JP4485705B2 - 掘削用ビット及びケーシングカッタ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、掘削用ビット及びケーシングカッタに関し、特に、鉄筋コンクリートなどの障害地盤の掘削作用に好適するようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、障害地盤を掘削するビット或いはケーシングカッタとしては、例えば特公平7−91932号公報にみられるように、環状端に植込まれた多数の超硬チップの先端がウエーブを描くようにしたケーシングヘッドが開示されている。
【0003】
また、実公平7−26477号公報にみられるように、削孔管の先端部の凹部には、超硬破砕材を溶着して、切削面を形成し、この切削面が回転方向側に向かって削孔管側に傾斜するようにした削孔用ビットなどが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最初の公報に開示されたケーシングヘッドは、掘削時における鉄筋のスプリングバックによる絡みや落ち込みを防ぐ必要があるため、超硬チップの植込み数を多くしなければならず、またうまく引きちぎった場合でも、不規則な形となるため、繰り粉の排出が円滑でなくなるという問題点があった。
【0005】
また、後の公報に開示された超硬破砕材を溶着する切削面が形成された削孔用ビットは、小さな切込みを維持するため、小さな傾斜面を設けているが、スプリングバックするような状態の鉄筋では、細かく切断できず、この切削面に鉄筋をひっかけてしまうという問題点があった。
【0006】
このようなことから、本発明では、鉄筋を含んだ障害地盤の掘削に好適する掘削用ビット及びケーシングカッタを提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の点に鑑みなされたもので、略直方形ブロックを呈するビット本体には、掘削方向を基準にして、ガイド部材が掘削刃部材に先行するように連設されている改善された掘削用ビットを提供するようにしたものである。
【0008】
すなわち、前記ガイド部材は、少なくとも一対のガイド片としてビット本体の両側面側に備えられ、その掘削方向では、前記掘削刃部材に向かって上り傾斜の案内面が形成されるようになっているものである。これは、鉄筋のスプリングバックを抑えるとともに、掘削溝幅の肩崩れを防止する作用を配慮したものである。
【0009】
また、前記掘削刃部材は、その上面部分には、超硬合金からなる複数個の棒状チップが植込まれ、しかもこの棒状チップのうちの最高位置にあるものが、前記ガイド部材の最高位置よりも高位にあるようにしたものである。これは、鉄筋を細かく切断すること及び掘削を有効にすることの配慮であって、前記棒状チップが、掘削時には、自生刃作用をなすように構成され、或いは前記ガイド部材が、棒状チップよりも軟質の超硬合金からなっていることが好ましい。また、繰り粉の排出性からすれば、前記ガイド片間には、掘削刃部材に対する繰り粉排出溝が形成されていることが好ましい。
【0010】
さらに、掘削用ビットは、ビット本体の両側面側に備えられた一対のガイド片に対し、その間に1又は2以上の中間ガイド片が設けられるように構成したり、掘削刃部材の上面部分が、掘削方向を基準にして、平面として形成され、或いは傾斜面及び平面として連設させることができる。また、前記ガイド部材及び掘削刃部材が、ビット本体の中間部位で、その一部をオーバーラップさせるように構成したり、掘削刃部材が、複数に分割して、千鳥刃配列に構成したりすることもできる。これらは、いずれも、被掘削物の状況変化による対処である。
【0011】
また、本発明は、円筒状をなすケーシング本体の環状端には、これらの掘削用ビットを配置することによりケーシングカッタを構成したものである。この場合、円筒状をなすケーシング本体には、前記ガイド部材及び掘削刃部材が組になって直接取付けられ、しかも前記ガイド片間には、掘削刃部材に対する繰り粉排出溝が形成されるようにしてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明掘削用ビットの一実施例について、図を参照しながら説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明掘削用ビット1を概念的に示したもので、略直方形ブロックを呈する鋼製のビット本体2には、ガイド部材3及び掘削刃部材4が連設され、掘削方向基準では、ガイド部材3が掘削刃部材4よりも先行するようになっている。
