JP4484349B2 - フッ素樹脂水分散液並びにそれから得られる塗膜及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フッ素樹脂水分散液並びにそれから得られるフッ素樹脂塗膜及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、フッ素樹脂はその優れた耐薬品性、耐熱性、機械的特性、電気的特性から、フィルム、コーティング剤、接着剤、成形体、繊維などの高度な特性が要求される分野に応用されている。特に、産業機器や家庭用機器などの基材表面に、耐摩耗性、高摺動性などの特性が要求される場合には、フッ素樹脂によるコーティングがよく用いられている。基材表面にこのような表面特性を与えるために、従来、基材表面をブラストやエッチングで粗面化し、さらにプライマーなどで処理した後ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂の粒子を含有する塗料を塗装し、乾燥後例えば350〜400℃で焼成処理を行い、基材表面にフッ素樹脂層を形成する方法が用いられてきた。
【0003】
このように基材表面に下塗り層を形成し、その上にフッ素樹脂層を形成する場合は、フッ素樹脂単独で塗膜を形成する場合に比較して、塗膜の厚みを厚くすることができるが、この方法では工程数が増えるためにコーティング加工に要するコストは決して安価とは言えない。これに対して、例えば特開平8−218028号公報に示されるように下塗り層の材料を安価なものにすることが提案されているが、材料面からはコストの削減になるものの、工程数は従来と変わらずコストダウン効果はあまり高いものとは言えない。
【0004】
また、近年、電子部品の製造装置の基材や高速回転モータの基材などにもフッ素樹脂のコーティングが行われているが、これらの用途においては摺動性のみならず、それらフッ素樹脂をコーティングした基材が用いられる環境下では高い耐熱性が要求されるため、下塗り層の耐熱性が低い場合にはフッ素樹脂のコーティング層から剥離するなどの問題が生じる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況に鑑み、本発明の課題は、フッ素樹脂の塗工と同時に下地成分を形成することができ、しかも高い耐熱性を有していて高温下でも基材との密着性がよい下地成分を形成することができるフッ素樹脂水分散液並びにそれから得られるフッ素樹脂塗膜及びその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ポリイミド前駆体である特定のテトラカルボン酸又はその機能性誘導体とジアミンとからなる塩が水に高濃度で溶解し、また、それらの塩が溶解した水溶液から高い耐熱性などの良好な物性を有するポリイミド塗膜が得られることを見出した。また、この塩はフッ素樹脂水分散液と混合してもフッ素樹脂の安定な分散状態に支障をきたさず、かつその水分散液は粘度の経時変化が生ずることがなく、さらに、この塩を含有するフッ素樹脂水分散液から得られる塗膜はフッ素樹脂が選択的に基材の表面を覆うことを見出して本発明に到達したものである。
【0007】
かかる知見は、従来、ポリイミド前駆体をフッ素樹脂水分散液に混合することが極めて困難であったことと基材への下地成分の付与とフッ素樹脂水分散液のコーティングを別工程で行っていたことに鑑みれば全く驚くべき知見である。
【0008】
すなわち、本発明のフッ素樹脂水分散液は、水にフッ素樹脂の粒子が分散されているフッ素樹脂の水分散液であって、この水分散液中に、m−キシレンジアミン1モルに対して、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体0.90〜1.10モル反応させて得られた塩が溶解しておりこの塩の含有量が2〜60質量%であることを特徴とする。
【0013】
また、請求項に記載の発明は、上記フッ素樹脂水分散液の20℃で測定したときの粘度が100ポイズ以下であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明のフッ素樹脂塗膜は、上記フッ素樹脂水分散液から得られることを特徴とする。
