以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である筒状部材装置としての鏡枠装置の縦断面図である。図2は、上記鏡枠装置を構成する筒状部材であるカム枠のカム溝の溝直角断面図である。図3は、上記鏡枠装置部を内周側から見たときの展開図である。
本実施形態の鏡枠装置10は、例えば、カメラのレンズ鏡筒に適用可能な鏡枠装置であって、主に第1の筒状部材である移動枠1と、第2の筒状部材であるカム枠2とを有してなる。
上記移動枠1は、その外周部に円周方向に等間隔(120°間隔)に配置される3つの被案内部であるカムフォロア1a,1b,1cを有しており、カム枠2の内周に進退可能の嵌入する。
上記カム枠2は、その内周内に沿って円周方向に等間隔(120°間隔)に配置される3本の案内部であるカム溝2a,2b,2cを有している。上記カム溝2a,2b,2cは、図2に示すようなフランク角(溝直角断面上の溝両壁面がなす傾斜角度)θ1 ,θ2 をもつ台形断面を有しており、上記移動枠1のカムフォロア1a,1b,1cが摺動自在に嵌入する。このフランク角θ1 ,θ2 は、進退動作中に上記カムフォロアに外力が作用した状態で抜け出しにくいより小さな角度に設定されている。本実施形態の場合、上記フランク角θ1 ,θ2 は、共に角度23°とする。
上記カム溝の対軸方向の傾きKは、図3に示すようにカム溝中心線の接線の線分の軸心C0 に対する傾きであって、上記線分の円周方向の長さ成分G0 を接線の線分の軸方向Cの長さ成分Z0 で除算した値で与えられ、
K=G0 /Z0 …(1)
とする。
なお、上記カム枠2は、後述する本発明の第2の実施形態の金型装置11(図4)により射出成形される部材であるが、上記金型装置11は、後述するように周方向8分割(分割数2j=8)の第1スライドコア4A〜4D,第2スライドコア5A〜5D(図6,7)を有する内スライド式金型である。このように8分割の金型で成形することにより1つのスライドコアで成形する円弧の中心角である円弧中心角ω1 、または、ω2 (図6)が狭くなり、上述のようにカム溝のフランク角がより小さい角度であっても、部材の型抜きが可能となる。なお、上記jの値は、第1スライドコア、および、第2スライドコアのそれぞれの構成数を示し、本実施形態の場合、j=4である。
成形部材であるカム枠2の内周には、第1スライドコアと第2スライドコアとの合わせ部分である8本の型割線(パーティングライン)2dが残る(図3)。各カム溝は、上記型割線の少なくとも一つを跨ぐように配される。上記型割線の本数は、カム溝の本数である3本に対して整数倍の関係にない。したがって、上記8本の型割線2dに対して等間隔の3本のカム溝2a,2b,2cが交差したとしても、カム枠2の回転中、カム溝2a,2b,2cに嵌入するカムフォロア1a,1b,1cは、それぞれが同時には上記型割線2dに係ることがない。
なお、従来の金型のように6分割のスライドコアを適用する金型で成形した場合、6本の型割線2d′が残る。3本のカム溝2a,2b,2cを等間隔に配置すると、型割線の本数6がカム溝の本数3の整数倍の関係にあることからカムフォロア1a,1b,1cが同時に上記型割線に係る可能性がある。さらに、1つのスライドコアで成形する円弧中心角度が広くなることから、上述のようなフランク角がより小さい角度のカム溝は、そのパーティングラインとその近傍で型抜きができないことになる。
上記鏡枠装置10においては、移動枠1は、図示しない固定部材により回転が規制されて支持されており、カム枠2が回動駆動されると、カム溝2a,2b,2cによりカムフォロア1a,1b,1cを介して軸方向Cに沿って進退駆動(例えば、ズーム駆動)される。
本実施形態の鏡枠装置10によると、カム枠2が8分割のスライドコアの金型で成形されるため、カム溝2a,2b,2cのフランク角θ1 ,θ2 をより小さくすることができる。したがって、上記カム枠2は、カムフォロアに外力が作用したとき、抜け出しにくく、外力に対する強度が優れている。また、3本のカム溝に対して8本の型割線が付されることから、カムフォロアが上記型割線上に同時に位置することが避けられるので、移動枠1をスムーズに進退駆動することができる。
なお、上記案内部であるカム溝と被案内部であるカムフォロアとに代えて、雌ヘリコイドネジと雄ヘリコイドネジを適用しても同様の効果が得られる。さらには、移動枠1に代えてカム枠2に対して回動する枠を適用しても同様の効果が得られ、この場合、カム溝が円周方向に沿った溝に換わり、カムフォロアが円周方向に沿ったリブに換わる。また、上記カム溝の本数は、後述するように3本以上であってもよく、さらに、上記金型の分割数2jは、8以上であっても同様の効果が得られる。但し、上記分割数は、カム溝の本数の整数倍の関係にないことが必要である。
次に、本発明の第2の実施形態である金型装置について図4〜12を用いて説明する。
図4は、上記第2の実施形態の金型装置の型締め状態(金型が閉じられている状態)での縦断面図である。図5は、上記金型装置の型開き状態(金型が開かれている状態)での縦断面図である。図6は、上記金型装置の内スライド金型(スライド入子)を軸方向から見た平面図である。図7は、図6のA−A断面図である。図8(A),(B)は、上記内スライド金型の2つのスライドコアの斜視図である。図9は、上記内スライド金型のセンターコアの斜視図である。
図4,5に示すように本実施形態の金型装置11は、固定型6と、可動型7とを有してなり、前記第1の実施形態のカム枠2を成形するための金型装置である。
上記固定型6は、固定側入子と、図示しない外スライドコア駆動用アンギュラピンおよびバックアップ板とを有してなる。
上記可動型7は、センターコア受け7Aと、スライドコア受け7Bと、可動側入子7Cと、外スライドコア7Dと、内スライド金型12とを有してなる。
