JP4497716B2 - 被記録媒体、その製造方法及び画像形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基材上に多孔性有機樹脂を積層した被記録媒体、及び、その製造方法、更に、上記被記録媒体に対して、好ましくは、インクジェット記録方式により記録を行う画像形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて被記録媒体(紙等)に付着させ、画像や文字等の記録を行なう方法であり、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が高く、現像及び定着が不要である等の特徴があり、様々な用途において急速に普及している。更に、多色インクジェット記録方式によれば、従来の製版方式による多色印刷や、カラー写真方式による印画と比較しても遜色のない多色画像を形成することが可能であり、しかも、作成部数が少ない場合には、通常の多色印刷や印画よりも安価に印刷物が得られることから、フルカラー画像記録の分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
上記インクジェット記録方式については、従来より、記録の高速化、高精細化、フルカラー化等の記録特性の向上の要求に伴って、インクジェット記録装置や記録方法の改良が行われてきているが、同時に、使用する被記録媒体に対しても高度な特性が要求されている。インクジェット記録方式では、ノズルから被記録媒体に向けてインク液滴を高速で射出する必要上、水、又は、水と有機溶剤との混合液等の水性溶媒を多量に含むインクが使用されている。従って、高い色濃度の記録画像を得るためには、大量のインクを使用しなければならない。又、インク液滴は連続的に射出されるので、インクのドットが接合するビーディング現象が生じ、画像が乱れる場合がある。このビーディング現象を防止するには、使用する被記録媒体が、インク吸収量が大きく、且つ、インク吸収速度の速いものであることが要求される。
【0004】
かかる要求を解決するために、従来から、多種多様の被記録媒体の形態が提案されている。例えば、吸収性、発色性、解像度を良好なものにするために、特開平2−276670号公報に記載されているような、基材上に、無機粒子(アルミナ水和物等)を含む多孔質層を有する被記録媒体が数多く提案されている。更に、特開平4−101880号公報に記載されているような、基材上に、インクの溶媒により溶解又は膨潤する透明樹脂で構成されたインク定着層を有する被記録媒体が提案されている。
又、特公平2−18146号公報や特公平2−31673号公報のように、基材上の熱可塑性の樹脂粒子、エマルジョン、ラテックスからなる被記録媒体が提案されている。更に、本発明者により顔料インク対応として特開平11−192775号公報が提案されている。
【0005】
又、特開平9−99634号公報にはインク受容層が、塩基性ポリマーとスチレン/(メタ)アクリル酸重合体とのポリマーコンプレックスを含有してなる、バインダーと有機粒子を一度溶解後、混合して得られるポリマーコンプレックからなる被記録媒体が提案されている。
又、特開平9−156211号公報には、透明支持体上に設けられたインク受容層が、平均粒子径が200nm以下の架橋されたポリマー微粒子と水溶性樹脂とからなり、シートの透過率が80%以上であることを特徴とする被記録媒体が記載されている。
又、特開平10−324053号公報では、カルボキシセルロースの硝酸エステル類を含むエマルジョンと成膜助剤から多孔質皮膜を形成することを特徴とする被記録媒体が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記に例示した従来の技術は、被記録媒体について、インクの吸収性や、形成された画像の解像度、画像濃度、透明性及び光沢度等に対して種々の特性改良を行ったものではあるが、かかる被記録媒体であっても、最近の記録装置の目覚ましい進歩により、銀塩写真に匹敵する画質を高速印字することが行なわれるようになるに伴って幾つかの問題点が発生してきている。
【0007】
例えば、特開平2−276670号公報に開示されている無機粒子(アルミナ水和物等)からなる多孔質層を表面に形成した被記録媒体は、画質や光沢の面で優れているが、表面が傷つき易いため、プリンターの搬送方法によっては、搬送傷を生じ易い。又、無機粒子と有機樹脂による組み合わせであるために、OHPフィルムのような透過タイプの使用目的では、透明性が高く、比較的HAZEが低い場合でも、シートの影が投影されてしまうという問題がある。これは、無機粒子と有機樹脂と空孔の屈折率の違いから生じるものと思われる。又、顔料インクを印字した場合には、顔料インクの顔料成分の大きさに比べて多孔質層の空孔が小さいため、表面に顔料成分が堆積して多孔質層中に取り込まれないので、画像の耐擦過性が劣るという問題がある。更には、無機粒子を主体とした多孔質層を形成した被記録媒体特有の問題として、シート自体の黄変の問題等もある。
【0008】
又、特開平4−101880号公報に記載のような、インクの溶媒に、より溶解又は膨潤する樹脂を用いたインク定着層を有する記録媒体の場合は、インクの乾燥速度が遅く、記録後、しばらくの間べたつくという問題がある。更に、インク受容層自体の十分な耐水性が得られず、湿度の影響による染料のマイグレーションが生じる問題もあった。更には、インク受容層自体の耐水性がないため、顔料を色材用いて記録した場合に、印字部(特に、べた部)にクラックが生じるといった問題もある。
【0009】
又、特公平2−18146号公報や特公平2−31673号公報に記載されている被記録媒体のような、基材上に、熱可塑性の樹脂粒子、エマルジョン及びラテックスからなるインク受容層を形成した被記録媒体では、インクの吸収速度は速いが、熱可塑性の樹脂粒子間の隙間のみを利用したものなので、十分なインク吸収能を得るためにはインク受容層の膜厚を厚くする必要があり、それに伴って、膜の透明性と膜強度が低下するという問題がある。又、特開平11−192775号公報に記載されている被記録媒体は、顔料インクに対応するものとして改良がなされたものであるが、画像形成後に加熱処理するものであり、その構成及び技術的思想を異にするものである。
【0010】
又、特開平9−99634号公報で提案されている、インク受容層がインダーと有機粒子との組み合わせからなる被記録媒体では、バインダーと有機粒子とを一旦溶剤に溶解後、混合して得られるポリマーコンプレックによりインク受容層を形成しているため、この構成では、インク受容層中に十分な空孔が形成されず、インクの吸収速度に関しては十分なものは期待できない。
【0011】
又、特開平9−156211号公報に記載されている、透明支持体上に、平均粒子径が200nm以下の架橋されたポリマー微粒子と水溶性樹脂とからなるインク受容層が設けられた被記録媒体では、バインダーに水溶性樹脂を用いているために、微粒子間に十分な隙間を形成することができず、しかも微粒子に対して1:1〜1:10の範囲で水溶性樹脂を多く混合することからも、隙間による吸収速度を高めることは困難である。
【0012】