また、本発明のフッ素樹脂塗膜の製造方法は、上記フッ素樹脂水分散液を基材上に塗工し、加熱してこのフッ素樹脂水分散液に含まれる上記塩をイミド化することを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明のフッ素樹脂水分散液におけるフッ素樹脂としては、ポリマー鎖の繰返し単位中にフッ素原子を含む高分子化合物を意味する。フッ素樹脂のうちで含フッ素オレフィン系樹脂が好ましい。この含フッ素オレフィン系樹脂のうち、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)などがより好ましい。これらのフッ素樹脂は2種以上を任意の割合で混合して用いることもできる。
【0016】
また、本発明のフッ素樹脂水分散液は上記フッ素樹脂が粒子として水に分散しているものであり、粒子の分散状態が安定していて、少なくとも2カ月間以上は保存状態を選択することによって粒子の安定した分散状態が失われないもの、又は簡便な振盪操作によって再び安定な分散状態に回復し得るものが好ましい。
【0017】
さらに、上記フッ素樹脂水分散液におけるフッ素樹脂の分散媒体である水は、極力イオン成分、不純物粒子などが混入していないものが好ましい。
次に、上記フッ素樹脂水分散液に含有させるm−キシレンジアミンと3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体とを反応させて得られた塩は、これを加熱するか又は化学的作用を与えることによってイミド環構造を形成してポリイミドとなるいわゆるポリイミド前駆体である。このポリイミドとしては、ポリマー鎖の繰返し単位中に80モル%以上のイミド構造を有するものが好ましい。以下、m−キシレンジアミンを単に「ジアミン」と称する場合がある。また、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸を単に「テトラカルボン酸」と称する場合がある。
【0018】
そして、上記塩すなわちポリイミド前駆体は水に溶解して上記フッ素樹脂水分散液中に含有されている
【0025】
本発明のフッ素樹脂水分散液における上記ジアミンとテトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体とからなる塩の含有量は2〜60質量%であり、好ましくは4〜40質量%である。上記塩の含有量が2質量%未満であると、フッ素樹脂をコーティングすべき基材に十分な下地成分を形成することができないことがあり、一方、60質量%を超えると、塗膜表面の全てをフッ素樹脂で被覆することができないことがある。
【0026】
また、本発明のフッ素樹脂水分散液における上記フッ素樹脂の含有量は、塗膜に要求される物性などに応じて適宜選択されるが、例えば、10〜55質量%が好ましい。
【0027】
また、本発明のフッ素樹脂水分散液における上記塩と上記フッ素樹脂の総含有量すなわち総固形分量は、塗膜に要求される物性などに応じて適宜選択されるが、例えば、30質量%以上が好ましく、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。
【0028】
さらに、本発明のフッ素樹脂水分散液における上記ジアミンとテトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体とからなる塩とフッ素樹脂との含有量の割合も、塗膜に要求される物性などに応じて適宜選択される。
【0029】
例えば、フッ素樹脂水分散液を塗工すべき基材の表面が極めて平滑である場合には上記塩をフッ素樹脂と上記塩の総固形分量の3質量%程度含有させれば、塗膜と基材との十分な密着性(接着性)を得ることができ、一方、塗膜に特に高い耐熱性などポリイミドとしての性質が強く求められる場合には上記塩の含有量を総固形分量の90質量%程度にすることもできる。
【0030】
また、本発明のフッ素樹脂水分散液における粘度は、20℃で測定したときの粘度であって、この粘度が100ポイズ以下と低いものであり、60ポイズ以下が好ましく、30ポイズ以下がより好ましい。粘度の下限は特に限定されないが実用的な下限は0.1ポイズ程度である。したがって、本発明においては0.1〜100ポイズの範囲で適宜選択することができる。
【0031】
本発明において、上記ジアミンとテトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体とからなる塩は、次のようにして得られる。
例えば、まず、水中に上記テトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体を添加してその懸濁液を調製する。次いで、この懸濁液に上記ジアミンを添加する。なお、ここで添加するジアミンの形態は固体状、又は水溶液、懸濁液などの液体状のいずれでもよい。ジアミンを添加した直後にはこの反応液は懸濁状態であるが、反応が進むにつれて生成した塩が水に溶解して最終的には塩を含む均一な溶液が得られる。
