JP4010260B2 - 小梁構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、積載荷重の大きい建物などにおいて床の振動性状の向上を図り床振動の低減を目指した小梁構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば倉庫や物流センター等の積載荷重の大きい建物において、大梁で囲まれる面積が大きい床を有する大スパンを実現する場合、平行フランジとウェブを溶接で組立ててなる組立H形鋼を用い、この単体の梁の断面性能を変化させることにより強度や振動性状を確保した梁構造が採用されてきた。その際、設備計画によって配管類が必要となる場合は、予めウェブに孔を開けて貫通孔を設けている。この貫通孔は、通常、建方工事前に製作され、必要に応じて補強が施される。また、大梁と小梁の接続は、通常、ピン接合とされているが、倉庫等の重量床では、床振動性状を改善すべく、連梁として、大梁と小梁の接続は溶接による剛接合とするのが一般的である。
【0003】
また、本発明に関連する先行技術文献として、特許文献1がある。これは、倉庫等の平面的に広がりのある建築物の架構に関するものであり、鉄筋コンクリート造の耐力壁からなるコア壁及び鉄骨柱と鉄骨梁とをピン接合し、建築物全体の水平力をコア壁に全て負担させ、鉄骨小梁を支持する鉄骨大梁は鉛直荷重が大きいので鉄骨柱と剛接合するものである。
【0004】
【特許文献1】
特開平7−279247号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述のような従来の組立H形鋼を用いた梁構造の場合、次のような問題点がある。
【0006】
(1) 床振動性状に対しては、梁断面が大きくなり、部材断面については、標準H形鋼では納まらず、組立H形鋼となるため、組立H形鋼の製作コストがアップする。
【0007】
(2) 小梁を剛接合とした場合には、溶接が多数発生するため、コストアップとなる。
【0008】
(3) 剛接合の場合はブラケットが必要となるため、鋼材量が増加し、コストアップとなる。
【0009】
(4) 梁貫通孔が多数発生することにより、コストがアップする。
【0010】
(5) 早い時期(梁製作段階)における梁貫通孔の位置確定と、配管計画決定による設計スケジュールとに不一致が発生する。近年の時流の変化の速さから、竣工時に望まれる配管計画を早期の着工直後に見極めるのは困難であり、通常、配管設計サイドは決定しきれない場合は予備貫通孔を要求するため、竣工時に結果的に不要となった貫通孔が残ることや、梁貫通孔の位置や大きさが問題となって配管計画に制約を受けることがある。
【0011】
(6) 建物の長寿命化により、竣工後に設備計画のルート変更や配管の追加を行う場合、供用中の建物に新たな梁貫通孔を施工することは、孔開けと補強にコストがかかるだけでなく、使用中の部屋の養生を始め、施工の作業性も悪く、難しい工事となる。
【0012】
本発明は、このような問題点を解消すべくなされたもので、その目的は、積載荷重の大きい建物において、大梁で囲まれる面積が大きい床を有する大スパンを実現する場合に、標準H形鋼などの汎用の梁材を用いて強度及び振動性状を満足する梁構造が得られると共に、梁貫通孔を無くし、コストの低減、自由な配管計画、配管ルートの増設変更に対するフレキシブルな対応が可能となる小梁構造を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る発明は、大梁と大梁との間に配置される小梁であって大梁よりも梁せいの小さい小梁の両端がそれぞれ大梁の上部にピン接合され、小梁の接合端部の下に大梁の下部から鉛直面内を斜めに立ち上がって小梁の接合端部を支持する突き上げ材が設けられ、この突き上げ材の上下端部がそれぞれ大梁の下部と小梁の接合端部の下面にピン接合されることにより、小梁の両端部に、大梁と小梁と突き上げ材によるトラスが形成され、小梁の両端部のトラスによる剛接合によって大梁のスパンが短縮されていることを特徴とする小梁構造である。
【0014】
本発明は、倉庫や物流センター等の積載荷重の大きい建物などにおいて、大梁で囲まれる面積が大きい床を有する大スパンを実現する場合に有効に適用されるものである。小梁には、H形鋼やその他の類似形鋼など、一般に梁に用いられている梁材を使用する。この小梁の接合端部を大梁にボルト等によりピン接合し、溝形鋼等の突き上げ材の上下端部をそれぞれ大梁の下部と小梁の接合端部にボルト等によりピン接合して、小梁の接合端部にトラスを形成し、小梁の鉛直剛性を改善する。
【0015】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の小梁構造において、大梁が上梁と下梁を束材で連結して構成される二段梁であり、上梁の束材位置に小梁の端部がピン接合され、下梁の束材位置に突き上げ材の下端部がピン接合され、上梁・束材・下梁と小梁と突き上げ材によりトラスが形成されていることを特徴とする小梁構造である。
