JP4514359B2 - 掘削用ビット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、掘削用ビット及びケーシングカッタに関し、特に、鉄筋コンクリートなどの障害地盤の掘削作用に好適するようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、障害地盤を掘削するビット或いはケーシングカッタとしては、例えば特許第3013705号公報にみられるように、ケーシングカッタの環状端には、ケーシングビット及び超硬合金粒を金属ろう材で固めたPCアンカーケーブル切断歯を備えたケーシング掘削機の掘削先頭管が開示されている。
【0003】
また、実公平7−26477号公報にみられるように、削孔管の先端部の凹部には、超硬破砕材を溶着して、切削面を形成し、この切削面が回転方向側に向かって削孔管側に傾斜するようにした削孔用ビットなどが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最初の公報に開示されたケーシング掘削機の掘削先頭管は、特別に製作されたPCアンカーケーブル切断歯を別途製作しなければならないという問題点があった。
【0005】
また、後の公報に開示された超硬破砕材を溶着する切削面が形成された削孔用ビットは、小さな切込みを維持するため、小さな傾斜面を設けているが、スプリングバックするような状態の鉄筋では、ビット本体に、切断できない鉄筋をひっかけてしまうという問題点があった。
【0006】
このようなことから、本発明では、特殊な切断歯を必要としないで、簡単な手段によって構成されるようにした掘削用ビット及びこれを組み込んだケーシングカッタを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上述の点に鑑みなされたもので、ブロック状なすビット本体の掘削頭部には、掘削刃部材及び超硬合金からなるガイド部材がそれぞれ備えられるように改善した掘削用ビットを提供するものである。
【0008】
すなわち、前記掘削刃部材は、刃部材本体に構成される掘削面には、複数個の超硬合金からなる棒状チップが植え込まれ、また前記ガイド部材は、掘削方向を基準にしたときには、掘削刃部材に先行する関係にあり、しかも一対のガイド片が、掘削頭部の両側縁部分に配置されることにより構成され、このガイド片には、掘削端側から掘削刃部材側に向かって上り傾斜の案内面が形成されるようにしたものである。この場合、前記棒状チップは、掘削時には、自生刃作用をなすように構成され、前記ガイド片は、棒状チップよりも軟質の超硬合金からなっていることが好ましい。これは、ガイド部材及び掘削刃部材の摩耗バランスを配慮したものである。
【0009】
また、前記掘削刃部材及びガイド部材間には、掘削方向基準で、掘削刃部材が突出するような段差量δが構成されていることが好ましい。これは、一定量以下の切り込みがかかるようにした配慮である。
【0010】
さらに、前記掘削刃部材の両脇には、一対のガイド部材が配置されるようにしてもよい。これは、正逆回転による掘削方向に対処するものである。
【0011】
また、本発明は、円筒状をなすケーシング本体の環状端には、複数個のホルダを固定する取付け溝が形成され、このホルダを介して前記掘削用ビットが着脱可能になっているケーシングカッタにも適用できる。この場合、前記掘削ビットは、取付け構造の観点からすれば、ビット本体の掘削頭部とは、反対側の端部側から切欠された中央取付け溝を有し、この中央取付け溝の形成により二又部分が残存するものが好適する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明掘削用ビットの一実施例について、図を参照しながら説明する。
図1〜図3は、本発明掘削用ビット1を概念的に示した説明図であり、ブロック状を呈する鋼製のビット本体2には、膨出する掘削頭部2aが形成され、この掘削頭部2aには、掘削刃部材3及びガイド部材4が備えられている。
【0013】
前記掘削刃部材3は、その刃部材本体3aに構成される掘削面には、多数個の超硬合金からなる棒状チップ5が植え込まれ、鉄筋の切断及び通常の掘削などが行えるようになっている。この場合、棒状チップ5としては、φ3〜5mm程度の丸棒状のものが適用されるが、三角形、四角形、五角形など多角形状のものでもよい。また、掘削刃部材3は、ビット本体2又は刃部材本体3aの掘削面に穿設された受入れ穴(図示せず)内に棒状チップ5を圧入、ろう付けして構成してもよいが、掘削作用に応じて、刃先部分を再生していく自生刃機能を有するものが好ましい。
【0014】
このようなことから、図示の刃部材本体3aは、自生刃機能を有するものとして、特許第2901202号公報に開示されている棒状チップ5を内挿した金属製パイプの集合体がろう付けによって一体化される場合を適用した。しかし、この方法に限らず、特開昭53−82601号公報、特開昭54−14620号公報などで開示されているように軟質合金材からなるマトリックス中に棒状チップ5を埋め込み、これを焼結して刃部材本体3aとする場合(図10参照)も適用できる。
