JP3862586B2 - インクジェット用記録材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、両面にインク受理層を有するインクジェット用記録材料に関し、さらに詳しくは、片面は高光沢でフォトライクな画質を有し、プリンターでの連続搬送を行った際の擦れキズもつきにくく、他面は、印字した際のインクの滲みも少なく、筆記性を有し、塗層の強度も強く、製造上の塗液の塗布性にも優れており、シート状の記録材料としては、カール性が優れており、印字した後、重ねて輸送する場合にも印字部分に傷の発生も無く、両面印字する場合に後で印字する時にもプリンター搬送性が良好で、ハガキ用途にも使用できる インクジェット用記録材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料をポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク吸収層を設けてなる記録材料が知られている。
【0003】
例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
【0004】
また、特公平3−56552号、特開平2−188287号、同平10−81064号、同平10−119423号、同平10−175365号、同平10−193776号、同10−203006号、同10−217601号、同平11−20300号、同平11−20306号、同平11−34481号公報等公報には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと称す)を用いることが開示されている。この気相法シリカは、一次粒子の平均粒径が数nm〜数十nmの超微粒子であり、高い光沢が得られるという特徴がある。しかし超微粒子であるが故に、インク受理層表面に傷が発生しやすく、プリンター等での搬送時に重送の問題、および印字したシートを重ねて揃えるときに滑りにくい問題、印字したシートを重ねて輸送する場合に印字部に傷が発生する問題がある。
【0005】
特開平6−55830号公報には、インク受容性被覆層の反対面に特定の滑剤を含有させてプリンターの搬送性を向上させる記録用紙が提案されているが、保存時のブロッキング性の問題、インク受容面の傷の問題がある。また、特開平7−179025号公報には、支持体の裏塗り層に球状微粒子ポリマーを含有させる記録シートが提案されているが、球状微粒子ポリマー単独では製造時、加工時等でインク受容層表面に傷がつきやすく、特にインク受理層に微細な無機微粒子を用いた場合には印字部に傷が目立ちやすい問題がある。
【0006】
一方、インクジェット記録材料の支持体としては、従来、紙が一般的に用いられており、紙自体にインク吸収層としての役割を持たせていた。近年、フォトライクの記録シートが要望される中、紙支持体を用いた記録シートは、光沢、質感、耐水性、印字後のコックリング(皺あるいは波打ち)等の問題があり、耐水性加工された紙支持体、例えば、紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂ラミネート紙(ポリオレフィン樹脂被覆紙)、プラスチックフィルム等が用いられるようになってきた。しかしながら、これらの耐水性支持体は、紙支持体と違ってインク受理層を設けた表面の平滑性が高く、裏面と重ねた場合に擦れによるインク受理面に傷が発生しやすく、印字したシートを重ねて輸送する場合に印字部に傷が発生しやすい。インクジェット印字時に重送や空送りが発生しやすく、印字したシートを重ねて揃える場合に滑りにくい問題が有った。特に両面印字で後で印字する場合に重送が発生しやすかった。
【0007】
特に、ハガキのように両面がインクジェット記録適性を有し、表面にフォトライクな高い光沢性、印字画質が要求される場合には表面での搬送性、耐傷性の改良には特に光沢性の低下による制限が有るために難しく、更に表面の高い光沢性を有するインク受理層面に印字した後で反対面のインク受理層面に印字する場合に搬送性が低下し、空送りや重送が発生する問題が発生した。特開平8−260382号公報には、紙基材に顔料層を設けるインクジェット記録用両面記録紙が提案されているが十分な光沢性、印字画像が得られなかった。特開平8−11422号公報にはインク受理層を有する原紙をポリオレフィン樹脂ラミネート層で貼り合わせる提案がなされたが、特に高光沢なインク受容層を有する場合の貼り合わせ時の傷の発生が懸念され、プリンター搬送性や耐傷性についても十分ではなかった。特開2000−301823号公報には紙基材の一方の面に比較的薄い疎水性樹脂層を介して多孔性のインク吸収層を有し、他面に直接インク吸収層を有するインクジェット記録用紙の提案がなされており、好ましい態様として平均粒径が5μm以上のマット剤を多孔性のインク吸収層に含有する記載が有るが、充分な耐傷性を得るには光沢性の低下が大きく、片面印字後に反対面に印字する場合に発生する重送や空送りといった搬送性の低下についての記載や改良についての対応記載は無い。
【0008】
また、特開平11−301095号、特開平11−301106号公報等に開示のごとく、両面印字可能なインクジェット記録用紙として、紙を張り合わせるものや、インク受理層を両面に設けるものが提案されている。
【0009】
