JP4489542B2 - 記録シート - Google Patents

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Description

本発明は、特殊なインキやホログラムといった入手価格が高額である付加資材を使わずに、偽造防止性が高い直接サーマル印字を利用した記録シートに関するものである。
定期券は、一般に最大6ヶ月まで利用できるものであり、例えば使用可能な期間が長い場合は返金可能であるため、金券的な性質を持っている。首都圏をはじめとする都市部では、ICカードへの切替が進んできているが、地方においてはICカードリーダを有するゲート機等の設置は、費用対効果の面から困難であり、当面、従来方式の定期券、すなわち目視に頼るものが主流とならざるを得ないとの事情がある。
さて、その目視に頼るタイプの定期券も、様々な変遷を遂げながら日々進化している。特に、最近ではメンテナンスの利便性から、券面表示部の印字方式が、従来の転写リボン方式から直接サーマル方式へ変更となりつつある。直接サーマル方式は一般に保管環境や耐薬品性の面等からは、従来の転写リボン方式よりも見劣りするとの見識があったものの、新たなオーバーコート層の開発や、改良されたサーマル層等の登場により、実用レベルに至ってきたことから、切替が進むようになってきた。特に、転写リボン方式では印字された券面表示部は最表層に位置することから、ゲート機に通過させたときに削り取られやすく、使い方によっては券面表示部が全く判読できないレベルとなってしまうのに対し、オーバーコート層で守られた直接サーマル方式では最表層が削り取られるにせよ、印字が判読できなくなるレベルまで至ることは極めて稀である、といった状況がある。
さて、このような直接サーマル方式のシートには、様々なものが実用化され、また日常生活で使用されている。例えば、買い物の時にレジでもらうレシートや、FAX用紙である。このことは定期券を簡単に偽造することが可能であることを示唆している。定期券の場合は裏面の磁気層に個別情報を書き込んでおくことで、ゲート機で磁気情報を読み取り、セキュリティ性を確保しているが、通常の磁気は消磁して書き換え可能であるため、例えば使用期限後の定期券を返却せずに保管しておけば、この磁気面の情報を適宜書き換えてさえしまえば、目視の駅員はだませないものの、ゲート機であれば安心して(?)、使用することが可能である。つまり、前述の市販サーマル紙等を使用期限後の定期券の表面に貼り付け、所定の印刷(例えば地紋印刷)を行ってしまえば、よく見ない限り、真正券となってしまう。当然、定期券であれば輸送会社の逸失利益となり、経営を揺るがす大きな問題となる。
直接サーマル方式を利用した定期券等のシートにおいて、例えば感熱発色層の上の最表面にはOP剤を塗布することが可能であるために、感熱発色層までゲート機で削られるまでには相当の搬送回数を要するようになり、最長6ヶ月の定期券の使用有効期限であれば、目視不能な状態までにはなかなか至らない、ということから比較的ゲート機との相性は良い。直接サーマル方式のカードで、感熱発色層の上にOP剤を塗布して形成するものが、例えば、特許文献1にあるように、OP剤として、例えばシリコーンやPEワックス、フッ素といった剥離性成分を少量含有させている。それは、サーマルヘッドは瞬間的に200℃前後の高温となるため、表面の滑り性が悪いと、結果的にサーマルヘッドとの接触時間が長くなり、高温下に晒される時間が長くなることでスティッキングと呼ばれる現象が発生し、印字ムラに至る場合があるからである。
また直接サーマル方式において、定期券等の各種の用途で、2色印字する場合は、例えば、特許文献2にあるように、赤発色層と黒発色層を順次積層して構成する方法が知られている。赤印字の際は印字エネルギーを低くし、黒印字の際は印字エネルギーを高く設定する方法が一般的(赤発色した上で黒発色すれば黒に見える)である。