上記内スライド金型12は、軸心C0 を有する1つのセンターコア3と、4つの第1スライドコア4A,4B,4C,4Dおよび4つの第2スライドコア5A,5B,5C,5Dと有してなる。第1スライドコア4A,4B,4C,4Dと4つの第2スライドコア5A,5B,5C,5Dとは、それぞれ交互に角度45°の間隔でセンターコア3の周囲に配置され、それぞれ軸心C0 に対して半径方向に、かつ、軸心方向にスライド移動可能に配置される。
上記第1スライドコア4A,4B,4C,4Dは、それぞれ同一形状を有しており、上記第2スライドコア5A,5B,5C,5Dもそれぞれ同一形状を有しているので、その中の1組の第1スライドコア4Aと第2スライドコア5Aの形状についてのみ説明する。
上記第1スライドコア4Aは、センターコアの軸心C0 に対して傾斜角αだけ傾斜したアリ部4aと、軸心C0 を中心とする円筒面の一部であって、カム枠2の内周面を形成するための円筒面4eと、円筒面4e上に設けられ、カム枠のカム溝を形成するための凸部4fと、アリ部4aに沿った状態でその両側方に配される傾斜面である摺動当接面4bと、コア受け端部側にて軸心C0 の半径方向に延出して形成されるスライドガイド部4dとを有している。
上記摺動当接面4bは、センターコア3と摺接し、かつ、第2スライドコア5Aと当接する面であり、その摺動当接面4bの、軸心C0 およびアリ部4aを通る第1スライドコア中心線を含む面(C0 −A断面,図11参照)に平行な断面上での傾斜角は、上記角度αに等しい。そして、上記軸心C0 と直交する断面において上記C0 −A断面に垂直な直線に対する上記摺動当接面4bのなす角、すなわち、その傾斜角を角度γとする。
また、上記円筒面4eの固定入子側端面部の軸心C0 に対する円周方向の角度は、円弧中心角ω1 を有しており、本実施形態の例では、円弧中心角ω1 を60°としているが 55°≦ω1≦70°の範囲で、適宜設定して良い。また、上記円弧中心角は、上記傾斜角αがあるために軸心C0 方向のコア受け側に下がるにしたがって狭くなる。
上記第2スライドコア5Aは、センターコアの軸心C0 に対して上記傾斜角αよりも大きい傾斜角βだけ傾斜した方向に沿ったアリ部5aと、軸心C0 を中心とする円筒面の一部であって、カム枠2の内周面を形成するための円筒面5eと、円筒面5e上に設けられ、カム枠のカム溝を形成するための凸部5fと、上記円筒面5eの両側方に設けられる当接面5gと、アリ部5aに沿った状態で該アリ部の両側方に所定の開き角を有して配される摺動面5bと、コア受け側端部に軸心C0 の半径方向に延出して形成されるスライドガイド部5dとを有している。
上記摺動面5bは、センターコア3と軸心C0 方向の摺接する面であって、上記摺動面5bの、軸心C0 およびアリ部5aを通る第2スライドコア中心線を含む面(C0 −A′断面,図11参照)に平行な断面上での傾斜角は、上記角度βに等しい。
また、上記当接面5gは、第1スライドコア4Aの摺動当接面4bの内側に当接し、密着可能な面であって、その当接面5gの、軸心C0 に直交する断面上における上記C0−A′断面に垂直な方向となす傾斜角は、角度(γ+45°)となる。
上記円筒面5eの固定入子側端面部の軸心C0 に対する円弧中心角ω2 とし、この円弧中心角ω2 は、軸心C0 方向のコア受け側に下がるにしたがって広くなるように変化する。上記円弧中心角ω2 は、(90°−ω1 )で与えられる。
なお、本実施形態では、上記第1,2スライドコアの凸部4f,5fは、第1,2スライドコアの円周面4eと5eの間の少なくとも一箇所を跨いでいる。
上記センターコア3は、該軸心C0 に対して傾斜角α,βだけ傾斜し、外周8分割位置に交互に配置される各4本のアリ溝3a,3bと、上記アリ溝3a,3bに沿ってその両側に配され、上記スライドコアの摺動当接面4b、または、摺動面5bにそれぞれ当接し、摺動する摺動面3c,3dを有している。上記センターコア3の端部は、センターコア受け7Aに固定されて支持される。なお、上記摺動面3cは、上記アリ溝3aに沿って配され、軸心C0 と垂直な断面上で開き角(180°−2γ)を有する。また、上記摺動面3dは、上記アリ溝3bに沿って配され、軸心C0 と垂直な断面上で摺動面5bに摺接可能な所定の開き角を有する。
上記内スライド金型12において、軸心C0 に対して異なる傾斜角α,βをもつ上記センターコア3のアリ溝3a,3bと、同じ傾斜角α,βを有する上記第1,2のスライドコア4A,5Aのアリ部4a,5aとは、互いにアリ継ぎ係合する。
上記金型装置11の型締め状態、すなわち、金型が閉じられている状態では、上記第1スライドコア4Aの摺動当接面4bの内側に上記第2スライドコア5Aの当接面5gが密着して当接している。そして、型開き時にセンターコア3が第1,2スライドコア4A,5Aに対して相対的にセンターコア受け7A側に移動すると、上記第1,2スライドコア4A,5Aは、軸心C0 の内方側に向けて窄まるように移動する。その移動量は、第2スライドコア5Aの方が第1スライドコア4Aより大きく設定される。したがって、第1スライドコア4Aの摺動当接面4bと、第2スライドコア5Aの当接面5gとの干渉が防止される。また、上記第2スライドコア5Aのカット面5cは、窄まったとき、摺動面5bが上記第1スライドコア4Aのアリ部4aと干渉しないように設けられる部分である。
次に、上述した構成を有する金型装置11により前記カム枠2を成形する作用について説明する。
