JP4356692B2 - インクジェット記録用紙の製造方法 - Google Patents
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Description
同様に、透明性、高光沢を重要視するインクジェット記録用紙を得るために、インク受容層の全層をサブミクロンオーダーの顔料にすることにより、細孔分布をほぼ50nm(0.05μm)以下に制御したインクジェット記録用紙の提案があるが(例えば、特許文献3参照。)、高いインク吸収性の達成には至らなかった。また、サブミクロンオーダーの顔料を多量に使用するためコストが高くなるという欠点もあった。
また、キャスト法で仕上げた後に裏面にポリオレフィン樹脂含有層を設ける方法もあるが(例えば、特許文献8参照。)、光沢面に傷が入りやすく、カール矯正も必ずしも十分とは言えなかった。
[1]紙基材の一方の面にキャスト法により仕上げされたインク受容層、あるいは紙基材の一方の面にインク受容層及びキャスト法により仕上げされた光沢発現層を有するインクジェット記録用紙の製造方法において、該インク受容層の細孔直径分布曲線におけるピークが実質的に0.06μm以下のみであり、かつキャスト法により仕上げを行う前に、紙基材の他方の面に、透気度(JIS−P−8117)が500〜3000秒となるように水溶性樹脂を主成分とする裏面層を形成するインクジェット記録用紙の製造方法。
[2] 前記透気度が1200〜2500秒となるように前記裏面層を形成する[1]に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
[3] 前記インク受容層の無機顔料が、平均1次粒子径0.003〜0.04μmの一次粒子が凝集してなる平均2次粒子径が0.7μm以下の気相法シリカ、アルミナ、アルミナ水和物のいずれかである[1]又は[2]に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
[4] 前記裏面層の水溶性樹脂が、でんぷん又はけん化度が85以上のポリビニルアルコールである[1]〜[3]のいずれか一項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
[5] 紙基材とインク受容層の間に、BETによる細孔容積が0.5ml/g以下で平均1次粒子径が1μm以下の無機顔料と、エマルションラテックスとを含有する下塗り層を設けた[1]〜[4]のいずれか一項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
[6] 前記光沢発現層が、平均1次粒子径0.01〜0.06μmの単分散コロイド顔料、平均2次粒子径1μm以下のアルミナ、アルミナ水和物、平均2次粒子径0.7μm以下の気相法シリカ、湿式ゲル法シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料を主成分とする[1]〜[5]のいずれか一項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
[7][1]〜[6]のいずれか一項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法により製造されたインクジェット記録用紙である。
本発明により製造されるインクジェット記録用紙は、紙基材の片面に、キャスト法により形成されるインク受容層、他面に裏面層を有する構成、紙基材の片面に、インク受容層、キャスト法により形成される光沢発現層、他面に裏面層を有する構成であるが、紙基材とインク受容層の間に下塗り層を有してもよく、インク受容層を複数層積層してもよい。
本発明は、このようなインクジェット記録用紙を製造するにあたり、キャスト法によりインク受容層又は光沢発現層を形成するよりも前に、裏面層を形成し、且つ、キャスト法によりインク受容層又は光沢発現層を形成する際の透気度を500〜3000秒にすることによって、カール及びコックリングが改善され、かつ高光沢のインクジェット記録用紙を得ることができる。まず、紙基材、各層について説明する。
紙基材としては、特に限定するものではなく、例えば、上質紙、中質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙等のような基材が使用できる。
紙基材は、一般に、木材パルプと必要に応じ含有する填料を主成分として構成される。