【0015】
一方、前記ガイド部材4は、掘削方向を基準にしたときに、掘削刃部材3よりも先行する関係にあり、しかも一対のガイド片6a, 6bが、掘削頭部2aの両側縁部分に配置されることにより構成される。そして、このガイド片6a, 6bには、鉄筋の抑えを有効にするため、前記掘削刃部材3に向かって上り傾斜の案内面7が形成されるようになっている。この場合、ガイド片6a, 6bの案内面7は、一次案内面7a及び二次案内面 7bとして形成されている。
【0016】
ところで、掘削刃部材3の棒状チップ5及びガイド部材4間には、掘削方向基準で、掘削刃部材3が突出するように段差量δが設定される。この段差量δは、通常1〜10mm程度であり、この範囲は、鉄筋が含まれる掘削状況によって変化する。なお、ガイド部材4を先行するように配置したのは、掘削刃部材3に一定量以下の切込みがかかる配慮であり、ガイド部材4のガイド片6a, 6bに、傾斜する案内面7を形成したのは、掘削刃部材3の被掘削物に対する食い付き時に、過大な切り込みが生じない配慮である。
【0017】
また、前記ガイド部材4は、棒状チップ5よりも軟質の超硬合金を適用することが好ましい。これは、掘削刃部材3の棒状チップ5の摩耗に合わせるため、先に摩耗が進行する配慮である。
【0018】
さらに、前記ビット本体2は、図示の場合、掘削頭部2aの反対側端面には、中央取付け溝8が形成され、側面側には、取付け穴9が形成されている。この取付穴9は、後述するように、取付けねじ、固定ピンなど利用により、ケーシング
本体21に取り付けられるようにしたものである。
【0019】
図4〜図6は、別の実施例を示した掘削用ビット10の概念的な説明図であるが、前述した実施例に対して、同一部分に同一符号を付して示している。
【0020】
この掘削用ビット10は、正逆回転の掘削を配慮して、中央位置にある掘削刃部材3に対して、その両脇に一対のガイド部材4,4が設けられるようにしたものである。
【0021】
次いで、掘削用ビット1をケーシング本体21に組み込んだ本発明ケーシングカッタ20の一実施例について、図7及び図8を参照しながら説明する。
【0022】
図7及び図8は、ケーシングカッタ20を示す概念的な説明図であって、円筒状を呈するケーシング本体21には、前述した図1〜図3で示された掘削用ビット1がホルダ22を介して取り付けられている。
【0023】
このホルダ22は、図9に明示されているように、円筒状を呈するケーシング本体21の環状端面に設けられた複数個の取付け溝23内で、例えば溶接により固定される。そして、このホルダ22の受入れ溝24には、ビット本体2の中央取付け溝8により残存した二股部分が差し込まれ、最終的には取付け穴9及び固定手段図示の場合では取付ねじ25を利用して固定する
【0024】
なお、本実施例のケーシングカッタ20は、図7に示されている場合では、掘削用ビット1が、ケーシング本体21に対して、同一溝幅を構成するような配列になっている。しかし、ケーシングカッタ20のカッタ径が大きいときは、この掘削用ビット1を内周刃及び外周刃として配列する場合、或いは、この掘削用ビット1を内周刃、中央刃及び外周刃として配列する場合にも当然適用できる。
【0025】
そして、前記掘削用ビット1は、ホルダ22を利用してケーシング本体21に取り付けられているが、適宜の取付け構造を有するホルダを利用してケーシング本体に取付けられるものであればよい。要するに、ビット本体2には、傾斜付きの案内面7を有するガイド部材4及び棒状チップ5を有する掘削刃部材4が備えられ、しかも掘削刃部材3の棒状チップ5及びガイド部材4間には、鉄筋の細断に備えて前述した段差量δ量を構成していればよい。
【0026】
また、図10は、別の実施例を示すケーシングカッタ30の概念的な説明図であり、円筒状を呈するケーシング本体31の取付け溝32には、受入れ溝33を形成した別形式のホルダ34が溶接されるようになっている。
【0027】
すなわち、この受入れ溝33は、図11で判るように、開口端側の溝幅を狭くしたアリ溝が適用されているもので、例えば実開平1−69893号公報などで開示されている取付け構造を有する。
【0028】
したがって、この掘削用ビット11は、ビット本体12が、全体的には、直方形ブロックを呈し、本体側面には、傾斜面が13a, 13bが形成されている。この場合、受入れ溝33内では、最終的に取付けねじ35によって固定される。
【0029】
また、この掘削用ビット11は、掘削刃部材3の刃部材本体3aとして、前述した特開昭53−82601号公報、特開昭54−14620号公報などで開示されている軟質合金材からなるマトリックス中に棒状チップ5を埋め込んだ場合が適用されている。
【0030】
図12は、他の実施例を示すケーシングカッタ40の概念的な説明図を示したものである。そして、円筒状を呈するケーシング本体41の取付け溝42内には、図9で示されたホルダ22が溶接され、このホルダ22の受入れ溝24内には、前述した図4〜図6における両方向の掘削用ビット10が組込まれるようになっている。
