JP4493372B2 - 複層成形品 - Google Patents
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軟質熱可塑性樹脂層と接着が容易な硬質熱可塑性樹脂層とからなる複層成形品は数多く報告されている。例えば、硬質熱可塑性樹脂としてスチレン系樹脂、軟質熱可塑性樹脂として(メタ)アクリル酸エステルを用いた複合成形体(特許文献1参照)、硬質熱可塑性樹脂としてポリカーボネート、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル、変性ポリフェニレンエーテルの群から選ばれた少なくとも1種の樹脂の層と、軟質熱可塑性樹脂としてスチレン系エラストマー層からなる複合体(特許文献2参照)等がある。
また、例えば、汎用性のあるオレフィン系樹脂及び/又はエラストマーが表層で、裏面がABS樹脂のような表裏で性質の大きく違う複層成形品を得ようとしても、従来はオレフィン系樹脂及び/又はエラストマーとABS樹脂の相溶性が悪く得ることが出来なかった。
以上説明したように、表層がオレフィン系樹脂及び/又はエラストマー層で、裏層がスチレン系樹脂層(または、表層がスチレン系樹脂層で、裏層がオレフィン系樹脂及び/又はエラストマー層)の汎用性の複層成形品は、今まで満足できるものが報告されていなかった。
[1] (A)オレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上からなる熱可塑性樹脂を発泡してなる層、(B)(b−1)酢酸ビニル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの群から選ばれる少なくとも1種の単量体5〜60重量%とエチレンとからなる共重合体5〜80重量%、(b−2)スチレン系エラストマー5〜80重量%および(b−3)不飽和ニトリル単量体単位を含有するスチレン系熱可塑性樹脂10〜70重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成される中間層、並びに(C)不飽和ニトリル単量体単位を含有するスチレン系熱可塑性樹脂からなる層の3層構造を少なくとも有する複層成形品の製造方法であって、(A)層と(B)層、(c)層とをロールラミネートにより接合することを特徴とする複層成形品の製造方法、
[2] (A)層の表面に、更にオレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上からなる熱可塑性樹脂の未発泡層を有することを特徴とする上記[1]に記載の複層成形品の製造方法、
である。
(A)層のオレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上からなる熱可塑性樹脂を発泡してなる層を形成するのに用いられるオレフィン系樹脂としては、エチレン系樹脂、プロピレン系樹脂等が挙げられる。
エチレン系樹脂としては低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレンと炭素数3〜8のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。該共重合体中のα−オレフィンとしてはプロピレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等が挙げられる。
プロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体(PP)、プロピレンと炭素数2〜8のα−オレフィンとの共重合体等が挙げられる。該共重合体中のα−オレフィンとしてはエチレン、ブテン−1、イソブテン、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1等が挙げられる。
オレフィン系エラストマーとしては、具体例としては、プロピレンと1種または2種類以上のα−オレフィン(エチレンの他、炭素数4〜8のもの)との共重合体であって、チーグラー・ナッタ触媒等の従来の触媒により重合されたもの以外に、メタロセン系触媒等で重合されたものも含む。更に70重量%程度までの高濃度のゴム成分を均一分散したもの、および非晶質ポリα−オレフィンやエチレン−ブチレン共重合体であっても良い。これらは2種以上ブレンドしたものも用いられる。
本発明における(A)層の発泡体の密度は250〜5kg/m3 が好ましい。より好ましくは100〜10kg/m3 である。また、独立気泡率は30%以上が好ましく、より好ましくは50%以上である。
平均気泡径は0.5mm以上3.0mm以下が好ましく、より好ましくは0.5mm以上1.5mm以下である。
本発明の中間層である(B)層を構成するエチレン共重合体(b−1)としては酢酸ビニル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの群から選ばれる少なくとも1種の単量体5〜60重量%とエチレンとからなる共重合体である。ここで、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルの具体的な例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられ、中でもアクリル酸エチル、メタクリル酸エチルが好ましく用いられる。
また、エチレン共重合体のMFRは、成形性、機械的強度から1〜30g/10分、更には1〜15g/10分(JIS K6730、条件;190℃、2.16kgf)が好ましい。柔軟性を保持するためエチレン共重合体の硬度はJISD硬度で80以下、より好ましくはJIS A硬度で60〜90のものが好ましい。