木材パルプは、各種化学パルプ、機械パルプ、再生パルプ等を使用することができ、これらのパルプは、紙力、抄紙適性等を調製するために、叩解機により叩解度を調製できる。パルプの叩解度(フリーネス)は特に限定しないが、一般に250〜550ml(CSF:JIS P8121)程度である。平滑性を高めるためには叩解度を進めるほうが望ましいが、用紙に記録した場合にインク中の水分によって起こる用紙の波打ち(コックリング)や記録画像のにじみは、叩解を進めないほうが良好な結果を得る場合が多い。従ってフリーネスは300〜500ml程度が好ましい。
紙基材には、助剤としてサイズ剤、定着剤、紙力増強剤、カチオン化剤、歩留り向上剤、染料、蛍光増白剤等を添加することができる。さらに、抄紙機のサイズプレス工程において、デンプン、ポリビニルアルコール類、カチオン樹脂等を塗布・含浸させ、表面強度、サイズ度等を調製できる。
インクジェット記録用紙の平滑感を高め、かつ紙基材への過剰なインク溶媒吸収性を下げてコックリングを抑制するために、紙基材とインク受容層の間に一層以上の下塗り層を設けてもよい。なお、下塗り層は、顔料とバインダーを含む層である。
下塗り層の塗工には、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、カーテンコーターおよびダイコーター等の各種塗工装置を用いることができる。
本発明のインク受容層は、顔料とバインダーを少なくとも有する層であり、且つ細孔直径分布曲線におけるピークが実質的に0.06μm以下である必要がある。
写真調のインクジェット記録画質を実現する為には、インク中の染料や顔料が定着するインク受容層の透明性が欠かせない。インク受容層が透明であるほど、インク受容層中に定着した染料が外からよく見える為、画像の奥行き、つまり深みがあり、より銀塩写真に近いものが得られる。
(A)電子線照射によりハイドロゲルを形成する親水性樹脂を含有し、塗工の直後に、また塗工された塗液層の乾燥途中であって、該塗液層が減率乾燥速度を示す前に、電子線照射して塗液層を増粘(ハイドロゲルを形成)させる方法、
(B)バインダーを含有する塗液であり、塗工の直後に、また塗工された塗液層の乾燥途中であって、該塗液層が減率乾燥速度を示す前に、バインダーとの架橋性を有する化合物で塗料を増粘、架橋させる方法、
(C)例えば、バインダーとして感温性高分子化合物(特開2003−40916号公報に記載された一定温度(感温点)以下の温度領域では親水性を示し、感温点より高い温度領域では疎水性を示す)を含有させ、塗工の直後に塗液層温度を低下させることによって塗液層を増粘させる方法、
等が例示できる。
電子線照射を施す方法として、(1)塗工、電子線照射、乾燥を繰り返しても良いし、(2)塗工し電子線照射後に次の層を塗工して乾燥しても良く、(3)多層を同時に塗工し、電子線照射を行う、等の方法がある。
この場合、インク受容層における顔料と水溶性樹脂との乾燥固形分質量比率は、顔料100質量部に対し2〜50質量部の範囲であることが好ましい。インク吸収性と塗膜強度のバランスをさらに良くするためには5〜30質量部であることが好ましく、10〜25質量部であることがさらに好ましい。
ホウ素化合物の含有量は、ホウ素化合物及びポリビニルアルコールの重合度にもよるが、基材の片面に0.01〜1.5g/m2含有されるのが好ましい。1.5g/m2より多いと親水性バインダーとの架橋密度が高くなり、塗膜が硬くなって折り割れしやすくなる。また、0.01g/m2より少ないと親水性バインダーとの架橋が弱く、塗料のゲル化も弱くなって塗膜がひび割れやすくなる。
微細顔料の平均二次粒子径は0.7μm以下が好ましい。平均二次粒子径が0.7μmより大きい無機顔料を使用すると、印字濃度が低下する。0.7μm以下の粒子径に調節するために、たとえば機械的手段で強い力を施す方法、所謂breakingdown法(塊状原料を細分化する方法)により製造することが可能である。機械的手段としては、超音波ホモジナイザー、圧力式ホモジナイザー、液流衝突式ホモジナイザー、高速回転ミル、ローラミル、容器駆動媒体ミル、媒体攪拌ミル、ジェットミル、乳鉢、擂解機(鉢状容器中の被粉砕物を、杵状攪拌棒で磨砕混練する装置)、サンドグラインダー、ナノマイザー等が挙げられる。粒子径を小さくする為に、分級と粉砕とを繰り返して施すことができる。一方、平均二次粒子径が0.03μmより小さいと、塗膜にひび割れが生じやすいため0.03〜0.7μmであることが好ましい。
気相法シリカは、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって得られた無水シリカ微粒子のことである。
