JP4510970B2

JP4510970B2 - 空気入りタイヤ

Info

Publication number: JP4510970B2
Application number: JP2000002296A
Authority: JP
Inventors: 修斎藤
Original assignee: Bridgestone Corp
Current assignee: Bridgestone Corp
Priority date: 2000-01-11
Filing date: 2000-01-11
Publication date: 2010-07-28
Anticipated expiration: 2020-01-11
Also published as: JP2001191756A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、とくにトラックやバス等の重荷重用車両に装着して好適な空気入りタイヤに関し、プライコードの引き抜けやカーカスプライの巻き返し部分へのセパレーションの発生等を抑制した、耐久性の改善されたビード部構造の改良に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
転動負荷が大きい重荷重用の空気入りタイヤは、プライコードの引き抜けが懸念されることから、カーカスプライを、ビード部のビードコアの周りで、タイヤの半径方向の内側から外側へ大きく巻き返し、その巻き返し部分をゴム質中に埋め込んで固定するようにしている。
【０００３】
図７（ａ）（ｂ）はこのことを例示するビード部の略線横断面図であって、図７（ａ）はカーカスプライ９の巻き返し部分９ａの外端を、ワイヤチェファ１０の同様の外端よりタイヤの半径方向外側に位置させたものであり、図７（ｂ）はカーカスプライ９の巻き返し部分９ａの外端よりワイヤチェファ１０の巻き返し外側端をタイヤの半径方向外側に位置させた構造のものである。
【０００４】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような従来のビード構造においては、カーカスプライ９の巻き返し外端位置、あるいはワイヤチェファ１０の外端位置を境にしてタイヤの半径方向の内外側に剛性段差が生じることとなるため、タイヤの負荷転動に際する、ビード部からサイドウオール部にかけての繰り返し変形によりカーカスプライ９の巻き返し外端あるいはワイヤチェファ１０の外端を含めたその近傍域に応力が集中することになる。
【０００５】
そして、これが、その外端の、ゴム質からのセパレーションを引き起し、このセパレーションがさらに、図８（ａ）、（ｂ）に示すようなビード部クラックｃｒを発生させる原因になっていた。
【０００６】
そこで、カーカスプライ９の巻き返し部分の外端もしくは、ワイヤチェファ１０の外端およびその近傍域に生じる応力を緩和し、あわせてビード部の剛性を高めて、そのビード部の変形を抑制することを目的に、ビードコア１１の周りで、複数枚の有機繊維コード層をワイヤチェファ１０に外接させて配置し、これらの有機繊維コード層で、カーカスプライ９の巻き返し外端または、ワイヤチェファ１０の外端を覆ったり、ビードコア１１のタイヤ半径方向外側で、カーカスプライ９の本体部分と、巻き返し部分９ａとの間に配置するゴムスティフナ１２、なかでも硬ゴムフティフナの量を増やす等の工夫がなされているけれども、これらによれば、タイヤの負荷転動におけるビード部の発熱温度が一層高くなることにより、前述したセパレーションの発生に加えて、有機繊維コード層の外端にもまたセパレーションが発生する不具合があり、その他にもタイヤの重量増加やタイヤ生産性が低下するという問題があった。
【０００７】
本発明は、従来の技術が抱える上述のような問題点を解決することを課題とするものであり、その目的は、タイヤの重量増加やタイヤの生産性の低下を招くことなく、カーカスプライおよびワイヤチェファの外端の、ゴム質からのセパレーションを有効に防止するとともに、プライコードの引き抜けをもまた十分に防止してビード耐久性を大きく改善させ得る空気入りタイヤを提案するところにある。
【０００８】
【課題を解決するための手段】
本発明の空気入りタイヤは、スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライを、トレッド部からサイドウオール部を経てビード部までトロイダルに延在させるとともに、各ビード部に埋設したビードコア及びこれに隣接するゴムスティフナの周りに沿って、タイヤの径方向の内周側から外周側へ巻き返し、カーカスプライの各巻き返し部に、ビードコアの外周に沿ってそれに巻き付く巻き込み部を有する空気入りタイヤにおいて、