又、特開平10−324053号公報に記載されている、カルボキシセルロースの硝酸エステル類を含むエマルジョンと成膜助剤とから多孔質皮膜を形成した被記録媒体の場合は、エマルジョン粒子間に隙間が形成されるが、多孔質皮膜層中のpHの調整が難しく、pHが低く酸性側にある場合にはインクを印字後に染料が特異な凝集を起こし、従来の染料の色味と異なってしまうことがあった。
【0013】
本発明は、以上説明した従来技術の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、インク吸収速度が高く、形成された画像のべたつきが防止され、透明性が高く、顔料インクの定着性が良好で、印字部のクラックの発生が防止され、又、染料インクの色再現性に優れ、画像を形成した場合に十分な画像濃度や階調性が得られ、更に、耐水性や定着性に優れた画像形成を可能とできる被記録媒体、及び、該被記録媒体の製造方法、該被記録媒体に対して良好に記録を行うことができる画像形成方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。即ち、本発明は、水溶性有機溶剤及び水を含むインクに用いられ、基材上に少なくとも1層の多孔性有機樹脂層が形成されている被記録媒体において、多孔性有機樹脂層が、親水基及び疎水基を共に有する有機微粒子と、吸水性の樹脂エマルジョンと空隙とから形成されており、該吸水性の樹脂エマルジョンは、樹脂エマルジョンのもつ体積当たりに吸収できるインク量で示される吸収能が0.5〜10.0倍である吸水性を有し、該多孔性有機樹脂層の細孔分布曲線が、細孔半径が3nm〜300nmの範囲に最大ピークを持ち、且つ、その細孔容積が0.2cm3/g以上であり、JIS P 8133に準じて測定した多孔性有機樹脂層中のpHが5.2以上であることを特徴とする被記録媒体である。
【0015】
又、本発明は、水溶性有機溶剤及び水を含むインクに用いられ、基材上に少なくとも1層の多孔性有機樹脂層を形成する被記録媒体の製造方法において、親水基と疎水基を共に有する有機微粒子、吸水性の樹脂エマルジョン及び塩基性物質を含み、該吸水性の樹脂エマルジョンは、樹脂エマルジョンのもつ体積当たりに吸収できるインク量で示される吸収能が0.5〜10.0倍である吸水性を有し、且つ、JIS Z 8802に準じて測定した液pHが5.2以上である水分散体を塗工液とし、該塗工液を基材上に塗工し、乾燥して多孔性有機樹脂層を形成することを特徴とする被記録媒体の製造方法である。
更に、本発明は、被記録媒体にインクジェット記録により画像を形成する画像形成方法において、被記録媒体に上記被記録媒体を用いることを特徴とする画像形成方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、好適な実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の被記録媒体の一例を示す模式断面図である。この被記録媒体100は、基材101上に、多孔性有機受容層102を積層してなる。基材101としては、従来より知られる各種の部材を制限なく使用できる。例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ETFE等のフッ素系樹脂等の各種プラスチック製シート類、銀塩写真に用いられる印画紙、ばらいた紙、レジンコート紙等の特殊加工した紙類、普通紙等の表面加工のない紙類等が挙げられる。これらの中でも、表面性の高い、プラスチック製シート類を基材として用いることにより、その上に形成した多孔性有機樹脂層表面の光沢性を高めることができ、光沢フィルムシートとして利用できる。更に、透明な基材を用いることにより、OHPシート等のような透過タイプの被記録媒体として用いることができる。
【0017】
上記したような基材表面に積層される多孔性有機樹脂層102は、熱によって溶融しにくい有機微粒子と吸水性バインダーとの組み合わせからなる主に有機樹脂材料で形成され、且つ、その間に空隙が形成されていることを特徴とする。このような構成を有する本発明の被記録媒体100に対して記録を行うには、多孔性有機樹脂層102上にインクを付与すればよい。インクが付与されると、先ず、インク中の溶媒分が多孔性有機樹脂層102の空隙中を通過し、更に、有機微粒子間に存在している吸水性バインダーがインク吸収の役目を果たし、多段階的に十分なインク吸収がなされる。
【0018】
本発明の被記録媒体は、被記録媒体を構成する多孔性有機樹脂層102の空隙の大きさが、細孔分布を測定した場合に、分布曲線における細孔半径の最大ピークを3nm〜300nmの範囲に持つことを特徴とする。即ち、多孔性有機樹脂層102の細孔分布曲線が、細孔半径3nmよりも小さいところに最大ピークを持つ場合には十分なインク吸収能が得られず、一方、300nmよりも大きいところに最大ピークを持つ場合には、インクの滲み現象が生じてしまう。更に、十分な吸収性と透明性を得るためには、特に、多孔性有機樹脂層102の空隙の分布曲線における細孔半径の最大ピークを、7nm〜100nmの範囲に持つように構成することがより好ましい。最大ピークとは、ピークのうちの最大のものをいう。
【0019】
多孔性有機樹脂層102におけるインクの吸収容量に関しては、多孔性有機樹脂層中の空隙による細孔の分布率と、その膜厚によって調整することが可能であるが、本発明の被記録媒体においては、インク吸収速度を速めるために、その細孔容積が0.2cm3/g以上となるようにする。より好ましくは、0.5cm3/g以上、1.0cm3/g以下とする。ここでいう空隙は、多孔性有機樹脂層中で上下方向及び左右方向といった2次元及び3次元方向に連結した細孔構造として形成されたものであり、かかる構造を有するため、インクが付与された場合に、インク中の溶媒分が速やかに細孔中を通過していくことが可能となる。尚、前記した多孔性有機樹脂層102の空隙による細孔分布の測定は、窒素吸着脱離法により測定した。
【0020】
本発明の被記録媒体を構成する多孔性有機樹脂層の、上記したような特性を満足する最適な空隙の形成は、多孔性有機樹脂層の形成材料である有機微粒子の種類、粒子径及び形状等、又、有機微粒子と共に用いる吸水性バインダーの種類や、有機微粒子に対する吸水性バインダーの混合比率等、更には、多孔性有機樹脂層を形成する場合の乾燥条件や膜厚等の関係を適宜に調整することによって可能となる。この結果、多孔性有機樹脂層において、インクの溶媒分の十分な通過吸収作用が得られ、十分なインク吸収性が達成される。
【0021】
本発明で使用する有機微粒子とは、実質的に熱で可塑化しない有機ピグメントを示す。本発明では、有機微粒子として、その骨格内に親水性と疎水性の基を共に有するものを用いるが、これにより、塗工液を作製する場合に、各種の水系樹脂水溶液との混合が可能になり、更に、親水性と疎水性の基の比率を適宜に調整することにより、形成される膜そのものの耐水性を確保することが可能になる。
具体的には、公知の樹脂、例えば、アクリル系、エステル系、塩化ビニル系、酢酸ビニル系、スチレン系、ブタジエン系、セルロース系等のモノマーからなる樹脂、及び、それらを化学修飾、例えば、エステル化やエーテル化した誘導体からなる樹脂を用いることができる。
【0022】