【0016】
大梁に二段梁を用いた場合であり、H形鋼やその他の類似形鋼など、一般に梁に用いられている梁材を束材で連結一体化して二段梁を形成し、上梁と下梁の間に設備配管類の設備用開口を形成する。束材は、水平方向に間隔をおいて複数配設し、例えばスパン中央部と両端部に配置する。上梁と下梁は、同一または異なる梁せいの梁材を用いることができるが、鉛直荷重を直接受ける上梁の梁せいを大きくし、下梁の梁せいを小さくして設備用開口が下方に位置するようにするのが好ましい。上梁、下梁とも柱に溶接等による剛接合とすることにより、地震力に対して抵抗できるようにするのが好ましい。柱には高性能のCFT柱(コンクリート充填鋼管柱)を用いるのが好ましい。上梁と下梁を連結する束材は、上梁側、下梁側ともボルト等によるピン接合とし、軸力のみを負担し、曲げモーメントを負担しない構造とし、上下の梁が鉛直荷重に対して抵抗できるようにするのが好ましい。
【0017】
以上のような本発明の小梁構造によれば、小梁の接合端部のトラス効果により、応力状態は剛接合となり、かつ、スパンは両端部の一対の突き上げ材内に短縮されるため、小梁本体は、見かけ上、一対の突き上げ材間をスパンとした剛接合の梁と同程度まで低減された応力状態となる。これにより、応力の低減及び構造的な剛性の増大が見込めることから、床振動を大幅に低減することができ、また、小梁の梁材本体の断面を小さくすることができ、H形鋼断面は標準H形鋼範囲内となる可能性が増し、標準H形鋼を使用できれば、組立H形鋼の溶接が不要となることにより、よりコストダウンを図ることができる。
【0018】
さらに、小梁の梁せいの縮小により、従来のような加工や補強等にコストのかかる貫通孔が不要となるため、コストダウンを図ることができる。また、梁貫通孔を必要としないことから、従来のような配管設計スケジュールのミスマッチが解消され、設備配管計画の自由度が大幅に増す。さらに、竣工後にルート変更や配管類の追加がある場合にも、鉄骨工事や養生等が不要となり、容易に、フレキシブルに、低コストで対応することができる。
【0019】
また、大梁に二段梁を用いた場合、床振動の低減、標準H形鋼の使用によるコストダウン、配管設計スケジュールのミスマッチの解消、ルート変更や配管類の追加の場合の対応などの効果が得られ、前述の小梁の効果と相まって、倉庫や物流センター等の積載荷重の大きい建物などにおいて、より有用な効果が得られる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示する一実施形態に基づいて説明する。この実施形態は、倉庫や物流センター等の積載荷重の大きい建物に適用した例であり、また大梁に二段梁を用いた例である。図1は、本発明の小梁構造の概略的な実施形態とその撓み性状を示したものである。図2は、具体的な実施形態の一例を示したものである。
【0021】
図1(a) の平面図において、柱1に接続された大梁2のスパン中央部に小梁3の端部が接続されている。大梁2は、図1(b) の正面図に示すように、上梁2aと下梁2bを束材2cで連結一体化した二段梁構造とされている。束材2cは、大梁2のスパン方向中央部と両端部に配設されており、スパン方向中央部の束材2cの位置に小梁3の端部が接続される。
【0022】
このような梁構造において、本発明では、上梁2aと小梁3とをボルトでピン接合し、小梁3の接合端部に下梁2bから鉛直面内を斜めに立ち上がって小梁3の接合端部を支持する突き上げ材4を設け、この突き上げ材4の下端部を下梁2bにボルトでピン接合し、上端部を小梁3の接合端部の下面にボルトでピン接合する。
【0023】
図1(c) に示すように、小梁3の接合端部には、小梁3の接合端部と、斜めの突き上げ材4と、束材2c等によりトラスが形成され、鉛直剛性が改善され、応力及び撓み性状が大幅に改善される。即ち、端部のトラス効果により、応力状態は剛接合となり、かつ、スパンは突き上げ材4,4内に短縮されるため、梁本体は、見かけ上、突き上げ材4,4間をスパンとした剛接合の梁と同程度まで低減された応力状態となる。
【0024】
応力の低減及び構造的な剛性の増大が見込めることから、床振動を大幅に低減することができ、また、小梁3の梁材本体の断面を小さくすることができ、H形鋼断面は標準H形鋼範囲内となり、標準H形鋼を使用することができ、組立H形鋼の溶接が不要となることにより、コストダウンを図ることができる。さらに、小梁3の梁せいの縮小により、配管類の梁貫通孔が不要となり、コストダウンを図ることができると共に、配管計画の自由度の向上が確保される。
【0025】
図2において、柱1はCFT柱(コンクリート充填鋼管柱)であり、大梁2は、標準H形鋼からなる上梁2aと下梁2bと束材2cから構成される二段梁構造であり、上梁2aと下梁2bとの間に設備配管類の設備用開口5が形成される。CFT柱1の接合部に設けられた一対の通しダイヤフラム10,10に、上梁2a、下梁2bの上下フランジが溶接により剛接合され、地震力に対して抵抗できるようにされている。
