JP2018053142A - 潤滑塗料および潤滑被膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】摺動部材の表面に塗装して加熱乾燥させることで、耐熱性に優れた潤滑被膜を形成することができる、新たな潤滑塗料を提供することを目的とする。【解決手段】下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。(一般式(a)中、Aは単環または多環の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ有し、置換基をさらに有していてもよい4価の有機基であり、2つの−C(CF3)2OH基は互いに同一のまたは異なる芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、窒素原子は芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、Bは4価の有機基である。)【選択図】図1
Description
本発明は、潤滑塗料、潤滑被膜、及び、該潤滑被膜を備える摺動部材に関する。
潤滑塗料は、摺動部材の表面に塗装して潤滑被膜を形成させる塗料で、摺動部材の馴染みやスカッフィングの防止、摩擦係数の低減のために用いられている。
近年の自動車用ガソリンエンジンの摺動部材においては、低燃費、低エミッション、高出力を指向し、燃焼効率の改善を図る観点から潤滑被膜の耐摩耗性の向上やその効果の長期持続性が求められている。
潤滑塗料の構成としては、固体潤滑剤、バインダー樹脂(結合材)、溶剤、エポキシ樹脂を配合したものが知られており(特許文献1)、潤滑被膜の耐摩耗性や密着性の向上や効果の長期持続性の要求を満足するためには、潤滑被膜のバインダー樹脂が高い耐熱性を示すことが必要である、とされている。現在、耐熱性を有するバインダー樹脂としてはポリアミドイミド樹脂が普及している。
特許文献2〜5には、ポリアミドイミド樹脂をバインダー樹脂として用いた樹脂組成物が開示されている。
一方、特許文献6〜11には、溶剤溶解性に優れる樹脂としてヘキサフルオロイソプロパノール基(−C(CF3)2(OH))(以下、HFIP基と呼ぶことがある。)を有するポリイミドが開示されている。
摺動部材の表面に塗装して加熱乾燥させることで、耐熱性に優れた潤滑被膜を形成することができる、新たな潤滑塗料を提供することを目的とする。
特許文献6〜11のように、HFIP基を有するポリイミドは知られていたものの、潤滑塗料、潤滑被膜への応用についてはまったく想定されておらず、そのため、潤滑塗料、潤滑被膜に要求される耐熱性を有するかどうかは不明であった。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、HFIP基を有するポリイミドのうち、下記一般式(a)で表される繰り返し単位を有するポリイミドをバインダー樹脂として用いた潤滑塗料を、塗装し、乾燥させることで、耐熱性に優れた潤滑被膜を形成することができることを見出し、本発明を完成させた。
(一般式(a)中、Aは単環または多環の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ有し、置換基をさらに有していてもよい4価の有機基であり、2つの−C(CF3)2OH基は互いに同一のまたは異なる芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、窒素原子は芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、Bは4価の有機基である。)
即ち、本発明は以下の各発明を含む。
[発明1]
下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
(一般式(a)中、Aは単環または多環の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ有し、置換基をさらに有していてもよい4価の有機基であり、2つの−C(CF3)2OH基は互いに同一のまたは異なる芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、窒素原子は芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、Bは4価の有機基である。)
[発明2]
下記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
(一般式(1)中、R1は単結合、エーテル結合、スルフィド結合、アミド結合、カルボニル基、メチレン基、エチレン基、スルフィニル基、スルホニル基、−C(CH3)2−基、−C(CF3)2−基またはフェニレン基、であり、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
(一般式(2)中、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
(一般式(3)中、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
[発明3]
Bが、以下の何れかの構造で表される4価の有機基である、発明2に記載の潤滑塗料。
[発明4]
一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
(一般式(1−A)中、R1は単結合又はメチレン基であり、R2は水素原子であり、R3はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Bは4価の有機基であって、以下の何れかの構造で表される。)
[発明5]
前記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶型窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛の少なくとも1つである、発明1〜4のいずれかに記載の潤滑塗料。
[発明6]
発明1に記載の潤滑塗料を調製する際に固体潤滑剤を配合するためのポリイミド溶液であって、前記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、溶剤とを少なくとも含む、ポリイミド溶液。
[発明7]
発明2に記載の潤滑塗料を調製する際に固体潤滑剤を配合するためのポリイミド溶液であって、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、溶剤とを少なくとも含む、ポリイミド溶液。
[発明8]
下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
(一般式(a)中、Aは単環または多環の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ有し、置換基をさらに有していてもよい4価の有機基であり、2つの−C(CF3)2OH基は互いに同一のまたは異なる芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、窒素原子は芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、Bは4価の有機基である。)
[発明9]
下記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
(一般式(1)中、R1は単結合、メチレン基、エチレン基、フェニレン基、エーテル基、スルフィド基またはスルホニル基であり、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
(一般式(2)中、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
(一般式(3)中、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
[発明10]
Bが、以下の何れかの構造で表される4価の有機基である、発明9に記載の潤滑被膜。
[発明11]
下記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
(一般式(1−A)中、R1は単結合又はメチレン基であり、R2は水素原子であり、R3はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Bは4価の有機基であって、以下の何れかの構造で表される。)
[発明12]
発明1に記載の潤滑塗料を乾燥する工程を少なくとも含むことを特徴とする、潤滑被膜の製造方法。
[発明13]
発明8〜11のいずれかに記載の潤滑被膜を備える、摺動部材。
[発明14]
発明8〜11のいずれかに記載の潤滑被膜を備える、自動車エンジン用ピストンリング。
[発明15]
発明1に記載の潤滑塗料を摺動部材に塗装し、乾燥する工程を少なくとも含むことを特徴とする、潤滑被膜を備える摺動部材の製造方法。
[発明1]
下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
[発明2]
下記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
[発明3]
Bが、以下の何れかの構造で表される4価の有機基である、発明2に記載の潤滑塗料。
一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
前記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶型窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛の少なくとも1つである、発明1〜4のいずれかに記載の潤滑塗料。
[発明6]
発明1に記載の潤滑塗料を調製する際に固体潤滑剤を配合するためのポリイミド溶液であって、前記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、溶剤とを少なくとも含む、ポリイミド溶液。
[発明7]
発明2に記載の潤滑塗料を調製する際に固体潤滑剤を配合するためのポリイミド溶液であって、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、溶剤とを少なくとも含む、ポリイミド溶液。
[発明8]
下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
[発明9]
下記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
[発明10]
Bが、以下の何れかの構造で表される4価の有機基である、発明9に記載の潤滑被膜。
下記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
発明1に記載の潤滑塗料を乾燥する工程を少なくとも含むことを特徴とする、潤滑被膜の製造方法。
[発明13]
発明8〜11のいずれかに記載の潤滑被膜を備える、摺動部材。
[発明14]
発明8〜11のいずれかに記載の潤滑被膜を備える、自動車エンジン用ピストンリング。
[発明15]
発明1に記載の潤滑塗料を摺動部材に塗装し、乾燥する工程を少なくとも含むことを特徴とする、潤滑被膜を備える摺動部材の製造方法。
本発明により、摺動部材の表面に塗装して加熱乾燥させることで、耐熱性に優れた潤滑被膜を形成することができる、新たな潤滑塗料を提供することが出来る。
