JP4507170B2

JP4507170B2 - インクジェットプリンタヘッド

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Publication number: JP4507170B2
Application number: JP2004046637A
Authority: JP
Inventors: 敦伊藤
Original assignee: Brother Industries Ltd
Current assignee: Brother Industries Ltd
Priority date: 2004-02-23
Filing date: 2004-02-23
Publication date: 2010-07-21
Anticipated expiration: 2024-02-23
Also published as: JP2005231314A; US7431444B2; US20050225608A1

Description

本発明は、圧電式のインクジェットプリンタヘッドの構成に関するものである。

先行技術の圧電式インクジェットプリンタとしては、例えば特許文献１に、接着剤を介して積層された複数枚のプレートからなるキャビティユニットの背面に、圧電アクチュエータを接合し、さらに圧電アクチュエータの背面に、外部機器との電気的接続のためにフレキシブルフラットケーブルが重ね接合された構成が記載されている。

特許文献１に記載のキャビティユニットは、平面視略矩形板状のノズルプレート、マニホールドプレート、ベースプレート等の複数枚の薄いプレート板をそれぞれ接着剤にて重ね接合した構造となっている。キャビティユニットの前面側に位置するノズルプレートには、複数のノズルがそのプレートの長辺方向に沿って２列状に並べて形成されている。キャビティユニットの背面側に位置するベースプレートには、前記各ノズルに連通する複数の圧力室が前記ノズルの配列方向（前記ノズル列の延びる方向）に沿って２列状に並べて形成されている。ノズルプレートとベースプレートとの間に位置するマニホールドプレートには、対応する各圧力室に連通するための２つの共通インク室が前記複数の圧力室の配列方向に沿って延びるように形成されている。そして、キャビティユニットの背面（ベースプレート）には、その短辺方向に沿って並ぶ２つのインク供給口が、対応する共通インク室に連通するように形成されている。

従って、前記特許文献１の構成では、前記各プレートの積層方向から見ていずれかと重なる位置関係にあるノズル列、圧力室の列、共通インク室及びインク供給口は、それぞれ１対１の関係で対応している。

また、前記２つのインク供給口の箇所には、インク中の塵除去用のフィルタが接着剤を介して接合されている。すなわち、前記両インク供給口は、１枚のフィルタでまとめて覆われている。
特開２００２−３６５４５号公報（図３参照）

ところで、近年、インクジェットプリンタの高速化、高密度化あるいはカラー化のために、キャビティユニットのノズル列を増加させた構成が提案されている。この場合、前記特許文献１の構成に鑑みると、ノズル列、圧力室の列、共通インク室及びインク供給口は各々１対１の関係で対応するものと考えられるので、キャビティユニットの背面には、ノズル列の数（圧力室の列数、共通インク室の数）に対応した個数のインク供給口が形成されることになる。

例えばブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンという４色のカラーインクでの印刷に適用されるキャビティユニットでは、４つのインク供給口がベースプレートの一端部（短辺側の端部）にその短辺方向に沿って並ぶように形成されることになる。

このようにインク供給口の数を４つに増加させた場合において、前記特許文献１のフィルタをそのまま適用するのであれば、１つのフィルタは２つのインク供給口を覆うことができるので、キャビティユニットの背面に、ベースプレートの短辺方向に沿ってフィルタを２枚並べて接着しなければならない。

しかし、この場合は、各フィルタの占める面積の関係上、接着の際に隣り合うフィルタの縁部が重ならないように、中央側２つのインク供給口間の巾間隔を適宜広くしなければならないので、いきおいベースプレートの短辺方向の巾寸法を大きくせざるを得ず、キャビティユニット、ひいてはインクジェットプリンタヘッドのコンパクト化を図ることができないという問題があった。また、この場合は、フィルタ数が増えた分だけ接着等の作業工程数も増えるので、手間がかかるという問題もあった。

