JP2004174729A - インクジェット用記録材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】プリンター搬送性、表面のインク受理層の耐傷性、裏面のインク受理層のインク滲み性、裏面の塗層強度、及び筆記性が良好なハガキ用途でも使用可能なインクジェット用記録材料を提供する。
【解決手段】耐水性支持体の一方の面(A面)に平均一次粒径が30nm以下で平均二次粒径が300nm以下の無機顔料を主体に含有する少なくとも1層のインク受理層を設け、他方の面(B面)の耐水性支持体に近い側に少なくとも1層の無機顔料を主体に含有するインク受理層を設け、該面(B面)の前記インク受理層の上にコロイダルシリカを主体に含有する最上層を設けることを特徴とするインクジェット用記録材料。
【選択図】 なし。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐水性支持体の両面にインク受理層を有するインクジェット記載材料に関し、詳しくは、ハガキやポストカードの用途に好適なインクジェット記録材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
両面印字可能なインクジェット記録材料として、特開平8−174996号、特開2000−301823号、同2001−80208号、同2002−29147号などが開示されている。
【0003】
例えば、特開平8−174996号では、インク吸収性の基材の一方の面に、無機顔料とバインダーを主体とし、他方の面に、カチオン性物質を塗布するインクジェット記録材料が開示されている。しかし近年、フォトライクの記録シートが要望される中、紙支持体を用いた記録シートは、光沢、質感、耐水性、印字後のコックリング(皺あるいは波打ち)等の問題がある。そこで耐水性加工された紙支持体、例えば、紙の両面にポリエチレン等のポリオレフィン樹脂をラミネートした樹脂ラミネート紙(ポリオレフィン樹脂被覆紙)、プラスチックフィルム等が用いられるようになってきている。
【0004】
紙基体の片面もしくは両面を耐水加工した支持体の両面にインク受理層を設けた記録材料が、特開2000−301823号、同2001−80208号、同2001−29147号公報に開示されている(特許文献1〜3)。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−301823公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献2】
特開2001−80208号公報(第2頁〜第3頁)
【特許文献3】
特開2001−29147号公報(第2頁)
【0006】
一方、両面印字可能な記録材料は、ハガキやポストカードとして利用される。これらの用途に、前述した耐水性加工した支持体の両面にインク受理層を設けた記録材料を用いることによって、高い光沢感や質感が得られるが、更に通信面の光沢、インク吸収性を高めるために、気相法シリカやアルミナ水和物のように平均粒子経が極めて小さい無機顔料を主体に含有する多孔質のインク受理層を設けることが好ましく行われている。
【0007】
また、ハガキやポストカードの宛名面のインク受理層は、充分なインク吸収性とともに、鉛筆、ボールペン、万年筆などによる筆記性が要求される。この筆記性を付与するには、比較的大きな顔料を含有させてインク受理層の表面に凹凸を持たせる、いわゆる粗面化することが一般的に行われている。しかしながら、表面を粗面化することによって、塗層の粉落ちやプリンターのロールの摩耗などにより充分な連続搬送性が得られないことや、連続搬送時に宛名面の影響により通信面に擦れキズが発生するなどの問題がある。
【0008】
前述した特許文献1〜3の記録材料は、ハガキやポストカードなどの用途に適用した場合、通信面及び宛名面の擦れキズ、インク受理層の粉落ち、宛名面の筆記性において、充分に満足できるものではなかった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、ハガキやポストカードに好適なインクジェット記録材料を提供するものであり、より具体的には通信面は、高光沢で、宛名面との接触による通信面の耐傷性が良好でかつフォトライクな画質と良好な触感を有し、一方宛名面は、インク滲み性が良好で、塗層の強度も強く、高い筆記性を有し、かつ連続搬送適性に優れたハガキ用インクジェット記録材料を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、耐水性支持体の一方の面(A面)に平均一次粒径が30nm以下で平均二次粒径が300nm以下の無機顔料を主体に含有する少なくとも1層のインク受理層を設け、他方の面(B面)の耐水性支持体に近い側に少なくとも1層の無機顔料を主体に含有するインク受理層を設け、該面(B面)の前記インク受理層の上にコロイダルシリカを主体に含有する最上層を設けることを特徴とするインクジェット用記録材料により基本的に達成された。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録材料は、ハガキ用途に好適であり、以降ハガキ用途として説明する。本発明のインクジェット記録材料は、耐水性支持体の一方の面(A面)には、平均一次粒径が30nm以下でかつ平均二次粒径が300nm以下の無機顔料を主体に含有するインク受理層を少なくとも1層有する。該(A面)は、ハガキの通信面に相当し、以降「表面」と称す。一方、耐水性支持体の他方の面(B面)には、耐水性支持体に近い側に少なくとも1層の無機顔料を主体に含有するインク受理層を設け、該面(B面)の前記インク受理層の上にコロイダルシリカを主体に含有する最上層を有する。該面(B面)は、ハガキの宛名面に相当し、以降裏面と称す。