次に本発明について実施形態を示して詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定して解釈されない。本発明の効果を奏する限り、実施形態は種々の変形をしてもよい。
1.潤滑塗料
本発明の潤滑塗料は、所定のポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む。
本発明の潤滑塗料は、所定のポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む。
[ポリイミド]
本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドは、下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有し、好ましくは、下記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有し、特に好ましくは下記一般式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有し、さらに好ましくは下記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有する。本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドは、潤滑塗料において、主にバインダー樹脂(結合材)として用いられる。
(一般式(a)中、Aは単環または多環の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ有し、置換基をさらに有していてもよい4価の有機基であり、2つの−C(CF3)2OH基は互いに同一のまたは異なる芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、窒素原子は芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、Bは4価の有機基である。)
(一般式(1)中、R1は単結合、エーテル結合、スルフィド結合、アミド結合、カルボニル基、メチレン基、エチレン基、スルフィニル基、スルホニル基、−C(CH3)2−基、−C(CF3)2−基またはフェニレン基、であり、R2、R3はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
(一般式(2)中、R4、R5はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
(一般式(3)中、R6、R7はそれぞれ独立に水素原子、メチル基、エチル基、またはトリフルオロメチル基であり、Bは4価の有機基である。)
(一般式(1−A)中、R1は単結合又はメチレン基であり、R2は水素原子であり、R3はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基であり、Bは4価の有機基であって、以下の何れかの構造で表される。)
本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドは、下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有し、好ましくは、下記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有し、特に好ましくは下記一般式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有し、さらに好ましくは下記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有する。本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドは、潤滑塗料において、主にバインダー樹脂(結合材)として用いられる。
上記一般式(a)、(1)、(2)および(3)で表される繰り返し単位において、Bは、4価の有機基である。好ましくは、Bは、脂環、芳香環またはアルキレン基を少なくとも1つ有し、フッ素原子、塩素原子、酸素原子、硫黄原子または窒素原子をさらに有していてもよく、脂環、芳香環またはアルキレン基中の水素原子がアルキル基、フルオロアルキル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、シアノ基で置換されていてもよい。より好ましくは、Bは、以下の何れかの構造で表される。
上記一般式(a)、(1)、(2)、(3)および(1−A)で表される繰り返し単位において、さらに好ましくは、Bは以下の何れかの構造で表される。
本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドが、上記一般式(a)、(1)、(2)、(3)および(1−A)で表される繰り返し単位を複数含む場合、Bは互いに同じまたは異なっていてもよい。
本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドは、上記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有していれば、その他の骨格については特に制限されない。従って、上記一般式(a)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよく、それは、例えば、繰り返し単位中にHFIP基を1個有するものであっても良く、繰返し単位中にHFIP基を有していないものであっても良い。また、本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドは、複数の異なる上記一般式(a)で表される繰り返し単位を有していてもよい。得られる潤滑被膜の耐熱性や機械特性を調整しやすいことから、複数の異なる上記一般式(a)で表される繰り返し単位を有することが好ましい場合がある。このポリイミドは、上記一般式(a)で表される繰り返し単位の総量を50モル%以上有していてもよく、好ましくは75モル%以上である。また、上記一般式(a)で表される繰り返し単位は、ポリイミド中に規則的に配列されていてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドは、上記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有することが好ましい。中でも、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することが特に好ましく、上記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を有することがさらに好ましい。また、高いガラス転移温度(Tg)を示すポリイミドが得られることから、上記一般式(1−A)で表される繰り返し単位の中でも、R1が単結合であることが好ましい。
本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドの重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、下限は30,000であってもよく、40,000が好ましく、50,000が特に好ましい。上限は1,000,000であってもよく、500,000が好ましく、200,000が特に好ましい。このポリイミドの重量平均分子量は、30,000〜1,000,000であってもよく、40,000〜500,000が好ましく、50,000〜200,000が特に好ましい。なお、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(以下、GPCと呼ぶことがある)による標準ポリスチレン換算の値をいう。
本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドの製造方法は、特に限定されない。例えば、特許文献6〜11に記載のHFIP基を有するポリイミドの合成方法に準じて、本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドを製造することができる。具体例として、下記一般式(i)で表されるジアミン化合物と、下記一般式(ii)で表されるテトラカルボン酸二無水物とを必須原料とし、150℃以上で相互に溶融させる方法が挙げられる。その他の例として、これらの原料化合物を有機溶媒中で縮重合して得られるポリアミック酸を脱水閉環することで本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドを製造する方法が挙げられる。この縮重合反応は−80〜+80℃で行い、前記ジアミン化合物と前記テトラカルボン酸二無水物とをモル比で表して1対1で反応させることが好ましい。
(一般式(i)中、Aは単環または多環の芳香族炭化水素環を少なくとも1つ有し、置換基をさらに有していてもよい4価の有機基であり、2つの−C(CF3)2OH基は互いに同一のまたは異なる芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合し、2つの−NH2基は互いに同一のまたは異なる芳香族炭化水素環を構成する炭素原子と結合する。)
(一般式(ii)中、Bは4価の有機基である。)
上記一般式(i)で表されるジアミン化合物を例示すると、下記式(i−1)、(i−2)または(i−3)で表されるジアミン化合物などが挙げられるが、これらに限定されない。
(式(i−1)中、R1、R2およびR3はそれぞれ、一般式(1)中のR1、R2およびR3と同義である。)
(式(i−2)中、R4およびR5はそれぞれ、一般式(2)中のR4およびR5と同義である。)
(式(i−3)中、R6およびR7はそれぞれ、一般式(3)中のR6およびR7と同義である。)
上記一般式(ii)で表されるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ベンゼンテトラカルボン酸二無水物(ピロメリット酸二無水物)、トリフルオロメチルベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ビストリフルオロメチルベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ジフルオロベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水化物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと呼ぶことがある。)、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ケトン酸二無水物(以下、BTDAと呼ぶことがある。)、オキシジフタル酸二無水物(以下、ODPAと呼ぶことがある。)、ビシクロ(2,2,2)オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物(以下、6FDAと呼ぶことがある。)、2,3,4,5−チオフェンテトラカルボン酸二無水化物、2,2’,5,5’,6,6’−ヘキサフルオロ−3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン酸二無水化物(以下、DSDAと呼ぶことがある。)または3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水化物などが挙げられるが、これらに限定されない。