前述したような両面印字可能なインクジェット記録用紙では、ハガキやカードとして使われることもあり、光沢面は写真同等の高品位の画像が必要とされる。一方、バックコート面では、鉛筆、シャープペン、ボールペン、万年筆などの筆記性も要求され、さらにインクジェットでの印字も可能である必要がある。また雨水等に対する耐水性等も必要とされる。さらにハガキとして印字を行う際は、まとめた枚数での印字を行うことが多く、プリンターでの搬送性や塗層の粉落ち等の問題もある、前述した紙を張り合わせるものや、インク受理層を両面に設けるものでは、全ての問題を満足できるものではなかった。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、片面のインク受理層が高光沢で、耐傷性が良好なフォトライクな画質と良好な触感が得られ、他面は、高いインク吸収性を有し、カラー印字した際の滲みも少なく、塗層の強度も強く、塗液の塗布性にも優れ、高い筆記性を有するものであり、シート状の記録材料としては、カール性が優れており、両面印字する場合でも後で印字する時の重送等の搬送性の問題も無いインクジェット用記録材料を提供する事にある。また印字したシートを重ねて輸送する場合にも印字部に傷の発生が無いインクジェット用記録材料を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、耐水性支持体の片面に平均一次粒径が100nm以下の無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも1層のインク受理層Aを設け、他面に少なくとも2層以上のインク受理層Bを設け、該インク受理層Bの耐水性支持体から最も遠い最上層B2(以後「裏のインク受理層中の最上層」と記載する)が平均粒径1〜10μmの無機微粒子とポリビニルアルコールを含有し、耐水性支持体に近い下層B1(以後「裏のインク受理層中の下層」)に平均一次粒径が100nm以下の無機微粒子と親水性バインダーを含有し、裏のインク受理層中の最上層B2の固形分塗布量が0.5〜5g/m2であることを特徴とするインクジェット用記録材料により基本的に達成された。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用される耐水性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアサテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙と樹脂フィルムを貼り合わせたもの、紙の少なくとも片面にポリオレフィン樹脂等の疎水性樹脂をラミネートした樹脂被覆紙が挙げられる。耐水性支持体の厚みは50〜300μm、好ましくは100〜260μmのものが用いられ、インク受理層面の光沢性からは耐水性支持体面のJIS−B0601で規定されるカットオフ値が0.8mmでの中心線平均粗さ(Ra)は2.6μm以下であり、2μm以下が好ましい。以降、RaはJIS−B−0601で規定されるカットオフ値が0.8mmでの中心線平均粗さを表す。
【0013】
本発明に好ましく用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙支持体(以降、樹脂被覆紙と称す)について詳細に説明する。本発明に用いられる樹脂被覆紙は、その含水率は特に限定しないが、カール性より好ましくは5.0〜9.0%の範囲であり、より好ましくは6.0〜9.0%の範囲である。樹脂被覆紙の含水率は、任意の水分測定法を用いて測定することができる。例えば、赤外線水分計、絶乾重量法、誘電率法、カールフィッシャー法等を用いることができる。
【0014】
樹脂被覆紙を構成する基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。基紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この基紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0015】
さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0016】
また、基紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/m2が好ましい。
【0017】
基紙を被覆するポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0018】
また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0019】
樹脂被覆紙の主な製造方法としては、走行する基紙上にポリオレフィン樹脂を加熱溶融した状態で流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、その少なくとも片面が樹脂により被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。基本的には裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点からは樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。また、樹脂被覆層の厚みとしては特に制限はないが、一般に片面で5〜50μmの厚みに表面または表裏両面にコーティングされる。片面だけを樹脂被覆する場合には、得られるインクジェット記録材料のカール性からは樹脂被覆層の厚みは5〜25μm程度が好ましい。
【0020】