【0014】
前記ガイド部材3は、ビット本体2の両側面側に位置する少なくとも一対のガイド片5を備えることにより構成され、しかもこのガイド片5は、鉄筋の抑えを有効にするため、掘削刃部材4に向かって上り傾斜の案内面6が形成されるようになっている。この場合、ガイド片5は、ビット本体2の上面部分2aよりも幾分突出する位置関係にあり、またガイド片5の案内面6は、一次案内面6a、二次案内面 6bとして形成されるとともに、ガイド片5間には、掘削刃部材4に対する繰り粉排出溝7が形成されている。
【0015】
また、前記掘削刃部材4は、その取付け本体8に多数個の超硬合金からなる棒状チップ9が植込まれ、通常の場合その一部が取付け本体8の上面10から0.3〜3mm程度突出して、鉄筋の切断及び通常の掘削などが行えるようになっている。この場合、上面10には、傾斜面10a及び平面10bからなるものが示され、また棒状チップ9としては、φ3〜5mm程度の丸棒状のものが適用されている。しかし、三角形、四角形、五角形など多角形状のものでもよく、また掘削に応じて、刃先部分を再生していく自生刃機能を有するものが好ましい。
【0016】
このようにして構成された前記掘削刃部材4の製作は、前述したものとは異る方法として、例えば特開昭53−82601号公報、特開昭54−14620号公報などで開示されている軟質合金材からなるマトリックスを利用して棒状チップ9を植込む場合、或いは、特許第2901202号公報に開示されているように、超硬合金の棒状チップ9を金属製パイプに内挿して、この集合体をろう付け雰囲気内で一体化する場合などがある。
【0017】
なお、これらの掘削刃部材4は、製作の当初では、特に棒状チップ9の一部をあらかじめ突出させる必要はなく、同一平面状でもよい。これは、掘削時の摩耗で自然と突出量が確保されるからである。
【0018】
ところで、掘削刃部材4の棒状チップ9は、図2で示されているように、そのうちの最高位置にあるものが、前記ガイド部材3の最高位よりもδ量だけ高位にある。そして通常δ量は、棒状チップ9の突出端からの位置として1〜20mm程度に設定されるが、この範囲は、掘削刃部材4の長さ、傾斜面10aの有無などにより変化する。なお、前述した公報にみられる製作方法では、当初の形態では、取付け本体8の上面と棒状チップ9の突出端が通常同一平面上にある。
【0019】
なお、ガイド部材3を先行するように配置したのは、掘削刃部材4に一定量以下の切込みがかかる配慮であり、ガイド部材3のガイド片5に、傾斜する案内面6を形成したのは、掘削刃部材4の被掘削物に対する食い付き時に、過大な切り込みが生じない配慮である。
【0020】
また、前記ガイド部材3は、棒状チップ9よりも軟質の超硬合金を適用することが好ましい。これは、掘削刃部材4の棒状チップ9の摩耗に合わせるため、先に摩耗が進行するようにした配慮である。
【0021】
図3及び図4は、別の実施例を示した掘削用ビット1の説明図であり、前述した実施例に対して、同一部分に同一符号を付して示したものである。
【0022】
そして、この掘削用ビット1のガイド部材3及び掘削刃部材4は、ビット本体2の中間部位で、その一部がオーバーラップするものである。これは、被掘削物に対するガイド作用及び食い付き時の掘削作用が、円滑に移行することを配慮したものである。
【0023】
さらに、図5は、他の実施例を示した掘削用ビット1の概念的な説明図であり、前述した実施例と同一部分に同一符号を付したものである。主な相違点は、ガイド部材3のガイド作用を強化するため、一対のガイド片5間に中間ガイド片5aを備えるようにしたものである。この場合、中間ガイド片5aは、1個備えたものが図示されているが、掘削用ビット1の掘削幅が広い場合には、2個以上備えるように適宜変更してもよい。
【0024】
また、図6〜図8は、さらに別の実施例を示した掘削用ビット1の概念的な説明図であり、前述した実施例と異なる点は、掘削刃部材4を一対の千鳥刃配列にしたことにある。これは、掘削刃部材4の掘削バランスを配慮したものである。
【0025】
そして、図9〜図11に示される実施例は、千鳥刃配列の振り分け個数を増加させたもので、主として掘削刃部材4の掘削作用を重視したものである。
【0026】
次いで、本発明ケーシングカッタ20の一実施例について、図を参照しながら説明する。
【0027】
図12〜図19は、ケーシングカッタ20を示す概念的な説明図であって、円筒状を呈するケーシング本体21には、前述した掘削用ビット1が組込まれるようになっている。
