JP4504297B2 - インクジェット記録材料 - Google Patents

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Description

本発明はインクジェット記録材料に関し、詳しくは透明性、インク吸収性、インク受容層と透過性支持体との接着強度、耐カール性、耐裏写り性に優れたインクジェット記録材料に関し、特にインクジェット記録方式によって作製される印刷版版下フィルム用途に好適なインクジェット記録材料に関するものである。
インクジェット記録方式に使用される記録材料としては、通常の紙やフィルムからなる支持体上に、親水性ポリマーを主体とする膨潤性のインク受容層や、非晶質シリカ等の顔料を主体とする多孔質性のインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。
多孔質性のインク受容層を設ける場合には、近年、顔料として極微細な無機粒子、例えば、粉砕・分散した気相法シリカや湿式法シリカ等の無機超微粒子をインク受容層の顔料成分として用いることが提案されている。例えば、特公平3−56552号、特開平10−119423号、特開2000−211235号、特開2000−309157号公報に気相法シリカの使用例が、特開平9−286165号、特開平10−181190号公報に粉砕沈降法シリカの使用例が、特開2001−277712号公報に粉砕ゲル法シリカの使用例が開示されている。また、特開昭62−174183号、特開平2−276670号、特開平5−32037号、特開平6−199034号公報等にアルミナやアルミナ水和物を用いた記録材料が開示されている。
インクジェット記録材料の用途が拡大するなかで、印刷版版下フィルム用、オーバーヘッドプロジェクタ用や、胸部X線及び超音波診断などの医療画像出力用等の用途に使用することが提案されており、これらのインクジェット記録材料では支持体として透明性のプラスチックフィルムが用いられることが多い。一般的にプラスチックフィルム支持体上に多孔質性のインク受容層を設けた場合、紙を支持体として用いた場合と比較すると支持体とインク受容層との接着強度が劣る傾向にあり、シート状やロール状にインクジェット記録材料を仕上げるときや、取り扱い時に塗布層が支持体から剥離してしまうことがあった。特に印刷版版下フィルム用のように大判の記録材料を扱う場合には、取り扱い時に記録材料が折れたり曲がったりすることで塗布層が剥離することが多く、記録画像に対して大きく悪影響を及ぼし版下フィルムとしての使用に耐えられなくなることがあった。親水性ポリマーを主体とする膨潤性のインク受容層を設けた場合にはこのような問題は発生しにくいが、速乾性が求められる顔料を主体とする多孔質性のインク受容層を設けた場合には発生しやすく、実用上大きな問題である。
これまでに透明性支持体を支持体として用いたインクジェット記録材料として、例えば特開平7−276789号、特開平8−72392、特開2001−113817号、特開2002−240417号、特開2003−276313号などが開示されている。
プラスチックフィルムからなる支持体と塗布層との接着強度を改善するために、支持体上に天然樹脂や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けることが行われている。接着強度を改善するために、特開2004−25836号公報(特許文献1)には、支持体とインク受容層との間に結合剤とカチオン的に改質されたシリカを含んでなる追加の付着促進層を設けることが提案されている。また、特開平9−202039号公報(特許文献2)には、水溶性ポリマーを主成分とするインク定着層と支持体との間にアルミナゾルを主成分とするプライマー処理層を設けることが提案されている。また、特開平9−188065号公報(特許文献3)には、透光性基材上に酸化チタン及び/又は酸化亜鉛の微粒子を含有する下引層を設けることによってぬれ性を改善し、さらに上層に形成されるインク受容層との密着性が高めることが提案されている。
しかしながら、透明性記録材料として重要な特性である透明性や、インク吸収性、支持体とインク受容層との接着強度、及び記録材料として必要な耐カール性を全て満足することはできなかった。優れたインク吸収性を有する多孔質性のインク受容層のみを塗布した場合には支持体との接着強度を得ることができず、また、優れたインク吸収性を有するインク受容層の下層に接着強度の改善を目的とした塗層を設けた場合でも、インクジェット記録後にインクが乾燥した後に記録画像にひび割れが発生するという問題が発生した。さらに、記録材料のカールが大きく、インクジェットプリンターにおける搬送性にも問題があった。
インクジェット記録材料のインク受容面側へのカールが大きいと、インクジェットプリンターで印刷する際にインクジェット記録材料にプリンターヘッドが擦れたりするなどの支障が発生し、正常に印刷することが不可能になる。そのため、耐カール性を改善するためにインク受容層の設けられた面とは反対側の面に裏塗り層を設けることが行われている。しかしながら、画像印刷後に十分に乾燥させても、印刷物を重ねておくとインク打ち込み量が多い画像部に残存していたインク由来の水や溶剤が裏面に転写して、転写部分が白濁化することがあった。透明性支持体を支持体として用いた場合には、この転写部分がインク受容面側からでも視認されることから、画像を正常に認識させることが困難になる。さらに、水や溶剤の転写が原因となり、ブロッキングが発生することもあった。