本発明においては、特に、有機微粒子として、ノニオン系乳化剤若しくはカチオン性乳化剤を用いて乳化重合する乳化重合法によって溶媒中に分散された状態で形成された有機微粒子を使用することが好ましい。具体的には、親水性の高い置換基を導入したものをモノマーとして1種類以上選び、上記のような乳化剤と、水や有機溶媒等の液媒体とを混合して乳化重合することによって得られたものを使用する。
又、これらの有機微粒子の中でも、吸水性のバインダーと組み合わせて使用した場合に、透明性を低下させることなく多孔性有機樹脂層を形成するために、その屈折率が1.40〜1.60のものを選択することが好ましい。
【0023】
又、先に説明した所望の大きさの空隙が多孔性有機樹脂層中に存在するようにするためには、有機微粒子として、溶融しにくいガラス転移温度を有しているものを使用することが好ましい。この際、多孔性有機樹脂層は、熱による乾燥で生じるバインダーの接着により膜を形成することから、100℃以上の乾燥条件が想定される。従って、使用する有機微粒子のガラス転移温度としては、これよりも高い120℃〜220℃であることが好ましい。
これらの中でも、アクリル系、セルロース系のモノマーを乳化重合したものが低屈折率、及び、高Tgが得られることから好適に用いられる。具体的な例としては、セルロース系の中でも、本発明の被記録媒体材料に用いるのに特に好適な材料としては、特開平9−324053号公報に記載されているカルボキシセルロースの硝酸エステル類が挙げられる。
【0024】
更に、上述したような光散乱の少ない空隙による細孔を得るためには、粒子径が5nm〜300nmの範囲にある有機微粒子を使用することが好ましい。即ち、粒子径が小さすぎる場合には、十分な空隙数が得られにくく、粒子径が大きすぎる場合には、光散乱の影響が大きくなり、多孔性有機樹脂層の透明性が低下する恐れがある。更には、有機微粒子として、粒子径が5nm〜250nmの範囲のものを使用することがより好ましい。尚、上記有機微粒子の粒子径の測定には、準弾性レーザー光散乱法(動的光散乱法)等の一般の方法を用いた。
本発明の被記録媒体は、上記したような有機微粒子を用いているため、従来の、アルミナ水和物等の無機粒子を含む多孔質層が形成された被記録媒体とは異なり、シート自体の黄変が起こりにくく、更には、インク吸収時に、印字部周辺の白化現象が生じることも少ない。
【0025】
本発明の被記録媒体では、上記したような材料及び粒径を有する有機微粒子をバインダーによる接着で結合させることで、多孔性有機樹脂層中に所望の空隙を形成させるわけであるが、多孔性有機樹脂層中に、より多く空隙を形成させるためには、使用する有機微粒子が異形であることが望ましい。又、有機微粒子として、多くの凹凸形状を有するものを使用することも有効である。異形の有機微粒子を作成する方法としては、例えば、既存の微粒子をシード(種)として、これにモノマーを吸収させて重合する方法や、粒子の表面に改質を行う方法等により、異形の有機微粒子を形成することができる。
【0026】
又、多孔性有機樹脂層中の空隙率を高めるためには、更に、有機微粒子として多孔性のものを使用することが望ましい。多孔性の有機微粒子を形成する具体的な方法としては、有機微粒子を形成する際に、架橋成分を導入して粒子内に橋架け構造を形成する方法等が挙げられる。有機微粒子中の空隙率は、粒子の粒子径との関係により、多孔性有機樹脂層の透明性が損なわれない空隙率とすることが有効である。上述した粒子径の範囲では、空隙率が5〜70%の範囲であればインク吸収に有効な空隙を得ることができ、且つ、膜の透明性を維持することが可能となる。
【0027】
先に述べた有機微粒子の形成に乳化重合に用いる場合の乳化剤としては、例えば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤のいずれかを、単独又は組み合わせて用いることができる。特にインクジェット記録の用途には、画像形成に用いるインクのイオン性がアニオン性であることから、インク受容層である多孔性有機樹脂層を、これとは逆のイオン性であるカチオン性にすることによって、インク定着性を高めることができるので、カチオン系乳化剤を用いることが好ましい。又、別にカチオン性物質を添加してインク定着性を向上させることもできるが、この場合に、上記においてアニオン性乳化剤が用いられている場合には、ゲル化、増粘等の弊害が生じないように、添加できるカチオン性物質の添加量が制限される。従って、この場合には、ノニオン性及びカチオン性、若しくは、これらの混合系乳化剤を使用することが好適である。
【0028】
又、本発明で使用する有機微粒子は、その構造中に、疎水性基と親水性基とを共に有するものであることを特徴とする。有機微粒子に、疎水基を有するものを使用することによって、多孔性有機樹脂層を耐水性に優れたものとできる。即ち、インクの付与時や、被記録媒体上に付与されたインクへ外部から水が飛散したり、更には、画像が湿度の影響を受けた場合に、インク受容層が溶け出さないようにすること、即ち、多孔性有機樹脂層の皮膜層の耐水性コントロールが可能となる。一方、有機微粒子に、親水性を有するものを使用することにより、インク付与時に起こるインクのはじきや滲みの発生を有効に防止できる。更に、疎水性と親水性のバランスを適宜にコントロールした有機微粒子を使用することにより、インク受容特性、定着性、耐水性、受容層のべたつきの抑制、透明性及び発色性等の特性を、更に向上させることができる。
【0029】
上記疎水性基の具体的な例としては、例えば、エステル基、アリル基、ビニル基、プロペニル基等が挙げられ、具体的には、親水基を公知の方法で置換する方法等が用いられる。又、上記親水性基の具体的な例としては、例えば、カルボキシル基、スルホン基、水酸基、ホスホン酸基等のカチオン性基、アミノ基、アミド基、エチレンイミン基等のカチオン性基が挙げられ、親水性の強弱をコントロールするためにこれらの親水基の中から適宜選択して有機微粒子の構造中に導入させる。
更に、これらの疎水基や親水基の、疎水性、親水性の強弱を考慮して、幾つかの置換基を組み合わせて有機微粒子の構造設計をすることにより、上記の種々の特性を向上させることができる。
【0030】
上記で説明した有機微粒子と共に、本発明の被記録媒体を構成する多孔性有機樹脂層を形成する際に使用する吸水性のバインダーとしては、分散体、即ち、水や溶媒中に溶解していない粒子状態を維持しているもの(樹脂エマルジョン)が好ましく用いられる。分散体としては、水分散体、水及びアルコール等の混合溶剤への分散体、有機溶剤への分散体があり、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、ポリエステル系樹脂等、及びそれらの混合体、共重合体、複合体等の吸水性の樹脂エマルジョンを適宜に選択して用いることができる。又、これらの分散体の樹脂は、分散体樹脂を主体とし、溶解性の樹脂と併用してもよい。溶解性の樹脂としては、水溶性樹脂や、水及びアルコール等の混合溶剤に溶解する樹脂、有機溶剤に溶解する樹脂を用いることができる。このようなものとしては、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ゼラチン、ポリアクリルアミド及びポリビニルピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの樹脂は、架橋剤や硬化剤、可塑剤、変性剤、ゲル化剤等の添加剤と併用して用いてもよい。
