JP4504205B2 - インクジェット記録材料 - Google Patents

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Description

本発明は、インクジェット記録材料に関するものであり、特に顔料インクに適したインクジェット記録材料に関するものである。
近年、インクジェットプリンターやプロッターの目ざましい進歩により、フルカラーでしかも高精細な画像が容易に得られるようになってきた。
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙等の記録材料に付着させ、画像・文字等の記録を行うものである。インクジェットプリンターやプロッターはコンピューターにより作成した文字や各種図形等の画像情報のハードコピー作成装置として、種々の用途に於いて近年急速に普及している。特に多色インクジェット方式により形成されるカラー画像は製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較しても遜色のない記録を得ることが可能であり、更に作成部数が少ない用途に於いては、印刷技術や写真技術によるよりも安価で済むことから広く応用されつつある。
さらに、用途の多様化に伴い、大判のポスターやPOPアート、製図用途に使用されることが多くなってきている。これら用途ではインクジェットの高鮮鋭性を活かせ、色彩性も優れていることから、良好な画像を得ることが可能であり、宣伝効果が大きいものとなる。これらへの適用はパーソナルコンピュータレベルで、鮮鋭性や色彩性といった画像再現性や色再現性に優れた画像を簡単に得ることが可能であるためであり、インクジェット記録材料を多用する理由ともなっている。
これらインクジェット記録装置の高性能化や用途の多様化により、インクジェット記録に対するニーズは高まっており、その結果記録装置或いはインクジェット記録材料に求められる特性も要求もかなり高度になってきている。例えば、大判ポスターやPOPアート、また写真画像を出力する用途の場合、その用途が屋内外の展示や個人の記録保存といったものであるため、従来以上に画像の耐候性、画像保存性が求められるようになっている。このような要望に対し、インクおよびインクジェット記録材料の改良が進んでおり、従来と比べかなり良好な保存性が得られるようになってきている。しかしながら、特に耐光性に関しては未だ銀塩写真のレベルには到達しておらず、要求が満たされていないのが現状である。
このような要求を満たすために、最近では顔料タイプのインクが使用されるようになってきている。顔料インクは光劣化も少なく、水によって再溶解しないため、染料タイプのインクよりも耐候性、画像保存性が向上することが知られている。しかし、インク中の色材顔料は染料と異なり溶媒に不溶であるため、インク中の色材顔料を安定に分散させる必要があり、インク中の色材顔料の比率を容易に上げられない。また、染料インクのように着色効率が高くなく、鮮明な発色を得にくい。
そのため、インクジェット記録材料に対する要求も必然的に高まってきている。顔料インクの吸収性を向上させる方法として、支持体上に塗工するインク受理層を厚くすることが考えられる。この方法でインク吸収性は改善されるが、インクが原紙方向に深く浸透するため、インク発色性が低下する。前述したように顔料インクの場合、染料インクと比較して鮮明な発色を得にくいため、インクが深く浸透するとインク発色性は著しく低下してしまう。さらにインク受理層を有しないインクジェット記録材料ではさらにその低下は著しい。
これらインクジェット記録材料は、良好なインクジェット記録性能を得る等の目的で、無機超微粒子を含有するインクジェット記録材料が提案され、一次粒子径が3nm〜30nmである主として気相法による合成シリカを使用するインクジェット記録材料や気相法シリカとコロイダルシリカを特定の割合にて混合した塗層を多層構成とするインクジェット記録材料が開示されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
また、非吸収性支持体上に無機超微粒子、ポリビニルアルコールおよびホウ酸またはその塩を含有させた塗層を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献4〜6参照)。この方法によれば、塗層の乾燥塗工量が少ない場合には、ひび割れを発生させずに塗層を得ることができるが、インクの吸収性が低く、インク吸収性を向上させるために厚い塗層を設けるには、塗液を室温以上に加温した後に塗工する、もしくは塗工後に冷却するなどして、塗液を支持体上でセットさせ、粘度増加剤と無機超微粒子やバインダーと強固な結合を形成させた後、乾燥を行わなければならないため、生産効率が低下するうえ、塗層を厚くしてもインク吸収性は満足のいくものでは無いことがある。
インクの吸収性を向上させるために下層にシリカ多孔質層を設け、上層にアルミナまたはアルミナ水和物含有層を有するインクジェット記録材料や下層に吸収性顔料含有層、最表層に擬ベーマイトを配した記録材料が提案されている(例えば、特許文献7、8参照)。
この様な無機超微粒子を含有する光沢発現層の塗液をシリカ多孔質からなる下層上に塗工・乾燥する方法で形成する場合、光沢発現層中の無機超微粒子成分等が下層への落ち込みが発生するため、光沢発現層表面にひび割れが生じやすく、表面光沢が低下するとともに、インクジェット記録において染料インクを用いた場合は、ひび割れが多いためにインクの吸収性の向上が見られるが、染料インクに比べインク発色性の低い顔料インクにおいては、そのひび割れに顔料インクが落ち込むことにより顔料インク特性が低下することがある。
また、インク発色性を向上させるために塩基性材料を含む下塗層を設け、その上にヒュームドアルミナからなる多孔質画像受容性層を有するインクジェット記録材料が提案されている(例えば、特許文献9参照)が、塩基性材料を含む下塗層がゼラチン等のポリマー成分のみであるため、多孔質画像受容層の塗工時にポリマー成分が多孔質画像受容層中の水分により膨潤し、多孔質画像受容層の乾燥時にひずみが生じるために多孔質画像受容層にひび割れが発生し、光沢の低下および顔料インク特性が低下する事がある。
特開平10−203006号公報(第3−9頁) 特開平8−174992号公報(第3−6頁) 特開2002−274021号公報(第2−6頁) 特開平7−76161号公報(第2−3頁) 特開平10−193777号公報(第2−10頁) 特開2002−2094号公報(第2−10頁) 特開平6−55829号公報(第2−3頁) 特開平7−89216号公報(第2−6頁) 特開2002−331746号公報(第3−5頁)
