み模様の幅L1 は胴貼り部の周方向の長さSの中に入って口縁部の重ね合わせ部分の段差が埋まりやすい。
【0012】
また、第4の発明は、第1、第2または第3の発明において、前記刻み模様が櫛型模様であることを特徴とするカップ状容器である。
【0013】
また、第5の発明は、第1、第2または第3の発明において、前記刻み模様が鍵型模様であることを特徴とするカップ状容器である。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下実施例により本発明を詳細に説明する。
本発明のカップ状容器は、例えば図1(a)、(b)に示すように、カップ原紙の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を設けた積層シートから構成される胴紙11と底紙12からなるカップ状容器10であり、前記胴紙11の上端縁近傍には少なくとも1本以上の周方向に略平行な切断線aを有する刻み模様13が施され、この刻み模様を有する端縁辺を上面にしてもう一方の端縁辺と重ねて胴貼り部14を形成させ、該胴貼り部を有する胴紙の下端部は底紙と接合され、上端部は外方にカールして口縁部15が形成され、前記刻み模様13が前記口縁部15の上側に位置するように成形されている。
【0015】
なお、カップ状容器の形状は、本実施例に示した上方に向けて直径が増加するテーパー状に限るものではなく、上方に向けて直径が減少する逆テーパー状であっても、あるいは上方も下方も同径の円柱状であっても構わない。
【0016】
胴紙11は図1(b)に示すように、略扇形状をしており、長さ方向の一辺の上端縁近傍には少なくとも1本以上の周方向に略平行な切断線aを有する刻み模様13が施されている。
4隅にアールを取っておいても良い。
【0017】
刻み模様13は図4に示すように櫛型、鍵型、稲妻型等各種の形状が考えられる。
刻み模様13は胴紙の端縁の上からπR/2の距離を隔てて設けるのが良い。
ここで、Rはカップ状容器に成形した際の口縁部の直径を示す。
【0018】
このことによりカップ状容器に成形するに際し口縁部をカールさせた際、胴紙の端縁辺のうち、刻み模様を施した部分が丁度口縁部の上側に位置するようになる。
【0019】
また、胴貼り部の周方向の長さをSとしたとき、前記刻み模様の幅L1 との間に、S>L1 の関係があるように設けることが好ましい。
【0020】
【実施例】
以下に本発明の実施例をさらに具体的に説明する。
〈実施例1〉
先ず坪量270g/m2 のカップ原紙の片面に押し出しラミネーション法により厚さ30μmのポリエチレン層を積層し、胴紙用紙を作製した。
別に、坪量210g/m2 のカップ原紙の片面に押し出しラミネーション法により厚さ30μmのポリエチレン層を積層し、底紙用紙を作製した。
【0021】
作製した胴紙用紙を打ち抜いて略扇形状の胴紙11を準備した。この胴紙の片方の端縁辺の上端近傍には、図1(a)に示すような胴紙を重ね合わせて口縁部を成形させた際に口縁部の上側に位置するように、上縁から5mmの距離を隔てて、深さ3mm、幅2mmの周方向に略平行な切断線aによって形成させたスリットを2mmの間隔をおいて3本設けた櫛型模様の刻み模様13が形成されている。
【0022】
刻み模様13は、少なくとも1本以上の周方向に略平行な切断線aを有した模様であれば良く、櫛型模様のほかに、図4に示すような鍵型模様、稲妻模様など各種の模様が考えられる。
【0023】
このようにして作製した胴紙と底紙用紙を用い、一般的に使用されている紙カップ成形機によりカップ状容器を成形することができる。その成形方法を詳述するとつぎの通りである。
すなわち、先ず、略扇形状で一方の側部の上端近傍に櫛型模様が形成された胴紙をポリエチレン層を内側にしてマンドレル(図示せず)に巻き付けるようにして櫛型模様が形成された側部を外側にしてもう一方の側部と重ね合わせ、ヒートシール等の方法によりこの重ね合わせ部分を熱融着して胴貼り部14とし、下方に向かうに従い窄まる円筒状の胴部材11aに成形した。また、底紙用紙は、ポリエチレン層を外側にして、略円形状であると共に、外周縁部が下向きに起立する底部材12aに打ち抜き、成形した。
【0024】
次に、胴部材11aの下部内面に底部材12aの外周縁部の外面を接合させながら胴部材11aの内面側と底部材12aの外面側に熱風を吹き付ける。ついで、底部材の起立した外周部を覆うように胴部材の下端縁部をインカール金型(図示せず)を用いて内方に折り返し、この折り返した胴部材と底部材の起立した外周部をローレット(図示せず)を用いて圧着することにより、折り返した胴部材の内面は底部材の外面に融着して完全な底部構造が出来上がる。
【0025】