特開2002−240417号公報(特許文献4)では、裏塗り層の構成と空隙率を特定の範囲にすることによって、印字画像の裏写りのない光透過性インクジェット記録材料が提案されている。しかしながら、透明性、インク吸収性、及びインク受容層と透明性支持体との接着強度、耐カール性、耐裏写り性を全て兼ね備えたインクジェット記録材料を提供することはできなかった。
また、印刷版版下フィルム用として用いられる場合には真空引き適性を備えていることが好ましい。版下フィルムに形成された画像は密着露光により印刷版に焼き付けられるが、鮮鋭な画像を形成させるためには露光工程において版下フィルムと印刷版とを確実に密着させておくことが必要である。密着性が悪いと光を遮蔽すべきところに光が回り込んで画像の輪郭が滲んだりして画像品質が低下してしまう。そのため、真空引き工程により密着性を高めることが行われるが、版下フィルムの平滑性が高すぎる場合には、版下フィルムと印刷版とがずれてしまったり、版下フィルムと印刷版との間隙の空気が均一に排出されなかったり、また、真空引きのために長時間を要するという問題があった。したがって、効率良く真空引きできることの可能な記録材料が印刷版版下フィルム用途に適している。
特開2004−25836号公報 特開平9−202039号公報 特開平9−188065号公報 特開2002−240417号公報
本発明の目的は、インクジェット記録材料において、透明性、インク吸収性、インク受容層と透明性支持体との接着強度、耐カール性、耐裏写り性に優れ、特にインクジェット記録方式によって作製される印刷版版下フィルム用途に好適なインクジェット記録材料を提供することにある。
本発明の上記目的は、以下の発明によって達成された。
(1)透明性支持体の片面に、平均二次粒子径が300nm以下の気相法シリカと結合剤とが含有される少なくとも2層からなるインク受容層(A)を設けたインクジェット記録材料において、該透明性支持体のインク受容層塗布面に天然樹脂または合成樹脂を主体とするプライマー層を有し、該インク受容層(A)のうち該透明性支持体に最も近いインク受容層(A1)に含有される気相法シリカと結合剤としてポリビニルアルコールとの質量比が75:25〜50:50であり、該インク受容層(A)のうち該透明性支持体に最も遠いインク受容層(A2)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比が95:5〜75:25であり、かつ該インク受容層(A)の設けられた面の反対側の面に、コロイダルシリカと結合剤とが含有される裏塗り層が、固形分塗布量で3〜18g/mの範囲で設けられていることを特徴とするインクジェット記録材料。
(2)前記インク受容層(A)のうち前記透明性支持体に最も遠いインク受容層(A2)及び/または前記裏塗り層に、平均二次粒子径が3〜20μmのマット剤が含有される上記(1)に記載のインクジェット記録材料。
本発明のインクジェット記録材料は、透明性、インク吸収性、及びインク受容層と支持体との接着強度、耐カール性、耐裏写り性に優れ、特にインクジェット記録方式によって作製される印刷版版下フィルム用途に好適なインクジェット記録材料である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインク受容層(A)は、高い透明性、インク吸収性を得るために平均二次粒子径が300nm以下の気相法シリカと結合剤を含有し、透明性支持体に最も近いインク受容層(A1)と、最も遠いインク受容層(A2)の少なくとも2層からなる。透明性支持体とインク受容層との接着強度を得るためにインク受容層(A1)に含有する気相法シリカと結合剤との質量比は75:25〜50:50であり、優れたインク吸収性を得るためにインク受容層(A2)に含有する気相法シリカと結合剤との質量比は95:5〜75:25である。
本発明のインク受容層(A)は上記の如く重層構成にすることによって、透明性支持体とインク受容層との接着強度とインク吸収性を両立することができる。インク吸収性を重視したインク受容層(A2)のみの単層構成では接着強度を得ることができず、また、接着強度を重視したインク受容層(A1)のみの単層構成ではインク吸収性を得ることができない。
本発明に用いられる気相法シリカは非晶質合成シリカであり、非晶質合成シリカは、製造法によって前記気相法シリカのほか、湿式法シリカ、及びその他に大別することができる。気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されている。
気相法シリカの特徴は、一次粒子が網目構造または鎖状につながりあって二次的に凝集した状態で存在して適度な空隙を形成することにある。本発明では、透明性を高めるために平均二次粒子径が300nm以下の気相法シリカが用いられる。好ましくは250nm以下、より好ましくは200nm以下になるまで超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で水等の分散媒中で分散、粉砕させた気相法シリカ微粒子がインク受容層(A)に含有される。
本発明に用いられる気相法シリカの平均一次粒子径は30nm以下が好ましく、高い透明性を得るためと、分散、粉砕により容易に小さな平均二次粒子径を得るために、より好ましくは20nm以下である。かつ高い吸収性を得るためにBET法による比表面積が90〜400m2/gのものを用いるのが好ましい。BET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
なお、本発明でいう平均一次及び二次粒子径は電子顕微鏡(SEMとTEM)で観察する公知の方法に基づくものである。一次粒子の平均粒子径は、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒径として求めることができる。また、二次粒子の平均粒子径は緩いせん断力で分散した粒子を電子顕微鏡で観察して求めることができる。