さらにエチレン共重合体(b−1)には、本発明の効果を損なわない範囲で無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、メタクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、プロピレン、ブタジエン等共重合可能なビニル系単量体を共重合させることも可能である。
(B)中間層中の、エチレン共重合体(b−1)の含有量は、0〜90重量%であり、好ましくは5〜80%である。(A)オレフィン系の熱可塑性樹脂の発泡してなる層と、(C)スチレン系熱可塑性樹脂からなる層の接着性の観点からエチレン共重合体(b−1)の含有量は、90重量%以下であることが必要である。
好ましいスチレン系エラストマーは、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体のブロック共重合体あるいは該ブロック共重合体の水素添加物である。
また、水素添加されているブロック共重合体の方が水素添加されていないブロック共重合体に比べて耐熱性に優れ、経時的な物性変化が少なく、望ましい。
該ブロック共重合体の分子構造は、直鎖状、分岐状、放射状あるいはこれらの組み合わせのいずれであってもよい。このスチレン系エラストマーは、どの様な製造方法によって製造したものでもよい。例えば、特公昭40−23798号公報に記載された方法により、リチウム触媒等を用いて不活性溶媒中でブロック共重合させて得ることができる。
このようなスチレン系水素添加ブロック共重合体の市販品としては「KRATON−G」(商品名、シェル化学(株)製)、「セプトン」(商品名、クラレ(株)製)、「タフテック」(商品名、旭化成ケミカルズ(株)製)等がある。
反応性基の付着量としては、0.1〜5重量%が好ましい。さらに好ましくは0.1〜2重量%である。
本発明においてスチレン系熱可塑性樹脂とは、芳香族ビニル単量体とこれに共重合可能な単量体からなる共重合体をいう。
(b−3)不飽和ニトリル単量体を含有したスチレン系熱可塑性樹脂には、ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体および不飽和ニトリル単量体を含む単量体混合物をグラフト重合させて得られるグラフト重合体、芳香族ビニル単量体および不飽和ニトリル単量体を含む単量体混合物を共重合させて得られる重合体、ゴム質重合体に芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体および不飽和ニトリル単量体を含む単量体混合物をグラフト重合させて得られるグラフト重合体、芳香族ビニル単量体、(メタ)アクリル酸エステル単量体および不飽和ニトリル単量体を含む単量体混合物を共重合させて得られる重合体等あるいはこれらの混合物等が含まれる。
不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。好ましくは、アクリロニトリルである。
(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、エチルアクリレート等が挙げられる。
これらの樹脂のうち、ABS、AS、MABSが好ましく、特に、アクリロニトリルを20〜40重量%含有するAS、アクリロニトリルを10〜40重量%含有しかつブタジエンゴムを10〜50重量%含有するABS、ブタジエンゴムを10〜40重量%含有するMABSが好ましい。
不飽和ニトリル単量体を含有したスチレン系熱可塑性樹脂(b−3)の製造方法としては、特に限定はされず、乳化重合、懸濁重合、塊状重合、溶液重合、およびこれらの重合法の組み合わせ等の方法がある。
また、柔軟性を付与するため、可塑剤および軟化剤を添加しても良い。種類については硬度を低下させるものであれば特に制限はないが、脂肪酸や脂肪酸金属塩、テルペン系樹脂、石油系樹脂、PEやPPワックス類、パラフィン系オイル、ナフテン系オイルおよびエステル系オイルが推奨される。
(C)不飽和ニトリル単量体を含有したスチレン系熱可塑性樹脂とは、(b−3)と同じものだが、好ましくはゴムの含有量が5〜30重量%の曲げ弾性率が1500MPa以上(ISO527−1)のものである。
(A)層、(B)層、(C)層を積層させる方法は、特に方法は問わないが、一般的には、(A)オレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上の混合物からなる熱可塑性樹脂の発泡体シート(例えば、既に発泡済みのPPフォームのシート)を、(B)層、(C)層と多層シート成形する際にラミネートする方法が好ましい。他に、(A)層、(B)層、(C)層の3層を同時に多層成形する方法もあるし、(C)層をシート成形する際に、(A)層、(B)層を同時にラミネートしても良い。
また、真空成形、圧空成形は通常の方法で成形することができるが、展開倍率が1〜3倍程度の成形品が好ましい。
また、この複層成形品の表層に未発泡のオレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上の混合物からなる熱可塑性樹脂の層を形成して傷付き、感触等を改良することができる。
この複層成形品の(C)層に、溶融伸張粘度を上げたスチレン系樹脂を用いて真空、圧空成形性を改良することも可能である。
実施例および比較例の配合処方に用いられる各種成分を表1に、結果について表2に示した。