最後に、底部を成形した円筒状の胴部材11aをインカール金型(図示せず)を使用して加熱加圧して、円筒状の胴部材の上部周縁を外側にカールさせた口縁部15を形成させ、ポリエチレン層を内側にした、高さ105mm、口径140mm、口縁部高さ4.5mm、口縁部幅5mmの口縁部縦断面が略円形の実施例1のカップ状容器とした。
【0026】
刻み模様が胴紙の上縁から5mmの距離を隔てて10mmの幅で設けられているので、口縁部を形成した際、口縁部の上側に、周方向に略平行な切断線aを有するスリットを設けた刻み模様が現れることになる。
【0027】
〈実施例2〉
刻み模様に図3(a)に示すような鍵型の刻み模様を使用した以外は、実施例1と同様の材料、方法で、実施例2のカップ状容器を作製した。鍵型の刻み模様について詳述する。
【0028】
すなわち、略扇形状の胴紙の一方の側部の上端から11mmの距離を隔てた位置に周方向に略平行な長さ3mmの切断線aを穿設し、切断線の先端と、この切断線を入れた側部の切断線から15mmの距離を隔てた位置とを結んだ斜線で胴紙の側部を切り落とし、鍵型をした刻み模様を作製した。
【0029】
刻み模様が胴紙の上縁から11mmの距離を隔てた位置から設けられているので、口縁部を形成した際、口縁部の上側に、周方向に略平行な切断線a部分が現れることになる。
【0030】
〈比較例1〉
胴紙に刻み模様を設けない従来通りの略扇形状の胴紙を用いた以外は、実施例1と同じ胴紙用紙、底紙用紙を使用し、実施例1と同じ寸法のカップ状容器を成形し、比較例1のカップ状容器とした(図5参照)。
【0031】
こうして作製した実施例2種類、比較例1種類、合計3種類のカップ状容器に、内容物であるフライ麺を充填後、内面にカップ状容器の内面側と接着性のある熱接着性樹脂が積層された複合シートからなる蓋材を被せヒートシール法に条件を変化させて(温度〜150、155、160°C;圧力〜0.10、0.15、0.20MPa;時間〜0.8、0.9、1.0sec.)ヒートシールし、胴貼り部分の口縁部の密封性を観察した。その結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
このように本発明のカップ状容器は、蓋材を被せて口縁部周縁をヒートシールする際の適正なヒートシール条件範囲が従来のカップ状容器より広くなっていることがわかる。
【0034】
【発明の効果】
上記のように本発明によれば、蓋材を一定にした際の適正シール範囲が広くなる(貼り合わせ部分の段差を埋めるシール条件が広くなる)。
蓋材のシーラントに塗布量を多くしたホットメルトを使用しなくても高い密封性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は、本発明のカップ状容器の一実施例を示す斜視説明図である。
(b)は、(a)で使用する胴紙の展開説明図である。
【図2】図1(a)のA部を拡大した平面説明図である。
【図3】本発明のカップ状容器の別の実施例を示す、(a)は胴紙の展開説明図であり、(b)はその胴紙を使用してカップ状容器に成形した際の胴紙の胴貼り部の口縁部の拡大平面図である。
【図4】(a)〜(d)は、刻み模様の他の実施例を用いて成形したカップ状容器の口縁部の拡大平面図である。
【図5】従来のカップ状容器を示す、(a)は略扇形状の胴紙を示す展開説明図であり、(b)は(a)の胴紙を用いてカップ状容器に成形した胴貼り部の口縁部分の状態を示す拡大平面説明図であり、(c)は蓋材を被せてシールした状態を示す模式説明図である。
【符号の説明】
10‥‥カップ状容器
11‥‥胴紙
11a‥胴部材
12‥‥底紙
12a‥底部材
13‥‥刻み模様
14‥‥胴貼り部
15‥‥口縁部
20‥‥蓋材
a‥‥切断線
s‥‥隙間
Claims (4)
- カップ原紙の少なくとも片面に熱可塑性樹脂層を設けた積層シートから構成される胴紙と底紙とからなるカップ状容器であり、
前記胴紙の上端縁近傍には少なくとも1本以上の周方向に略平行な切断線を有する刻み模様が施され、この刻み模様を有する端縁辺を上面にしてもう一方の端縁辺と重ねて胴貼り部を形成させ、
該胴紙の下端部は底紙と接合され、
上端部は外方にカールして口縁部が形成され、前記刻み模様が前記口縁部の上側に配置されるように成形されているカップ状容器であり、
前記口縁部の直径をRとしたとき、前記刻み模様が胴紙の端縁からπR/2の距離を隔てて設けられていることを特徴とするカップ状容器。 - 前記胴貼り部の周方向の長さをSとしたとき、前記刻み模様の幅L1 との間に、S>L1 の関係があることを特徴とする請求項1記載のカップ状容器。
- 前記刻み模様が、櫛型模様であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカップ状容器。
- 前記刻み模様が、鍵型模様であることを特徴とする請求項1又は2に記載のカップ状容器。
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