本発明において、インク受容層(A)のうち透明性支持体から最も遠いインク受容層(A2)に含有される気相法シリカは、アニオン性を有するインクの定着性を向上させることを目的として、カチオン化した状態で用いられるのが好ましい。カチオン化された気相法シリカは、カチオン性化合物の存在下で水を主体とする分散媒中で気相法シリカを分散して得ることができる。このとき、ポリビニルアルコールのような親水性バインダーやホウ酸等の架橋剤(硬膜剤)は含まない状態で分散するのが好ましい。
本発明において、インク受容層(A)のうち透明性支持体に最も近いインク受容層(A1)に含有される気相法シリカは特にカチオン化する必要はないが、生産効率向上のためにインク受容層(A2)に好ましく用いられるカチオン化された気相法シリカを共通して用いても良い。
カチオン化された気相法シリカとしては、特開平11−321079号、特開2000−239536号、特開2001−19421号、特開2001−80204号、特開2001−207078号公報等にカチオン性化合物の存在下で気相法シリカを分散する方法が記載されており、いずれも本発明に採用することができる。
気相法シリカの分散または粉砕に用いられるカチオン性化合物としては、カチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物を使用できる。カチオン性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、アルキルアミン重合物、特開昭59−20696号、特開昭59−33176号、特開昭59−33177号、特開昭59−155088号、特開昭60−11389号、特開昭60−49990号、特開昭60−83882号、特開昭60−109894号、特開昭62−198493号、特開昭63−49478号、特開昭63−115780号、特開昭63−280681号、特開平1−40371号、特開平6−234268号、特開平7−125411号、特開平10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。特に、カチオン性ポリマーとしてジアリルアミン誘導体が好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、2,000〜10万程度が好ましく、特に2,000〜3万程度が好ましい。分子量が10万よりも大きくなると、分散液が高粘度となりすぎるため好ましくない。
水溶性金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩が挙げられ、中でもアルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えばジルコニウム、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
前記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2、または3で示され、例えば[Al6(OH)153+、[Al8(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al2(OH)nCl6-nm 一般式1
[Al(OH)3nAlCl3 一般式2
Aln(OH)mCl(3n-m) 0<m<3n 一般式3
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的をもって上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
本発明に用いることのできる周期表4A族元素を含む水溶性化合物としては、チタンまたはジルコニウムを含む水溶性化合物がより好ましい。チタンを含む水溶性化合物としては、塩化チタン、硫酸チタンが挙げられる。ジルコニウムを含む水溶性化合物としては、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。本発明において、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを目安とする。
本発明のインク受容層(A2)には、皮膜としての特性を維持するためと、インクのより高い浸透性が得るために、結合剤が用いられる。結合剤としては親水性バインダーを用いることが好ましいが、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが特に好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、澱粉類、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体が使用される。本発明において特に好ましくは、完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
本発明のインク受容層(A1)にも、透明性支持体との接着強度と皮膜強度を得るために結合剤が用いられる。インク受容層(A1)で使用される結合剤として、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル重合体、酢酸ビニル重合体、スチレン−ブタジェン共重合体等の重合体またはこれらの誘導体や、ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、澱粉類、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体等が使用できる。本発明において、好ましくはポリビニルアルコールであり、特に好ましくは平均重合度500〜5000であり、かつケン化度が80%以上の部分または完全ケン化のポリビニルアルコールである。