本発明の樹脂被覆紙の表のインク受理層が塗設される面(以後樹脂被覆紙の表面と称す)は、主として原紙の片面にポリオレフィン樹脂を押出機で加熱溶融し、基紙とクーリングロールとの間にフィルム状に押出し、圧着、冷却して製造される。この際、クーリングロールはポリオレフィン樹脂コーティング層の表面形状の形成に使用され、樹脂層の表面はクーリングロール表面の形状により鏡面、微粗面、またはパターン化された絹目状やマット状等に型付け加工することが出来、プリンターの搬送性からは型付け加工が好ましいが、インク受理層面の光沢性からはRaは2.6μm以下であり、2μm以下が好ましく、特に1.8μm以下が好ましい。
【0021】
本発明の樹脂被覆紙の表のインク受理層の塗設される面の反対面(以後樹脂被覆紙の裏面と称する)は、基紙面のままでも良いが、カール性や印字画像の向上からは主としてポリオレフィン樹脂を押出機で加熱溶融し、基紙とクーリングロールとの間にフィルム状に押出し、圧着、冷却して製造される。この際プリンターでの搬送性や、裏面にもインク受理層を設ける場合の印字画像からはクーリングロールはRaが0.3〜5μm、好ましくは0.8〜4μmになるようにクーリングロール表面の形状により微粗面、またはパターン化された、例えば絹目状やマット状等に型付け加工することが好ましい。
【0022】
基紙の表面や裏面に樹脂被覆層を設ける方法は、加熱溶融樹脂を押し出して塗設する以外に電子線硬化樹脂を塗設後、電子線を照射する方法や、ポリオレフィン樹脂エマルジョンの塗液を塗設後乾燥、表面平滑化処理を施す方法等が有る。いずれも凹凸を有する熱ロール等での型付けを行うことで本発明に適応可能な樹脂被覆紙が得られる。
【0023】
本発明に用いられる樹脂被覆紙の表面、裏面には下引き層を設けても良い。この下引き層は、インク受理層が塗設される前に、予め支持体の樹脂層表面に塗布乾燥されたものである。この下引き層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/m2が好ましく、20〜300mg/m2がより好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。また、樹脂被覆紙に下引き層を塗布する前には、コロナ放電することが好ましい。
【0024】
本発明の表のインク受理層に用いられる平均一次粒径が100nm以下の無機微粒子は、気相法シリカ等の合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等が使用される。好ましくは、平均一次粒径が3〜50nmの気相法シリカ、アルミナ、およびアルミナ水和物の少なくとも1種が使用される。
【0025】
本発明において、表のインク受理層に用いられる塗布量は、一般的には5〜50g/m2でであり、好ましくは固形分として10〜40g/m2であり、より好ましくは13〜35g/m2の範囲である。含有量が上記範囲でひび割れが、インク吸収性が良好となる。
【0026】
本発明に用いられる合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、▲1▼ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または▲2▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、▲3▼シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数μmから10μm位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には▲4▼シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。
【0027】
本発明に好ましく用いられる気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0028】
本発明の気相法シリカの一次粒子の平均粒径は、5〜50nmが好ましく、より高い光沢を得るためには、5〜20nmでかつBET法による比表面積が90〜400m2/gのものを用いるのが好ましい。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0029】
気相法シリカを用いるとインク吸収性が良好で光沢性が高い記録材料が得られる反面、シリカ表面のシラノール基が少ない為か二次粒子の凝集性が弱く、傷がつきやすい欠点を有している。この欠点により表裏面こすれによる傷の発生等が問題となるが本発明により改良される。
【0030】
本発明のアルミナとしては酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で50〜300nm程度まで粉砕したものが好ましく使用出来る。
【0031】
本発明で好ましく使用されるアルミナ水和物は、Al2O3・nH2O(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。
【0032】
本発明に用いられるアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径は、5〜50nmが好ましく、より高い光沢を得るためには、5〜20nmでかつ平均アスペクト比(平均厚さに対する平均粒径の比)が2以上の平板状の粒子を用いるのが好ましい。
【0033】
本発明の表のインク受理層は目的別に2層以上とするのが好ましく、最上層は光沢性と耐傷性の向上を目的とし、下層にはインク吸収性の向上を目的とする。
【0034】