上記カム枠2の成形時には、図4に示すように金型装置11の固定型6と可動型7とを型締め状態とする。上記型締め状態では、センターコア3は、第1,2スライドコア4,5の内部に完全に挿入された状態となっており、第1,2スライドコア4,5は、可動側入子7Cにより押さえ込まれた状態となる。この状態で第1,2スライドコア4,5の円筒面4e,5eにより1つの円柱が形成され、外スライドコア7D内周面との間にカム枠2の筒状部が形成される。また、第1スライドコア4の摺動当接面4bと第2スライドコア5の当接面5gとが密着する。
型締め状態のもとで固定側入子のゲート部8より樹脂を注入射出させて上記カム枠2が成形される。
その後、外スライドコア7Dを軸心C0 と直交する方向にスライドさせた後、可動型7を軸心C0 方向に移動させて型開き部Paを開くとアンギュラピンの作用により外スライドコア7Dがスライドする。さらに、センターコア受け7Aを軸心C0 方向に移動させて型開き部Pbを開いて型開き状態とする(図5)。センターコア受け7Aの移動によりセンターコア3のアリ溝3a,3bを介して第1,2スライドコア4,5が内方に窄まるように移動される。
上記型開き状態で成形されたカム枠2のカム溝2a,2b,2cが第1,2スライドコアの凸部4f,5fから外れ、カム枠2が離型し、取り出し可能となる。
上記成形されたカム枠2の内周面には、図3の展開図に示すように8本の型割線(型割線跡,パーティングライン)2dが略軸方向Cに対して僅かに傾斜した状態で付いている。上記型割線2dは、上記第1スライドコア4A〜4Dの各摺動当接面4bとそれぞれに密着する上記第2スライドコア5A〜5Dの各当接面5gとの型合わせライン部の跡である。但し、上記型割線2dがカム溝2a,2b,2cを切断する部分は、上記カム溝を斜めに切断した凹凸状のラインとなる。
また、本実施形態では、図3中の型割線2dで挟まれた領域で図面中、右方が広がった領域は、第1のスライドコア4で形成され、図3中の型割線2dで挟まれた領域で図面中、左方が広がった領域は、第2のスライドコア5で形成される。
上述したように金型装置11の型開きにより、第1スライドコア4A〜4Dと第2スライドコア5A〜5Dを互いに軸心C0 に向けてカム枠2が取り出し可能な状態となるように少なくともカム溝の深さ分は、窄ませる必要がある。そのとき、第1スライドコア4A〜4Dの摺動当接面4bとその内側にある第2スライドコア5A〜5Dの当接面5gが干渉しないように、第1スライドコア4A〜4Dのスライド量よりも第2スライドコア5A〜5Dのスライド量を所定量多くする。このスライド量は、センターコア、または、スライドコアのアリ溝の前記傾斜角α,βやスライドコアの摺動当接面の傾斜角γなどにより決定される。
そこで、上記アリ溝の傾斜角α,βや摺動当接面の傾斜角γの決定方法について図10,11を用いて説明する。
図10は、相隣る第1,2のスライドコアの型開き時の移動状態を軸方向から見た図であって、型締め状態の位置と、型開き状態でのスライド位置とを示す。図11は、図10のスライドコアの部分拡大図である。
図10に示す第1,2のスライドコア4A,5Aの移動状態に対して他の第1,2のスライドコア4B〜4D,5B〜5Dの移動状態も同様である。したがって、以下、第1,2のスライドコア4A,5Aの移動状態に付いてのみ説明する。
図10に示すように型締め状態にあるとき、第1スライドコア4Aと第2スライドコア5Aとは、外周面4e,5eが所定の円筒面上に沿って位置している。センターコア3が後退して型開き状態になると第1スライドコア4Aと第2スライドコア5Aとは、D1 方向、または、D2 方向にそれぞれ所定量だけスライド移動する(図10の2点差線で示す)。
いま、型締め状態にあるとき、第1スライドコア4Aの摺動当接面4bの当接部位上の一点をP1 とし、第2スライドコア5Aの当接面5gの当接部位上の一点を点P2 とする。型開き状態では、上記摺動当接面4bの点P1 は、D1 (軸心C0 と第1のスライドコア中心Aを結ぶライン)と平行な方向に移動して移動点P3 に到達する。一方、上記当接面5gの点P2 は、D2 (軸心C0 と第2のスライドコア中心A′を結ぶライン)と平行な方向に移動して上記の移動点と同一点である点P3 に到達させることによって干渉を防止する。但し、実際の移動量の設定に当たっては、後述するように金型の寸法誤差等を考慮しなければならない。したがって、点P3 上では、第1スライドコア4Aの摺動当接面4bと第2スライドコア5Aの当接面5gの間に設計上所定の隙間が残るようにして、上記各傾斜角の設定を行う。
上記第1,2スライドコア上の点P1 と点P2 を移動点P3 位置に移動させるためのアリ溝傾斜角α,β、および、摺動当接面の傾斜角γの条件は、次の演算式より求められる。
すなわち、図11に示すように、第1スライドコア4のD1 方向の移動量を上記点P1 −P3 の移動距離L1 とし、第2スライドコア4のD2 方向の移動量を点P2 −P3 の移動距離L2 とする。また、分割数Nとすると、その分割数Nは、第1,2スライドコアの数をjとして2jとなり、金型分割角度ε(角P1 -P3 -P2 )は、本実施形態の場合、N=8、すなわち、j=4として、
ε=360°/2j
=45° …(2)
である。
センターコア3の軸心C0 方向のスライド量Sとすると(図5)、上記移動距離L1 ,L2 は、
L1 =S×tanα …(3)
L2 =S×tanβ …(4)
である。一方、上記点P1 ,P2 ,P3 でできる三角形から、
L2 ×cosε=L1 +L2 ×sinε×tanγ …(5)
が得られる。
上記式(2)〜(5)より、傾斜角度α、β、γの関係は、
β=tan−1{tanα/(cos45°−sin45°×tanγ)}
=tan−1{21/2×tanα/(1−tanγ)} …(6)
となる。
但し、上記(6)式の通りに内スライド金型12を製作しても、その加工誤差などにより、第1スライドコア4A〜4Dと第2スライドコア5A〜5Dが干渉して、型の作動に支障を来すことがある。そこで、上記干渉を確実に避けるため、経験上、次式を満足させることとする。すなわち、