【0012】
本発明のインクジェット記録材料は、表面は高光沢であり、裏面は筆記性が良好で、塗層強度が強く、塗層の粉落ちなどが発生せず、プリンターの搬送ロールの摩耗もおこしにくいため、搬送耐久性に優れるものである。
【0013】
本発明の裏面のインク受理層は目的別に2層以上とする必要があり、最上層は筆記性と耐傷性の向上、連続搬送性および連続搬送耐久性の向上を目的とし、下層にはインク吸収性の向上を目的とする。裏面の最上層にコロイダルシリカを主体に含有する層を設けることにより、塗層の強度が強く、連続搬送した場合でも塗層の粉落ちが発生することなく、さらにプリンターの搬送ロールとの摩擦係数も低いため、搬送ロール自体の摩耗も少なく、その結果連続的に搬送することによっても、搬送性が悪化することはないインクジェット記録材料が得られる。さらに連続搬送時に裏面による表面への擦れキズの少ない記録材料が得られる。
【0014】
本発明の裏面の最上層で使用されるコロイダルシリカは、ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる二酸化珪素をコロイド状に水中に分散させたものであり、平均一次粒径は5〜100nm、好ましくは10〜60nm、より好ましくは20〜60nmがインク吸収性、透明性、および搬送性からは望ましい。平均一次粒径が5〜60nmと60〜100nmの2種類のコロイダルシリカを混合することにより、光沢性、耐傷性、および搬送性が良好となるので好ましい。市販の球状のものとしては、日産化学社製、スノーテックス20、スノーテックス20L等、触媒化成工業社製、カタロイドUSB等が挙げられ、鎖状のものとしては、日産化学社製、スノーテックスUP、スノーテックスOUP等が挙げられ、パールネックレス状のものとして日産化学社製、スノーテックスPS−M等が使用出来る。
【0015】
本発明において、裏面の最上層の塗布量は、コロイダルシリカの固形分として、0.2〜10g/mであり、好ましくは0.4〜8g/mであり、より好ましくは0.8〜5g/mの範囲である。この範囲では耐傷効果、インク吸収性、搬送性に優れる。
【0016】
本発明の裏面の最上層において、コロイダルシリカを主体に含有するとは、固形分率として、コロイダルシリカが全体の60重量%以上であることを指し、好ましくは、70重量%以上である。
【0017】
本発明の裏面の最上層に用いられる親水性バインダー量は、コロイダルシリカに対して、固形分比率で、0.5〜10質量%の範囲が適当であり、好ましくは1〜8質量%である。上記範囲であれば塗層強度、インク吸収性、耐傷効果、および表のインク受理層面にインクジェットで印字した後で裏のインク受容層に印字する場合の搬送性に優れる。
【0018】
本発明の裏面の耐水性支持体に近い側のインク受理層に好ましく用いられる無機顔料としては、気相法シリカ、湿式シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、クレー、カオリン、タルク等が挙げられるが、より好ましくは気相法シリカ、湿式シリカ、アルミナ、アルミナ水和物である。
【0019】
本発明において、裏面の最上層におけるコロイダルシリカの含有量は、インク吸収性の観点から、前述したような比較的少ない量にするのが好ましいが、その場合の耐水性支持体に近い下層は、凹凸のない層であることが好ましい。耐水性支持体に近い下層が凹凸の大きい層である場合、表面に均一にコロイダルシリカが構成せず、下層の凹凸が表面上にでるため、耐傷効果、搬送性が不十分となることがあるためである。従って耐水性支持体に近い下層に用いられる顔料としては、平均一次粒子径が30nm以下でかつ平均二次粒子径が300nm以下の気相法シリカまたはアルミナ、アルミナ水和物が好ましい。
【0020】
本発明において、裏面の耐水性支持体に近い側のインク受理層に用いられる無機顔料の塗布量は、固形分として4〜30g/mであり、好ましくは6〜24g/mであり、より好ましくは8〜20g/mの範囲である。含有量が上記範囲でひび割れ、インク吸収性が良好となる。
【0021】
本発明の裏面の耐水性支持体に近い側のインク受理層において、無機顔料を主体に含有するとは、固形分率として、無機顔料が全体の50重量%以上であることを指し、好ましくは、60重量%以上である。
【0022】
本発明の裏面の耐水性支持体の近い側のインク受理層において、皮膜としての特性を維持するためと、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、澱粉類、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0023】
