JP4493832B2 - 端子の接合方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接による端子の接合方法に関し、特に、端子と銅線とを接合させた後、端子と溶接用電極との貼り付きを阻止することを可能とする端子の接合方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、モータや発電機のコイルを構成する銅線と、湾曲乃至折曲された形状の銅材料からなる端子(ターミナル)とを溶接によって接合する。この場合、該端子には、その内外面に、例えば、錫などの低融点金属をコーティングしたもの、若しくは前記コーティングのない端子が用いられる。図5Aに示すように、内面2及び外面3を錫9でコーティングした端子1を用いて該端子1とコイルの銅線4とを接合させる場合、該銅線4を湾曲形状の端子1に挿入し、該端子1の外面3側をタングステンからなる一対の電極5及び6により挟持押圧する。そして、前記一対の電極5及び6に所定の電流を所定の時間だけ通電し、発生したジュール熱により端子1と銅線4とを接合させる。このとき、端子1の内面2にコーティングされた錫成分が溶融する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記の従来技術に係る接合方法では、一対の電極5及び6に通電することによって発生したジュール熱により、該電極5及び6のタングステンと端子1の外面3にコーティングされた錫9と空気中の酸素とが化学的に反応を起こし、タングステン成分と錫成分と酸素成分とから構成される合金が生成される。そして、この合金が研磨剤の如く作用してそれぞれの電極5及び6と端子1との接触部7及び8の該電極5及び6側に微小な凹凸形状を生じさせる。しかも、タングステンと銅との熱膨張率の関係は、タングステンの熱膨張率<銅の熱膨張率の関係を満足するため、結局、端子1が電極5及び6側に膨張して該電極5及び6に形成された凹凸が接触部7及び8の該端子1側に転写される(図5B参照)。これにより、電極5及び6と端子1とが貼り付く。この状態で、電極5及び6を端子1から離間させる場合、該電極5及び6と該端子1との貼り付きにより、銅線4と端子1とが剥がれ易く導通状態を確保することができないという不都合がある。さらに、電極5及び6に微小な凹凸が形成されることにより、該電極5及び6の寿命が短くなり、短期間間隔で電極5及び6の表面を研磨しなければならず、あるいは電極5及び6自体の交換を余儀なくされ、結果的に前記銅線4と端子1との溶接のためのコストが高騰化している。
【0004】
また、コーティングしていない端子を用いて銅線と端子とを接合しようとすると、両者間の接合強度が弱く、銅線が端子から離脱して導通を確保することができないという不都合がある。
【0005】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、端子と導電体、例えば、銅線とを接合させる際、端子と電極との貼り付きを阻止することにより、端子と導電体とを強固に接合することができるとともに、電極の長寿命化を達成し、接合工程に要するコストの低廉化を達成することができる端子の接合方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、端子と導電体とを接合するための端子の接合方法において、前記端子における前記導電体との接触部にのみ錫メッキを施し、前記端子により前記導電体を挟持し、該端子を該導電体と接触していない側から一対の電極により所定の押圧力で押圧するとともに、一対の該電極に所定の電流を所定の時間だけ通電して発生した熱により前記錫成分を溶融させて該端子と該導電体とを接合させることを特徴とする。
【0007】
この場合、前記端子における前記導電体と接触していない側にニッケルメッキを施すとよい。これにより、例えば、銅線や銅リングからなる導電体と端子とを接合させる場合、該端子により該導電体を挟持し、該端子の該導電体と接触していない側を一対の電極により挟持押圧する。そして、一対の電極に所定の電流を所定の時間だけ通電する。これにより、端子における導電体との接触部の錫成分を溶融させて該導電体と該端子とを強固に接合させることが可能となる。
【0008】