【0028】
すなわち、図12〜図15に示されたケーシングカッタ20は、円筒状を呈するケーシング本体21の環状端面22に取付け凹部23が形成され、この取付け凹部23内には、前述した掘削用ビット1のビット本体2が例えば溶接で固定されるものである。この場合、掘削用ビット1は、ケーシング本体21に対して、内周刃及び外周刃が1:1で構成されるようになっているが、要求される掘削幅によっては、内周刃、中間刃及び外周刃が構成されるようにしてもよく、またケーシング径が大きい場合には、遠心力の負荷の関係から外周刃の取付け個数を増やすようにしてもよい。
【0029】
そして、ケーシング本体21に取付けられた前記掘削用ビット1は、前述したように、ビット本体2には、傾斜付きの案内面6を有するガイド部材3及び棒状チップ9を有する掘削刃部材4が備えられ、しかも棒状チップ9は、鉄筋の細断に備えて、そのうちの最高位置にあるものが、前記ガイド部材3の最高位よりもδ量だけ高位にある。
【0030】
なお、図12及び図14に示された実施例では、内周側のガイド片5側からの繰り粉排出を容易にするため、外周側にあるガイド片5よりも短くなっている。
【0031】
また、図16〜図19に示されるケーシングカッタ21は、図1〜図4に示された掘削用ビット1をケーシング本体21の凹部23に取付けたものである。
【0032】
さらに、図20〜図23に示された別形式のケーシングカッタ30は、ガイド部材3及び掘削刃部材4を組として、ケーシング本体31の環状端面32に直接取付けるようにしたものである。
【0033】
したがって、掘削刃部材4に対する繰り粉排出溝7は、ケーシング本体31側に形成されるようになっている。しかし、ガイド部材3は、製作上の観点からすれば、図示しない取付けブロックに取付けられるように構成して、この取付けブロックに繰り粉排出溝7を形成するようにしてもよい。
【0034】
このようにして構成されたケーシングカッタ20, 30は、鉄筋を切断しないときには、機械及び鉄筋の負荷がないので、掘削刃部材4の棒状チップ9によって通常の掘削が行われる。
【0035】
これに対し、ケーシングカッタ20, 30が鉄筋を切断するときには、掘削刃部材4に先行するガイド部材3は、傾斜を伴う案内面6によって鉄筋のスプリングバックを抑え、掘削刃部材4の棒状チップ9は、安定した状態で鉄筋を細かく切断する。
【0036】
したがって、従来みられる掘削刃部材4だけの切断では、鉄筋の食い付き時に発生する過大な切り込みによる衝撃があるのに対し、本発明のケーシングカッタ20, 30では、このような食い付き時の過大な衝撃がかからないため、機械の振動、停止や掘削用ビット1の破損などが大幅に減少する。
【0037】
また、前記ガイド部材3のガイド片5は、ケーシング本体1の内周側及び外周側に備えられているため、掘削による溝幅の肩崩れが防止され、これに伴って、棒状チップ9によって正常な掘削作用が行われる。この場合、棒状チップ9が自生刃作用をなすように構成しておけば、有効な掘削が常時維持できる。
【0038】
また、本発明のケーシングカッタ20, 30は、ガイド部材3及び掘削刃部材4の棒状チップ9間に突出量δが構成されているため、初期の掘削時点では、棒状チップ9が適切な状態に至るまで折損した。しかし、これ以後は、一定の突出量のまま均一に摩耗して安定した掘削状態が得られた。この結果、掘削抵抗が一定し、寿命の向上もみられた。
【0039】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、ビット本体2には、棒状チップ9を植込んだ掘削刃部材4に先行する案内面6を有するガイド部材3が備えられるようにした掘削用ビット1を提供したものであり、またこの掘削用ビット1を利用することにより構成されたケーシングカッタ20, 30を提供したものである。
【0040】
したがって、本発明では、ガイド部材3の案内面6によって、鉄筋のスプリングバックによる絡みを抑えることができ、また掘削部材4の棒状チップ9によって、鉄筋を細かく切断できることから、機械、被掘削物がたわみやすい状態でも掘削できるため、鉄筋を含んだ障害地盤の掘削などに好適するという利点を有する。
【0041】
また、本発明では、棒状チップ9は、そのうちの最高位置にあるものが、前記ガイド部材3の最高位よりもδ量だけ高位にあるように構成したから、初期の掘削時点では、棒状チップ9が適切な状態に至るまでは折損するが、これ以後は、安定して、一定の突出量のまま均一に摩耗することから、掘削抵抗が一定し、寿命も向上するという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明掘削用ビットにおける一実施例を示す平面図である。