β≧tan−1{21/2×tanα/(1−tanγ)}+0.1° …(7)
このように傾斜角βをやや大きくとることが望ましい。
上記傾斜角βは、作動上からさらに大きく設定したい。しかし、あまり大きく設定すると、内スライド金型12自体の形状が成り立たなくなってしまう。そこで、次式のように所定の制限をした状態で傾斜角βを傾斜角αやγに対して設定する。すなわち、
tan−1{21/2×tanα/(1−tanγ)}+0.175°≦β
≦tan−1{21/2×tanα/(1−tanγ)}+1.5° …(8)
とすることが更に望ましい。
ここで、上記内スライド金型12の上記傾斜角α,β,γの具体的な数値設定について説明する。
上記傾斜角αは、大きくし過ぎるとセンターコア3の先端、すなわち、図7における上側端部が細くなり、センターコア3の強度が不足する。また、逆に傾斜角αを小さくし過ぎた場合には、可動型のストロークの限界を超えて、センターコア移動距離S(図5)、すなわち、軸方向への移動を大きくしないと、第1スライドコア4の内側への窄み量が不足し、カム溝の型抜けができなくなる。
一方、傾斜角βに関しても傾斜角αと同様であって、大きくし過ぎるとセンターコア3の先端端部(図7における上側端部)が細くなってセンターコア3の強度が弱くなり、傾斜角βを小さくし過ぎると、センターコア移動距離Sを大きくしないと第2スライドコア5の内側への窄み量が不足し、同様にカム溝の型抜けができなくなる
また、傾斜角γは、あまり小さく設定すると第1スライドコア4A〜4Dの幅端部がナイフエッジ状となり、破損しやすくなる。逆に傾斜角γを大きくし過ぎると、それに伴って傾斜角βも大きくする必要があり、上述した傾斜角βを大きくしたときの問題が発生する。
上述した事情を鑑み、実際に金型を製作し、実験した結果により、上記傾斜角α及び傾斜角γは、以下の範囲の値を採用することが望ましいことが解った。すなわち、
上記傾斜角αは、
1.0°≦α≦4.0° …(9)
望ましくは、
1.5°≦α≦2.5° …(10)
とする。
また、上記傾斜角γは、
0°≦γ≦30° …(11)
望ましくは、
5°≦γ≦20° …(12)
とする。
一方、上記傾斜角βに関しては、上記傾斜角α,γを適用した場合、次式により求められる範囲の値を適用することが望ましい。すなわち、
β≧21/2×α/(1−tanγ)+0.1° …(13)
更に望ましくは、
21/2×α/(1−tanγ)+0.175°≦β
≦21/2×α/(1−tanγ)+1.5° …(14)
とする。この場合、α,βともに数度という小さな値が条件である。
なお、上述した各設定範囲は、実際に金型製作検討して求められたものであるが、特に本実施の形態の内スライド金型12においては、傾斜角α=2.0°,傾斜角β=4.5°,傾斜角γ=15.0°を採用している。
次に、本実施形態の内スライド金型12によるカム枠2のカム溝部の型抜きについて説明する。
前記図1は、カム枠2を第1スライドコア4Aの型抜き方向から見た断面図であるが2つの型割線2dに挟まれた範囲において、カム溝2bがアンダーカットとなっている部分はない。すなわち、上記8分割の第1,2スライドコアを有する本実施形態の内スライド金型12によりカム枠2を成形し、離型することができる。
しかし、従来の技術による6分割のスライドコアを有する金型では、型割線2d′の間が図1に示すようにより幅広になっている。したがって、上記型割線2d′に挟まれた範囲において、カム溝2bの端部領域でアンダーカットとなっている。すなわち、上記従来の金型では、本実施形態のカム枠2を成形し、離型することはできない。
図12は、カム枠において、フランク角θをパラメータにしたときのカム溝の対軸心の傾き(カム溝の軸心に対する傾き)Kと、上記フランク角θ(θ1 、または、θ2 )のカム溝の型抜きが可能な、すなわち、アンダーカット部分が生じないスライドコアの円弧中心角ω(ω1 、または、ω2 )との関係を示す線図である。
上記図12によれば、たとえば、円弧中心角ω1 ,ω2 が角度60°で対軸心の傾きK=1.05のとき、フランク角θ1,θ2が角度20.0°以上あれば、金型から成形品を離型できることが判る。図12に示すようにカム溝の対軸心の傾きKが小さいほど(すなわち、カム溝が回転角に対して急峻であるほど)、また、フランク角θが小さいほど、型抜き可能なスライドコアの円弧中心角ωは、小さくなる。すなわち、型抜き可能なスライドコアの円弧幅が狭く、制限される。
なお、上記カム溝の対軸心の傾きKは、カム溝の(円周距離G0 /軸方向距離Z0 )で与えられ、上記円周距離G0 は、カム溝の最大径における円周距離とする。通常、上記傾きKには、図12に示す0.65〜1.25の範囲が採用される。このKの値は、上述のように型抜きに大きな影響を与え、特にパーティングライン(型割線)とその近傍において重要となる。
上記従来の6分割スライドコア適用の金型の場合、図12に示すスライドコアの円弧中心角ωbがおよそ70°〜80°の範囲になる。したがって、カム溝の対軸心の傾きKにもよるがフランク角θがおよそ22.5°以上ないと型抜きが難しくなる。
一方、本実施形態の8分割スライドコア適用の内スライド金型12の場合、図12に示すスライドコアの円弧中心角ωaがおよそ55°〜70°の範囲になる。したがって、カム溝の対軸心の傾きKにもよるがフランク角θがおよそ16.5°以上で型抜きが可能となり、カム溝の形状に対する制限が少なくなる。
上述したカム溝の型抜き状態を踏まえて、実験的に金型によるカム枠の成形を行った結果、本実施形態の内スライド金型12においては、カム溝の本数3、分割数8である場合、上記カム溝のフランク角θ1 ,θ2 、および、カム溝の傾きKは、