本発明の課題は、インク受理層表面にひび割れを生じさせずに高い白紙部光沢性を有し、且つ顔料インクの高い吸収性とインク発色性を兼ね備えたインクジェット記録材料を提供することにある。
(1)本発明は、吸水性支持体の少なくとも片面に下塗り層、インク受理層の塗液を順次、塗工・乾燥して形成されてなるインクジェット記録材料において、該下塗り層が無機微粒子として平均二次粒子径が1.2〜12μmの湿式合成シリカ及び平均一次粒子径が5〜50nm且つ平均一次粒子径と平均二次粒子径の粒子径比率が1対1〜1対3であるコロイダルシリカ、親水性バインダー、ホウ酸またはホウ酸塩を含有し、湿式合成シリカとコロイダルシリカの質量含有比率が10対1〜10対20であり、該インク受理層が、平均一次粒子径が10〜30nm、平均二次粒子径が50〜300nmの無機超微粒子、親水性バインダー、ホウ酸またはホウ酸塩を含有し、且つインク受理層表面が光沢発現処理することなくJIS Z8741による75度鏡面光沢度が40%以上となることを特徴とするインクジェット記録材料により達成された。
(2)前記コロイダルシリカの一次粒子径が5〜50nmであることが更に好ましい。
(3)前記下塗り層の塗液のpHが8〜12であり、前記コロイダルシリカの懸濁液のpHが6〜12であることが好ましい。
(4)前記インク受理層の無機超微粒子が気相法シリカ及び擬ベーマイトアルミナの少なくとも1種であることが好ましい。
(5)前記インク受理層の平均塗層密度が0.8〜1.3g/cm以下且つ前記インク受理層の空隙量が7ml/m以上であることが好ましい。
本発明のインクジェット記録材料は、インク受理層表面にひび割れを生じさせずに高い白紙部光沢性を有し、且つ顔料インクの高い吸収性とインク発色性を兼ね備える。
以下、本発明のインクジェット記録材料を詳細に説明する。
本発明者らは、顔料インク適性を向上させる方法として、顔料インク中の溶媒と色材顔料とを分離し、顔料インク中の色材顔料を光沢発現層表面近傍に分布させ、溶媒分をインク受理層に浸透させることで、高い吸収性とインク発色性の改善が可能であると考えた。
そこで本発明者は光沢発現層表面のひび割れをなくし、顔料インク中の色材顔料成分と溶媒分を分離する手法を鋭意検討した結果、吸水性支持体の少なくとも片面に下塗り層、インク受理層の塗液を順次、塗工・乾燥して形成されてなるインクジェット記録材料において、該下塗り層が無機微粒子として平均二次粒子径が1.2〜12μmの湿式合成シリカ及び平均一次粒子径が5〜100nm且つ平均一次粒子径と平均二次粒子径の粒子径比率が1対1〜1対3であるコロイダルシリカ、親水性バインダー、ホウ酸またはホウ酸塩を含有し、湿式合成シリカとコロイダルシリカの質量含有比率が10対1〜10対20であり、該インク受理層が、平均一次粒子径が10〜30nm、平均二次粒子径が50〜300nmの無機超微粒子、親水性バインダー、ホウ酸またはホウ酸塩を含有し、且つインク受理層表面が光沢発現処理することなくJIS Z8741による75度鏡面光沢度が40%以上とすることにより解決した。
本発明でいう顔料インクとは、色材顔料、分散溶媒、その他の添加剤等からなる記録液体であり、特に限定されない。また、分散溶媒は、水および各種有機溶剤のいずれを用いたものでも良い。
以下に本発明に係わる下塗り層について説明する。
湿式法シリカは、製造方法によって沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカ等に分類される。沈降法シリカは珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造され、粒子成長したシリカ粒子が凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の行程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカ二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば東ソー・シリカ株式会社からニップシールとして、株式会社トクヤマからトクシールとして市販されている。ゲル法シリカは珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造する。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学工業株式会社からミズカシルとして、グレースジャパン株式会社からサイロジェットとして市販さている。ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られ、例えば日産化学工業株式会社からスノーテックスとして市販されている。また、その他の方法として、アルコキシド加水分解法などにより、コロイダルシリカはつくられている。
尚、本発明における湿式合成シリカとは前記の沈降法或いはゲル法により製造されたシリカを示し、コロイダルシリカとは前記のゾル法シリカやアルコキシド加水分解法により製造されたシリカを示す。
本発明において、下塗り層に用いる湿式合成シリカの粒子径範囲は1.2〜12μmである。1.2μm未満であると、シリカ粒子の凝集構造が損なわれる可能性が高くなり、また凝集構造を維持させるため比表面積を大きくした際にはバインダー必要量が著しく増加しすぎるため、インク吸収性の為好ましくない。また、12μmを超えるとインク受理層塗設時に下塗り層を充分に被覆させるために必要なインク受理層塗布量が増加しすぎる事となり、インク受理層塗膜が必要以上に厚くなりすぎ、インク受理層表面に亀裂が発生し易くなるため好ましくない。
また、下塗り層に用いるコロイダルシリカは平均一次粒子径が5〜100nmである。平均一次粒子径が5〜100nmの範囲であると下塗り層の粒子間空隙を減少させることができ、インク受理層塗設時にバインダー成分の過剰なマイグレーションを防止でき、インク受理層表面の亀裂発生を抑制できる。更には、下塗り層の平滑化及びインク受理層塗液中の無機超微粒子の下塗り層への落ち込みが抑制されるため、白紙部光沢性が向上する。
更にコロイダルシリカは無機のバインダーとして機能し、下塗り層の無機微粒子間の結合力を発現させるため、下塗り層のインク吸収性を損なう事なく、塗層強度を得ることが可能となる。この効果はコロイダルシリカの粒子径を100nm以下とすることにより、特に効果的であることを見出した。更に好ましくは50nm以下である。