このような複合粒子を得るためには、例えば水中で気相法シリカとカチオン性高分子を混合し、凝集させることによって得られたカチオン性高分子−シリカの凝集体粒子を、平均粒子径が0.1〜1μm、好ましくは0.1〜0.7μm、より好ましくは0.1〜0.5μmとなるように粉砕、分散してカチオン性高分子−シリカ複合粒子を製造することが好ましい。
カチオン性高分子は、上記例示のカチオン性高分子の中から適宜選択され、単独使用或いは併用される。インク中の染料及び顔料の定着性、及びシリカ分散体の分散性を向上させるためには、5員環アミジン類、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、及びアルコキシカルボニル変性アリルアミン塩の重合体を用いることがより好ましい。カチオン性化合物の添加量は、顔料100質量部に対し、1〜30質量部であることが好ましく、2〜15質量部であることがより好ましい。
平均粒子径が1μmを超える場合は、ホモミキサーなどの弱い機械力で処理すれば十分分散するが、平均粒子径を1μm以下に粉砕するにはより強い機械力を加えることが効果的であり、圧力式分散方法を用いることが好ましい。
圧力式分散方法である高圧粉砕機としては、圧力式ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、マイクロフルイタイザー、ナノマイザーが挙げられるが、特に高速流衝突型ホモジナイザーとしてマイクロフルイタイザー、ナノマイザ−が好ましい。
インク受容層の塗工には、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロッドブレードコーター、リップコーター、ダイコーター、スライドビードコーターおよびカーテンコーター等の各種塗工装置を用いることができる。
キャスト法により形成すると、インク受容層が湿潤状態にある間に、これを加熱された鏡面ドラムに圧接し、乾燥して、鏡面を塗工層に写し取るため、高光沢の表面が形成することができる。キャスト方式としては、従来から印刷用塗工紙の分野で知られているウェットキャスト法、リウェットキャスト法、ゲル化キャスト法などが適用できる。なかでも、インク受容層を塗布し、乾燥或いは半乾燥した後、湿潤液を付与して湿潤させた後、直ちに鏡面ドラムに圧着させて乾燥させるリウエット法は、得られたインクジェット記録用紙が銀塩写真に匹敵する光沢および画質が得られるので好ましい。
本発明は、上記インク受容層上に、更に鏡面ドラムに圧接、乾燥仕上される光沢発現層を設けて、インクジェット記録用紙を形成することもできる。なお、本発明においては、光沢発現層をキャスト法により形成するよりも前に、後述する裏面層を先に形成しておく必要がある。
光沢発現層の塗料はpHが8以下で、かつ粘度が100mPa・s以下であることが好ましい。粘度が100mPa・sより高くなると光沢が低下するので、低粘度の塗料になるようにバインダーの種類及び添加量を適宜調製すればよい。
特に、エステル基にカチオン性置換基を有するアクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、あるいはメタクリル酸エステルの少なくとも1成分を共重合成分とするアクリル酸エステル系エマルジョン樹脂、カチオン性置換基を有するイソシアネートとポリオールの共重合体のアイオノマー樹脂粒子を分散させたウレタン系エマルジョン樹脂が好ましく用いられる。
また、ガラス転移温度に特に限定はないが、エマルジョン樹脂の粒子径は20〜50nmが好ましい。粒子径が20nmより小さいとインク吸収速度が遅くなり、50nmより大きいと画像濃度が低下するために好ましくない。
また、インク受容層が鏡面ドラムに圧接される直前に、プレスロール上のインク受容層面と鏡面ドラムの間に光沢発現層用塗工液を付与し、直ちに圧着させて乾燥させる方式による鏡面仕上げ(以下、ニップキャスト法仕上げともいう)を施すこともでき、この方法により得られた記録体は銀塩写真に匹敵する光沢および画質が得られるので好ましい。
光沢発現層の細孔直径分布曲線において、細孔直径のピークが0.06μmを超える領域にあると画像の光沢が不十分になり、また光沢発現層にひび割れが発生し、記録画像のドットの真円性が低下して記録画像の均一性が不良になる。
つまり、光沢発現層及びこれと隣接するインク受容層の細孔直径分布曲線におけるピークを0.06μm以下の領域に存在させ、塗膜にひび割れが実質上ない状態にすることにより、記録画像の均一性を高めることが可能になった。