【0031】
本発明においては、有機微粒子間を上記バインダーで結着して、皮膜化し、更に有機微粒子間に適宜な空隙を形成する必要があるため、用いるバインダーとしては、その種類やガラス転移点等の樹脂物性、及び、有機微粒子とバインダーとの混合比が重要となる。又、本発明においては、バインダーとして吸水性を有するものを使用するが、これにより、インクを付与した場合に、インク中の溶剤が有機微粒子間の隙間に入り込むのに加えて、更に吸収を向上させることができる。従って、空隙の形成と、バインダーの吸収性のバランスも重要である。更には、本発明の被記録媒体においては、多孔性有機樹脂層の有機微粒子間の空隙が主にインクの吸収性の役目を果たし、十分に空隙でのインク吸収が行われ、加えて、吸水性バインダーによる吸水作用が発揮される構成となっているため、吸水性バインダー自体の耐水性が損なわれることなく、この結果、顔料インクによる記録時においてもべた部のクラックの発生防止が可能となる。
【0032】
具体的には、本発明で使用するバインダーとしては、上述した分散体、即ち、樹脂エマルジョンのものがより好ましい。このようなものを使用すれば、乾燥、皮膜時に、バインダーが有機粒子間に均一に存在し、しかも空隙を埋めない溶融形態を有するので望ましい。使用するバインダーのガラス転移点に関しては、有機微粒子と相反し、速やかに溶融することができる温度特性をもったものが好ましく、具体的には、−40℃〜40℃のガラス転移点を有するものを好ましく用いることができる。又、空隙を埋めないようにするために、バインダーマイグレーションを抑制する、ゲル化特性をもったものを用いてもよい。具体的には、感熱ゲル化特性をもったもの等が挙げられる。
【0033】
又、上記した樹脂エマルジョンとしては、その粒子径が20nm〜500nmの範囲にあるものを用いることが好ましい。この範囲よりも小さすぎるものを用いた場合には、樹脂エマルジョンが、殆ど溶媒に溶解している樹脂の挙動に近くなって、有機微粒子間に配置した樹脂エマルジョンが乾燥時に徐々に溶融することができず、空隙量を確保する有利性が得られない場合がある。一方、この範囲よりも大きすぎるものを用いた場合には、空隙の分布や大きさにばらつきが生じ易い。更に好ましくは、その粒子径が30nm〜200nmの範囲内にあるものを用いるとよい。上記樹脂エマルジョンの粒子径の測定には、準弾性レーザー光散乱法(動的光散乱法)等の一般の方法を用いればよい。
【0034】
有機微粒子とバインダーの混合比(P:B比)は、固形分比で1:1〜20:1の範囲が好ましい。より好ましくは、2:1〜10:1の範囲で使用する。又、バインダーの吸収能に関しては、インク吸収容量とインク吸収速度のバランスを考え、どちらを目的として優先させるかによるが、具体的には、0.5〜10.0倍の吸収能のものが好ましい。ここでいう吸収能とは、バインダーのもつ体積当たりに吸収できるインク吸収量のことである。
【0035】
上記、有機微粒子とバインダー及び空隙とからなる多孔性有機樹脂層の特性としては、更に、多孔性有機樹脂層中のpHの値が重要となる。従来より被記録媒体に用いられていたアルミナやシリカ等の無機材料とバインダーを用い、且つ、空隙を設けた多孔性無機粒子層の層内pHは、比較的低い値を示す。即ち、酸性側の場合が多い。しかしながら、多孔性無機粒子層の場合と異なり、本発明の有機微粒子とバインダー用いた系では、層内pHが低い場合、特に、pHが4.5よりも低い場合には、インクを付与した際に表面で極端な凝集等が生じ、使用した染料本来の色味とは異なった色となったり、染料が表面で金属光沢を発生して、まだらとなる現象が生じる等のことが起こる。これに対し、本発明の被記録媒体においては、多孔性有機樹脂層の層内pHを5.2以上に調整することで、上記の問題を解決する。
【0036】
その理由は確かでないが、本発明のように、空隙を有機樹脂粒子で形成した多孔性有機樹脂層の場合には、無機微粒子のもつ細孔と異なり、比較的に染料の吸着能が弱いために、適切なpHになるように層内を調整することにより、速やかに空隙内にインクが取り込まれるようになるものと推測される。かかる効果は、微粒子体の種類、空隙の大きさとの関係に密接に関連し、空隙が300nm以下、更には100nm以下の場合に、顕著に現れることがわかった。更に、本発明においては、多孔性有機樹脂層の層内pHを5.2〜8.5の範囲に調整することが、より好ましい効果が得られることがわかった。
【0037】
以上のように、多孔性有機樹脂層の層内pHを調整する方法としては、有機微粒子の基本材料となる樹脂の親水性基の種類や数を調整したり、又、バインダーをエマルジョン状態にする際に、親水性基の種類や数を調整することが挙げられ、これらの方法により、適宜にpH調整することが可能となる。更に、塗工液の作製時に、塩基性物質の添加、例えば、水酸化ナトリウム、アンモニア、アミン等を添加することにより調整することも可能である。本発明においては、層内pHの測定を、JIS P 8133に規定された方法によって行なった。
【0038】
本発明の被記録媒体では、多孔性有機樹脂層102中に、上記した構成材料の他に、インクの吸収性を向上させるために、更に多孔質の無機粒子を微量含有させてもよい。
この際に使用する多孔質無機粒子としては、具体的には、例えば、シリカ、アルミナ水和物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、チタニア、酸化鉛、炭酸亜鉛、珪酸、珪酸ナトリウム、珪酸カルシウム、クレー等が挙げられる。これらの多孔質無機粒子の中でも、多孔性有機樹脂層の透明性を得るためには、微粒子化されたものを使用することが好ましい。具体的には、シリカやアルミナ水和物の超微粒子タイプのものが好ましい。その粒子径としては、一次粒子で100nm以下のもの、更に、10nm以下のものを使用することがより好ましい。多孔質無機粒子を併用する場合の含有量としては、全固形分の重量で、0.1%〜10%の範囲とすることが好ましい。無機粒子の含有量が多すぎると、透明性の低下やクラック等が発生する場合がある。
【0039】
本発明の被記録媒体は、上記で説明した有機微粒子とバインダー、及び、pH調整のための塩基性物質、更には、所望に応じて多孔質無機粒子を加えた塗工液を基材上に塗布し、乾燥することにより、多孔性有機樹脂層を基材上に形成して得られる。
この際に使用する塗工液の物性としては、粘度、pH、分散性等が重要となるが、粘度に関しては、用いる塗工方式により適宜に調節する。具体的には10cP〜500cPの範囲とすることが好ましい。pHに関しては、前記したような層内pHを得るために、塗工液pHは5.2以上とすることが好ましい。尚、液pHの測定は、JIS Z8802に規定の方法によって測定できる。
【0040】
更に、均一な塗膜特性と透明性を得るために、十分な分散性及び保存安定性を確保する必要がある。従って、塗工液には、更に、本発明の目的を損なわない範囲で、分散剤、増粘剤、潤滑剤、流動性変性剤、界面活性剤、消泡剤、耐水化剤、抑泡剤、剥離剤、防ばい剤等を添加することができる。