このような直接サーマル方式を利用した定期券等のシートにおいて、OP層の適用、2色以上の発色印字を適用したり、様々な仕様を追加して使用されている。また、発色層側の定期券面の表示部に対しても、様々なセキュリティ性向上案が提案され、また実用化されている。すでに一般的となったホログラムやパールインキ、色彩可変インキ、メタリックインキといった、カラーコピー機の色再現性が困難なインキやメディアを組み合わせたものである。これらは現時点でも有力なセキュリティ技術であるが、インキや資材が特殊なため、どうしてもロットや単価面で制約を生じる。
特許番号第2757905号公報 特開平10−147069号公報
上記のように、直接サーマル印字を利用した記録シートは、OP層を設けたり、多色の発色方式がとれるようにしたり、様々に改善されてきている。しかし、定期券等の1枚単位のサーマルカード(記録シート)のような高額の価値があるものを、偽造しようとすれば、不可能なものではなく、安全に使用されるという保障がなく、問題となっている。
したがって、上記のような課題を解決するために、本発明は、前述の特殊なインキやホログラムといった入手価格が高額である付加資材を使わずに、偽造防止性が高い直接サーマル印字を利用した記録シートを製造コストを抑えて提供することを目的とする。
以上の状況を鑑み、鋭意研究開発を進め、本願は、前述の特殊なインキやホログラムといった付加資材を使わずに、セキュリティ性の向上を図るために鋭意検討した結果、感熱発色層を有するという本記録シートの特性を活かし、感熱発色面に凹部を設けるという手法で、低コストで高いセキュリティ性を付与できることを見出したものである。すなわち、請求項1に記載の発明は、加熱により発色する感熱記録層を少なくとも一部に有し、当該感熱記録層の印字記録面に紫外線硬化型インキからなるオーバーコート層を設けた記録シートにおいて、該オーバーコート層が印刷パターンによる凹部と凹部が形成されていない部分を有することにより、オーバーコート層側からサーマルヘッドで加熱した場合に、該凹部の温度が抱き込みする空気によって低めの状態となって、当該感熱記録層の発色が行われないか、もしくは淡色または異なる色に発色するようにされていることを特徴とする記録シートである。
請求項2の発明は、前記請求項1記載の凹部が、異なる2種の深さを有することを特徴とする記録シートである。請求項3の発明は、前記請求項1記載の凹部が、連続した模様からなる地紋であるか、もしくは可変番号ないし識別記号であることを特徴とする記録シートである。請求項4の発明は、前記請求項1記載の凹部が、該オーバーコート層の凸部分から約10μmの深さで形成されていることを特徴とする記録シートである。
請求項5の発明は、前記請求項1記載の記録シートが、複数色に発色する感熱記録層を有するものであって、略同一印字エネルギー下において、凹部と凹部以外の箇所で異なる発色となる深さ形成されていることを特徴とする記録シートである。

本発明は、加熱により発色する感熱記録層を少なくとも一部に有する記録シートにおいて、印字記録面に凹部を有することを特徴とするもので、該記録シートに印字記録する時に、サーマルヘッドと印字記録面との接触において、印字記録面の凹部と凹部以外の箇所とで、それらに対応する感熱記録層への印加エネルギーに差が生じて、該凹部ではエアーーの抱き込みにより、加熱温度が低下し、凹部以外の箇所との発色特性が変化する。例えば、凹部以外の箇所で黒発色、凹部の箇所でグレー発色のような印字濃度の濃淡に変化させたり、また凹部以外の箇所で黒発色、凹部の箇所で発色をさせなくしたり、あるい凹部以外の箇所の高エネルギー印加で黒発色させ、凹部の箇所の低エネルギー印加で赤発色させるような複数色の発色を発現させたりすることができる。このように、本発明の記録シートによれば、特殊なインキやホログラムといった入手価格が高額である付加資材を使わずに、偽造防止性が高い直接サーマル印字を利用した記録シートを、比較的製造コストを抑えて、提供することができた。