紙基材の裏面(インク受容層を形成しない面)には、表面側へのカールを矯正するために、水溶性樹脂を主成分とする塗工層を設ける。裏面層を設けることで、インク溶媒の原紙への浸透も抑制することができ、コックリング防止にも有効である。
裏面層は、インク受容層或いは光沢発現層を鏡面ドラムで処理するよりも前であればどの段階で設けてもかまわないが、製造工程の最後に、キャスト法によってインクジェット記録用紙を仕上げることで高い光沢を付与することができる。一方、キャスト法で仕上げた後のインクジェット記録用紙の裏面に水溶性樹脂を塗工すると、カールの矯正はできるがインクジェット記録用紙の光沢に低下が見られる。また、インクジェット記録用紙の光沢面に傷なども入りやすい。
また、インク受容層を塗工する前に裏面層を塗工した場合、(裏面層+紙基材)もしくは(裏面層+紙基材+下塗り層)の透気度は200〜2000秒が好ましい。
本発明でいう顔料の平均粒子径は、一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径を、一次粒子のみの単分散状態の場合は一次粒子径を示していると考えられ、当該顔料が粉体状にあるか、又はスラリー状にあるかには関係ない。
測定方法は、顔料濃度が3質量%の水分散液200gを調製し、これをホモミキサーに供して1000rpm、30分間の攪拌分散処理を施した後、直ちにこの分散液を電子顕微鏡(SEMとTEM)観察に供して1万〜40万倍の電子顕微鏡写真を撮り、写真中の5cm×5cm四方の面積中に存在する粒子のマーチン径を測定し平均したものである。(「微粒子ハンドブック」、朝倉書店、p52、1991年参照)。
本発明の規定の細孔直径分布曲線におけるピークについて説明する。測定方法としては、支持体の影響を避けるために、得られた記録体の塗工層をカッター等で剥がし取り測定に用いた。細孔分布は、マイクロメトリックス・ポアサイザー9320(島津製作所製)を用い、水銀圧入法により求めた。水銀圧入法による細孔直径の測定は、細孔の断面を円形と仮定して導かれた下記の式を使って計算した。
R=−2γCOSθ/P
ただし、式中でそれぞれR:細孔半径(2R=細孔直径)、γ:水銀の表面張力、θ:接触角、P:圧力を示す。
水銀の表面張力は482.536dyn/cmとし、使用接触角は130°とし、水銀圧力の低圧部(0〜30psia、測定細孔半径:180〜3μm)と高圧部(0〜30001psia、測定細孔半径:3〜0.003μm)にて測定した。
細孔直径分布は、上記の原理を利用して、水銀に加える圧力を徐々に変化させ、その時に細孔内に進入した水銀の体積すなわち細孔容量Vを測定し、上記式に従って換算した細孔直径(2R)と細孔容積との関係を描き、この関係曲線の微分係数dV/d(2R)を求めて縦軸とし、細孔直径2Rを横軸にすることで求められる。塗工層の細孔直径分布曲線は通常1〜数個のピークが認められる。
本発明でいう、BET法による細孔容積測定方法について説明する。無機顔料、もしくは該無機顔料の分散液を105℃で乾燥し、測定用粉体試料を得た。この粉体試料の細孔容積を、窒素ガス吸着法比表面積・細孔分布測定装置〔Coulter社製SA3100plus型〕を用い、前処理として200℃で2時間真空脱気した後に測定した。また、細孔容積は細孔径3〜200nmの全細孔容積の値(窒素相対圧0.991)を使用した。
濃度0.5質量%のパルプスラリー(NBKP;ろ水度250mlCSFと、LBKP;ろ水度280mlCSFを、質量比2:8の割合で混合したもの)中に、パルプ絶乾質量に対しカチオン化澱粉2.0質量%、アルキルケテンダイマー0.4質量%、アニオン化ポリアクリルアミド樹脂0.1質量%、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂0.7質量%を添加し、十分に撹拌して分散させた。上記組成のパルプスラリーを長網マシンで抄紙し、ドライヤー、サイズプレス、マシンカレンダーを通し、坪量210g/m2、緊度0.9g/cm3の紙基材を製造した。この紙基材の厚さは234μm、透気度は80秒であった。
平均粒子径1.0μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製、商品名:エアロジルA300、平均1次粒子径:約8nm)を用い、ホモミキサーにより分散した後、平均二次粒子径が800nmになるまで高速流衝突型ホモジナイザーで粉砕分散し、10質量%のシリカ微粒子分散液を調製した。