本発明のインク受容層(A)において、上記結合剤と共に架橋剤(硬膜剤)を用いることが好ましい。架橋剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸、ほう酸塩、ほう砂の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
本発明のインク受容層(A)において、結合剤として好ましいポリビニルアルコールを用いた場合には、架橋剤としてほう酸、ほう砂またはほう酸塩を用いることが好ましい。ほう酸は、オルトほう酸、メタほう酸、次ほう酸等が、ほう酸塩としてはそれらのナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。結合剤に対する架橋剤の含有率は、0.02〜40質量%で、特に0.5〜30質量%が好ましい。
本発明のインク受容層(A1)における気相法シリカと結合剤の質量比は75:25〜50:50であり、好ましくは70:30〜55:45であり、より好ましくは70:30〜60:40である。上記範囲にすることによって、インク受容層(A)と透明性支持体との接着強度、インクジェット記録後の印刷部のひび割れ防止効果、塗布適性を得ることができる。
本発明のインク受容層(A1)の塗布量は、固形分で0.5〜8g/m2であり、好ましくは1〜6g/m2であり、より好ましくは2〜4g/m2の範囲である。上記範囲にすることによって、インク受容層(A)と透明性支持体との接着強度、インクジェット記録後の印刷部のひび割れ防止効果を得ることができる。
本発明のインク受容層(A2)における気相法シリカと結合剤の質量比は95:5〜75:25であり、好ましくは90:10〜80:20である。上記範囲にすることによって、インク受容層のひび割れ防止と高いインク吸収性を得ることができる。
本発明のインク受容層(A2)の塗布量は、固形分で5〜50g/m2であり、好ましくは10〜40g/m2であり、より好ましくは13〜35g/m2の範囲である。上記範囲にすることによって、インク受容層のひび割れ防止と高いインク吸収性を得ることができる。
上記の如く、本発明のインクジェット記録材料は、平均二次粒子径が300nm以下の気相法シリカと結合剤とを含有するインク受容層(A)が少なくとも2層からなり、最下層に透明性支持体との接着性が良好なインク受容層(A1)を、最上層にインク吸収性に優れるインク受容層(A2)を設けることにより、優れた透明性、インク吸収性、及びインク受容層と支持体との接着強度を有することができる。
本発明のインク受容層(A)には、インク定着剤としてカチオン性化合物を含有することもできる。ここで用いられるカチオン性化合物としては、気相法シリカ微粒子の分散、粉砕に使用したものと同様のカチオン性ポリマーまたは水溶性金属化合物である。カチオン性化合物はアニオン性を有するインクの定着性を向上させることができる。また、水溶性金属化合物を含有することによって、ひび割れを防止することができ、結果として、インク吸収性を向上させるために親水性バインダー量のさらなる低減及び気相法シリカのさらなる増量が可能となる。特に、インク受容層(A2)にこれらの化合物を含有させることで高い効果が得られる。
本発明のインク受容層(A)には、さらに、界面活性剤、着色染顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、粘度安定剤、pH調節剤、各種油滴等を含有することができるが、透明性、接着強度、インク吸収性等の他の特性に悪影響を及ぼさないことが重要である。
本発明のインク受容層(A)は、最下層にインク受容層(A1)が、最上層にインク受容層(A2)が設けられていれば、さらに他のインク吸収層、インク定着層、中間層等を設けてもよい。但し、透明性、接着強度、インク吸収性等の他の特性に悪影響を及ぼさないことが重要である。
本発明において、インク受容層(A)を設けた面とは反対側の面に、カール防止のために裏塗り層が設けられる。裏塗り層には、さらに、帯電防止、搬送性向上のために、顔料、結合剤、帯電防止剤、硬膜剤、界面活性剤等を含有させてもよい。
本発明の裏塗り層には、透明性と裏塗り層の被膜強度を維持するためにコロイダルシリカが、好ましくは平均一次粒子径が5〜50nmのコロイダルシリカが顔料として含有される。使用できるコロイダルシリカとして、例えば、日産化学工業(株)からスノーテックスST−20、ST−30、ST−40、ST−C、ST−N、ST−20L、ST−O、ST−OL、ST−S、ST−XS、ST−XL、ST−YL、ST−ZL、ST−OZL、ST−AK、ST−AKL、ST−AKYL等が市販されているほか、旭電化工業(株)からアデライトとして市販されているものがある。
本発明の裏塗り層で使用される結合剤は特に限定されないが、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル重合体、酢酸ビニル重合体、スチレン−ブタジェン共重合体等の重合体またはこれらの誘導体や、ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、澱粉類、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体等が使用できる。好ましくはポリビニルアルコールを使用することによって、インクジェット記録後の記録材料を重ね合わせた際に、記録部から蒸散する溶剤の裏写りを効果的に防止することができる。