しかも、電極の通電温度を700℃〜1000℃の範囲内に保持するため、通電により発生する熱により端子の外面、すなわち該端子と電極との接触部に施されているニッケル成分を溶融させることがない。ニッケルの融点は約1455℃であるからである。従って、例えば、電極がタングステン材料からなる場合でも、該電極の外面に錫がコーティングされているときのように、タングステン成分と錫成分と酸素成分とから構成される合金が生成されることを阻止できるため、導電体と端子とを接合した後に該端子から電極を離間させる際、電極と端子とを貼り付かせることなく容易に離間させることが可能となる。従って、電極の長寿命化を図るとともに、接合作業にかかるコストの低廉化を達成することができる。
【0009】
さらに、前記導電体は電機子を構成すると好適である。本発明に係る端子の接合方法を用いれば、電機子の導電体と端子との接合部の強度を不足させることなく強固に接合することができるため、例えば、電機子に通電した際に該導電体と該端子との接合部を破損させることを阻止して確実に電機子を作用させることができるからである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に係る端子の接合方法につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図1〜図4Bを参照しながら以下詳細に説明する。なお、この端子の接合方法は、その用途が限定されるものではないが、例えば、電動モータを構成するコイルの銅線と端子とを接合する場合に用いられると好ましい。
【0011】
本実施の形態で使用される電機子10は、図1に示すように、電機子鉄心12を有し、該電機子鉄心12の軸から放射状に銅線16からなるコイル14が複数個巻回されて装着されている。
【0012】
ここで、前記電機子10を構成するコイル14の銅線16を、例えば、銅材料からなる略コの字状の端子20に接合させる場合について説明する。
【0013】
先ず、各コイル14の銅線16のそれぞれの端部18を図示しない基板に挿入する。この基板は4層の絶縁層を備え、電動モータのU相とV相とW相の電流が供給されるU相用銅箔パターンとV相用銅箔パターンとW相用銅箔パターンとがそれぞれの絶縁層により挟持されている。
【0014】
次に、端子20の開口部22に前記端部18を挿入し、該端子20により該端部18を挟持する。この場合、前記端子20の内面24には予め錫メッキ26が施されており、かつ該端子20の外面28には予めニッケルメッキ30が施されている。このとき、前記錫メッキ26の膜厚は4〜7nmの範囲内が好ましく、前記ニッケルメッキ30の膜厚は4〜8nmの範囲内が好ましい。
【0015】
次いで、図2Aに示すように、正極32と負極34とからなる一対の電極(以下、単に電極32、34ともいう)により端子20の外面28を挟持して所定の押圧力で押圧する。この場合、前記正極32及び前記負極34の材質はタングステンとする。
【0016】
そして、一対の電極32、34に所定の電流を所定の時間だけ通電する。その際、前記一対の電極32、34の加熱温度を700℃〜1000℃の範囲内に保持する。これにより、前記端子20の内面24に施された錫メッキ26の錫成分が、前記一対の電極32、34に通電することにより発生した熱により溶融して該端子20と銅線16とが接合されるに至る(図2B参照)。その際、ニッケルの融点は約1400℃であるため、前記端子20の外面28に施されたニッケルメッキ30が溶融することがない。従って、端子20の外面28と一対の電極32、34とが貼り付くことを阻止することができる。
【0017】
その後、正極32と負極34とを端子20から離間させ、該端子20を、例えば、熱硬化性樹脂36により包被する(図3参照)。
【0018】
ここで、本発明に係る端子の接合方法について、実験例を用いて説明する。
【0019】
この実験例は、内面24に錫メッキ26を施し、かつ外面28にニッケルメッキ30を施した銅材料からなる端子20(実施例)と、内面24及び外面28の両面に錫メッキ26を施した銅材料からなる端子20(比較例)とを用い、一対の電極32、34に通電する通電時間を400msecとし、通電温度を500℃とし、該端子20を押圧する押圧力を350Nとして銅線16と該端子20とを接合させたときの、端子20と一対の電極32、34とが貼り付くまでの接合回数と、そのときの電極の開放力を確認したものである。
【0020】
