JP4485636B2 - 電線用被覆材料及び該被覆材料を用いた電線 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,電線におけるシース層、絶縁層等に用いられる電線用被覆材料に関し、詳しくは耐摩耗性を有する電線被覆材料及び該被覆材料を用いてなる電線に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電線・ケーブルにおけるシース層、絶縁層等に用いられる被覆材料において、難燃性が要求される場合、当該被覆材料にはポリ塩化ビニル(以下、PVCと称す)が使用されてきた。しかし、電線の廃棄焼却時にPVCがダイオキンや塩化水素ガスなどの有毒ガスの発生原因となる疑いから、PVCの使用を制限し、環境負荷が少ないポリオレフィン系樹脂に金属水酸化物からなる難燃剤をブレンドしてなる難燃性ポリオレフィン系樹脂が用いられるようになってきている。
【0003】
上記金属水酸化物からなる難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が一般的である。しかし、ポリオレフィン系樹脂に金属水酸化物からなる難燃剤をブレンドしてなる被覆材料は、優れた難燃性を有するものの、特にシース層に用いた場合に、他の物体との擦れや引っ掻き傷、電線同士の擦れ(例えば、複数本の電線が撚り合わさった組物電線での電線間の位置ずれによる電線同士の擦れ)等による傷が生じ易いう問題点を有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、優れた耐摩耗性を有する電線用被覆材料を提供することを第1の目的としている。
また、上記電線被覆材料からなるシース層及び/または絶縁層を有する電線を提供することを第2の目的としている。
【0005】
【発明が解決しようとする課鹿】
本発明者等は、上記目的を達成すべく鋭意研究した結果、メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン系樹脂からなるベース樹脂に、カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムとともに、ゴムをブレンドすると、耐摩耗性が向上した電線用被覆材料が得られることを知見し、該知見に基づき、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は以下の特徴を有している。
(1)以下のA成分、B成分およびC成分を含んでなりD成分を任意成分とする電線用被覆材料であって、A成分、B成分およびD成分の合計重量100重量部当たりのA成分の配合量が75〜95重量部、B成分の配合量が5〜10重量部である電線被覆材料。
A成分:メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン
B成分:ゴム
C成分:カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム
D成分:酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂
(2)B成分のゴム材料として酢酸ビニル含有量が60%のエチレン−酢酸ビニル共重合体が含有されてなる(1)に記載の電線用被覆材料。
(3)以下のA成分、B成分およびC成分を含んでなり、B成分のゴム材料としてポリイソブチレンが含有されてなる電線用被覆材料。
A成分:メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン
B成分:ゴム
C成分:カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム
(4)以下のD成分を任意成分とし、A成分、B成分およびD成分の合計重量100重量部当たりのA成分の配合量が75〜95重量部、B成分の配合量が5〜10重量部である(3)に記載の電線被覆材料。
D成分:酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂
(5)C成分におけるカップリング剤がアミノシラン系カップリング剤またはアミノチタネート系カップリング剤である(1)〜(4)のいずれかに記載の電線用被覆材料。
(6)A成分とB成分の合計重量100重量部当たりのC成分の配合量が50〜150重量部である(1)〜(5)のいずれかに記載の電線用被覆材料。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の被覆材料からなるシース層および/または絶縁層を有する電線。
なお、本発明における「電線用被覆材料」とは、シース材料および/または絶縁材料を含めた電線を被覆するための材料を意味する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明の電線用被覆材料は、下記A成分、B成分およびC成分を必須成分としている。
A成分:メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン樹脂
B成分:ゴム
C成分:カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム
【0008】
本発明において、A成分のメタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン系樹脂は、主に電線用被覆材料に要求される基本物性(絶縁性、誘電率等の電気的性質、柔軟性、伸長性、引張強度等の機械的性質、耐薬品性等の化学的性質、加工性等)を担うベース成分であり、該メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン系樹脂としては、公知の材料を用いることができる。
メタロセンとは、ビス(シクロペンタジエニル)金属化合物のうち、非電解質錯体で、2個のシクロペンタジエニル環が正五角形構造をして互いに平行に相対し、その中間に金属原子が挟まれたサンドイッチ構造の分子からなるものの総称である。なお、メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン系樹脂を電線材料に適用した技術として特開平10−106363がある。本発明では、前記公知文献で使用されるメタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン系樹脂を用いることができる。
【0009】