16.5°≦θ1 ≦28.0°
16.5°≦θ2 ≦28.0°
0.65 ≦K≦1.25 …(15)
の各値が適用可能であることが解った。
また、フランク角θ1 ,θ2 の上限を抑えた場合、
16.5°≦θ1 ≦27.5°
16.5°≦θ2 ≦27.5°
0.70 ≦K≦1.25 …(16)
の各値を適用可能であることが解った。
さらに、フランク角θ1 ,θ2 の上限を抑えた場合、
16.5°≦θ1 ≦26.5°
16.5°≦θ2 ≦26.5°
0.80 ≦K≦1.25 …(17)
の各値を適用可能であることが解った。
なお、上記カム溝の本数及び金型分割数にて、カム溝数が1以上、かつ、分割数が8以上である場合に対しても上記(15),(16),(17)式は、適用可能であり、さらに、上記カム枠のカム溝に換えて筒状部材の内周に設けられる雌ヘリコイドネジにも上記(15),(16),(17)式は、適用可能である。
以上、説明したように本実施の形態の内スライド金型12は、8分割のスライドコアで型が構成されているため、各スライドコアの円弧中心角ω1 ,ω2 を小さく設定でき、フランク角θ1 ,θ2 が小さいカム溝を形成することが可能で、強度に優れ、カムフォロアがカム溝から外れる等の不具合発生が防止できる鏡枠装置を成形することができる。
また、カムフォロア1a,1b,1cの3つに対して、本実施の形態の内スライド金型12で成形されたカム枠2の型割線2dが8箇所存在する。したがって、前記第1実施形態の鏡枠装置10においては、3つのカムフォロア1a,1b,1cが型割線18を同時に通過することがない。従って、鏡枠装置10のズーム操作中に大きな駆動力を必要とせず、更には撮影画像が揺れたり、描写力が低下するという問題も生じにくくなる。
さらに、副次的な効果として、カメラのズーム鏡筒に適用される筒状部材として図13の斜視図に示すような前方側が円筒形状でカメラ本体側端部が四角筒形状の特殊な形状をした鏡枠部材21が存在するが、その鏡枠部材の成形に本実施の形態の8分割式内スライド金型12を適用すると、8つのスライドコアを利用するため、鏡枠部材21の四角筒部分を含めてバランス良く成形することができる。
上記第2実施形態の内スライド型12においては、センターコア3に対して第1,2スライドコア4,5がアリ継ぎ係合されているが、この結合構造は、アリ継ぎ係合に限定されるものではなく、例えば、T溝係合など、2つの部材が摺動可能に係合できる係合手段であれば、様々な係合手段を適用することが可能である。
また、第2実施形態の内スライド型12における第2スライドコアの摺動面5b、および、その面に摺接するセンターコアの摺動面3dは、それぞれ単一面で形成されているが、これらの面は、複数の面に分かれて形成されていてもよい。また、第1スライドコアの当接摺動面4bと、その面に当接するセンターコアの摺動面3cおよび第2スライドコアの当接面5gとも、複数面に分かれて形成されていてもよい。但し、この場合、傾斜角γは、最も大きい角度を示す部分を指すことになる。
上記内スライド金型12は、8分割スライドコアを適用するものであるが、上記8分割に限らず8分割以上の偶数の分割数Nのスライドコアをもつ内スライド金型にも同様の構造をを適用することにより同様の効果を得ることができる。この場合、分割数Nは、(第1のスライドコアの数j)×2となり、分割角度εは、360°/2jで与えられる。
そして、上記N分割内スライド金型におけるセンターコアおよび第1スライドコア,第2スライドコアの傾斜角度α、β、γは次式の関係であることが必要である。すなわち、j=N/2として、
β≧tan−1{tanα/{cos(360°/2j)−sin(360°/2j)×tanγ}}+0.1° …(18)
また、次式の関係であること更に望ましい。すなわち、
tan−1{tanα/{cos(360°/2j)−sin(360°/2j)×tanγ}}+0.175°≦β
≦tan−1{tanα/{cos(360°/2j)−sin(360°/2j)×tanγ}}+1.5°
…(19)
であることが望ましい。
ここで、分割数Nが10である場合、すなわち、10分割の内スライド金型の例について説明すると、この10分割内スライド金型は、1つのセンターコアと、5つの第1スライドコアと、5つの第2スライドコアからなるカム枠を成形する型である。上記第1スライドコアと第2スライドコアはセンターコアの周囲に角度36°の間隔で交互に配置されている。その他の構成は、前記第2の実施形態の内スライド金型12と同様とする。
この10分割内スライド金型で成形されるカム枠は、その内周に型割線が10箇所に付いている。また、上記カム枠の内周には、前記第1の実施形態のカム枠19と同様に、カム枠の内周には同形状のカム溝が内周上、円周方向に略120°毎に設けられており、そのカム溝には、移動枠に設けられたカムフォロアが摺動自在に嵌合する。
上記カム枠を成形後、カム枠を金型から取り出すときは、前記第2の実施形態の内スライド金型12と同様に第1スライドコア及び第2スライドコアは内側に窄まる。
上記10分割内スライド金型のセンターコアや第1,2スライドコアの傾斜角度α、β、γは、次式の関係であることが必要である。すなわち、
β≧tan−1{tanα/(cos36°−sin36°×tanγ)}+0.1° …(20)
であることが必要である。
さらに、次式の関係を満足することが望ましい。すなわち、
tan−1{tanα/(cos36°−sin36°×tanγ)}+0.175°≦β
≦tan−1{tanα/(cos36°−sin36°×tanγ)}+1.5° …(21)
であることが望ましい。