このシリカ微粒子分散液100質量部に対し、5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(ハイモ社製、商品名:SC−700M、分子量:3万)10質量部を添加し、高速流衝突型ホモジナイザーで更に分散し、平均二次粒子径が0.15μmの10質量%のカチオン性高分子−シリカ複合粒子分散液Aを調製した。この複合粒子のBETによる細孔容積は1.1ml/gであった。
「下塗り層の形成」
紙基材の1面上に、下記組成の塗工液Aを、乾燥塗工量が7g/m2になるようにバーで塗工して乾燥し、下塗り層を得た。この際の(紙基材+下塗り層)の透気度は70秒であった。
<塗工液A>
酸性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:ST−OL、平均粒子径0.045μm、細孔容積0.3ml/g、アニオン性)100質量部(固形分)に、バインダーとしてアクリル系重合体(ロームアンドハース社製、商品名:プライマルP−376、エマルジョン型接着剤)20質量部を水中で混合して水分散液(濃度:20質量%)を調製した。
下塗り層を設けた面の反対側に、8%でんぷん水溶液を1.5g/m2になるようにバーで塗工して乾燥し、裏面層を得た。この際の(裏面層+紙基材+下塗り層)の透気度は1300秒であった。
次いで、下塗り層上に8%硼砂水溶液を塗布した後、下記組成の塗工液Bを塗工し、インク受容層をハイドロゲル化させた。引き続きこのハイドロゲル化した塗工液層を、90℃に加熱した鏡面ドラムに圧着させて乾燥してインクジェット記録用紙を作製した。インク受容層の乾燥塗工量は18g/m2であった。
無機顔料として、上記カチオン性高分子−シリカ複合粒子分散液A100質量部(固形分)に、バインダーとして重合度3500、ケン化度88.5%のポリビニルアルコール18質量部と、分散剤(東亜合成社製、商品名:アロンSD−10)0.05質量部とを水中で混合して水分散液(濃度:15質量%)を調製した。
実施例1と同様にして、インク受容層をハイドロゲル化させた後、120℃の熱風乾燥機で乾燥させた。この際の(裏面層+紙基材+下塗り層+インク受容層)の透気度は2800秒であった。
次いで、鏡面ドラムとプレスロールのニップ部で、インク受容層を鏡面ドラム側となるようにし、インク受容層面と鏡面ドラムの間に、離型剤(オレイン酸アンモニウム)を水100質量部に対して1質量%添加した水溶液を供給してインク受容層を湿潤させた後、プレスロールで圧着しながら直ちに鏡面ドラム(表面温度が95℃)で乾燥させてインクジェット記録用紙を作製した。
下塗り層を塗工せずに、基材上に8%硼砂水溶液を塗布した後、実施例2と同様にして、ハイドロゲル化したインク受容層を120℃の熱風乾燥機で乾燥させた。この際の(裏面層+紙基材+インク受容層)の透気度は1800秒であった。
次いで、実施例2と同様にインク受容層を湿潤させた後、プレスロールで圧着しながら直ちに鏡面ドラム(表面温度が95℃)で乾燥させてインクジェット記録用紙を作製した。
「下塗り層の形成」
紙基材の1面上に、下記組成の塗工液Cを、乾燥塗工量が7g/m2になるようにバーで塗工して乾燥し、下塗り層を得た。この際の(紙基材+下塗り層)の透気度は100秒であった。
<塗工液C>
アルカリ性コロイダルシリカ(日産化学社製、商品名:ST−20L、平均粒子径0.045μm、細孔容積0.2ml/g、アニオン性)100質量部(固形分)に、バインダーとしてアクリル系エマルジョンラテックス(明成化学社製、商品名:JK7000)20質量部、及び硼砂13質量部を水中で混合して水分散液(濃度:20質量%)を調製した。
次いで、実施例1と同様の塗工液Bを下塗り層の上に塗工し、インク受容層をハイドロゲル化させた後120℃の熱風乾燥機で乾燥させた。インク受容層の乾燥塗工量は18g/m2であった。この際の(紙基材+下塗り層+インク受容層)の透気度は900秒であった。
次いで、インク受容層を設けた面とは反対側に、実施例1と同様して8%でんぷん水溶液を1.5g/m2となるように塗工した。この際の(裏面層+紙基材+下塗り層+インク受容層)の透気度は2400秒であった。
次いで、鏡面ドラムとプレスロールのニップ部で、インク受容層を鏡面ドラム側となるようにし、インク受容層面と鏡面ドラムの間に下記塗工液Dを供給し、プレスロールで圧着しながら塗工後、そのまま鏡面ドラム(表面温度が95℃)で乾燥させて光沢発現層を形成し、インクジェット記録用紙を得た。乾燥塗工量は1.5g/m2であった。
<塗工液D>