【0026】
束材2cの上下端部は、上梁2aの下フランジ下面および下梁2bの上フランジ上面にガセット板11とボルトによりピン接合され、軸力のみを負担し、曲げモーメントを負担しない構造とされている。
【0027】
小梁3は、上梁2aと同じ寸法の標準H形鋼からなり、上梁2aのウェブにカットティーやガセット板12とボルトによりピン接合されている。突き上げ材4は、溝形鋼であり、小梁3の下フランジ下面と下梁2bに設けたガセット板13,14とボルトによりピン接合されている。
【0028】
また、大梁に二段梁を用いた場合、▲1▼上梁と下梁が束材により一体となって鉛直剛性が向上し、床振動が低減され、▲2▼高性能のCFT柱等と二段梁の組合せにより高い水平耐力が得られ、地震時の変形を低減することができ、▲3▼梁が二段構造となることにより、柱に生じる最大曲げモーメントの低減が可能となり、柱断面を小さく設計することができ、建物機能性の向上を図ることができ、▲4▼振動及び応力を満足させた上で梁せいを縮小することができ、標準H形鋼を用いることができ、コストダウンを図ることができ、▲5▼上梁と下梁の間に設備配管類の設備用開口が形成され、従来のような加工や補強等にコストのかかる貫通孔が不要となるため、コストダウンを図ることができ、▲6▼梁貫通孔を必要としないことから、従来のような配管設計スケジュールのミスマッチが解消され、設備配管計画の自由度が大幅に増し、▲7▼竣工後にルート変更や配管類の追加がある場合にも、鉄骨工事や養生等が不要となり、容易に、フレキシブルに、低コストで対応することができる。
【0029】
なお、以上は、倉庫等の建物に適用した例を示したが、これに限らず、その他の建物にも適用できることは言うまでもない。
【0030】
【発明の効果】
本発明は、以上のような構成からなるので、次のような効果を奏する。
【0031】
(1) 小梁の接合端部のトラス効果により、応力状態は剛接合となり、かつ、スパンは両端部の一対の突き上げ材内に短縮されるため、小梁本体は、見かけ上、一対の突き上げ材間をスパンとした剛接合の梁と同程度まで低減された応力状態となり、応力の低減及び構造的な剛性の増大が見込めることから、床振動を大幅に低減することができる。
【0032】
(2) 小梁の梁材本体の断面を小さくすることができ、H形鋼断面は標準H形鋼範囲内となる可能性が増し、標準H形鋼を使用できれば、組立H形鋼の溶接が不要となることにより、よりコストダウンを図ることができる。
【0033】
(3) 小梁の梁せいの縮小により、従来のような加工や補強等にコストのかかる貫通孔が不要となるため、コストダウンを図ることができる。
【0034】
(4) 梁貫通孔を必要としないことから、従来のような配管設計スケジュールのミスマッチが解消され、設備配管計画の自由度が大幅に増す。
【0035】
(5) 竣工後にルート変更や配管類の追加がある場合にも、鉄骨工事や養生等が不要となり、容易に、フレキシブルに、低コストで対応することができる。
【0036】
(6) 大梁に二段梁を用いた場合、床振動の低減、標準H形鋼の使用によるコストダウン、配管設計スケジュールのミスマッチの解消、ルート変更や配管類の追加の場合の対応などの効果が得られ、前述の小梁の効果と相まって、倉庫や物流センター等の積載荷重の大きい建物などにおいて、より有用な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の小梁構造の概略的な実施形態を示す正面図である。
【図2】本発明の小梁構造の具体的な実施形態の一例を示したものであり、(a) は大梁の正面図、(b) は柱の水平断面図、(c) は小梁の正面図である。
【符号の説明】
1……柱
2……大梁
2a…上梁
2b…下梁
2c…束材
3……小梁
4……突き上げ材
5……設備用開口
10……通しダイヤフラム
11……ガセット板
12……ガセット板
13……ガセット板
14……ガセット板

Claims (2)

  1. 大梁と大梁との間に配置される小梁であって大梁よりも梁せいの小さい小梁の両端がそれぞれ大梁の上部にピン接合され、小梁の接合端部の下に大梁の下部から鉛直面内を斜めに立ち上がって小梁の接合端部を支持する突き上げ材が設けられ、この突き上げ材の上下端部がそれぞれ大梁の下部と小梁の接合端部の下面にピン接合されることにより、小梁の両端部に、大梁と小梁と突き上げ材によるトラスが形成され、小梁の両端部のトラスによる剛接合によって大梁のスパンが短縮されていることを特徴とする小梁構造。
  2. 請求項1に記載の小梁構造において、大梁が上梁と下梁を束材で連結して構成される二段梁であり、上梁の束材位置に小梁の端部がピン接合され、下梁の束材位置に突き上げ材の下端部がピン接合され、上梁・束材・下梁と小梁と突き上げ材によりトラスが形成されていることを特徴とする小梁構造。
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