複数の異なる上記一般式(a)で表される繰り返し単位を有するポリイミドを製造する方法の一例として、上記一般式(i)で表されるジアミン化合物と、上記一般式(ii)で表されるジカルボン酸二無水物とのどちらか一方、または両方について複数種類を用いて縮重合を行なう方法が挙げられる。
前記縮重合反応に使用できる有機溶媒は、原料化合物が溶解すれば特に限定されない。例えば、後述の[溶剤]の段落で示したものを用いることが出来る。
上記一般式(a)で表される繰り返し単位を有するポリイミドは、前記縮重合反応で得られたポリアミック酸をさらに脱水閉環させイミド化することで得られる。この脱水閉環反応は、環化を促進する、加熱法、化学法等の条件で行う。加熱法は、重合後のポリアミック酸を150〜250℃の高温加熱でイミド化し、化学法は、0〜50℃でピリジンまたはトリエチルアミン等の塩基と無水酢酸を原料のジアミンに対してそれぞれ2モル当量以上10当量未満を加えることでイミド化し、上記一般式(a)で表される繰り返し単位を有するポリイミドの溶液を得ることができる。
[ポリイミド溶液]
本発明の固体潤滑剤と配合するために用いるポリイミド溶液は、合成によって得られたポリイミド溶液をそのまま若しくは希釈したワニス状のものか、又は、合成によって得られたポリイミド溶液から分離して得られる固体状のポリイミドを溶剤に溶解したものを用いることができる。前記ポリイミド溶液の溶剤としては、ポリイミドが溶解するものであれば特に限定されず、後述の[溶剤]の段落で示したものを用いることが出来る。
本発明の固体潤滑剤と配合するために用いるポリイミド溶液は、合成によって得られたポリイミド溶液をそのまま若しくは希釈したワニス状のものか、又は、合成によって得られたポリイミド溶液から分離して得られる固体状のポリイミドを溶剤に溶解したものを用いることができる。前記ポリイミド溶液の溶剤としては、ポリイミドが溶解するものであれば特に限定されず、後述の[溶剤]の段落で示したものを用いることが出来る。
本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドの含有量は、潤滑塗料の全固形分100質量部に対して、40〜85質量部であることが好ましい。より好ましくは、50〜70質量部である。40質量部未満では、耐摩耗性が不十分になる場合がある。85質量部を超えると摩擦係数が劣る場合がある。
[固体潤滑剤]
本発明の潤滑塗料には、固体潤滑剤が含まれる。
上記固体潤滑剤としては、相対運動する材料表面の損傷を防止したり、摩擦・摩耗を低減したりするために利用される固体物質が用いられる。具体的には、(a)フッ素樹脂、ポリオレフィンおよびポリアミド等の有機微粒子、(b)金属硫化物、グラファイト、カーボンブラック、窒化ホウ素および金属酸化物等の無機微粒子、等を例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
本発明の潤滑塗料には、固体潤滑剤が含まれる。
上記固体潤滑剤としては、相対運動する材料表面の損傷を防止したり、摩擦・摩耗を低減したりするために利用される固体物質が用いられる。具体的には、(a)フッ素樹脂、ポリオレフィンおよびポリアミド等の有機微粒子、(b)金属硫化物、グラファイト、カーボンブラック、窒化ホウ素および金属酸化物等の無機微粒子、等を例示することができる。これらは単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシフッ化樹脂等が挙げられる。ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
金属硫化物としては、二硫化モリブデン、二硫化タングステンが挙げられる。窒化ホウ素としては、六方晶型窒化ホウ素が挙げられる。金属酸化物としては、酸化アルミニウムおよび酸化亜鉛を挙げることができる。
中でも、ポリテトラフルオロエチレンの微粒子、グラファイトの微粒子、二硫化モリブデンの微粒子の少なくとも1種であることが好ましく、これらのいずれをも含むことが特に好ましい。これらを用いることで、耐摩耗性、摩擦係数低減などの摺動性に優れた潤滑被膜を形成できる潤滑塗料とすることができる。
本発明の潤滑塗料において、固体潤滑剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の潤滑塗料の全固形分100質量部に対して、15〜45質量部とすることが好ましい。より好ましくは、25〜35質量部である。
[溶剤]
本発明の潤滑塗料には、溶剤が含まれる。この溶剤としては、本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドが溶解し、本発明の潤滑塗料においてゲル化物や沈殿物が見られず、均一な状態が保てるものであれば特に制限されない。例えば、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、ハロゲン系溶媒、ラクトン系溶媒等を例示することができる。これらは単独で使用してもよいし、複数種類を混合溶媒として使用してもよい。
本発明の潤滑塗料には、溶剤が含まれる。この溶剤としては、本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドが溶解し、本発明の潤滑塗料においてゲル化物や沈殿物が見られず、均一な状態が保てるものであれば特に制限されない。例えば、アミド系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、ハロゲン系溶媒、ラクトン系溶媒等を例示することができる。これらは単独で使用してもよいし、複数種類を混合溶媒として使用してもよい。
上記アミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルホルムアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド、N−メチル−2−ピロリドン等を例示することができる。
上記エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジフェニルエーテル、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等を例示することができる。
上記芳香族系溶媒としては、ベンゼン、アニソール、ニトロベンゼン、ベンゾニトリル等を例示することができる。
上記ハロゲン系溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン等を例示することができる。
上記ラクトン系溶媒としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等を例示することができる。
本発明の潤滑塗料において、溶剤の含有量は、特に限定されないが、本発明の潤滑塗料のうち、1〜99質量%とすることが好ましい。より好ましくは、10〜90質量%である。
[添加剤]
本発明の潤滑塗料は、本発明の効果を損なわない限り、エポキシ樹脂をさらに含んでいてもよい。エポキシ樹脂は、主に硬化剤としての役割をもち、本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドを架橋、硬化させて、被膜の耐摩耗性を向上させうる。また、金属部材への塗膜の密着性を向上させうる。
本発明の潤滑塗料は、本発明の効果を損なわない限り、エポキシ樹脂をさらに含んでいてもよい。エポキシ樹脂は、主に硬化剤としての役割をもち、本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミドを架橋、硬化させて、被膜の耐摩耗性を向上させうる。また、金属部材への塗膜の密着性を向上させうる。
このエポキシ樹脂の種類は、特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂、脂環式型エポキシ樹脂等を例示することができる。
このエポキシ樹脂の含有量は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。本発明の潤滑塗料に含まれるポリイミド100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましい。より好ましくは、5〜35質量部である。1質量部未満では、エポキシ樹脂を配合する効果が発揮されない場合がある。50質量部を超えると、塗膜が脆くなり、耐摩耗性、密着性、耐熱性が低下する場合がある。
また、本発明の潤滑塗料は、本発明の効果を損なわない限り、界面活性剤、沈降防止剤等などの各種助剤をさらに含んでいてもよい。界面活性剤を含むことで、本発明の潤滑塗料に含まれる固体潤滑剤を塗料中に均一に分散させ、かつ分散状態を維持することができる場合がある。例えば、固体潤滑剤としてポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂を用いる場合、界面活性剤としてフッ素系界面活性剤を用いることで、塗料中に該フッ素樹脂を均一に分散させ、かつ、分散状態を維持することができる。このようなフッ素系界面活性剤としては、使用が制限されるペルフルオロオクタン酸等の過フッ素界面活性剤以外のフッ素系界面活性剤を使用することが好ましい。
また、上記フッ素系界面活性剤を用いる場合には、本発明の潤滑塗料に含まれる溶剤として、γ−ブチルラクトンやシクロペンタノンを用いることが、フッ素系界面活性剤との親和性に優れるため、特に好ましい。
本発明の潤滑塗料において、界面活性剤の含有量は、本発明の効果を損なわない限り特に限定されない。本発明の潤滑塗料の全固形分100質量部に対して、0.01〜5質量部とすることが好ましい。
2.潤滑被膜
本発明の潤滑被膜は、上記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含み、好ましくは、上記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含み、特に好ましくは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含み、さらに好ましくは、下記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む。
本発明の潤滑被膜は、上記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含み、好ましくは、上記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含み、特に好ましくは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含み、さらに好ましくは、下記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む。
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドが上記一般式(a)、(1)、(2)、(3)および(1−A)で表される繰り返し単位を複数含む場合、Bは互いに同じまたは異なっていてもよい。
ポリイミドを含む潤滑被膜の耐熱性は、ポリイミドの耐熱性が良いほど、より良いことが期待できる。
[ポリイミド]