上記10分割内スライド金型を適用する場合、前記第2実施形態の内スライド金型12よりも、各スライドコアの円弧中心角ωが更に小さくなり、略台形をしたカム溝断面の中心から、カム枠の中心軸へ垂直に延ばした直線とカム溝の各壁がなす角度θ1 またはθ2 を更に小さくすることが可能で、更に強度に優れるカム枠を成形することができる。
また、カムフォロアピンが3つに対して、型割線が10箇所あるため、同時に3つのカムピンが型割線を通過することが無い。従って、ズーム操作中に大きな駆動力を必要とせず、更に撮影画像が揺れたり、描写力が低下するという問題も生じにくくなる。
次に、上記内スライド金型12により成形可能なカム枠のカム溝の変形例として、図14(A),(B)の断面図に示す形状のカム溝を提案できる。
図14(A)に示す変形例のカム枠22のカム溝22aは、内側面が曲面により形成されるカム溝である。上記カム溝22aに摺動自在に嵌入される移動枠23のカムフォロア23aは、上記カム溝22aの断面形状に合致した球面状先端部を有するカムフォロアである。
また、図14(B)に示す変形例のカム枠24のカム溝24aは、溝の底部にさらなる傾斜面が設けられた形状を有している。上記カム溝24aに摺動自在に嵌入される移動枠25のカムフォロア25aは、上記カム溝24aの断面形状に合致させ、面取り形状先端部を有するカムフォロアである。
本変形例においては、、これらのカム溝22a,24aも略台形形状のカム溝として扱うこととし、上記図14(A),(B)に示したカム溝22a,24aにおけるフランク角θ1 ,θ2 は、略台形をしたカム溝断面の中心からカム枠の中心軸へ垂直に延ばした直線と、上記カム溝の側壁とがなす角度のそれぞれ最も小さくなる部分を指すこととする。そして、上述した内スライド金型におけるセンターコアやスライドコアの傾斜角α,β,γは、前述した各演算式を用いて求めることができる。
次に、本発明の第3の実施形態の筒状部材装置である鏡枠装置について図15を用いて説明する。
上記図15は、上記鏡枠装置の鏡枠を内周側から見た展開図である。
本実施形態の鏡枠装置は、カメラのズームレンズ鏡筒に適用されるものであり、主にヘリコイド枠31と移動枠32とを有してなる。上記ヘリコイド枠31は、前記第2の実施形態の金型装置11と略同様の構成の金型により成形が可能な筒状部材である。
上記ヘリコイド枠31には、内周面に2条ずつ120°間隔で3箇所に案内部である雌ヘリコイドネジ31a,31b,31cが設けられている。
移動枠32には、外周面に2条ずつ120°間隔で3箇所に被案内部である雄ヘリコイドネジ32a,32b,32cが設けられている(図15中、破線で示される)。この移動枠32は、上記ヘリコイド枠31の内周に雌ヘリコイドネジ31a,31b,31cに雄ヘリコイドネジ32a,32b,32cを螺合させた状態で嵌入し、さらに、図示しない固定部により回転規制状態で支持されている。
上記鏡枠装置においては、ヘリコイド枠31が回転駆動されると、上記ヘリコイドネジを介して移動枠32が軸方向Cに沿って進退移動する。
上記ヘリコイド枠31は、前記第2実施形態に示した内スライド金型12のカム溝を形成するための凸部4f,5fを雌ヘリコイドネジ形成用のヘリコイド凸部に代えたヘリコイド用内スライド金型により成形することができる。
このヘリコイド用内スライド金型においても前記内スライド金型12と同様にセンターコアやスライドコアの傾斜角α,β,γは、前述した各演算式を用いて求めることができる。
上記ヘリコイド用内スライド金型により成形されたヘリコイド枠31の内周面には、図15に示すように8本の型割線31dが付く。ヘリコイド枠31を回動駆動させた場合、移動枠32のある2条の雄ヘリコイドネジ32a,32b,32cの何れかがヘリコイド枠31の型割線31d上にあっても、それ以外の雄ヘリコイドネジのうち少なくとも1条は、型割線31d上に位置しない。
本実施形態の鏡枠装置によれば、ヘリコイド枠31が前記第1実施の形態におけるカム枠2と同等に、カム溝15のフランク角θ1 ,θ2 に相当する雌ヘリコイドネジ32a,32b,32cのフランク角の傾斜角が小さかったとしても成形および離型が可能で、強度に優れるズーム枠を得ることができる。また、上述したようにある2条の雄ヘリコイドネジがヘリコイド枠32の型割線31d上にあっても、他の雄ヘリコイドネジのうち少なくとも1条は、型割線31d上に位置しないため、ズーム操作中に大きな駆動力を必要とせず、さらには撮影画像が揺れたり、描写力が低下するという問題も生じにくくなる。
次に、本発明の第4の実施形態であるの筒状部材装置である鏡枠装置について図16を用いて説明する。
上記図16は、上記鏡枠装置の鏡枠を内周側から見た展開図である。
本実施形態の鏡枠装置は、カメラのレンズ鏡筒の一部に適用されるものであり、主に固定枠41と回転枠42とを有してなる。上記固定枠41は、前記第2の実施形態の金型装置11と略同様の構成の金型により成形が可能な筒状部材である。
上記固定枠41には、内周面に周方向に沿った1本の案内部であるガイド溝41bが設けられ、さらに、上記ガイド溝41bに通ずる3つの突起挿入口41aが設けられている。
回転枠42には、外周面に3つの被案内部である突起42aが設けられている(図16中、破線で示される)。この回転枠42は、上記突起挿入口41aを通して突起42aを固定枠41の内周に挿入し、ガイド溝41bに摺動自在に嵌入させて組み込まれ、固定枠41に対して軸方向Cの移動が規制された状態で回転可能に支持される。
上記固定枠41は、前記第2実施形態に示した内スライド金型12のカム溝を形成するための凸部4f,5fを円周方向に沿った凸部に代えた内スライド金型により成形することができる。