本発明で使用される耐水性支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアサテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙と樹脂フィルムを貼り合わせたもの、紙の少なくとも片面にポリオレフィン樹脂等の疎水性樹脂をラミネートした樹脂被覆紙が挙げられる。耐水性支持体の厚みは50〜300μm、好ましくは100〜260μmのものである。表面のインク受理層の平滑性は光沢性及びプリンターの搬送性を考慮した場合、高光沢でありかつ、やや粗面化していることが好ましく、耐水性支持体面のJIS−B0601で規定されるカットオフ値が、0.8mmでの中心線平均粗さ(Ra)は0.3μm〜2.6μmであり、好ましくは、0.5〜2.0μmである。
【0024】
本発明に好ましく用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙支持体(以降、樹脂被覆紙と称す)について詳細に説明する。本発明に用いられる樹脂被覆紙は、その含水率は、カール性より好ましくは5.0〜9.0%の範囲であり、より好ましくは6.0〜9.0%の範囲である。樹脂被覆紙の含水率は、任意の水分測定法を用いて測定することができる。例えば、赤外線水分計、絶乾重量法、誘電率法、カールフィッシャー法等を用いることができる。
【0025】
樹脂被覆紙を構成する基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。基紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この基紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
【0026】
さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
【0027】
また、基紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/mが好ましい。
【0028】
基紙を被覆するポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
【0029】
また、樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
【0030】
樹脂被覆紙の主な製造方法としては、走行する基紙上にポリオレフィン樹脂を加熱溶融した状態で流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、その少なくとも片面が樹脂により被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。基本的には裏面に樹脂を被覆する必要はないが、カール防止の点からは樹脂被覆したほうが好ましい。裏面は通常無光沢面であり、表面あるいは必要に応じて表裏両面にもコロナ放電処理、火炎処理などの活性処理を施すことができる。また、樹脂被覆層の厚みとしては特に制限はないが、一般に片面で5〜50μmの厚みに表面または表裏両面にコーティングされる。片面だけを樹脂被覆する場合には、得られるインクジェット記録材料のカール性からは樹脂被覆層の厚みは5〜25μm程度が好ましい。
【0031】
本発明の樹脂被覆紙の表のインク受理層が塗設される面(A面に相当し、以後樹脂被覆紙の表面と称す)は、主として原紙の片面にポリオレフィン樹脂を押出機で加熱溶融し、基紙とクーリングロールとの間にフィルム状に押出し、圧着、冷却して製造される。この際、クーリングロールはポリオレフィン樹脂コーティング層の表面形状の形成に使用され、樹脂層表面はクーリングロール表面の形状により鏡面、微粗面、またはパターン化された絹目状やマット状等に型付け加工することが出来、プリンターの搬送性からは型付け加工が好ましく、インク受理層面の光沢性を考慮するとRaは0.3μm〜2.6μmが好ましく、より好ましくは、0.5〜2.0μmである。
【0032】
本発明の樹脂被覆紙の表のインク受理層の塗設される面の反対面(B面に相当し、以後樹脂被覆紙の裏面と称する)は、基紙面のままでも良いが、カール性や印字画像の向上からは主としてポリオレフィン樹脂を押出機で加熱溶融し、基紙とクーリングロールとの間にフィルム状に押出し、圧着、冷却して製造される。この際プリンターでの搬送性や、裏面にもインク受理層を設ける場合の印字画像からはクーリングロールはRaが0.3〜5μm、好ましくは0.8〜4μmになるようにクーリングロール表面の形状により微粗面、またはパターン化された、例えば絹目状やマット状等に型付け加工することが好ましい。
【0033】
本発明に用いられる樹脂被覆紙の表面、裏面には下引き層を設けても良い。この下引き層は、インク受理層が塗設される前に、予め支持体の樹脂層表面に塗布乾燥されたものである。この下引き層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/mが好ましく、20〜300mg/mがより好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。また、樹脂被覆紙に下引き層を塗布する前には、コロナ放電することが好ましい。
【0034】
本発明のインクジェット記録材料の表面(A面)について詳細に説明する。