また、コロイダルシリカの平均一次粒子径と平均二次粒子径の粒子径比率は1対1〜1対3である。粒子径比率が1対3をこえることはコロイダルシリカ凝集体内に空隙を生じることとなり、不必要な粒子間空隙が発生するとともに、コロイダルシリカの無機バインダーとしての効果を大きく損なうことを見出した。コロイダルシリカの粒子径比率は凝集構造を有していない1対1のものが特に好ましい。尚、一次粒子が単分散しているコロイダルシリカの二次粒子径は一次粒子径と同一とする。
尚、本発明の無機微粒子および無機超微粒子の平均一次粒子径と平均二次粒子径の測定法は電子顕微鏡写真による観察から測定した。
また、下塗り層に用いるコロイダルシリカは通常アニオン性であるため、下塗り層の塗液に用いるコロイダルシリカ懸濁液のpHは6〜12が好ましく、コロイダルシリカとの相互作用による凝集等を防止するため、下塗り層塗液のpHを8〜12に調整することが好ましい。
また、下塗り層には用いられる湿式合成シリカ及びコロイダルシリカ以外の無機微粒子を含有しても構わない。例えば、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化スズゾル、酸化ニオブゾル、酸化セリウムゾル、酸化ランタンゾル、酸化チタンゾル、酸化ネオジミュームゾル、酸化イットリウムゾル、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、アルミナ、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムなどの白色無機顔料や無機ゾルなどを用いることができる。これらの湿式合成シリカ及びコロイダルシリカ以外の無機微粒子の配合量は無機微粒子の総和に対して30質量%以下の比率であることが本発明において好ましい。
本発明において、下塗り層の乾燥塗工量の範囲は3〜30g/m、より好ましくは5〜20g/mであり、更に好ましくは5〜15g/mであるが、吸水性支持体を充分に被覆し、下塗り層の効果が得られる塗布量であれば、特に限定するものではない。
本発明において、下塗り層には、無機微粒子の他、接着剤等、さらには顔料インクと染料インクを併用するインクジェット記録方式に適用する場合には上記の他、カチオン性化合物を含有することもできる。また、これらに添加剤として、染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤力増強剤、乾燥紙力増強剤などを適宜配合することもできる。
本発明の下塗り層に用いられるバインダーとしては、例えば、酸化澱粉、エーテル化澱粉、リン酸エステル化澱粉などの澱粉誘導体;カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体;カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリビニルアルコール、またはシリル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸樹脂などの水溶性バインダー、あるいはメラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂などの水性接着剤を用いることができる。また前記水溶性バインダーのうち、接着力の点から、ポリビニルアルコール、またはシリル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体を用いることが好ましい。
また、水溶性バインダー以外のバインダーとして、例えばスチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの重合体または共重合体などのアクリル系共重合体ラテックス、エチレン酢酸ビニル共重合体などのビニル系共重合体ラテックス、あるいはこれらの各種共重合体のカルボキシ基などの官能基含有単量体による官能基変性共重合体ラテックス、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの重合体または共重合体樹脂ラテックス、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂ラテックスが挙げられ、これらの1種以上を水溶性バインダーと併用してもかまわない。これらの水溶性バインダー以外のバインダーの配合量は接着力の点から、水溶性バインダーの総和に対して、100質量%以下が好ましい。
本発明の下塗り層に使用されるバインダーの配合量としては、無機微粒子の総和に対して、5〜60質量%、好ましくは、10〜40質量%である。
本発明の下塗り層において用いられるホウ酸としては、オルトホウ酸だけでなくメタホウ酸、次ホウ酸等が使用できる。ホウ酸塩はこれらの可溶性塩が好ましく、具体的には、Na・10HO、NaBO・4H0、K・5HO、NHHB・3HO、NHBO等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明の下塗り層に用いられるホウ酸またはホウ酸塩の添加量は、HBO換算で親水性バインダーに対して0.01〜1質量%、好ましくは0.03〜0.5質量%である。
次に本発明に係わるインク受理層について説明する。
本発明のインクジェット記録材料における無機超微粒子とは、平均一次粒子径が10〜30nm、平均二次粒子径が50〜300nmの無機微粒子を示す。例えば、特開平1−97678号公報、同2−275510号公報、同3−281383号公報、同3−285814号公報、同3−285815号公報、同4−92183号公報、同4−267180号公報、同4−275917号公報などに開示されている擬ベーマイトゾルなどのアルミナ水和物、特開平8−72387公報などに記載されている気相法アルミナ、特開昭60−219083号公報、同61−19389号公報、同61−188183号公報、同63−178074号公報、特開平5−51470号公報などに記載されているようなコロイダルシリカ、特公平4−19037号公報、特開昭62−286787号公報に記載されているようなシリカ/アルミナハイブリッドゾル、特開平10−119423号公報、特開平10−217601号公報に記載されているような、気相法シリカを高速ホモジナイザーで分散したようなシリカゾル、平均二次粒子径500nm未満に粉砕した湿式合成シリカ、その他にもヘクタイト、モンモリロナイトなどのスメクタイト粘土(特開平7−81210号公報)、ジルコニアゾル、クロミアゾル、イットリアゾル、セリアゾル、酸化鉄ゾル、ジルコンゾル、酸化アルミニウムゾル、酸化アンチモンゾルなどを代表的なものとして挙げることができる。
上記の無機超微粒子の中でも特に気相法シリカ及び擬ベーマイトアルミナがより好ましい。両者とも顔料インクの色材成分と分散媒成分を分離する性能に優れており、更に気相法シリカはインク吸収性に優れ、擬ベーマイトアルミナは白紙部光沢性に優れるため、両者を適宜混合、或いは単独で用いる事が好ましい。