本発明の裏塗り層におけるコロイダルシリカと結合剤との質量比は90:10〜30:70であり、好ましくは80:20〜40:60であり、より好ましくは70:30〜50:50である。上記範囲にすることによって、裏塗り層のひび割れ防止と透明性支持体との接着強度を得ることができ、さらに、耐裏写り性とブロッキング防止効果を得ることができる。
なお、本発明の裏塗り層は、インク受容層と比べて空隙率は極端に低くインク受容層としての機能はない。本発明でいう裏塗り層の空隙率とは、裏塗り層の乾燥膜厚から出した容量から層中の無機微粒子やバインダー等の固形分総容量を差し引いた値である空隙容量の固形分総容量に対する割合をいい、値が小さいほど耐裏写り性に優れる。裏塗り層の空隙率を70容量%以下、好ましくは50容量%以下、さらに好ましくは20容量%以下にすることによって、耐裏写り性の効果を十分に得ることができる。
裏塗り層の塗布量は得られる記録材料の耐カール性を考慮して決定されるが、本発明では、塗布量は固形分で3〜18g/m2であり、好ましくは5〜15g/m2であり、さらに好ましくは6〜12g/m2である。3g/m2より少ないとインク受容面側へのカールを防止する効果が小さく、反対に18g/m2より多いと裏塗り面側へのカールが大きくなりすぎて取り扱い難くなり、ブロッキング防止効果も低下するうえに、インクジェットプリンターによる印刷時にプリンターヘッドが記録材料に擦れてしまうという問題も発生する。
本発明のインク受容層(A2)及び/または裏塗り層には、真空引き適性の改善のためにマット剤が含有されることが好ましい。使用できるマット剤は特に限定されないが、塗布層の透明性を損なわないことが必要であり、好ましくは平均二次粒子径が3〜20μmの無機顔料及び有機顔料の少なくとも1種をインク受容層(A2)及び/または裏塗り層に使用する。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和水物、酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機顔料やポリスチレン、ポリエチレン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、尿素樹脂等の有機顔料が挙げられる。マット剤を含有させることによって、密着露光工程における真空引き適性を改善できることができる。印刷版と接触する面に形成された塗層に含有されれば良いが、両面ともに含有していればどちらの面を接触させても良好な真空引き適性が得られる。
インク受容層(A2)及び/または裏塗り層にマット剤を含有させる場合、塗布層の透明性を損なわない範囲で含有量を決定することが必要であり、含有量は固形分で2〜200mg/m2、好ましくは5〜120mg/m2、さらに好ましくは10〜60mg/m2である。上記範囲にすることによって、透明性と真空引き適性を両立することができる。
本発明に用いられる透明性支持体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレートのようなポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、ニトロセルロース、セルロースアセテートのようなセルロースエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルムが挙げられる。特にポリエステル樹脂のフィルムが耐熱性等の特性と価格で好ましく用いられる。これらの樹脂フィルム支持体の厚みは、カール性や取り扱い易さ等から50〜250μm程度のものが好ましい。
透明性支持体の透明性、色調を調整する場合には、例えば熱可塑性樹脂に無機微粒子等を配合して作製するが、無機微粒子としては炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、シリカや、カーボンブラック等の着色顔料等が利用出来る。例えば、医療用には青色に着色されたブルーPETフィルムが好ましく使用される。
プラスチック樹脂フィルム等の透明性支持体にインク受容層の塗布液を塗布する場合、塗布に先立って、コロナ放電処理、火炎処理、紫外線照射処理、プラズマ処理等が通常行われる。
プラスチック樹脂フィルム等の透明性支持体上には天然樹脂や合成樹脂を主体とするプライマー層を設けるのが好ましい。プライマー層は、支持体上に0.01〜5μmの膜厚(乾燥膜厚)で設けられ、好ましくは0.05〜5μmの範囲である。
本発明において、インク受容層(A)及び裏塗り層の塗布方法は特に限定されない。2層以上を同時塗布する場合は、スライドビードコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター等の塗布装置が使用でき、連続塗布の場合は、上記の塗布装置の組み合わせや、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター等と上記の塗布装置により連続で塗布することができる。本発明で同時塗布とは各層をほぼ同時に塗布することであり、連続塗布とは下層塗布後乾燥工程無しで短時間後(通常十秒程度以内)に連続で上層を塗布することである。インク受容層の均一性からは同時塗布するほうが好ましい。
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。なお、部及び%は固形分あるいは実質成分の質量部、質量%を示す。
下記に示す透明性支持体を用意した。
<透明性支持体>
厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ヘイズ値1%)の両面に下記組成のプライマー層を乾燥膜厚が0.3μmになるように設け、高周波コロナ放電処理を施した。