本発明の表面のインク受理層に用いられる平均一次粒径が30nm以下で平均二次粒径が300nm以下のの無機顔料は、気相法シリカ等の合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン等が使用される。好ましくは、平均一次粒径が5〜20nmの気相法シリカ、アルミナ、およびアルミナ水和物の少なくとも1種が使用される。
【0035】
本発明において、表面のインク受理層に用いられる塗布量は、無機顔料の固形分として4〜40g/mでであり、好ましくは固形分として8〜30g/mであり、より好ましくは10〜27g/mの範囲である。含有量が上記範囲でひび割れが、インク吸収性が良好となる。
【0036】
本発明の表面のインク受理層において、無機顔料を主体に含有するとは、固形分率として、無機顔料が全体の50質量%以上であることを指し、好ましくは、60質量%以上である。
【0037】
本発明に用いられる合成シリカには、湿式法によるものと気相法によるものがある。通常シリカ微粒子といえば湿式法シリカを指す場合が多い。湿式法シリカとしては、▲1▼ケイ酸ナトリウムの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾル、または▲2▼このシリカゾルを加熱熟成して得られるコロイダルシリカ、▲3▼シリカゾルをゲル化させ、その生成条件を変えることによって数μmから10μm位の一次粒子がシロキサン結合をした三次元的な二次粒子となったシリカゲル、更には▲4▼シリカゾル、ケイ酸ナトリウム、アルミン酸ナトリウム等を加熱生成させて得られるもののようなケイ酸を主体とする合成ケイ酸化合物等がある。
【0038】
本発明に好ましく用いられる気相法シリカは、湿式法に対して乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、トクヤマ(株)からQSタイプとして市販されており入手することができる。
【0039】
本発明の気相法シリカの一次粒子の平均粒径は、30nm以下でかつ、二次粒径の平均粒径は、300nm以下である。二次粒径の平均粒径を300nm以下とするには、高圧ホモジナイザー等により粉砕することが好ましく、このときの粒径は、堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒度分布測定装置により測定することができる。さらにより高い光沢を得るためには、平均一次粒子経が5〜20nmでかつBET法による比表面積が90〜400m/gのものを用いるのが好ましい。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
【0040】
気相法シリカを用いるとインク吸収性が良好で光沢性が高い記録材料が得られる反面、シリカ表面のシラノール基が少ない為か二次粒子の凝集性が弱く、傷がつきやすい欠点を有している。この欠点により表裏面こすれによる傷の発生等が問題となるが本発明により改良される。
【0041】
本発明のアルミナとしては酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。γ−アルミナは一次粒子を10nm程度まで小さくすることが可能であるが、通常は、数千から数万nmの二次粒子結晶を超音波や高圧ホモジナイザー、対向衝突型ジェット粉砕機等で50〜300nm程度まで粉砕したものが好ましく使用出来る。
【0042】
本発明で好ましく使用されるアルミナ水和物は、Al・nHO(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。
【0043】
本発明に用いられるアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径は、5〜30nmが好ましく、より高い光沢を得るためには、5〜20nmでかつ平均アスペクト比(平均厚さに対する平均粒径の比)が2以上の平板状の粒子を用いるのが好ましい。
【0044】
本発明の表面のインク受理層は目的別に2層以上とするのが好ましく、最上層は光沢性と耐傷性の向上を目的とし、下層にはインク吸収性の向上を目的とする。
【0045】
本発明の表面のインク受理層を2層以上とし、最上層に平均粒径が1〜7μmの球状粒子の少なくとも1種と10μm以上の球状粒子の少なくとも1種の計2種の球状粒子を含有させるほうが耐傷性、光沢性からは好ましく、10μm以上の粒子の平均粒径は最上層の膜厚より大きいことが好ましいが、インク受理層から10μmより大きく突出しないほうが触感からは好ましい。特に最上層が無機顔料を1〜10g/m含有し、平均粒径1〜7μmと10μm以上の球状粒子を合計で0.005〜0.2g/m含有する場合には耐傷性、搬送性が良好でインク吸収性、光沢性に優れたものが得られる。特にハガキ用途で宛名面である裏のインク受理層に印刷する場合に表のインク受理層に傷が発生するのを防止出来るので好ましい。この場合の印刷とは、凸版方式、凹版方式、平版方式による印刷であり、インク受理層と印刷機のロール等との擦れによる傷が発生しやすい。
【0046】