図1は、本発明の記録シート1の一つの実施形態を示す概略図であり、基材2上に感熱発色性材料を含有する感熱記録層3とオーバーコート層4が順次設けられていて、該オーバーコート層4の表面には、凹部5が部分的に形成されている。図1(a)は印字記録前の記録シート1の状態を示し、図1(b)は図1(a)で示された印字記録前の記録シートに対して、印字記録の全面をサーマルヘッドにより加熱し、印字後の記録シート1の状態を示したものである。図1で示した記録シート1の感熱記録層3では感熱発色性材料が1種類あるいは発色色相が同等である2種類以上を有し、印字記録後には記録シート1の感熱記録層3において、凹部5の箇所に対応した直下の箇所では、淡色部32として感熱発色の濃度が低めの状態となる。それに対し、凹部以外の箇所に対応した直下の箇所では、濃色部31として感熱発色の濃度が高めの状態となり、オーバーコート層の凹部のパターン状に濃淡画像が再現される。尚、図1では、オーバーコート層の凹部に対応した箇所が淡色部として発色した例で示したが、該凹部に対応した箇所が全く発色せずに、凹部以外の箇所に対応した部分のみに発色させることもできる。
図1において、感熱記録層3に感熱発色の色相が異なる感熱発色性材料を2種類以上、含有させ、かつ該発色色相の異なる感熱発色性材料は、発色する温度に差があり、比較的低温では淡色系で発色する材料を使用し、高温では濃色系で発色する材料を使用することで、オーバーコート層の凹部5に相当する箇所では淡色の発色になり、凹部以外に相当する箇所では、淡色系で発色する材料と濃色系で発色する材料ともに発色するが、淡色の発色は濃色の発色に吸収されてしまい、結局濃色系の色相に発色させる。これにより、複数色に発色した記録シートを得ることができる。
また、図2は、本発明の記録シート1の他の実施形態を示す概略図であり、基材2上に色相Aで発色する感熱発色性材料を含有する感熱記録層6、色相Bで発色する感熱発色性材料を含有する感熱記録層7、オーバーコート層4が順次設けられていて、該オーバーコート層4の表面には、凹部5が部分的に形成されている。なお、色相Aと色相Bとは異なる色相である。図2(a)は印字記録前の記録シート1の状態を示し、図2(b)は図2(a)で示された印字記録前の記録シートに対して、印字記録の全面をサーマルヘッドにより加熱し、印字後の記録シート1の状態を示したものである。
図2で示した記録シート1は、互いに異なる色相で発色する感熱記録層6と感熱記録層7を有し、印字記録後には記録シート1の感熱記録層6において、凹部5の箇所に対応した直下の箇所では、サーマルヘッドとオーバーコート層4と接触において、エアーが介在しているので、サーマルヘッドからの印加エネルギーが低めとなり、発色が行なわれない。それに対し、凹部以外の箇所に対応した直下の箇所では、感熱記録層6において、黒色の発色部61となる。そして、感熱記録層7はオーバーコート層4の凹凸形状に関わらず、加熱された全面が赤発色する。これによって、印字記録後の記録シート1において、オーバーコート層4の凹部5の箇所に対応した直下の箇所Bでは、赤発色を呈し、またオーバーコート層4の凹部以外の箇所に対応した直下の箇所Aでは、黒色の発色が観察される。尚、このオーバーコート層4の凹部以外の箇所に対応した直下の箇所Aでは、感熱記録層6と感熱記録層7との両方が発色するが、感熱記録層7の赤発色は、下に位置する感熱記録層6の黒発色の色相に吸収されて、黒色のみに発色したように観察される。
上記のように、感熱記録層を2層設けて、オーバーコート層の凹部と凹部以外の箇所によって、感熱記録層への印加エネルギー、つまり加熱温度の差を利用することにより、赤発色と、黒発色の2色の発色を生じさせることができる。なお、色相Aとして黒色、色相Bとして赤色の例で説明したが、これに限らず色相Aとして黒色、色相Bとして青色にしたり、色相Aとして青色、色相Bとして赤色にすることで、青と赤が混色した紫色と赤色との2色の発色を有する記録シートにすることも可能である。
図3は、本発明の記録シート1の他の実施形態を示す概略図であり、基材2上に感熱発色の色相が異なる感熱発色性材料を3種類含有させた感熱記録層3、オーバーコート層4が順次設けられている。該オーバーコート層4の表面には、凹部5が部分的に形成され、かつ凹部の深さが aである凹部51のものと、凹部の深さがbである凹部52のものが混在している。図3(a)は印字記録前の記録シート1の状態を示し、図3(b)は図3(a)で示された印字記録前の記録シートに対して、印字記録の全面をサーマルヘッドにより加熱し、印字後の記録シート1の状態を示したものである。