前記ゴムスティフナは、トレッド部の幅方向に沿う向きで互いに重ね合わさる軟ゴムと、前記軟ゴムよりも硬い硬ゴムとを備え、このうち、前記硬ゴムは、前記軟ゴムよりもトレッド部の幅方向の内側に位置し、その重ね合わせ面においてＳ字状若しくは逆Ｓ字状に波を打つものであり、
前記ビードコアの周りに、カーカスプライに外接させて配置されるワイヤチェファを設け、
空気圧を充てんしたタイヤのリム組み状態で、ビード部の幅方向内側の先端を基準点として、そこからワイヤチェファのカーカス本体部側の端に至るまでの高さをｈ_１とし、前記基準点からゴムスティフナのうちの硬ゴムの、タイヤ径方向外側端に至るまでの高さをｈ_２とした場合に、ｈ_１とｈ_２とが、ｈ_１≧ｈ_２の関係を満足するものである、ことを特徴とする空気入りタイヤである。
【００１１】
また、かかる空気入りタイヤは、空気圧を充てんしたタイヤのリム組み状態で、ビード部の幅方向内側の先端を基準点として、前記硬ゴムの、タイヤ径方向外側端で、前記硬ゴムが、前記軟ゴムとの重ね合わせ面において前記カーカスプライの本体部から離れる方向に最も突き出した部位Ｌ _４に至るまでの高さをｈ_３とし、前記基準点からワイヤチェファのカーカス巻き返し部側の巻き上げ端に至るまでの高さをｈ_４とした場合にｈ_３とｈ_４とがｈ_３≧ｈ_４（ただしｈ_３＜ｈ_２）の関係を満足するものとするのが望ましい。
【００１２】
前記硬ゴムの、タイヤ径方向外側端で、前記硬ゴムが、前記軟ゴムとの重ね合わせ面において前記カーカスプライの本体部から離れる方向に最も突き出した部位の硬ゴムの厚さをｗ_１とし、それに隣接する軟ゴムの最も凹んだ部位の厚さをｗ_２とした場合に、ｗ_１とｗ_２との関係が、３０％≦ｗ_１／（ｗ_１＋ｗ_２）≦１００％を満足するものとすることができる。
【００１３】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明をより具体的に説明する。
図１は本発明の実施の形態を示すタイヤの横断面図であり、図中１はトレッド部、２はトレッド部１に連続するサイドウオール部、３はビード部であって、このビード部３はサイドウオール部２の半径方向内周側と連なっていて、このビード部３には横断面形状が例えば六角形状をなすビードコア４と、このビードコア４に隣接配置されるスティフナ５が埋設されている。このスティフナ５はトレッド部１の幅方向に沿う向きで互いに重ね合わさる軟ゴム５ａと硬ゴム５ｂとを備えるものであり、このうち、硬ゴム５ｂは軟ゴム５ａよりタイヤのトレッド部１の幅方向内側に位置し、その重ね合わせ面においてＳ字状あるいは逆Ｓ字状に波を打つものとする（各ビード部を同一の横断面で見た場合に、一方のビード部はＳ字状に、また、もう一方のビード部は逆Ｓ字状の合わせ面になる。）
【００１４】
また、６はカーカスプライであって、このカーカスプライ６はタイヤの赤道面に対して実質的に９０°の角度で延在させた、例えば、スチールコード（強力：８０〜３００kgの範囲、より好ましくは１００〜１８０kgの範囲のものが好適）をプライコードとするものが適用でき、このプライコードからなる一枚のカーカスプライ６を、トレッド部１からサイドウオール部２を経てビード部３までトロイダルに延在させるとともに、ビードコア４およびスティフナ５の周りで、タイヤの半径方向の内側から外側へ巻き返される。
【００１５】
カーカスプライ６の巻き返し態様は、上掲図１に示すように、タイヤの幅方向の内周側から外周側へ巻き返す場合の他に、図２に示すように、タイヤの幅方向の外周側から内周側へ巻き返すこともでき、これらの何れにおいてもカーカスプライ６の巻き返し部７はビードコア４の周面に沿ってそれに巻き付く巻き込み部７ａを有する。
【００１６】
上掲図１あるいは図２にそれぞれ示した巻き込み部７ａに関しては、ともにカーカスプライ６をビードコア４の周りに巻き返すに先立ち、その巻き込み部７ａに相当する部分に、ビードコア４の横断面輪郭形状と対応させて予め少なくとも三ヶ所の塑性変形部Ｐ₁ 、Ｐ₂ 、Ｐ₃ を設けて、この部分をビードコア４の周面に十分に近接させ、かつ、正確に倣ってビードコア４に巻き付ける。巻き込み部７ａは、ビードコア４の断面輪郭の半周とくに先端側のＰ₁ にて、ビードコア４の、ビードベース３ａ側の半周を越えてビードコア周面に沿って延び、なかでも上掲図１に示すような巻き込み部７ａの先端は、これに加えて、空気圧を充てんしたタイヤのリム組み姿勢で、ビードコア４の外周縁位置を越えて、それよりタイヤの幅方向内側に位置するものとする。