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドは、上記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有していれば、その他の骨格については特に制限されない。従って、上記一般式(a)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよく、それは、例えば、繰り返し単位中にHFIP基を1個有するものであっても良く、繰返し単位中にHFIP基を有していないものであっても良い。また、本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドは、複数の異なる上記一般式(a)で表される繰り返し単位を有していてもよい。このポリイミドは、上記一般式(a)で表される繰り返し単位の総量を50モル%以上有していてもよく、好ましくは75モル%以上である。また、上記一般式(a)で表される繰り返し単位は、ポリイミド中に規則的に配列されていてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドは、上記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有していれば、その他の骨格については特に制限されない。従って、上記一般式(a)で表される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよく、それは、例えば、繰り返し単位中にHFIP基を1個有するものであっても良く、繰返し単位中にHFIP基を有していないものであっても良い。また、本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドは、複数の異なる上記一般式(a)で表される繰り返し単位を有していてもよい。このポリイミドは、上記一般式(a)で表される繰り返し単位の総量を50モル%以上有していてもよく、好ましくは75モル%以上である。また、上記一般式(a)で表される繰り返し単位は、ポリイミド中に規則的に配列されていてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドは、上記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有することが好ましい。中でも、上記一般式(1)で表される繰り返し単位を有することが特に好ましく、上記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を有することがさらに好ましい。
<ガラス転移温度(Tg)>
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドは、耐熱性の観点からガラス転移温度(以下、Tgと呼ぶことがある)が、200℃以上が好ましく、プロセス温度が高くても対応できるという観点から250℃以上がより好ましく、270℃以上がさらに好ましく、290℃以上が特に好ましい。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、昇温速度10℃/分の条件で測定したときの値を指す。
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドは、耐熱性の観点からガラス転移温度(以下、Tgと呼ぶことがある)が、200℃以上が好ましく、プロセス温度が高くても対応できるという観点から250℃以上がより好ましく、270℃以上がさらに好ましく、290℃以上が特に好ましい。ここで、ガラス転移温度(Tg)は、昇温速度10℃/分の条件で測定したときの値を指す。
<熱分解温度(Td5)>
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドの分解温度は、5%重量減少温度(以下、Td5と呼ぶことがある)を指標とし、5%重量減少温度が280℃以上であることが好ましく、300℃以上がより好ましく、320℃以上がさらに好ましい。5%重量減少温度が280℃より低いと、塗膜の劣化の原因となることがある。なお、5%重量減少温度は、株式会社リガク社製熱分析装置、機種名‘RIGAKU Thermo Plus TG8310’を用いて熱重量測定を行い、初期の重量に対して5%の重量損失があった温度のことをいう。
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドの分解温度は、5%重量減少温度(以下、Td5と呼ぶことがある)を指標とし、5%重量減少温度が280℃以上であることが好ましく、300℃以上がより好ましく、320℃以上がさらに好ましい。5%重量減少温度が280℃より低いと、塗膜の劣化の原因となることがある。なお、5%重量減少温度は、株式会社リガク社製熱分析装置、機種名‘RIGAKU Thermo Plus TG8310’を用いて熱重量測定を行い、初期の重量に対して5%の重量損失があった温度のことをいう。
<弾性率>
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドの弾性率(引張弾性率)は、特に限定されない。引張弾性率の下限値は0.5GPaが好ましく、1GPaがより好ましく、2GPaが特に好ましい。3GPaがさらに好ましい。上限値は10GPaが好ましく、8GPaが特に好ましい。中でも、固体潤滑剤のバインダー樹脂としての特性の観点から、引張弾性率は、2〜10GPaが好ましく、3〜8GPaがより好ましい。
本発明の潤滑被膜に含まれるポリイミドの弾性率(引張弾性率)は、特に限定されない。引張弾性率の下限値は0.5GPaが好ましく、1GPaがより好ましく、2GPaが特に好ましい。3GPaがさらに好ましい。上限値は10GPaが好ましく、8GPaが特に好ましい。中でも、固体潤滑剤のバインダー樹脂としての特性の観点から、引張弾性率は、2〜10GPaが好ましく、3〜8GPaがより好ましい。
[固体潤滑剤]
本発明の潤滑被膜には、固体潤滑剤が含まれる。本発明の潤滑被膜は、通常、本発明の潤滑塗料から作製するため、この固体潤滑剤は、本発明の潤滑塗料に含まれる固体潤滑剤に由来する。
本発明の潤滑被膜には、固体潤滑剤が含まれる。本発明の潤滑被膜は、通常、本発明の潤滑塗料から作製するため、この固体潤滑剤は、本発明の潤滑塗料に含まれる固体潤滑剤に由来する。
[潤滑被膜の製造方法]
本発明の潤滑被膜の製造方法は、特に限定されないが、通常、本発明の潤滑塗料を乾燥する工程を含む。本発明の潤滑塗料を摺動部材等の基材の表面に塗装する塗装工程と、潤滑塗料を塗装した基材を乾燥する乾燥工程とを含む製造方法により、本発明の潤滑被膜を基材の表面に形成することが出来る。
本発明の潤滑被膜の製造方法は、特に限定されないが、通常、本発明の潤滑塗料を乾燥する工程を含む。本発明の潤滑塗料を摺動部材等の基材の表面に塗装する塗装工程と、潤滑塗料を塗装した基材を乾燥する乾燥工程とを含む製造方法により、本発明の潤滑被膜を基材の表面に形成することが出来る。
塗装工程においては、スプレー、ロールコート、ディップ、スクリーン印刷等の公知の塗装方法を用いることができ、被膜形成対象の基材の形状や被膜の厚みによって塗装方法を選択することができる。塗装工程において用いる本発明の潤滑塗料の固形分濃度は、特に限定されず、塗装方法に応じた粘度になるように適宜調整することが好ましい。通常1〜99質量%であり、10〜90質量%が好ましい。この範囲外であっても、本発明の潤滑塗料に含まれる溶剤の量を増減させることで、固形分濃度を調整することも可能である。塗装工程において用いる本発明の潤滑塗料は、50〜100℃に予熱したものを用いることが好ましく、80〜100℃がより好ましい。
乾燥工程により、塗装面を乾燥させて本発明の潤滑塗料に含まれる溶剤を揮発させ、本発明の潤滑被膜を形成させることができる。この工程において、乾燥温度は、本発明の潤滑塗料に含まれる溶剤が揮発すればよく、通常50〜140℃、好ましくは80〜140℃であり、乾燥時間は本発明の潤滑塗料に含まれる溶剤が揮発すればよく、通常1〜120分間、10〜60分間が好ましい。
乾燥工程の後に、乾燥後の塗装面を加熱する加熱工程をさらに含んでも良い。加熱温度は、160〜350℃が好ましく、200〜300℃がより好ましい。加熱時間は、1〜180分間が好ましく、10〜90分間がより好ましい。潤滑塗料が、添加剤としてエポキシ樹脂を含有する場合には、架橋構造を形成することにより潤滑被膜の機械物性の向上が期待できるので、加熱工程を行うことが特に好ましい。
3.摺動部材
本発明の摺動部材は、表面に上記潤滑被膜を備えている。摺動部材としては、例えば、自動車エンジン用のピストンリング、エアコンのコンプレッサー用部材等が挙げられる。摺動部材の材質としては、例えば、金属、非鉄金属等が挙げられる。被膜形成対象の摺動部材が他の摺動部材と互いに摺動する部位に、上記潤滑被膜を形成することにより、摺動部材の摩擦係数を低減出来る。
本発明の摺動部材は、表面に上記潤滑被膜を備えている。摺動部材としては、例えば、自動車エンジン用のピストンリング、エアコンのコンプレッサー用部材等が挙げられる。摺動部材の材質としては、例えば、金属、非鉄金属等が挙げられる。被膜形成対象の摺動部材が他の摺動部材と互いに摺動する部位に、上記潤滑被膜を形成することにより、摺動部材の摩擦係数を低減出来る。
本発明の摺動部材は、上記潤滑塗料を用いて、上記潤滑被膜の段落で述べたのと同様の製造方法により、製造することが出来る。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はかかる実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、添加部数は、固形分換算の値である。
[調製例1−1] ポリイミド溶液(1)の調製
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、下記反応式において示されるHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、BPDA、32.4g(110mmol)、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと呼ぶことがある)、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌した。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(1)のDMAc溶液を調製した。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、下記反応式において示されるHFIP−mTB、60.0g(110mmol)、BPDA、32.4g(110mmol)、ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと呼ぶことがある)、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌した。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(1)のDMAc溶液を調製した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと呼ぶことがある)装置(東ソー株式会社製、機種名HLC−8320GPC、カラム名:TSKgel SuperHZM−H、溶媒:テトラヒドロフラン(以下、THFと呼ぶことがある))でポリイミド(1)の分子量を測定したところ、ポリイミド(1)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=96400、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.98であった。