本発明の表のインク受理層には耐傷性、搬送性、ブロッキング性の改良のために平均粒径が1〜7μmの球状粒子の少なくとも1種と10μm以上の球状粒子の少なくとも1種を含有させるほうが好ましい。平均一次粒径が10μm以上の球状粒子はインク受理層の膜厚よりも大きいことが好ましく、上限は40μm程度である。特に表のインク受理層を2層以上とし、最上層に前記の2種の球状粒子を含有させるほうが耐傷性、光沢性からは好ましく、10μm以上の粒子の平均粒径は最上層の膜厚より大きいことが好ましいが、インク受容層から10μmより大きく突出しないほうが触感からは好ましい。特に最上層が無機微粒子を1〜10g/m2含有し、平均一次粒径1〜7μmと10μm以上の球状粒子を合計で0.005〜0.2g/m2含有する場合には耐傷性、搬送性が良好でインク吸収性、光沢性に優れたものが得られる。特にハガキ用途で宛名面である裏のインク受理層に印刷する場合に表のインク受理層に傷が発生するのを防止出来るので好ましい。この場合の印刷とは、凸版方式、凹版方式、平版方式による印刷であり、インク受理層と印刷機のロール等との擦れによる傷が発生しやすい。
【0035】
平均一次粒径が1〜7μmと10μm以上の球状粒子を併用することで各々を単独で用いた場合よりも耐傷性、搬送性が良好となる理由は以下のように推測される。即ち、10μm以上の球状粒子単独でもインク受理層表面に凸部が発生するので耐傷性、ブロッキング性は良化するが、併用する事で1〜7μmの球状粒子が10μm以上の球状粒子に加わった外力に対する緩衝剤として働くために耐傷性と搬送性が大幅に向上すると予測される。
【0036】
本発明の表のインク受理層には、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類等の公知の耐光性改良剤を添加することにより耐光性が改良される。その他、塗布性向上のための界面活性剤、消泡剤、着色剤等も添加可能である。
【0037】
本発明の表のインク受理層には、皮膜としての特性を維持するためと、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、澱粉類、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0038】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0039】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0040】
本発明の表のインク受理層は、全体では親水性バインダーを無機微粒子に対して8〜30質量%、好ましくは10〜25質量%含有することが望ましい。
【0041】
本発明の裏のインク受理層は目的別に2層以上とする必要があり、最上層は筆記性と耐傷性の向上、搬送性の向上を目的とし、下層にはインク吸収性の向上、製造上での塗布性の向上、塗層強度の向上を目的とする。
【0042】
本発明の裏のインク受理層中の最上層に使用される平均粒径が1〜10μmの無機粒子としては、シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、クレー、カオリン、タルク等が挙げられるが、特に好ましくは湿式シリカである。使用される無機粒子の平均粒子径は手触り感や印字面質、及び表のインク受容層の耐傷性からは1〜10μmが好ましく、特に3〜7μmがより好ましい。1μmより小さい場合には、インクの吸収容量が不足するためインク滲み性が悪化し、筆記性も充分でなく、10μmより大きい場合には、搬送性、表の耐傷性が充分でなくなる。
【0043】
本発明の裏のインク受理層中の最上層の塗布量は固形分として、0.5〜5g/m2であり、好ましくは1〜3g/m2である。上記範囲により筆記性、インク吸収性が良好となる。0.5g/m2より少ない場合には、筆記性や裏のインク受理層のインク滲み性が悪化し、5g/m2より多い場合には、塗層強度や裏のインク受理層のインク滲み性が悪化する。
【0044】
本発明の裏のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコール含有量は、一般的には無機微粒子に対して固形分で20〜80質量%であり、好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは40〜60質量%である。上記範囲により筆記性、皮膜強度、インク滲み性、搬送性が良好となる。
【0045】
本発明の裏のインク受理層中の下層に用いられる平均一次粒径が100nm以下の無機微粒子は、気相法シリカ等の合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等が使用される。好ましくは、平均一次粒径が3〜50nmの気相法シリカ、アルミナ、およびアルミナ水和物の少なくとも1種が使用される。インク受理層中の下層に100nm以下の無機微粒子を設けることにより、インク受理層中の下層でインクの横への広がりが起こりにくく、より鮮明な印字が可能となる。下層に平均一次粒径100nmより大きい無機微粒子を用いるとインク滲みが発生する理由は、以下と推測される。すなわちインク受理層中の下層にインク受理層中の最上層の無機微粒子と同等以上である1μm以上の無機微粒子を用いた場合には、インク受理層中の下層とインク受理層中の最上層との層間にてインクの吸収速度が減少し、結果としてインクの滲みが発生する。100nm〜1μmの無機微粒子を用いた場合には、インク受理層中の下層でインクの横への広がりが起こりやすく、鮮明な印字が困難となり、結果としてインク滲みが発生する。
【0046】