上記内スライド金型においても前記内スライド金型12と同様にセンターコアやスライドコアの傾斜角α,β,γは、前述した各演算式を用いて求めることができる。この内スライド金型により成形された固定枠41には、図16のように8本の型割線41dが付く。そのため、周方向に等間隔に配される回転枠42の3つの突起42aの1つが型割線41d上に位置したとしても他の突起42aのうち少なくとも1つは、型割線41d上に位置しない。
したがって、本実施形態の鏡枠装置によれば、鏡枠回転操作中に大きく変動するような駆動力を必要とせず、スムーズが回転状態が得られる。
なお、上記固定枠41のガイド溝41bが凸状の周方向に沿ったガイド部であって、回転枠42の突起2aを凹状部とする鏡枠装置においても同様の効果を奏する。
次に、本発明の第5の実施形態であるの筒状部材装置である鏡枠装置について図17を用いて説明する。
上記図17は、上記鏡枠装置の鏡枠を内周側から見た展開図である。
本実施形態の鏡枠装置は、カメラのレンズ鏡筒の一部に適用されるものであり、主にカム枠45と移動枠46とを有してなる。
上記カム枠45は、前記第2の実施形態の金型装置11の分割数を6分割とした金型装置により成形可能なものであり、内周に設けられる案内部のカム溝の本数が4本である枠である。すなわち、上記カム枠45には、内周面に4本のカム溝45a,45b,45c,45dが円周方向に90°毎等間隔に配置されている。
上記移動枠46には、外周面に4つの被案内部のカムフォロア46a,46b,46c,46dが円周方向に90°毎等間隔に配置されている。この移動枠46は、カム枠45の上記各カム溝に上記各カムフォロアを摺動自在に嵌入してカム枠45内に組み込まれる。
本鏡枠装置においては、カム枠45が回転駆動されると、移動枠46が上記カム溝を介して軸方向Cに進退駆動される。
上記カム枠45を成形するには、前記第2実施形態に示した内スライド金型12のカム溝を形成するための凸部の本数を4本とし、スライドコアの分割数を6分割とした内スライド金型を適用する。
この内スライド金型においても前記内スライド金型12と同様にセンターコアやスライドコアの傾斜角α,β,γは、前述した各演算式を用いて求めることができる。但し、スライドコアの数2jを6とする。
上記内スライド金型により成形されたカム枠45には、図17のように従来の6分割内スライド金型と同様に6本の型割線45dが付く。しかし、カム溝が4本、カムフォロア46a,46b,46c,46dが4つであり、上記金型の分割数6と整数倍の関係にないので、移動枠46の4つのカムフォロア46a,46b,46c,46dの1つが型割線45d上に位置したとしても他のカムフォロア46a,46b,46c,46dのうち少なくとも1つは、型割線45d上に位置しない。
したがって、本実施形態の鏡枠装置によれば、カム枠回転中に大きく変動するような駆動力を必要とせず、スムーズが移動枠の進退駆動状態が得られる。
次に、本発明の第6の実施形態である金型装置の内スライド金型について図18の上記内スライド金型の斜視図を用いて説明する。
図18に示すように本実施形態の内スライド金型51は、スライドコアガイド用のアリ部を持たない8分割スライド金型であって、センターコア52と、センターコア52の周囲に角度45°間隔で交互に配される4つの第1スライドコア53A,53B,53C,53Dおよび4つの第1スライドコア54A,54B,54C,54Dと、軸心C0 に対し僅かに傾斜した各4本の第1,2アンギュラピン55,56とを有してなる。この内スライド金型51は、図示しない可動型に組み込まれ、型締め位置と型開き位置とに駆動され、内周カム溝を有する筒状部材のカム枠を射出成形するための金型である。
上記第1スライドコア53A,53B,53C,53Dは、それぞれ同一形状を有し、上記第2スライドコア54A,54B,54C,54Dもそれぞれ同一形状を有しているので、その中の1組の第1スライドコア53Aと第2スライドコア54Aの形状についてのみ説明する。
上記第1スライドコア53Aは、軸心C0 を中心とする円筒面の一部であって、カム枠の内周面を形成するための円筒面53aと、円筒面53a上に設けられ、カム枠のカム溝を形成するための凸部53bと、内周側の突起53fと、円筒面53aの両内側に設けられ、軸心C0 方向に沿った所定の開き角を有する傾斜面の当接面53gと、コア受け端部側にて軸心C0 の半径方向に延出して形成されるスライドガイド部53dと、上記スライドガイド部53d上に設けられ、所定角αだけ軸心C0 側に傾斜するアンギュラピン穴53eとを有している。この第1スライドコア53Aは、図示しない可動型の内スライド受けに径方向に摺動自在に支持されている。
上記第2スライドコア54Aは、軸心C0 を中心とする円筒面の一部であって、カム枠の内周面を形成するための円筒面54aと、円筒面54a上に設けられ、カム枠のカム溝を形成するための凸部54bと、内周側の突起54fと、円筒面54aの両外側にて軸心C0 方向に沿った所定の開き角を有する当接面54gと、コア受け端部側にて軸心C0 の半径方向に延出して形成されるスライドガイド部54dと、上記スライドガイド54d上に設けられ、軸心C0 に対して所定角βだけ軸心C0 側に傾斜するアンギュラピン穴54eとを有している。この第2スライドコア54Aは、上記図示しない可動型の内スライド受けに径方向に摺動自在に支持されている。
なお、上記当接面53gは、軸心C0 と直交する平面上にて、軸心C0 および第1スライドコア中心を含む平面に直交する方向となす角が傾斜角γとなる傾斜面である。また、上記当接面54gは、上記第1スライドコア53の当接面53gと型締め時に密着する面であり、軸心C0 と直交する平面上にて、軸心C0 および第2スライドコア中心を含む平面に直交する方向となす角が傾斜角(γ+45°)となる傾斜面である。