調製したポリイミド(1)のDMAc溶液は、一部を後述のポリイミド(1)の膜の作製に用い、残りは固体潤滑剤と配合するためのポリイミド溶液(1)として用いた。
[調製例1−2] ポリイミド(1)の膜の作製
調製例1−1で調製したポリイミド(1)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて、10秒かけて回転速度600rpmに上昇させた後、回転速度600rpmで10秒間保持し、ポリイミド(1)のDMAc溶液を均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して、溶媒を除去し、さらに250℃で2時間熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(1)の膜を得た。膜厚計(株式会社ニコン製、機種名:DIGIMICRO MH−15)で厚みを測定したところ、50μmであった。
調製例1−1で調製したポリイミド(1)のDMAc溶液をガラス基材上に垂らし、スピンコーターを用いて、10秒かけて回転速度600rpmに上昇させた後、回転速度600rpmで10秒間保持し、ポリイミド(1)のDMAc溶液を均一に塗布した。窒素雰囲気下、180℃で30分間乾燥して、溶媒を除去し、さらに250℃で2時間熱処理した後、冷却し、ガラス基材からポリイミド膜を剥がすことで、ポリイミド(1)の膜を得た。膜厚計(株式会社ニコン製、機種名:DIGIMICRO MH−15)で厚みを測定したところ、50μmであった。
[調製例2−1] ポリイミド溶液(2)の調製
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、下記反応式において示される6FDA、48.9g(110mmol)を用いた以外は、調製例1−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(2)を含む溶液を調製した。
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、下記反応式において示される6FDA、48.9g(110mmol)を用いた以外は、調製例1−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(2)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(2)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=86000、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.78であった。
[調製例2−2] ポリイミド(2)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例2−1で調製した、ポリイミド(2)のDMAc溶液を用いた以外は、調製例2−1と同様の操作を行い、ポリイミド(2)の膜を得た。膜厚は、53μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例2−1で調製した、ポリイミド(2)のDMAc溶液を用いた以外は、調製例2−1と同様の操作を行い、ポリイミド(2)の膜を得た。膜厚は、53μmであった。
[調製例3−1] ポリイミド溶液(3)の調製
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、下記反応式において示されるDSDA、39.4g(110mmol)を用いた以外は、調製例1−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(3)を含む溶液を調製した。
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、下記反応式において示されるDSDA、39.4g(110mmol)を用いた以外は、調製例1−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(3)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(3)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=74900、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.63であった。
[調製例3−2] ポリイミド(3)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例3−1で調製したポリイミド(3)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから350rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(3)の膜を得た。膜厚は、43μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例3−1で調製したポリイミド(3)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから350rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(3)の膜を得た。膜厚は、43μmであった。
[調製例4−1] ポリイミド溶液(4)の調製
BPDA、32.4g(110mmol)をDMAc、220gに溶解させて加える代わりに、下記反応式において示されるODPA、34.1g(110mmol)をDMAc、160gに溶解させて加えた以外は、調製例1−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(4)を含む溶液を調製した。
BPDA、32.4g(110mmol)をDMAc、220gに溶解させて加える代わりに、下記反応式において示されるODPA、34.1g(110mmol)をDMAc、160gに溶解させて加えた以外は、調製例1−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(4)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(4)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=84400、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=2.03であった。
[調製例4−2] ポリイミド(4)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例4−1で調製したポリイミド(4)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから700rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(4)の膜を得た。膜厚は、48μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例4−1で調製したポリイミド(4)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから700rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(4)の膜を得た。膜厚は、48μmであった。
[調製例5−1] ポリイミド溶液(5)の調製
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、下記反応式において示されるBTDA、35.4g(110mmol)を用いた以外は、調製例1−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(5)を含む溶液を調製した。
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、下記反応式において示されるBTDA、35.4g(110mmol)を用いた以外は、調製例1−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(5)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(5)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=74900、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.63であった。
[調製例5−2] ポリイミド(5)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例5−1で調製したポリイミド(5)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから550rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(5)の膜を得た。膜厚は、50μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例5−1で調製したポリイミド(5)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから550rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(5)の膜を得た。膜厚は、50μmであった。
[調製例6−1] ポリイミド溶液(6)の調製
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、下記反応式において示されるHFIP−MDA、58.3g(110mmol)、BPDA、32.4g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌した。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(6)のDMAc溶液を調製した。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、下記反応式において示されるHFIP−MDA、58.3g(110mmol)、BPDA、32.4g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌した。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(6)のDMAc溶液を調製した。
ポリイミド(6)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=91600、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.84であった。