そこで、本発明は、このような問題を解消したインクジェットプリンタヘッドを提供することを技術的課題とするものである。

この技術的課題を解決するため、請求項１の発明は、第１方向にそれぞれ延び、且つ前記第１方向と直交する第２方向に互いに並んで配置された複数のノズル列と、前記複数のノズル列に属する複数のノズルにそれぞれ連通し、前記複数のノズルとともに前記第１方向に並ぶ複数の圧力室と、前記各ノズル列毎に対応して前記各圧力室にインクを分配供給する複数の共通インク室と、これら各共通インク室から前記圧力室を経由して前記ノズルに至るインク流通路とを有するキャビティユニットが備えられたインクジェットプリンタヘッドであって、前記キャビティユニットは、前記第１方向に長尺形状を有しており、前記キャビティユニットの前記ノズルが形成される前面と反対側の背面には、複数種類のインクにそれぞれ対応する複数のインク供給口が、前記第２方向に沿って並び且つ対応する共通インク室に連通するように形成され、前記複数のインク供給口の箇所には、前記全てのインク供給口を覆う薄シート状のフィルタ体が配置され、当該フィルタ体には、前記インク中の異物を取り除くためのろ過部が、前記各インク供給口毎に対応させて形成され、これら各ろ過部が、前記背面と直交する方向から見て、前記第１方向に長い長円形状に形成されているというものである。

請求項２の発明は、請求項１に記載したインクジェットプリンタヘッドにおいて、前記複数のインク供給口のうち少なくとも１つは、２以上の前記共通インク室に跨って連通され、このインク供給口に対応する前記ろ過部は、前記背面と直交する方向から見て、他のろ過部よりも大きく設定されているというものである。

請求項３の発明は、請求項１又は２に記載したインクジェットプリンタヘッドにおいて、前記フィルタ体のろ過部は、前記共通インク室の延びる前記第１方向に長く形成され、前記ろ過部と同じ形状及び大きさで形成された前記インク供給口を経由して前記共通インク室と前記キャビティユニットにおける前記第１方向の一端部で連通するように配設されているというものである。

請求項１のように構成すると、キャビティユニットにおけるインク供給口の群の箇所に接合されるフィルタ体は、前記全てのインク供給口を覆う大きさであり、しかも、当該フィルタ体には、インク中の異物を取り除くためのろ過部を、前記各インク供給口毎に対応させて設けているので、インク供給口の数に応じてフィルタ体の数を増やしたりしなくても、前記キャビティユニットにおける前記インク供給口の群の箇所に、１枚のフィルタ体を取り付けるだけで、前記全てのインク供給口を通過するインク中の異物を効率的に捕捉（除去）することができる。

また、前記１枚のフィルタ体における各ろ過部の周囲が前記キャビティユニットとの取り付け代となるので、前記１枚のフィルタ体に前記キャビティユニットとの取り付け代がまとまることになる。これにより、前記フィルタ体の長手方向の長さを前記キャビティユニットの第２方向（短辺方向）の巾寸法内に収まる長さに設定しても、前記フィルタ体には、前記キャビティユニットに対する取り付け代を十分に確保することができる。

さらに、前記フィルタ体の各ろ過部を、前記キャビティユニットの第１方向（長辺方向）に沿って長い長円形状に形成することにより、前記各ろ過部における前記キャビティユニットの第２方向に沿った長さを短く設定することができるから、前記各ろ過部の平面視での面積はできるだけ確保しつつ、前記フィルタ体全体としては第２方向（短辺方向）に沿った巾寸法を短く抑えることが可能になる。

以上のことから、請求項１の発明によると、前記フィルタ体を、インク中の異物の除去機能を保持し且つ取り付け代を確保したものでありながら、コンパクト化することができる。これにより、前記フィルタ体との関係では、前記キャビティユニットの短辺方向の巾寸法を大きくする必要がなくなるし、前記フィルタ体には取り付け代を十分に確保できるので、前記キャビティユニットにおける前記インク供給口群の並び間隔を狭めることも可能になる。

従って、前記キャビティユニット、ひいてはインクジェットプリンタヘッドのコンパクト化を図ることができるという効果を奏する。また、前記フィルタ体の数も１枚だけであって従来と変わらず、作業工程数も従来のままであるから、作業負担が増すおそれも少ないのである。