【0032】
この際に、反応を促進するために、加熱下で反応を行うようにしてもよい。反応温度は5〜90℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。
また、上記テトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体のジアミンに対する割合は、ジアミン1モルに対して0.90〜1.10モルであることが必要であり、0.95〜1.05モルがより好ましい。上記テトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体のジアミンに対する割合が0.90〜1.10モルの範囲外では目的とする塩が得られ難くなる。
【0033】
また、上記においては、テトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体の懸濁液にジアミンを添加した例を示したが、これとは逆にジアミンの懸濁液などにテトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体を添加するようにしてもよく、また、それぞれの懸濁液などを調製しておいてこれらを混合してもよく、一方を他方へ分割して添加するようにしてもよい。
【0034】
したがって、本発明のフッ素樹脂水分散液は、上記のようにして得られた塩の水溶液と通常のフッ素樹脂水分散液とを混合することによって容易に得られる。勿論上記水溶液から分離した塩をフッ素樹脂水分散液と混合するようにしてもよい。これらの場合、両者を混合する周囲の雰囲気は、常温・大気圧下で行うことができる。
【0035】
本発明のフッ素樹脂水分散液から塗膜を形成するには、これを例えばスプレーコート、フローコートなどによって基材上に塗工し、乾燥して水を除去した後、ポリイミド前駆体である上記塩を加熱してイミド化することなどが挙げられる。本発明のフッ素樹脂水分散液から塗膜を形成すると、上記塩を含有しているので、塗膜にクラックを生ずることなく厚い塗膜を容易に形成することができる。フッ素樹脂のみを含有する従来のフッ素樹脂水分散液をアルミニウム板上にフローコートした場合には、通常10μm以上の厚みの塗膜をクラックを生ずることなく形成することは困難であるが、例えば、本発明のフッ素樹脂水分散液にポリイミド前駆体である上記塩を10質量%以上含有させると、30μm以上の厚みの塗膜をクラックを生ずることなく容易に形成することができる。
【0036】
本発明のフッ素樹脂水分散液には、必要に応じて、例えばコーティング法などに応じて水以外の液状媒体を上記塩及びフッ素樹脂の粒子が析出しない範囲で添加することができる。このような液状媒体としては、メチルアルコールなどの一価のアルコール、エチレングリコール、グリセロールなどの多価アルコール、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類などが挙げられる。
【0037】
本発明のフッ素樹脂水分散液から得られた塗膜は、基材から塗膜を分離してフィルムとして利用することもできる。
このように、本発明のフッ素樹脂水分散液は、例えば摺動材料の表面被覆、電気・電子部品、プリプレグなどに好ましく用いられる。
【0038】
本発明のフッ素樹脂水分散液から得られる塗膜の表面には、フッ素樹脂成分が選択的に分離凝集していて低摩擦性、耐熱性、耐薬品性などフッ素樹脂の特性が付与され、ポリイミド前駆体としての上記塩から形成されたポリイミド成分が基材との界面側に凝集して基材との密着性が高められるとともに高い耐熱性などのポリイミドの特性が付与される。したがって、得られる塗膜ないしはフィルムの耐熱性が向上して、例えば、瞬間耐熱温度を200℃と極めて高くすることができ、このような特性が要求される電気・電子部品に利用することができる。また、ガラスクロスなどへの含浸性にも優れていることから、プリプレグに利用することもできる。
【0039】
本発明において、塗膜の表面評価はX線光電子分光法によって評価する。
このX線光電子分光法による表面評価において、塗膜の表面にポリイミド由来のNlsが観測されない場合は塗膜の表面がフッ素樹脂で完全に被覆されているものとし、塗膜の表面にフッ素樹脂由来のFlsが観測されない場合は塗膜の表面がポリイミドで完全に被覆されているものとする。そして、塗膜の表面に両者が混在する場合は両者が観察される。
【0040】