また、上記凸部53b、または、54bは、第1スライドコアの円筒面53aと第2スライドコアの円筒面54aとの間を少なくとも一箇所を跨いで分断されていて、連続的に連なって形成されるものとする。
上記センターコア52は、軸心C0 に沿ったテーパ形状となっており、その端部は、可動型のセンターコア受け部(図示せず)に固定されている。センターコア52には、型締め状態では、第1,2スライドコア53A,54A等の突起53f,54fが当接している。型開き時に第1,2スライドコア53A,54A等の突起53f,54fが内側方向に移動してくるが、上記センターコア52は、軸心C0 方向への移動により上記突起53f,54fと軸心C0 方向に摺接する。
上記第1アンギュラピン55は、上端側が傾斜角αだけ軸心C0 側に傾斜した状態で可動型のセンターコア受け部(図示せず)に固定されている。そして、第1スライドコア53A等のアンギュラピン穴53eに摺動自在に嵌入している。
上記第2アンギュラピン56は、上端側が傾斜角βだけ軸心C0 側に傾斜した状態で可動型のセンターコア受け部(図示せず)に固定されている。そして、第2スライドコア54A等のアンギュラピン穴54eに摺動自在に嵌入している。
上記第1,2アンギュラピン55,56は、型開き時に上記センターコア52とともにセンターコア受け部側に後退するので、上記アンギュラピン穴53e,54eを介して第1,2スライドコア53A,54Aが軸心側に向けて窄まるようにスライド移動してゆく。
上述した構成を有する内スライド金型51を適用した金型装置においては、型締め状態では、上記第1スライドコア53A等の当接面53gの内側に上記第2スライドコア54A等の当接面54gが密着して当接している。
樹脂注入射出後の型開き時にセンターコア52がセンターコア受け方向に所定量移動すると、傾斜している第1,2アンギュラピン55,56にガイドされて第1,2スライドコア53A,54A等が内側に所定量だけスライド移動して窄まった状態となる。上記第1,2スライドコア53A,54A等の移動によって第1,2スライドコアの凸部53b,54bが成形されたカム枠のカム溝から離れ、上記カム枠が型抜き可能となる。
なお、上記内スライド金型51により成形されたカム枠には、やはり8本の型割線が残るがそれらの線は、この実施形態においては、互いに平行な線である。
上述したように金型装置51の型開きにより、第1スライドコア53A等と第2スライドコア54A等を互いに軸心C0 に向けてカム枠2が取り出し可能な状態となるように少なくともカム溝の深さ分は、窄ませる必要がある。そのとき、第1スライドコア53A等の当接面53gとその内側にある第2スライドコア54A等の当接面54gが干渉しないように、第1スライドコア53A等のスライド量よりも第2スライドコア54A等のスライド量を所定量多くとる。このスライド量は、上記アンギュラピンの傾斜角α,βやスライドコアの当接面の傾斜角γなどにより決定される。
本実施形態の内スライド金型51における上記傾斜角α,β、および、傾斜角γは、前記第2の実施形態の8分割内スライド金型12の場合と同様に前記演算式(7),(8)等を適用して求めることができる。
本実施形態に内スライド金型51によると、前記第2実施形態の内スライド金型12の場合と同様の効果を得ることができる。すなわち、上記内スライド金型51で成形されたカム枠は、カム溝のフランク角θ1 ,θ2 が小さく、カムフォロアがはずれにくい強度的に優れたものである。また、上記カム枠には、3つのカムフォロアに対して、型割線は、8箇所であるため、同時に3つのカムフォロアが型割線を通過することが無い。従って、カム枠操作中に大きな駆動力を必要としない。上記カム枠がカメラの鏡枠に適用された場合、撮影画像が揺れたり、描写力が低下するという問題も生じにくくなる。
また、本実施形態の内スライド金型51の場合、アリ溝構造を採用する必要がないので金型製作が容易になり、金型の製作コスト低減や製作期間の短縮等が実現できる。
以上、説明した各実施形態に示したカム枠やヘリコイド枠等の筒状部材を成形するための成形手段は、上記実施形態に限定されるものではなく、プラスチック射出成形のほか、金属粉末射出成形、金属ダイカスト、セラミック成形等、その他、様々な成形材料による成形手段に適用することが可能である。
また、上述した各実施形態に示したカム枠やヘリコイド枠等の筒状部材では溝部の一方のフランク角θ1 と他方のフランク角θ2 とは、等しいとしたが、これに限らずフランク角θ1 とθ2 とが異なる角度をもつ溝部、または、凸部を有する筒状部材の成形にも適用可能である。更に、単一の筒状部材にカム溝、ヘリコイドネジ、横溝などが2つまたは3つ複合して設けられている場合にも、本発明による金型による成形は可能である。
また、上記各実施形態の金型で成形された筒状部材の型割線は、カム枠やヘリコイド枠の一方の端から他方の端まで付いてたが、このような筒状部材に限定するものではなく、たとえば、型割線が筒状部材の端面まで達していないような場合にも本発明による金型は、適用可能である。
また、上記各実施形態の金型で成形された筒状部材のカム溝や横溝(周方向溝)は、筒状部材の内周面に対して凹んでいるものであったが、本発明による筒状部材は、これに限定するわけではなく、凸形状のカムや周方向凸部を有する筒状部材にも適用可能である。
さらに、上記各実施形態やその変形例における筒状部材は、カメラのレンズ鏡筒を例に挙げたが、本発明の要旨は、上記カメラのレンズ鏡筒以外、例えば、口紅の容器、瓶等のキャップ、その他、成形アンダーカットのある様々な機構部品の成形にも適用可能である。
また、上記各実施形態における金型を構成する部材は、その材質を鉄鋼やアルミニウム合金などの金属に限定するものでなく、例えば、セラミック,樹脂,樹脂と金属粉末の複合材、その他の材質を用いることができる。