請求項２のように構成すると、所定のインクが供給される２以上の共通インク室に対して、これらに連通するインク供給口が１つあればよいことになるので、前記インク供給口と前記共通インク室とを単に一対一対応させた場合よりも、前記インク供給口における前記短辺方向に沿った並び間隔を短くすることができる。これにより、前記各インク供給口の平面視での面積は確保しつつ、前記キャビティユニットにおける前記短辺方向の巾寸法を短く抑えることが可能になる。

その上、前記フィルタ体における複数のろ過部のうち前記２以上の共通インク室に臨むろ過部は、前記背面と直交す方向から見て、他のろ過部よりも大きいので、前記２以上の共通インク室に対面する前記ろ過部の存在で、前記２以上の共通インク室に対するインクの供給量が少なくなることもない。

従って、前記インク供給口との関係においても、前記キャビティユニットの短辺方向の巾寸法を大きくする必要はなく、インク供給機能を維持しながらも、前記インクジェットプリンタヘッドのコンパクト化に寄与できるという効果を奏する。

請求項３のように構成すると、前記各インク供給口における前記キャビティユニットの短辺方向に沿った巾寸法が狭くなるので、その分前記キャビティユニットの短辺方向の巾寸法を短くすることができ、前記インクジェットプリンタヘッドのコンパクト化にさらに更に寄与できるという効果を奏することができる。さらに、前記フィルタ体から前記共通インク室に至る流路中には、インクの流れに対して滞留を起こすような段差部がなくなるので、滑らかなインク供給ができるとともに、吐出不良の要因となる気泡が前記流路に残留することもない。すなわち、前記インクジェットプリンタヘッドにおけるインクの吐出安定性が向上するという効果を奏する。

次に、本発明を具体化した実施形態を図面（図１〜図６）に基づいて説明する。図１は圧電式インクジェットプリンタヘッドの一部分解斜視図、図２はキャビティユニットの拡大分解斜視図、図３は図１のＩＩＩ−ＩＩＩ視拡大断面図、図４は図１のＩＶ−ＩＶ視拡大断面図、図５及び図６はベースプレートから下面側を見た部分平面図である。

図１は、本発明の実施形態による圧電式のインクジェットプリンタヘッドＨＤにおけるキャビティユニット１と圧電アクチュエータ２の斜視図であり、キャビティユニット１は分解した状態を示している。

インクジェットプリンタヘッドＨＤは、金属板製のキャビティユニット１にプレート型の圧電アクチュエータ２が接合され、このプレート型の圧電アクチュエータ２の上面に外部機器との接続のためのフレキシブルフラットケーブル３（図３参照）が接着剤にて重ね接合されている。そして、最下層のキャビティユニット１の下面側に開口されたノズル４から、下向きにインクが吐出するものとする。

前記キャビティユニット１は、図１〜図３に示すように構成されている。すなわち、ノズルプレート１１、第１スペーサプレート１２、ダンパープレート１３、２枚のマニホールドプレート１４ａ，１４ｂ、第２スペーサプレート１５、第３スペーサプレート１６、及びベースプレート１７の合計８枚の薄い板をそれぞれ接着剤にて重ね接合した構造としている。

実施形態では、合成樹脂製のノズルプレート１１を除き、各プレート１２〜１７は、４２％ニッケル合金鋼板製で、５０〜１５０μｍ程度の厚さを有する。前記ノズルプレート１１には、微小径（実施形態では２５μｍ程度）のインク吐出用のノズル４が印刷時の解像度に応じた微小間隔で多数個穿設されている。このノズル４は、当該ノズルプレート１１における第１の方向（長辺方向、Ｘ方向）に沿って、千鳥配列状で５列に配列されている。

また、前記ベースプレート１７には、図１に示すように、複数の圧力室３６がベースプレート１７の長辺（前記Ｘ方向）に沿って千鳥配列状で５列に配列されている。実施形態では、図２に示すように、前記ノズル４と連通する圧力室３６の一端（一端部）３６ａと後述する共通インク室７と連通する他端（他端部）３６ｂとを結ぶ方向を圧力室３６の長手方向とする。各圧力室３６は、その長手方向がベースプレート１７における第２の方向（短辺方向、Ｙ方向）に沿うように細幅に穿設されている。