【００１７】
上記のような構成になる空気入りタイヤにおいては、巻き返し部分７に巻き込み部７ａを設けることにより、プライコードの引き抜けが有効に防止され併せてビードコア４およびリムＲの作用のもとで、その巻き返し部分７のセパレーションを有効に回避し得る。
【００１８】
本発明においては、軟ゴム５ａと硬ゴム５ｂの重ね合わせにおいて、硬ゴム５ｂをタイヤの内側に位置させ、その断面形状を重ね併せ面においてＳ字状若しくは逆Ｓ字状の波を打つようにしたが、これにより硬ゴムを用いたことによるビード部の発熱を抑制しつつ、ビード部の剛性が高められビード耐久性が改善される。
【００１９】
ビードコアの周りで、カーカスプライ６にワイヤチェファ８を外接させて配置することによりその部位の外端及びその近傍域での変形量が小さくなり、ワイヤチェファ８の外端におけるセパレーションが効果的に軽減される。
【００２０】
本発明においては、空気圧を充てんしたタイヤのリム組み状態で、ビード部３の幅方向内側の先端を基準点Ｌ_１として、そこからワイヤチェファ８の内周側の巻き上げ端（カーカス本体部側の端）Ｌ_２に至るまでの高さをｈ_１とし、その基準点Ｌ_１からゴムスティフナ５のうちの硬ゴム５ｂの先端Ｌ_３に至るまでの高さをｈ_２とした場合に、ｈ_１≧ｈ_２の関係を満足させるのが望ましい。その理由は、ｈ_１＜ｈ_２では、ワイヤチェファ８の巻き上げ高さのアップによるビード部６の倒れ込み変形を抑制するための効果を硬ゴム５ｂに有効に伝達させることができなくなり、ビード耐久性の改善を図るのが困難となるからである。
【００２１】
また、本発明においては、基準点Ｌ_１から硬ゴム５ｂの、タイヤ径方向外側端で、硬ゴム５ｂが軟ゴム５ａとの合わせ面で前記カーカスプライ６の本体部から離れる方向に最も突き出した部位Ｌ_４に至るまでの高さをｈ_３とし、前記基準点Ｌ_１からワイヤチェファ８のカーカス巻き返し部側の巻き上げ端Ｌ_５に至るまでの高さをｈ_４とした場合において、ｈ_３とｈ_４とがｈ_３≧ｈ_４（ただしｈ_３＜ｈ_２）の関係を満足させるのが好ましく、この条件を満足させることにより、ワイヤチェファ８によるビード部の変形等の抑制効果および硬ゴム５ｂのゲージアップによる変形等の抑制効果を該ワイヤチェファ８の折返し側の端部に伝わりやすくなり、これにより、故障核のひとつであるワイヤチェファ８の端部における動きを抑制することが可能となる。そしてこれに伴う歪の低減によりビード部の耐久性の改善が図られる。
【００２２】
ワイヤチェファ８によるビード部３の変形等の抑制効果を硬ゴム５ｂに伝達させやすくするため、本発明においては、さらに、望ましくは硬ゴム５ｂの、タイヤ径方向外側端で、硬ゴム５ｂが、軟ゴム５ａとの合わせ面においてカーカスプライ６の本体部から離れる方向に最も突き出した部位の硬ゴムの厚さをｗ_１、それに隣接する軟ゴム５ａの凹んだ部位の厚さをｗ_２として、ｗ_１とｗ_２を、３０％≦ｗ_１／（ｗ_１＋ｗ_２）≦１００％を満足するように設定する。
【００２３】
巻き込み部７をビードコア４とスティフナ５との間で挟み込むことにより、その巻き込み部７に対する拘束力を高めることが可能になり、プライコード６の引き抜けをより有利に防止できる。
【００２４】
図３はビードコア４の断面を拡大して示たものである。空気入りタイヤにおいてプライコードの引き抜け防止効果を担保するためには巻き込み部７の先端を、ビードベース３ａから離れた三辺ａ、ｂ、ｃの何れかの上に位置させることが好ましく、より好ましくは、配設範囲を、辺ａと辺ｂとの交点位置から、それらの各辺長の２／３の長さの範囲とする。
【００２５】
本発明においては、前述の如く巻き込み部７に塑性変形部Ｐ₁ 、Ｐ₂ 、Ｐ₃ を設けることができるが、一カ所また二カ所とすることもでき、必要に応じて四カ所とすることもできる。
【００２６】
【実施例】
以下に、本発明に係るタイヤの、ドラム耐久性に関する実施例について説明する。
【００２７】
供試タイヤとして、表１に示した如き内部構造を有し、ビード部の横断面が図４（供試タイヤ１（比較例））、図５（供試タイヤ２（本発明例））、図６（供試タイヤ３（本発明例））及び図７（ａ）（従来タイヤ）になる、サイズがＴＢＲ２８５／６０Ｒ２２．５のタイヤを９．００×２２．５のリムに装着したものを用いた。
【００２８】