図3(b)に示すように、印字記録後には記録シート1の感熱記録層3において、凹部52の箇所に対応した直下の箇所では、色相Dによる発色部34が形成される。また、凹部51の箇所に対応した直下の箇所では、色相Eによる発色部35が形成される。さらに、凹部が形成されていない箇所に対応した直下の箇所では、色相Cによる発色部33が形成される。これにより、オーバーコート層の凹部の深さの長短を利用することにより、色相C、D、Eの3種類の色相の発色を有する記録シートが得られる。
発色する内容を詳しく説明すると、感熱記録層3には感熱発色の色相が異なり、かつ感熱発色開始温度が異なる感熱発色性材料X、Y、Zの3種類を含有させていて、凹部51の箇所に対応した直下の箇所では、サーマルヘッドからの印加エネルギー、つまり加熱温度が最も低く、感熱発色開始温度の最も低い感熱発色材料Zが発色して色相Eとなる。また、凹部52の箇所に対応した直下の箇所では、サーマルヘッドからの印加エネルギー、つまり加熱温度が中間程度であり、感熱発色開始温度の最も低い感熱発色材料Zと、発色開始温度の中間的な感熱発色材料Yの2つが発色して、色相Dとなる。さらに、凹部が形成されていない箇所に対応した直下の箇所では、サーマルヘッドからの印加エネルギー、つまり加熱温度が最も高く、感熱発色開始温度の最も低い感熱発色材料Z、中間的な発色開始温度の感熱発色材料Y、発色開始温度の最も高い感熱発色材料Xの3種の発色材料全てが発色して、色相Cとなる。尚、図3では、オーバーコート層の凹部の深さの違いにより発色の色相が異なる例で示したが、凹部51の深さが最も長い箇所で、全く発色せずに、凹部52と凹部が形成されていない箇所に対応した部分で発色させ、2色の発色を生じさせることもできる。
本発明の記録シートを構成する各層について、以下に詳細に説明する。
(基材)
本発明の記録シートの基材に使用できる材料は、紙類では、各種紙単体もしくは加工紙、合成紙等いずれも使用可能で、例えば、上質紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、板紙等の他、樹脂エマルジョンや合成ゴムラテックス等の含浸紙、合成樹脂内添紙などが挙げられ、プラスチックフィルムでは、ポリオレフィン系樹脂フィルム、硬質ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエステル系樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリメタクリレートフィルムなどが使用でき、これらのプラスチックフィルムでは透明なフィルムだけでなく、白色顔料や、充填剤等を加えて成膜した白色不透明のフィルム等も使用できる。更に、これらの材料はそれぞれ単独でも使用できるが、他の材料と組み合わせた積層体として使用してもよく、特に限定されない。このような基材の厚さは、5μm〜5 mm程度の範囲である。
(感熱記録層)
本発明の記録シートにおける感熱発色性材料を含有する感熱記録層は、熱融解反応により発色する電子供与性染料前駆体と電子受容性化合物が含まれ、さらに必要に応じて増感剤、退色防止剤、顔料や滑剤などの充填剤、分散剤、結着剤などが含まれる。感熱記録層は、基材へのコーティング、印刷などにより層として形成する。感熱記録層の形成方法としては、グラビア、ロールコート、スプレーコート、ディッピング、その他がある。電子供与性染料前駆体としては、ロイコ染料としてこの種の感熱材料に適用されているもの、赤色、青色、緑色、黒色等、各種の色に発色するものが選ばれる。その電子供与性染料前駆体として、具体的にはトリフェニルメタン系、フルオラン系、フェノチアジン系、オーラミン系、スピロピラン系、インドリノフタリド系などが使用でき、発色する色相に応じて適宜選択する。