各圧力室３６における先端部３６ａは、２枚のスペーサプレート１５，１６と２枚のマニホールドプレート１４ａ，１４ｂ、ダンパープレート１３、及び第１スペーサプレート１２に、同じく千鳥配列状にて穿設されている微小径の貫通孔３７を介して、ノズルプレート１１における前記各ノズル４に連通している。

ベースプレート１７の下面に隣接する第３スペーサプレート１６には、各圧力室３６の他端部３６ｂに接続するために、前記各他端部３６ｂに対応する位置に連通孔３８が穿設されている。

第３スペーサプレート１６の下面に隣接する第２スペーサプレート１５には、後述する共通インク室７から前記各圧力室３６へインクを供給するための接続流路４０が設けられる。そして、各接続流路４０には、共通インク室７からインクが入る入口孔４０ａと、圧力室３６側（前記連通孔３８）に開口する出口孔４０ｂと、入口孔４０ａと出口孔４０ｂとの間にあって、出口孔４０ｂよりも接続流路４０中で最も大きな流路抵抗となるように断面積を小さくして形成された絞り部４０ｃとが備えられている。

この実施形態では、絞り部４０ｃは、第３スペーサプレート１６に隣接する面側をハーフエッチングすることによって、所定の流路抵抗を持つように形成されている。入口孔４０ａと出口孔４０ｂとは前記絞り部４０ｃの両端部に位置合わせして形成されている。入口孔４０ａは第２スペーサプレート１５を貫通している。出口孔４０ｂは第２スペーサプレート１５における第３スペーサプレート１６との隣接面に凹み形成されている。

２枚のマニホールドプレート１４ａ，１４ｂには、その長辺方向（Ｘ方向）に沿って長い５つの共通インク室７が前記ノズル４の各列に沿って延びるように板厚さを貫通して形成されている。すなわち２枚のマニホールドプレート１４ａ，１４ｂを積層し、且つその上面を第２スペーサプレート１５にて覆い、下面をダンパープレート１３にて覆うことにより、合計５つの共通インク室（マニホールド室）７が密閉状に形成される。各共通インク室７は、各プレートの積層方向から見た平面視において、前記圧力室３６の一部と重なって圧力室３６の列方向に沿って長く延びている。

図２及び図３に示すように、マニホールドプレート１４ａの下面に隣接するダンパープレート１３の下面側には、共通インク室７と隔絶されたダンパ室４５が凹み形成されている。この各ダンパ室４５の位置及び形状は、前記各共通インク室７と一致させている。このダンパプレート１３は、適宜弾性変形し得る金属素材であるため、ダンパ室４５の薄い板状の底板部は、共通インク室７側にも、ダンパ室４５側にも自由に振動することができる。インク吐出時に、圧力室３６で発生した圧力変動が共通インク室７に伝播しても、前記底板部が弾性変形して振動することにより、前記圧力変動を吸収減衰させるというダンパ効果を奏し、圧力変動が他の圧力室３６へ伝播するというクロストークを防止することができるものである。

また、ベースプレート１７と第３スペーサプレート１６との少なくとも一方（実施形態では第３スペーサプレート１６におけるベースプレート１７側の広巾面）には、前記圧力室３６の列間において、この圧力室３６の列（長辺方向、Ｘ方向）に沿って延び且つ外部に連通する検査用流通溝５０が形成されている。この場合、検査用流通溝５０の外向き開口部からの空気の流出又はインク供給口４７側での圧力低下を検出することにより、圧力室３６の列間の領域における密閉漏れを検査したり、圧力室３６から外部へのリークについても同時に検査したりすることができる。

以上のように形成された８枚の薄い板１１〜１７を互いに位置合わせして重ね接合することで、キャビティユニット１が構成される。これにより、図３に示すように、キャビティユニット１の内部に長辺方向に延びる共通インク室７が形成される。更に、この共通インク室７に開口した接続流路４０の入口孔４０ａから連通孔３８、圧力室３６、貫通孔３７を順次経由してノズル４に至る個別のインク流通路が形成される。

