JP4502529B2 - 微振動対策の床構成法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、半導体工場など、床の構造方式における微振動スペックの要求が高い建物における微振動対策の床構成法の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体工場など、耐荷重が1000kg/m以上の床の構造方式で微振動スペックの要求が高い床の構成法としては、最近の半導体装置の大重量化と嫌微振動対策のために、床構造は重量構造となっている。
【0003】
他方、床下に配置されるダクトや配管類のメイン配管の配置は、通常は床下の下部スペースを利用するため、それらの分岐管が通りやすい床構造が望まれている。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
しかし、最近の床構造は大重量化しているため、既往技術の如く同一平面上にX、Y両方向の大梁、小梁、根太を展開した場合には、これらの材の間のフリースペース(ダクトや配管類を通す貫通空間、配管空間)が狭くなる。特に大梁の近辺では大口径のダクトを貫通させることができないため、直近の隣接空間を利用して貫通させることもある。その場合には、前記微振動対策を施した床構造(クリーンルームの床)の階では、その床近傍にダクト類が大きく露出して横引き配設されるケースが発生して、美観及びメンテナンス上の問題を生ずるほか、人、物の通行の障害になるという問題も発生している。
【0005】
従つて、本発明の目的は、微振動スペックの高い要求を十分に満たすことができ、しかもダクトや配管類の床上での横引きが短くて済み、床下配管の自由度が高い(開口率が高い又はフリースペースが広い)構成であり、更に施工性に優れて、工期の短縮、及び建設費の低減も図れるように工夫した微振動対策の床構成法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る微振動対策の床構成法は、
床の建方用鉄骨を組み立てる段階と、
前記建方用鉄骨の床構築位置へ、大梁、小梁の取付けを行うこと、特に小梁Cと直角な配置の大梁Aにはせいの高さが大きく、見付幅の小さい部材を使用し、小梁C及び該小梁Cと平行な配置の大梁Bは前記大梁Aの上面から後記根太のせいだけ下がった位置より下方の部位に取り付ける段階と、
前記小梁C及び該小梁Cと平行な配置の大梁Bの上に根太Dを並べて設置し、前記根太D及び大梁Aの上に床板を設置する段階とから成ることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1に記載した微振動対策の床構成法において、
大梁Bは応力を根太のせいだけ下げられたせいと見付幅の大きさで耐える構成とし、この大梁Bと、せいの高い大梁Aとは各々の下面を同一に近い高さレベルに配置し、各大梁下の空間を確保していることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載した微振動対策の床構成法において、
大梁A、Bと小梁C及び根太Dは鉄骨材又はプレキャスト鉄筋コンクリート造部材若しくはこれらの材の複合体であることを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1又は2に記載した微振動対策の床構成法において、
大梁A、B及び小梁Cの上に設置される根太は、ガゼットプレート付きのプレキャスト鉄筋コンクリート造部材又はコンクリート充填ボックス構造体とし、鉄骨材又はプレキャスト鉄筋コンクリート造部材若しくはこれらの複合材である大梁A、B及び小梁Cとは前記ガゼットプレートを利用したボルト締め継手若しくは溶接継手で一体化接合することを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1又は2に記載した微振動対策の床構成法において、
大梁A、B及び小梁C並びに根太Dを取付けるジョイントには、圧着こぶ鉄筋やジョイント用鉄骨継手を採用し、前記ジョイント部を柱と一体にコンクリートを打設して一体化接合することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施形態】
請求項1〜5に記載した発明に係る微振動対策の床構成法の実施形態を、図面に基いて説明する。
【0012】
図1に、本発明に係る微振動対策の床構成法の最小モデル図を、理解し易い大きさで示し、図2〜図4及び図5〜図7にその枢要な建築工程図を示している。
【0013】