上記の電子受容性化合物としては、電子供与性染料前駆体と組み合わせて顕色剤と用いられるものとして、ビスフェノールAなどのフェノール性物質、オクチルホスホン酸、ノニルホスホン酸、デシルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、テトラデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、エロキシテトラデカノイック酸などの有機酸、金属錯体化合物、チオジフェニル尿素、キノン類などがある。
また増感剤としては、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、シュウ酸ジベンジル、トリルビフェニルエーテル、脂肪酸アマイド類がある。退色防止剤としては、水酸基をブロックした顕色剤の類似物、亜鉛塩などの有機金属塩、ヒンダードフェノール類などがある。顔料を併用する場合、白色顔料であれば、可視光、近赤外光を周囲に散乱させる効果があり、光吸収剤への近赤外光吸収を促進および発熱効率を上昇させる。顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪酸塩、ゼオライト、シリカ、カオリンクレー、尿素ホルマリン樹脂などがある。
感熱発色層の形成には、上記材料からなる層を形成するためにインキまたは塗料を調製する。インキまたは塗料の結着剤としては、主に水溶性樹脂が主成分となり、ポリビニルアルコール、デンプン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、尿素樹脂、メラニン樹脂、アミド樹脂、ポリウレタン樹脂などがある。また、必要に応じて各種補助剤を添加できる。
本発明の記録シートでは、感熱記録層を1層で形成する場合、互いに異なる色相で発色する感熱記録層の条件で2層以上で形成する場合があるが、いずれにしても感熱記録層の厚さは通常、各層で約1〜10μm程度、乾燥時の塗工量で約1〜10g/m2程度である。
(オーバーコート層)
本発明の記録シートは、加熱により発色する感熱記録層を少なくとも一部に有する記録シートであり、印字記録面に凹部を有する特徴をもつが、該凹部は、オーバーコート層において、形成する。オーバーコート層は、成膜性を有する水溶性高分子、水分散性樹脂で構成したり、UV硬化型あるいはEB硬化型のインキを用いて形成することができる。図1〜3に示したように凹部の形状を鋭角的に形成するには、UV硬化型あるいはEB硬化型のインキを使用し、紫外線や電子線照射により、塗工部分を強制乾燥させることが好ましい。オーバーコート層の厚さは、それに形成する凹部の深さが10μm前後を確保する必要があるので、凹部が形成されていない部分の厚さで、乾燥時の塗工量で約10〜30g/m2程度となる。厚さが少なすぎると、凹部の形成が充分でなく、また厚すぎると記録シートの熱感度が低下しすぎてしまう。
オーバーコート層に使用するUV硬化型樹脂は、紫外線照射によって重合反応を起して硬化して樹脂となるモノマー、オリゴマー或いはプレポリマーであればその種類は特に限定されず、公知の種々のものが使用できる。またオーバーコート層は紫外線硬化性の樹脂成分に通常、光重合開始剤を含む。
プレポリマーの例としては、脂肪族、脂環族、芳香脂肪族2〜6価の多価アルコール及びポリアルキレングリコールのポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリロイルオキシアルキルリン酸エステル、ポリエステルポリ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、ポリアミド(メタ)ポリアクリレート、ポリシロキサンポリ(メタ)アクリレート側鎖及び/又は末端にメタ(アクリロイルオキシ基)を有するビニル系又はジエン系低重合体等のプレポリマーが挙げられる。またモノマーとしては、エチレン性不飽和カルボン酸のアルキルエステル、活性水素を含有する化合物のアルキレンオキシド付加重合体のモノ(メタ)アクリレート類、活性水素を有する化合物のアルキレンオキシド付加重合体と(メタ)アクリル酸とのジエステルよりなる2官能単量体N−ビニルピロリドンのようなビニルラクタム類で代表されるアミド基含有単量体、活性水素を有する化合物のアルキレンオキシド付加重合体と(メタ)アクリル酸とのポリエステルよりなる多官能単量体等が挙げられる。光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2,4−ジエチルチオキサントン等が挙げられ、プレポリマー及びモノマーに対して0.5〜10質量%の割合で添加して使用される。