平均粒径が1〜7μmと10μm以上の球状粒子を併用することで各々を単独で用いた場合よりも耐傷性、搬送性が良好となる理由は以下のように推測される。即ち、10μm以上の球状粒子単独でもインク受理層表面に凸部が発生するので耐傷性、ブロッキング性は良化するが、併用する事で1〜7μmの球状粒子が10μm以上の球状粒子に加わった外力に対する緩衝剤として働くために耐傷性と搬送性が大幅に向上すると予測される。
【0047】
本発明の表面のインク受理層には、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン類、ヒンダードフェノール類等の公知の耐光性改良剤を添加することにより耐光性が改良される。その他、塗布性向上のための界面活性剤、消泡剤、着色剤等も添加可能である。
【0048】
本発明の表面のインク受理層には、皮膜としての特性を維持するためと、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。ポリビニルアルコール系化合物、ポリエチレングリコール系化合物、澱粉類、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
【0049】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
【0050】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0051】
本発明の表面のインク受理層は、親水性バインダーを無機顔料に対して8〜30質量%、好ましくは10〜25質量%含有することが望ましい。
【0052】
本発明において好ましくは、表面と裏面のインク受理層に水溶性の金属化合物を含有することによって、ひび割れを防止することができる。従って、インク吸収性を向上させるために親水性バインダー量の更なる低減及び無機微粒子付着量の更なる増量が可能となる。
【0053】
水溶性の金属化合物としては、例えば水溶性の多価金属塩として、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンから選ばれる金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、フェノールスルホン酸亜鉛、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。
【0054】
本発明において好ましくは、表面と裏面のインク受理層に耐水性を向上させるためにカチオンポリマーを含有させるのが好ましい。カチオンポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリアリルアミン、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号公報等に記載された1〜3級アミノ基、4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく用いられる。これらのカチオンポリマーの分子量は、5,000以上が好ましく、更に5,000〜10万程度が好ましい。
【0055】
これらのカチオンポリマーの使用量は、表のインク受理層、裏のインク受理層ともに無機顔料に対して0.5〜10質量%、好ましくは1〜8質量%である。
【0056】
本発明において好ましくは、表面と裏面のインク受理層に皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することができる。そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01重量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは親水性バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
【0057】
本発明において、表面と裏面のインク受理層には、親水性バインダーと共に硬膜剤を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する親水性バインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。
【0058】
本発明において、表面と裏面のインク受理層には、更に、界面活性剤、硬膜剤の他に着色染料、着色顔料、インク染料の定着剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。
【0059】
本発明において、表面のインク受理層、及び裏面のインク受理層の塗布方法は、特に限定されないが、表のインク受理層が2層以上の場合で同時塗布する場合は、スライドビードコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター等の塗布装置が使用出来、連続塗布の場合は、上記の塗布装置の組み合わせや、エアーナイフコーター、ロッドコーター、ブレードコーター等と上記の塗布装置により連続で塗布することができる。本発明で同時塗布とは各層をほぼ同時に塗布することであり、連続塗布とは下層塗布後乾燥工程無しで短時間後(通常十秒程度以内)に連続で上層を塗布することである。インク受理層の均一性からは同時塗布するほうが好ましい。
【0060】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
【0061】