本発明に用いられる気相法シリカは乾式法シリカとも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって作られる。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシラン等のシラン類も単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。
本発明に用いられるアルミナ水和物は、一般式Al・nHOにより表すことができる。アルミナ水和物は組成や結晶形態の違いにより、ジプサイト、バイアライト、ノルストランダイト、ベーマイト、ベーマイトゲル(擬ベーマイト)、ジアスポア、無定形非晶質等に分類される。中でも、上記の式中、nの値が1である場合はベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1を越え3未満である場合は擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが3以上では非晶質構造のアルミナ水和物を表す。特に、本発明に好ましいアルミナ水和物は、少なくともnが1を越え3未満の擬ベーマイト構造のアルミナ水和物である。
また、アルミナ水和物の分散液を安定化させるために、通常は種々の酸類が分散液に添加される。このような酸類としては、硝酸、塩酸、臭化水素酸、酢酸、蟻酸、塩化第二鉄、塩化アルミニウム等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に用いられるアルミナ水和物の形状は、平板状、繊維状、針状、球状、棒状等のいずれでもよく、インク吸収性の観点から好ましい形状は平板状である。平板状のアルミナ水和物は、平均アスペクト比3〜8であり、好ましくは平均アスペクト比が3〜6である。アスペクト比は、粒子の「厚さ」に対する「直径」の比で表される。ここで粒子の直径とは、アルミナ水和物を電子顕微鏡で観察したときの粒子の投影面積に等しい円の直径を表す。
本発明に用いられるアルミナ水和物は、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等公知の方法によって製造することができる。また、アルミナ水和物の粒子径、細孔径、細孔容積、比表面積等の物性は、析出温度、熟成温度、熟成時間、液のpH、液の濃度、共存化合物等の条件によって制御することができる。
アルコキシドからアルミナ水和物を得る方法としては、特開昭57−88074号公報、同62−56321号公報、特開平4−275917号公報、同6−64918号公報、同7−10535号公報、同7−267633号公報、米国特許第2,656,321号明細書等にアルミニウムアルコキシドを加水分解する方法として開示されている。これらのアルミニウムアルコキシドとしてはイソプロポキシド、2−ブトキシド等が挙げられる。
また、インク受理層に用いる無機超微粒子の粒子径範囲を平均一次粒子径が10〜30nm、平均二次粒子径が50〜300nmとすることでインク吸収性とインク受理層表面にひび割れを生じさせることなく塗設出来る。本発明のインク受理層に用いるような無機超微粒子が凝集構造を有している場合、平均一次粒子径が10nm未満であると、無機超微粒子の比表面積が著しく大きくなり、インク受理層表面のひび割れ発生が抑えがたくなる。また、一次粒子径が30nmを超えた場合、必要なインク吸収性を得るための二次凝集粒子径が大きくなりすぎてしまい白紙部光沢性が低下すると共に、インク受理層の細孔径が大きくなりすぎることで、顔料インク中の色材成分が塗層内部に落ち込み充分なインク発色性が得られなくなってしまうこととなる。
平均二次粒子径が50nm未満であると、インク受理層細孔が小さくなりすぎ顔料インクの分散溶媒の拡散が不十分となることでインク吸収性が損なわれる。また、平均二次粒子径が300nmを超えた場合、白紙部光沢性が著しく低下すると共に、粗粒により粒子径分布がブロードになる為と思われるが、インク受理層表面のひび割れが多発することとなる。
本発明のインク受理層に用いられる親水性バインダーとしてはシラノール変性等の変性物を含むポリビニルアルコール、でんぷんおよびその変性物、ゼラチンおよびそれらの変性物、カゼイン、プルラン、アラビアゴム、カラヤゴム、アルブミン等の天然高分子樹脂またはこれらの誘導体、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等のビニルポリマー、ポリエチレンイミン、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、無水マレイン酸またはその共重合体等を挙げられ、単独あるいは併用して用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、これらの親水性バインダーの配合量の総和は、無機超微粒子に対して、3〜40質量%であることが好ましく、特に5〜30質量%であることが好ましい。
本発明のインク受理層に用いられる、親水性バインダーとしては、接着力の点から、ポリビニルアルコール、またはシリル変性ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコール誘導体が好ましい。アルミナ水和物との混合性、塗液粘度の調整、および成膜性等の点で重合度2000以上、ケン化度が88%以上96%未満のポリビニルアルコールが特に好ましい。
本発明においてインク受理層塗液のpHが2以上5以下である事が好ましい。更に好ましくはpHが3以上4.5以下である。この範囲とすることで、pHが低い際に生じる色材の不必要な凝集や色相の変動を防止でき、またpHが高い際に生じる無機超微粒子分散体の安定性欠如を防止出来るために好ましい。
本発明のインク受理層において用いられるホウ酸としては、オルトホウ酸だけでなくメタホウ酸、次ホウ酸等が使用できる。ホウ酸塩はこれらの可溶性塩が好ましく、具体的には、Na・10HO、NaBO・4H0、K・5HO、NHHB・3HO、NHBO等が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明のインク受理層に用いられるホウ酸またはホウ酸塩の添加量は、HBO換算で親水性バインダーに対して1〜30質量%、好ましくは2〜20質量%である。