[調製例6−2] ポリイミド(6)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例6−1で調製したポリイミド(6)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから800rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(6)の膜を得た。膜厚は、50μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例6−1で調製したポリイミド(6)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから800rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(6)の膜を得た。膜厚は、50μmであった。
[調製例7−1] ポリイミド溶液(7)の調製
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、6FDA、48.9g(110mmol)を用いた以外は、調製例6−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(7)を含む溶液を調製した。
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、6FDA、48.9g(110mmol)を用いた以外は、調製例6−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(7)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(7)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=96400、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.98であった。
[調製例7−2] ポリイミド(7)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例7−1で調製したポリイミド(7)のDMAc溶液を用いた以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(7)の膜を得た。膜厚は、50μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例7−1で調製したポリイミド(7)のDMAc溶液を用いた以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(7)の膜を得た。膜厚は、50μmであった。
[調製例8−1] ポリイミド溶液(8)の調製
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、DSDA、39.1g(110mmol)を用いた以外は、調製例6−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(8)を含む溶液を調製した。
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、DSDA、39.1g(110mmol)を用いた以外は、調製例6−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(8)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(8)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=85100、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.97であった。
[調製例8−2] ポリイミド(8)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例8−1で調製したポリイミド(8)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから400rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(8)の膜を得た。膜厚は、51μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例8−1で調製したポリイミド(8)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから400rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(8)の膜を得た。膜厚は、51μmであった。
[調製例9−1]ポリイミド溶液(9)の調製
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、ODPA、34.1g(110mmol)を用いた以外は、調製例6−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(9)を含む溶液を調製した。
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、ODPA、34.1g(110mmol)を用いた以外は、調製例6−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(9)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(9)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=82300、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=2.08であった。
[調製例9−2] ポリイミド(9)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例9−1で調製したポリイミド(9)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから700rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(9)の膜を得た。膜厚は、49μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例9−1で調製したポリイミド(9)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから700rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(9)の膜を得た。膜厚は、49μmであった。
[調製例10−1] ポリイミド溶液(10)の調製
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、BTDA、35.4g(110mmol)を用いた以外は、調製例6−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(10)を含む溶液を調製した。
BPDA、32.4g(110mmol)の代わりに、BTDA、35.4g(110mmol)を用いた以外は、調製例6−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(10)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(10)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=77000、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.83であった。
[調製例10−2] ポリイミド(10)の膜の作製
ポリイミド(1)の30質量%DMAc溶液の代わりに、調製例10−1で調製したポリイミド(10)の15質量%DMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから550rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(10)の膜を得た。膜厚は、47μmであった。
ポリイミド(1)の30質量%DMAc溶液の代わりに、調製例10−1で調製したポリイミド(10)の15質量%DMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから550rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(10)の膜を得た。膜厚は、47μmであった。
[調製例11−1] ポリイミド溶液(11)の調製
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、下記反応式で示すHFIP−MDA、43.8g(82.5mmol)、MDA、5.5g(27.5mmol)、6FDA、48.9g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌した。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(11)のDMAc溶液を調製した。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、下記反応式で示すHFIP−MDA、43.8g(82.5mmol)、MDA、5.5g(27.5mmol)、6FDA、48.9g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌した。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(11)のDMAc溶液を調製した。
ポリイミド(11)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=102800、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.83であった。
[調製例11−2] ポリイミド(11)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例11−1で調製したポリイミド(11)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから550rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(11)の膜を得た。膜厚は、49μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例11−1で調製したポリイミド(11)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから550rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(11)の膜を得た。膜厚は、49μmであった。
[調製例12−1] ポリイミド溶液(12)の調製