図１に示すように、ベースプレート１７、第２スペーサプレート１５、及び第３スペーサプレート１６の一端部には、上下の位置を対応させてそれぞれ４つのインク供給口４７が短辺方向（前記Ｙ方向）に沿って並ぶように穿設されている。なお、これら４つのインク供給口４７を、図１の左側から順に４７ａ，４７ｂ，４７ｃ，４７ｄと記載する。

この実施形態では、図１に示すように、インク供給口４７が４つ設けられているのに対して、共通インク室７が５つ設けられており、インク供給口４７ａは、図１における左側に配置された２つの共通インク室７ａ，７ａに跨って連通している。インク供給口４７ａには、ブラックインクが供給されるように設定されている。これは、モノクロ記録時の記録速度をカラー記録の場合よりも速くしたときには、ブラックインクの単位時間当りの消費量が他のカラーインクに比べて多くなることを考慮したものである。

他のインク供給口４７ｂ，４７ｃ，４７ｄには、イエロー、マゼンタ、シアンの各インクがそれぞれ単独に供給され、それぞれのインク供給口４７ｂ，４７ｃ，４７ｄに、対応する共通インク室７ｂ，７ｃ，７ｄが１つずつ連通している（図１及び図４参照）。

そして、対応する関係にあるインク供給口４７と共通インク室７における長辺方向の一端部（上流側端部、連通部分）とは、プレートの積層方向から見た平面視で、ほぼ重なるような位置関係となっている。そして、前記他のインク供給口４７ｂ〜４７ｄと、それぞれに連通する共通インク室７ｂ〜７ｄの上流側端部とは、いずれもほぼ同じ大きさ及び形状に設定されている。２つの共通インク室７ａ，７ａの上流側端部における合計の平面視面積は、できるだけブラックインク用のインク供給口４７ａの平面視面積に近くなるように設定されている。

前記各金属製のプレート１２〜１７におけるインク供給口４７、共通インク室７、貫通孔３７、連通孔３８、接続流路４０、ダンパ室４５、検査用流通溝５０等の凹み形成や貫通する孔等は、エッチング加工、放電加工、プラズマ加工、レーザ加工等により形成されている。

次に、図１及び図４〜図６を参照しながら、本発明に係るフィルタ体２０の構成について説明する。

ベースプレート１７の背面のうちインク供給口４７の群の箇所には、ポリイミド等の合成樹脂製で平面視ほぼ矩形薄シート状の１枚のフィルタ体２０が前記全てのインク供給口４７ａ〜４７ｄを覆うように接着剤にて接合されている。

このフィルタ体２０のうち各インク供給口４７ａ〜４７ｄに対応する箇所には、インクタンク（図示せず）から供給されるインク中のゴミ・塵等の異物を取り除くためのろ過部２０ａ〜２０ｄが合計４つ形成されている（図１参照）。

図５及び図６に示すように、各ろ過部２０ａ〜２０ｄは、積層方向から見た平面視において、対応するインク供給口４７ａ〜４７ｄとほぼ同じ大きさ及び平面視でほぼ重なるような形状を有し、且つベースプレート１７の長辺方向（前記Ｘ方向）に沿って長い略小判型の平面視輪郭形状に形成されている。フィルタ体２０における各ろ過部２０ａ〜２０ｄの周囲は、ベースプレート１７との接着代（取り付け代）になっている。

この実施形態では、フィルタ体２０を接合するときの取付け誤差を考慮して、各ろ過部２０ａ〜２０ｄが、それぞれ対応するインク供給口４７ａ〜４７ｄよりも若干大きめに形成してある。

ブラックインク用のろ過部２０ａ、すなわちインク供給口４７ａから２つの共通インク室７ａ，７ａに臨むろ過部２０ａは、その平面視輪郭形状（平面視面積）が他のろ過部２０ｂ〜２０ｄの平面視輪郭形状（平面視面積）より大きくなるように設定されている。

ここで、フィルタ体２０にろ過部２０ａ〜２０ｄを一体的に形成するに際しては、例えばプラズマ加工、レーザ加工等により、フィルタ体２０の厚み方向に貫通する微小径の孔を多数個形成すればよい。なお、フィルタ体２０を金属製にする場合には、電鋳加工により形成すればよい。