更に、本発明のインク受理層には、その他の添加剤として、カチオン系染料定着剤、顔料分散剤、増粘剤、流動性改良剤、粘度安定剤、pH調整剤、界面活性剤、消泡剤、抑泡剤、離型剤、発泡剤、浸透剤、着色染料、着色顔料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、レベリング剤、防腐剤、防バイ剤、耐水化剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤などを本発明の目的を害しない範囲で適宜添加することもできる。
本発明において、下塗り層及びインク受理層は、下塗り層およびインク受理層の塗液を支持体上に順次塗工、乾燥して設ける。
本発明において下塗り層およびインク受理層を設ける際に、塗工する方法は、特に限定されず、公知の塗工方法を用いることができる。例えば、エアーナイフコーター、カーテンコーター、スライドリップコーター、ダイコーター、ブレードコーター、ゲートロールコーター、バーコーター、ロッドコーター、ロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドエルブレードコーター、サイズプレスなどの各種装置により塗工することができる。
本発明において、塗液塗工後に乾燥する方法は、特に限定されず、公知の乾燥方法を用いることができるが、特に熱風を吹きつける方法、赤外線を照射する方法など、加熱により乾燥する方法は、生産性が良く好ましく用いられる。
本発明において、インク受理層表面が光沢発現処理することなくJIS Z8741による75度鏡面光沢度が40%以上となることが必要である。前記鏡面光沢度が40%以上を達成するには本発明の下塗り層及びインク受理層の構成でインク受理層の塗布量を調整することにより達成される。インク受理層の塗布量としては5〜25g/mが好ましい。
また、インク受理層表面の亀裂を抑制しないまま、光沢発現処理を施すことにより40%以上のJIS Z8741による75度鏡面光沢度を達成することも可能ではあるが、ソフトカレンダー或いはスーパーカレンダーの如きカレンダー処理ではインク受理層の表面亀裂は軽減出来ないために顔料インク印刷時の色材と分散媒が効果的に分離しがたくインク発色性に問題を生じることとなる。
本発明において、インク受理層または光沢発現層を塗工、乾燥後、平坦化をコントロールしたり表面光沢をさらに高めたりする目的で、カレンダー処理により、平滑化しても良い。その際のカレンダー処理装置としては、グロスカレンダー、スーパーカレンダー、ソフトカレンダーなどが挙げられる。また、公知のキャストコート法を用いて光沢面を形成することができる。
また、本発明において、インク吸収性、光沢度向上、耐傷性付与或いは摩擦係数コントロール等を目的として、インク受理層の上に更に一層以上の塗層を設けても構わない。
また、カレンダー処理或いはキャスト処理をする際には、インク受理層の平均塗層密度が0.8g/cm未満であると、塗層空隙率が高まり、インク吸収性が良好となるものの高い光沢性維持することが困難となることがある。また、1.3g/cmより大きいと、高い光沢性を付与できるが、インク受理層の空隙率及び空隙径が小さくなりすぎてしまい、インク吸収性を著しく損なうことがあるため、インク受理層の平均塗層密度は0.8〜1.3g/cmであることが好ましい。更にインク受理層の空隙量が7ml/m未満となるとインク受理層で受容しうる色材量が少なくなり、インク発色性への悪影響、更にインク吸収性も損なうことがあるため、インク受容層の空隙量は7ml/m以上であることが好ましい。
本発明に用いる支持体は吸水性の支持体であれば特に限定されるものではないが、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプなどの木材パルプと従来公知の顔料を主成分として、バインダーおよびサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を1種以上用いて混合し、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で製造されたパルプ繊維を主成分とした支持体が好ましく用いられる。更に支持体に、澱粉、ポリビニルアルコールなどでのサイズプレスやアンカーコート層を設けても構わない。この様な紙および塗工紙に、そのまま本発明における塗層を設けても良いし、平坦化をコントロールする目的で、マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー装置を使用しても良い。
(実施例)
以下に本発明について、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。また、実施例に於いて示す「質量部」および「質量%」は特に明示しない限り固形分の質量部および質量%を示す。
<支持体の作製>
濾水度450mlCSFのLBKP70部、濾水度450mlCSFのNBKP30部から成る木材パルプ100部に、軽質炭酸カルシウム/重質炭酸カルシウム/タルクの比率が30/35/35の顔料5部、市販アルキルケテンダイマー0.1部、市販カチオン系アクリルアミド0.03部、市販カチオン化澱粉1.0部、硫酸バンド0.5部を水と混合してスラリーを調成後、長網抄紙機を用いて坪量105g/mで抄造し、市販酸化澱粉をインクラインドサイズプレスで乾燥付着量5g/mとさせて乾燥して吸水性支持体を得た。
<下塗り層塗布液1の作製>
平均二次粒子径6μmの湿式合成シリカ(サイロイド74X6500:グレース・ディビィソン社製)100質量部を固形分濃度20質量%となるように水に分散し、シリカスラリーを得た。そのシリカスラリー100質量部に平均一次粒子径15nm、平均二次粒子径15nm、粒子径比率が1対1のコロイダルシリカ懸濁液(スノーテックス20:日産化学工業社製:pH9.5)50質量部、固形分濃度10質量%のポリビリルアルコール(PVA117:クラレ社製)30質量部、四ホウ酸ナトリウム0.5質量部を加え、pHが10となるように水酸化ナトリウムにて調整、固形分濃度14質量%の下塗り層塗液1の塗布液を得た。
<インク受理層塗布液1の作製>
平均一次粒子径16nmの擬ベーマイトアルミナ50質量部、平均一次粒子径16nmの気相法シリカ50質量部及び分散剤としてジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4質量部をイオン交換水(電気伝導度10μS/cm)と混合し、固形分濃度20質量%となるように調節し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速15m/秒)を使用して予備分散液を作成した。次に得られた予備分散物をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度20質量%、平均二次粒子径120nmの無機超微粒子スラリーを得た。その無機超微粒子スラリー100質量部に固形分濃度4質量%のホウ酸を1質量部、固形分濃度8質量%のポリビリルアルコール(PVA235:クラレ社製)14質量部加えて、インク受理層1の塗布液を得た。尚、このインク受理層塗布液1の乾燥後の真密度は2.40g/cmであった。