B成分のゴムとしては、引張弾性率が50MPa以下のハロゲンを含有しないゴムを意味し、例えば、ポリイソブチレン、ブチルゴム、エチレン−プロピレンゴム(EPDM)、シリコンゴム、酢酸ビニルを40〜60重量%含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−プロピレン共重合体とポリプロピレンとの動的架橋物(例えば、サントプレン(エーイーエス・ジャパン製、商品名))、密度が0.91g/cm3以下の1−ブテンのホモポリマー(例えば、タフマーA(三井化学製、商品名))などが挙げられる。
【0010】
特に、本発明に耐摩耗性の点から好ましいゴムとしては、ポリイソブチレン、または、酢酸ビニル含有量が少なくとも40重量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体である。なお、酢酸ビニル含有量が40重量%未満では、耐摩耗性の改善程度が低い傾向にある。
【0011】
C成分のカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムは、難燃剤として用いる水酸化マグネシウムにカップリング剤による表面処理を施して、水酸化マグネシウムの被覆材料中での樹脂への接着性を向上させたものである。
【0012】
なお、カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムを配合しても、前記B成分のゴムを配合しない場合は、耐摩耗性が得られない。
【0013】
カップリング剤としては、アミノシラン系カプリング剤、アミノチタネート系カップリング剤などが好ましく、また、水酸化マグネシウムの平均粒径は通常0.1〜20μm、好ましくは0.5〜5μmである。
【0014】
アミノシラン系カプリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−アニリノプロピルトリメトキシシラン、アミノベンゼントリエトキシシラン、N−4,4’−メチレンビスベンゼンアミノ−シクロへキサノールエチルトリメトキシシラン、N−4,4’−メチレンビスベンゼンアミノ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−アミノベンゼンメチレン−p−フェニレン−γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−4,4’−オキシビスベンゼンアミノ−シクロへキサノールエチルトリメトキシシラン、N−4,4’−オキシビスベンゼンアミノ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−アミノベンゼンオキシ−p−フェニレン−γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−4,4’−スルホニルベンゼンアミノ−シクロへキサノールエチルトリメトキシシラン、N−4,4’−スルホニルベンゼンアミノ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−アミノベンゼンスルホニル−p−フェニレン−γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N−p−フエニレンジアミノ−シクロへキサノールエチルトリメトキシシラン、N−p−フエニレンジアミノ{2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−p−フエニレンジアミノ−γ一ウレイドプロピルトリメトキシシランなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上が使用される。
【0015】
また、アミノチタネート系カップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシチタン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシチタン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシチタン、γ−アニリノプロピルトリメトキシチタン、アミノベンゼントリエトキシチタン、N−4,4’−メチレンビスベンゼンアミノ−シクロへキサノールエチルトリメトキシチタン、N−4,4’−メチレンビスベンゼンアミノ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルトリメトキシチタン、N−アミノベンゼンメチレン−p−フェニレンーγ−ウレイドプロピルトリメトキシチタン、N−4,4’−オキシビスベンゼンアミノ−シクロヘキサノールエチルトリメトキシチタン、N−4,4’−オキシビスベンゼンアミノ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルトリメトキシチタン、N−アミノベンゼンオキシ−p−フェニレン−γ−ウレイドプロピルトリメトキシチタン、N−4,4’−スルホニルベンゼンアミノ−シクロヘキサノールエチルトリメトキシチタン、N−4,4’−スルホニルベンゼンアミノ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルトリメトキシチタン、N−アミノベンゼンスルホニル−p−フェニレン−γ−ウレイドプロピルトリメトキシチタン、N−p−フエニレンジアミノ−シクロへキサノールエチルトリメトキシチタン、N−p−フエニレンジアミノ−2−ヒドロキシプロピルオキシプロピルトリメトキシチタン、N−p−フエニレンジアミノ−γ−ウレイドプロピルトリメトキシチタンなどが挙げられ、これらは1種又は2種以上が使用される。
【0016】
水酸化マグネシウムのカップリング剤による表面処理方法は、特に制限されるものではなく、一般的な方法、例えばカップリング剤のアルコール溶液に水酸化マグネシウムを投入し処理した後乾燥するいわゆるスラリー法あるいはカップリング剤を水酸化マグネシウム粉末に直接スプレーする乾式法などが用いられる。カップリング剤の使用量は、カップリング剤の種類によっても相違するが、水酸化マグネシウム100重量部当たり通常0.002〜5.0重量部であり、好ましくは0.1〜3.0重量部である。
【0017】
後に説明するが、本発明では、水酸化マグネシウムと樹脂との接着界面にかかる衝撃力のより一層の緩和を目的に、A成分及びB成分とは別に、さらに、D成分として酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂を添加することが好ましい。 酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂は、分子内に少なくとも1個のビニル基を有する酸無水物を共重合成分として含有するポリオレフィン系樹脂であり、主として被覆材料の白化の原因となる水酸化マグネシウムと樹脂との界面剥離を防止する作用を有する。該酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、α−オレフィン−酸無水物二元共重合体、α−オレフィン−酸無水物−アクリル系化合物若しくはビニルエステル系化合物三元共重合体などが挙げれ、これらは何れか一方または両者を併用してもよい。