(1)実施例・比較例に用いた原材料
1.(A)オレフィン系樹脂およびまたはオレフィン系エラストマーの中から選ばれた少なくとも1種または2種以上の混合物からなる熱可塑性樹脂を発泡してなる層
(PPF−1)オレフィン系エラストマーとPPの動架橋によって得られたエラストマーからなるスキン層と架橋ポリプロピレンフォーム(40kg/m3 )からなるシート(オカモト株式会社製:架橋ポリプロピレンフォーム/東レ製 PPF20020PPAMを積層したシート)(図2)
(SEBS−1);旭化成ケミカルズ(株)製、商品名:タフテックH1221(水素添加スチレンブタジエンブロック共重合体)、JIS A硬度42、芳香族ビニル単量体含有量 12重量%
(SEBS−2);旭化成ケミカルズ(株)製、タフテックH1043(水素添加スチレンブタジエンブロック共重合体)、JIS A硬度72、芳香族ビニル単量体含有量67重量%
(SEBS−3):旭化成ケミカルズ(株)水素添加スチレンブタジエンブロック共重合体、スチレン含量30wt%、硬度84A
(SEBS−4);旭化成ケミカルズ(株)製、タフテックM1943(酸変性水素添加スチレンブタジエンブロック共重合体)、JIS A硬度67、芳香族ビニル単量体含有量20重量%
(ABS1);旭化成ケミカルズ(株)製、スタイラックABS(アクリロニトリル含有量22%、ブタジエンゴム含量26%)
(ABS2);旭化成ケミカルズ(株)製、スタイラックABS(アクリロニトリル含有量25%、ブタジエンゴムの含有量16%、曲げ弾性率 2350MPa(ISO178)
(AS);旭化成ケミカルズ(株)製、スタイラックAS(アクリロニトリル含有量30%)
(MD):幹ポリマーLDPE70wt%、枝ポリマーAS30wt%のグラフトコポリマー
(iv)その他の成分
(MD):日本油脂(株)製、モディパーA1400(幹ポリマーLDPE70wt%、枝ポリマーAS30wt%のグラフトコポリマー)
(ABS2);旭化成ケミカルズ(株)製、スタイラックABS(アクリロニトリル含有量25%、ブタジエンゴムの含有量16%、曲げ弾性率 2350MPa(ISO178)
4.可塑剤および軟化剤
(水添テルペン樹脂)ヤスハラケミカル製 クリアロンM115
(オイル)出光興産製 ダフニールオイル KP68
(タルク)松村産業製 ハイフィラー15
(引張り試験:180度引き剥がし強度)
複層品Zを、2cm幅の切り込みを入れ(シートの流れ方向と平行)試験台に固定し、PPF−1層を剥がしてPPF−1層の端部をクランプしてつかみ、手で引張り、プッシュプルゲージ(株式会社イマダ DPS−100)を用いて図4で説明したように180度引き剥がし強度を測定した。また、中間層とABS2の接着強度を測定するため、中間層とABS2の界面を剥がして、PPF−1層−中間層の端部をクランプして同様の試験を行った。
合否は、二つの界面のいずれの引き剥がし強度も、PPF−1層の引き剥がし破壊強度が1kgより高い場合に合格とした。
表2の中間層組成割合でブレンドした後、タンブラーで10分間攪拌したものを東芝機械製TEM35(2軸押出機)を用いて210℃の温度にて押出して中間層用の熱可塑性樹脂組成物を得た。
図1のように押出機Y(東芝機械 単軸押出機65mm)より、190℃で(C)層としてABS2を2.5mm厚みのシート状に押出し、一方、上記で得た中間層用の熱可塑性樹脂組成物を押出機X(東芝機械 単軸押出機40mm)より、160℃で約0.1mm厚みのシート状に押出し、該中間層用シートと(C)層のABS2シートが積層して、最初のロールにかかる際(図1中のロール2と3の間)、(A)層の(PPF−1)をラミネートして複層品Z(図3に模式図で示した。)を得た(総厚み5mm:各層の厚みは図3中に記載。)。表2に、複層成形品の組成およびその評価結果を示す。
表2の組成割合の中間層用の熱可塑性樹脂組成物からなるシートを用いた以外は実施例1と同様に行ない、複層成形品を得た。表2に、複層成形品の組成およびその評価結果を示す。
[比較例1〜8]
表3の中間層用のシートを用いた以外は実施例1と同様に行ない、複層成形品を得た。表3に、複層成形品の組成およびその評価結果を示す。
Claims (2)
- (A)オレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上からなる熱可塑性樹脂を発泡してなる層、(B)(b−1)酢酸ビニル、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステルの群から選ばれる少なくとも1種の単量体5〜60重量%とエチレンとからなる共重合体5〜80重量%、(b−2)スチレン系エラストマー5〜80重量%および(b−3)不飽和ニトリル単量体単位を含有するスチレン系熱可塑性樹脂10〜70重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成される中間層、並びに(C)不飽和ニトリル単量体単位を含有するスチレン系熱可塑性樹脂からなる層の3層構造を少なくとも有する複層成形品の製造方法であって、(A)層と(B)層、(c)層とをロールラミネートにより接合することを特徴とする複層成形品の製造方法。
- (A)層の表面に、更にオレフィン系樹脂およびオレフィン系エラストマーの中から選ばれる1種または2種以上からなる熱可塑性樹脂の未発泡層を有することを特徴とする請求項1記載の複層成形品の製造方法。
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