上記のような組成の塗工液の基材上への塗工は、例えば、ブレードコート方式、エアナイフコート方式、ロールコート方式、フラッシュコート方式、グラビアコート方式、キスコート方式、ダイコート方式、エクストルージョン方式、スライドホッパー方式、カーテンコート方式及びスプレー方式等を用いた方法により行うことができる。
【0041】
この際、塗工液の基材上への塗工量は、所望する被記録材の用途等に応じて、適宜に選択すればよいが、塗工量が薄すぎるとインクを十分に吸収できず、インクを多孔性有機樹脂層に付着させた後、滲みや、溢れを生じてしまうので好ましくない。逆に厚すぎると、多孔性有機樹脂層の強度が低下したり、塗工及び乾燥時に塗膜欠陥が生じ、部分的にインク吸収量を確保できない部分が生じるので好ましくない。又、厚すぎると、透明性が減少して、記録物や画像の鮮明度が損なわれる恐れがあるため、この点からも好ましくない。そのため、吸収量の確保と全体的な膜としての強度を保つために、多孔性有機樹脂層の好ましい厚さは、乾燥後の膜厚で、5〜50μmとするとよい。
【0042】
本発明においては、上記のようにして基材上に設けた塗工層上に、必要に応じた加熱による乾燥処理を行うことで、多孔性有機樹脂層が得られる。かかる乾燥処理により、水性媒体(分散体)が蒸発すると共に、バインダーの融着による結合により造膜が起きる。乾燥処理の条件は、用いる塗工液の組成に応じて適宜選択できる。乾燥は、一般に用いられている熱風乾燥炉、赤外線乾燥炉を、単独で又は、適宜に組み合わせて行えばよい。
【0043】
本発明の画像形成法は、上記のように構成される被記録媒体にインクを付与して画像を形成することを特徴とする。この際、インクとしては、主として色材(染料或いは顔料)、水溶性有機溶剤及び水を含むものを使用する。染料としては、例えば、直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食用色素等に代表される水溶性染料を用いることが好ましいが、上記の被記録媒体との組み合わせにより、定着性、発色性、鮮明性、安定性、耐光性、その他の要求される性能を満たす画像を与えるものであれば、いずれの染料でもよい。顔料としては、例えば、カーボンブラック等の無機顔料、有機顔料、金属微粒子、金属酸化物、種々の金属化合物を用いることができる。
【0044】
水溶性染料は、一般に、水、又は、水と有機溶剤からなる水性溶媒中に溶解して使用するものであるが、特に好ましくは、水と水溶性の各種有機溶剤等との混合物が使用され、インク中の水分含有量が、20〜90重量%の範囲内となるように調製されたものを使用するのが好ましい。
この際に使用する水溶性の有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール等の炭素数が1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド等のアミド類、アセトン等のケトン又はケトンアルコール類、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素数を含むアルキレングリコール類、グリセリン、エチレングリコールメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテール類等が挙げられる。
【0045】
これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングエリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類が好ましい。多価アルコール類を使用することは、インク中の水が蒸発し、水溶性染料が析出することに基づくノズルの目詰まり現象を防止するための潤滑剤としての効果が大きいため、特に好ましい。
【0046】
インクには、可溶化剤を加えることもできる。代表的な可溶化剤としては、含窒素複素環式ケトン類であり、その目的とする作用は、水溶性染料の溶媒に対する溶解性を飛躍的に向上させることにある。例えば、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが好ましく用いられる。更に、特性の改善のために、以下の添加剤を加えて用いることもできる。例えば、粘度調整剤、界面活性剤、表面張力調整剤、pH調整剤、比抵抗調整剤等を添加することができる。
【0047】
前記被記録媒体に上記インクを付与して画像を形成し、記録を行う方法としては、インクジェット記録方法を用いることが好ましい。該記録方法は、インクをノズルより効果的に離脱させて、被記録媒体にインクを付与し得る方法であればいかなる方法でもよい。特に、特開昭54−59936号公報に記載されている方法で、熱エネルギーの作用を受けたインクが急激な体積変化を生じ、この状態変化による作用力によって、インクをノズルから吐出させるインクジェット記録方式を有効に使用することができる。
【0048】
本発明の被記録媒体に印字には、下記に挙げる1.〜3.のインクの併用等が可能である。
1.染料を色材として用いるインク
2.顔料を色材として用いるインク
3.顔料色材と染料色材を混合したインク、又は、顔料色材を含むインクと染料色材を含むインク
【0049】
本発明における被記録媒体に染料を色材として用いたインクを使用して画像形成した場合には、特に、被記録媒体の吸収能の高さから、多色のインクによるべた印字の組み合わせ等の画像におけるブリーディング(境界滲み)が従来に比べ大きく軽減される。更に、印字部の白もや現象も大幅に少なく、印字部と未印字部の光沢の差も少なく、自然な写真調の画像が得られる。又、顔料を色材として用いた場合には、有機微粒子間の隙間(空隙)以外に、吸水性バインダーが層中に存在するために、顔料色材を捕らえることができ、印字部の擦過性は高く、耐水性も良好である。更に、顔料色材と染料色材の混合されたインクを使用した場合は、従来の被記録媒体に記録を行なうと、顔料成分による印字部と染料成分の印字部の光沢に差が出てしまうという問題があったが、本発明の被記録媒体を用いた場合には、多孔性有機樹脂層を構成する空隙構造と吸水性バインダーの両方によって顔料成分を定着させているために、着弾されたインクが均一に分布し、色材による光沢の差を生じることが少ない。
【0050】
印字方法としては従来の方法に加えて、下記に挙げる1)〜3)等の方法を用いることができる。
1)同一画素内に顔料と染料等の色材の種類が異なるインクを印字する方法
2)3種類以上の色材濃度の異なる濃淡インクを同一画素内に印字する方法
3)マルチパスのパス数を少なくし、1スキャンで高密度に大量のインクを付与する高速印字方法
【0051】
本発明の被記録媒体に顔料と染料等の色材の種類が異なるインクを印字を同一画素内におこなった場合にも、例えば、黒インクを顔料インクとし、他のインクを染料インクとして、黒色部の印字濃度を高め、シャープな画像を得ようとする場合にも、種類の異なるインク同士の界面でのブリーディングが少なく、黒インクにより画像形成された部分のみに艶の差がでてしまうこともなく、色材の違いによる光沢の差も少ない写真調の画像が得られる。又、3種類以上の色材濃度の異なる濃淡インクを同一画素内に印字する場合にも、例えば、ドット密度を高くして、染料濃度の異なるインクを重ね打ちすることにより、ハイライト部からシャドウ部にかけて滑らかなグラデーションを表現したい場合にも、本発明の被記録媒体を用いると、インク吸収能が高く、高濃度の部分のインクが溢れることもなく印字可能なため、印字部、未印字部の光沢の差も少ないことから、精緻な画像の形成にも適用可能である。