実施例1
<ポリオレフィン樹脂被覆紙支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5質量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0質量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0質量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5質量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。抄造した原紙に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100質量%の樹脂に対して、10質量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように表面に押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて微粗面被覆層を設け、裏面も同様にして両面に押出被覆層を設けた。なお表面のRa値は1.3μmとし、裏面のRa値は0.8μmであった。
【0062】
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙の表面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥して支持体を作成した。尚、部とは、質量部を表す。
【0063】
<下引き層>
石灰処理ゼラチン 100部
スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 2部
クロム明ばん 10部
【0064】
上記樹脂被覆紙の裏面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成のインク受理層を無機顔料の固形分で12g/m、及び下記組成の最上層をコロイダルシリカの固形分で1.5g/mになるようにスライドビードコーターにて同時重層塗布、乾燥した。続いて樹脂被覆紙の表面に下記の下層のインク受容層を無機顔料の固形分で15g/m、及び上層のインク受容層を無機顔料の塗布量が固形分で3g/mになるようにスライドビードコーターにて同時重層塗布、乾燥した。
【0065】
<裏面の最上層>
コロイダルシリカ 100部
(日産化学社製、スノーテックス20L、平均一次粒径45nm)
ポリビニルアルコール 4部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
ほう酸 2部
【0066】
<裏面のインク受理層>
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m/g、平均二次粒径150nm)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4部
(第一工業製薬(株)社製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0067】
<表面の下層のインク受理層>
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m/g、平均二次粒径150nm)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4部
(第一工業製薬(株)社製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0068】
<表面の上層のインク受理層>
気相法シリカ 100部
(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m/g、平均二次粒径150nm)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4部
(第一工業製薬(株)社製、シャロールDC902P、分子量9000)
球状粒子 0.5部
(積水化学社製ポリスチレン、SBX−17、平均一次粒径17μm)
球状粒子 1部
(積水化学社製ポリスチレン、SBX−6、平均一次粒径6μm)
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 22部
界面活性剤 0.3部
【0069】
上記のようにして作製された記録材料の搬送性、表面のインク受理層の光沢性、表面の耐傷性、裏面のインク滲み性、裏面の塗層強度、及び裏面の筆記性性を下記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0070】
<光沢(表面)>
試料の表面の未印字部の光沢性を下記の基準により目視で評価した。
○;写真用印画紙に近く非常に良好。
△;アート、コート紙のレベルで良好。
×;マット紙に近く大幅に悪い。
【0071】
<表面のインク受理層の耐傷性>
印字していないインクジェット用記録材料を2枚重ね、その上に100gの分銅を置いた状態で下の記録材料を抜き出した後、表面のインク受理層の傷を目視で観察した。
○;表面のインク受理層の傷付きが認められなかった。
△;表面のインク受理層の傷付きが若干認められたが実用上は問題無し。