【図2】図1に対する正面図である。
【図3】本発明掘削用ビットにおける他の実施例を示す平面図である。
【図4】図3に対する正面図である。
【図5】本発明掘削用ビットにおける別の実施例を示す平面図である。
【図6】本発明掘削用ビットにおけるさらに他の実施例を示す平面図である。
【図7】図6に対する正面図である。
【図8】図6に対する側面図である。
【図9】本発明掘削用ビットにおけるさらに別の実施例を示す平面図である。
【図10】図9に対する正面図である。
【図11】図9に対する側面図である。
【図12】本発明ケーシングカッタにおける一実施例を示す一部平面図である。
【図13】図12に対する一部正面図である。
【図14】図12に対する一部拡大平面図である。
【図15】図14に対する一部拡大正面図である。
【図16】本発明ケーシングカッタにおける他の一実施例を示す一部拡大平面図である。
【図17】図16に対する一部拡大正面図である。
【図18】本発明ケーシングカッタにおける別の一実施例を示す一部拡大平面図である。
【図19】図18に対する一部拡大正面図である。
【図20】本発明ケーシングカッタにおける別形式の一実施例を示す一部拡大平面図である。
【図21】図20に対する一部拡大正面図である。
【図22】本発明ケーシングカッタにおける他の一実施例を示す一部拡大平面図である。
【図23】図22に対する一部拡大正面図である。
【符号の説明】
1 掘削用ビット
2 ビット本体
2a 上面
3 ガイド部材
4 掘削刃部材
5 ガイド片
5a 中間ガイド片
6 案内面
6a 一次案内面
6b 二次案内面
7 繰り粉排出溝
8 取付け本体
9 棒状チップ
10 上面
10a 傾斜面
10b 平面
20 ケーシングカッタ
21 ケーシング本体
22 環状端面
23 凹部
30 ケーシングカッタ
31 ケーシング本体
32 環状端面

Claims (10)

  1. 略直方形ブロックを呈するビット本体には、掘削方向を基準にして、ガイド部材が掘削刃部材に先行するように連設されている掘削用ビットにおいて、
    前記ガイド部材は、少なくとも一対のガイド片としてビット本体の両側面側に備えられ、その掘削方向では、前記掘削刃部材に向かって上り傾斜の案内面が形成されるようになっており、
    前記掘削刃部材は、その上面部分には、超硬合金からなる複数個の棒状チップが植込まれ、しかもこの棒状チップのうちの最高位置にあるものが、前記ガイド部材の最高位置よりも高位にあるようにしたことを特徴とする掘削用ビット。
  2. 前記棒状チップは、掘削時には、自生刃作用をなすように構成されている請求項1記載の掘削用ビット。
  3. 前記ガイド部材は、棒状チップよりも軟質の超硬合金からなっている請求項1又は請求項2記載の掘削用ビット。
  4. 前記ガイド片間には、掘削刃部材に対する繰り粉排出溝が形成されている請求項1〜請求項3の何れか一つに記載の掘削用ビット。
  5. 前記ビット本体の両側面側に備えられた一対のガイド片に対し、その間に1又は2以上の中間ガイド片が設けられている請求項1〜請求項4の何れか一つに記載の掘削用ビット。
  6. 前記掘削刃部材の上面部分は、掘削方向を基準にして、平面として形成され、或いは傾斜面及び平面として連設される請求項1〜請求項5の何れか一つに記載の掘削用ビット。
  7. 前記ガイド部材及び掘削刃部材は、ビット本体の中間部位で、その一部がオーバーラップする請求項1〜請求項6の何れか一つに記載の掘削用ビット。
  8. 前記掘削刃部材は、複数に分割され、千鳥刃配列を構成している請求項1〜請求項6の何れか一つに記載の掘削用ビット。
  9. 円筒状をなすケーシング本体の環状端には、請求項1〜請求項8の何れか一つに記載の掘削用ビットが複数個配置されるようにしたことを特徴とするケーシングカッタ。
  10. 請求項1〜請求項8の何れか一つに記載の掘削用ビットを備え、円筒状をなすケーシング本体には、前記掘削用ビットのガイド部材及び掘削刃部材が組になって直接取付けられ、しかも前記掘削用ビットのガイド片間には、掘削刃部材に対する繰り粉排出溝が形成されていることを特徴とするケーシングカッタ。
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