<インク受理層塗布液2の作製>
平均一次粒子径16nmの擬ベーマイトアルミナ100質量部、分散剤としてジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4質量部をイオン交換水(電気伝導度10μS/cm)と混合し、固形分濃度20質量%となるように調節し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速15m/秒)を使用して予備分散液を作成した。次に得られた予備分散物をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度20質量%、平均二次粒子径120nmの無機超微粒子スラリーを得た。その無機超微粒子スラリー100質量部に固形分濃度4質量%のホウ酸を1質量部、固形分濃度8質量%のポリビリルアルコール(PVA235:クラレ社製)8質量部加えて、インク受理層2の塗布液を得た。尚、このインク受理層塗布液2の乾燥後の真密度は2.84g/cmであった。
<インク受理層塗布液3の作製>
平均一次粒子径16nmの気相法シリカ100質量部及び分散剤としてジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー(分子量9,000)4質量部をイオン交換水(電気伝導度10μS/cm)と混合し、固形分濃度20質量%となるように調節し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速15m/秒)を使用して予備分散液を作成した。次に得られた予備分散物をビーズミルに、直径0.3mmのジルコニアビーズ、充填率80容量%、円盤周速10m/秒の条件で1回通過させて、固形分濃度20質量%、平均二次粒子径120nmの無機超微粒子スラリーを得た。その無機超微粒子スラリー100質量部に固形分濃度4質量%のホウ酸を1質量部、固形分濃度8質量%のポリビリルアルコール(PVA235:クラレ社製)20質量部加えて、インク受理層3の塗布液を得た。尚、このインク受理層塗布液3の乾燥後の真密度は2.01g/cmであった。
インク受理層塗布液の乾燥後の真密度の算出方法は、インク受理層塗被組成物各々を質量加重平均することにより算出した。インク受理層塗被組成物の各真密度は以下の通りである。
ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー :1.15g/cm
擬ベーマイトアルミナ :3.04g/cm
気相法シリカ :2.20g/cm
ポリビニルアルコール :1.25g/cm
ホウ酸 :1.43g/cm
前記支持体に前記内容の下塗り層塗液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、下塗り層塗布サンプルを作製した。次に、前記内容のインク受理層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量13g/mとなるよう塗布、乾燥し、インク受理層サンプルを作製した。次に、線圧5kN/m、速度6m/minの条件でインク受理層面が金属ロール面に2回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、実施例1のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1の湿式合成シリカを平均二次粒子径3.5μmの湿式合成シリカ(サイロイド72W:グレース・ディビィソン社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例2のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1の湿式合成シリカを平均二次粒子径10μmの湿式合成シリカ(サイロイド74X3500:グレース・ディビィソン社製)に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例3のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液を平均一次粒子径5nm、平均二次粒子径5nm、粒子径比率が1対1のコロイダルシリカ懸濁液(スノーテックスXS:日産化学工業社製:pH9.5)50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例4のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液を平均一次粒子径50nm、平均二次粒子径50nm、粒子径比率が1対1のコロイダルシリカ懸濁液(スノーテックスXL:日産化学工業社製:pH9.5)50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例5のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液を平均一次粒子径85nm、平均二次粒子径85nm、粒子径比率が1対1のコロイダルシリカ懸濁液(スノーテックスZL:日産化学工業社製:pH9.5)50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例6のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液を平均一次粒子径15nm、平均二次粒子径40nm、粒子径比率が1対2.7のコロイダルシリカ懸濁液(クォートロンPL−1:扶桑化学工業社製:pH7.3)50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例7のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液を平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径70nm、粒子径比率が1対2のコロイダルシリカ懸濁液(クォートロンPL−3:扶桑化学工業社製:pH7.3)50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例8のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液の添加量を10質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例9のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液の添加量を100質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例10のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液の添加量を200質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、実施例11のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