以上の構成において、インクタンク（図示せず）からキャビティユニット１に流入するインクは、フィルタ体２０の各ろ過部２０ａ〜２０ｄで異物を捕捉（除去）した後、インク供給口４７から共通インク室７に供給される。次いで、図２に示すように、第２スペーサプレート１５の接続流路４０及び第３スペーサプレート１６の連通孔３８を経由して各圧力室３６の他端部３６ｂに分配供給される。そして、後述するように、圧電アクチュエータ２の駆動により、インクは各圧力室３６内から前記貫通孔３７を通って、その圧力室３６に対応するノズル４に至る。

この場合、ベースプレート１７におけるインク供給口４７の群の箇所に接合されるフィルタ体２０は全てのインク供給口４７ａ〜４７ｄを覆う大きさであり、しかも、当該フィルタ体２０には、インク中の異物を取り除くためのろ過部２０ａを、各インク供給口４７ａ〜４７ｄ毎に対応させて設けているので、インク供給口４７の数に応じてフィルタ体の数を増やしたりしなくてもよい。さらに、ベースプレート１７におけるインク供給口４７の箇所に１枚のフィルタ体２０を接着する（取り付ける）だけで、全てのインク供給口４７ａ〜４７ｄを通過するインク中の異物を効率的に捕捉（除去）することができる。これにより、異物によるインクジェットプリンタヘッドＨＤの性能の劣化を防ぐことができる。

また、フィルタ体２０における各ろ過部２０ａ〜２０ｄの周囲をベースプレート１７との接着代（取り付け代）としているので、１枚のフィルタ体２０にベースプレート１７との接着代がまとまることになる。これにより、フィルタ体２０における長手方向（第２の方向、Ｙ方向）の長さをベースプレート１７における短辺方向（第２の方向、Ｙ方向）の巾寸法内に収まる長さに設定しても、当該フィルタ体２０には、ベースプレート１７に対する接着代を十分に確保することができる。

その上、フィルタ体２０の各ろ過部２０ａ〜２０ｄを、ベースプレート１７の長辺方向（前記Ｘ方向）に沿って長い略小判型の平面視輪郭形状に形成することにより、流路抵抗を増やすことなく、各ろ過部２０ａ〜２０ｄにおける第２の方向（前記Ｙ方向）の巾寸法を短く設定することができる。そのため、各ろ過部２０ａ〜２０ｄの平面視での面積はできるだけ確保しつつ、フィルタ体２０全体としては前記第２の方向（前記Ｙ方向）の長さを短く抑えることが可能になる。

さらに、ろ過部２０ａ〜２０ｄ、これに対応するインク供給口４７ａ〜４７ｄ及びそれぞれに連通する共通インク室７ａ〜７ｄの上流側端部がいずれもほぼ同じ大きさや形状を有し、これらが積層方向から見た平面視でほぼ重なるようにして流路を形成しているので、フィルタ体２０から共通インク室７に至る流路中には、インクの流れに対して滞留を起こすような段差部がなくなる。そのため、滑らかなインクの供給ができるとともに、吐出不良の要因となる気泡が前記流路中に残留することもない。すなわち、インクジェットプリンタヘッドＨＤにおけるインクの吐出安定性が向上するのである。

以上のことから、本発明によると、フィルタ体２０を、インク中の異物の除去機能を保持し且つ接着代を確保したものでありながら、コンパクト化することができる。これにより、フィルタ体２０との関係では、ベースプレート１７の短辺方向の巾寸法を大きくする必要はなくなるし、フィルタ体２０には取り付け代を十分に確保できるので、キャビティユニット１におけるインク供給口４７の群の並び間隔を狭めることも可能になる。

従って、キャビティユニット１、ひいてはインクジェットプリンタヘッドＨＤのコンパクト化に寄与できるのである。なお、フィルタ体２０の数も１枚だけであって従来と変わらず、作業工程数も従来のままであるから、作業負担が増すおそれは少ない。

この実施形態では、共通インク室７は５つ設けられているのに対して、ノズル４の列、圧力室３６の列及びインク供給口４７はそれぞれ４つずつ設けられている。すなわち、共通インク室７と、ノズル４の列、圧力室３６の列及びインク供給口４７とは、１対１の関係で対応していないが、図１及び図５に示すように、ブラックインク用のインク供給口４７ａを２つの共通インク室７ａ，７ａに跨って連通させている。