カチオン性コロイダルシリカ(グレース社製、商品名:SJ4001、平均粒子径0.04μm)100質量部(固形分)に、バインダーとしてエマルジョン型アクリル樹脂ラテックス(平均粒子径:0.06μm、Tg=100℃)10質量部、離型剤(オレイン酸アンモニウム)5質量部を水中で混合して水分散液(濃度:10質量%)を調製した。
実施例1において、裏面層に塗工する塗工液を8%でんぷん水溶液から、けん化度85のポリビニルアルコールの8%水溶液に変えたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。この際の(裏面層+紙基材+下塗り層)の透気度は1500秒であった。
実施例5において、使用する紙基材の坪量を180g/m2(厚さ205μm)に変えたこと以外は実施例5と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。この際の(裏面層+紙基材+下塗り層)の透気度は600秒であった。
実施例4において、下塗り層を塗工する前に裏面層を塗工したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。この際の(裏面層+紙基材+下塗り層+インク受容層)の透気度は2400秒であった。
実施例3と同様にして下塗り層を塗工せず、また基材上に8%硼砂水溶液も塗布せずに、基材の一方の面側に、塗工液Bを塗工量が18g/m2になるように塗工した後、直ちに窒素ガス環境下で電子線照射装置(ESI社製エレクトロカーテン)により加速電圧175kV、照射線量50kGyの電子線を照射してインク受容層をハイドロゲル化させ、120℃の熱風乾燥機で乾燥してインク受容層を形成した。
次に、実施例4と同様に裏面層を塗工した。この際の(裏面層+紙基材+インク受容層)の透気度は2500秒であった。
次いで、鏡面ドラムとプレスロールのニップ部で、インク受容層を鏡面ドラム側となるようにし、インク受容層面と鏡面ドラムの間に実施例4の塗工液Dを供給し、プレスロールで圧着しながら塗工後、そのまま鏡面ドラム(表面温度が95℃)で乾燥させて光沢発現層を形成し、インクジェット記録用紙を得た。乾燥塗工量は1.5g/m2であった。
実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。但し、キャスト法による仕上げは行わなかった。
実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。但し、8%硼砂水溶液に代えて、4%硼砂水溶液を下塗り層に塗布した。得られた記録体のインク受容層には、小さなひび割れが見られた。
実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。但し、実施例1のカチオン性高分子−シリカ複合粒子分散液Aに代えて、湿式シリカ(トクヤマ社製、商品名:ファインシールX−30、平均粒子径:3μm、細孔容積2.0ml/g)を使用し、5員環アミジン構造を有するカチオン性化合物(ハイモ社製、商品名:SC−700M、分子量:3万)をシリカ100質量部に対して10質量部添加した。
実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。但し、裏面層を塗工しなかった。
実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。但し、裏面層の塗工量を1.5g/m2から5g/m2に変更した
実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。但し、裏面層をキャスト仕上げした後に塗工した。
実施例1と同様にしてインクジェット記録用紙を作製した。但し、裏面層にでんぷん水溶液を塗工する代りに、下記塗工液Eを5g/m2塗工した。
<塗工液E>
二酸化チタン(堺化学社製、商品名:R−21、平均粒子径0.5μm、細孔容積0.2ml/g)100質量部(固形分)に、バインダーとしてアクリル系重合体(ロームアンドハース社製、商品名:プライマルP−376、エマルジョン型接着剤)20質量部を水中で混合して水分散液(濃度:30質量%)を調製した。
得られたインクジェット記録用紙について、記録画像の色濃度、光沢感、環境カール、及びコックリングを下記に示す方法で評価した。尚、評価には染料インクジェットプリンター(EPSON社製、商標:PM−G820、印字モード:EPSON写真用紙 きれいモード)を使用した。評価結果を表1に示す。
各色インク、及び重色部をベタ印字し、その色濃度をマクベス反射濃度計(モデル:Macbeth RD−920、マクベス社製)にて測定した。ブラックの色濃度を表1に示した。