前記支持体に前記内容の下塗り層塗液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、下塗り層塗布サンプルを作製した。次に、前記内容のインク受理層塗布液2をエアーナイフコーターにて固形分塗布量20g/mとなるよう塗布、乾燥し、インク受理層サンプルを作製し、カレンダー処理を行わず、実施例12のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、16.6μmであった。
前記支持体に前記内容の下塗り層塗液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、下塗り層塗布サンプルを作製した。次に、前記内容のインク受理層塗布液3をエアーナイフコーターにて固形分塗布量11g/mとなるよう塗布、乾燥し、インク受理層サンプルを作製した。次に、線圧50kN/m、速度6m/minの条件でインク受理層面が金属ロール面に2回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、実施例13のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.5μmであった。
前記支持体に前記内容の下塗り層塗液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量10g/mとなるように塗布、乾燥し、下塗り層塗布サンプルを作製した。次に、前記内容のインク受理層塗布液1をエアーナイフコーターにて固形分塗布量20g/mとなるよう塗布、乾燥し、インク受理層サンプルを作製した。次に、線圧25kN/m、速度6m/minの条件でインク受理層面が金属ロール面に2回当たるようにソフトカレンダー処理を行い、実施例14のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、17.5μmであった。
(比較例1)
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液を平均一次粒子径300nm、平均二次粒子径300nm、粒子径比率が1対1のコロイダルシリカ懸濁液(スノーテックスPST−3:日産化学工業社製:pH8.0)50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例1のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
(比較例2)
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液を平均一次粒子径20nm、平均二次粒子径150nm、粒子径比率が1対7.5のコロイダルシリカ懸濁液(スノーテックスPS−M:日産化学工業社製:pH9.5)50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例2のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
(比較例3)
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液を平均一次粒子径38nm、平均二次粒子径150nm、粒子径比率が1対3.9のコロイダルシリカ懸濁液(スノーテックスPS−L:日産化学工業社製:pH9.5)50質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例3のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
(比較例4)
前記下塗り層塗布液1からコロイダルシリカ懸濁液を除いた以外は実施例1と同様にして、比較例4のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
(比較例5)
前記下塗り層塗布液1のコロイダルシリカ懸濁液の添加量を300質量部に変更した以外は実施例1と同様にして、比較例5のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
(比較例6)
前記下塗り層塗布液1からコロイダルシリカ懸濁液を除き、固形分濃度10質量%のポリビリルアルコール(PVA117:クラレ社製)の添加量を45質量部に変更した以外は実施例1と同様に比較例6のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
(比較例7)
前記下塗り層塗布液1からコロイダルシリカ懸濁液を除き、固形分濃度48質量%のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(LX438C:日本ゼオン社製)を15質量部添加した以外は実施例1と同様に比較例7のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、13.6μmであった。
(比較例8)
前記比較例4のソフトカレンダー処理を線圧25kN/m、速度6m/minの条件でインク受理層面が金属ロール面に2回当たるように変更した以外は比較例4と同様にして、比較例8のインクジェット記録材料を得た。尚、このインク受理層の平均塗層厚みを電子顕微鏡観察にて測定したところ、11.8μmであった。
以上のようにして、作製した実施例及び比較例のインクジェット記録材料について、下記の如き試験を行った。その結果を表1に示す。
<平均塗層密度>
インク受理層の平均塗層密度の算出は下記の式により求めた。
平均塗層密度(g/cm)=インク受理層塗工量(g/m)÷インク受理層平均塗層厚み(μm)
<平均空隙量>
インク受理層の空隙量の算出は下記の式により、求めた。
空隙量(ml/m)=インク受理層平均塗層厚み(μm)−(インク受理層塗工量(g/m)÷インク受理層真密度(g/cm))