【0031】
このようにして構成されたケーシングカッタ20, 30, 40は、鉄筋を切断しないときには、鉄筋の負荷がないので、掘削刃部材3の棒状チップ5によって通常の掘削が行われる。
【0032】
これに対し、ケーシングカッタ20, 30,40が鉄筋を切断するときには、掘削刃部材3に先行するガイド部材4が、傾斜を伴う案内面7によって鉄筋のスプリングバックを抑え、この結果、掘削刃部材3の棒状チップ5は、鉄筋を安定した状態で細かく切断する。
【0033】
したがって、従来みられる掘削刃部材3だけの切断では、鉄筋の食い付き時に発生する過大な切り込みによる衝撃があるのに対し、本発明のケーシングカッタ20, 30, 40では、このような食い付き時の過大な衝撃がかからないため、機械の振動、停止や掘削用ビット1,10,11の破損などが大幅に減少する。
【0034】
また、前記ガイド部材4のガイド片6a, 6bは、ケーシング本体1の内周側及び外周側に備えられているため、溝幅に関係した掘削では、溝幅の肩崩れが防止され、これに伴って、棒状チップ5によって正常な掘削作用が行われる。この場合、棒状チップ5が自生刃作用をなすように構成しておけば、有効な掘削が常時維持できる。
【0035】
また、本発明のケーシングカッタ20, 30, 40は、ガイド部材4及び掘削刃部材3の棒状チップ5間に突出量δが構成されているため、初期の掘削時点では、棒状チップ5が適切な状態に至るまでは折損した。しかし、これ以後は、一定の突出量のまま均一に摩耗して安定した掘削状態が得られた。この結果、掘削抵抗が一定し、寿命の向上もみられた。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように、ビット本体2, 12には、棒状チップ5を植込んだ掘削刃部材3に先行する案内面7を有するガイド部材3が備えられるようにした掘削用ビット1, 10, 11を提供し、またこの掘削用ビット1, 10, 11を利用することにより構成されたケーシングカッタ20, 30, 40を提供したものである。
【0037】
したがって、本発明では、ガイド部材4の案内面7によって、鉄筋のスプリングバックによる絡みを抑えることができ、また掘削部材3の棒状チップ5によって、鉄筋を細かく切断できることから、機械、被掘削物がたわみやすい状態でも掘削できるため、鉄筋を含んだ障害地盤の掘削などに好適するという利点を有する。
【0038】
また、本発明では、前記掘削刃部材3の棒状チップ5及び前記ガイド部材3間には、段差量δを構成したから、初期の掘削時点では、棒状チップ5が適切な状態に至るまでは折損するが、これ以後は、一定の突出量のまま均一に摩耗するので、掘削抵抗が安定し、寿命も向上するという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明掘削用ビットにおける一実施例を示す平面図である。
【図2】図1に対する正面図である。
【図3】図2に対する左側面図である。
【図4】本発明掘削用ビットにおける他の実施例を示す平面図である。
【図5】図4に対する正面図である。
【図6】図5に対する左側面図である。
【図7】本発明ケーシングカッタにおける一実施例を示す一部平面図である。
【図8】図7に対する一部正面図である。
【図9】ケーシング本体に取付けられたホルダの一例を示す一部斜視図である。
【図10】本発明ケーシングカッタにおける一実施例を示す一部正面図である。
【図11】図10に適用されたホルダを示す一部平面図である。
【図12】本発明ケーシングカッタにおける別の一実施例を示す一部正面図である。
【符号の説明】
1, 10, 11 掘削用ビット
2, 12 ビット本体
2a 掘削頭部
3 掘削刃部材
3a 刃部本体
4 ガイド部材
6a, 6b ガイド片
7 案内面
7a 一次案内面
7b 二次案内面
8 中央取付け溝
9 取付け穴
13a, 13b 傾斜面
20, 30, 40 ケーシングカッタ
21, 31, 41 ケーシング本体
22, 34 ホルダ
23, 32, 42 取付け溝
24, 33 受入れ溝
25, 35 取付けねじ
Claims (2)
- ブロック状なすビット本体の掘削頭部には、掘削刃部材及び超硬合金からなるガイド部材がそれぞれ備えられるようにした掘削用ビットであって、
前記掘削刃部材は、刃部材本体に構成される掘削面には、複数個の超硬合金からなる棒状チップが植え込まれ、
前記ガイド部材は、掘削方向を基準にしたときには、掘削刃部材に先行する関係にあり、しかも一対のガイド片が、掘削頭部の両側縁部分に配置されることにより構成され、このガイド片には、掘削端側から掘削刃部材側に向かって上り傾斜の案内面が形成されていることを特徴とする掘削用ビット。 - 前記棒状チップは、掘削時には、自生刃作用をなすように構成され、前記ガイド片は、棒状チップよりも軟質の超硬合金からなっている請求項1に記載の掘削用ビット。
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