先ず図2は、床の建方用鉄骨を一工区分について組み立てた段階を示している。図2の実施形態は、後記する大梁A、Bと小梁C及び根太Dがそれぞれプレキャスト鉄筋コンクリート造部材(以下、Pca部材と略すことがある。)であることを前提とした仮設用鉄骨として、四隅の本柱1にはコンクリート充填鋼管柱(以下、CFT柱と略す場合がある。)を採用し、中間の束柱2及び水平な梁材3と4には、小断面の鉄骨材を使用している。もっとも、水平な梁材3と4は必須のものではなく、場合によっては省略することができる。基礎の図示は省略した。
【0014】
図3は、図2に示した建方用鉄骨の床構築位置へ、大梁A、Bと、小梁Cの取付けを行った段階を示している。小梁Cと直角な配置の大梁A(以下、X方向の大梁Aと言う場合がある。)には、せいの高さが大きく、見付幅の小さい部材(鉄骨材又はPca部材)を使用している。ちなみに、この大梁Aのサイズは、1350×250mm程度とされる。一方、小梁C及び該小梁Cと平行な配置の大梁B(以下、Y方向の大梁Bと言う場合がある。)は、前記X方向の大梁Aの上面から、後記する根太のせい(一例として500mm)だけ下がった位置より下方の部位に取り付けている。ちなみに、このY方向の大梁Bとしては、荷重性能上必要なせいの高さと見付幅(一例として850×450mm程度)の材を採用する。
【0015】
通例、Y方向の大梁Bは、応力を、上述したように根太のせいだけ下げられた(差し引かれた)せいと見付幅の大きさで耐える構成として設計する。そして、大梁Bと、せいの高い大梁Aとは各々の下面を同一に近い高さレベルに配置し、もって各大梁A、Bの下の空間(フリースペース)を十分に確保して、ダクトや配管類の床上での横引きを可及的に短くし、且つ床下配管の自由度を高める(請求項2記載の発明)。
【0016】
図4は、前記小梁C及び該小梁Cと平行なY方向の大梁Bの上に、複数の根太Dを所定の間隔でそれぞれ平行に並べて設置した段階を示している。したがって、根太Dの上面とX方向の大梁Aの上面とは一致し、それぞれの上に床板(但し、その具体的な図示は省略した。)を設置することにより、嫌微振動対策の床が完成される。
【0017】
前記根太D相互間の配置間隔、及び根太Dと平行なX方向の大梁Aとの配置間隔(いわゆるフリースペース=ダクトや配管類を通す貫通空間、配管空間の間隔)は、床上の半導体装置から下階へと接続されるダクトや配管類を、直近の空間を利用して縦に貫通させることが可能であるように、例えば少なくとも350mm程度に設計、施工される。
【0018】
ここで念の為言えば、上記したように小梁C及び該小梁Cと平行なY方向の大梁Bは、X方向の大梁Aの上面から、根太Dのせい(一例として500mm)だけ下がった位置より下方の部位に取り付けられているので、床下(根太Dより下方)には梁せい差による横引き空間が確実に形成される。よって、ダクトや配管類の横引き自由度が高く、半導体工場のようにダクトや配管類の数が多い建物にあっては特に効果的である。
【0019】
上述した大梁A、Bと小梁C及び根太Dは、鉄骨材であるか又はプレキャスト鉄筋コンクリート造部材であるか若しくはこれらの材を適宜組み合わせた複合体であってもよい(請求項3記載の発明)。
【0020】
一方、大梁A、Bと小梁Cの上に設置される根太Dは、ガゼットプレート付きのプレキャスト鉄筋コンクリート造部材又はコンクリート充填ボックス構造体(CFT構造体)として構成し、前記の如く鉄骨材又はプレキャスト鉄筋コンクリート造部材若しくはこれらの複合材である大梁A、B及び小梁Cにもガゼットプレートを設けるなどして、これらは、前記ガゼットプレートを利用したボルト締め継手若しくは溶接継手で一体化接合する(請求項4記載の発明)。
【0021】
或いはまた、上記大梁A、B及び小梁C並びに根太Dを取付けるジョイントには、特に図示することを省略したが、汎用性がある圧着こぶ鉄筋やジョイント用鉄骨継手を採用し、前記ジョイント部を柱と一体にコンクリートを打設して一体化させる方法を実施することも出来る(請求項5記載の発明)。
【0022】
前記コンクリートの打設は、図4のように1工区の床の構築が完成した段階で一気に行い、作業の効率化を図るのが好ましい。
【0023】
次に、図5〜図7は、半導体工場の床が図4のように1工区分完成し、更にY方向の手前側に延長して2工区目が広く構築される場合の手順を示している。いずれにしても、各工区では上述した図2〜図4の工程が繰り返されるにすぎないので、重複する説明は省略する。
【0024】
以上に説明したとおり、本発明の床構成法によれば、大梁A、B及び小梁C並びに根太DにPca部材を使用するときは、数の多いPca部材の製作を工場や現場で先行して行えるので、工期の短縮を図れる。同様に、大梁A、B及び小梁C並びに根太DにPca部材を使用しても、建方用鉄骨の先行組立によって、前記の各Pca部材の取付けを先行して施工できるので、工期の短縮を図れる。
【0025】