この実験結果を図4A及び図4Bに示す。この実験結果から諒解されるように、実施例においては、3000回数以上接合作業を行っても端子20と一対の電極32、34とが貼り付くことがなかった。一方、比較例においては、約1500回数毎で端子20と一対の電極32、34とが貼り付き、該電極32、34の交換、若しくは該電極32、34の表面を研磨する必要があった。従って、本発明に係る端子の接合方法を用いれば、端子20と一対の電極32、34とが貼り付くことを阻止することができるため、電極32、34の長寿命化が達成されるとともに、接合工程に要するコストの低廉化を達成することが可能となる。
【0021】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、銅線や銅リングからなる導電体と、その内面に錫メッキが施され、かつその外面にニッケルメッキが施された端子とを接合させる場合、該端子により該導電体を挟持し、該端子の外面を一対の電極により挟持押圧して一対の電極に所定の電流を所定の時間だけ通電する。これにより、端子における導電体との接触部の錫成分が溶融して該導電体と該端子とを強固に接合させることが可能となる。しかも、電極の通電温度を700℃〜1000℃の範囲内に保持するため、通電により発生する熱により端子の外面、すなわち該端子と電極との接触部に施されているニッケル成分を溶融させることがない。従って、例えば、電極がタングステン材料からなる場合でも、従来技術のように該電極の外面に錫がコーティングされているときのように、タングステン成分と錫成分と酸素成分とから構成される合金が生成されることを阻止できるため、導電体と端子とを接合した後に該端子から電極を離間させる際に電極と端子とを貼り付かせることなく容易に離間させることができる。従って、電極の長寿命化を図るとともに、接合作業にかかるコストの低廉化を達成することができる。
【0022】
さらに、電動モータを構成するコイルの銅線と端子とを本発明に係る接合方法により接合すれば、銅線と端子との接合部の強度を不足させることなく強固に接合することができるため、該コイルに通電した際に該コイルと該端子との接合部を破損させることを阻止して確実かつ長期間にわたって電動モータを利用できるという特有の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態で使用される電機子を概略的に示す斜視説明図である。
【図2】図2Aは銅線が挟持された端子を一対の電極により押圧した状態を概略的に示す縦断面説明図であり、図2Bは銅線と端子とを接合させた状態を概略的に示す縦断面説明図である。
【図3】接合された銅線と端子とを熱硬化性樹脂により包被した状態を示す一部省略縦断面説明図である。
【図4】図4Aは実施例における端子と銅線とを接合させた回数と、接合後に該端子から電極を離間させるときに必要な電極開放力との関係を説明するグラフであり、図4Bは比較例における端子と銅線とを接合させた回数と、接合後に該端子から電極を離間させるときに必要な電極開放力との関係を説明するグラフである。
【図5】図5Aは従来技術に係る接合方法で銅線が挟持された端子を一対の電極により押圧した状態を概略的に示す縦断面説明図であり、図5Bは該接合方法で銅線と端子とを接合させた状態を概略的に示す縦断面説明図である。
【符号の説明】
10…電機子 16…銅線
20…端子 24…内面
26…錫メッキ 30…ニッケルメッキ
32…正極 34…負極

Claims (2)

  1. 端子と導電体とを接合するための端子の接合方法において、
    前記端子における前記導電体との接触する側に錫メッキを施すと共に、前記導電体と接触していない側にはニッケルメッキを施し、
    前記端子により前記導電体を挟持し、一対の電極と前記ニッケルメッキが接触するように、前記端子を前記ニッケルメッキが施された側から前記一対の電極により所定の押圧力で押圧するとともに、
    一対の該電極に通電して発生した熱により前記錫成分を溶融させ該端子と該導電体とを接合させる際に、前記電極の通電温度を700℃〜1000℃の範囲内に保持することを特徴とする端子の接合方法。
  2. 請求項1記載の接合方法において、
    前記導電体は電機子を構成することを特徴とする端子の接合方法。
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