HFIP−MDA、43.8g(82.5mmol)、MDA、5.5g(27.5mmol)の代わりに、HFIP−MDA、29.2g(55.0mmol)、MDA、10.9g(55.0mmol)を用いた以外は、調製例11−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(12)を含む溶液を調製した。
HFIP−MDA、43.8g(82.5mmol)、MDA、5.5g(27.5mmol)の代わりに、HFIP−MDA、29.2g(55.0mmol)、MDA、10.9g(55.0mmol)を用いた以外は、調製例11−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(12)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(12)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=77800、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.65であった。
[調製例12−2] ポリイミド(12)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例12−1で調製したポリイミド(12)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから650rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(12)の膜を得た。膜厚は、38μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例12−1で調製したポリイミド(12)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから650rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(12)の膜を得た。膜厚は、38μmであった。
[調製例13−1] ポリイミド溶液(13)の調製
HFIP−MDA、43.8g(82.5mmol)、MDA、5.5g(27.5mmol)の代わりに、HFIP−MDA、14.6g(27.5mmol)、MDA、16.4g(82.5mmol)を用いた以外は、調製例11−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(13)を含む溶液を調製した。
HFIP−MDA、43.8g(82.5mmol)、MDA、5.5g(27.5mmol)の代わりに、HFIP−MDA、14.6g(27.5mmol)、MDA、16.4g(82.5mmol)を用いた以外は、調製例11−1と同様にして反応を行い、ポリイミド(13)を含む溶液を調製した。
ポリイミド(13)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=55800、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=1.74であった。
[調製例13−2] ポリイミド(13)の膜の作製
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例13−1で調製したポリイミド(13)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから400rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(13)の膜を得た。膜厚は、52μmであった。
ポリイミド(1)のDMAc溶液の代わりに、調製例13−1で調製したポリイミド(13)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから400rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリイミド(13)の膜を得た。膜厚は、52μmであった。
[比較調製例1−1] ポリアミドイミド溶液(A)の調製
窒素導入管を備えた内容積500mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すMDA、39.65g(200mmol)、ジメチルアセトアミド40gを加え、窒素雰囲気下、−78℃で20分間攪拌した。無水トリメリット酸クロリド、41.92g(200mmol)をDMAc、60gに溶解させて加え、低温恒温反応槽を用いて0℃で20分間攪拌した後、次いで室温で3時間攪拌し、ポリアミドイミド(A)を含む溶液を調製した。
窒素導入管を備えた内容積500mLの三口フラスコに、以下の反応式に示すMDA、39.65g(200mmol)、ジメチルアセトアミド40gを加え、窒素雰囲気下、−78℃で20分間攪拌した。無水トリメリット酸クロリド、41.92g(200mmol)をDMAc、60gに溶解させて加え、低温恒温反応槽を用いて0℃で20分間攪拌した後、次いで室温で3時間攪拌し、ポリアミドイミド(A)を含む溶液を調製した。
ポリアミドイミド(A)の分子量は、重量平均分子量(Mw)=79000、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)=2.30であった。
ポリアミドイミド(A)を含む溶液を水、450gとメタノール、50gの混合溶液に徐々に注ぎ、ポリアミドイミド(A)を析出させた後、ろ過を行った。ろ物であるポリアミドイミド(A)を水、45gとメタノール、5gの混合溶液で3回洗浄した後、100℃で減圧乾燥を行った。乾燥したポリアミドイミド(A)、42gをDMAc、98gに溶かして加圧濾過を行い、ポリアミドイミド(A)の30質量%DMAc溶液を調製し、一部を後述のポリアミドイミド(A)の膜の作製に用い、残りは固体潤滑剤と配合するためのポリアミドイミド溶液(A)として用いた。
[比較調製例1−2] ポリアミドイミド(A)の膜の作製
ポリアミド(1)のDMAc溶液の代わりに、比較調製例1−1で調製したポリアミドイミド(A)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから1200rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリアミドイミド(A)の膜を得た。膜厚は、44μmであった。
ポリアミド(1)のDMAc溶液の代わりに、比較調製例1−1で調製したポリアミドイミド(A)のDMAc溶液を用い、回転速度を600rpmから1200rpmに変更した以外は、調製例1−2と同様の操作により、ポリアミドイミド(A)の膜を得た。膜厚は、44μmであった。
[比較調製例2−1] ポリイミド溶液(B)の調製
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、下記反応式において示されるMDA、21.8g(110mmol)、6FDA、48.9g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌した。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(B)のDMAc溶液を調製した。
窒素導入管および攪拌翼を備えた容量500mLの三口フラスコに、下記反応式において示されるMDA、21.8g(110mmol)、6FDA、48.9g(110mmol)、DMAc、220gを加え、窒素雰囲気下、20℃で攪拌した。得られた反応液にピリジン、34.8g(440mmol)、無水酢酸、44.9g(440mmol)を順に加え、さらに24時間攪拌し、イミド化を行った。その後、加圧濾過することでポリイミド(B)のDMAc溶液を調製した。
調製例1−2〜13−2で作製したポリイミド(1)〜(13)の膜と、その原料であるポリイミド(1)〜(13)を作成するための原料化合物、および比較調製例1−2で調製したポリアミドイミド(A)の膜と、その原料である化合物、および比較調製例2−2で調製したポリイミド(B)の膜と、その原料である化合物についてまとめたものを、表1〜4に示す。
[実施例1〜13、比較例1〜2]
(a)バインダー樹脂の物性評価
作製したポリイミド(1)〜(13)の膜、ポリアミドイミド(A)の膜及びポリイミド(B)の膜について、ガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(5%重量減少温度:Td5)、弾性率(引張弾性率)を測定した(実施例1−a〜13−a、比較例1−a、比較例2−a)。その結果を表5に示す。
(a)バインダー樹脂の物性評価
作製したポリイミド(1)〜(13)の膜、ポリアミドイミド(A)の膜及びポリイミド(B)の膜について、ガラス転移温度(Tg)、熱分解温度(5%重量減少温度:Td5)、弾性率(引張弾性率)を測定した(実施例1−a〜13−a、比較例1−a、比較例2−a)。その結果を表5に示す。
なお、ガラス転移温度(Tg)は、株式会社リガク製熱機械分析(TMA)、機種名‘Thermo Plus EvoII TMA8310’で測定した。また、熱分解温度(5%重量減少温度:Td5)は、株式会社リガク社製熱分析装置、機種名‘RIGAKU Thermo Plus TG8310’を用いて熱重量測定を行い、初期の重量に対して5%の重量損失があった温度である。さらに、引張弾性率は、株式会社島津製作所製精密万能試験機、機種名‘Autograph AG−IS’を用いて、JIS K 7161(プラスチック−引張特性の求め方−)に準じて、測定した。
(b)潤滑塗料及び潤滑被膜の物性評価
調製例1−1〜13−1および比較例2−1で調製した、固体潤滑剤と配合するためのポリイミド溶液を使用してポリイミド樹脂と、固体潤滑剤と、必要に応じて添加剤とを、全量が100質量部となるように配合し、混合した。この混合物を、固形分濃度が15質量%になるように溶剤としてDMAcを用いて希釈し、潤滑塗料をそれぞれ調製した。同様に、比較調製例1−1で調製した、ポリアミドイミド(A)溶液を使用してポリアミドイミド樹脂と、固体潤滑剤とを、全量が100質量部となるように配合し、混合した。この混合物を、固形分濃度が15質量%になるように溶剤としてDMAcを用いて希釈し、潤滑塗料をそれぞれ調製した。
調製例1−1〜13−1および比較例2−1で調製した、固体潤滑剤と配合するためのポリイミド溶液を使用してポリイミド樹脂と、固体潤滑剤と、必要に応じて添加剤とを、全量が100質量部となるように配合し、混合した。この混合物を、固形分濃度が15質量%になるように溶剤としてDMAcを用いて希釈し、潤滑塗料をそれぞれ調製した。同様に、比較調製例1−1で調製した、ポリアミドイミド(A)溶液を使用してポリアミドイミド樹脂と、固体潤滑剤とを、全量が100質量部となるように配合し、混合した。この混合物を、固形分濃度が15質量%になるように溶剤としてDMAcを用いて希釈し、潤滑塗料をそれぞれ調製した。
調製した潤滑塗料の組成を表6〜9に示す。表6〜9中、「MoS2」としては二硫化モリブデンのモリパウダーPS(商品名;住鉱潤滑剤製、密度4.8g/cm3)を、「PTFE」としてはセフラルルーブ(商品名;セントラル硝子製)を、「グラファイト」としては鱗片状黒鉛W−5(商品名;伊藤黒鉛工業製、密度2.2g/cm3)を、添加剤のエポキシ樹脂として、エピコート152(商品名;油化シェル社製、ノボラック型エポキシ樹脂)を示し、「―」は未添加であることを示す。