Pca部材相互の各ジョイント部は、柱と一体にコンクリートを打設して一体化させると、剛性を確保できるので、床の微振動対策に有利である。
【0026】
X方向の大梁Aのせいの高さを十分に大きくして、相対的に見付幅を根太Dと同程度にまで小さくすることが可能である。かくすることにより開口率の高い床組計画を実現でき、ダクト、配管類の配置設計の自由度が高められる。同様に、せいの高さが大きいX方向の大梁Aに予めダクト、配管類の配置用としての梁貫通孔を設けることにより、配管設計の自由度が更に高い床組計画を実現できる。
【0027】
根太DにPca部材を採用すると、Pca部材自体が高い防振性能を有しているので、その見付幅を小さくでき、開口率の高い床組計画ができるから、例えば大口径の縦配管を設置することも可能である。根太DにPca部材を採用した場合にはまた、Y方向の大梁B及び小梁Cの上に載せ架けるだけで設置施工ができるので、施工性に優れる。根太DにPca部材を採用すると、その製作時に天井インサートを設置することにより、低コストで吊り元を用意することもできる。
【0028】
本設のCFT柱1のコンクリートは現場打ちとなるが、建方用鉄骨の先行組立により、工期を延ばす要因が解消される。勿論、CFT柱1は剛性が高いので、微振動対策に有力である。
【0029】
以上のとおり、本発明の床構成法は、鉄骨造としての実施もさることながら、鉄筋コンクリート造としても好適に実施可能である。その場合には鉄骨造よりも安価なので、全体建設費の低減を図ることができる。
【0030】
【本発明が奏する効果】
請求項1〜5に記載した発明に係る微振動対策の床構成法によれば、微振動スペックの高い要求を汎用技術の実施によって十分に満たすことができる。しかもダクトや配管類の床上での横引きを可及的に短くして、しかも床下配管の設計自由度が高い(開口率が高い)構成であり、美観及びメンテナンスの問題、並びに人や物の通行障害の問題を解決できるほか、施工性にも優れており、工期の短縮、建設費の低減も図れるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る微振動対策の床構成法の実施形態をモデル化して示した斜視図である。
【図2】第1工区について床の建方用鉄骨を組み立てた段階を示す斜視図である。
【図3】前記建方用鉄骨へ大梁、小梁を取り付けた段階の斜視図である。
【図4】第1工区の根太を設置した段階の斜視図である。
【図5】第1工区に続く第2工区について床の建方用鉄骨を組み立てた段階を示す斜視図である。
【図6】前記建方用鉄骨へ大梁、小梁を取り付けた段階の斜視図である。
【図7】第2工区の根太を設置した段階の斜視図である。
【符号の説明】
1 本柱(CFT柱)
2 束柱
A X方向の大梁
B Y方向の大梁
C 小梁
D 根太

Claims (5)

  1. 床の建方用鉄骨を組み立てる段階と、
    前記建方用鉄骨の床構築位置へ、大梁、小梁の取付けを行うこと、特に小梁Cと直角な配置の大梁Aにはせいの高さが大きく、見付幅の小さい部材を使用し、小梁C及び該小梁Cと平行な配置の大梁Bは前記大梁Aの上面から後記根太のせいだけ下がった位置より下方の部位に取り付ける段階と、
    前記小梁C及び該小梁Cと平行な配置の大梁Bの上に根太Dを並べて設置し、前記根太D及び大梁Aの上に床板を設置する段階とから成ることを特徴とする、微振動対策の床構成法。
  2. 大梁Bは応力を根太のせいだけ下げられたせいと見付幅の大きさで耐える構成とし、この大梁Bと、せいの高い大梁Aとは各々の下面を同一に近い高さレベルに配置し、各大梁下の空間を確保していることを特徴とする、請求項1に記載した微振動対策の床構成法。
  3. 大梁A、Bと小梁C及び根太Dは鉄骨材又はプレキャスト鉄筋コンクリート造部材若しくはこれらの材の複合体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載した微振動対策の床構成法。
  4. 大梁A、B及び小梁Cの上に設置される根太は、ガゼットプレート付きのプレキャスト鉄筋コンクリート造部材又はコンクリート充填ボックス構造体とし、鉄骨材又はプレキャスト鉄筋コンクリート造部材若しくはこれらの複合材である大梁A、B及び小梁Cとは前記ガゼットプレートを利用したボルト締め継手若しくは溶接継手で一体化接合することを特徴とする、請求項1又は2に記載した微振動対策の床構成法。
  5. 大梁A、B及び小梁C並びに根太Dを取付けるジョイントには、圧着こぶ鉄筋やジョイント用鉄骨継手を採用し、前記ジョイント部を柱と一体にコンクリートを打設して一体化接合することを特徴とする、請求項1又は2に記載した微振動対策の床構成法。
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