本発明において、裏のインク受理層中の下層に用いられる塗布量は、一般的には、固形分として5〜30g/m2であり、好ましくは、5〜25g/m2であり、より好ましくは8〜20g/m2である。上記範囲により、ひび割れとインク吸収性が良好となる。
【0047】
本発明の裏のインク受理層中の下層の親水性バインダーは、表のインク受理層と同じ理由で、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られ、比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、澱粉類、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0048】
本発明の裏のインク受理層中の下層の親水性バインダーは、カールの観点より表のインク受理層に用いられた親水性バインダーと同じ種類の親水性バインダーが好ましい。例としてポリビニルアルコールの場合、特にケン化度や重合度は同じでなくても問題ない。異なる親水性バインダーを用いた場合には、裏のインク受理層中の最上層と同じ理由により表のインク受理層に用いられた親水性バインダーと同じ種類の親水性バインダーが好ましい。
【0049】
本発明において好ましくは、インク受理層に水溶性の金属化合物を含有することによって、ひび割れを防止することができる。従って、インク吸収性を向上させるために親水性バインダー量の更なる低減及び無機微粒子付着量の更なる増量が可能となる。
【0050】
水溶性の金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩として、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0051】
本発明において好ましくは、インク受理層に耐水性を向上させるためにカチオンポリマーを含有させるのが好ましい。カチオンポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000以上が好ましく、更に5,000〜10万程度が好ましい。
【0052】
これらのカチオンポリマーの使用量は、表のインク受理層、裏のインク受理層ともに無機粒子に対して0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%である。
【0053】
本発明において好ましくは、インク受理層に皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することができる。そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01重量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
【0054】
本発明において、インク受理層には、親水性バインダーと共に硬膜剤を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する親水性バインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0055】
本発明において、インク受理層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0056】
本発明において、表のインク受理層、及び裏のインク受理層の塗布方法は、特に限定されないが、表のインク受理層が2層以上の場合で同時塗布する場合は、スライドビードコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター等の塗布装置が使用出来、連続塗布の場合は、上記の塗布装置の組み合わせや、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター等と上記の塗布装置により連続で塗布することができる。本発明で同時塗布とは各層をほぼ同時に塗布することであり、連続塗布とは下層塗布後乾燥工程無しで短時間後(通常十秒程度以内)に連続で上層を塗布することである。インク受理層の均一性からは同時塗布するほうが好ましい。
【0057】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0058】
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/m2になるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cm3の低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて微粗面被覆層を設け、他面も同様にして両面に押出被覆層を設け、その上に表のインク受理層と裏のインク受理層を設けた。
【0059】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙の表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/m2となるように塗布乾燥して支持体を作成した。尚、部とは、質量部を表す。
【0060】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0061】