×;表面のインク受理層の傷付きが著しく実用に耐えない。
【0072】
<搬送性(裏面の連続搬送耐久性)>
23℃、50%RHの条件でセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−830Cで裏面を連続搬送し、空送りが多発する枚数をカウントし、連続搬送耐久性を評価した。
○;500枚連続搬送しても空送りが全く発生しなかった。
△;200〜500枚の連続搬送の間で空送りが多発した。
×;200枚未満連続搬送でも空送りが多発した。
【0073】
<インク滲み性(裏面)>
インクジェットプリンター(セイコーエプソン社製PM−830C)を用いて、23℃、50%RHの条件でC,M,Yをそれぞれ80%で印字して、印字直後にPPC用紙を印字部に重ねて軽く圧着し、PPC用紙に転写したインク量の程度を目視で観察し、下記の基準で評価した。
○:全く転写しない。
△:少し転写する。
×:かなり転写する。
【0074】
<筆記性>
インクジェット用記録材料にHB鉛筆にて文字を書き、筆記性を評価した。
○;文字を書いた時、塗膜の剥がれもなく文字が認識できる。
△;文字を書いた時、塗膜の若干の剥がれがあるが文字が認識できる。
×;文字を書いた時、塗膜の剥がれる。もしくは文字が書けない。
【0075】
<裏面のインク受理層の塗層強度>
裏面のインク受理層に粘着テープを貼りその後剥がし、塗層がどの程度剥離するかを評価した。
○;塗層が全く剥離しない。
△;若干の剥離が見られるが問題にはならない程度である。
×;塗層が完全に剥離し実用上問題がある。
【0076】
実施例2
実施例1で裏面のインク受理層中の下層を下記組成とした以外は実施例1と同様にして実施例2のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0077】
<裏面のインク受理層中の下層塗布液>
湿式シリカ 100部
(水沢化学社製P78A、平均二次粒径3μm)
ほう酸 8.7部
ポリビニルアルコール 50部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
界面活性剤 0.3部
【0078】
実施例3
実施例1で裏面のインク受理層中の下層を下記組成とした以外は実施例1と同様にして実施例3のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0079】
<裏面のインク受理層中の下層塗布液>
アルミナ水和物 100部
(擬ベーマイト、平均一次粒径15nm、平均二次粒径150nm、アスペクト比5の平板状)
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー 4部
(第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、分子量9000)
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) 15部
界面活性剤 0.3部
【0080】
実施例4
実施例1で裏面のインク受理層中の最上層のコロイダルシリカの固形分塗布量を1.5g/mから0.1g/mに変更した以外は同様にして実施例4のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0081】
実施例5
実施例1で裏面のインク受理層中の最上層のコロイダルシリカの固形分塗布量を1.5g/mから12g/mに変更した以外は同様にして実施例5のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0082】
実施例6
実施例1で裏面のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコール量を無機顔料100部に対して0.5部とした以外は同様にして実施例6のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0083】
実施例7
実施例1で裏面のインク受理層中の最上層のポリビニルアルコール量を無機顔料100部に対し20部とした以外は同様にして実施例7のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0084】
実施例8
実施例1で表面のインク受理層中の最上層をなくし、最下層の固形分23g/mになるようにして実施例8のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0085】
比較例1
実施例1の裏面のインク受理層中の最上層をなくし、下層の塗布量を固形分で16.5g/mとして1層塗布とした以外は、同様にして比較例1のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0086】
比較例2
実施例2の裏面のインク受理層中の最上層をなくし、下層の塗布量を固形分で16.5g/mとして1層塗布とした以外は、同様にして比較例2のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0087】
比較例3