またEB硬化型樹脂としては、特に種類は限定されないが、具体的には、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどが挙げられ、これらはそれぞれのプレポリマーに粘度、あるいは架橋密度を調整するために多官能または単官能のモノマーを添加して用いてもよく、また、必要に応じて公知の光重合開始剤や増感剤を添加して用いてもよい。このほか、ポリエン/チオール系のEB硬化型樹脂なども耐摩耗性に優れており、好ましく使用できる。上記のUV硬化型樹脂またはEB硬化型の樹脂の硬化には、従来公知の紫外線硬化方法や電子線硬化方法が用いられる。
上記に挙げたUV硬化型樹脂、あるいはEB硬化型樹脂と、必要に応じて光重合開始剤等の添加剤を加えたインキを準備する。このインキを、グラビア印刷、活版印刷、スクリーン印刷等の印刷方法により、基材上の感熱記録層の上にオーバーコート層として、一回の印刷により、凹部と凹部が形成されていない部分とを一括に形成したり、あるいは図4に示すように、感熱記録層3の形成された基材2に対して、まず第1のオーバーコート層41を平坦に形成し、次にそのオーバーコート層41の上に、第2のオーバーコート層42を部分的に形成し、そのオーバーコート層42の形成されていない部分が、凹部5となる構成になるように、オーバーコート層を2回印刷して形成することもである。また、オーバーコート層を平坦に1層で設け、その後にエンボス用のプレス方式や、レーザー加工により、凹部を形成したりすることも可能である。
本発明の記録シートは、加熱により発色する感熱記録層を少なくとも一部に有するもので、該記録シートにおいて、印字記録面に凹部を有する特徴をもつ。該凹部は、オーバーコート層において形成するものであり、凹部の形成パターンとしては、ロゴマークや商品名、会社名等や、幾何学模様、万線模様、彩紋模様等が繰り返し、連続して形成される地紋が挙げられる。
また、オーバーコート層における凹部は、可変番号ないし識別記号のパターンになるように形成することもできる。可変番号としては、その記録シートの所有者の会員番号、有効期間を示す番号等、識別記号としては、その記録シートの種別記号、会社の識別記号等が挙げられる。また、その凹部は、図1、2に示したような記録シートに同一の深さの長さのものにしたり、図3に示すように、記録シートに互いに異なる深さの長さを有するものを混在させたりすることができる。この凹部の深さは、その凹部の形成されている記録シートの感熱記録層の発色感度により適宜調整されるが、比較的発色感度が低めの感熱記録材料を使用した場合、印字記録で発色できない程度の深さで、凹部を形成することができる。
本発明の記録シートは、図1〜4に示したような構成において、基材2の感熱記録層3、オーバーコート層4が設けられている面と反対側に、従来から知られている磁気層や、ホログラム層等を設けることができ、定期券、商品券、証券、株券、会員証、プリペードカード、金券等の各種の用途に使用することができる。
厚さ188μmの乳白色のポリエチレンテレフタレートを基材とし、該基材の一方の面に、γ−Fe23粉末が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とウレタン系樹脂とからなるバインダー溶液中に分散されてなる磁性コーティング剤を用いて、グラビアリバース法により全面に塗布して厚さ15μmの磁気層を形成した。この基材の他方の面に、下記組成の感熱記録層用インキを用いて、グラビアリバース法により全面に塗布して、乾燥時で厚さ5g/m2の感熱記録層を形成した。以下、特に断りのない限り、部又は%は質量基準である。
(感熱記録層用インキ)
黒色発色性ロイコ染料(3−ジ−n−アミルアミノ−6−メチル−7アニリノフルオラン) 10部