【0052】
更に、本発明の被記録媒体は、マルチパスのパス数を少なくし、1スキャンで高密度に大量のインクを付与する印字方法に対応できる。即ち、近年、プリント速度の高速化に対応できる被記録媒体が求められているが、本発明の被記録媒体を用いると、従来のものに比べパス数が少なく、大量のインクを着弾する場合でも、インクの溢れや滲みによる画質低下を大幅に低減できる。これは、本発明の被記録媒体において、1パス毎のインク量が多い場合にも、最初のパスで着弾されたインクが、空隙構造により一旦吸収され、更に、吸水性のバインダーが吸収を続けるために、次のパスのインクを吸収するだけの高いインク吸収能を維持できるためと考えられる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す構成の被記録媒体を、次のようにして作製した。基材101に、透明性を有し、厚みが100μmのPETフィルム(東レ(株)製100Q80D)を使用し、この基材上に多孔性有機樹脂層102を形成するために、下記の方法で塗工液を作製した。有機微粒子には、下記の方法で得られる疎水基として硝酸エステル基、親水基としてカルボキシルメチル基を有するカルボキシメチルセルロース硝酸エステルの水分散体を用いた。
【0054】
先ず、カルボキシメチルセルロースを40gと、硫酸/硝酸/水=62.6/25.0/12.4からなる混酸400cm3とを混合、攪拌し、生成物を水洗浄して分離回収し、更に、100℃で1時間後乾燥して、カルボキシメチルセルロース硝酸エステルを得た。次に、得られたカルボキシメチルセルロース硝酸エステルと、水、トルエン、乳化剤をスリーワンモーターで攪拌しながら、W/O状態に調整し、更に水を添加して、O/W状態に相転移させた後、エバポレーターで有機溶剤を除去して有機微粒子の水分散体を得た。有機微粒子の平均粒子径は142nm、Tgは165℃だった。又、粒子を走査型電子顕微鏡(日立社製S−5000)で観察したところ、真球状ではなく表面に凹凸形状の多い異形のものであった。
【0055】
得られた有機微粒子の水分散体を、固形分が10%になるように水で希釈し、吸水性カチオンウレタンエマルジョン(吸水率1.6倍、平均粒子径50nm)との混合比を10:1として混合し、更に、pH調整のため、25%アンモニア水を全体量の3重量%添加して塗工液を得た。得られた塗工液のpHは、6.0だった。
【0056】
この塗工液を、不図示のコート機及び熱風乾燥炉を用いて基材上にダイコート後、乾燥し(乾燥温度120℃)、膜厚30μmの多孔性有機樹脂層102を形成した。この多孔性有機樹脂層の細孔構造を、走査型電子顕微鏡(日立社製S−5000)で表面と断面を観察したところ、図2に示すような、空隙を有する細孔構造が観察された。更に、多孔性有機樹脂層の細孔分布曲線の最大ピークを測定した(カンタクローム社製オートソープ1)ところ、最大ピークは細孔半径30nmのところにあり、細孔容積は0.252cm3/g、層中pHは6.3であった。
【0057】
この被記録媒体100を用いて、以下の評価を行った。評価結果を表1に示した。尚、下記の(1)〜(4)の評価を行って、総合評価として、一つでも×の項目があるものを不合格、ないものを合格とした。
(評価)
(1)透明性
被記録媒体の全光線透過率(%)を、JIS K−7105に従って、ヘイズメーター(日本電色工業社製 NDH−100DP)を用いて測定した。
【0058】
(2)タック、耐指紋性
被記録媒体の表面に対して、素手により指触試験(親指を被記録媒体の多孔性有機樹脂層表面に接触するように10秒間保持)を行い、付着及び指紋跡の有無を確認した。指紋跡が確認されない場合を○、若干指紋跡がついた場合は△、指が表面に付着して指紋跡がつく場合を×、として評価した。
【0059】
(3)ブロッキング性
被記録媒体を10枚重ねて、PP袋中に入れて、30℃/80%RHの環境下で1ヶ月間保存した。保存後、被記録媒体同士が付着せずに分離できるものを○、分離不可のものを×、として評価した。
【0060】
(4)印字特性
1mmに24本の割合の間隔(600dpi)でノズルを備えたドロップオンデマンドのインクジェットヘッドを各インク分備え、ノズル列と垂直方向に走査して画像形成するインクジェットプリンターを用いて、下記組成のインクで、1ドットの印字につき10plのインクを吐出させてインクジェット記録を行なった。又、1mm2当たり24×24ドット(600dpi×600dpi)での単色インクの印字でのインク量を100%ととして、単色インクを2色用いた2色印字では、インク量が単色印字の2倍になるので200%、以下同様に、3色、4色印字を夫々300%、400%とした。
【0061】
各色インクの色材としては、YインクにはC.I.ダイレクトイエロー86、MインクにはC.I.アシッドレッド35、CインクにはC.I.ダイレクトブルー199、及び、BkインクにはC.I.フードブラック2の各染料を用いて、以下のような、染料濃度の異なる3種のインクを夫々調製して使用した。
【0062】
1)インク組成1:染料高濃度インク
・上記染料 3部
・ジエチレングリコール 5部
・ポリエチレングリコール 10部
・水 82部
【0063】
2)インク組成2:染料中濃度インク
・上記染料 1部
・ジエチレングリコール 5部
・ポリエチレングリコール 10部
・水 84部
【0064】
3)インク組成3:染料低濃度インク
・上記染料 0.6部
・ジエチレングリコール 5部
・ポリエチレングリコール 10部
・水 84.4部
【0065】
上記で調製したイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(Bk)の4色インクからなるインクセットを用いて、本実施例の被記録媒体に印字して、印字特性に関する下記の[1]〜[7]の具体的な項目について評価を行なった。
【0066】
[1]滲み、ブリーディング、ビーディング、ハジキ、スジムラの有無
インク組成1のインクを用い、前記記録装置を用いて、各色の印字インク量100%(単色)から400%(4色)まで変えたべた印字を行ない、滲み、ブリーディング、ビーディング、ハジキ、スジムラの有無を目視にて観察し、下記の基準で評価した。
印字インク量400%で発生せず:◎
印字インク量300%で発生せず:○
印字インク量100%で発生せず:△
印字インク量100%で発生する:×
【0067】
[2]画像濃度
インク組成1からなる染料高濃度の各インクを用い、前記記録装置で、各色のインク量100%(単色)でべた印字した画像の透過画像濃度を、X−Rite社製310TRを用いて測定し、得られた数値で画像濃度を示した。
【0068】
[3]階調数の確認
インク組成1〜3の濃淡インクセットを用い、前記記録装置で、各インクセットの打ち込み量を操作して、被記録媒体に印字した。即ち、約60ステップの濃度変化で印字し、各印字部を目視観察して、画像濃度の違いが判別できた場合には階調がとれたと判断した。この方法で階調がとれた際の階調数を数えた。
【0069】
[4]色再現性の確認