<プライマー層の組成>
塩化ビニリデン:メチルアクリレート:アクリル酸(90:9:1、質量%)のラテックス(重量平均分子量42000)。
<裏塗り層の塗布>
コロイダルシリカ(日産化学工業社製、スノーテックスO、平均一次粒子径10〜20nm)100部に対し、ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500)50部、ほう酸7部、界面活性剤0.3部を順次添加し、最後に10質量%の濃度になるように水を加え、裏塗り層塗布液とし、上記透明性支持体の片面にスライド塗布テストコーターにて固形分塗布量が10g/m2になるように塗布、乾燥した。
<インク受容層(A)の塗布>
光透過性支持体の裏塗り層を設けた面とは反対面に、下記のインク受容層(A1)塗布液を下層として固形分塗布量が3g/m2になるように、また、下記のインク受容層(A2)塗布液を上層として固形分塗布量が20g/m2になるように、スライドビードコーターにて重層塗布、乾燥し、実施例1のインクジェット記録材料を得た。気相法シリカと結合剤として用いられるポリビニルアルコールとの質量比は、インク受容層(A1)において69:31であり、インク受容層(A2)において82:18である。
<インク受容層(A1)塗布液>
平均一次粒子径7nm、BET法による比表面積300m2/gの特性を有する気相法シリカ100部と、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(第一工業製薬(株)社製シャロールDC902P)4部を濃度が20質量%になるように水に分散し、高圧ホモジナイザー(APVゴウリン社製、15MR−8TA型)を用いて微粒化処理を行い、平均二次粒子径が150nmの気相法シリカ分散液を作製した。この分散液に、気相法シリカ100部に対し、ほう酸6部、ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500)45部、界面活性剤0.3部を順次添加し、最後に10質量%の濃度になるように水を加え、インク受容層(A1)塗布液とした。
<インク受容層(A2)塗布液>
上記<インク受容層(A1)塗布液>で用いた気相法シリカ分散液に、気相法シリカ100部に対し、ほう酸3部、ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500)22部、界面活性剤0.3部を順次添加し、最後に12質量%の濃度になるように水を加え、インク受容層(A2)塗布液とした。
実施例1の<インク受容層(A1)塗布液>のポリビニルアルコールの部数を35部に変更した以外は同様に行い、実施例2のインクジェット記録材料を得た。インク受容層(A1)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比は74:26である。
実施例1の<インク受容層(A1)塗布液>のポリビニルアルコールの部数を95部に変更した以外は同様に行い、実施例3のインクジェット記録材料を得た。インク受容層(A1)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比は51:49である。
実施例1の<インク受容層(A2)塗布液>のポリビニルアルコールの部数を11部に変更した以外は同様に行い、実施例4のインクジェット記録材料を得た。インク受容層(A2)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比は90:10である。
実施例1の<インク受容層(A2)塗布液>のポリビニルアルコールの部数を30部に変更した以外は同様に行い、実施例5のインクジェット記録材料を得た。インク受容層(A2)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比は77:23である。
実施例1のインク受容層(A1)及び(A2)に用いた気相法シリカを、平均一次粒子径が12nm、分散後の平均二次粒子径が230nmである気相法シリカに変更した以外は同様に行い、実施例6のインクジェット記録材料を得た。
(参考例1)
実施例1のインク受容層(A1)に用いた結合剤を、ポリビニルアルコールからスチレン−ブタジェン共重合体樹脂に変更し、ほう酸を抜いた以外は同様に行い、参考例1のインクジェット記録材料を得た。気相法シリカと結合剤との質量比は69:31である。
実施例1の裏塗り層の固形分塗布量を16g/m2にした以外は同様に行い、実施例8のインクジェット記録材料を得た。
実施例1の裏塗り層の固形分塗布量を4g/m2にした以外は同様に行い、実施例9のインクジェット記録材料を得た。
実施例1の裏塗り層に用いた結合剤を、ポリビニルアルコールからスチレン−ブタジェン共重合体樹脂に変更し、ほう酸を抜いた以外は同様に行い、実施例10のインクジェット記録材料を得た。
実施例1のインク受容層(A2)にマット剤としてポリスチレン粒子(平均粒径17μm)を15mg/m2となるように、裏塗り層にも20mg/m2となるように含有させ、実施例11のインクジェット記録材料を得た。
(比較例1)
実施例1のインク受容層(A1)及び(A2)に用いた気相法シリカを、平均一次粒子径が40nm、分散後の平均二次粒子径が320nmである気相法シリカに変更した以外は同様に行い、比較例1のインクジェット記録材料を得た。
(比較例2)
実施例1の<インク受容層(A1)塗布液>のポリビニルアルコールの部数を30部に変更した以外は同様に行い、比較例2のインクジェット記録材料を得た。インク受容層(A1)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比は77:23である。