また、塗膜の基材に対する密着性は、JIS−G3320に基づく碁盤目試験によって評価する。
また、塗膜の厚みは、マイクロゲージ例えば(株)ミツトヨ製を用いて10点平均厚みにより評価する。
(実施例)
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0041】
実施例において、「%」は「質量%」を示す。
実施例1
室温(25℃)で3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸36.224g(0.1011モル)を水50gに懸濁させ、この懸濁液を攪拌しながらこれにm−キシレンジアミン13.769g(0.1011モル)を添加したところ、上記ジアミンを添加すると同時に発熱して上記テトラカルボン酸と上記ジアミンとの塩が生成し、褐色の均一な水溶液が得られた。この水溶液の20℃における溶液粘度は0.5ポイズであった。
【0042】
この水溶液にPTFE樹脂水分散液(ダイキン工業社製、D−1グレード)をPTFEと上記水溶液に含有する上記テトラカルボン酸とジアミンとの塩の固形分量が70%と30%の割合になるように混合し、テトラカルボン酸とジアミンとの塩を含有したPTFE樹脂水分散液を得た。
【0043】
この塩を含有したPTFE樹脂水分散液中の塩とPTFEとの総固形分量は56%であり、水分散液の20℃における粘度は1.3ポイズであった。この水分散液を室温下で2カ月間以上放置してもPTFE樹脂の粒子の凝集は観察されず、安定な分散状態が保たれていた。
【0044】
この塩を含有するPTFE樹脂水分散液をガラス板上にフローコートし、窒素ガス雰囲気下に250℃で1時間加熱して上記塩をイミド化したところ、ガラス板上に均一な塗膜が形成された。この塗膜の厚みは35μmであった。
【0045】
この塗膜の表面をX線光電子分光法によって評価したところ、塗膜の表面は全てPTFE樹脂樹脂で被覆されていて塗膜の表面には上記塩がイミド化したポリイミドは存在しないことが確認された。また、この塗膜のガラス板に対する密着性を碁盤目試験によって評価したところ、塗膜がガラス板から剥離することは全く観察されなかった。
実施例2
室温で3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジメチルエステル36.967g(0.0957モル)を水50gに懸濁させ、この懸濁液を攪拌しながらこれにm−キシレンジアミン12.885g(0.0946モル)を添加したところ、上記ジアミンを添加するのと同時に発熱して上記テトラカルボン酸ジメチルエステルと上記ジアミンとの塩が生成し、褐色の均一な水溶液が得られた。この水溶液の20℃における溶融粘度は0.6ポイズであった。
【0046】
この水溶液にPFA樹脂水分散液(ダイキン工業社製、AD−2CRグレード)をPFAと上記水溶液に含有する上記テトラカルボン酸ジメチルエステルとジアミンとの塩の固形分量が70%と30%の割合になるように混合し、テトラカルボン酸ジメチルエステルとジアミンとの塩を含有したPFA樹脂水分散液を得た。
【0047】
この塩を含有したPFA樹脂水分散液中の塩とPFAとの総固形分量は50%であり、水分散液の20℃における粘度は1.1ポイズであった。この水分散液を室温下で2カ月間以上放置してもPFA樹脂の粒子の凝集は観察されず、安定な分散状態が保たれていた。
【0048】
この塩を含有するPFA樹脂水分散液をアルミニウム板上にフローコートし、窒素ガス雰囲気下に250℃で1時間加熱して上記塩をイミド化したところ、アルミニウム板上に均一な塗膜が形成された。この塗膜の厚みは31μmであった。
【0049】
この塗膜の表面を実施例1と同様にして評価したところ、塗膜の表面は全てPFA樹脂で被覆されていて塗膜の表面には上記塩がイミド化したポリイミドは存在しないことが確認された。また、この塗膜のガラス板に対する密着性を実施例1と同様にして評価したところ、塗膜がアルミニウム板から剥離することは全く観察されなかった。
比較例1
14.852gのm−キシレンジアミンを200gのジメチルアセトアミドに溶解し、この溶液に3,3',4,4'−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物35.148gを水冷下で添加したところ、上記二無水物の添加と同時に増粘し、褐色の粘稠なポリアミド酸の溶液が得られた。この溶液を高速で攪拌しながら大量のn−ヘキサン中へ滴下して懸濁液を調製し、この懸濁液を濾別してポリアミド酸を分離した。
【0050】