上記樹脂被覆紙の裏面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の裏のインク受理層中の最下層塗布液をスライド塗布テストコーターにて固形分で15g/m2、裏のインク受理層中の最上層塗布液をスライド塗布テストコーターにて固形分で1.5g/m2になるように塗布、乾燥した。続いて樹脂被覆紙の表面に下記の表のインク受容層中の最下層の塗布液をスライド塗布テストコーターにて塗布量が固形分で19g/m2に、表のインク受容層中の最上層の塗布液を塗布量が固形分で4g/m2になるように塗布、乾燥した。
【0062】
<裏のインク受理層中の最上層塗布液>
湿式シリカ 100部
(水澤化学社製P78A、平均粒径3μm)
ほう酸 8.7部
ポリビニルアルコール 50部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0063】
<裏のインク受理層中の下層塗布液>
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4部
(第一工業製薬(株)社製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0064】
<表のインク受理層中の最下層の塗布液>
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4部
(第一工業製薬(株)社製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0065】
<表のインク受理層中の最上層の塗布液>
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m2/g)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4部
(第一工業製薬(株)社製、シャロールDC902P、分子量9000)
球状粒子 0.5部
(積水化学社製ポリスチレン、SBX−17、平均一次粒径17μm)
球状粒子 1部
(積水化学社製ポリスチレン、SBX−6、平均一次粒径6μm)
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 22部
界面活性剤 0.3部
【0066】
上記のようにして作製された記録材料の搬送性、表のインク受理層の耐傷性、裏のインク滲み性、塗布性、裏の塗層強度、カール性、及び筆記性性を下記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0067】
<搬送性(白紙)>
23℃、50%RHの条件でセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−830Cで表のインク受理層と裏のインク受理層それぞれ100枚連続印字を行って搬送性を評価した。
○;重送が全く発生しなかった。
△;重送が1〜2回発生した。
×;重送が3回以上発生した。
【0068】
<搬送性(表面印字後の裏面印字の搬送性)>
23℃、50%RHの条件でセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−830Cで 表のインク受理層ににベタ印字を行い、その後裏のインク受理層に印字を行って連続搬送性を評価した。
○;重送が全く発生しなかった。
△;重送が1〜2回発生した。
×;重送が3回以上発生した。
【0069】
<表のインク受理層の耐傷性>
印字していないインクジェット用記録材料を2枚重ね、その上に100gの分銅を置いた状態で下の記録材料を抜き出した後、表のインク受理層の傷を目視で観察した。
○;表のインク受理層の傷付きが認められなかった。
△;表のインク受理層の傷付きが若干認められたが実用上は問題無し。
×;表のインク受理層の傷付きが著しく実用に耐えない。
【0070】
<インク滲み性(裏面)>
インクジェット用記録材料の裏のインク受理層面に20℃、65%RHの条件でセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−830Cで カラー(C、M、Y)文字を印字し、インク滲み性を評価した。
○;文字がつぶれることなく認識するのも問題なし。
△;若干の文字つぶれはあるが、認識するのには問題なし。
×;文字がつぶれ文字の認識ができない。
【0071】
<カール性>
インクジェット用記録材料を23℃、50%RHに8時間調湿でサンプルを静置し、四隅のカール高さを平均し評価した。
○;四隅のカール高さを平均±0〜2mm
△;四隅のカール高さを平均±2〜5mm
×;四隅のカール高さを平均±5mm以上
ただし、「+」を表のインク受理層側へのカール「−」を裏のインク受理層側へのカールとする。
【0072】
<筆記性>
インクジェット用記録材料にHBシャープペンにて文字を書き、筆記性を評価した。
○;文字を書いた時、塗膜の剥がれもなく文字認識できる。
△;文字を書いた時、塗膜の若干の剥がれがあるが文字認識できる。
×;文字を書いた時、塗膜の剥がれや濃度的に文字認識不可能である。
【0073】
<塗布性>
製造時塗布液をスライドビードコーターにて塗布する場合の塗布性を評価した。
○;問題なく塗布できる。
△;塗布時に筋状になったり、液が均一に広がりにくいが塗布は可能である。
×;塗布時に筋状になったり、液が均一に広がりにくく、塗布できない。
【0074】
<裏のインク受理層の塗層強度>
裏のインク受理層にセロハンテープを貼りその後剥がし、塗層の強度を評価した。
○;塗層が全く剥離しない。
△;若干の剥離が見られるが問題はない。
×;塗層が完全に剥離し実用上問題がある。
【0075】
実施例2