単色のべたパターンを100%で印字し、色再現性(色味に異常がないか)の確認を4色各色について目視いて行なった。そして、色味が正常である場合を○、色味が異常である場合を×として評価した。
【0070】
[5]インク定着性
べたパターンを300%印字し、1枚/分で10枚連続排紙した。印字終了後、シートの印字部と裏面との貼りつきの有無を確認した。そして、貼りつきがない場合を○、貼りつきがある場合を×として評価した。
【0071】
[6]耐水性
各インクで印字したべたパターンを200%印字し、1日間放置してインクを乾燥した後、シートを純水中に3分間浸漬した後、インクの流れ出し、インク受容層の溶け出しがないかを確認した。そして、流れ出し・溶け出しのないものを○、流れ出し・溶け出しのあるものを×として評価した。
【0072】
[7]OHP透過性
反射型のオーバーヘッドプロジェクターに投影して、シートの影(グレー、黄色)が目立たないかを目視にて確認した。そして、目立たない場合を○、目立つ場合を×として評価した。
【0073】
(比較例1)
実施例1において、バインダーを水溶性のポリビニルアルコールに代え、更にpH調整を行わなかった以外は全て実施例1と同様にして被記録媒体を得た。得られた被記録媒体に、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様の(1)〜(4)項目についての評価を行った。そして、表1に評価結果を示した。
又、このシートの多孔性有機樹脂層を走査型電子顕微鏡(日立社製S−5000)で表面と断面を観察したところ、図3に示したように、細孔構造は不十分であった。更に、多孔性有機樹脂層の細孔分布曲線の最大ピークを測定したところ(カンタクローム社製オートソープ1で測定)、最大ピークは細孔半径2nmのところにあり、細孔容積は0.052cm3/g、層中pHは4.3であった。
【0074】
(比較例2)
実施例1において、有機微粒子を含有させない以外は全て実施例1と同様にして(吸水バインダーのみ)被記録媒体を得た。得られた被記録媒体に、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様に(1)〜(4)の項目についての評価を行った。そして、表1に評価結果を示した。又、このシートのインク受容層を走査型電子顕微鏡(日立社製S−5000)で表面と断面を観察したところ、図4に示したように細孔構造は見られなかった。
【0075】
(比較例3)
実施例1において、有機微粒子の代わりに多孔性無機粒子であるアルミナ水和物を用い、バインダーをポリビニルアルコールとし、下記の方法で塗工液を得、実施例1と同様の基材上に塗工して被記録媒体を得た。得られた被記録媒体に、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様に(1)〜(4)の項目についての評価を行った。そして、表1に評価結果を示した。
【0076】
塗工液を作製するために、先ず、米国特許第4242271号明細書に記載された方法でアルミニウムドデキシドを製造した。次に、米国特許第4202870号明細書に記載された方法で、前記アルミニウムドデキシドを加水分解してアルミナスラリーを製造した。このアルミナスラリーをアルミナ水和物固形分が7.9%になるまで水を加えた。このアルミナスラリーのpHは9.4であった。
次に、3.9%の硝酸水溶液を加えてpH調整した後、熟成工程を経て、コロイダルゾルを得た。このコロイダルゾルを、入り口温度83℃でスプレー乾燥してベーマイト構造を有するアルミナ水和物粉末を得た。この、アルミナ水和物はイオン交換水に分散して15%の溶液とした。次に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)社製、ゴーセノールGH17)をイオン交換水に溶解して10%の溶液を得た。上記アルミナ水和物とポリビニルアルコール溶液を固形分換算で重量混合比で7:1になるようにして混ぜ合わせて攪拌して、塗工液を得た。
【0077】
得られた塗工液を不図示のコート機及び熱風乾燥炉を用いて基材フィルム上にダイコート後、乾燥温度140℃で乾燥して、厚さ40μmのインク受容層102を形成した。この時、インク受容層102の、細孔分布曲線の細孔半径の最大ピークは8.5nmところにあり、細孔容積は0.54cm3/gであった。層内pHは4.5であった。又、このシートのインク受容層を走査型電子顕微鏡(日立社製S−5000)で表面と断面を観察したところ、図5に示したような細孔構造が見られた。
【0078】
(実施例2)
実施例1において有機微粒子を、下記のアクリルアミドを架橋した微粒子とした以外は実施例1と同様にして被記録媒体を得た。得られた被記録媒体に、実施例1と同様にして画像形成を行い、同様に(1)〜(4)の項目についての評価を行った。そして、表1に評価結果を示した。
【0079】
本実施例で使用したアクリルアミドを架橋した微粒子は下記のようにして作製した。先ず、アクリルアミドを60重量部、メチレンビスアクリルアミドを架橋成分として20重量部、メタクリル酸を、粒子径調整成分として20重量部添加してエタノール中で重合して、有機微粒子体のエタノール分散体を作製した。次に、この分散液に水:エタノールの混同比が1:1になるように純水を加え、攪拌機で十分に攪拌した。このようにして得られた有機微粒子の平均粒子径は142nm、Tgは165℃だった。又、粒子を、走査型電子顕微鏡(日立社製S−5000)で観察したところ、表面に微細な孔が形成されて多孔性の粒子であった。更に、窒素脱離吸着法によりこの粒子の空隙率を測定したところ、0.353cm3/gであった。
【0080】
次に、上記で得られた有機微粒子を用い、実施例1と同様にしてバインダーと混合、攪拌して塗工液を得た。この塗工液を用いて被記録媒体を実施例1と同様にして作製した。
得られたシートの多孔性有機樹脂層を走査型電子顕微鏡(日立社製S−5000)で、表面と断面を観察したところ細孔構造が確認された。更に、多孔性有機樹脂層の細孔分布曲線の最大ピークを測定した(カンタクローム社製オートソープ1)ところ、最大ピークは細孔半径29nmのところにあり、細孔容積は0.452cm3/g、層中pHは6.3であった。
【0081】
【表1】
【0082】
(実施例3)
本実施例では、インクの色材に顔料を含む顔料インクからなるインクセットを用い、実施例1で得られた被記録媒体に画像記録を行なった。この際に使用した各色インクの色材は、YインクにはC.I.ピグメントイエロー83、MインクにはC.I.ピグメントレッド48:3、CインクにはC.I.ピグメントブルー15:3、及び、Bkインクにはカーボンブラックの各顔料を用いて、以下のような、色材濃度の異なる3種のインクを夫々調製して使用した。
【0083】
顔料インクの調製は、先ず、公知の分散方法で、以下の分散剤を用いて、下記の組成の顔料分散液を作製し、その後、これを用いて各色インクを調製した。
・上記顔料 15部
・オキシエチレン基を45モル導入したポリエチレ
ングリコールモノアクリレートとアクリル酸ナト
リウムとの共重合体
〔単量体のモル比(前者/後者)=2/8〕 3部
・モノエタノールアミン 1部
【0084】
上記顔料分散液を用いて以下のような顔料濃度の異なるインクを調製した。