実施例3の裏面のインク受理層中の最上層をなくし、下層の塗布量を固形分で16.5g/mとして1層塗布とした以外は、同様にして比較例3のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0088】
比較例4
実施例1の裏面のインク受理層中の下層をなくし、最上層の塗布量を固形分で16.5g/mとして1層塗布とした以外は、同様にして比較例4のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0089】
比較例5
実施例1の表面のインク受理層中の上層、下層両方の無機顔料を平均一次粒径7nm、平均二次粒径150nmの気相法シリカから平均二次粒径3μmの湿式シリカとした以外は、同様にして比較例5のインクジェット用記録材料を得た。実施例1と同様に評価した結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
Figure 2004174729
【0091】
上記結果より本発明の実施例1〜8のインクジェット用記録材料は、プリンターによる連続搬送耐久性に優れ、裏のインク受理層のインク滲みも少なく、筆記性に優れ、塗層強度も充分であり、且つ表のインク受理層が、フォトライクな画質であり、製造時、加工時及び取り扱う場合でのインク受理層の傷が付きにくい結果であった。
【0092】
裏面のインク受理層中の下層の無機顔料として気相法シリカを用いて、さらに最上層をなくし、裏面のインク受理層中の下層塗布液を単層にて塗布した比較例1の記録材料では、裏面の塗層強度と、裏面を連続的に印字する際の連続搬送耐久性がやや低下したほか、表面のインク受理層の耐傷性と、筆記性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏面のインク受理層中の下層の無機顔料として湿式シリカを用いて、さらに最上層をなくし、裏面のインク受理層中の下層塗布液を単層にて塗布した比較例2の記録材料では、表面のインク受理層の耐傷性がやや低下したほか、裏面を連続的に印字する際の連続搬送耐久性と裏面の塗層強度が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏面のインク受理層中の下層の無機顔料としてアルミナを用いて、さらに最上層をなくし、裏面のインク受理層中の下層塗布液を単層にて塗布した比較例3の記録材料では、裏面の塗層強度がやや低下したほか、裏面を連続的に印字する際の連続搬送耐久性、表面のインク受理層の耐傷性、筆記性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。裏面のインク受理層中の下層塗布液をなくし、最上層塗布液を単層にて塗布した比較例4の記録材料では、裏面のインク受理層のインク滲み性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。表面のインク受理層中の上層、下層両方の無機顔料を平均一次粒径7nmの気相法シリカから平均粒径8μmの湿式シリカに変更した比較例5の記録材料では、表面の光沢性が大きく悪化し、実用上問題となるレベルであった。
【0093】
【発明の効果】
本発明によれば、プリンター搬送性、表面のインク受理層の耐傷性、裏面のインク受理層のインク滲み性、裏面の塗層強度、及び筆記性が良好であり、ハガキ用途でも使用可能なインクジェット用記録材料が得られた。

Claims (8)

  1. 耐水性支持体の一方の面(A面)に平均一次粒径が30nm以下で平均二次粒径が300nm以下の無機顔料を主体に含有する少なくとも1層のインク受理層を設け、他方の面(B面)の耐水性支持体に近い側に少なくとも1層の無機顔料を主体に含有するインク受理層を設け、該面(B面)の前記インク受理層の上にコロイダルシリカを主体に含有する最上層を設けることを特徴とするインクジェット用記録材料。
  2. 前記他方の面(B面)の最上層のコロイダルシリカを主体に含有する層のコロイダルシリカの固形分量が0.2〜10g/mである請求項1に記載のインクジェット用記録材料。
  3. 前記他方の面(B面)の最上層が親水性バインダーをコロイダルシリカに対して1〜10重量%含有する請求項1または2に記載のインクジェット用記録材料。
  4. 前記耐水性支持体が、基紙の少なくとも一方の面(A面)がポリオレフィン樹脂で被覆されている請求項1〜3の何れか1項に記載のインクジェット用記録材料。
  5. 前記一方の面(A面)のインク受理層の無機顔料が気相法シリカ、アルミナ、およびアルミナ水和物の少なくとも1種である請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット用記録材料。
  6. 前記一方の面(A面)のインク受理層が2層以上である請求項1〜5の何れか1項に記載のインクジェット用記録材料。
  7. 前記一方の面(A面)のインク受理層の耐水性支持体に最も遠い最上層が平均粒径1〜7μmの球状粒子の少なくとも1種と平均粒径10μm以上の球状粒子の少なくとも1種を含有する請求項6に記載のインクジェット用記録材料。
  8. 前記インクジェット用記録材料がハガキ用途である請求項1〜7何れか1項に記載のインクジェット用記録材料。
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