赤色発色性ロイコ染料(3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン) 10部
顕色剤(ビスフェノールA) 75部
溶剤(ポリビニルアルコール10%水溶液) 5部
上記の感熱記録層の上に、大日本インキ化学工業(株)製のUV硬化型インキ、商品名グランディック(略無色透明なオーバーコート層用インキ)を用いて、図1に示すような凹部が形成されるパターンになるようなスクリーン版を用いて、スクリーン印刷を行い、印刷直後に紫外線を照射して、凹部が形成されていない部分の厚さが、乾燥時で15μmになるように、オーバーコート層を形成し、実施例1の記録シートを作製した。但し、凹部の深さは約10μmに形成された。
上記の実施例1で作製した記録シートにおいて、オーバーコート層の条件を以下のように変更した以外は、実施例1と同様にして記録シートを作製した。実施例1で使用したオーバーコート層用インキを用いて、図4に示すように、第1のオーバーコート層41を平坦に、厚さが乾燥時5g/m2になるように形成し、次にそのオーバーコート層41の上に、第2のオーバーコート層42を厚さが乾燥時10g/m2であり、そのパターンが図4の配置になるように部分的に形成し、そのオーバーコート層42の形成されていない部分が、凹部5となる構成になるように、オーバーコート層を2回印刷して形成した。但し、第1、2のオーバーコート層のそれぞれ印刷直後に紫外線を照射した。
上記の得られた実施例1、2の記録シートは、サーマルヘッドを使用して、印字記録面を加熱したところ、両方の記録シートとも、凹部の箇所に対応した直下の箇所の感熱記録層が、赤色の発色を生じ、また凹部以外の箇所に対応した直下の箇所では、黒色の発色が生じて、2色に発色した記録シートが得られた。これにより、入手価格が高額である特殊なインキやホログラムのような付加資材を使わずに、偽造防止性が高い直接サーマル印字を利用した記録シートを得ることができた。
本発明の記録シートの一つの実施形態を示す概略図であり、また印字記録前と印字記録後の記録シートの状態を示したものである。 本発明の記録シートの他の実施形態を示す概略図であり、また印字記録前と印字記録後の記録シートの状態を示したものである。 本発明の記録シートの他の実施形態を示す概略図であり、また印字記録前と印字記録後の記録シートの状態を示したものである。 本発明の記録シートのオーバーコート層を2回印刷して形成することを説明する概略図である。
符号の説明
1 記録シート
2 基材
3 感熱記録層
4 オーバーコート層
5 凹部
6 感熱記録層
7 感熱記録層
31 濃色部
32 淡色部
33 発色部
34 発色部
35 発色部
41 第1のオーバーコート層
42 第2のオーバーコート層
51 凹部
52 凹部

Claims (5)

  1. 加熱により発色する感熱記録層を少なくとも一部に有し、当該感熱記録層の印字記録面に紫外線硬化型インキからなるオーバーコート層を設けた記録シートにおいて、該オーバーコート層が印刷パターンによる凹部と凹部が形成されていない部分を有することにより、オーバーコート層側からサーマルヘッドで加熱した場合に、該凹部の温度が抱き込みする空気によって低めの状態となって、当該感熱記録層の発色が行われないか、もしくは淡色または異なる色に発色するようにされていることを特徴とする記録シート。
  2. 前記請求項1記載の凹部が、異なる2種の深さを有することを特徴とする記録シート。
  3. 前記請求項1記載の凹部が、連続した模様からなる地紋であるか、もしくは可変番号ないし識別記号であることを特徴とする記録シート。
  4. 前記請求項1記載の凹部が、該オーバーコート層の凸部分から約10μmの深さで形成されていることを特徴とする記録シート。
  5. 前記請求項1記載の記録シートが、複数色に発色する感熱記録層を有するものであって、略同一印字エネルギー下において、凹部と凹部以外の箇所で異なる発色となる深さ形成されていることを特徴とする記録シート。
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