調製した潤滑塗料について、塗料性、貯蔵安定性、塗装性の評価を行った。その結果を表10〜13に示す。
また、調製した潤滑塗料から潤滑被膜を作製して、耐摩耗性、密着性の評価を行った。各物性の評価方法を以下に示し、その結果を表10〜13に示す。表12〜13中、「―」は未測定であることを示す。
<塗料性>
調製した潤滑塗料について、固体潤滑剤の分散状態と、ポリイミドまたはポリアミドイミドの凝集の有無とを目視で確認した。評価基準は以下のとおりである。
○:混合過程及び調製後の潤滑塗料中に凝集物が見られず、ポリイミドまたはポリアミドイミドが溶解し均一である(実用レベル)。
△:混合過程で固体潤滑剤が均一に分散していないが、最終的に、潤滑塗料中に凝集物がなく、ポリイミドまたはポリアミドイミドが溶解し、均質である(実用レベル)。
×:混合過程または調製後の潤滑塗料中のポリイミドまたはポリアミドイミドが凝集によりゲル化を引き起こす。
調製した潤滑塗料について、固体潤滑剤の分散状態と、ポリイミドまたはポリアミドイミドの凝集の有無とを目視で確認した。評価基準は以下のとおりである。
○:混合過程及び調製後の潤滑塗料中に凝集物が見られず、ポリイミドまたはポリアミドイミドが溶解し均一である(実用レベル)。
△:混合過程で固体潤滑剤が均一に分散していないが、最終的に、潤滑塗料中に凝集物がなく、ポリイミドまたはポリアミドイミドが溶解し、均質である(実用レベル)。
×:混合過程または調製後の潤滑塗料中のポリイミドまたはポリアミドイミドが凝集によりゲル化を引き起こす。
<貯蔵安定性>
潤滑塗料を100mL試料ビンに密封し、雰囲気温度25℃及び雰囲気湿度50%で30日間放置した後、目視で塗料の状態を確認した。評価基準は次の通りである。
◎:ゲル化物及び沈殿物がなく、均一な状態で、粘度も変化なし(実用好適レベル)。
○:沈澱物が見られるが、再度分散させると均質な状態にもどり、粘度も変化なし(実用レベル)。
×:ゲル化物及び沈殿物が見られ、再度分散させても均一な状態にならない。
潤滑塗料を100mL試料ビンに密封し、雰囲気温度25℃及び雰囲気湿度50%で30日間放置した後、目視で塗料の状態を確認した。評価基準は次の通りである。
◎:ゲル化物及び沈殿物がなく、均一な状態で、粘度も変化なし(実用好適レベル)。
○:沈澱物が見られるが、再度分散させると均質な状態にもどり、粘度も変化なし(実用レベル)。
×:ゲル化物及び沈殿物が見られ、再度分散させても均一な状態にならない。
<塗装性>
潤滑塗料を、SUS316円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に被膜の厚さが10μmになるように塗装条件を固定してスプレー塗装した。この時の塗装面の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。
○:塗装面が均一で良好である(実用レベル)。
×:塗装面が不均一で、うねり及びムラがある。
潤滑塗料を、SUS316円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に被膜の厚さが10μmになるように塗装条件を固定してスプレー塗装した。この時の塗装面の状態を目視で確認した。評価基準は次のとおりである。
○:塗装面が均一で良好である(実用レベル)。
×:塗装面が不均一で、うねり及びムラがある。
<摺動特性−耐摩耗性>
潤滑塗料を、90℃に予熱したSUS316円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に被膜の厚さが10μmとなるようにスプレー塗装した。その後、90℃で10分間、180℃で10分間乾燥し、さらに250℃で1時間加熱して被膜を形成した。この被膜試験片を鋼球(SUJ2)を相手材として往復摺動摩耗試験を行った。摺動試験条件は、15mm/sで100サイクルとした。摺動試験後、被膜の摩耗深さを測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:最も消耗している部分の摩耗深さが3μm以下である(実用レベル)。
○:最も消耗している部分の摩耗深さが3μmを超え、5μm以下である(実用レベル)。
△:最も消耗している部分の摩耗深さが5μmを超え、7μm以下である(実用レベル)。
×:最も消耗している部分の摩耗深さが7μm以上である。
潤滑塗料を、90℃に予熱したSUS316円盤(直径100mm、厚さ5mm)の表面に被膜の厚さが10μmとなるようにスプレー塗装した。その後、90℃で10分間、180℃で10分間乾燥し、さらに250℃で1時間加熱して被膜を形成した。この被膜試験片を鋼球(SUJ2)を相手材として往復摺動摩耗試験を行った。摺動試験条件は、15mm/sで100サイクルとした。摺動試験後、被膜の摩耗深さを測定した。評価基準は以下の通りである。
◎:最も消耗している部分の摩耗深さが3μm以下である(実用レベル)。
○:最も消耗している部分の摩耗深さが3μmを超え、5μm以下である(実用レベル)。
△:最も消耗している部分の摩耗深さが5μmを超え、7μm以下である(実用レベル)。
×:最も消耗している部分の摩耗深さが7μm以上である。
<密着性>
潤滑塗料をSUS316板(直径50mm×50mm、厚さ5mm)の表面に被膜の厚さが10μmになるように塗装条件を固定してスプレー塗装した。塗装面を90℃で10分間、180℃で10分間乾燥し、更に250℃で1時間加熱して被膜を形成した。JIS K5600−5−6:1999「クロスカット法」に従って、1mm×1mmの碁盤目状の切り込みを100個入れ、粘着テープによる剥離試験を行った。評価基準においても同規格に準じて評価を行った。
○:0(実用レベル)
△:1(実用レベル)
×:2〜5
潤滑塗料をSUS316板(直径50mm×50mm、厚さ5mm)の表面に被膜の厚さが10μmになるように塗装条件を固定してスプレー塗装した。塗装面を90℃で10分間、180℃で10分間乾燥し、更に250℃で1時間加熱して被膜を形成した。JIS K5600−5−6:1999「クロスカット法」に従って、1mm×1mmの碁盤目状の切り込みを100個入れ、粘着テープによる剥離試験を行った。評価基準においても同規格に準じて評価を行った。
○:0(実用レベル)
△:1(実用レベル)
×:2〜5
ポリイミド(1)〜(13)のTgは、比較例であるポリアミドイミド(A)よりも高く、耐熱性に優れることが示された。
また、ポリイミド(1)〜(13)のTd5は、比較例であるポリアミドイミド(A)のTd5と同等程度あるいは低い値を示したが、潤滑被膜の成分として、実用的に問題のない、良好な耐熱性を有することが示された。
さらに、ポリイミド(1)〜(13)の弾性率は、比較例のポリアミドイミド(A)の弾性率よりも高い値、あるいは同等程度の値を示した。
潤滑塗料(1−A)〜(13−C)の塗料性、塗装性、貯蔵安定性は、比較例である潤滑塗料(B−A)〜(B−I)よりも優れていた。
潤滑塗料(1−A)〜(13−C)の耐摩耗性は、比較例である潤滑塗料(A−A)〜(A−B)よりも優れているものが多かった。
潤滑塗料(1−A)〜(13−C)の密着性は、比較例である潤滑塗料(A−A)〜(A−B)と同等以上のものが多かった。
ポリイミド(B)の耐熱性は良好であったが、ポリイミド(B)を含有する潤滑塗料(B−A)〜(B−I)は、塗料性、塗布性、貯蔵安定性といった塗料としての性能が、ポリイミド(1)〜(13)を含有する潤滑塗料(1−A)〜(13−C)より劣っていた。
ポリアミドイミド(A)を含有する潤滑塗料(A−A)〜(A−B)は、塗料性、塗布性、貯蔵安定性といった塗料としての性能は良好であったが、ポリアミドイミド(A)のTgがポリイミド(1)〜(13)よりも劣っていた。
よって、ポリイミド(1)〜(13)が、潤滑塗料に含有させるバインダー樹脂として好適であり、ポリイミド(1)〜(13)を含有する潤滑塗料(1−A)〜(13−C)が、潤滑被膜を形成するための潤滑塗料として好適であることが分かった。
本発明の潤滑塗料を用いることにより、耐熱性に優れる潤滑被膜を提供することができる。耐熱性に優れる潤滑被膜は、熱劣化し難く、高温でも使用できる。そのため、より高い耐熱性が求められる、自動車のガソリンエンジンの摺動部材(ピストンリングなど)や、エアコン内の摺動部材などを被膜するための潤滑塗料として好適に利用することが出来る。また、本発明の潤滑塗料は、塗料性、塗装性、貯蔵安定性にも優れている。さらに、本発明の潤滑被膜は、耐摩耗性や密着性といった機械物性にも優れている。
Claims (15)
- 下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
- 下記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
- Bが、以下の何れかの構造で表される4価の有機基である、請求項2に記載の潤滑塗料。
- 一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤と、溶剤とを少なくとも含む、潤滑塗料。
- 前記固体潤滑剤が、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリクロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシフッ化樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、二硫化モリブデン、二硫化タングステン、六方晶型窒化ホウ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛の少なくとも1つである、請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑塗料。
- 請求項1に記載の潤滑塗料を調製する際に固体潤滑剤を配合するためのポリイミド溶液であって、前記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、溶剤とを少なくとも含む、ポリイミド溶液。
- 請求項2に記載の潤滑塗料を調製する際に固体潤滑剤を配合するためのポリイミド溶液であって、前記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、溶剤とを少なくとも含む、ポリイミド溶液。
- 下記一般式(a)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
- 下記一般式(1)、(2)または(3)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
- Bが、以下の何れかの構造で表される4価の有機基である、請求項9に記載の潤滑被膜。
- 下記一般式(1−A)で表される繰り返し単位を少なくとも1つ有するポリイミドと、固体潤滑剤とを少なくとも含む、潤滑被膜。
- 請求項1に記載の潤滑塗料を乾燥する工程を少なくとも含むことを特徴とする、潤滑被膜の製造方法。
- 請求項8〜11のいずれかに記載の潤滑被膜を備える、摺動部材。
- 請求項8〜11のいずれかに記載の潤滑被膜を備える、自動車エンジン用ピストンリング。
- 請求項1に記載の潤滑塗料を摺動部材に塗装し、乾燥する工程を少なくとも含むことを特徴とする、潤滑被膜を備える摺動部材の製造方法。
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