分離したポリアミド酸を、ポリアミド酸中のカルボン酸残基に対して2モル当量のトリエチルアミンを含む水溶液中へ添加して攪拌したところ、ポリアミド酸トリエチルアミン塩の水溶液が得られた。
【0051】
なお、トリエチルアミンの濃度がポリアミド酸中のカルボン酸残基に対して2モル当量未満の場合には生成したポリアミド酸トリエチルアミン塩が水に溶解せず、その溶液は得られなかった。
【0052】
得られたポリアミド酸トリエチルアミン塩の水溶液を、PTFE樹脂水分散液(ダイキン工業社製、D−1グレード)に、ポリアミド酸トリエチルアミン塩とPTFEの固形分量が10%と90%の割合になるように混合したところ、直ちにPTFEの粒子が析出するとともに水分散液の粘度が増粘し、その粘度は200ポイズを超えた。
【0053】
この水分散液をガラス板上に滴下し、窒素ガス雰囲気下に上記ポリアミド酸成分をイミド化したところ、ガラス板上に形成された塗膜の表面には白色の粒子が析出しており、また、この塗膜の表面を実施例1と同様にして評価したところ、塗膜の表面にはPTFE樹脂と上記ポリアミド酸成分がイミド化したポリイミドの双方が混在していることが確認された。
比較例2
PTFE樹脂水分散液(ダイキン工業社製、D−1グレード)をガラス板上にフローコートして250℃で1時間乾燥したところ、ガラス板上に厚み約10μmのPTFE樹脂塗膜が形成された。この塗膜のガラス板に対する密着性を実施例1と同様にして評価したところ、塗膜がガラス板から全て剥離した。
【0054】
また、上記PTFE樹脂水分散液(ダイキン工業社製、D−1グレード)を塗膜の厚みが10μmを超えるようにガラス板上にフローコートしたところ、塗膜にひび割れが生じていた。これらの塗膜のガラス板に対する密着性を実施例1と同様にして評価したところ、塗膜がガラス板から全て剥離した。
【0055】
以上の実施例から明らかなように、本発明のフッ素樹脂水分散液によると、ポリイミド前駆体である上記塩が水分散液に高濃度で溶解することができるとともに、高濃度で溶解しても水分散液の粘度を低く維持することができるので、基材の表面に厚い塗膜をクラックを生ずることなく形成することができる。
【0056】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のフッ素樹脂水分散液によると、ポリイミド前駆体としてジアミンとテトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体とからなる特定の塩を含有するので、フッ素樹脂の塗工と同時に下地成分を形成することができ、しかも高い耐熱性を有していて高温下でも基材との密着性がよい下地成分を形成することができる。また、上記の塩は水に高濃度で溶解するので、この塩によってフッ素樹脂水分散液の固形分濃度を高めることができ、それによってクラックを生ずることなく厚い塗膜を形成することができる。また、上記の塩はフッ素樹脂水分散液におけるフッ素樹脂粒子の分散状態に支障をきたすことがないので、フッ素樹脂の粒子の分散状態が安定に保たれて長期間保存することができる。しかも、上記の塩は水に溶解するものであるから、有機溶媒などを溶媒とするものに比べて、環境問題も少ないものである。
【0057】
また、本発明のフッ素樹脂水分散液から得られる塗膜は、フッ素樹脂のみを含む従来の水分散液から得られる塗膜に比してより厚い厚みを有し、かつ基材との密着性に優れるとともに高い耐熱性を示す。
【0058】
さらに、本発明の塗膜の製造方法によると、上記塗膜を容易に得ることができる。

Claims (4)

  1. 水にフッ素樹脂の粒子が分散されているフッ素樹脂の水分散液であって、この水分散液中に、m−キシレンジアミン1モルに対して、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのジエステル誘導体0.90〜1.10モル反応させて得られた塩が溶解しておりこの塩の含有量が2〜60質量%であることを特徴とするフッ素樹脂水分散液。
  2. 20℃で測定したときの粘度が100ポイズ以下であることを特徴とする請求項1記載のフッ素樹脂水分散液。
  3. 請求項1記載のフッ素樹脂水分散液から得られることを特徴とするフッ素樹脂塗膜。
  4. 請求項1記載のフッ素樹脂水分散液を基材上に塗工し、加熱してこのフッ素樹脂水分散液に含まれる上記塩をイミド化することを特徴とするフッ素樹脂塗膜の製造方法。
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