このように構成すると、２つの共通インク室７ａ，７ａにインクを供給するためのインク供給口４７ａが１つだけで済むので、インク供給口４７と共通インク室７とを単に一対一対応させた場合よりも、インク供給口４７のＹ方向の並び間隔を短くすることができる。これにより、各インク供給口４７ａ〜４７ｄの平面視での面積は確保しつつ、ベースプレート１７、第２スペーサプレート１５及び第３スペーサプレート１６においては、前記第２の方向（前記Ｙ方向）の長さを短く抑えることが可能になる。なお、このように１つのインク供給口４７ａに対して、２つの共通インク室７ａ，７ａを合体させることなく組み合わせているのは、キャビティユニット１の剛性向上のためである。

その上、ブラックインク用のろ過部２０ａ、すなわちインク供給口４７ａから２つの共通インク室７ａ，７ａに臨むろ過部２０ａの平面視輪郭形状（平面視面積）が他のろ過部２０ｂ〜２０ｄの平面視輪郭形状（平面視面積）よりも大きいので、前記ろ過部２０ａの存在により、前記２つの共通インク室７ａ，７ａに対するブラックインクの供給量が少なくなることもない。

従って、インク供給口４７との関係においても、ベースプレート１７、第２スペーサプレート１５及び第３スペーサプレート１６の短辺方向の巾寸法を大きくする必要はなく、その結果、インク供給機能を維持しながらも、キャビティユニット１ひいてはインクジェットプリンタヘッドＨＤのコンパクト化に寄与することができるのである。

さて、前記圧電アクチュエータ２は、図示しないが複数枚の圧電シートと、トップシートとを積層した構造で、１枚の厚さが３０μｍ程度の各圧電シートのうち最下段の圧電シートの上面（広幅面）には、前記キャビティユニット１における各圧力室３６に対応した箇所ごとに細幅の個別電極が長辺方向（Ｘ方向）に沿って列状に形成され、各個別電極は前記長辺方向と直交するＹ方向に沿って各圧電シートの長辺の端縁部近傍まで延びている。下から偶数段目の圧電シートの上面（広幅面）には、複数個の圧力室３６に対して共通のコモン電極が形成されている。さらに、最上段のトップシートの上面には、図１に示すように、表面電極９として、前記個別電極の各々に対して電気的に接続される表面電極と、前記コモン電極に対して電気的に接続される表面電極とが設けられている。

圧電アクチュエータ２は、特開平４−３４１８５３号公報に開示されたものと同様に、より多くの圧電シートを積層した構造とすることもできる。

そして、このような構成のプレート型の圧電アクチュエータ２における下面（圧力室３６と対面する広巾面）全体に、接着剤としてのインク非浸透性の合成樹脂材からなる接着剤シート（図示せず）を予め貼着し、次いで、前記キャビティユニット１に対して、圧電アクチュエータ２が、その各個別電極を前記キャビティユニット１における各圧力室３６の各々に対応させて接着・固定される。また、この圧電アクチュエータ２における上側の表面には、前記フレキシブルフラットケーブル３が加熱加圧されることにより、このフレキシブルフラットケーブル３における各種の配線パターン（図示せず）が、前記各表面電極９に電気的に接合される。

以上の構成において、圧電アクチュエータ２の各個別電極のうち任意のものと、これに対応するコモン電極との間に電圧を印加すると、これら両電極に対応する活性部に、圧電縦効果による積層方向の歪みが発生する。この歪みにより前記任意の個別電極に対する圧力室３６の内容積が縮小する。そのため、両電極に挟まれた圧電シートの分極方向と印加される電界の方向が同じであれば、当該圧力室３６内のインクがノズル４から液滴状に吐出する（所定の印字が行われる）のである。

本発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、本発明に係るフィルタ体の材質は、ポリイミド等の合成樹脂に限らず、薄い厚みの金属材料であってもよい。この場合も、金属板製のフィルタ体にろ過部を一体的に形成するには、例えば電鋳加工、プラズマ加工、レーザ加工等により、前記フィルタ体の厚み方向に貫通する微小径の孔を多数個形成すればよい。また、ろ過部の平面視輪郭形状は略小判型に限らず、長円形（楕円形）、矩形状、多角形状であっても構わない。