(比較例3)
実施例1の<インク受容層(A1)塗布液>のポリビニルアルコールの部数を120部に変更した以外は同様に行い、比較例3のインクジェット記録材料を得た。インク受容層(A1)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比は45:55である。
(比較例4)
実施例1の<インク受容層(A2)塗布液>のポリビニルアルコールの部数を2部に変更した以外は同様に行い、比較例4のインクジェット記録材料を得た。インク受容層(A2)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比は98:2である。
(比較例5)
実施例1の<インク受容層(A2)塗布液>のポリビニルアルコールの部数を43部に変更した以外は同様に行い、比較例5のインクジェット記録材料を得た。インク受容層(A2)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比は70:30である。
(比較例6)
実施例1のインク受容層(A1)を設けなかった以外は同様に行い、比較例6のインクジェット記録材料を得た。
(比較例7)
実施例1のインク受容層(A2)を設けなかった以外は同様に行い、比較例7のインクジェット記録材料を得た。
(比較例8)
実施例1の裏塗り層の固形分塗布量を20g/m2にした以外は同様に行い、比較例8のインクジェット記録材料を得た。
(比較例9)
実施例1の裏塗り層の固形分塗布量を2g/m2にした以外は同様に行い、比較例9のインクジェット記録材料を得た。
(比較例10)
実施例1の裏塗り層に含有されるコロイダルシリカを、湿式法シリカ(水澤化学工業社製、ミズカシルP−527、平均二次粒子径1.6μm)に変更した以外は同様に行い、比較例10のインクジェット記録材料を得た。
(比較例11)
実施例1の裏塗り層に含有されるコロイダルシリカを抜いた以外は同様に行い、比較例11のインクジェット記録材料を得た。
(比較例12)
実施例1の裏塗り層を設けなかった以外は同様に行い、比較例12のインクジェット記録材料を得た。
上記のようにして作製したインクジェット記録材料について下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
<透明性>
透明性は作製したインクジェット記録材料のヘイズ値を測定して評価した。ヘイズ値の測定は、日本精密光学株式会社製POIC HAZEMETER SEP−HS−D1を用いて行った。
○:ヘイズ値が10%以下であり、高い透明性が得られている。
△:ヘイズ値が10〜20%の範囲であり、やや透明性が低いが実用上問題なし。
×:ヘイズ値が20%以上であり、透明性が低く実使用不可。
<インク吸収性>
インクジェット記録材料のインク受容面に23℃、50%RHの条件でセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−7000Cでカラー(C、M、Y)文字を印刷し、インク滲み性を評価した。
○:文字が滲むことなく認識するのも問題なし。
△:若干の文字滲みはあるが、認識するのには問題なし。
×:文字が大きく滲んで文字の認識ができない。
<印刷部のひび割れ>
インクジェット記録材料のインク受容面に23℃、50%RHの条件でセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−7000Cでカラー(C、M、Y)及び黒でベタを印刷し、3日間静置した後に印刷部のひび割れを観察した。
○:印刷部のひび割れはなく問題なし。
△:若干の印刷部のひび割れはあるが、実用上問題なし。
×:印刷部がひび割れ、画像に大きな悪影響がある。
<印刷後の耐ブロッキング性>
インクジェット記録材料のインク受容面に23℃、50%RHの条件でセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−7000Cでカラー(C、M、Y)及び黒でベタを印刷し、インクが完全に吸収された直後に、印刷面を同じ材料の裏面と重ね、同様にして50枚重ねた後、40℃で24時間放置した後の耐ブロッキング性を評価した。
○:全くブロッキングしない。
△:ややブロッキング気味であるが実用可。
×:ブロッキングが大きく実使用不可。
<印刷後の耐裏写り性>
上記<印刷後の耐ブロッキング性>の評価後に、インク、及びインク由来の水、溶剤の裏写りを観察して評価した。
○:全く裏写りがない。
△:やや裏写りがあるが実用可。
×:裏写りが大きく実使用不可。
<インク受容層と透明性支持体との接着強度>
13℃、20%RHの条件でインク受容面を外にしてインクジェット記録材料を折り曲げ、その部分のインク受容層の剥離の程度を観察した。また、裁断によるエッジからの粉落ちの観察、セロテープによる剥離試験を行い、総合的にインク受容層と透明性支持体との接着強度を評価した。
○:インク受容層の剥離は発生せず接着強度に優れている。
△:大きく折り曲げたときにインク受容層が若干剥離したり、裁断時にエッジが若干 剥離したりするが、実用上問題なし。
×:容易にインク受容層が剥離し、実用に耐えられない。
<耐カール性>
得られたインクジェット記録材料を297mm×420mmの大きさに裁断し、13℃、20%RHの雰囲気下で未印字の記録材料の四隅のカールの平均値を以下のように判定した。なお、インク受容面側へのカールをプラス(+)側へのカール、裏塗り面側へのカールをマイナス(−)側へのカールとした。
○:−5mm〜+5mmの範囲にある。
△:−10mm〜+10mmの範囲にある。