<白紙部光沢性>
白紙部光沢性は、JIS−Z8741に準じて75度鏡面光沢度はソフトカレンダー処理を行う前後のインクジェット記録材料について測定を行った。
<インク吸収性>
セイコーエプソン(株)製「MAXART MC−10000(プリンタ設定:MC光沢用紙、きれい)」を用いて画像を印刷し、インク吸収性について下記の基準で、総合的に評価を行った。尚、評価に用いた画像は黒、シアン、マゼンタ、イエロー、ブルー、レッド、グリーン各色のベタ印刷字およびその中に白抜き文字を設けたパターンなどからなる。
◎:倍率25倍の顕微鏡観察で各色のベタ印刷部境界や白抜き文字部に滲みが観察されず問題なし。
○:倍率25倍の顕微鏡観察で各色のベタ印刷部境界や白抜き文字部に僅かに滲みが観察されるが実使用上問題なし。
△:目視観察で各色のベタ印刷部境界や白抜き文字部に僅かに滲みがあり実使用困難。
×:目視観察で各色のベタ印刷部境界や白抜き文字部に明確な滲みがあり実使用不可。
<表面亀裂観察>
インク受理層表面のひび割れの有無は、作製したインクジェット記録材料の表面を倍率100倍の顕微鏡観察により下記の基準で評価を行った。
◎:表面亀裂が観察されず問題なし。
○:表面亀裂が僅かに観察されるが、実用上問題ないレベル。
△:表面亀裂が多数散見されており、実使用困難レベル。
×:非常に多数の表面亀裂で全面が覆われており、実使用不可レベル。
<インク発色性>
セイコーエプソン(株)製「MAXART MC−10000(プリンタ設定:MC光沢用紙、きれい)」を用いて、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック各色のベタ印刷を行い、光学濃度をマクベス反射濃度計で測定し、各色の光学濃度の合計値を示した。数値が大きい方が、インク発色性が良いことを意味する。
<塗層強度>
塗層の脱落度合いを示す評価として、サンプルに幅18mmのメンディングテープ(住友スリーエム社製)を貼り、剥離した際のメンディングテープに転写する塗層の面積を目視にて観察し、下記基準にて塗層強度の評価とした。
◎:殆ど塗層が転写せず、塗層強度が良好。
○:大半の塗層が転写せず、実用上問題ない塗層強度。
△:塗層のかなりの部分が転写し、塗層強度に問題のあるレベル。
×:塗層の殆ど全てが転写し、塗層強度に大きな問題のあるレベル。
Figure 0004504205
表1の結果から明らかなように本発明の実施例1〜14のインクジェット記録材料は高い白紙部光沢性及び塗層強度を有し、インク吸収性に優れるとともに表面亀裂が少ないことにより顔料インクの色材と分散媒を効率に分離せしめ良好なインク発色性を有していることがわかる。
比較例として挙げた比較例1は本発明の構成要素である下塗り層に適用するコロイダルシリカの一次粒子径が本発明の範囲から外れており、白紙部光沢性が低く、塗層強度に問題が見られる。また、表面亀裂に問題が見られるため、インク発色性も低めとなっている。
比較例として挙げた比較例2は本発明の構成要素である下塗り層に適用するコロイダルシリカの一次粒子径と二次粒子径の粒子径比率が本発明の範囲から外れており、白紙部光沢性は問題ないものの、塗層強度に重大な問題が見られる。また、表面亀裂にも重大な問題が見られるため、インク発色性も大幅に低下している。
比較例として挙げた比較例3は本発明の構成要素である下塗り層に適用するコロイダルシリカの一次粒子径と二次粒子径の粒子径比率が比較例2程ではないが本発明の範囲から外れており、白紙部光沢性は問題ないものの、塗層強度に問題が見られる。また、表面亀裂にも問題が見られるため、インク発色性も大幅に低下している。
比較例として挙げた比較例4は本発明の構成要素である下塗り層に適用するコロイダルシリカが添加されておらず、白紙部光沢性が大幅に低下しているばかりか、塗層強度にも重大な問題が見られる。また、表面亀裂にも問題が見られるため、インク発色性も大幅に低下している。
比較例として挙げた比較例5は本発明の構成要素である下塗り層に適用するコロイダルシリカが過剰に添加されており、白紙部光沢性、塗層強度及び表面亀裂には問題ないが、インク吸収性が少なく、そのためインク発色性も大幅に低下している。
比較例として挙げた比較例6は本発明の構成要素である下塗り層に適用するコロイダルシリカが添加されておらず白紙部光沢性、塗層強度に重大な問題がある比較例4にポリビニルアルコールを増量した例であるが、塗層強度には問題がなくなったものの、白紙部光沢性、表面亀裂が大幅に悪化することとなった。
比較例として挙げた比較例7は本発明の構成要素である下塗り層に適用するコロイダルシリカが添加されておらず白紙部光沢性、塗層強度に重大な問題がある比較例4にスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを添加した例であるが、塗層強度には問題がなくなったものの、白紙部光沢性、表面亀裂が大幅に悪化することとなった。
比較例として挙げた比較例8は本発明の構成要素である下塗り層に適用するコロイダルシリカが添加されておらず白紙部光沢性、塗層強度に重大な問題がある比較例4の白紙部光沢性を補うべくカレンダー処理条件を強化した例であるが、白紙部光沢性の向上は認められるものの本発明に対して効果が少なく、またインク吸収性、インク発色性を悪化させることとなった。

Claims (3)

  1. 吸水性支持体の少なくとも片面に下塗り層、インク受理層の塗液を順次、塗工・乾燥して形成されてなるインクジェット記録材料において、該下塗り層が無機微粒子として平均二次粒子径が1.2〜12μmの湿式合成シリカ及び平均一次粒子径が5〜100nm且つ平均一次粒子径と平均二次粒子径の粒子径比率が1対1〜1対3であるコロイダルシリカ、親水性バインダー、ホウ酸またはホウ酸塩を含有し、湿式合成シリカとコロイダルシリカの質量含有比率が10対1〜10対20であり、該インク受理層が、平均一次粒子径が10〜30nm、平均二次粒子径が50〜300nmの無機超微粒子、親水性バインダー、ホウ酸またはホウ酸塩を含有し、且つインク受理層表面が光沢発現処理することなくJIS Z8741による75度鏡面光沢度が40%以上となることを特徴とするインクジェット記録材料。
  2. 前記下塗り層の塗液のpHが8〜12であり、前記コロイダルシリカの懸濁液のpHが6〜12であることを特徴とする請求項記載のインクジェット記録材料。
  3. 前記インク受理層の平均塗層密度が0.8〜1.3g/cm3且つ前記インク受理層の空隙量が7ml/m2以上であることを特徴とする請求項1または2記載のインクジェット記録材料。
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