実施例1で裏のインク受理層中の最上層の固形分塗布量を1.5g/m2から0.6g/m2に変更した以外は同様にして実施例2のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0076】
実施例3
実施例1で裏のインク受理層中の最上層の固形分塗布量を1.5g/m2から4g/m2に変更した以外は同様にして実施例3のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0077】
実施例4
実施例1で裏のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコール量を無機顔料100部に対して15部とした以外は同様にして実施例4のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0078】
実施例5
実施例1で裏のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコール量を無機顔料100部に対し85部とした以外は同様にして実施例5のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0079】
実施例6
実施例1で裏のインク受理層中の最上層の湿式シリカを平均粒径3μmから8μmに変更した以外は同様にして実施例6のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0080】
実施例7
実施例1で表のインク受理層中の最上層をなくし、最下層の気相法シリカを固形分23g/m2になるようにして実施例7のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0081】
実施例8
実施例1で表のインク受理層中の最上層を下記組成とした以外は実施例1と同様にして実施例8のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0082】
<表のインク受理層中の最上層塗布液>
アルミナ水和物 100部
(擬ベーマイト、平均一次粒径15nm、アスペクト比5の平板状)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4部
(第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、分子量9000)
球状粒子 0.5部
(旭硝子社製シリカ粒子H121、平均一次粒径12μm)
球状粒子 1部
(積水化学社製ポリスチレン、SBX−6、平均一次粒径6μm)
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 15部
界面活性剤 0.3部
【0083】
比較例1
実施例1の裏のインク受理層中の最上層をなくし、下層の塗布量を固形分で 16.5g/m2として1層塗布とした以外は、同様にして比較例1のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0084】
比較例2
実施例1の裏のインク受理層中の最上層の塗布量を、固形分で1.5g/m2から 0.3g/m2に 変更した以外は同様にして、比較例2のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0085】
比較例3
実施例1の裏のインク受理層中の最上層の塗布量を、固形分で1.5g/m2から7g/m2に変更した以外は同様にして、比較例3のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0086】
比較例4
実施例1の裏のインク受理層中の最上層の無機微粒子である平均粒径3μmの湿式シリカを平均一次粒径20nmのアルミナゾル(日産化学社製:アルミナゾル−520)に変更した以外は同様にして、比較例4のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0087】
比較例5
実施例1の裏のインク受理層中の最上層の湿式シリカを平均粒径12.5μm(水澤化学社製、P−78F)に変更した以外は同様にして、比較例5のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0088】
比較例6
実施例1で裏のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコールをゼラチン(ニッカゼラチン社製、IK−2000)に代え、配合量を50部から80部に代えてほう酸を抜いた以外は同様にして比較例6のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様にして評価した結果を表1に示す。
【0089】
比較例7
実施例1の裏のインク受理層中の下層をなくし、最上層の塗布量を固形分で 16.5g/m2として1層塗布とした以外は、同様にして比較例7のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0090】
比較例8
実施例1の裏のインク受理層中の下層の気相法シリカを平均粒径12.5μm(水澤化学社製、P−78F)の湿式シリカに変更した以外は、同様にして比較例8のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
注1;「表」は表のインク受理層「裏」は裏のインク受理層を示す。
注2;搬送性の「白紙」は、表または裏の印字時の搬送性を示し、「印字後」は、表のインク受理層を印字した後、裏のインク受理層を印字搬送するときを示す。