【0018】
被覆材料の伸長性、耐摩耗性等を向上させる目的で、当該C成分のカップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムの一部に代えて、脂肪酸(好ましくは炭素数が15〜20)で表面処理された水酸化マグネシウムを配合してもよい。当該脂肪酸の具体例としては、例えば、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などが挙げられる。
【0019】
前記したように、本発明ではさらにD成分として、エチレン−無水マレイン酸二元共重合体、および/または、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸エステル三元共重合体を添加しても良い。かかる材料を配合する態様においては、被覆材料中におけるA成分とB成分の合計配合量に対するとD成分の配合比((A成分+B成分):D成分)は、通常、99:1〜50:50(重量比)で、好ましくは97:3〜65:35とする。かかる範囲を外れて、D成分の配合量が多くなると、被覆材料の引張強さ等の機械的強度および耐熱性が低下する傾向を示し、少なくなるとD成分の配合による効果が得られ難くなる。
【0020】
本発明の被覆材料には、この種の分野で使用されている公知のハロゲンを含まない補助資材を適量配合してもよい。
かかる補助資材としては、安定剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、カーボンブラック、架橋剤、滑剤、加工性改良剤、帯電防止剤、難燃助剤等である。
【0021】
本発明の被覆材料は、上記A成分〜C成分を所望により上記各種補助配合材を加えて、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、二軸押出機等の公知の混練装置で混練し、該混練物を射出成形、押出成形、回転成形、プレス成形等によつて所望の形態に成形することで製造される。
【0022】
本発明の電線用被覆材料は、優れた耐摩耗性を有するもので、電線のシース層及び絶縁層の両方に使用できる。
【0023】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されるものではない。
【0024】
(実施例1〜8、比較例1〜2)表1の上欄に示す各成分をバンバリーミキサー(東洋精機製作所製)に一括投入し、20分間混練した後、プレス成形により160℃で10分間成形し、各実施例及び各比較例の試験シート及び試験片を作成し、それぞれについて以下の評価試験を行った。なお、各成分の配合量は重量部である。また、メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン系樹脂、エチレン−無水マレイン酸−アクリル酸エチル三元共重合体のMFR(メルトフローレート)はJIS K 6992による測定値である。LDPEおよびEEAのD硬度はデュロメータ法に基づく値である。ポリイソブチレンの固有粘度は溶媒としてジイソブチレンを用いた測定値である。
【0025】
〔評価試験〕
・引張特性
厚さ1mmの試験シートについて、引張強さ(MPa)と伸び(%)をJISK7113に従って測定。
・耐摩耗性
厚さ1mmの試験シートについて、JIS K 6902に準拠して,摩耗試1000回転後の重量減少量を測定。摩耗輪はテーバ社製H−18を使用し、荷重は4.9Nとした。
これらの試験結果を表1の下欄に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明では、カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウムと共に、ゴム、特にゴム成分として、ポリイソブチレン、または、酢酸ビニル含有量が少なくとも40重量%以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体を配合することにより、耐摩耗性が向上するため耐摩耗性の有する電線・ケーブル用の被覆材料を得ることができる。
Claims (7)
- 以下のA成分、B成分およびC成分を含んでなり、D成分を任意成分とする電線用被覆材料であって、A成分、B成分およびD成分の合計重量100重量部当たりのA成分の配合量が75〜95重量部、B成分の配合量が5〜10重量部である電線被覆材料。
A成分:メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン
B成分:ゴム
C成分:カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム
D成分:酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂 - B成分のゴム材料として酢酸ビニル含有量が60%のエチレン−酢酸ビニル共重合体が含有されてなる請求項1に記載の電線用被覆材料。
- 以下のA成分、B成分およびC成分を含んでなり、B成分のゴム材料としてポリイソブチレンが含有されてなる電線用被覆材料。
A成分:メタロセン触媒を用いた重合によって得られる低密度ポリエチレン
B成分:ゴム
C成分:カップリング剤で表面処理された水酸化マグネシウム - 以下のD成分を任意成分とし、A成分、B成分およびD成分の合計重量100重量部当たりのA成分の配合量が75〜95重量部、B成分の配合量が5〜10重量部である請求項3に記載の電線被覆材料。
D成分:酸無水物変性ポリオレフィン系樹脂 - C成分におけるカップリング剤がアミノシラン系カップリング剤またはアミノチタネート系カップリング剤である請求項1〜4のいずれか一項に記載の電線用被覆材料。
- A成分とB成分の合計重量100重量部当たりのC成分の配合量が50〜150重量部である請求項1〜5のいずれか一項に記載の電線用被覆材料。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の被覆材料からなるシース層および/または絶縁層を有する電線。
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