インク供給口から供給されるインクの種類は、前述のカラーインクに限らず、艶出し液等であってもよい。カラーインクの種類も問わない。インク供給口に連通する共通インク室は１つでもよいし、２つ以上でもよい。

インク供給口の平面視輪郭形状も、略円形、略小判型、長円形（楕円形）、矩形状、多角形状等といった様々な形状を採用することができる。ここで、キャビティユニットの短辺方向の巾寸法を短くするに際しては、インク供給口も、積層方向から見た平面視において、キャビティユニットの長辺方向（前記Ｘ方向）に沿って長い平面視輪郭形状にすべきであることはいうまでもない。また、インク供給口の数自体も前述の実施形態に限定されない。

インクの吐出安定性という観点からは、ろ過部、インク供給口及びこれに接続する共通インク室の端部の形状や大きさをほぼ同じように形成し、且つこれらがキャビティユニットの積層方向から見た平面視でほぼ重なる位置関係に設定するのがよい。これにより、吐出不良を生じることがある気泡の滞留がない滑らかなインク供給ができる。

圧電式インクジェットプリンタヘッドの分解斜視図である。キャビティユニットの拡大分解斜視図である。図１のＩＩＩ−ＩＩＩ視拡大断面図である。図１のＩＶ−ＩＶ視拡大断面図である。ベースプレートから下面側を見た部分平面図である。ベースプレートから下面側を見た部分平面図である。

符号の説明

１キャビティユニット
２圧電アクチュエータ
３フレキシブルフラットケーブル
４ノズル
７共通インク室
９表面電極
１１ノズルプレート
１２第１スペーサプレート
１３ダンパープレート
１４ａ，１４ｂマニホールドプレート
１５第２スペーサプレート
１６第３スペーサプレート
１７ベースプレート
２０フィルム体
２０ａ〜２０ｄろ過部
３６圧力室
３７貫通孔
３８連通孔
４０接続流路
４５ダンパ室
４７（４７ａ〜４７ｄ）インク供給口
ＨＤインクジェットヘッド

Claims

第１方向にそれぞれ延び、且つ前記第１方向と直交する第２方向に互いに並んで配置された複数のノズル列と、前記複数のノズル列に属する複数のノズルにそれぞれ連通し、前記複数のノズルとともに前記第１方向に並ぶ複数の圧力室と、前記各ノズル列毎に対応して前記各圧力室にインクを分配供給する複数の共通インク室と、これら各共通インク室から前記圧力室を経由して前記ノズルに至るインク流通路とを有するキャビティユニットが備えられたインクジェットプリンタヘッドであって、
前記キャビティユニットは、前記第１方向に長尺形状を有しており、
前記キャビティユニットの前記ノズルが形成される前面と反対側の背面には、複数種類のインクにそれぞれ対応する複数のインク供給口が、前記第２方向に沿って並び且つ対応する共通インク室に連通するように形成され、
前記複数のインク供給口の箇所には、前記全てのインク供給口を覆う薄シート状のフィルタ体が配置され、
当該フィルタ体には、前記インク中の異物を取り除くためのろ過部が、前記各インク供給口毎に対応させて形成され、これら各ろ過部が、前記背面と直交する方向から見て、前記第１方向に長い長円形状に形成されていることを特徴とするインクジェットプリンタヘッド。
前記複数のインク供給口のうち少なくとも１つは、２以上の前記共通インク室に跨って連通され、このインク供給口に対応する前記ろ過部は、前記背面と直交する方向から見て、他のろ過部よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項１に記載したインクジェットプリンタヘッド。
前記フィルタ体のろ過部は、前記共通インク室の延びる前記第１方向に長く形成され、前記ろ過部と同じ形状及び大きさで形成された前記インク供給口を経由して前記共通インク室と前記キャビティユニットにおける前記第１方向の一端部で連通するように配設されていることを特徴とする請求項１又は２に記載したインクジェットプリンタヘッド。