×:±10mmを越えるカールが生じている。
<真空引き適性>
得られたインクジェット記録材料を297mm×420mmの大きさに裁断し、インク受容面にセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−7000Cを用いて種々の太さの細線を含む画像を印刷した。印刷後の記録材料の記録面を、印刷版の感光面と重ね合わせ、露光装置(株式会社オーク製作所製HMW201)内にセットし、露光装置を真空引きし、一定の真空引き時間を経た後に最終的に印刷版に形成された画像を観察した。
○:細線の再現性も良好で滲みが全くみられない。
△:細線に僅かに滲みがあるが実用上問題なし。
×:細線の滲みが大きく画像もぼやけており、実用に耐えられない。
Figure 0004504297

上記結果から、透明性支持体の片面に、平均二次粒子径が300nm以下の気相法シリカと結合剤とが含有される少なくとも2層からなるインク受容層(A)を設けたインクジェット記録材料において、該インク受容層(A)のうち該透明性支持体に最も近いインク受容層(A1)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比が75:25〜50:50であり、該インク受容層(A)のうち該透明性支持体に最も遠いインク受容層(A2)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比が95:5〜75:25であり、かつ該インク受容層(A)の設けられた面の反対側の面に、コロイダルシリカと結合剤とが含有される裏塗り層が、固形分塗布量で3〜15g/m2の範囲で設けられていることにより、透明性、インク吸収性、インク受容層と透明性支持体との接着強度、耐カール性、耐裏写り性を兼ね備えたインクジェット記録材料を得ることができた。接着強度を大幅に改良できたことにより、記録材料が折れたり曲がったりすることで塗層剥離の発生頻度の高かった大判で用いられる用途でも好適なインクジェット記録材料となった。インク受容面がマット化されていることで真空引き適性にも優れていた実施例11のインクジェット記録材料は、裏塗り層もマット化されていることにより、裏塗り層を設けた面を印刷版の感光面と重ね合わせた場合でも優れた真空引き適性を示しており、印刷版版下フィルム用として特に好ましい態様である。
一方、平均二次粒子径が300nmより大きい気相法シリカを用いた比較例1のインクジェット記録材料は、透明性が低く、印刷部のインクの滲みが大きいものであった。また、比較例2のインクジェット記録材料は、インク受容層(A1)の結合剤量が不足していることにより十分な接着強度を得られなかった。次に、比較例3のインクジェット記録材料は、インク受容層(A1)の結合剤量が過剰であることにより、ベタ印刷部にひび割れが発生して画像に大きな悪影響を与える結果となった。次に、比較例4のインクジェット記録材料は、インク受容層(A2)の結合剤量が不足していることにより塗布面に微細なひび割れを起こしたことにより透明性が低く、印刷部のインクの滲みも大きく、また、インク受容面側へのカールも大きすぎるものであった。次に、比較例5のインクジェット記録材料は、インク受容層(A2)の結合剤量が過剰であることにより、インク吸収性に劣っていた。次に、インク受容層(A1)を設けなかった比較例6のインクジェット記録材料は、インク受容層が透明性支持体から容易に剥離してしまい、インクジェット記録材料として実使用に耐えられるレベルではなかった。次に、インク受容層(A2)を設けなかった比較例7のインクジェット記録材料は、インク吸収性が大きく不足していた。次に、裏塗り層の固形分塗布量を20g/m2とした比較例8、及び2g/m2とした比較例9のインクジェット記録材料は各々マイナス側、プラス側へのカールが大きすぎることで、プリンター搬送性にも悪影響を与えた。次に、裏塗り層に含有されるコロイダルシリカを湿式法シリカに変更した比較例10のインクジェット記録材料は、裏塗り層の透明性が低く、耐ブロッキング性にも劣り、さらに、水、溶剤が裏写りした部分が容易に視認されてしまうものであった。次に、裏塗り層にコロイダルシリカを含有していない比較例11のインクジェット記録材料は、印刷後の耐ブロッキング性に劣っていた。最後に、裏塗り層を設けなかった比較例12のインクジェット記録材料は、耐ブロッキング性、耐裏写り性、耐カール性に劣っていた。

Claims (2)

  1. 透明性支持体の片面に、平均二次粒子径が300nm以下の気相法シリカと結合剤とが含有される少なくとも2層からなるインク受容層(A)を設けたインクジェット記録材料において、該透明性支持体のインク受容層塗布面に天然樹脂または合成樹脂を主体とするプライマー層を有し、該インク受容層(A)のうち該透明性支持体に最も近いインク受容層(A1)に含有される気相法シリカと結合剤としてポリビニルアルコールとの質量比が75:25〜50:50であり、該インク受容層(A)のうち該透明性支持体に最も遠いインク受容層(A2)に含有される気相法シリカと結合剤との質量比が95:5〜75:25であり、かつ該インク受容層(A)の設けられた面の反対側の面に、コロイダルシリカと結合剤とが含有される裏塗り層が、固形分塗布量で3〜18g/mの範囲で設けられていることを特徴とするインクジェット記録材料。
  2. 前記インク受容層(A)のうち前記透明性支持体に最も遠いインク受容層(A2)及び/または前記裏塗り層に、平均二次粒子径が3〜20μmのマット剤が含有される請求項1に記載のインクジェット記録材料。
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