ドラム耐久性は、リム組みした各タイヤに最高空気圧（９００kPa ）を充てんするとともに、最大負荷能力の２倍に相当する荷重を負荷したドラム上走行試験において、ビード部故障（プライ端またワイヤチェファ端のセパレーション）もしくはゴムチェファクラック等によって走行不能になるでの走行距離を測定し、従来タイヤをコントロールとして指数化することによって評価した。なお、ドラム耐久性は指数値が大きいほど優れた結果を示すものとする。
【００２９】
表１にその結果を示す。
【００３０】
【表１】

【００３１】
表１より明らかな如く、本発明に適合する供試タイヤ（供試タイヤ２、３）は、従来タイヤに比較してビード部の耐久性が格段に改善されることが確認できた。
【００３２】
【発明の効果】
本発明によれば、カーカスプライの巻き返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻き付く巻き込み部を有する空気入りタイヤにおいて、Ｒ字状若しくは逆Ｒ字状の断面形状を有する硬ゴムを備えたゴムチェファ配設することによって、プライコードの引き抜けやカーカスプライ巻き返し部分のセパレーションを、より有利に回避してビード部の耐久性を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の実施の形態を示す要部横断面図である。
【図２】本発明の他の実施の形態を示す要部横断面図である。
【図３】巻き込み部の先端位置を示すビードコアの拡大断面図である。
【図４】実施例で用いた供試タイヤの要部横断面図である。
【図５】実施例で用いた供試タイヤの要部横断面図である。
【図６】実施例で用いた供試タイヤの要部横断面図である。
【図７】（ａ）（ｂ）は従来のビード構造を例示するタイヤの要部横断面図である。
【図８】（ａ）（ｂ）はビード部クラックの発生態様を示す横断面図である。
【符号の説明】
１トレッド部
２サイドウオール部
３ビード部
４ビードコア
５スティフナ
６カーカスプライ
７巻き返し部
８ワイヤチェファ
９カーカスプライ
10 ワイヤチェファ
11 ビードコア
12 ゴムスティフナ

Claims

スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライを、トレッド部からサイドウオール部を経てビード部までトロイダルに延在させるとともに、各ビード部に埋設したビードコア及びこれに隣接するゴムスティフナの周りに沿って、タイヤの径方向の内周側から外周側へ巻き返し、カーカスプライの各巻き返し部に、ビードコアの外周に沿ってそれに巻き付く巻き込み部を有する空気入りタイヤにおいて、
前記ゴムスティフナは、トレッド部の幅方向に沿う向きで互いに重ね合わさる軟ゴムと、前記軟ゴムよりも硬い硬ゴムとを備え、このうち、前記硬ゴムは、前記軟ゴムよりもトレッド部の幅方向の内側に位置し、その重ね合わせ面においてＳ字状若しくは逆Ｓ字状に波を打つものであり、
前記ビードコアの周りに、カーカスプライに外接させて配置されるワイヤチェファを設け、
空気圧を充てんしたタイヤのリム組み状態で、ビード部の幅方向内側の先端を基準点として、そこからワイヤチェファのカーカス本体部側の端に至るまでの高さをｈ_１とし、前記基準点からゴムスティフナのうちの硬ゴムの、タイヤ径方向外側端に至るまでの高さをｈ_２とした場合に、ｈ_１とｈ_２とが、ｈ_１≧ｈ_２の関係を満足するものである、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
空気圧を充てんしたタイヤのリム組み状態で、ビード部の幅方向内側の先端を基準点として、前記硬ゴムの、タイヤ径方向外側端で、前記硬ゴムが、前記軟ゴムとの重ね合わせ面において前記カーカスプライの本体部から離れる方向に最も突き出した部位Ｌ_４に至るまでの高さをｈ_３とし、前記基準点からワイヤチェファのカーカス巻き返し部側の巻き上げ端に至るまでの高さをｈ_４とした場合にｈ_３とｈ_４とがｈ_３≧ｈ_４（ただしｈ_３＜ｈ_２）の関係を満足するものである、請求項１記載の空気入りタイヤ。
前記硬ゴムの、タイヤ径方向外側端で、前記硬ゴムが、前記軟ゴムとの重ね合わせ面において前記カーカスプライの本体部から離れる方向に最も突き出した部位Ｌ_４の硬ゴムの厚さをｗ_１とし、それに隣接する軟ゴムの凹んだ部位の厚さをｗ_２とした場合に、ｗ_１とｗ_２との関係が、３０％≦ｗ_１／（ｗ_１＋ｗ_２）≦１００％を満足するものである、請求項１又は２記載の空気入りタイヤ。