注3;カールでの「‐」は、裏のインク受理層方向にカールしていることを示す。
【0092】
上記結果より本発明の実施例1〜7のインクジェット用記録材料は、プリンターによる連続搬送性に優れ、裏のインク受理層のインク滲みも少なく、筆記性に優れ、且つ表のインク受理層のインク吸収性が良好で、フォトライクな画質であり、製造時、加工時及び取り扱う場合でのインク受理層の傷が付きにくい結果であった。
【0093】
裏のインク受理層中の最上層の塗布量を減少させた実施例2の記録材料では、筆記性がやや低下したが、その他品質は良好であった。裏のインク受理層中の最上層の塗布量を4g/m2まで増量した実施例3の記録材料では、裏のインク受理層のインク滲み性がやや低下したが、その他品質は良好であった。さらに裏のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコールを無機顔料に対して15部まで減少させた実施例4の記録材料では、筆記性と塗層強度がやや低下したが、その他は品質は良好であった。逆に裏のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコールを無機顔料に対して85部まで増加させた実施例5の記録材料では、表のインク受理層を印字した後の裏のインク受理層の搬送性と、裏のインク受理層のインク滲み性が低下した以外は良好な結果であった。裏のインク受理層中の最上層の湿式シリカを平均粒径9μmに変更した実施例6の記録材料では、表のインク受理層を印字した後の裏のインク受理層の搬送性と、表のインク受理層の耐傷性がやや低下した以外は、良好な結果であった。表のインク受理層中の最上層をなくした実施例7の記録材料では、表のインク受理層を印字した後の裏のインク受理層の搬送性と、表のインク受理層の耐傷性がやや低下した以外は、良好な結果であった。気相法シリカの代わりにアルミナ水和物を用いた実施例8では、実施例1と同様に良好な結果が得られた。
【0094】
裏のインク受理層中の最上層をなくし、裏のインク受理層中の下層塗布液を単層にて塗布した比較例1の記録材料では、表のインク受理層を印字した後の裏のインク受理層の搬送性と、筆記性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏のインク受理層中の最上層の塗布量を固形分で0.3g/m2に変更した比較例2の記録材料では、表のインク受理層を印字した後の裏のインク受理層の搬送性、塗布性がやや悪化したほか、筆記性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏のインク受理層中の最上層の塗布量を固形分で7g/m2に変更した比較例3の記録材料では、塗層強度がやや悪化したほか、裏のインク受理層のインク滲み性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏のインク受理層中の最上層の湿式シリカを、平均一次粒径20nmのアルミナゾルに変更した比較例4の記録材料では、搬送性がやや悪化したほか、裏のインク受理層のインク滲み性と筆記性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏のインク受理層中の最上層の湿式シリカの平均粒径を12.5μmに変更した比較例5の記録材料では、表のインク受理層を印字した後の裏のインク受理層の搬送性と、表のインク受理層の耐傷性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコールをゼラチンに変更した比較例6の記録材料では、表のインク受理層を印字した後の裏のインク受理層の搬送性と、裏のインク受理層のインク滲み性、カール性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏のインク受理層中の下層をなくし、裏のインク受理層中の最上層塗布液を単層にて塗布した比較例7の記録材料では、裏のインク受理層のインク滲み性がやや悪化したほか、塗布性、塗層強度が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏のインク受理層中の下層の気相法シリカを平均粒径12.5μmの湿式シリカに変更した比較例8の記録材料では、表のインク受理層を印字した後の裏のインク受理層の搬送性と裏のインク受理層の塗層強度がやや悪化したほか、裏のインク受理層のインク滲みと塗布性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。
【0095】
【発明の効果】
本発明によれば、プリンター搬送性、表のインク受理層の耐傷性、裏のインク受理層のインク滲み性、塗布性、塗層強度、カール性及び筆記性が良好であり、ハガキ用途でも使用可能なインクジェット用記録材料が得られた。
Claims (1)
- 耐水性支持体の片面に平均一次粒径が100nm以下の無機微粒子と親水性バインダーを含有する少なくとも1層のインク受理層(A)を設け、他面に少なくとも2層以上のインク受理層(B)を設け、該インク受理層(B)の耐水性支持体から最も遠い最上層(B2)が平均粒径1〜10μmの無機微粒子とポリビニルアルコールを含有し、耐水性支持体に近い下層(B1)が平均一次粒径が100nm以下の無機微粒子と親水性バインダーを含有し、最上層(B2)の固形分塗布量が0.5〜5g/m2であることを特徴とするインクジェット用記録材料。
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