<1>インク組成4:顔料高濃度インク
・顔料分散液 33部
・ジエチレングリコール 4部
・イオン交換水 63部
【0085】
<2>インク組成5:顔料中濃度インク
・顔料分散液 11部
・ジエチレングリコール 4部
・イオン交換水 85部
【0086】
<3>インク組成6:顔料低濃度インク
・顔料分散液 6.6部
・ジエチレングリコール 4部
・イオン交換水 89.4部
上記のインクセットを用いて実施例1と同様に(1)〜(4)の項目について評価を行った。更に、以下の(5)及び(6)の項目についての評価を追加した。表2に、得られた評価結果を示した。
【0087】
(5)色材の定着性
前記した記録装置で、上記で調製したインク組成4の各色の高濃度インクを用いて、印字インク量100%(単色)でベタ印字した部分を乾燥後に指で擦って色材の剥離を調べた。そして、色材の剥離がなければ○とし、色材の剥離が生じたら×、として評価した。
【0088】
(6)色材のべた部印字のひび割れ発生有無
前記した記録装置で、上記で調製したインク組成4の各色の高濃度インクを用いて、印字インク量100%(単色)でベタ印字した部分を不図示の光学顕微鏡で観察して、ひび割れの有無を確認した。そして、ひび割れなしの場合を○、ひび割れなしの場合を×、として評価した。
【0089】
(実施例4)
本実施例では、顔料インクと染料インクとの併用により、実施例1と同様の被記録媒体に画像形成を行なった。この際、Y、M、Cには、実施例1で調製した染料インクと、Bkには実施例3で調製した顔料インクとからなるインクセットし、上述した記録装置で画像形成を行なった。そして、実施例3と同様に(1)〜(6)の評価を行なった。尚、(5)、(6)の評価では、上記インクのうち高濃度インクの組み合わせのインクセットを用いた。表2に、評価結果を示した。
【0090】
(実施例5)
本実施例では、顔料と染料とを混合した色材を有する下記のインクからなるインクセットを用いて実施例1と同様の被記録媒体に画像記録を行なった。染料としては実施例1で使用したと同様のものを用い、顔料には、実施例3で使用した顔料分散液を用いた。
[1]インク組成7:染料/顔料混合高濃度インク
・染料 1.5部
・顔料分散液 16.5部
・ジエチレングリコール 4.5部
・ポリエチレングリコール 5部
・水 72.5部
【0091】
[2]インク組成8:染料/顔料混合中濃度インク
・染料 0.5部
・顔料分散液 5.5部
・ジエチレングリコール 4.5部
・ポリエチレングリコール 5部
・水 84.5部
【0092】
[3]インク組成9:染料/顔料混合低濃度インク
・染料 0.3部
・顔料分散液 3.3部
・ジエチレングリコール 4.5部
・ポリエチレングリコール 5部
・水 86.9部
【0093】
そして、実施例3と同様に(1)〜(6)の評価を行なった。評価(5)、(6)においては、上記顔料/染料インクのBk、Y 、M 及びCの高濃度インクからなるインクセットを用いた。表2に、評価結果を示した。
【0094】
(比較例4)
実施例3において、比較例1と同様の被記録媒体を用いて画像形成を行い、実施例3と同様に(1)〜(4)の項目についての評価を行った。そして、表1に評価結果を示した。
(比較例5)
実施例3において、比較例3と同様の被記録媒体を用いて画像形成を行い、実施例3と同様に(1)〜(4)の項目についての評価を行った。そして、表1に評価結果を示した。
【0095】
【表2】
【0096】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、インク吸収速度が高く、べたつきが防止され、透明性が高く、顔料インクの定着性及び染料インクの色再現性に優れ、更に、その上に画像を形成した場合に、印字部のクラックの発生が防止され、十分な画像濃度や階調数を有し、画像の耐水性やインクの定着性に優れた画像形成を可能とできる被記録媒体、及び、その製造方法、その被記録媒体に対して良好に記録を行うことができる記録方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の被記録媒体の一例を示す概略断面図である。
【図2】 実施例1の被記録媒体の多孔性有機樹脂層を走査型顕微鏡で観察、撮影した図の模写図である。
【図3】 比較例1の被記録媒体の表面及び断面を走査型顕微鏡で観察、撮影した図の模写図である。
【図4】 比較例4の被記録媒体の表面及び断面を走査型顕微鏡で観察、撮影した図の模写図である。
【図5】 比較例3の表面及び断面を走査型顕微鏡で観察、撮影した図の模写図である。
【符号の説明】
100:被記録媒体
101:基材
102:多孔性有機樹脂層
Claims (9)
- 水溶性有機溶剤及び水を含むインクに用いられ、基材上に少なくとも1層の多孔性有機樹脂層が形成されている被記録媒体において、多孔性有機樹脂層が、親水基及び疎水基を共に有する有機微粒子と、吸水性の樹脂エマルジョンと空隙とから形成されており、該吸水性の樹脂エマルジョンは、樹脂エマルジョンのもつ体積当たりに吸収できるインク量で示される吸収能が0.5〜10.0倍である吸水性を有し、該多孔性有機樹脂層の細孔分布曲線が、細孔半径3nm〜300nmの範囲に最大ピークを持ち、且つ、その細孔容積が0.2cm3/g以上であり、JIS P 8133に準じて測定した多孔性有機樹脂層中のpHが5.2以上であることを特徴とする被記録媒体。
- 有機微粒子のガラス転移温度が120℃〜220℃の範囲にある請求項1に記載の被記録媒体。
- 有機微粒子の平均粒子径が5nm〜300nmの範囲にある請求項1又は2に記載の被記録媒体。
- 有機微粒子が多孔性である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 吸水性の樹脂エマルジョンが、カチオン性若しくはノニオン性を有する請求項1乃至4のいずれか1項に記載の被記録媒体。
- 水溶性有機溶剤及び水を含むインクに用いられ、基材上に少なくとも1層の多孔性有機樹脂層を形成する被記録媒体の製造方法において、親水基と疎水基を共に有する有機微粒子、吸水性の樹脂エマルジョン及び塩基性物質を含み、該吸水性の樹脂エマルジョンは、樹脂エマルジョンのもつ体積当たりに吸収できるインク量で示される吸収能が0.5〜10.0倍である吸水性を有し、且つ、JIS Z 8802に準じて測定した液pHが5.2以上である水分散体を塗工液とし、該塗工液を基材上に塗工し、乾燥して多孔性有機樹脂層を形成することを特徴とする被記録媒体の製造方法。
- 有機微粒子として、ノニオン系乳化剤若しくはカチオン性乳化剤を用いて乳化重合する乳化重合法によって溶媒中に分散された状態で形成された有機微粒子を使用する請求項6に記載の被記録媒体の製造方法。
- 塩基性物質が、水酸化ナトリウム、アンモニア及びアミンからなる群から選ばれるいずれかである請求項6又は7に記載の被記録媒体の製造方法。
- 被記録媒体にインクジェット記録により画像を形成する画像形成方法において、被記録媒体が、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の被記録媒体であることを特徴とする画像形成方法。
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