供試されたインクジェット記録用紙に、ISO−400の画像(「高精細カラーディジタル標準画像データISO/JIS−SCID」、p13、画像名称:果物かご)を印字し、画像を記録体表面に対して傾斜している角度から目視し、下記の4段階に評価した。
◎:銀塩写真と同レベルの光沢感がある。
○:銀塩写真より若干劣るが、充分な光沢感がある。
△:光沢紙としては、光沢感が足りない。
×:光沢はほとんどなく、マットに近いレベル。
供試されたインクジェット記録用紙の白紙、及びISO−400の画像(「高精細カラーディジタル標準画像データISO/JIS−SCID」、p13、画像名称:果物かご)を印字した記録体の印字物を、A4サイズで1枚づつ下記条件の部屋に置き、一日後にカールの状況を調べた。
(イ)常温常湿:温度25℃、湿度60%
(ロ)高温高湿:温度35℃、湿度85%
◎:(イ)、(ロ)の両条件で、白紙、印字物ともにカールはなく、フラットである。
○:(ロ)の条件で、印字物が印字面側に少しカールするが、使用上問題とならないレベ
ル。
△:(ロ)の条件で、白紙及び印字物ともに印字面側にカールする。
×:(イ)、(ロ)の条件で、白紙及び印字物ともに印字面側にカールする。
供試されたインクジェット記録用紙(A4サイズ)にグリーン色を記録体全体にベタ印字し、印字直後からのコックリングを目視で観察し、下記の3段階に評価した。
◎:コックリングは全く見られない。
○:少しコックリングが見られるが、ほとんど目立たない。
×:コックリングが目立つ。
一方、前記細孔直径分布曲線におけるピークとは異なるインク受容層を形成した、比較例のインクジェット記録用紙はいずれかの評価項目に劣るものであった。また、前記透気度となるように裏面層を形成しなかったり、キャスト後に裏面層を形成したり、キャストによる仕上げを行わなかった比較例のインクジェット記録用紙は、どれも良好な光沢を得ることができなかった。
したがって、本発明によれば、インクジェット記録用紙の高温高湿もしくは低温低湿の環境におけるカールが改善され、印字後のコックリングが小さく、光沢と画質に優れたインクジェット記録用紙となる。
Claims (6)
- 紙基材の一方の面にキャスト法により仕上げされたインク受容層、あるいは紙基材の一方の面にインク受容層及びキャスト法により仕上げされた光沢発現層を有するインクジェット記録用紙の製造方法において、該インク受容層の細孔直径分布曲線におけるピークが実質的に0.06μm以下のみであり、かつキャスト法により仕上げを行う前に、紙基材の他方の面に、透気度(JIS−P−8117)が500〜3000秒となるように水溶性樹脂を主成分とする裏面層を形成するインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記透気度が1200〜2500秒となるように前記裏面層を形成する請求項1に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記インク受容層の無機顔料が、平均1次粒子径0.003〜0.04μmの一次粒子が凝集してなる平均2次粒子径が0.7μm以下の気相法シリカ、アルミナ、アルミナ水和物のいずれかである請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記裏面層の水溶性樹脂が、でんぷん又はけん化度が85以上のポリビニルアルコールである請求項1〜3のいずれか一項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 紙基材とインク受容層の間に、BETによる細孔容積が0.5ml/g以下で平均1次粒子径が1μm以下の無機顔料と、エマルションラテックスとを含有する下塗り層を設けた請求項1〜4のいずれか一項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
- 前記光沢発現層が、平均1次粒子径0.01〜0.06μmの単分散コロイド顔料、平均2次粒子径1μm以下のアルミナ、アルミナ水和物、平均2次粒子径0.7μm以下の気相法シリカ、湿式ゲル法シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種の顔料を主成分とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のインクジェット記録用紙の製造方法。
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